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2014年第1四半期の首都圏大型マルチテナント型物 流施設市場では

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2014年第1四半期の首都圏大型マルチテナント型物 流施設市場では
2014年第1四半期の首都圏大型マルチテナント型物
流施設市場では、新たに5棟が稼働し、供給面積は
10.8万坪と3四半期続けて高水準の供給となった。そ
れにも関わらず、当期の空室率は、我々の予想を下回
る前期比わずか0.5ポイントの上昇にとどまり、依然とし
て首都圏の需給バランスはタイトであることを示している。
新規稼働した物件では、内陸部と湾岸部のいずれに
おいても竣工前の早い段階でテナントが決定した物
件が多く、昨年後半に竣工した大型の新築物件でも
募集空室が着実に埋まりつつある。結果として当期の
新規需要は9.6万坪と、四半期の集計値では過去最
高となった。
テナントの業種では、食品・スーパーなど日配食品やド
ラッグストアなどの日用雑貨を荷主とする3PL、
それら
の卸売業、
アパレルが活発に動いている。
賃料面では、新規契約時の実質的な成約賃料でも上
昇圧力が強まっている。昨年から2014Q1にかけて30
万坪を超える大量供給があったにもかかわらず、空室
率が低水準を維持していることで、
オーナーサイドに安
心感が広がっていることも要因の一つといえる。
実際に、3PL会社のターゲットとなる3,000円台の賃
料水準のエリアではまとまった面積を借りられる既存
物件がほとんど無いため、特に、埼玉県、千葉県の一
部では新規に供給される物件の成約賃料は高止まり
している。また、厚木・相模原のエリアでも、供給量の
多かった昨年は成約賃料が若干低下したが、順調な
空室消化に伴って2012年末の賃料水準に回復して
きている。
ただし、大型でも各階に直接トラックの乗り入れができ
ないタイプ(多層階のビル型)の既存施設では、
エリア
に関わらず競争力が落ちており、賃料は若干弱含みと
なっている。
今後もコンスタントに供給が続くものの、今後1年間の
供給予定面積は約14万坪で過去1年間の供給面積
34万坪と比べると半分以下に留まる見通し。また、
2014年末までに竣工する4棟のうち約半分の面積で
すでにテナントが内定しているなど、首都圏全体では
需給の引き締まった状態が続く見込みである。今年着
工する物件では建築コスト上昇の影響を受けるものも
多く、需給がタイトなエリアや賃料水準がもともと低い
エリアを中心に、賃料の上昇傾向ははっきりしてくると
考えられる。
しかし、需要の中心である3PL会社の賃料負担力が上
がるかどうかは不透明で、圏央道周辺の物件では茨城
県の南部で計画中の案件と競合する可能性があるな
ど、賃料を抑制する要因もある。そのため、適正な賃料
設定でないと、テナント決定まで時間を要する物件が
出ることも想定される。
近畿圏・中部圏や広島、福岡でもテナントの需要は旺
盛である。消費財に加えて製造業、特に自動車部品を
扱う物流会社の需要拡大や消費税増税前の需要も
あって、中小型を含めた賃貸倉庫の不足はひっ迫して
いる。既存の空室が存在しないために日配食品・通販・
アパレルなどの潜在化している需要も多く、今後の開
発物件に注目が集まる。
近畿圏と福岡県などで建設中の大型物件では、好調
な市況と建築費の高騰を背景に賃料が押し上げられ
る傾向にあり、テナントサイドもある程度は受け入れざ
るを得ない状況になりつつある。
これを初めとして、上位10位までに市川市・柏市
だことで広く知られることになった「オムニチャネル」。
でそれぞれ2地点が入っているほか、神奈川県で
実店舗とネットを融合させた販売戦略を加速す
も、圏央道の「さがみ縦貫道路」の全面開通を
る小売業が増えてきた。
控えて物流施設の建設が続く同道路周辺の3
家電量販店大手のヨドバシカメラは、川崎市の
百貨店売上高は、2013年Q4において前年同月
地点が県内上昇率の5位内に入っている。
ヨドバシカメラアッセンブリーセンター川崎に100
比1.0%増となり、年間でも前年比1.2%と16年
また、大阪圏工業地の変動率順位でも、やはり
億円を投じ、延床面積で6倍の物流施設に拡張
ぶりの増加となった。既存店ベースでみても同
物流施設開発が進む大阪市住之江区南港中
する。インターネット通販の事業拡大に向けて、
