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わたしたちがうごくと、まちはもっと楽しくなる

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わたしたちがうごくと、まちはもっと楽しくなる
第 1 回講座
「講演-望月氏講演録」
わたしたちがうごくと、まちはもっと楽しくなる
大倉山つながり JAM 望月啓代
1. 30 代のママたちが考えていること
簡単に自己紹介をさせていただきますと、私には
夫と子どもが 3 人おります。小学校 1 年生と 4 歳と
2 歳の保育園に通っている子どもです。2 人目出産ま
生まれて 2 年、まだひよっこの活動です
先ほど“ミエル”が 3 周年という話がありました
では、普通にサラリーマンとして会社勤めをしてお
が、この“大倉山つながりジャム”はそれ以降に“ミ
りました。当時も大倉山に住んでいたのですが、幼
エル”の中から生まれているので、もう本当に 2 年
児 2 人を抱えて、会社のある銀座まで通うのが結構
くらいの活動です。メンバーも 15 名くらいの地域の
大変で退職をしました。
ママたちグループというのが現状でして、ハロウィ
ママたちのジレンマ
ンなどの地域のイベントの時に集まって手伝いをし
当時私は何を考えていたかなと思うと、もちろん
たり、月に一回“つながるサロン”を“ミエル”で
大倉山に住んでいて、地域に暮らしているけれども、
開いているというような活動になります。まだ本当
地域に全く興味がなかったと言いますか、興味がな
にひよっこの私たちが京都までおじゃまさせていた
いということにも気づいていなかったのだと思いま
だいて、仮に何かをお伝えできるとしたら、私たち
す。ましてやそこに面白さがあるということも考え
のような 30 代のママたち
ていないし、知らないことに罪悪感もないという状
が、何を考えていて、ど
態でした。仕事で都内に行っているけれども、自分
んなきっかけで、こうい
が参加したいようなワークショップは、平日の夜に
った活動に関わるように
あって、子どもがいると夜は大倉山に帰らなければ
なったのか、そこからど
ならない。土日も出にくいですから、
「面白いものは
のように広がっていった
都内にあって、自分は行けない」という、そんなフ
のかくらいが伝えられる
ラストレーションを結構感じていた時代だったなと
ことではないかと思いま
思います。ですからフルタイムで働いていて、地域
して、参りました。
で暮らしていても、幼稚園コミュニティとか保育園
3 人の子育て中のママです
コミュニティはあるものの、そこから地域にまで目
線が行っていないというお母さん達は、結構多いの
私自身は大学時代を京都で過ごしておりまして、
ではないかと思っています。
すごく京都が好きで、京都に行けるということで、
喜んで引き受けさせていただきました(笑)。
2. まちを歩いて
まちに目を向け始めたきっかけ
さて、退職後、私は細々とライターの仕事を始め
ました。その取材を通して、街を歩くなかで、
“大倉
山ミエル”さんともそうですが、色々な出会いがあ
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第 1 回講座
「講演-望月氏講演録」
りました。そこから地域の課題感みたいなものを感
ていないということと、当時私も子育てで手いっぱ
じていって、地域というものに目線が向いて行くよ
いで、自分のことばかり考えていたので、
「次の世代
うになったのだと思います。
のために」という目線自体にすごく驚きがありまし
ライターの仕事の中で、
“リトルママ”というサイ
た。そんな素敵な活動が日の目を見ていない残念さ
トがあって(今もやっています)
、子育て系の地域活
を感じていた時に、
“大倉山ミエル”さんとの取材を
動をたくさん取材する仕事があるんです。地域のマ
通しての出会いがありました。
マたちが主体となっているサークルもあれば、地域
3. “大倉山ミエル”との出会い
の子育て広場等、ありとあらゆる地域に密着した情
報を取材してくるという仕事です。取材をしている
と、すごく素敵な活動にたくさん出会うことになり
情報を発信したい人と地域で吸収したい人と
ました。
“大倉山ミエル”さんと出会った時も、正直まだ私
すごく素敵な活動なのに、知られていない…
の中には、
「面白いことって、都内にしかないんじゃ
たとえば、大倉山の地区センターで、ピアノの先
ないの」みたいな思いはありました。いかにもママ
生がわらべ唄を広めていくという活動を、サークル
向けではない、もっと知的好奇心をくすぐられるも
