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【技術分類】5−1−1 電子回路

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【技術分類】5−1−1 電子回路
【技術分類】5−1−1
電子回路/IC/時計用基本回路
【 FI 】G04G3/00@K
【技術名称】5−1−1−1
発振回路
【技術内容】
電子時計における発振回路とは、時計の時間精度を決定する最も重要な構成要素であって、水晶振
動子、コンデンサー、抵抗、増幅素子から構成され、生成された発振信号を基準クロックとして出力
する回路である。
時計の発振回路は、音叉型水晶振動子を使用した 32,768Hz 水晶発振回路が一般的である。音叉型水
晶振動子は、発振安定性が良く小型化が可能で耐衝撃性が高いなど多くの優れた特徴を持っている。
図 1 は、時計の CMOS 水晶発振回路の構成図である。
CMOS インバーターとフィードバック抵抗 Rf から成る増幅部と、出力抵抗 Rd、負荷容量 Cd、Cg と水
晶振動子で構成される帰還部から成っている。
水晶振動子は、複数の振動モードを同一励振電極で駆動できることから、発振回路内の諸定数の条
件によっては、高調波発振という不具合を起こす。しかし、出力抵抗 Rd 値の最適化により、高調波振
動の帰還率を基本波振動の帰還率より小さくでき、高調波発振を抑えることが可能である。
【図】図 1 CMOS 発振回路構成図
出典 1、「15 頁
図1
C−MOS 水晶発振回路」
また、さらなる高精度化のため、発振回路の周波数温度特性の改善が試みられている。具体的には、
水晶振動子 2 本を用いる方式、2 つの振動モードが振動子の中で容量結合した FT 水晶振動子を用いる
方式、196KHz 捩り振動モードの TT196 水晶振動子を用いる方式、周波数温度特性に優れた GT カット
水晶振動子を用いる方式など、広い温度範囲で周波数変化の少ない発振回路が研究され、時計に採用
― 324 ―
されている。
(参考資料 2,3,5)
一方、もう 1 つの課題である低消費電力化については、発振回路の駆動電圧を下げることが最も有
効な手段である。これは、CMOS 回路の消費電力 P は、駆動電圧を V、動作周波数を f、負荷容量(主
としてゲート容量)を C とすると、P∝fCV2 となることに基づく。(参考資料 4)
つまり、回路の駆動電圧を下げると、2 乗の割合で電力低減に寄与する。具体的には、図 2 に示す
ように、発振回路(OSC)を定電圧回路(VOLTAGE REGULATOR)で得られる低電圧により駆動して、低
電力化している。
【図】図 2 CMOS 発振回路構成図
出典 2、「3 頁
第 1 図 水晶発振器用 CMOS−IC のブロック図」
【出典/参考資料】
出典 1:
「時計用 CMOS 水晶発振回路の出力抵抗による発振周波数」、
「日本時計学会誌
No.122」
、
「1987
年 9 月」、「川島宏文、富田博之(セイコー電子部品)著」
、「日本時計学会発行」、14−24 頁
出典 2:「電気的に周波数調整可能な高精度水晶発振器の開発」、「日本時計学会誌
No.124」、「1988
年 3 月」、
「落合修、田村富士夫、増茂好孝、谷口利夫(セイコー電子部品)著」
、
「日本時計学会
発行」、1−14 頁
参考資料 1:
「時計用 IC の現状と展望」、「日本時計学会誌
No.150」、
「1994 年 9 月」、「花岡忠史(シ
チズン時計)著」、「日本時計学会発行」、85−94 頁
参考資料 2:
「新形状 GT カット水晶振動子を用いた CMOS 発振回路の発振周波数特性」、
「日本時計学会
誌
No.137」
、
「1991 年 6 月」、
「川島宏文(セイコー電子部品)著」、
「日本時計学会発行」、20−
36 頁
参考資料 3:
「全論理緩急方式の年差時計」、
「日本時計学会誌
No.127」、
「1988 年 12 月」、
「井上裕一、
小田切博之、政木広幸(セイコー電子工業)著」、「日本時計学会発行」、3−15 頁
参考資料 4:
「低電力 CMOS VLSI 回路設計技術」、「マイクロメカトロニクス Vol.42 No.1」、「1998 年
