...

「スーパーコンピュータ」の推進戦略

by user

on
Category: Documents
11

views

Report

Comments

Transcript

「スーパーコンピュータ」の推進戦略
参考1
「スーパーコンピュータ」の推進戦略
平成17年7月
文部科学省研究振興局
ピュータ」について
目次
‹
‹
‹
‹
‹
高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用
次世代スパコンの実現に向けて
「汎シミュレータ(仮称)」の開発・整備計画
ナショナル・リーダーシップ・スパコンの開発整備/運用の方向性
スパコンの種類と特色
‹ 複合型に適したアプリケーション例
~ライフサイエンス・人間丸ごとシミュレーション~
‹ スパコン開発を牽引した利用分野の変遷
‹ 日米スパコン開発競争
P
P
P
P
P
1
2
3
4
5
P 7
P 8
P 9
最先端・高性能汎用スーパーコンピュータの開発利用(案)
目的: 世界最先端・最高性能の汎用京速計算機システムの開発・整備及び利用技術の開発・普及
趣旨及び効果:理論、実験と並び、現代の科学技術の方法として確固たる地位を築きつつあるスーパーコンピューティング
(シミュレーション(数値計算)やデータマイニング、非数値的計算等)について、今後とも我が国が世界をリードし続けるため、
(1)スーパーコンピュータを最大限利活用するためのソフトウェア等の開発・普及
(注)京速=10ペタFLOPS
(2)世界最先端・最高性能の汎用京速(注)計算機システムの開発・整備
(3)上記(2)を中核とする世界最高水準のスーパーコンピューティング研究教育拠点(COE)「先端計算科学技術
センター(仮称)」の形成
により研究水準向上と世界をリードする創造的人材の育成を総合的に推進する。
世界最高性能の科学技術計算環境を実現し、複雑で多様な現象の系全体のシミュレーションや高度なデータマイニング、非数値
的計算等を、幅広い分野で行い、「知的ものづくり」や「科学的未来設計」を実問題で可能とし、先端的スーパーコンピューティング
における国際的なリーダシップを確立。科学技術・学術や産業の競争力強化、安全・安心な社会の構築に貢献。また、世界の英知
を結集し、シミュレーションにおける我が国の国際的な地位を確固たるものとする。
概要:平成18年度は、世界最先端・最高性能の汎用京速計算
機システムの開発・整備の前提であるシステム全般の設計・研
究開発等に着手する。
スカラ-計算機部
先端計算科学技術センター(仮称)
ベクトル計算機部
異機種間接続
超高速インターコネクション
1.ソフトウェア(OS、ミドルウェア、アプリケーションソフトウェア)
等の設計・研究開発
2.ハードウェア(計算機システム及び超高速インターコネク
ション)の設計・研究開発
研究教育拠点(COE)の形成
3.「先端計算科学技術センター(仮称)」の最適立地・運用に
関する調査研究
科学技術・学術の発展と産業競争力強化に貢献
(以下を例に、様々な科学技術・学術・産業分野を対象)
材料~製品丸ごと設計 生命現象シミュレーション
体制:国の責任で設備の整備から運用まで一体的に推進する。
また設備の整備・運用を行うに当り、産学官の様々な組織から
最も適したところを選択し、そのポテンシャルを活用する。
ナノ分野
バイオ分野
専用計算機
(アクセラレータ)
銀河形成の解明
未到科学分野
自然災害予測
防災分野 等
1
次世代スパコンの実現に向けて
‹取り組み状況と今後の挑戦
‹課題
スパコンの性能向上に不可欠な、超高性能
プロセッサ、超高速ネットワーク技術、超高速
専用計算機(アクセラレータ)の開発
複数の現象の解析や、シミュレーションを統合
するためのアプリケーション・ソフトウエア、及び
システム・ソフトウェアの開発
「ハードウェア要素技術の研究開発」(2005年度~)
を文科省が開始。<日本の強みをより強く>
「革新的シミュレーションの研究開発」(2005年度
~)を文科省が開始。<日本の課題を克服>
多種多様な利用者の誰もが使いやすい
ユーザフレンドリーなシステムの実現
プロジェクトを通じ、中堅・若手技術者の育成を強化し、
円滑な技術伝承を進めることが不可欠
【2007年問題】スパコン開発のベテラン技術者が
大量引退し、技術伝承が困難に
次々世代計画
実効性能(FLOPS)
ナショナル
リーダシップ
(次世代スパコン)
100ペタ
ナショナル
インフラストラクチャ
研究所、
大学センター
次世代スパコン計画
ナショナル
リーダシップ
(地球シミュレータ)
1ペタ
10テラ
100ギガ
ナショナル
リーダシップ
CP-PACS、
数値風洞
ナショナル
インフラストラクチャ
研究機関、
大学センター
1990年
ナショナル
インフラストラクチャ
研究所、
大学センター
エンタープライズ
企業、研究室
2000年
国の直接投資
が必要な範囲
100ペタ
1ペタ
ナショナル