みたいな形でやっておられる。その先生は「親子の
のを求めて「都内に行きたい!」と思っていました。
愛着形成にはわらべ唄がすごく効果的だ」という思
ところが、
“ミエル”に出入りしてみると、退職した
いを持って、ご自身の子育ては終わっているにも関
大学教授や、高いスキルや知識のある人たちが出入
わらず、
「次の子どもたちに、どうしてもこの方法は
りをしていて、その人たちが「自分のこの知識をも
必要なのよ!」と、それは一生懸命取り組まれてい
っとみんなに伝えたい」と、どうも思ってくれてい
たわけです。ところが私が取材に行く日、
「望月さん、
る。身近でこんなに情報を発信したい人がいて、私
明日天気が悪そうで、もしかしたら子どもが一人も
たちみたいな「自分の地域で色んな情報が吸収でき
来ないかもしれないから、なんなら望月さんの子ど
るとすごくうれしい」と思っている人たちが出会え
もを連れて来て」と連絡がありました。どうやら集
るとしたら、なんて素敵なことだろうと、当時素直
客にすごく困っていらっしゃるようです。そこで私
に感じたんです。
の子どもと、近隣の子どもたちにも声かけをして、
4. “大倉山つながりジャム”のはじまり
一緒に出掛けて行きました。子どもたちはすごく喜
びましたし、ママたちからも「こんな素敵な活動が
あったのに、しかもこんなに家のすぐ近くでやって
いるのに、全然知らなかった…」という声があがっ
たんです。
“リトルママ”というサイト自体は、関東
の1都 3 県で展開しているので、地域密着と言えど
も、幅広いウェブサイトの情報発信という位置づけ
で、そういう活動自体、取材して情報発信している
のですが、なかなか地域の中の細かいところまで行
望月さん、やってみたら?
きわたっていないのが、現状なのです。
“大倉山つながりジャム”は、いきなり“つなが
「誰かのために」という目線に驚きを感じて…
りジャム”のワークショップをやるというところか
こんなすごく素敵な活動があるのに地域に知られ
ら始まりました。横浜市経済局さんから“ミエル”
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第 1 回講座
「講演-望月氏講演録」
言葉先行ではなく、自分たちが楽しむために
にお話があったのですが、
「やり方自由で、何をやっ
2011 年 1 月から活動を開始したんですが、当時、
てもいいけれど、ソーシャルビジネスやまちづくり
の輪を広げるみたいなことをしてください」という、
山崎亮さんが出ていらっしゃった頃で、ライフデザ
すごくざっくりした事業内容でした。
“ミエル”にそ
インとか、ソーシャルデザインとか、そういう言葉
んな話があった時に、鈴木さんが「望月さん、やっ
が流行っていて、かっこいいねみたいな感じではあ
てみたら?」みたいな軽い感じでバトンタッチされ
ったのですが、なかなか私たちがまちでソーシャル
たんです。
デザインを語るというのは、ちょっとピンとこない
若い世代に繋げるために任せていく
ところがあって、言葉先行ではなく、自分たちの中
私は今でもこのつなぎ方は大事だなと思っていま
から実感をもって生まれる言葉とか、生まれる活動
す。町内会の会議などに出席させていただくと、本
がいいよねというところで、
「私たちがうごくとまち
当に縦の社会で(横浜よりも京都は歴史が深いので、
はもっと楽しくなる」を合言葉に活動を始めました。
もしかしたら、よりそうなのかもしれませんが)、70
横浜は比較的子育てサービスが充実しているので
~80 才代のおじいさま、おじさまたちが一生懸命ま
すが、その一方でサービスが充実しているが故に、
ちのことを考えていらっしゃって、私たちのような
ママたちがわりと受け身になっている側面もありま
ひよっこに、なかなかバトンタッチしていくという
した。でも実際に、私たちが動いてみると、いろん
ことが難しいものです(私たちがあまりにもひよっ
な楽しさを体感できるし、ひいてはそれをまちに広
こすぎるというところもあるかもしれませんが)。で
げられるはず。ボランティアで「誰かのために云々
も鈴木さんは地域の担い手を広げていくという目線
…」ということではなく、自分たちの暮らしがもっ
を持っていて、「次世代に繋げるために任せていく」
と楽しくなるんじゃないかというメッセージでやっ
ということをやってくれたんだろうなという気がし
ていきたいと始まったのが“大倉山つながりジャム”
ています。
です。
そんなことを思っていたら、先日“ミエル”の 3
5. ワークショップで心がけたこと
周年イベントがあったのですが、他の誰かも鈴木さ
んに「じゃあ、それ、あなたがやりなさい」と、軽
