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六本木一丁目西地区 - 再開発コーディネーター協会

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六本木一丁目西地区 - 再開発コーディネーター協会
●開かれたまちづくり
泉ガーデンの誕生
六本木一丁目西地区
第一種市街地再開発事業
株式会社日建設計 名古屋 業務部長 横山 寛
東京 計画主管 川原伸朗
はじめに
「泉ガーデン」の歴史は昭和46年(1971年)に
東京都が行った「再開発適地調査」までさかのぼ
ることができます。昭和62年(1986年)に、当地
区内で「再開発協議会」が発足して以来、地元地
権者・行政・デベロッパーの「三者」が協力して
再開発事業を推進してきました。そして16年後の
平成14年(2002年)7月4日、施設建築物の工事
完了公告に至りました。ここでは、泉ガーデンの
まちづくりのポイントをご紹介します。
1.地区の位置と従前の状況
再開発適地調査に取り上げられた大街区(外堀
通り・六本木通り・外苑東通り・桜田通りなどの
幹線道路で囲まれた一帯。約75ha)は、霞ヶ関に
接する位置にあり外国大使館が数多く見られると
ころです。江戸期には武家屋敷があり、尾根部を
港区における泉ガーデンの位置
中心に明治以降近年まで大邸宅街でした。また、
れば幹線道路沿いを中心に、無秩序な中小ビル開
地形が入り組んでおり起伏(高低差約15∼20m)
発が行われる恐れがありました。
が大きいため、道路は連続性に乏しく脆弱、狭隘
であることから、業務地としての開発が進んでい
ませんでした。そのため都心としてはまれな樹木
当地区の都市計画を定める前段で、港区が「基
や植栽が屋敷庭園内に残り、緑が多く閑静な環境
本計画」を策定したのは、平成2年(1991年)3
が見られました。
月のことです。その頃はいわゆる右肩上がりの経
一方、幹線道路側の傾斜地や段状地には、老朽
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2.公共への貢献――まちづくりのポイント
済で、地価や建設物価は高騰し続けていました。
化した木造密集家屋が多く見られ、防災性や居住
東京都においては「成長管理論」の中で、都心の
環境の面から問題があると同時に、これを放置す
業務立地を抑制し住宅立地を促進する考え方が強
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くなりました。単に空地や住宅を整備して、その
このようにして地上部はできるだけ緑豊かな空
見返りとして高い容積率を確保し超高層ビルを建
間として開放し、公園のような空間をつくること
てる、というスキームでは都市計画協議が進まな
によって、当地区及び周辺環境の質の向上に貢献
い厳しい状況でした。これに対し当地区では、次
することを目指しました。
の3つのポイントで「開かれたまちづくり」を行
うことにより、公共への貢献度を高める工夫をし
(2)地下鉄駅と一体になった広場の整備
第2のポイントは、地下鉄駅との連携です。営
ました。
団地下鉄南北線六本木一丁目駅の改札口を出る
(1)緑と文化の街区整備
と、そこは泉ガーデンタワーの1階です。ガラス
まず第1のポイントは、屋敷庭園の保全と活用
で覆われた駅のコンコースは、光があふれる快適
です。従前、当地区内には住友家の系譜として
な空間になっています。そこが道路の下であるに
「住友会館」という迎賓館があり、江戸期から続く
もかかわらず、乗降客は地下鉄の駅が地上に造ら
緑豊かな庭園を残していました。庭園の樹木は都
れたかのような錯覚を覚えます。超高層建物その
心部に残された貴重な小自然です。しかし、屋敷
ものをピロティ状に持ち上げることによって、通
庭園であるため一般の人が楽しめるものではあり
常ならば地下で暗い空間になる広場を地上に開放
ませんでした。
した明るい空間に整備したのです。
そこで、新設する区道と尾根道との間の街区
もともと新しい地下鉄路線と駅舎は、当地区の
(スペイン大使館やスウェーデン大使館に隣接した
再開発事業より先に当地区の前面道路である放射
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約6,000m のA街区)を「緑と文化の街区」とし、
1号線の下に都市計画決定されており、地下鉄そ
旧住友会館の庭園を保存活用した「緑地」(約
のものは平成12年9月に開業しました。しかし、
2,000m2)を設けると同時に、地上1階地下1階建
地下鉄駅舎の外郭線が再開発側の宅地に入り込ん
ての美術館(泉屋博古館分館)を建設しました。
で都市計画決定されていたため、地下鉄整備と再
さらに、緑地の下には展示ギャラリーを設けて文
開発事業との連携は必然でした。
化機能を高めるようにしました。
六本木周辺の大街区の開発動向
