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電通グループの成長戦略 10

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電通グループの成長戦略 10
電通グループの成長戦略
10
経営環境の変化と基本的な経営方針
現在、当社グループの経営環境は、高度化するクライアント・ニーズ、国内広告市場の成長鈍化、非マスメディアの構成比の拡大、クライアント
の海外展開の加速、デジタルやテクノロジーなど新たな業種による広告事業への参入等、大きな変化にさらされています。これらの状況を踏ま
え、成長を続けるためにはこのような変化に対応し、事業を新たな成長モデルに転換していかなければなりません。そのためには、
「ソリューショ
ン」
「デジタル」
「グローバル」
の3点が鍵になると考えます。
今後の広告業界においては、いかにして「真のソリューション」をクライアントへ提供できるのかが一層重要となり、クライアントの課題をより
深く理解し、創造性にあふれる解決策をプランニングし、確実に実行する力が、ますます求められていきます。特に、プランニングにおいては、
デジタル化がメディアや生活者に与えている影響を踏まえ、マス4 媒体に加えて、インタラクティブ・メディアやクリエーティブ、コンテンツなど
が一体となったクロスメディア・サービスを必要に応じて提供していくことが重要になります。
このような状況のもと、当社グループは今後もデジタル領域における競争力を強化し、市場シェアの拡大を図っていく所存です。また、テクノロ
ジーへの積極的な投資を行い、電通の強みを活かした事業開発に取り組んでいきます。
一方、当社クライアントは、海外への事業展開を加速させており、それに沿った対応を急がなくてはなりません。特に、BRICsを中心とした成
長市場における拠点の拡充を重点的に進めていきます。海外市場においても、国内と同等のクオリティを提供することができる
「ソリューション
提案力」
を持つことが、これからの成長のためには不可欠です。
11
経営資源の再配分
企業価値の向上
また、これらの戦略を実現するために、経営資源の再配分が必要にな
●経営指標のガイドライン
ります。
以下 3つの経営指標を掲げ、早期に達成できるよう、努力していきた
まず、メディアの多様化やクライアント・ニーズの高度化に対応し、事
いと考えます。
業成長を図るために、当社グループ全体視点で考えた人材の採用・
・利益成長性:連結営業利益年成長率5%以上
育成、間接部門のスリム化などを通して、成長領域、重点領域へ人材
・収益性:連結オペレーティング・マージン20%
のシフトを行い、グループ内で適正な人材配置を行います。
・資本効率:連結ROE 8%
同時に、必要なコストと削減可能なコストを抜本的に見直し、より柔
●オーガニック・ベースの計画値(2010年度)
軟なコスト構造を構築していきます。
当社グループを
「新たな成長モデル」
へと変革させていく途上の目安と
そして、年間 300∼400 億円のフリー・キャッシュ・フローは、デジタ
なる、3 年後の計画値については以下のとおりです。
ル、グローバルなどの成長領域への投資へ充て、クライアントサービ
スの強化や新たな収益源の開拓に結び付けていきます。
この数値は、今後日本の広告市場が年1∼2%程度成長するとした場
合のオーガニック成長をベースに想定したものです。クライアントに提
供するサービスの中で、
マス媒体をベースに、
デジタル領域やプロモー
ション領域におけるサービスが拡大していくこと、さらに、グローバル
事業の拡大が当社グループの成長を牽引していくと見ています。
経済環境の不透明感が強まりつつある状況下ですが、成長戦略と柔
軟なコスト構造の構築により、この計画値を上回る売上、利益の創出
を目指していきたいと思います。
経営資源の再配分
オーガニック・ベースの計画値(2010 年度)
●成長領域、重点領域への人材のシフト
人材の適正配置
売上高
売上総利益
営業利益
オペレーティング・
マージン
2 兆 575 億円
3,452億円
561億円
16.3%
2 兆 2,250 億円 3,720 億円
700億円
18%以上
●間接部門のスリム化
● グループ全体での人材の採用、育成
2007年度実績
● コスト構造の抜本的な見直しに着手
コスト構造の改革
●より柔軟なコスト構造の構築
● 生産性の向上に資する投資の推進
2010 年度
(オーガニック・ベース)
●デジタル、グローバルなど
成長領域への投資
成長領域への積極投資
●アドテクノロジー開発への投資
迅速に実施するための組織や制度改革の推進
今後の成長戦略による新たな成果
経営指標ガイドラインの早期達成
12
● 株主還元の強化
当社は、株主への利益還元を重要政策のひとつと位置づけ、当社を取
り巻く経営環境の変化に応じて、事業成長による企業価値の長期的
な向上、安定的な配当、機動的な自己株式の取得等を組み合わせる
ことにより、総合的な利益還元を図っています。
