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原発立地住民の 小野智子 藤 略歴 Doctoral Candidate, Health System Track, Department of Global Health and Population, Harvard School of Public Health 千葉県柏生まれ。3歳の時に新潟県柏崎市に移 り、渡米までの15年間を柏崎ですごす。弟た ちはその後新潟を出るも、両親は現在も柏崎 市在住。実家は原発から4km。 柏崎刈羽原発 職歴・学歴:オハイオ州立大学・大学院卒業 後、世界保健機関・ジュネーブ本部にて2005 年まで職員。 博士課程中、世界銀行のコン サルとしてカリブ海諸国の看護婦の教育・労 働・移民問題の研究に携わる。 博論は看護 婦の国際移動が発展途上国の医療保健制度に 与える影響について。 医療経済・政策が専 門で、エネルギー関係にかんしてはまったく の素人。 実家 柏崎刈羽原子力発電所 • 柏崎市・刈羽村にまたがって立地 • 東京電力 (新潟は福島と同じく東北電力管轄下) • 1969年: 東京電力が柏崎刈羽原発計画を発表 • 1977年: 一号機設置許可 • 1985年: 一号機運転開始 • 全7機で合計出力は821万キロワット、世界最大の原子力発電所 • 柏崎市: 人口9万人 • 主な産業・企業: ブルボン本社、リケン工場、東京電力、帝国石油、農業 • 原発関係者は3000人くらいと思われる。 • 刈羽村: 人口4800人 • 主な産業: 東京電力 • 原発関係者: 4世帯に一人を超える割合 原発立地地域の財政 原発立地市町村の財政 固定資産税などの原発関 一般会計に占める原発関 原発の交付金・補助金な 連税収 連税収の割合 どの累計額 原発 市町村 泊(北海道) 泊村 12億2600万円 39.7 % 東通(青森県) 東通村 44億5666万円 40.64% 196億4424万円 女川(宮城県) 女川町 ※43億4515万円 ※56.70% ※164億6512万円 石巻市 福島第一(福島県) ― ― 111億 円 122億2015万円 双葉町 12億4117万円 26.3 % 129億9876万円 大熊町 26億4千 万円 31.9 % 145億3836万円 富岡町 13億2919万円 18.0 % 684億2千 万円 葉町 18億3867万円 30.1 % 176億6748万円 城県) 東海村 ※51億 787万円 ※28.6 % 208億8124万円 柏崎刈羽(新潟県) 柏崎市 54億8059万円 11.76% 564億6801万円 福島第二(福島県) 東海第二( 刈羽村 ― ― 256億6434万円 浜岡(静岡県) 御前崎市 66億9千 万円 38.4 % 376億 志賀(石川県) 志賀町 54億6千 万円 32.3 % 211億9000万円 敦賀(福井県) 敦賀市 美浜(福井県) 美浜町 14億 170万円 高浜(福井県) 高浜町 大飯(福井県) おおい町 島根(島根県) 松江市 伊方(愛媛県) 伊方町 20億9554万円 18.7 % 176億6614万円 玄海(佐賀県) 玄海町 26億9600万円 30.0 % 215億7600万円 13億3755万円 2.9 % 川内(鹿児島県) 摩川内市 円 365億 円 18.1 % 163億 円 35億3662万円 27.58% 232億3100万円 31億3613万円 29.87% 400億 ― ― ― 円 ☆168億5901万円 ― アンケート結果から作成。※は06年度、☆印は05∼08年度の合計、その他は07年度の数値。―は無回答・公表せず 198億 「朝日新聞」('08/7/20)より 円 柏崎刈羽の場合 柏崎市 財政項目 財政力指数(2009) データ 刈羽村 全国ラ 新潟県 ンク 内ラン データ 全国ラ 新潟県 ンク 内ラン 0.79 383位 4位 1.53 21位 1位 経常収支比率(2009) 97.8% 1642位 30位 79.1% 141位 5位 実質公債費比率 21.9% 1691位 29位 1.3% 25位 1位 起債制限比率(2007) 16.2% 1646位 30位 0.9% 13位 1位 将来負担比率(2009) 183.0% 1636位 29位 0.0% 1位 1位 95.3 1006位 93.6 1241位 13位 ラスパイレス指数 9位 財政力指数:当該団体の財政力(体力)を示す指数。 指数値が大きい方が優秀。経常収支比率 造の弾力性を判断する指標。 