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「公共空間に設置する音案内」のJISを制定(JIS T0902)

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「公共空間に設置する音案内」のJISを制定(JIS T0902)
資料2
「公共空間に設置する音案内」のJISを制定(JIS T0902)
-目の不自由な人の案内を目的として-
目の不自由な人が、駅などの公共の施設内を移動したりするためには、音によっ
てそれらの場所や行き先を案内してもらうことが有効です。有人改札口に設置してあ
る「ピンポーン」という音に代表される、場所や方向を示す公共空間の音案内は、10
年ほど前に国土交通省によってその設置に関するガイドラインが制定されました。一
方、音には、ヒトの耳で聴いたときに、発生源の位置が分かりにくい音と分かりやすい
音のあることが知られています。今回は、ヒトの耳で音を聴いたときに、どうすれば公
共空間のような騒がしくて音が響く場所でも位置が分かりやすくなるのかを調べ、音
案内に必要な音の仕様をまとめて、日本工業規格(JIS T0902)として制定しました。
なお、この内容は国土交通省の音案内のガイドラインの改訂版にも反映され、また国
際規格(ISO 規格)としても提案中です。この標準化によって、音の鳴っている位置が
分かりやすい音案内が普及し、目の不自由な人が今までよりもさらに便利に公共空
間を利用できるようになることが期待できます。
(1)当概規格の改正の目的及び背景
目の不自由な人が、駅などの公共の施設内を移動したり、その中のトイレやエスカ
レーターなどの設備を利用したりするためには、音(チャイムや音声など)や触図(手
で触ってわかる凸凹の図)によってそれらの場所や行き先を案内してもらうことが有
効です。このうち、音による案内は、駅などで 10 年以上前から多く使われており、
2002 年には国土交通省によって音案内の設置に関するガイドラインが制定されまし
た。このガイドラインでは、どのような場所でどんな音を使えばよいのかが定められま
した。
一方、音には、ヒトの耳で聴いたときに、発生源の位置が分かりにくい音と分かり
やすい音のあることが知られています。実際に設置されている音案内には、目の不
自由な人々に適切な案内ができない音も使われている場合がありました。
そこでこの問題の解決のために、ヒトの耳で音を聴いたときに、どうすれば位置が
分かりやすくなるのかを調べることにしました。音響学(音に関する科学)の分野で以
前から知られている“ヒトの耳で音の位置を知るメカニズム”を調べ、さらに公共空間
のような騒がしくて音が響く場所を実験室内で再現して、被験者に音の位置を当てさ
せる実験を行い、音の位置がきちんと分かるための条件をリストアップしました。
また、音案内に関心のある視覚障害者、国土交通省や交通バリアフリー関係者、
音案内の機器を作るメーカー、大学や研究機関で音案内を研究している研究者らに
よる調査を行いました。
これらの結果を基に、音案内に必要な音の仕様をまとめて、その技術内容を、日
本工業規格(JIS T0902)として制定しました。なお、国土交通省の音案内のガイドライ
ン改訂版にも反映されており、また、音案内を海外にも普及させるため、現在、国際
規格(ISO 規格)としても提案中であり、2016 年頃の発行を目指しています。
この標準化によって、目の不自由な人の案内を目的とした音の設置が促進され、
公共空間の“音案内”として、音の鳴っている位置及び方向が分かりやすい音が普及
し、そして目の不自由な人が今までよりもっと便利に公共空間を利用できるようになる
ことが期待できます。
(2)当該規格の改正のポイント
騒がしくて音が響く場所でも“音の位置が分かりやすい”ために必要な音案内の仕
様を定めていることが、この規格の特長です。
この規格の適用範囲は以下のとおりです。
 音声及び非音声音の両方又は一方だけを含む音によって、高齢者・障害者(特
に目の不自由な人)を含む音の案内の利用者の円滑かつ安全な歩行・移動を促
進するため、誘導、注意喚起、位置及び状態に関する情報提供を行う音案内の
音の特性、機器の設計及び使用方法について規定します。
 公共空間に設置し、単独又は複数の装置が連携して動作するものが対象です。
 ここで公共空間とは、駅、空港、港、バスターミナルなどの公共交通施設、公官
庁、図書館、公民館、公園などの公共施設、及び公共(交通)施設と公共(交通)
施設とをつなぐ公共の経路です。公共交通施設及び公共施設については、それ
らの敷地と建物内との双方を含みます。
 この規格の規定内容は、過度な音案内を行うことによって発生する可能性があ
る周囲の音環境への影響についても配慮しています。
 なおこの規格では、非常ベルの音など生命の安全を確保するための警報を目的
とする音は含みません。また、JIS T 0901 に規定する、利用者が携帯する情報
端末などと通信することによって動作する音案内は含みません。
この規格では以下の事柄の仕様を定めています。
 音の種類
 フレーズの時間長さ
 繰返し頻度
 信号発生装置
 スピーカ
 周辺環境
主な仕様の内容と、その制定理由は以下のとおりです。
 1 フレーズ:原則 5 秒以内。時間的に長過ぎると全体を聞き取れなくなるので、フ
レーズは一定以上長くできません。
 フレーズ間の無音区間:原則 2 秒以下。無音区間の時間が長すぎると音案内を
聞き落とす可能性があるので、無音区間は一定以上長くできません。
 フレーズの開始部分:0.005 秒以内。音がゆっくり立ち上がると音の方向が分か
らない可能性があるので、開始部分は一定以上長くできません。
図 音の時間パターン



最低周波数成分(音案内に含まれる音のうち、一番低い音の成分):100Hz※以
上 1000Hz 以下。最低周波数が高すぎると高齢者が聞き取れない可能性がある
ので、一定以上高くできません。
※Hz=ヘルツ:1秒間に空気が振動する回数を表す単位。回数が多いほど高い
音になる。
最高周波数成分(音案内に含まれる音のうち、一番高い音の成分):8000Hz 以
上。最高周波数が低すぎると音の前後方向が分からなくなる可能性があるので、
一定の高さが必要です。
調波音(音声や音楽のような音)の場合 全高調波(音案内を構成する成分が低
い音から高い音まで全て)を含むこと。周波数成分が足りないと雑音下で音の方
向が分からない可能性があるので、成分を間引きできません。
図


音のスペクトル
スピーカの向き:主要動線(歩行者の流れを表す線)方向。スピーカが歩行者の
方向を向いていないと適切な周波数特性で音が提示されない可能性があるので、
スピーカは歩行者の存在している方向を向ける必要があります。
SN 比(周囲の雑音に対する音案内の大きさの比):約 10 dB※以上。雑音に対し
て信号が小さすぎると音案内が聞き取れない可能性があるので、一定以上の大
きさが必要です。
※dB=デシベル:音の大きさの比を表す単位。10dB は 10 倍に相当。
図 スピーカの使い方
(3)参考
公共空間に設置する音案内は、国土交通省のバリアフリーガイドラインで規定され
ているため、特に公共交通事業者にとっては重要な関心事項である。音案内用の機
器は、現在国内で数社が製造している。
【担当】
産業技術環境局 環境生活標準化推進室(直通:03-3501-9283、内線:3426)
(室長)藤代 尚武
(担当)高橋 昌行
商務情報政策局 ヘルスケア産業課 医療・福祉機器産業室(直通:03-3501-1562)
(室長)覚道 祟文
(担当)阿部 英紀
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