2008 年度も、資本効率の向上、当期の業績および今後の中長期的
な業績見通しならびに資金状況等を総合的に考慮し、1 株当たり年
間配当4,000円
(うち、中間配当2,000円)
を予定しています。
これは、
5年連続の増配となります。
電通グループは、常に
「コミュニケーション企業」
として社会に貢献で
きることは何かを考えて行動し、あらゆるステークホルダーから信頼
され、評価されることで、社会の一員としてその責任を果たし、グルー
プとしての企業価値を極大化するよう努めていきます。
株主価値向上に関する基本方針
配当金総額および連結配当性向、連結 ROE の推移
■ 配当金総額(年間) 連結配当性向 連結 ROE
※2009 年 3 月期の想定数字は TOB の条件で全株取得できたものとして算出
(各年 3 月期)
(%)
(億円)
120
30
100
25
80
20
60
15
40
10
20
5
増配
年 3,500 円から、2008 年度は年 4,000 円に増配
自己株買いの実施
600 億円の自己株買いを実施
0
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
(見込)
ROE 向上への継続的な取り組み
13
1. ソリューション
ソリューション体制の強化・拡大
電通グループ全体のさまざまな専門性を統合していくソリューション
力の強化を進めていくために、まず、クリエーティブ、ストラテジー、ク
ロスメディアのプランニング力などを備えた人材を集約し、組織化し
ていきます。また、専門性自体の強化およびクリエーティブ力の継続
的な強化は重要な課題と考えています。さらに、マスメディアにおける
新たな商品の開発やスポーツ・ビジネスの権利開発、
マーケティング・
サービス事業の専門性強化など、取り組むべき課題はたくさんありま
す。中でも、プロモーションへのニーズは強く、専門性の高い会社の設
立や投資を行い、サービスの強化、領域の拡大を図っていく予定です。
また、組織改革によりグループ間の連携をとりやすくし、電通グループ
全体が一体となって事業に取り組めるような組織体制に変更しまし
た。これにより、営業機能が高まり、互いの相乗効果による、質の高い
ソリューションをクライアントに提供していきます。
ソリューション体制の強化
今後の施策
クライアント
● 組織改編により、統合ソリューション力の向上を図る
→ 統合ソリューション組織の設置と専門組織の強化、
営業体制の改革
ソリューション
クライアント課題に対応した
解決策の提案、実施
→ 電通テック、オプトなどからの大規模な人材の受け入れによる
グループが一体となった業務体制の強化
電通グループ全体のさまざまな
専門性の統合
インタラクティブ
電通グループ全体のリソースを、
マスメディア
クライアントの課題解決に最大限活かす環境を構築
クリエーティブ
プロモーション
コンテンツ
ストラテジー
クロスメディアプランニング
スペース・ブランディング
PR
14
2. デジタル
デジタル領域における事業拡大
今後も大きな成長が期待できるインターネット・メディア事業を中心
としたデジタル領域においては、多面的な事業展開を進めています。
国内においては、2007年12 月にインターネット専業マーケティン
グ会社として高い能力を持つオプトとの資本・業務提携の強化に合
意し、2008 年 3月にはオプトの株式公開買付けを完了。今後、持分
法適用関連会社としてグループでの協業体制を確立し、当社クライ
アントへの提案力の強化、広告枠やテクノロジーの開発、販売体制
の強化、ロングテールの顧客への対応において、オプトとの協働の
成果が見込まれています。
海外においても、急成長する中国のインターネット広告市場への布
石として、1月に中国フォーカスメディア社の100%子会社華光広告
有限公司と、インターネット広告会社電衆数碼(中国)広告有限公司
設立に合意するなど、さまざまな取り組みを進めました。
今後も当社グループは拡大・深化するデジタル領域に対応して、クラ
イアントやメディアの事業の成功に貢献する統合的なコミュニケー
ション手法を構築し、デジタル領域での成長を実現していきます。
両社のリソース・ノウハウを活かした協業体制構築
インターネット・メディア市場におけるシェア 20% の早期達成
デジタル領域のグループ売上高推移
オプトとの資本・業務提携の概要
■ 制作・システム構築・マーケティング関連 ■ インターネット・モバイル・メディア関連
● 35%の持分法適用関連会社に
(各年 3 月期)
→ 新株予約権行使、普通株公開買付けの実施
(億円)
→ 電通より2名の取締役と1名の監査役を派遣
2,000
→ オプトからは 50 名の出向受け入れ
1,500
●資本・提携の目的
1,000
→ 電通クライアントへの営業体制強化・拡充
→ インターネット・メディア広告枠の開発・販売強化
500
→ 広告IT技術の新規開発・販売
0
2006
2007
2008
2009
(見込)
デジタル領域の今後の戦略
