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蝶ヶ岳冬季登山(前編)(芦澤)
蝶ケ岳冬季登山記録 (2008,12,29∼12,31) JAC NO.13176 芦澤 敏夫 1 コースタイム 12/29 新宿 8:00(スーパーあずさ 1 号)→10:37 松本 11:10→(バス)→12:28 中ノ湯 12:40→ 13:05 釜トンネル 13:20→13:50 大正池ホテル 13:50→14:15 帝国ホテル 14:25→ 14:43 河童橋 14:50→15:40 明神 15:50→16:47 徳沢園(冬季小屋泊) 12/30 徳沢園 6:50→12:00 長塀山 12:05→12:55 妖精の池 12:55→13:30 蝶ケ岳山頂 13:35→ 13:45 蝶ケ岳ヒュッテ(冬季小屋泊) 12/31 蝶ケ岳ヒュッテ 6:45→10:35 徳沢園 10:45→11:47 明神 11:53→12:46 河童橋 12:46→ 12:56 山岳研究所 13:10→14:25 釜トンネル 14:30→14:57 中ノ湯 15:02→(タクシー)→ 16:08 松本 16:58→19:36 新宿 2 参加メンバー CL芦澤敏夫 SL佐藤 守 メンバー徳永泰朗 3 山行記録 12/29 2008年の年末と2009年の年始はカレンダーの休日の間合いもお役所並みに9日間連休 という大型の休みとなるところも多く、佐藤さんからのお誘いを受けたため、家庭サービスもちょっとサ ボって冬の北アルプス蝶ケ岳を目指すこととし た。当初は、日本山岳会の山岳研究所にも宿 泊をすべく計画をしたが、人気沸騰のためか、 あいにく満員御礼とのことで、29日に入山して3 1日には下山をするということで(1月1日は予備 日の設定)暮も押し詰まった 12 月 29 日新宿の 出発となった。徳永さんも含めて、総勢3名とは ちょっと寂しいが、万一の場合のテント泊を想定 すると、そう大人数での実施はかえって困難な ため、こじんまりで確実な登頂を目指した。 新宿駅は、帰省客と大きなザックを背負った登山客が目立つが、それほど混んではいない。休み が27日からのせいもあり、ラッシュも分散したよう である。私としては、今朝の朝刊に載っていた元 つくも会会員のM氏らしき遭難が気になり、報道 記事を探すべく新聞を買いあさった。(その後の 情報から、本人であったとのことで、大変残念に 思いました。ご冥福をお祈りいたします。)電車は、 晴天の中、山梨を越え、長野へと向かったが、途 中の山は、思ったより雪が少ないものの、天候も 本日を境に、また冬型が強まるとの予報であった ために、楽しみの反面、ちょっと不安があった。松 本からはバスで中の湯で下車。あたりも少しずつ雪景色となり、やっと冬の様相を呈してきたので、 徐々に闘志も湧いてきた。釜トンネルは冬季閉鎖中で、長野県警が数人警備しており、登山者のチ ェックをして、ルート確認や、登山カードの提出、さらには入山者や山の情報等、安全確保のための 点検をしてくれていた。 話によると、蝶ケ岳にも何組かが入山しているため、トレースはついているのではないかと思われる が、昨日の下山者の情報によると、長塀山までは確実なトレースがあったがその先は時間切れで撤 退したそうである。しかし、今日は、天気が良かっ たので、その先まで行っている可能性が高いが、 明日からまた冬型が強まり、ちょっとルートが分 からなくなることもあるので、気をつけるようにとの ことであった。 どの程度のトレースの状況か不 明であり、長塀尾根のラッセルやテント泊、さらに は雪崩の対策まで想定して全員が雪崩ビーコン やゾンデ棒、スコップ、GPSを持参し冬山対策に は万全を期していたが、これらの話でちょっと大 袈裟な装備であったかとも思った。しかし、冬山 の安全対策には念を入れることに越したことはな いとも思った。 照明があると思っていた釜トンネルは、今年から 照明を消しているとかで真っ暗であったので、ヘ ッドランプの明かりを頼りに出ると、雪がたっぷり の世界である。しかし、除雪がされているのか、あ るいは工事用かホテルの送迎用か、車が通った ように道はハッキリしており、ちょっと凍っている箇 所もあったが、アイゼンも付けずに、車道歩きとな った。夏にはバスで何気なく通過してしまう焼岳 付近の道も、一歩ずつ歩く。 やがて、白く凍てついたような大正池の向こうに 穂高の山々が見えてくると、いよいよ「冬の北ア ルプス」に踏み込んだ実感が湧いてきて、武者 震いが止まらなかった。上高地まで、結構単調 な道が長く続くが、時折青空も覗く比較的おだ やかな天気に恵まれ、鼻歌交じりで上高地を目 指した。