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第 20 講 遺伝③ いろいろな遺伝
基礎から分かる生物基礎 第 20 講 遺伝③ いろいろな遺伝 性決定と伴性遺伝 染色体の種類(XY型) 動物の染色体は常染色体と1組の性染色体からなる。 常染色体は、それぞれ相同染色体の対になっており、雌雄共通である。 性染色体はX染色体とY染色体の2種類があり、X染色体を2本持つのが雌、X染色体とY 染色体を1本ずつ持つのが雄となる。 性決定様式の種類 動物の性決定様式はXY型のほか、下の図に示すように4種類ある。 XY型、XO型を雄ヘテロ型、ZW型、ZO型を雌ヘテロ型という。 性決定様式 染色体の種類 オス 例 メス XY型 XY XX ショウジョウバエ、メダカ、ヒト XO型 X XX バッタ、キリギリス ZW型 ZZ ZW カイコガ、ニワトリ ZO型 ZZ ZO ミノガ、トビケラ 配偶子に分配される染色体の種類 XY型では、卵に分配される染色体はどちらかのX染色体なので、1種類の卵子か形成され ないが、精子に分配される染色体はXかYのどちらかになるため、2種類の精子が形成され る。X、Yのどちらをもつ精子が受精するかで、雄が生まれるか、雌が生まれるかが決定す る。 1 第 20 講 遺伝③ 伴性遺伝 遺伝子がX染色体上にあるときの遺伝のこと。 次代(子供)の雄・雌の表現型の比が異なるとき、その遺伝子はX染色体上にあると判断で きる。 (Y染色体上にあるとき、その形質は雄にしか現れないため、これを限性遺伝という。) このとき、X染色体に存在する遺伝子を右肩に表す方法が一般的である。配偶子の求め方は 独立・連鎖のときと違いはない。 いろいろな遺伝 不完全優性 対立遺伝子(A,a)に優劣関係がある場合(A>a)、遺伝子型AAとAaは表現型が〔A〕 となるが、優劣関係がない場合、ヘテロ接合体のAaは表現型が〔A〕とならず、〔A〕と 〔a〕の中間の形質が現れる。このような優劣関係のない対立遺伝子の関係を不完全優性と いう。 中間雑種 不完全優性における、ヘテロ接合体(遺伝子型Aa)を中間雑種という。 複対立遺伝子 1つの形質を決定する対立遺伝子が3種以上存在する遺伝子を、複対立遺伝子という。 ABO式血液型 ABO式血液型の場合、A,B,O遺伝子の3種類の遺伝子が存在する。A遺伝子とB遺伝 子は不完全優性の関係にあり、AB型は中間雑種となる。O遺伝子はA遺伝子、B遺伝子に 対して劣性であり、O型の遺伝子型はO遺伝子のホモ接合体となる。 A型・・・遺伝子型AAとAO B型・・・遺伝子型BBとBO AB型・・・遺伝子型AB O型・・・遺伝子型OO 2 基礎から分かる生物基礎 致死遺伝子 ハツカネズミの体色は黄色と黒の2種類があり、対立遺伝子Yとyで調節される。Y遺伝子 が存在すると黄色体色に、存在しない(遺伝子型yy)と黒色体色になる。しかし、Y遺伝 子がホモ接合体(遺伝子型YY)になると、発生初期に死んでしまう。Y遺伝子には体色を 決定する作用のほかに、致死作用があるからである。このような致死作用をもつ遺伝子を致 死遺伝子といい、特に、表現型〔致死〕は致死遺伝子がホモにならないと現れないので、 〔死 なない〕に対して劣性であるため、劣性致死遺伝子という。 相互作用の遺伝子 1つの形質を決定するのに、2つ以上の遺伝子が関与する遺伝のしくみのこと。 補足遺伝子 2つの遺伝子が互いに作用しあって1つの形質を発現する遺伝子を補足遺伝子という。 このような形式の遺伝では、2つの対立遺伝子の組み合わせでどのような表現型が現れるか に注目するとよい。 スイートピーの花色の遺伝 スイートピーの花色の遺伝は、色素原をつくる遺伝子Cと色素原から紫色の色素をつくりだ す遺伝子Pによって調節されている。C、Pそれぞれの対立遺伝子c、pはC、Pに対して 劣性であり、C、Pのはたらきをもたない。 C遺伝子が存在すると、紫色のもととなる色素原がつくられる。この色素原が存在するとき、 P遺伝子が作用すると、色素原から紫の色素がつくられる。つまり、C遺伝子、P遺伝子が 両方存在するときだけ、紫色が発現するのである。 表現型 〔CP〕=紫色 〔Cp〕、 〔cP〕 、〔cp〕=白色 色素原のもと (材料1) 3 色素原 紫色の色素 (材料2) (製品) C遺伝子 P遺伝子 (工程1) (工程2) 第 20 講 遺伝③ C遺伝子が存在するときだけ色素原がつくられる。 P遺伝子が存在しても、色素原がつくられなければ紫色の色素はつくられない。 (材料1、工程1、材料2、工程2がそろわなければ製品がつくられない。) 抑制遺伝子 ある優性遺伝子のはたらきに優先して、その遺伝子のはたらきを抑制する遺伝子を抑制遺伝 子という。 カイコのまゆの色の遺伝(抑制遺伝子の例) カイコのまゆの色には黄色と白色があり、黄色は白色に対して優性である。しかし、まゆの 色を決定する遺伝子は抑制遺伝子により抑制される。 まゆの色を決定する遺伝子をY(黄色)>y(白色)、抑制遺伝子をI>iとする。I遺伝 子存在下ではY遺伝子のはたらきが抑制されるので、まゆの色は白色となる。