インフラストラクチャ
研究所、
大学センター
地球シミュレータ計画
ナショナル
リーダシップ
エンタープライズ
企業、研究室
10テラ
エンタープライズ
企業、研究室
パーソナル
エンターテイメント
パソコン、ホームサーバ
ワークステーション、
ゲーム機、デジタルTV
パーソナル
エンターテイメント
パソコン、ホームサーバ
ワークステーション、
ゲーム機、デジタルTV
2010年
2015年
100ギガ
2020年
2
「汎シミュレータ(仮称)」開発・整備計画
平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 平成22年度 平成23年度 平成24年度
評価
評価
評価
評価
ハードウェア
要素技術
設計・実装技術
設計
システム強化
製作
システム
ソフトウェア開発
建屋・付帯設備等
検討・設計
建設・機器整備
アプリケーション
ソフトウェア開発
運用・保守
3
ナショナル・リーダーシップ・スパコンの
開発整備/運用の方向性
1990年代
2000年代
2010年代
2020年代
年度 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29
数値風洞(富士通)
CP-PACS(日立)
地球シミュレータ(日本電気)
汎シミュレータ(複合)
開発
運用
開発
運用
開発
運用
開発
汎シミュレータ-Ⅱ(複合)
汎シミュレータ-Ⅲ
(ポストシリコン?)
運用
開発
運用
開発
運用
[ポイント]
・切れ目なく汎用スパコンをシリーズで開発
・アップグレード可能な開発手法
4
スパコンの種類と特色
‹専用計算機(アクセラレータ)
(1990年代~)
‹ベクトル(1976年~)
•多くのデータをまとめて計算するので、大規模な
計算に向く
•高価だが利用分野は広く、性能向上の余地がある
例)大気や海洋の大循環、
津波シミュレーション
地球シミュレータ(海洋機構)
荷物(データ)の積みこみ方が重要
•処理は限定されるが、特定分野では低
電力で極めて高い性能が得られる
•処理の方法が異なるとそれに対応した
ハードの開発が必要
例)
• 分子動力学専用(細胞内の高分子の振る舞い
の解析等)→MD-GRAPE(理研)
• 量子化学計算専用(化学反応の精密解析等)
→EHPC(九大)
‹スカラー(1993年~)
•データを細かく分けて逐次的に処理する計算に向く
•安価で、並列台数により
性能を向上させてきた
特定のコース(計算方法)でのみ動けるので
コースに会わせた開発が重要(多様化)
例)遺伝子の相同性検索、
新材料・触媒の設計
Columbia(NASA)
荷物(データ)の分け方、
車を多く並べることが重要
GRAPE(東大)
EHPC(九大)
MD-GRAPE(理研)
BlueGene(DOE/IBM)
5
‹複合型(目指すべき姿)
•超高速インターコネクトで、ベクトル(大規模計算)、スカラー(逐次処理)、専用計算機(特定
処理に高性能なアクセラレータ)を結合して、幅広い分野で高い性能が得られる
•高価なベクトル(注)と安価なスカラー・専用計算機(アクセラレータ)を組み合わせることで、優
れた価格性能比(コストパフォーマンス)を実現
注:地球シミュレータ(ベクトル、約40テラFLOPS)の開発(1997~2002年)には、ハード約400億円、建屋・付帯設備約100億円、
関連ソフト約100億円、総額600億円以上を要した。
【課題】複合型を実現するために必要なブレークスルー
•プロセッサの高性能化:高速化と低消費電力化の両立
(既存技術で高速化すると電力消費の増加を招くためブレークスルーが必要)
•新たな処理方法の専用計算機(アクセラレータ):
ハード(LSI等)の多様化、複数の処理に対応できるハードの開発
•超高速インターコネクト:複合型スパコン内で大規模データを超高速伝送するための光通信技術の革新
•複合型システムソフトウェア:
ベクトル・スカラー・専用計算機(アクセラレータ)を一体的に制御する新技術の研究開発
(参考1)理研スーパー・コンバインド・クラスター(RSCC) (2004年~)
複合型スパコンの先駆け
スカラー
特長
-優れたコストパフォーマンス
約13テラFLOPS、約41億円(注)
-使いやすい(ユーザフレンドリー)
- 簡単な操作で最適なスパコンを選択
(参考2)ある政府系研究機関
利用者のニーズに応じて、多様なスパコンを個別に調達
ベクトル
インターコネクト
専用計算機
(アクセラレータ)
-2005年3月「第34回日本産業技術大賞」の文部科学大臣賞を受賞
次世代の大型計算機センターのモデルとして、世界の研究所・大学・民
間企業等から注目を集めている
• 注:ハード総額の計算式:(8億円/年リース×5年)+専用計算機(アクセラレータ)1億円=41億円
先端情報計算センター(つくば)
多種多様なスパコンで幅広い利用分野をカバー
- SR11000(日立)
0.9テラFLOPS(2004年~)