く悪魔のように、微笑みながら伝えられて(笑)
、
「な
んとなく私がやることになりました」みたいな人が
たくさんいました。やっぱりそうやって適材適所を
見ながら、人にバトンタッチして任せていくことで、
輪が広がっているのではないかと。鈴木さんから声
をかけられた頃の私は、時々“ミエル”のイベント
を手伝っている人みたいな位置づけで、鈴木さん自
フィールドを活かしたい
身もそれほど私の事をご存じなわけではなく「元気
さて、この“大倉山つながりジャム”ワークショ
そうな人だな、一緒にやれそうだな」というところ
ップは 5 回連続講座として行いました。その参加者
で目を掛けてくれたんだと思うんです(笑)
。任され
というのが、私が一本釣りをして声をかけた人も多
た私たちも、お手伝いという感じではなく、主体的
く、何かの先生をやっているとか、わりと情報感度
に頑張っていくという位置づけになれたので、今に
の高い方たちだったんです。比較的、いろんな事を
繋がっているのかなという気はしています。
知っているし、講演会などに行く機会が結構あるら
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第 1 回講座
「講演-望月氏講演録」
しいママたちが、17 名参加してくれていました。決
合ったことが形になったことが、ママたちも手ごた
して座学が悪いと言っているわけではないのですが、
えを感じてくれ、
「自分たちがうごくと、まちが楽し
大倉山は商店会と連携しているところが非常に大き
くなるんだ」ということを実感できたワークショッ
いので、そこを存分に生かしたワークショップにし
プとして終われたのかなと思っています。
たいということを、まず考えました。
6. 楽しい!という実感を繋げる
ママたちのスキルの洗い出し
5 回連続講座なので、まずママたちのスキルの洗
い出しをしました。このママたちは、過去は普通の
「まちづくり」で声かけしても集まらない…
会社員として働いていた方なのですが、今は子育て
「このワークショップやります!」と言ってから、
をやっていたり、料理教室をやっているというママ
地域の子育て支援拠点が情報発信しているメルマガ
たちが多いので、まず場をあたためるということと、
に発信したり、チラシを一生懸命撒いたりしたんで
どんな人がいて、何ができるのか、スキルの洗い出
すが、なかなか参加者を集めることができませんで
しを付箋を使ってやっていくということを行いまし
した。本当に全然反応がないという状態で、17 名参
た。
加してくれたうちのほとんどが、私が地域の取材の
商店会の困りごととの掛け合わせ
中で出会ったママたちでした。ぶっちゃけ「望月さ
さらに、ともするとママたちが勝手に楽しくやっ
んに誘われたから来ました」という状態だったわけ
ているということで終わらせてはいけないので、商
です。
店会の抱えている課題も掛け合わせて自分たちの活
まちを知れば面白い!
動もできるよう、何をやるかを考えていきました。4
「まちづくり」や「地域」に、全然興味はないし、
回目には、商店会の会長さんをお招きして、実際に
「地域って、なに?」という状態のお母さんたちば
商店会の声を聞いてみました。悩みを聞きながら、
かりだったのですが、彼女たちもワークショップの
ママたちのスキルと掛け合わせることで、商店会の
中で、養蜂事業だけをとってみても、
「商店会の人が、
お困りごとや、なかなか着手できていないところを、
こんなに一生懸命、蜂を育てているなんて、びっく
自分たちも楽しく参加しながら、共に解決していく
り」みたいな単純な喜びから、
「実際に自分たちにも
というようなやり方ができるといいなという思いで
地域の中で活躍できる場があるんだ」という発見ま
やっていきました。
で、
「知れば面白い」ということを体感してくれたの
話し合ったことが形になる手ごたえ
だと思います。彼女たちは、今も一緒に活動をして
くれているコアメンバーになっています。
今のママたちの本音
私もそうだったように、別に悪気はないんですが、
ママたちは本当に地域のことを知らないんです。自
分がまちに興味や関心がないということも自覚して
いないんですけど、
「知れば面白い」というところが、
私を含め“大倉山つながりジャム”に参加してくれ
ワークショップの最後に、
“ぶんぶんカフェ”まで
たママたちの本音ではないかと思っています。
たどり着いたところが、後にもつながっているので
以後、
“大倉山つながりジャム”のワークショップ
はないかと思っています。やっぱり自分たちが話し
は、なるべくハロウィン等の大きなイベントの時に、
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第 1 回講座