大正池ホテル、帝国ホテルを過ぎ、道 は夏場に賑わうバスターミナルへと続く。 やがて、一面雪で覆われている閑散としたバスターミナルを過ぎ、河童橋越しに穂高の山々がくっき りと見えた。冬の穂高もいい。やっぱり絵になる。人影はほとんどなく、自然という感じである。路面は 凍っているため、転ばないように注意しながら橋の 袂で集合写真をパチリ。 ここから、明神、徳沢へ続く道は、いつもながら平 坦ではあるが徐々に道幅が狭くなり、積雪も少し 多くなってきた。しかし、例年に比べると雪は少 ないようである。梓川沿いにつけられた道を、 山々を見ながら歩く。上高地のキャンプ場には、 テントの花が咲いており、それぞれが年末の休み を利用しながら、北アルプスの雰囲気を楽しんで いるようである。 テン場を過ぎると、猿の軍団の歓迎を受けた。 木の上や、沢伝いに総勢 20 匹もいたであろう か。この寒空に餌でも漁っているようであり、木 の芽を取っていたり、雪に埋もれた沢から出て いる少しの草をかじっていたり、大猿から子供 の猿まで、この寒空の下、揃っている。 許され るなら餌でも与えてあげたい位気の毒であるが、 それも自然の中に生きる動物としての試練であ るので、ヤボな情けはかけまい。先を急ぐ。 やがて、夏のコースタイムと同程度で明神館に たどり着く。ここも夏には人が多い所であるが、今は 人気がない。ちょっと荷物が重いせいもあって、疲 れてきた。どっこいしょとベンチに腰を降ろす。あた りは、陽が西に傾き、明神岳に当たっている。 今日は、まだ天気が良く、陽が差しているが、こ れから天気は下り坂。明日以降は当分この景色 は見られないだろうと覚悟をして、冬景色を堪能 するがあまりゆっくりしていては、徳沢に着く時分に は暗くなってしまうので、休憩もほどほどに出発。 明神館からも、夏道をたどって歩くが、時折スノー シューの跡らしき道に踏み入ると、ズボッと潜る。 徳本峠への分岐を過ぎ、さらに徳沢に向かう。 あまり風はない。もちろん、雪も降っていない。 今のところはおだやかな日和である。雪道といっ ても、夏道を辿っているのでほとんど平坦な道を、 淡々と歩く。日暮も近くなってきたので、あたりが 徐々に暗くなってきた。 道も狭くなり、時折雪も深くなってきた。トレースを 踏み外さないように、気をつけながら折角来た冬 の梓川沿いを歩く。夏とは違い、梓川も雪で川幅 が狭くなり、一面の雪野原の中を、いく筋もの細 い川が流れているようである。 まだかまだかと思いながら、単調な雪道を進むと、 やがて鮮やかな色のテントが見えてきた。何とか 暗くなる前に着けそうである。ここでも結構の数の テントが開いている。 徳沢園では、冬季小屋が営業をしているとのこと で、楽しみにしていたが、夏季の小屋は閉まっ ていたので、遠目には営業していない小屋に見 え、ちょっと不安に思ったが、近くに行くと、左手 の小屋から明かりが見えたので、一安心。 やっと徳沢園に着いた。 徳沢園では、しっぽを振って人なつっこい子犬 がお出迎え。辺りは薄暗くなっており、寒くなっ てきた。冬季に営業をしているとは貴重な小屋 である。 小屋の煙突からは温かい煙が上っており、明る い雰囲気が伝わってきた。そして、明るい声で 迎えられ、身支度を脱ぐと、ほっとした気分にな った。我々は、ストーブのある部屋の隣の部屋で、 12 畳位の部屋に 7 人が泊るそうである。いずれ にしても、ゆったりとしたスペースと温かい部屋 に感謝である。早速、ここまでの順調な行程と明日 からの健闘を祝して乾杯。食事は、噂には聞いて いたが、冬季にしてはとても豪華。熱々のステーキ におでんとシチュー。それにおかみさんのオリジ ナルの漬物。この漬物が特においしいことったら、 たまらない。この時期だけこの小屋に来た人に だけ提供されるものだそうで、松本あたりまで行 くと温度の差で味が落ちるそうである。凍ってい るようにシャキシャキしていて、それはもう今まで で一番おいしい漬物であった。これまたおいし いオリジナルワインをたらふく飲んで、おいしい 料理もたらふくいただき、明日の英気を養った。しかし、部屋に帰ると、徳永さんが左足の筋に痛み が走るという。いつも強い徳永さんにしては珍しく、足をさすっている。明日のコンディションを考え、 テーピングの準備をして就寝。 12/30 風の音で朝起きると一番気になるのは 天気である。早速に外に出て、まだ暗い中でも 星が見える。多少風はあるが、思ったよりも晴天 で、良かった。朝食は、佐藤さんの特製餅入りラー メンをいただいた。食後は、早々にアイゼンを装着 し、支度を整え出発。薄暗い雪道をトレースを頼り に徳沢園の脇の登山口から急登が始まる。