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ソロモンの知恵

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ソロモンの知恵
レビ族の嗣業
旧約単篇
列王記の福音
ソロモンの知恵
列王記上 3 章,4 章,10 章,11 章
ソロモンの治世について、前回は 2 章の末尾まで読み進んだのですが、今
日の箇所は偉大なソロモンの知恵とその知恵がどこから来たか、その源、さ
らに誰も及ばなかったその知恵にも限界と泣き所があったことを学びます。
3 章の初めの 5 行は、エルサレムで輝かしい事業を始めたばかりの頃の、
ソロモンの天にも昇る勢いを描いています。ダビデの町というのは、エルサ
レムが都市計画や神殿造営で拡張される以前の旧市街、ダビデから受け継い
だ形の下町という感じでしょう。
1.ソロモンは、エジプトの王ファラオの婿となった。彼はファラオの娘を
王妃としてダビデの町に迎え入れ、宮殿、神殿、エルサレムを囲む城壁の造
営が終わるのを待った。2.当時はまだ主の御名のために神殿が建てられてい
なかったので、民は聖なる高台でいけにえをささげていた。
エジプト王の娘を妻に迎えたのは、政治的に有利というような配慮もあっ
たのでしょう。エジプト王ファラオの方でも、新しい勢いにのるソロモンを
婿殿にしておくということは、都合が良かったわけで、いわば家康と正宗の
関係のようなものでしょう。不思議なのは、列王記の記者が、ここで異教徒
の国から王妃を迎えたソロモンに、あまり批判的ではない書き方をしている
点で、11 章などの響きとはちょっと違います。恐らくこのくだりは、王宮の
公文書などを資料に、そのまま、あまり手を加えずに描いているのでしょう。
しかし、列王記の編者も決して目をつむって黙しているわけではく、徐々に
コメントと信仰的な評価を出してきます。さしあたり 3 章冒頭では事実だけ
を、静かに抑えて述べているということでしょう。
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さて、ソロモンがその驚くべき英知をどこから得たかは、次のギブオンの
祭壇で礼拝を捧げたときの夢の話に出てきます。恐らく丸一日の祭事で疲れ
て眠っていたソロモンに、この啓示が来たのでしょう。
3.ソロモンは主を愛し、父ダビデの授けた掟に従って歩んだが、彼も聖な
る高台でいけにえをささげ、香をたいていた。 4.王はいけにえをささげるた
めにギブオンへ行った。そこに重要な聖なる高台があったからである。ソロ
モンはその祭壇に一千頭もの焼き尽くす献げ物をささげた。 5.その夜、主は
ギブオンでソロモンの夢枕に立ち、「何事でも願うがよい。あなたに与えよ
う」と言われた。 6.ソロモンは答えた。「あなたの僕、わたしの父ダビデは
忠実に、憐れみ深く正しい心をもって御前を歩んだので、あなたは父に豊か
な慈しみをお示しになりました。またあなたはその豊かな慈しみを絶やすこ
となくお示しになって、今日、その王座につく子を父に与えられました。 7.
わが神、主よ、あなたは父ダビデに代わる王として、この僕をお立てになり
ました。しかし、わたしは取るに足らない若者で、どのようにふるまうべき
かを知りません。 8.僕はあなたのお選びになった民の中にいますが、その民
は多く、数えることも調べることもできないほどです。 9.どうか、あなたの
民を正しく裁き、善と悪を判断することができるように、この僕に聞き分け
る心をお与えください。そうでなければ、この数多いあなたの民を裁くこと
が、誰にできましょう。」 10.主はソロモンのこの願いをお喜びになった。
ソロモンがここで、凡庸な王が求めるような富とか長寿とか、自分を脅か
す敵の滅亡とかを求めず、民の王として正しく治める知恵、善悪をわきまえ
る心を謙虚に求めたという点に、列王記はソロモンの偉大さを見ているわけ
です。日曜学校でしたら「ソロモン大王は偉いね」と手放しで感激して終わ
りです。しかし、いつも申し上げる通り、聖書の人間観、人間描写というも
のは、そういう聖なる知恵のことも絶対化しないで、醒めつつ眺めていると
いうことです。ともあれ、主はソロモンの願いをお喜びになって、彼が求め
た以上の宝を彼に与えたというところで、この神聖な夢の記事は終わります。
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11.神はこう言われた。「あなたは自分のために長寿を求めず、富を求めず、
また敵の命も求めることなく、訴えを正しく聞き分ける知恵を求めた。 12.