3 月」
、「黒田忠広、森安俊紀(東芝)著」、「日本時計学会発行」、63−69 頁
参考資料 5:「オートカレンダ年差時計の開発」、
「マイクロメカトロニクス Vol.43 No.2」、「1999 年
― 325 ―
6 月」
、
「加藤一雄、小笠原健治、野坂尚克(セイコーインスツルメンツ)著」、
「日本時計学会発
行」、34−43 頁
― 326 ―
【技術分類】5−1−1
電子回路/IC/時計用基本回路
【 FI 】G04G3/02
【技術名称】5−1−1−2
分周回路
【技術内容】
電子時計用分周回路は、発振回路から得られる時計の基準となるクロック信号を入力とし、クロッ
ク信号に同期した所望の周期に分周された信号を得るための電子回路であって、分周比が固定された
固定分周方式と、適宜分周比を可変できるプログラマブル分周方式が用いられている。
図 1 は、プログラマブル分周回路の回路例であり、データ設定可能な 8bit のバイナリーカウンター
で構成されており、最大 1/256 までの分周が可能である。カウンターのカウントは、クロック入力(CK)
の立ち上がりで行なわれ、出力(CO/ZD の反転信号)は、すべてのカウンターの内容が
0
になっ
たときに L レベルで出力される。J0∼J7 は、上記カウントを開始するときにあらかじめ 8bit のカ
ウンターに設定するデータの入力端子である。
この端子に入力されたデータが、セット信号(APE の反転信号または SPE の反転信号)がアクティ
ブになったときに、対応した各 bit に設定される。CLR の反転信号は、カウンター内容を全て 0 に
設定して、最大分周比 1/256 に設定する信号であり、CI/CE の反転信号は、カウント動作を禁止さ
せるための信号である。
今、仮に、
「J0∼J7」=「00000001」であると、8bit カウンターの最上位 bit が 1 に設定される
ので、カウンター動作としてはクロック入力数 128 をカウントすることになり、出力(CO/ZD の反転
信号)は、クロック 128 分周したものとなる。
【図】図 1 プログラマブル分周回路例
出典 1、「3 頁
システム図(TC74HC40103A)」
― 327 ―
図 2 は、図 1 のごときプログラム分周回路を、アナログ多針多機能電子時計に応用したものである。
この出典元論文では、本回路を時計の運針周期を決定する基準信号生成回路として使用している。
【図】図 2 応用例
出典 2、「18 頁
Fig6 Reference Signal Forming Circuit for Motor−Drive」
この技術は、例えば、アナログ多針多機能電子時計における運針周期を決定する基準信号生成回路
や、多機能時計において、様々な音程を作り出すサウンドジェネレータ回路として時計に応用される。
【出典/参考資料】
出典 1:「TOSHIBA TC74HC40102, 40103AP/AF」
、「汎用ロジック IC 製品情報/データシート」、「2002
年 10 月 7 日」、「東芝セミコンダクター著」、「株式会社東芝セミコンダクター発行」、1−12 頁
出典 2:
「アナログ多機能クォーツの開発 2 −キャリバー5T・7T 回路システム−」、
「日本時計学会誌
No.134」、「1990 年 9 月」
、「川口孝、鈴木裕、矢部宏(セイコーエプソン)著」、「日本時計学会
発行」、11−22 頁
― 328 ―
【技術分類】5−1−1
電子回路/IC/時計用基本回路
【 FI 】G04C10/00@A, G04G1/00,308, G04G1/00,310@N
【技術名称】5−1−1−3
定電圧回路
【技術内容】
時計電子回路に安定した電源電圧を供給する手段であって、特に、動作周波数の高い回路部分の電
源電圧を、定電圧回路を使って定電圧化した低い電圧を供給し、時計の省電力化と安定化を図る回路
技術である。
図 1 は、典型的な定電圧回路で、バンドギャップリファレンスで作られた基準電圧を C−MOS の演算
増幅器でインピーダンス変換している。この回路では、演算増幅器部分の増幅率を適当に選ぶことで
出力電圧を任意に決めることができる。
【図】図 1 定電圧回路