1.8%と2年連続の増加となり、明るさが鮮明に
が第一位で、地価は前年比3.4%上昇した。こ
保管する商品数を増やし、注文増にも素早く対
なってきた。一方、
スーパーでは年間では前年比
のように、物流施設の取引増大は、平均が6年
応できるようにする。また 取扱い品目についても、
0.2%と3年連続の増加となったが、既存店ベー
ぶりにプラスとなった三大都市圏の地価にも影
工具や飲料に加えて今後は一般医薬品、
スポー
スでは同−1.5%と22年連続の減少となった。
響を与えている。
ツ用品など順次拡大する予定だ。総合型のネッ
2013年Q4のコンビニエンスストア販売額は前
ト通販と対抗するような取り組みと言える 。
年同月比5.1%増加、年間でも前年比4.2%と
また、アパレルのユナイテッドアローズでも、売上
高に占めるネット販売が1割を超えるなど重要な
15年連続の増加となった。なお、既存店ベース
でみると、同−1.2%と2年連続の減少となった。
住友商事が公共建物と共同で物流不動産の運
チャネルとなっており、自社通販サイトのスマホ
用アプリの開発なども通じ、 店舗と並行してネッ
1年間で店舗数は5.8%増加しており、
ますます
用・開発事業に本格参入することを発表した。
新規出店が販売額に与える影響は大きくなって
すでに大阪市西淀川区に、最新鋭の大型物流
ト販売も更に増やす意向だ。
いる。これまで東日本を中心に高いシェアを築い
施設の建設用地を他社と共同で取得する等、今
このように、
あらゆる接点から取りこぼしなく顧客
てきたセブン-イレブン・ジャパンは、JR西日本と
後年間200億円程度の物流不動産開発を進め
の注文・購入に対応できるようオムニチャネル戦
提携して駅校内にある約500店を順次「セブン
るとしている。また、同じく公共建物と共同で500
略を進める小売チェーンとの競合激化により、
イ
イレブン」に切り替え、西日本の店舗数を一気に
億円規模の物流ファンドを組成し、早期に総額
ンターネット通販の即日配送への対応は一層進
拡大する計画だ。
1000億円まで積み増すことを計画している。
むことになる。商品到着までの配送時間が短いと、
また、物流・商業施設特化型J-REITの野村不
クレームは少なく返品率は低くなり、
リピート率が
動産マスターファンドを昨年上場した野村不動
向上し顧客満足度が増すというのがその理由で
産は、大型物流施設の開発3件を相次いで発表
ある。
「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイや
物流施設が不動産市場において存在感を高め
した。来年1月に竣工予定の「Landport 厚木
衣料品通販サイト運営のマガシークでも、運営
ていることが、数字の上でも明らかになった。
金田」に続いて、2016年竣工予定の「Landport
する物流センターで即日配送への対応を進めて
CBREがJ-REITやその他公表取引を集計した
柏沼南」、
「Landport 八王子II」
(仮称含む)が
いる。
ところによれば、2013年の収益不動産の取引
加わった。一方、
グローバル・ロジスティック・プ
それに呼応するように、個人宅配最大手のヤマ
額は前年に比べて倍増した。そのうち、取得金
ロパティーズは、埼玉県の圏央道狭山日高イン
ト運輸が2016年から国内大都市間の当日配送
額でもっとも増加率が高いのは物流施設で、取
ターチェンジ至近で2件の開発計画を発表して
サービスを始めるほか、中国の消費者が日本の
引額は前年の5倍に増加し、取引額全体に占め
いる。これにより、首 都 圏では2 年 半 後となる
ネット通販サイトで購入した商品を中国全土に
最短3日で届けるサービスを4月から開始するなど、
る比率は前年の9%から19%に急拡大した。
2016年夏までの物流施設の供給が明らかとな
また、2013年のJ-REITの不動産取得総額は、1
っている。
設備・輸送網を積極的に拡充している。
兆4344億円(IPOに伴う取得を除く)で、
そのう
プレイヤー、開発エリアともに、物流マーケットは
いずれも配送センターが必要となる施策であり、
ち物流施設の比率は前年の3%から21%に大き
まだまだ裾野を広げているようだ。
先進的な物流施設への投資は今後も続くことを
示唆している 。
く上昇している。
3月に発表された公示地価(1月1日時点)では、
物流施設開発が進む千葉県市川市塩浜が7.3
%上昇で東京圏工業地の変動率首位となった。