見よ、わたしはあなたの言葉に従って、今あなたに知恵に満ちた賢明な心を
与える。あなたの先にも後にもあなたに並ぶ者はいない。13.わたしはまた、
あなたの求めなかったもの、富と栄光も与える。生涯にわたってあなたと肩
を並べうる王は一人もいない。 14.もしあなたが父ダビデの歩んだように、
わたしの掟と戒めを守って、わたしの道を歩むなら、あなたに長寿をも恵も
う。」 15.ソロモンは目を覚まして、それが夢だと知った。ソロモンはエル
サレムに帰り、主の契約の箱の前に立って、焼き尽くす献げ物と和解の献げ
物をささげ、家臣のすべてを招いて宴を張った。
そのソロモンの校正な裁きの知恵の例として、二人の女が生き残った赤ん
坊を取り合って訴え出た物語が出ております。(16 節以下)二人の遊女とい
いますから、決して褒められるような女性ではないにしても、自分の生んだ
赤ん坊への愛着はあった。よくある窒息死で、母親の不注意による事故です
が、子供を死なせたほうの女が生き残った子供を自分のだと主張して裁判に
なった。これは大岡越前の判例にも似たものがあったようにも記憶します。
中近東の古代の判例集にも、他に例がないわけではありません。ただ、ソロ
モンも親の真情だけは見通す、鋭い洞察力を持っていたのです。
23.王は言った。「『生きているのがわたしの子で、死んだのはあなたの子
だ』と一人が言えば、もう一人は、『いいえ、死んだのはあなたの子で、生
きているのがわたしの子だ』と言う。」 24.そして王は、「剣を持って来る
ように」と命じた。王の前に剣が持って来られると、 25.王は命じた。「生
きている子を二つに裂き、一人に半分を、もう一人に他の半分を与えよ。」26.
生きている子の母親は、その子を哀れに思うあまり、「王様、お願いです。
この子を生かしたままこの人にあげてください。この子を絶対に殺さないで
ください」と言った。しかし、もう一人の女は、「この子をわたしのものに
も、この人のものにもしないで、裂いて分けてください」と言った。 27.王
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はそれに答えて宣言した。「この子を生かしたまま、さきの女に与えよ。こ
の子を殺してはならない。その女がこの子の母である。」 28.王の下した裁
きを聞いて、イスラエルの人々は皆、王を畏れ敬うようになった。神の知恵
が王のうちにあって、正しい裁きを行うのを見たからである。
もちろん、聖なる神から知恵を受けたという信仰がない国でも、似たよう
な閃きは世界各地に見られるわけですが、私たち日本人が読んで、ある意味
で平凡というか、月並みな判例を『神より与えられた知恵の豊かさを見よ』
と書いてあるのをどう思いますか? 私自身はそこに、かえって、そんな人間
の情と知恵で判断がつくようなことも、決して「見よソロモンの偉大なる知
恵を」と書かないで、これは祈って神から授かった賜物として目を上に向け
ているところが、ソロモンのソロモンたるゆえん、聖書記者の聖書記者たる
ゆえんだと思います。もちろん、神から受けたとはいえ、それは人間のカシ
コさ、たかが肉の知恵であることには変わりがないわけで、ソロモンも結局
その知恵のシワヨセ「カシコ税」みたいなものを後で払うことになります。
輝く知恵を持ちながら聖書の中の人物は、決して英雄ではないのです。
この後、4 章初めには、ソロモン政権の内閣の閣僚名簿みたいなものがあ
りますし、7 節から 19 節は、イスラエルの全地に十二人の代官を置いた地方