出典 1、「87 頁
図3
レギュレータ回路」
図 2 は、発振回路(OSC)や分周回路(DIVIDER)の高周波部などの動作周波数の高い回路部分を、
定電圧回路(VOLTAGE REGULATOR)で得られる低電圧により駆動して、電子回路の低電力化を図る C−
MOS IC のブロック図を例示している。
― 329 ―
【図】図 2 定電圧回路応用例
出典 2、「3 頁
第 1 図 水晶発振器用 CMOS−IC のブロック図」
電子時計用 IC の中で、特にアナログクオーツ(AQ)用では、IC に内蔵した定電圧回路により、発
振器と高周波分周器部分を 1V 程度の電源電圧で駆動して低電力化を実現している。また、液晶表示式
の時計では、アナログクオーツ用の 1.5V に比べて高電圧である 3V 以上の電圧が LCD 駆動用として必
要なため、リーク電流の危険度が増すが、アナログクオーツ用と同様に定電圧回路を使用するように
なってきている。
発振回路を定電圧回路の出力電圧により駆動することにより、消費電流が小さくなるばかりではな
く、発振周波数の電圧依存性は大幅に改善され、高精度化も併せて実現できるようになる。
以上のような定電圧回路の応用は、特に低電力化が必要な発電式電子時計(機械式発電機構、ソー
ラー発電、熱発電など搭載の電子時計)において、有効である。
また、回路技術的には、低電圧で電子回路を安定動作させるために、電子回路を構成するトランジ
スターのスレッシュホールド電圧を、従来の 0.6V 前後から 0.35∼0.45V 程度に下げる工夫をしている。
【出典/参考資料】
出典 1:「時計用 IC の現状と展望」、「日本時計学会誌
No.150」、「1994 年 9 月」、「花岡忠史(シ
チズン時計)著」、「日本時計学会発行」、85−94 頁
出典 2:「電気的に周波数調整可能な高精度水晶発振器の開発」、「日本時計学会誌
No.124」、「1988
年 3 月」、「落合修、田村富士夫、増茂好孝、谷口利夫(セイコー電子部品)著」、「日本時計
学会発行」、1−14 頁
【応用分野】1−2−1
エネルギー関係/発電/光エネルギー利用システム
2−1−1
時間・時刻標準(含む:調節、補正)/内部時間標準/水晶発振式
3−1−1
出力手段/電子式表示/液晶
― 330 ―
【技術分類】5−1−1
電子回路/IC/時計用基本回路
【 FI 】G04C10/00@A, G04G1/00,308, G04G1/00,310@Q
【技術名称】5−1−1−4
昇圧回路
【技術内容】
時計電子回路に必要な電圧値を得るために電圧を逓増する回路であって、逓増された電圧で負荷を
駆動する電源回路としても使用される技術である。
図 1 は、時計の基準クロックである 32,768Hz の発振クロックを用いたチャージポンプ方式により 2
倍昇圧を行なう昇圧回路である。
図中、実線と破線で表されるように 2 系統のチャージポンプを備え、それぞれ交互にコンデンサー
C1 および C2 に電荷をチャージしコンデンサーC3 に汲み上げている。
さらに詳しく言えば、図中、上側クロックが「Hi」のときは、コンデンサーC1 が電池(1.55V)と
並列に接続され、そのコンデンサーC1 と電池はコンデンサーC2 と直列に接続され、その状態でその三
者がコンデンサーC3 と並列に接続される。これにより、コンデンサーC1 は電池電圧 1.55V に充電され、
コンデンサーC3 は、前サイクルで 1.55V に充電されたコンデンサーC2 とコンデンサーC1 および電池
により 3.1V に充電される。
― 331 ―
そして、図中、上側クロックが「Lo」のときは、コンデンサーC2 が電池(1.55V)と並列に接続さ
れ、そのコンデンサーC2 と電池はコンデンサーC1 と直列に接続され、その状態でその三者がコンデン
サーC3 と並列に接続される。これにより、コンデンサーC2 は電池電圧 1.55V に充電され、コンデンサ
ーC3 は、前サイクルで 1.55V に充電されたコンデンサーC1 とコンデンサーC2 および電池により 3.1V
に充電される。
【図】図 1 昇圧回路とその電圧レベル
出典 1、「14 頁
Fig.2 電源回路」
― 332 ―
