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単身成人未婚者における親子関係 単身成人未婚者における親子関係

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単身成人未婚者における親子関係 単身成人未婚者における親子関係
2002 年7月
単身成人未婚者における親子関係
第一生命保険相互会社(社長 森田富治郎)のシンクタンク、ライフデザイン研究所
(所長 千葉商科大学学長 加藤寛)では、全国に居住する 20~39 歳の単身未婚者男女 260 名を
対象に、標記についてのアンケート調査を実施いたしました。
このほど、その結果がまとまりましたので、ご報告いたします。
目 次
アンケート調査の実施概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
【親の家までの所要時間】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
【親の家への訪問頻度】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
【親子間での経済的関係】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
【初めて親元から離れた時の意識】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
【初めて親元を離れたときの親の意見】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
【「親元に戻りたい」と考えているか?】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
【「親元に戻りたい」と思う(思った)理由】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
【「親元に戻りたい」と思わない理由】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
【人間関係における親の位置付け】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
【研究員のコメント】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
*この冊子は、当研究所発行の調査月報、
お問い合わせ
「LDI REPORT」の7月号の要約です。
株式会社ライフデザイン研究所
業務推進部広報担当/福原・岸
「LDI REPORT」を7月号ご希望の方は、
〒100-0006
右記の広報担当までご連絡ください。
東京都千代田区有楽町 1-13-1
TEL.03−5221−4772
FAX.03−3212−4470
アンケート調査の実施概要
1. 調査対象
全国に居住する 20∼39 歳の単身未婚者男女 260 名
(ライフデザイン研究所のモニター及びその知人、ただし、学生は除く)
2. 実施時期
2002 年 1 月
3. 調査方法
質問紙郵送調査法
4. 有効回収数(率)
202 名 (77.7%)
5. 回答者の属性
※今回の調査結果のうち、親子関係をたずねる項目に関しては、両親がともにいる180
名を分析対象としている。
1
親の家までの所要時間
① 男性の 26.2%、
26.2%、女性の 33.0%は親元から1時間以内の範囲に居住。
33.0%は親元から1時間以内の範囲に居住。
② 親と近居している人は、男性より女性、20
親と近居している人は、男性より女性、20 代より 30 代で多い。
図表1 親の家までの所要時間
自分が住んでいる所から親の家までの所要時間(ふだん利用している交通手段を使用
した場合の平均的な片道の所要時間)を聞いてみました。
その結果、男性の
男性の 26.2%、女性の
26.2%、女性の 33.0%は親元から1時間以内の範囲に居住してお
33.0%は親元から1時間以内の範囲に居住してお
り、親元から比較的近い範囲で世帯を構えていることがわかりました(図表1)
。
り、
また、親の家までの所要時間が1時間以内の人を「近居」、それ以外の人を「遠居」
として属性別に比較すると(以下、同様に定義)
、男性より女性で、年代別には
男性より女性で、年代別には 20 代よ
り 30 代で近居している人の割合が高くなっています。女性や
30 代には、親の家から近
代で近居している人の割合が高くなっています。
いところに住む「近居」を敢えて選択した人も多いのかもしれません。
2
親の家への訪問頻度
① 近居している7割以上の男女は「月に1回以上」親元
近居している7割以上の男女は「月に1回以上」親元に帰っている。
に帰っている。
② 近居している女性のうち、「週 1 回以上」と回答した人は4人に 1 人
の割合。
図表2 親の家への訪問頻度(性別・居住関係別)
親との近居・遠居別に、親元の家への訪問頻度を調査してみました。(図表2)。
やはり、親と近居している人は遠居している人に比べて明らかに親元への訪問頻度が
高く、親と近居している男性の
親と近居している男性の 76.5%、女性の
76.5%、女性の 71.1%が「月に1回以上」の頻度で親
71.1%が「月に1回以上」の頻度で親
元を訪れています。
親と別居しているといっても、親元まで1時間以内の範囲に住む、近居の単身未婚者
の多くは比較的頻繁に親元を訪れています。このように、親子の間で“別居交流型のラ
イフスタイル”の実態がみられました。
特に、親と近居している女性の場合、