行政システム、27 節以下は参勤交代ではありませんが、十二の県が月割り当
番制で王宮の食料と戦車の燃料を補給した様子が記されます。戦車の燃料と
いいましても、ペルシャ湾から護衛つきで運んでくるのものではなく、28 節
からわかるように、長い顔をしたエンジンが消費するものです。9 章などを
見ると、正宗の何倍かの造船事業もやっています。
4 章の 20-5 章 6 節は、山上の説教で主が言われた「栄華をきわめた時の
ソロモンでさえ」というあのソロモン王朝の繁栄がどのようにしてピークに
達していくかが描かれています。
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4:20.ユダとイスラエルの人々は海辺の砂のように数が多かった。彼らは飲
み食いして楽しんでいた。
5:1.ソロモンは、ユーフラテス川からペリシテ人の地方、更にエジプトと
の国境に至るまで、すべての国を支配した。国々はソロモンの在世中、貢ぎ
物を納めて彼に服従した。 2.ソロモンの得た食糧は、日に上等の小麦粉三十
コル、小麦粉六十コル、 3.肥えた牛十頭、牧場で飼育した牛二十頭、羊百匹
であり、その他、鹿、かもしか、子鹿、肥えた家禽もあった。 4.ソロモンは
ティフサからガザに至るユーフラテス西方の全域とユーフラテス西方の王侯
をすべて支配下に置き、国境はどこを見回しても平和であった。 5.ソロモン
の在世中、ユダとイスラエルの人々は、ダンからベエル・シェバに至るまで、
どこでもそれぞれ自分のぶどうの木の下、いちじくの木の下で安らかに暮ら
した。 6.ソロモンは戦車用の馬の厩舎四万と騎兵一万二千を持っていた。
5 章 9 節以下は、哲学者、文学者としてのソロモン、科学者、芸術愛好家
としてのソロモンを描いているわけですが、今日流に言うなら文化人、知識
人の極です。これほど恵まれた人は当時いなかった証拠に、名声は海外にま
でおよび、「エルサレムにソロモンあり」というわけで、みんな見に来た。
列王記はこれも神の栄光の輝きと見ています。ただ、芸術や学問に通じるこ
とも文筆家としての冴えも、結局すべては空しいというのが伝道の書の思想
です。
9.神はソロモンに非常に豊かな知恵と洞察力と海辺の砂浜のような広い
心をお授けになった。 10.ソロモンの知恵は東方のどの人の知恵にも、エジ
プトのいかなる知恵にもまさった。 11.彼はエズラ人エタン、マホルの子ら
であるヘマン、カルコル、ダルダをしのぐ、最も知恵ある者であり、その名
は周りのすべての国々に知れ渡った。 12.彼の語った格言は三千、歌は千五
首に達した。 13.彼が樹木について論じれば、レバノン杉から石垣に生える
ヒソプにまで及んだ。彼はまた、獣類、鳥類、爬虫類、魚類についても論じ
た。 14.あらゆる国の民が、ソロモンの知恵をうわさに聞いた全世界の王侯
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のもとから送られて来て、その知恵に耳を傾けた。
この話の直接のつながりとしては、10 章初めのシバの女王来訪の記事へつ
ながっています。
10:1.シェバの女王は主の御名によるソロモンの名声を聞き、難問をもって
彼を試そうとしてやって来た。 2.彼女は極めて大勢の随員を伴い、香料、非
常に多くの金、宝石をらくだに積んでエルサレムに来た。ソロモンのところ
に来ると、彼女はあらかじめ考えておいたすべての質問を浴びせたが、 3.