黄色のまゆが 生じるのは、I遺伝子が存在せず、Y遺伝子が存在するときだけである。 表現型 〔iY〕=黄色 〔IY〕、 〔Iy〕 、〔iy〕=白色 4 基礎から分かる生物基礎 ヒトの染色体は( a )本あるが,そのうち( b く,( c ( d )組の相同染色体は男女による違いがな )と呼ばれている。残りの1組は男女により異なる性染色体であり,女性では )染色体が2本,男性では( d )染色体と( e )染色体がそれぞれ1本ずつある。 性染色体には性を決定する遺伝子だけでなく,他の形質に関する遺伝子も存在している。た とえば,ヒトでは赤緑色覚異常の遺伝子は( f )染色体にのみある。また,赤緑の色覚が 正常な遺伝子に対立する異常遺伝子は劣性である。したがって,男性では,赤緑色覚遺伝子 をもてば,表現形質として現れてくるが,女性では赤緑の色覚異常遺伝子をヘテロに持って いても,表現形質として現れてこない。このように,男女により形質の現れ方が異なる遺伝 を( g )遺伝という。一方,グッピーはヒトと同様な性染色体をもっているが,背びれの 斑紋模様は雄にしか現れない。これは斑紋を決定する遺伝子が( h るためである。このように,性を限定して伝わる遺伝を( i )染色体に存在してい )遺伝という。 問1 文中の空欄( a )~( i )に最も適切な語句を記入しなさい。 問2 色覚が正常な夫婦から生まれた子が,その後の検査の結果,赤緑色覚異常であること がわかった。この子の性が決定できる場合は「男性」か「女性」かを,決定できない場合 は「決定できない」と答えなさい。 問3 下線部のような遺伝をする病気を下記の(1)~(5)から1つ選び,番号で答えなさい。 (1) 家族性大腸ポリポーシス (2) 鎌状赤血球症 (3) 血友病 (4) フェニルケトン尿症 (5) 網膜芽細胞腫 5 第 20 講 遺伝③ ヒトは 23 対の染色体をもっている。そのうち,22 対(1番染色体から 22 番染色体まで) は男女とも共通であり,これらは常染色体という。残りの1対は性染色体といい,女性では X 染色体を2本もち,男性では X 染色体とそれより小型の Y 染色体をそれぞれ1本ずつも つ。 ヒトの遺伝子は全部で5万~10 万と推定されているが,これまで遺伝子座が確定された遺 伝子は遺伝病を含めても約2万にすぎない。よく知られている遺伝子の遺伝子座は,Rh 式 血液型が1番染色体,ABO 式血液型が9番染色体,血友病および赤緑色覚異常が X 染色体, 精巣形成因子が Y 染色体にそれぞれ存在する。 問1 図1は,親と子の染色体構成を示す。図中の空欄 答欄に記入せよ。なお,空欄 問2 d ~ f a ~ f の染色体構成を解 には♀または♂の性別を併記のこと。 ヒトの ABO 式血液型には4つの表現型(A 型,B 型,AB 型および O 型)があり, それぞれは同一の遺伝子座に存在する3つの遺伝子(A,B および O)により支配され ている。優劣関係は A と B の遺伝子間には存在しないが,A と B の両遺伝子は O 遺 伝子に対してそれぞれ優性を示す。もう一つの Rh 式血液型では,Rh+型と Rh-型の 表現型がある。Rh+型の遺伝子型は DD または Dd で表され,Rh-型は dd となる。 血液型が AB 型・Rh+型の女性と O 型・Rh-型の男性が結婚した場合,生まれてく る子供にはどのような血液型(表現型および遺伝子型)がどのような出現比で現われ るか。予想される親の遺伝子型組み合わせ別に記せ。 6 基礎から分かる生物基礎 遺伝に関する次の問に答えよ。 遺伝子型が Y y の黄色のハツカネズミどうしを P として交配したところ,F1 では黄色のハ ツカネズミと黒のハツカネズミが2:1の比率で得られた。 問1 問2 このような遺伝における遺伝子 Y をどのようによぶか。最も適切なものを選択せよ。 ① 複対立遺伝子 ② 条件遺伝子 ③ 限定遺伝子 ④ 致死遺伝子 ⑤ 同義遺伝子 ⑥ 抑制遺伝子 ⑦ 補足遺伝子 ⑧ 伴性遺伝子 F1 で得られた黄色のハツカネズミと P とを交配すると,黄色:黒色は,どのような比 率でできるか。正しいものを選択せよ。 問3 ① 0:1 ② 1:0 ③ 1:1 ④ 1:2 ⑤ 1:3 ⑥ ⑦ 3:1 ⑧ 3:2 ⑨ 3:4 0 4:3 ◯ 2:1 F1 で得られた黒色のハツカネズミと P とを交配すると,黄色:黒色は,どのような比 率でできるか。正しいものを選択せよ。 問4 ① 0:1 ② 1:0 ③ 1:1 ④ 1:2 ⑤ 1:3 ⑥ ⑦ 3:1 ⑧ 3:2 ⑨ 3:4 0 4:3 ◯ 2:1 問2で得られた F2 と P とを交配すると,黄色:黒色は,どのような比率でできるか。 正しいものを選択せよ。 問5 ① 0:1 ② 1:0 ③ 1:1 ④ 1:2 ⑤ 1:3 ⑥ ⑦ 3:1 ⑧ 3:2 ⑨ 3:4 0 4:3 ◯ 2:1 問3で得られた F2 と P とを交配すると,黄色:黒色は,どのような比率でできるか。 正しいものを選択せよ。 7 ① 0:1 ② 1:0 ③ 1:1 ④ 1:2 ⑤ 1:3 ⑥ ⑦ 3:1 ⑧ 3:2 ⑨ 3:4 0 4:3 ◯ 2:1 第 20 講 遺伝③ 8