イオンとセブン&アイという小売大手が取り組ん
今期は新たに5棟が稼働し、供給面積は10.8万坪と、3四半期続けて過去
平均(2.7万坪)
を大きく上回る高水準の供給となった。それにも関わらず空
室率は、7%程度とみていた我々の予想を下回り、前期比わずか0.5ポイント
の上昇にとどまった。依然として首都圏の需給バランスはタイトな状況が続
いていると言える。
新規需要は今期9.6万坪で、四半期の集計値では最高を記録。今期竣工し
た5物件のうち、
プロロジスパーク川島2をはじめ埼玉県の3棟はほぼ満床で
竣工するなど、新規稼働した物件が需要を大きく喚起し、内陸部と湾岸部の
いずれにおいても竣工前の早い段階でテナントが決定した物件が多かった。
また、昨年後半に竣工した大型の新築物件でも募集空室が着実に埋まりつ
つあり、空室率抑制に寄与している。
テナントの業種では、食品・スーパーなど日配食品やドラッグストアなどの日
用雑貨を荷主とする3PLや、
それらの卸売業、アパレルが活発に動いている。
アパレルではネット通販向けの配送センターを増強する動きもみられる。
再契約時に賃料アップで更改するケースは一段と増え、新規契約時の実質
的な成約賃料にも上昇圧力が強まっている。昨年から2014Q1にかけて30万
坪を超える大量供給があったにもかかわらず、空室率が低い水準で推移して
いることで、
オーナーサイドに安心感が広がっていることも要因の一つである。
実際に、3PL会社のターゲットとなる3,000円台半ばから4,000円以下の賃
料水準のエリアでは、
まとまった面積を借りられる物件はほとんど無いため、
特に、埼玉県八潮市・三郷市、千葉県柏市・流山市・野田市では新規に供
給される物件は地域最上位の賃料で成約できているものも多く、賃料上昇
基調が鮮明となっている。このエリアに3PLなどの需要が集中し、昨年来竣
工した物件ではテナント誘致が好調に推移した。それは、元々の賃料水準が
相対的に低かったことに加え、
インターチェンジを基点とした高速道路網の
利便性が見直され、
このエリアの首都圏における立地優位性が向上してい
ることも要因として挙げられる。
また、厚木・相模原のエリアでも、供給量の多かった昨年は成約賃料が若干
低下したが、順調な空室消化に伴って2012年末の賃料水準に戻りつつある。
ただし、物件の賃料動向には立地や設備により差が出てきている。比較的
新しい大型物件でも各階に直接トラックの乗り入れができないタイプ(多層
階のビル型)の施設では、エリアに関わらず競争力が落ちており、賃料は弱
含みとなっている。
今後もコンスタントに供給が続くものの、今後1年間の供給予定面積は約
14万坪で過去1年間の供給面積34万坪と比べると半分以下に留まる。竣
工時期はあまり集中せず、開発地も広く首都圏全域に分布することが、
それ
ぞれに多様な需要を喚起すると期待される。2014年末までに竣工する4棟
のうち約半分の面積ですでにテナントが内定しているため、2014年内中の
空室率は大きく上昇しない見込みである。
賃料面では、今年着工する物件は建築コスト上昇の影響を受けるものも多く、
設計変更などの貸主側の努力を経たとしても賃料への影響が少なからず出
ることが予想される。需給がタイトなエリアや賃料水準がもともと低いエリア
を中心に、賃料の上昇傾向はさらにはっきりしてくるだろう。
しかし、需要の中心である3PL会社の賃料負担力は、依然として抑制される
可能性も否定できないことから、急激に賃料が上昇した場合には需要が潜
在化する怖れもある。さらに、新規開発物件のうち内陸部の案件は3県に分
散するものの圏央道周辺という点では多くの物件が共通することと、栃木県・
茨城県の南部で計画中の案件も競合する可能性が高い。そのため、賃料
設定が適正とみられない物件については、テナント決定までに時間を要する
ことも考えられる。
近畿圏の大型マルチテナント型物流施設では空室率0.0%が続き、消費税
増税前の需要もあって中小型を含めた賃貸倉庫の需給はひっ迫している。
菓子メーカーやスーパー・飲料会社向けの3PL会社が物流施設の統合や
配送の再編を検討しているが、時期を定めて提案できる物流スペースが既
存物件には存在しないため、荷主への提案が具体化しにくい状態である。
賃料面では、
この2年余りで25-30%ともいわれる建築費の高騰が新築物
件の賃料を押し上げており、3PL会社などのテナントサイドもある程度は受