ソロモンはそのすべてに解答を与えた。王に分からない事、答えられない事
は何一つなかった。 4.シェバの女王は、ソロモンの知恵と彼の建てた宮殿を
目の当たりにし、 5.また食卓の料理、居並ぶ彼の家臣、丁重にもてなす給仕
たちとその装い、献酌官、それに王が主の神殿でささげる焼き尽くす献げ物
を見て、息も止まるような思いであった。 6.女王は王に言った。「わたしが
国で、あなたの御事績とあなたのお知恵について聞いていたことは、本当の
ことでした。 7.わたしは、ここに来て、自分の目で見るまでは、そのことを
信じてはいませんでした。しかし、わたしに知らされていたことはその半分
にも及ばず、お知恵と富はうわさに聞いていたことをはるかに超えています。
8.あなたの臣民はなんと幸せなことでしょう。いつもあなたの前に立ってあ
なたのお知恵に接している家臣たちはなんと幸せなことでしょう。9.あなた
をイスラエルの王位につけることをお望みになったあなたの神、主はたたえ
られますように。主はとこしえにイスラエルを愛し、あなたを王とし、公正
と正義を行わせられるからです。」 10.彼女は金百二十キカル、非常に多く
の香料、宝石を王に贈ったが、このシェバの女王がソロモン王に贈ったほど
多くの香料は二度と入って来なかった。……
13.ソロモン王は、シェバの女王に対し、豊かに富んだ王にふさわしい贈り
物をしたほかに、女王が願うものは何でも望みのままに与えた。こうして女
王とその一行は故国に向かって帰って行った。
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本当は飛ばした部分に、建築事業家としてのソロモン王、特にエルサレム
に主の神殿を建立した世紀の大事業が含まれますが、そのソロモン神殿が果
たして主の意志であったか、などソロモン神殿の矛盾のテーマは、聖書学院
での「黒雲と棹」で講じましたので、ここではソロモンの献堂式の祈りの中
の本当に優れた部分、ソロモンの霊的な鋭さのキラッと輝いている部分だけ
を読みます。
8:27.神は果たして地上にお住まいになるでしょうか。天も、天の天もあな
たをお納めすることができません。わたしが建てたこの神殿など、なおふさ
わしくありません。 28.わが神、主よ、ただ僕の祈りと願いを顧みて、今日
僕が御前にささげる叫びと祈りを聞き届けてください。 29.そして、夜も昼
もこの神殿に、この所に御目を注いでください。ここはあなたが、『わたし
の名をとどめる』と仰せになった所です。この所に向かって僕がささげる祈
りを聞き届けてください。 30.僕とあなたの民イスラエルがこの所に向かっ
て祈り求める願いを聞き届けてください。どうか、あなたのお住まいである
天にいまして耳を傾け、聞き届けて、罪を赦してください。
こういう言葉を読みますと、使徒言行録のステファノの演説は、ソロモン
に対して辛すぎるのかなと思ったりします。もちろんステファノはソロモン
がこういうすばらしい信仰を持っていなかったと言ったのではなくて、彼の
父のダビデが幕屋のままで新しい材料を使って改築しようとしたのを、基礎
をすえた壮大な神殿にした結果、後に続く人たちの信仰を誤らせてしまった
というのです。その意味でソロモンは、やはり形骸化した神殿の創立責任者
ということになります。しかし、こういう言葉を読むと、ソロモンの偉大さ、
ソロモンの知恵だけてはなく、信仰の人ソロモンの横顔を見る思いがいたし
ます。この人は前回にも見たように、多くの矛盾を含んだ人です。
このソロモンの矛盾と泣き所をモロに出しているのは、11 章初めのところ
です。ソロモンの私生活―これはもはや家庭生活というより、江戸城大奥
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顔負けのハーレムです。それでもソロモン自身の知恵と指導力が女たちを黙
らせて、ソロモンの霊的方針に服させている間はまだ、ソロモンの信仰の方
向づけは大きな間違いは犯さなかったのでしょう。それとも、どうなのでし
ょうか? 信仰の生き方、神に服する生き方というものの中に、こういうもの
が入る余地があるのでしょうか?