親と近居している女性の場合、「週に1回以上」というかなり高い頻度で親元
を訪れている人が 26.3%を占め、
11.8%に比べて多くなっています。親と近居
親と近居
26.3%を占め、男性の
%を占め、
する女性の中には、一人暮らし用の自分の家をもちながらも、日常的に親元に通い、実
家で過ごす時間をもっている人もいるようです。
なお、親と遠居している人の場合でも、男女とも7割以上の人は「年に2∼3回程度」
の頻度で親元を訪れています。
3
親子間での経済的関係
親子間での経済的関係
○ 「帰省した際に、実家から食料品や日用雑貨などを持ち帰る」こと
「帰省した際に、実家から食料品や日用雑貨などを持ち帰る」こと
がある人の割合は、男性で約7割、女性で約8割にものぼる。
図表3 親との経済的援助関係(性別・複数回答)
親子の間で、どのような経済面での援助関係があるかを調査してみました(図表3)。
その結果、最も多かった回答は「帰省した際に、実家から食料品や日用雑貨などを持
「帰省した際に、実家から食料品や日用雑貨などを持
ち帰る」という親からの援助であり、男性の約7割、女性の約8割がこのような援助を
受けることがあると答えています。続いて、
「帰省した際に、親からこづかいや交通費
受けることがあると答えています。
をもらう」(男性:35.4%、女性:39.2%)、「実家から食料品や日用雑貨などが送られ
てくる」(同 29.2%、35.7%)などが多くあげられました。
一方、親への経済的援助は、親からの援助に比べて全般的に回答率がかなり少ないよ
うです。最も回答率が高かった「親におこづかいをあげる」についても、男性 13.9%、
女性 18.2%に過ぎませんでした。
単身成人未婚者における親との経済的援助関係では、
子から親への援助の流れよりも、親から子への援助の流れの方がはるかに強いと考えら
れます。
4
初めて親元から離れた時の意識
○ 「早く親元から離れたかった」と感じていた人の割合は、男女とも
8割弱を占める。
8割弱
を占める。
図表4 初めて親元から離れた時の意識(性別)
初めて親元を離れた時、親元から離れることについてどのように感じていたかを聞い
てみました(図表4)。
その結果、
「早く親元を離れたいと感じていた」「どちらかといえば、早く親元を離れ
たいと感じていた」と答えた人の割合は男女とも8割弱を占めており、親元を離れるこ
たいと感じていた」と答えた人の割合は男女とも8割弱を占めており、
とについて、多くの男女はある程度、選択的な意向をもっていたと考えられます。
なお、男性と女性を比較すると、女性の方が親元から離れたいと強く感じていた人が
多い傾向にありました。一般的には女性の方が親元を離れにくいと考えられるため、男
性に比べて親元を離れたいと思う気持ちが強いのかもしれません。
5
初めて親元を離れた時の親の意見
① 父親、母親とも半数以上は子が家を出て行くことに賛成している。
② 父親、母親とも、息子に比べて娘に対しては反対、消極的賛成の傾向
が強い。
図表5 初めて親元を離れた時の親の意見(性別)
初めて家を出る際に、父親や母親がどのような意見であったかについて聞いてみまし
た。その結果、対象者の半数以上は、父親・母親とも家を出ることに賛成したと答えま
した(図表5)。
ただし、男性と女性、父親と母親では意見の傾向に違いがみられます。まず、男性に
比べて女性の場合には、父親・母親に共通して、反対した割合が高く、賛成した場合に
も積極的な賛成ではない場合が少なくないことがわかります。
さらに、このような傾向は、父親において特に著しく、初めて家を出る際に父親が反
対したと答えた人は、男性 13.8%に対し、女性 33.9%となっています。息子に比べて
娘では、親元を離れることについて、親があまり賛成しない傾向が強く、特に父親の場
合にはそのような傾向がいっそう強いと考えられます。
6
「親元に戻りたい」と考えているか?
........
①「親元に戻りたい」と
と考えたこと
考えたことがない人は、男女とも過半数に達する。
② 現時点で、「親元に戻りたくない」と考える人は男性で7割以上、
女性では8割以上に達する。
図表6 親元に戻りたいと考えているか(性別)
親元に戻ること(帰家)について、どのように考えているかをたずねてみました。
その結果、男女とも過半数の人は「戻りたいとは考えていない」と回答しました(図
男女とも過半数の人は「戻りたいとは考えていない」と回答しました(図
表6)。
さらに、「今は考えていないが、以前考えたことがある」との回答まで含むと、現時
現時
点で、「戻りたいとは考えていない」人の割合は、実に男性の7割以上、女性の8割以
上に達します。
上に達します。
また、男女の違いに注目すると、男性では「いずれ戻りたいと考えている」と答えた
人の割合が 24.6%と、女性の 15.7%に比べて 10 ポイント近く高くなっているのに対し、
女性では「今は考えていないが、以前考えたことがある」と答えた人は 24.3%と、男
性の 13.8%に比べて 10 ポイント以上高くなっています。
7
「親元に戻りたい」と思う(思った)理由
① 男女ともに「親のことが心配だから」が一番の理由。
② 男女別の特徴としては、男性では「地元回帰志向」「日常生活の不便
さ」、女性では「経済的問題」による理由が多い。
図表7 親元に戻りたいと思う(思った)理由 (複数回答)
8
親元に戻ることについて、「なるべく早く戻りたい」「いずれ戻りたい」「今は考えて
いないが、以前考えたことがある」と回答した人を対象に、その理由を複数回答で聞い
てみました。
その結果、男女に共通して最も多くあげられた理由は「親のことが心配だから」
最も多くあげられた理由は「親のことが心配だから」とな