け入れざるを得ない状況になりつつある。
とはいえ、今後の新規供給はエリア的に集中しているため、施設間の競合
が懸念されるところである。まずは6月竣工予定のSGリアルティ舞洲につづ
き、9月竣工予定のMFLP堺、来年1月竣工予定のプロロジスパーク大阪5と、
いずれも湾岸部において大型物件の供給が続く。道路網はもちろんのこと、
通勤に利用される公共交通機関の利便性や立地環境などが、
これら新規
物件の成約賃料やテナントの決定状況にどのように影響を与えるのか注目
される。
消費税増税前の駆け込み需要で、消費財、特に日用品・酒類などの荷動き
が非常に活発だった。各社は、
できる限りのスペースを押さえて配送に対処
したため、倉庫物件の空室はぼぼ無い状態である。これらのスペースは、当
初は短期的な拡張を目的としたものが殆どだったが、消費税増税後の反動
減が大方の期待通り一時的なものに留まるようであれば、
これらのスペース
の賃借契約も延長される可能性もある。結果的に不規則に分散してしまっ
た物流拠点が整理され募集空室が市場に出てくるまでには、数ヵ月かかるだ
ろう。
消費財と同様、製造業も非常に好調である。名古屋港の2013年の総取扱
貨物量は自動車部品、鋼材、産業機械、衣類・見廻品が増加し、12年連続
で全国1位となった。それに象徴されるように、物流施設の需要も、自動車部
品、機械部品関連の業態を中心に強含みである。長期計画に基づいて面
積拡張を目指している製造業では、物流施設・用地の絶対量が不足している。
加えて、一大消費地をカバーする日配食品の集約拠点のニーズのほか、通
信販売業では日用雑貨・家具・アパレル等で集約・分散・拡張のニーズもあ
る。その他、全国統一の配送拠点を中部圏に置きたいという根強い需要など、
満たされていない需要はまだまだ多い。
福岡市の博多港に立地する大型物流施設、ロジポートアイランドシティ博
多が、4月の竣工を前に満床となったことが発表された。九州エリアはBTS
や自社物件などの専用施設開発は盛んであるが、マルチテナント型の物件
で竣工前に入居率100%を達成することはまれで、好立地で機能性の高い
物流施設への需要が強いことがうかがえる。
実際、物流需要はたいへん旺盛で、食品・日用品に加えてここ最近では自
動車部品を扱う企業の拡張希望も増え、ニーズの規模も件数も拡大傾向
である。また、
ソーラーパネルの保管、組立用の倉庫需要も急増しており、世
相を表しているといえる。
今後の開発計画としては、
プロロジスが福岡市郊外に延床面積約8,000坪
のマルチテナント型物流施設・プロロジスパーク久山を着工した。2015年1
月竣工予定で、
この物件を含めると、福岡市近郊で来年春までに3棟の大
型供給が予定されている。全国の他のエリアと同様に、福岡県でも需要増
に土地価格・建築費の上昇などの要因が加わり、新築物件の賃料は高止
まりしている。
自動車メーカー・マツダの御膝元である広島では、前期に続き自動車部品を
扱う物流会社からの倉庫・配送センターのニーズが極めて強い。以前から
需給バランスが非常に切迫したエリアであるため、使い易い物件の空室情
報はたいへん貴重である。折しも、自社施設の建設によりテナントが退去し
た賃貸物件の空室や、GLP広島に大手物流会社が拠点集約することによ
る二次空室が市場に出ることが分かっている。自動車メーカーの他、建築資
材・ソーラーパネル関連の物流量も増えており、
それらの空室は、
こういった
好調な業界の拡張移転や集約移転需要を吸引することになると予想される。
仙台では、東日本大震災直後は緊急的な需要を背景に立地が多少悪い物
件でも高い賃料水準での成約が見込めたが、3年を経た現在では、テナント
の目線は震災前のシビアな条件に戻っており、復興需要は収束したと考えら
れる。ただし、好立地で大型の賃貸物件が少ない市場であるため、潜在的
な需要は依然として根強い。今後は食品・スーパー関連の物流再編で専用
施設が建設される予定であり、竣工後に複数の二次空室が発生すると予想
されるが、
それにはまだ1年ほど待たなければならない。
札幌では、消費税増税前の物流増により倉庫需要が高まり、空室情報が非
常に少ない状況が続いている。ただし、札幌市に隣接する北広島市で開発
中の輪厚工業団地への企業誘致が今後進捗すれば、物件の流動性が高
まってマーケットが活発になることが期待できる。
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