比率が小さい方が優秀。 5∼80%が妥当値。実質公債費比率 る財政負担の程度を示すもの。 比率が小さい方が優秀。 起債制限比率 [%] :財政構 [%] :公債費によ [%] :地方債の許可制限に係る指標と して地方債許可方針に規定されたもの。 比率が小さい方が優秀。将来負担比率 [%] :将来負担しなければ ならない負債(第三セクターや公社の負債も含む)の割合のこと。ラスパイレス指数:地方公務員と国家公務 員の平均給与額の差異の目安。国会公務員給与を100として地方公務員の給与の平均を算出 •http://patmap.jp/CITY/15/15205/15205_KASHIWAZAKI_zaise.html 財政力指数・人口 http://www.zengenkyo.org/ayumi/suii04.html 柏崎・刈羽間の分配 5・6・7号機 柏崎市刈羽村境界 http://www.vill.kariwa.niigata.jp/www/common/imageview.jsp?id=541&imgid=1 電源三法と問題点 • 電源三法 • 電源開発促進税法 • 特別会計に関する法律 • 発電用施設周辺地域整備法 • はっきり言って分かりにくい。 • 2003年まで交付金の使い道が、 公共用施設の 整備など、土木関係しか使えなかった。原発の 固定資産税が16年くらいで急激に減るため、 作った建築物の維持費が財政を圧迫。 • 無駄遣いもきっとあり。 • 2003年から福祉サービスなどにソフト事業にも使 えるようになる。 http://www.enecho.meti.go.jp/topics/pamphlet/denngenn.pdf 原子力発電所に関する固定資産税収入と電源立地促進対 策交付金 (単純化モデル) http://www.enecho.meti.go.jp/topics/pamphlet/denngenn.pdf 近年の地元での原発問題: 住民・県・国・事業者の複雑な関係 柏崎刈羽 • 原発安全神話 • 推進派: 国が保証しているんだから安全だ。 • 反対派: 絶対安全なものなんて存在しない。 • 廃炉の話になると、議論が進まず硬直化。 • 近年の原発関連問題により安全対策(特に情報開示)への要求が高まる。 • 交付金事業の刈羽村、生涯学習施設「ラピカ」建設をめぐり工事のずさんさな どを問題として、住民訴訟が起こる • 1999年: 東海村JCO臨海事件 • 2002年: 自主点検記録改ざん問題 • 2007年: 中越沖地震、火災、(隠されていた)活断層の存在、 想定外のゆれ 東京電力: • 2000年7月: 自主点検記録改ざん問題 GEから派遣され、東京電力の13基の発電所の点検作業を行ったアメリカ人技術者 が通産省に原子炉のひび割れの数が改竄された、という告発文章を送る。 • 原子力安全・保安院はこれに対する調査を東京電力に任せる。また、内部告発者の名前も 東京電力に明かしたらしい。 • 2002年: GEが保安院に全面協力を約束し、結果、東電も不正を認める。 • 内部告発から事実公表まで二年間かかる。 • 東京電力原子力発電所すべて17機止まる。 • 新潟県は県独自の「原発の安全管理に関する技術委員会」を2003年に設立 • これの影響もあり、プルサーマル計画は刈羽住民による住民投票の結果により頓挫 • 推進派・反対派関係なく、安全対策、安心のための情報提供を国・東電にもとめる。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5914 中越沖地震 • 2004年:中越地震 • 自治体への情報伝達のため専用電話を設置。 • 2007年7月16日: 中越沖地震 • M6.8: 柏崎刈羽 震度6強 • 場所:柏刈原発から23km • 非公式ながら、原発敷地内の地震計では震度7 • 「想定外」の加速度 • 変圧器から火災発生。消火器配管が壊れていたため、職 員の消化活動は出来ず、また地元の消防署との専門電話 • 会田市長: 7月18日に消防法に基づく緊急使用停止命 令をだす(貯蔵タンクを対象)。 が使用出来なかったため、消防隊の到着が遅れる。 • 放射性物質を含む水が微量流れる: 風評被害 • IAEAの調査:日本政府は当面見送る意向を伝えたが、泉 • 他の被害 田知事が必要と表明。8/14にIAEAの調査が行われる。 • 死者15名、全壊1319棟, 半壊5500棟 • リケンが大きなダメージをうけ、国内自動車メー カー各社が生産を一時停止。 • 中越沖地震後の火災: 10回以上 • 活断層が原発ちかくまであったことを知っていたらし いが、地震後まで報告せず。 写真:2007年 中越沖地震で柏崎刈羽原発で火災 (AFPBB News より) 技術による安全・情報による安心 「柏崎刈羽原子力発電所の透明性を確保する地域の会」 ○ 推薦団体 荒浜21フォーラム 協同組合ニューエネルギーリサーチ 柏崎エネルギーフォーラム 原発反対刈羽村を守る会 柏崎刈羽原発反対地元三団体 原発問題を考える柏崎刈羽地域連絡センター 柏崎市 原発問題を考える刈羽西山住民の会 柏崎市コミュニティ推進協議会 くらしをみつめる・・・柏桃の輪 (社)柏崎青年会議所 高浜地区町内会 かしわざき男女共同参画プラン推進市民会議 プルサーマルを考える医師歯科医師の会 刈羽エネルギー懇談会 プルサーマルを考える柏崎刈羽市民ネットワー ク 刈羽村区長連絡協議会 松浜地区町内会 刈羽村商工会 連合新潟柏崎地域協議会 旧西山町 http://www.tiikinokai.jp/index.html 福島第一事故の影響 「明日は我が身」 • 柏崎刈羽地区 • 東電社員、関係者が福島に応援に行っていると見られている。2人 ほど被曝のニュースが流れる • 1,500人近く避難民を受け入れ。縁故・知り合いを頼り来たものと 思われる。 • 最悪の結果が現実味をおび、安全神話がくずれる。 • 住民同士だけの問題ではなく、影響は近辺市町村にも及ぶことを実感。 • 計画停電 • 電力不足が首都圏で問題になる中、まだ地震後耐震工事・点検中3 基の再稼動が注目を浴び始める。 周辺地域との関係 原子力発電施設等 朝日新聞(4/22/2011): 周辺地域立地支援事業 文部科学省、経済産業省、原子力安全委員会 http://www.enecho.meti.go.jp/topics/pamphlet/denngenn.pdf 原発地元・周辺地域の温度差 •県の防災対策は周辺地域では整っていない。 •10km圏内のみ安定ヨウ素剤が指定避難所に保存 •県、近辺市町村が独自に保管の場合もある (小国・長岡) •積算量分布と安全対策対象、支援事業対象市町 村がミスマッチ •泊原発、7町「安全でない」 30キロ圏首長 アンケート (北海道新聞 地元4町村は「安全」 04/19 07:31、04/19 09:28 更新 np.co.jp/news/donai/286950.html ) http://www.hokkaido- 柏崎刈羽:現在の動き • 新潟県県議選:柏崎刈羽の選挙区は無投票で推進派二人で決まると思われていたが、 直前に反対派が立候補。選挙戦に突入。反対派は時間が足らずほとんど選挙活動でき ず。 • 推進派2人が当選。 • 反対派もそれなりの票をあげるがとどかず。 • 市議選でも、反対派は伸びず。 • 東電社長:3号機は「できれば年内に了解を得る手続きに入りたい」 • 会田市長: 福島第1原発事故を踏まえた安全対策の検討も抜きに、3号機の再開の話が先に出 てくるのは理解し難い • 刈羽村長: 再開は東電から事前了解を求められた時点で判断すればよい • 泉田知事: 3号機は点検、審査の途中で、現時点でどうこう言うのはあり得ない。 • KK横村忠幸所長:「社長はあくまでも『希望』として述べただけ」 今後: 困難な交渉と選択 今後 • 福島の復活が見込めない中、東京電力管轄下の原発は柏崎のみ。 • 新たな原発立地場をみつけることは困難。 • 国、東京電力、産業界からの再稼動へ要求は高まる。 • リスクを抱えての共存か廃炉か • 共存(or 段階的廃炉): 安全・防災対策の強化 • 廃炉: 戦う相手が多すぎる・無理? • 消費しない電力を作ることの 藤: お金のためだけにこのリスクを抱えていいのか? • 原発の決断に関わる権利がある人、原発によって利益を受ける人、 リスクを抱える人がばらばらす ぎる。 現実的な交渉内容? • 短中期的:防災体制の抜本的な改革が必要 • 想定外のときの対応 • 緊急停止できなかったら? • 地震・津波でヨウ素剤を指定場所までとりいけなかったら? • 避難の方法は? 場所は? • 市町村の機能を守って集団移動? • 保安院・安全委員会のあり方 • データを集める仕事は事業者任せ? • どう信頼関係を作っていくか • 原発増設・誘致の住民の意思確認: • 長期的: 住民投票 原発は国策の一部となり続けるのか。 • リスクに対する代償はどう変わるべきなのか • より安全な原子炉への転換? • 段階的廃炉? 原発立地住民の言葉 原発周辺住民の 藤: Twitter 柏崎の人がいて、彼女は原発には反対なんだけども、いまの反原発の運動には「乗れない」と言う。