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遺伝③ 相互作用の遺伝子
基礎から分かる生物 遺伝③ 相互作用の遺伝子 1.相互作用の遺伝子 いくつかの遺伝子の組み合わせによって 1 つの形質が決定される遺伝を相互作用とい う.この場合,問題文の情報を読み取って,どんな遺伝子の組み合わせ(遺伝子型)がど んな表現型になるかをメモしていくことが重要となる. 解法の手順 (1) 形質を文字(赤花-A,白花-A など)で表す. (2) 形質の優劣を決定する.(A〉A) (3) 表現型を文字で表す.(赤花-〔A〕,白花〔A〕) (4) 遺伝子が染色体上のどの位置にあるか(遺伝子配置)を推定する. (独立,連鎖,性染色体上など) (5) 問題文の交配を遺伝子型で表していく. ここで 「すべての個体を遺伝子型で表す」を行っていく. このうち,(3)を確実に実行していく. 1 2.相互作用の遺伝子の例 ① 1 対の対立遺伝子における相互作用 (1) 不完全優性…対立遺伝子に優劣関係がなく(A=A),ヘテロ個体はホモ個体とは異 なる形質を示す.このときのヘテロ個体を中間雑種という. 例 マルバアサガオ AA=赤花 AA=桃色花 AA=白花 (2) 致死遺伝子…ある遺伝子がホモになると致死作用を示す.(劣性致死遺伝) 例 ハツカネズミの毛色に関する遺伝子 AA=致死 AA=黄色 ② AA=黒 2 対の対立遺伝子による相互作用 (1) 補足遺伝子…2 対の対立遺伝子がともに優性のときだけある形質が現れ,ほかの組 み合わせではその形質が現れない. 〔AB〕=形質X 〔AB〕=形質Y 〔AB〕=形質Y 〔AB〕=形質Y ※ A,B が独立で AABB どうしの交配の時,表現型の分離比はX:Y=9:7 とな る. (2) 条件遺伝子…ある遺伝子が優性の時,もう一方の遺伝子のはたらきが現れるが,劣 性の時にはもう一方の遺伝子のはたらきが現れない. 〔AB〕=形質X 〔AB〕=形質Y 〔AB〕=形質Z 〔AB〕=形質Z ※ A,B が独立で AABB どうしの交配の時, 表現型の分離比はX:Y:Z=9:3:4 となる. 2 基礎から分かる生物 (3) 抑制遺伝子…一方の優性遺伝子がもう一方の優性遺伝子の働きを抑制する. 〔AB〕=形質X 〔AB〕=形質Y 〔AB〕=形質X 〔AB〕=形質X ※ A,B が独立で AABB どうしの交配の時,表現型の分離比はX:Y=13:3 とな る. (4) 被覆遺伝子…2 つの優性遺伝子の間にも優劣関係がある.(A〉B〉A,B) 〔AB〕=形質X 〔AB〕=形質X 〔AB〕=形質Y 〔AB〕=形質Z ※ A,B が独立で AABB どうしの交配の時, 表現型の分離比はX:Y:Z=12:3:4 となる. (5) 同義遺伝子…2 つの優性遺伝子が同じはたらきをする. 〔AB〕=形質X 〔AB〕=形質X 〔AB〕=形質X 〔AB〕=形質Y ※ A,B が独立で AABB どうしの交配の時,表現型の分離比はX:Y=15:1 とな る. これらの例では,2 つの遺伝子が連鎖をしているとこのような比にはならないので注 意すること! 3 4 基礎から分かる生物 ある植物の花弁の色は紫色または白色であり,花弁の色は連鎖しない 2 対の遺伝子によっ て決まることが知られている.これらの優性遺伝子を A および B,劣性遺伝子をそれぞれ A, B とし,下記の交配結果を参考にして,下の問 1~4 に答えよ. 交配結果:遺伝子型が AABB で,花弁の色が紫色の株(紫色株)と AABB で白色の株(白色株) との交配でできた株では,紫色株と白色株の数が 3:5 に分離した. 問 1 この交配でできた紫色株にあると考えられるすべての遺伝子型と,その分離比を示せ. 