11:1.ソロモン王はファラオの娘のほかにもモアブ人、アンモン人、エドム
人、シドン人、ヘト人など多くの外国の女を愛した。 2.これらの諸国の民に
ついては、主がかつてイスラエルの人々に、「あなたたちは彼らの中に入っ
て行ってはならない。彼らをあなたたちの中に入れてはならない。彼らは必
ずあなたたちの心を迷わせ、彼らの神々に向かわせる」と仰せになったが、
ソロモンは彼女たちを愛してそのとりことなった。 3.彼には妻たち、すなわ
ち七百人の王妃と三百人の側室がいた。この妻たちが彼の心を迷わせた。
確かに列王記の記者の見方は、もしソロモンが外国人の女性とその宗教を
持ち込まなかったら、こういう生き方も信仰者の生き方として許され得た、
とでも言わんばかりですが……聖書の歴史を記した人自身、編集した聖なる
人たち自身が、わかっていなかったというか、何百年もかかって目を開かれ
て清められていく必要があったのでしょう。もちろん、アブラハムもダビテ
も含めてですが、その信仰の代表選手のような人々を描きながら、こういう
ものに疑問を感じなかった聖なる著作者たちも、まだまだ、先ほどは数百年
といいましたが、千年もかけて考えの切り替えを迫られるのですが、ここで
は差し当たりソロモンが主なる神への純粋な信仰を失わずに、ダビデのよう
にハーレムを完全に掌握していたら、妻たち妾たちにヤハヴェを拝ましてい
たら許されたのだが……みたいな書き方をしているように私には見えます。
ひょっとすると、これは聖書の最大の皮肉なのかも知れません。
11:4.ソロモンが老境に入ったとき、彼女たちは王の心を迷わせ、他の神々
に向かわせた。こうして彼の心は、父ダビデの心とは異なり、自分の神、主
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と一つではなかった。 5.ソロモンは、シドン人の女神アシュトレト、アンモ
ン人の憎むべき神ミルコムに従った。6.ソロモンは主の目に悪とされること
を行い、父ダビデのようには主に従い通さなかった。 7.そのころ、ソロモン
は、モアブ人の憎むべき神ケモシュのために、エルサレムの東の山に聖なる
高台を築いた。アンモン人の憎むべき神モレクのためにもそうした。8.また、
外国生まれの妻たちすべてのためにも同様に行ったので、彼女らは、自分た
ちの神々に香をたき、いけにえをささげた。 9.ソロモンの心は迷い、イスラ
エルの神、主から離れたので、主は彼に対してお怒りになった。……
女神アシュトレトは神殿での売春を含む頽廃的な祭儀で知られ、ケモシュ
とモレク、特にモレクは幼児を人身御供にして、生きたまま焼いて捧げる残
虐な礼拝で知られます。ソロモンは「私の信仰がしっかりしている限り、私
の知恵が鈍らぬ限り、私の知恵でこういうものは抑えておける」という自信
があったのでしょう。
「知者たちを、その悪知恵によって捕らえる主」はヨブ記(5:13)、「主
は知者たちの論議の空しいことを知り抜いておられる」は詩篇(143:2)で
すが、使徒パウロは第1コリント書(3:19,20)に引用して嘆息します。
信仰の人ダビデの家が、数人の妻と何人もの妾たちで崩壊するわけですか
ら、それをソロモンは知っていた。少なくとも王子たちは互いに殺しあって、
最終的にはダビデが部下から奪った女に産ませた第二子があとを継ぎます。
そのソロモンが、ダビテも及ばぬ知恵を祈って与えられ、その天与の知恵、
史上最大の知恵、海の彼方から王者が礼物を持って取材に来たほどの知恵の
テイタラクがこれなのです。
私たちは、更に 12 章以下に、ソロモン王国の分裂の悲劇を見るのですが、
これは次回に読むこととして、神を仰ぐ人間の倫理の基礎にある、清い家庭、
一人の男と一人の女の真実というものが、実はイエス・キリストが来られて
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初めて、神の愛が示されて初めて可能になったことを、第1ヨハネの手紙と
第1コリント書から読んで結びます。
3:1.御父がどれほどわたしたちを愛してくださるか、考えなさい。それは、
わたしたちが神の子と呼ばれるほどで、事実また、そのとおりです。世がわ
たしたちを知らないのは、御父を知らなかったからです。 2.愛する者たち、
わたしたちは、今既に神の子ですが、自分がどのようになるかは、まだ示さ
れていません。しかし、御子が現れるとき、御子に似た者となるということ
を知っています。なぜなら、そのとき御子をありのままに見るからです。 3.
御子にこの望みをかけている人は皆、御子が清いように、自分を清めます。
(1ヨハネ,3:1-3)
1:30 神によってあなたがたはキリスト・イエスに結ばれ、このキリストは、
わたしたちにとって神の知恵となり、義と聖と贖いとなられたのです。
(1コリント 1:30)
私たち平凡人に与えられている知恵は、大したことはない、知れていると
いえばそうも言えますが、本当は大ソロモンが祈って与えられた超人的な知
恵を凌駕する。というようなことは考えたことがありますか? 私たちはそれ
を イエス・キリストに負うのです。
(1987/10/25)
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