最も多くあげられた理由は「親のことが心配だから」
り、男女とも6割前後の人が回答しています(図表7)。
また男女の差が特に大きい回答として、男性は「地元に帰りたいから」、「家事が不自
由だから」、女性では「経済的に苦しいから」「お金を貯めたいから」を多くあげていま
す。
「親元に戻りたい」と思う(思った)背景には、男性は「地元回帰志向」、「日常生活
の不便さ」という理由、女性の場合は「経済的な事情」によるところにあるようです。
9
「親元に戻りたい」と思わない理由
①「自由に生活したいから」「今の生活が気に入っているから」が二大理由。
② 男女別の特徴としては、男性では「仕事の都合」、女性では「地元に
帰りたくない」による理由が多い。
図表8 親元に戻りたいと思わない理由 (複数回答)
10
親元に戻ることについて、「戻りたいとは考えていない」と回答した人を対象にその
理由を複数回答で聞いてみました(図表8)。
男女に共通する上位2項目は「自由に生活したいから」
「自由に生活したいから」「今の生活が気に入っている
から」で、いずれも6∼7割を占めました。全般に、親元での生活に対する否定的な意
から」で、いずれも6∼7割を占めました。
識より現在の生活に対する肯定的な意識が多くあげられているようです。
また、男女の差が特に大きい回答として男性では「仕事の都合があるから」、女性で
は「地元に帰りたくないから」があげられました。
このように、男性の場合は親元に戻らない理由として「仕事の都合」が大きなウエ
男性の場合は親元に戻らない理由として「仕事の都合」が大きなウエ
イトを占めている一方で、女性では「今の生活が気に入っているから」という理由がも
イトを占めている一方で、女性では「今の生活が気に入っているから」という理由がも
っとも多くあげられており、男性に比べて1人暮らしという今のライフスタイルに対す
る満足感が高く、選択的な意向がより強いと考えられます。
11
人間関係における親の位置付け
① 経済的や緊急時などの「物質的な面」で頼りになるのは両親。
②「精神的な面」で頼りになるは、友人や職場の人、恋人。
図表9 サポートを得られる人 (性別・複数回答)
精神面や経済面などの様々なサポートについて、自分の周りにいる誰から支援が得ら
れるかを聞いてました(図表9)。
その結果、「父親」や「母親」をあげた割合が最も高かったのは、「経済的に困ったと
きに頼れる人」であり、「病気などの緊急時に助けを求められる人」についても、他の
サポートに比べて比較的高くなりました。
このように、単身成人未婚者の多くが、経済面あるいは健康面で困難な状況に陥った
経済面あるいは健康面で困難な状況に陥った
場合にもっとも頼れる人として親を位置付けています。また、いずれのサポートについ
場合にもっとも頼れる人として親を位置付けています。
ても、「父親」より「母親」をあげる人が多いことがわかりました。
一方、「いっしょにいて楽しく時間を過ごせる人」、「能力や努力を評価してくれる
人」などについては、男性では「学校時代の友人」や「職場の人」、女性では「恋人」
や「職場の人」などが上位にあげられました。このように、精神面に関するサポートに
精神面に関するサポートに
関しては、相対的に親の位置付けが低くなっています。
12
研究員のコメント
近年、親と同居する未婚の若者のライフスタイルや親子関係が注目されています。昨
年は「パラサイト・シングル」という言葉も話題となり、親と同居する若者は、経済や
家事の面で親に依存しているという社会的批判も高まりました。
親と同居する若者のライフスタイルや親子関係が話題となった一方で、親と別居して
いる未婚の若者の生活実態についてはこれまであまり注目されてきませんでした。近年、
家族分野の研究においては、若年既婚者とその親との間で育児等をはじめとするさまざ
まな援助関係の実態があり、親子近居の傾向が強まっていることなどが指摘されていま
す。そこで、本研究では、若年単身未婚者のライフスタイルや親子関係に注目し、親と
の居住関係はどのようになっているのか、親との間でどのような援助関係があるのか、
さまざまな人間関係の中で親はどのように位置づけられているのか、などの点に関する
実態を探りました。
調査の結果、両親がいる回答者のうち、男性の 26.2%、女性の 33.0%が親と近居(親
の家までの所要時間が1時間以内)していました。親と近居している人では、男女とも
7割以上が月に1回以上の頻度で親元を訪れており、半数以上は居住地選定時に親の家
から近いことを考慮していました。また、親との援助関係をみると、全般に親から子へ
の援助の方が、子から親への援助より多く、食料品などの持ち帰りや送付、帰省時のこ
づかいや交通費などの形で援助を受けている者が多いことがわかりました。このような
援助は、男性より女性、30 代より 20 代、近居より遠居の者がより多く受けている傾向
にあります。
さらに、日常生活におけるサポート源をたずねた結果、「病気などの緊急時に助けを
求められる人」「経済的に困ったときに頼れる人」については、男女とも「母親」がも
っとも多くあげられました。単身成人未婚者にとって、健康面や経済面でのいざという
ときの頼り先として、母親は精神的に重要な位置づけを占めていると考えられます。
以上の結果から、単身成人未婚者とその親にも、別居交流型のライフスタイルや援助
関係がみられることがわかりました。ただし、親との居住・援助関係を若者の自立・非
自立の問題に結びつけるだけでなく、若者が親を頼らざるを得ない社会的・経済的状況
にも目を向ける姿勢が重要でしょう。
(研究員 北村 安樹子)
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