問 2 遺伝子型が AABB の株を自家受精すると,紫色株と白色株の数はどのような比に分離 するか. 問 3 どのような遺伝子型の株と交配しても,紫色株のみができる株の遺伝子型を示せ. 問 4 この交配でできた紫色株の集団内で自由交配が行われると,次代の表現型とその比は どうなるか. 5 A コムギを短小にする遺伝子 D と,そのはたらきを抑制する遺伝子Iは,それぞれ対立遺 伝子 D,i に対し優性である.いま,草丈が正常な A 系統と B 系統を交雑すると,F1 は全 て正常となった.さらに F1 を自家受精して F2 をつくると,正常:短小=13:3 となった. 問1 F1 の遺伝子型を書け. 問2 F2 で生じた短小個体のうち,以後何回自家受精を繰り返しても短小しか生じないもの はどのような遺伝子型か.また,それは F2 全体の何%か. 問3 F2 の短小個体をそれぞれ自家受精したとき,次代の表現型とその比を求めよ. B イエバエの眼色には 2 対の対立遺伝子 W(w)と Y(y)が関与している.黄色眼(wwYY)と白 色眼(WWyy)を交雑すると,F1 はすべて正常であった.F1 どうしを交雑すると,F2 では正 常眼:黄色眼:白色眼=9:3:4 となった. 問4 F2 の白色眼のうち,黄色眼の個体と交雑しても正常眼の子供を生むことのないものは, どのような遺伝子型か.また,それは F2 全体の何%か. 問5 F2 の黄色眼の集団の中で自由に交雑を行わせたとき,次代の表現型とその比を求めよ. 6 基礎から分かる生物 次の文章を読み,下の問いに答えよ. ある動物Xの体表には赤い斑紋があり,この斑紋形成には連鎖した 2 つの遺伝子 A と B が関係している.遺伝子 A からは酵素 A が,遺伝子 B からは酵素 B が作られる.酵素 A は 餌に含まれている物質Pから物質Qを合成し,さらに酵素 B は物質Qから赤い色素を合成し ている.また,遺伝子 A に対して劣性の対立遺伝子 A が,遺伝子 B に対して劣性の対立遺 伝子 B が存在し,これら劣性の遺伝子からつくられるそれぞれの酵素は活性を持っていない. 問 1 体表に赤い斑紋がある個体の遺伝子型として考えられるものを全てあげよ.遺伝子型 は「AABB」のように記せ. 問 2 動物Xの体表の斑紋の遺伝様式に最も関係の深い語句を次の(ア)~(ク)の中から 1 つ選 び,その記号を答えよ. (ア) 中間雑種 (イ) 致死遺伝子 (ウ) 抑制遺伝子 (エ) 補足遺伝子 (オ) 不完全優性 (カ) 複対立遺伝子 (キ) 伴性遺伝 (ク) 点突然変異 問 3 斑紋のない個体を物質Qが添加された餌で飼育すると,体表に斑紋を持つようになる ことがある.普通の餌では斑紋がないが,物質Qの添加によって斑紋を持つようになる 個体の遺伝子型を全てあげよ. 問 4 AABB の個体と AABB の個体をかけ合わせて得られた AABB の個体を検定交雑にか けた.この検定交雑で生まれた個体を,物質Qを含まない餌で育てると,体表に斑紋 がある個体とない個体の比は 7:9 になった.この場合,組換え価は何%と考えられ るか.小数点第 2 位を四捨五入して答えよ. 7 問 5 問 4 の検定交雑で生まれた個体を,物質Qを添加した餌で飼育した.はじめ斑紋のな かった個体のうち,何%の個体が斑紋を持つようになると考えられるか.小数点第 2 位 を四捨五入して答えよ. 問 6 AABB の個体と AABB の個体をかけ合わせて得られた AABB の個体を検定交雑にか けた.組換え価が問 4 と同じであれば,物質Qを含まない餌で育てた場合,体表に斑紋 がある個体とない個体の比はいくらになるか答えよ. 問 7 問 6 の検定交雑で生まれた個体を,物質Qを添加した餌で飼育した.全体の何%の個 体が斑紋を持つと考えられるか.小数点第 2 位を四捨五入して答えよ. 8