「講演-望月氏講演録」
その楽しさの中から、新しいスタッフをつかまえ、
りません。大倉山に住んで、7~8 年くらいなのです
なるべく人を増やして巻き込んでいくることを意識
が、そうはいっても私の子どもたちは、大倉山で育
してやっています。
「まちづくりを一緒にしません
って、ここがふるさとになる場所になるであろうと、
か?」というダイレクトなメッセージでは、なかな
地域の中で子育てをしたいと強く思っています。今、
か引っかかってくれる人がいないものですから、そ
実際に私は 3 人子育てをしているのですが、すごく
ういった変化球でやっていくということを、意識し
地域の方にお世話になりながら子育てをしています。
てやっています。
うちも核家族なんですが、地域の中で子どもと一緒
に育ててもらっているという意識があるんです。で
7. “つながりジャム”から生まれたこと
すから、このメッセージを込めながら、
“まち普請事
業”というものを進めていきました。
“おへそ”の誕生
ワークショップの中で、
「大倉山にコ・ワーキング
スペースが欲しい」という意見がありました。そう
いった意見から「じゃあ横浜市に“まち普請事業”
という事業があるから、それにエントリーしてみた
ら」という鈴木さんの意見があって、
“おへそ”の開
設に向け、動きだしたという背景があります。です
新しい地縁 ―
から“つながりジャム”から、さらに活動の輪が広
性別も世代も超えて
また、もう1つ重要なキーワードとなっていたの
がってきているなという実感は持っています。
が“新しい地縁”という言葉です。この“まち普請
フリーペーパー“アイネット”の発行
また、
“アイネット”というフリーペーパーも、
“大
事業”は、鈴木さんと私と、もう一人、松江川さん
倉山つながりジャム”のメンバーが始めました。大
という 3 人で進めていたのですが、私と松江川さん
倉山の隣に綱島という駅があるのですが、このあた
は 30 才代で、鈴木さんはもうちょっと上なんですけ
りはおうちサロンを開いている先生が非常に多くて、
ど(笑)、地縁と言えば、もちろん町内会もあるし、
この“つながりジャム”のメンバーの中にも何人も
「今さらなんで地縁なの?」みたいな感じがあって、
いるものですから、
「共に口コミで集客ができるよう
ここは結構議論になりました。でも、私たちには地
な媒体があったらいいね」という話になりました。
縁がないんです。横浜に引っ越してきて、小学校に
これは年に一回“アイネット”というフリーペーパ
入るまでは、子ども会にも入れないし、地域で縁と
ーを発行するという動きとして始まっています。
言っても、全くありませんでした。そこに大倉山と
いう地域をベースに、鈴木さんと繋がったり、地域
8. ふるさとづくりと新しい地縁
の人と繋がったりするところに、新しさや面白さを
感じていたんです。今はインターネットもあるし、
同じ趣味嗜好の人と繋がるのは、すごく簡単で、集
子どもたちのふるさととしての大倉山
さらに今、
“まち普請事業”にエントリーをしてい
まりやすいなという実感は、皆さんもおありだと思
ます。これは「大倉山をわたしたちのふるさとに」
うのですが、逆にそこにも同じような人たちばかり
というメッセージを込めて、プレゼンテーションに
が集まる行き詰まりみたいなものがあって、私たち
臨みました。私自身が静岡出身で、横浜出身ではあ
もママばっかりで集まると、やっぱりある程度のと
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第 1 回講座
「講演-望月氏講演録」
ころまでしかいかないという実感があるんです。そ
れを地域でくくってみると、もっと広く、もっとお
もしろい人たちと繋がれて、新しい何かが起こるん
じゃないかという期待感を、私たちはこの“つなが
りジャム”などの活動を通して、感じてきたわけで
す。
“地縁”という言葉にどこか違和感を持ちつつも、
最終的には「30 才代のママたちはそう考えるんだ」
というところで、周りの年上の方たちも納得しくだ
さって、
「新しい地縁を大倉山でつくるんだ」という
メッセージを込めながら活動をしています。
今日は女子力がテーマなんですが、女子力だけで
もいけないなという実感はすごくあります。そこを
使いつつも、世代を超えて、性別を超えて、何かを
一緒にやっていくという面白さをつくることができ
るのが地域なのではないかと、私は今、感じていて、
これからも活動を続けていきたいと思っています。
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