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そのため地下鉄駅に直接接続する広場及び駅施
設の一部を再開発側で整備することを都市計画に
約する高密度なB街区(容積率1000%)を共存さ
せることができました。
盛り込むと同時に、営団側が整備する駅舎の形状
を再開発側の広場や施設建築物に接続しやすいよ
うに、営団側で変更していただけることになりま
おわりに
再開発の真価は、実際に施設建築物や公共施設
が稼動してから定まっていくものだと思います。
した。
この構想を実現するまでには、両事業の時期的
泉ガーデンがこの最悪の経済環境を乗り越えて、
な調整、財産区分、管理区分に関する数多くの協
地権者、行政、デベロッパー、さらにはこの新し
定や覚書を積み重ねました。幾度かの挫折や難問
いまちにかかわりを持つすべての人々に「質の高
への取り組みを続け、協議を整え当初計画どおり
いまちづくり」と評価されることにより、地区の
に地下鉄駅と広場を接続することができました。
特質や条件を生かしたまちづくりや再開発が、広
く周辺にも展開されていくことを願っています。
(3)歩行者通路の整備
第3のポイントは、「都市のにぎわい」と「都
市の小自然」をつなぐ歩行者通路の整備です。こ
れは地下鉄駅と尾根側の「緑と文化の街区」を結
び、「広場」や「緑地」との一体性を確保しなが
ら、広がりのある歩行者空間としています。高低
差を解消する上下方向のエスカレーターを設置す
るとともに、緑化を行い歩行の快適性を確保して
います。広場に面した各階には特色のある店舗群
が顔を見せ、都市的な利便性やにぎわいづくりを
図っています。
この歩行者通路は、桜田通りの営団地下鉄神谷
町に至る歩行者通路に接続しているほか、六本木
一丁目駅の自由通路を経由して六本木駅方面へ通
じるなど、周辺の歩行者ネットワークにつながっ
ています。
3.再開発地区計画の活用
上記の公共への貢献内容は、平成5年(1993年)
に開始した環境アセスメント手続きの後、「再開
発地区計画」として平成6年(1994年)4月に都
市計画決定されました。計画案を作成した当時は、
再開発地区計画が創設されてまだ日が浅く、細か
な運用基準も定められていませんでした。しかし、
この新制度を活用することにより、緑地、広場、
歩行者通路を「宅地内の公共施設」として位置づ
けて計画決定することができました。
さらには、街区ごとにメリハリのある容積配分
を行うことにより、あたかも公園のようなA街区
(容積率50%)と、超高層の業務棟と住宅棟を集
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■事業計画概要
所 在 地
施 行 者
都 市 名
地 区 面 積
事 業 の 経 緯
東京都港区六本木一丁目5番1、2、3号、6番1号
六本木一丁目西地区市街地再開発組合
東京都 1,219万人(平成14年1月)
3.2ha
都市計画決定:平成 6 年 4 月
事業計画決定:平成 7 年 9 月
権利変換計画認可:平成10年 4 月
工事完了公告:平成14年 7 月
事 業 概 要 用 途:事務所、住宅、店舗、ホテル、美術館、駐車場
建築面積:約11,990m2
建ぺい率:50%
延べ床面積:約208,400m2
容 積 率:753%
構造階数:泉ガーデンタワー
RC、
SSRC造 地上43階/地下4階
泉ガーデンウイング
SSRC造 地上6階/地下2階
泉ガーデンレジデンス
SSRC造 地上32階/地下2階
泉ガーデンギャラリー
RC造 地下2階
泉屋博古館分館
RC造 地上1階/地下1階
事 業 費:86,410百万円
土 地 利 用 (単位:m2)
従 前
従 後
公共用地
4,867
7,718
宅 地
26,928
24,077
権 利 者 数
権利者数:従前85件(都市計画決定時)/従後
53件(明渡し時)
(参加組合員0件)
権利変換方式
111条型
事 業 関 係 者
基本計画:㈱日建設計
コーディネーター
事業計画:㈱日建設計
(コンサルタント) 権利変換:㈱日建設計
補 償:㈱佐藤不動産鑑定コンサルティング
鑑 定:㈱佐藤不動産鑑定コンサルティング
税務・会計:大野木公認会計士事務所
測量・地盤調査:㈱日建設計シビル
建 築 設 計
基本設計:㈱日建設計
実施設計:㈱日建設計
施 工
泉ガーデンタワー/泉ガーデンウイング/
道路、児童遊園/清水・浅沼・鹿島・竹中・住友
鴻池特定建設工事共同企業体
泉ガーデンレジデンス/住友・浅沼特定建設工事
共同企業体
泉ガーデンギャラリー/泉屋博古館分館/住友・銭
高・大成特定建設工事共同企業体
デベロッパー等
住友不動産㈱、森ビル㈱
核 テ ナ ン ト
住友不動産㈱(サブリース)
管 理 会 社
泉ガーデンマネージメント㈱
ビ ル 愛 称
泉ガーデン
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