- AISTスーパークラスタ P-32(IBM) 8.6テラFLOPS(2004年~)
- AISTスーパークラスタ M-64(IBM) 2.7テラFLOPS(2004年~)
- AISTスーパークラスタ F-32(SGI) 3.3テラFLOPS(2004年~)等
生命情報科学研究センター(お台場)
専用計算機(アクセラレータ)でバイオ分野に特化
- BlueGene/L(IBM)
22テラFLOPS(2005年~)
• 注:約9億円で2004年に購入
• (ウェブサイトの情報を基に作成)
6
複合型に適したアプリケーション例
~ライフサイエンス・人間丸ごとシミュレーション~
分子レベルシミュレーションから生体シミュレーションへ
新薬設計/薬剤効果の解析、診療補助などが実用レベルへ
テーラーメイド医療
が可能となる
(安全・安心な社会の実現)
超音波治療
オーダメイド創薬
循環器系
モデル
循環器
骨格モデル
スカラー10ペタFLOPSで
1時間以下
多物理連成 ベクトル10ペタFLOPSで20時間以上
ベクトル10ペタFLOPSで40時間以上
マイクロマシン
組織
細胞
カテーテル
臓器
組織構造応答
将来のシミュレーション
化学プロセス
(遺伝子から全身の血流までを半日間で評価)
ベクトル10ペタFLOPSで数分以上
蛋白質
(注)
生体MD
専用計算機
(アクセラレータ:MD-GRAPE3)
10ペタFLOPSで1時間以上
現在可能なシミュレーション
ゲノム
(分子レベル)
遺伝子治療
Cl
N
N
N
N
遺伝子
提供:東大 他
O
O
O
N
N
N
N
N
N
O
N
O
O
N
S
N
N
S
N
薬剤候補物質
注:分子動力学。原子間ポテンシャルの下に、古典力学におけるニュートン方程式を
解いて、系の静的、動的安定構造や、ダイナミクスを解析する手法。
標的蛋白質
反応性指標
7
スパコン開発を牽引した利用分野の変遷
性能
ベクトル
ベクトル
•1990
•1985
•1980
•1995
ギガFLOPSクラス
•2005
•2000
•2010
テラFLOPSクラス
単一CPUベクトル 共有メモリ型並列ベクトル
•2015(年)
ペタFLOPS超クラス
分散メモリ型並列ベクトル
共有・分散メモリ型並列ベクトル
種
専用計算機
類
スカラー
複合型
複合型
専用計算機
スカラー
複合型
スパコンは、性能向上とともに、その利用分野を拡大してきた。
特に、スパコン開発を牽引してきた分野としては、
統合解析
・1980年代前半は、土木や自動車(ベクトル)
・1980年代後半は、航空機や気象(ベクトル)
金融工学
・1990年代前半は、材料(スカラー)
・1990年代後半は、ゲノム関連(専用計算機)
バイオ
・2000年代は、地球環境(ベクトル)
・現在は、再びバイオ(専用計算機)
ナノテク・
分子材料
■
航空機
●
専用計算機)
(東大の
専用計算機)
CP-PACS(スカラー)
数値風洞
(分散メモリ型並列ベクトル)
気象・環境
▲ BlueGene/L
▲ MDM
(理研の
▲ GRAPE
・2010年代には全体の統合へ
RSCC
(複合型の
先駆的タイプ)
●地球シミュレータ
(共有・分散メモリ型
並列ベクトル)
●
S-810/20 土木・自動車
(単一CPUベクトル)
8
日米スパコン開発競争
-ピーク性能を基準にした場合-
・日米が競い合ってスパコンの性能を向上させてきた。その裏には、新しい設計思想の
スパコンの実現を通じた利用分野の開拓競争があった。(次ページ参照)
・スパコンは、ベクトルからはじまり、その後、専用計算機やスカラーが登場した。
これから複合型の時代へ。
1ペタ
ピーク性能(FLOPS)
日本
100テラ
MDGRAPE-3
BlueGene/L
故三好センター長が提案した共有・
分散メモリ型ベクトル
5回連続でTop500の1位
米国
ベクトル
ローレンスリバモア研に
納入予定の専用計算機
地球シミュレータ
MDM
ASC White
RSCC
ASC Q
SX-6
VPP5000
ASC Red
理研 姫野センター長が提案し
SR8000 た世界初の複合型スパコン
理研が分子動力学シミュ
レーション専用に開発。
スカラー
10テラ
理研で開発中
専用計算機
複合型
航技研 故三好部長が提案した
分散メモリ型並列ベクトル
Top500の1位が4回
-
1テラ
CP-PACS
数値風洞 SR2201
CM-5
100ギガ
GRAPE-3
10ギガ
筑波大 中澤教授の下に開発された
国産初のスカラー(擬似ベクトル)
Top500の1位が1回づつ(東大1回、筑波大1回)
※CP-PACSとSR2201は同タイプ
複合型
1ギガ
S-810/20
スカラー
SX-2
XMP
専用計算機
共有・分散メモリ型並列ベクトル
ベクトル
Cray-1
1970
1975
単一CPUベクトル
1980
共有メモリ型並列ベクトル
1985
1990
分散メモリ型並列ベクトル
1995
2000
2005 (年)
9
Fly UP