地 元では家族や親戚や友達に東電社員がたくさんいて、子供の頃から啓発教育みたいなものもしょっちゅ うあったと。 一方で、親が原発に務めている子が、学校で反原発の教師から差別的扱いを受けていたり もしたという。それを見て、「反原発運動」に対して非常にいやなイメージをいまでも持っている。 「だまされていたんだ」と言うけども、柏崎の地元では誰もそんなことは思っていない。みんなコトが 起これば大変なことになるのはわかっていて、それに目をつむってきた。だから親も「事故が起きたら すぐにどこかに逃げろ。柏崎には戻ってこなくていい」と常々言っていた。 彼女はそういう、自分たちが原子力の恩恵に浴してきたことや、危険を「なかったこと」にしていまま で来たことに責任を感じていて、原発はやめるべきだと思っているんだけども、なおかついまの反原 発・脱原発デモに行く気はしないという。自分は手放しでそんなことを言える立場にないという自責の 念と、住民全部が原発とともに生活してきた 藤なんて想像もつかない都会の人たちが脱原発とかいっ て大騒ぎしているのが軽薄に見えるのと、何よりもそういう人たちに恐怖を感じているんだそうだ。 http://togetter.com/li/125157 そこに原発が必要だったかどうかだなんて誰にもわからない 私が生まれた町は福島第一原子力発電所から10kmの範囲に入る町。高校卒業後上京し、数年前から都内の会社に勤 めている。故郷では地震のすぐ後に避難指示が出され、家族や友達が今も避難生活を続けている。 地震後、やっと繋がった電話で聞いた避難時の家族の様子。おにぎり一個で一日生活し、毛布にくるまって固い床 の上では眠ることもできなかったと言っていた。そして90代後半の、認知症のため私の顔すらあやふやな祖母が、 避難所で言ったという言葉。 「出来たときからこうなるかもしれないことは分かってたんだ」 原発の水素爆発の事故後に言った言葉だという。 私はそれを聞いて、そうか、分かっていたのか、と小さな衝撃を受けた。それからしばらく、その言葉は頭の中で ぐるぐると巡っていた。 大人になった今はもちろん、生まれたときからすでに、この福島第一原子力発電所はそこにあった これらは祖母の言葉を受けWikipediaで調べてはじめてわかったことで、生まれてから今まで、原発のことなんて気 にしたこともなかったのだ。実際にこの事業を進めたのは当時のお偉方だったと考えると、若く見積もっても、当 時40、50代だった方だと思う。つまり現在は90歳∼100歳の方々。そんな立派な高齢者。きっとすでに、うちの祖 母と同じようにもうろくしている。もしくは亡くなっているだろう。 http://d.hatena.ne.jp/aahaha/20110412/1302623169 そこに原発が必要だったかどうかだなんて誰にもわからない 他県の方々が「自分たちが好き好んで福島県 に発電所を押し付けたのではない」というように、今現在こ の問題に関わっているほとんどの人達が、自分がそうしたくてこの事業を押し進めてきたわけではな いと 思う。実際に現在復旧活動に勤しんでいる作業員の方々も、責められている東京電力役員の方々も。(も ちろん企業としての責任は重いと思う) 私自身の家族に東電関係者はいないが、友人の家族や友人など、多くの知人が、東京電力、またはその下 請けで働いている。だから双葉郡の人間の雇用元として大きな位置をしめていたのも事実。だけどただ、 たったそれだけのことだと思う。原発誘致により、双葉郡は潤ったといったって、実際それを実感し、喜 んでいた人がどれほどいたというのだろうか。少なくとも、私達若者が実感したことはないだろう。電車 は1時間に一本。終電は10時前。買いものは福島市の方と同じように仙台へ、2時間かけて行くか、1時間 かけていわきのイトーヨーカドーやサティへ行くか、だ。雇用?そんなのあるものに応募するだけだ。希 望した全員が東電に就職できるわけでもなく、東電がなかった場合はなかったなりに、どうにでもなる。 自分の生まれる土地も、国も親も時代も選ぶことはできない。原発はすでにそこにあったのだ。 http://d.hatena.ne.jp/aahaha/20110412/1302623169 最後に • 原発の根本的な必要性と、現存している原発の安全 性の両方を検証する必要がある • 技術的な安全のみでは住民の安心は得られない • 福島への対応は、今後の原発立地自治体と国・事業 者との関係を左右する • 交付金のあり方の是正が必要