今後の基本的な業務フローのイメージ
●クライアントへの提案力の強化
→ オプトとの協業体制の確立
クライアント
CCI/D2C/イーリンク
→ グローバルなデジタルサービス体制の構築
●広範で質の高いメディアサービス提供
→ ブランディング・SEM・SEO・PDCA管理など
●テクノロジーへの取り組み強化
→ アドテクノロジーへの投資/人材の拡充
→ アドネットワーク事業などのプラットフォーム型ビジネスの強化
15
電通
オプト
インターネット・メディア
3. グローバル
グローバルな成長基盤の強化・拡充
国内のみならず海外においても、クライアントから
「真のソリューション
意、電通アルゼンチンの設立などサービスの拡充を目指し独自のネッ
企業」
として選ばれるよう、当社グループは営業体制の強化ならびに
トワークの整備を進めています。それらと並行して、優秀な現地人材
事業の拡大を図っています。早期に海外売上高比率を10%以上まで
の獲得・育成、新興国における債権管理を強化するなど、リスクの縮
高め、その後も、海外売上高を、3,000 億円まで引き上げることを目
小にも努めています。
標としています。
2007 年度に欧米では、米国および英国のクリエーティブ・ブティック、
アティック社を買収。クリエーティブ・ブティックとしてユニークなアイ
デアの提案力を有するアティック社をグループに加えることにより、
欧米におけるクライアント・サービスのさらなる向上、業績の拡大を
図っていきます。
また、国際化するスポーツ・ビジネスへの対応として電通スポーツ
ヨーロッパを設立しました。
一方、BRICsやアジア諸国、南米などの経済成長著しい地域では、中
国でのモバイル広告事業会社北京電翼広告有限公司の営業開始や、
インターネット広告会社電衆数碼(中国)広告有限公司の設立の合
海外売上高 3,000 億円の早期達成
2007 年度の新規事業・新設会社
■ 欧州地域 ■ 米州地域 ■ アジア地域 ■ 中国地域
※各社の外部顧客に対する売上高の単純合算 ※ ise などコンテンツ会社は除く
(各年 3 月期)
(億円)
欧米
・アティック社
(クリエーティブ・エージェンシー)
の経営権取得
中国
・フォーカスメディア社子会社(華光広告)
と
3,000
2,500
「電衆デジタル(インターネット広告事業)」のJV設立
・北京電翼広告有限公司
(モバイル広告事業)の営業開始
2,000
その他地域 ・電通アルゼンチン設立
1,500
1,000
今後の戦略
●BRICsなど成長地域の拠点拡充
500
●国内と同レベルの統合ソリューション体制の構築
● 日系クライアントに加え、現地クライアントの獲得
0
2008
2009
(見込)
2010
(見込)
2011
(見込)
● 優秀な現地人材の獲得、育成
16
インターネット広告会社
「電衆数碼(中国)
広告有限公司」の
設立について
当社グループは
「最重点地域」
である中国において、既存拠点の再編、
M&A、新会社設立などによって、クライアントに対するフルサービス
体制を拡充し、統合的なソリューション力の向上を図っています。
その具体的な取り組みとして、中国電通グループ3社(北京電通・上
海東派・北京東方日海)
は、インターネット領域におけるソリューショ
ン力とメディア力の向上のため、同領域の業務を集約することとし、
2008 年 1月には、中国のFocus Media(China)Holding Limited
の100%子会社である華光広告有限公司と新会社「電衆数碼(中国)
広告有限公司」
を共同で設立しています。
新会社は、当社とフォーカスメディアグループの持つテクノロジー、
データベースとノウハウなどさまざまなリソースをお互いに共有するこ
とにより、ビジネスの効率化とクライアントへのサービス向上を図るこ
とを目指し、インターネット広告市場をさらに活発化させ、より広い市
場を開拓していきます。
中国市場における売上高 1,000 億円の達成
中国地域の売上高推移
中国インタラクティブエージェンシーの売上高ランキング
(2006 年度)
(万元)
※売上高の単純合算
0
(各年 3 月期)
(億円)
10,000
30,000
40,000
華楊聯衆
900
オールイエス
北京電通
(電衆デジタル)
800
700
世紀華美+奥美
600
新意互動
盛世長城+
実力媒体
500
400
創世奇跡
300
騰信広告
200
0
2008
2009
(見込)
2010
(見込)
2011
(見込)
北京電通と
フォーカスメディアグループで
科思世通
強力なメディアバイイング
博聖雲峰
プラットフォームを構築
100
網邁
中国地域の今後の戦略
● マスメディアに加え、プロモーション、インターネット、PRなどのフルサービス提供体制の拡充 ●拠点再編によるソリューション力の強化 ●デジタル領域など専門サービスの強化
17
20,000
■ フォーカスメディアグループ
50,000
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