図 2 は、図 1 の昇圧回路のアース−Vss 間に、負荷抵抗を接続したときの負荷特性を示した図であ
る。この昇圧回路の能力は、使用するコンデンサーの容量値とクロック周波数に依存して決まる。
【図】図 2 図 1 の昇圧回路の負荷特性
出典 1、「15 頁
Fig.3 昇圧電源負荷特性」
このような昇圧回路は、大部分の回路系は低電圧で動作するが、一部の回路系に高電圧が必要なシ
ステムや、時計サイズ・形状などの問題から高電圧の電池が使用できない場合、あるいは発電式電子
時計において発電・充電電圧が所定電圧に達していないときなどに必要な電圧値を、低電圧値から生
成するために用いられる。
【出典/参考資料】
出典 1:「1.5V 電源動作の計測システムの開発」、
「日本時計学会誌
No.153」
、「1995 年 6 月」、「三瀧
和哉(シチズン時計)著」、「日本時計学会発行」、11−22 頁
【応用分野】1−2−3
エネルギー関係/発電/機械エネルギー利用システム−2
― 333 ―
【技術分類】5−1−1
電子回路/IC/時計用基本回路
【 FI 】G04C10/04, G04G1/00,310@C
【技術名称】5−1−1−5
電源電圧検出回路
【技術内容】
電池を動力源とする電子時計において、電池の寿命到来をユーザーに知らせるための手段を構成す
る主要回路であって、電源電圧の低下を検出する回路技術である。
図 1 は、電源電圧検出回路の基本構成とその動作を例示した図である。
電圧に依存する抵抗(Rv_dep)と依存しない抵抗(Rv_indep)とで電源電圧(Vsource)を分割し、
電源電圧がセンス電圧(Vsense)以下に下がった時、後段のインバーターの出力(Vout)を反転させ
るというものである。
【図】図 1 電源電圧検出回路の基本構成とその動作
出典 1、「33 頁
Fig.1 The fundamental composition of battery detector and its behavior」
常に、正確に電池寿命を検出するために、この回路は、時計の使用温度範囲全域において、安定し
て所定の電圧値を検出できなければならない。このような温度特性を検出回路に持たせるためには、
前述の 2 種類の抵抗の温度係数を揃える必要がある。
図 2 は、電源電圧検出回路の温度特性を示した図である。図中、破線は温度特性改善前の電源電圧
検出回路の温度特性で、実線は温度特性改善後の温度特性を示す。
破線の温度特性は、一方を MOS 抵抗、
他方をウェル抵抗で構成した電源電圧検出回路のものであり、
2 つの温度係数の違いから回路の温度特性が悪く、実用的ではなかった。
実線の温度特性は、一方を MOS 抵抗、他方を拡散抵抗で構成した、図示されている電源電圧検出回
路のものであり、回路の温度特性が著しく改善されている。拡散抵抗の温度係数は、不純物濃度で変
えることができるため、半導体プロセスに依存し温度係数が固定されてしまう MOS 抵抗に合わせて拡
散抵抗の温度係数を調整することにより、実線のような温度特性を実現している。
― 334 ―
【図】図 2 図 1 の昇圧回路の負荷特性
出典 1、「37 頁
Fig.6 The temperature characteristics of improved battery detector」
また、電源電圧検出回路の構成は、上記例に限られず、例えば、バンドギャップリファレンスで作
られた基準電圧と電源電圧を比較するような方法もある。
【出典/参考資料】
出典 1:
「電池電圧検出回路の温度特性改善」、
「日本時計学会誌
No.116」
、
「1986 年 3 月」、
「桜井保宏
(シチズン時計)著」、
「日本時計学会発行」、32−37 頁
【応用分野】1−2−1
エネルギー関係/発電/光エネルギー利用システム
1−2−2
エネルギー関係/発電/機械エネルギー利用システム−1
1−2−5
エネルギー関係/発電/充電量表示
1−3−1
エネルギー関係/外部充電/電磁誘導方式
1−3−2
エネルギー関係/外部充電/接点方式
1−4−1
エネルギー関係/パワーセーブ/オートパワーセーブ
― 335 ―
【技術分類】5−1−1
電子回路/IC/時計用基本回路
【 FI 】G04C10/00@C, G04G1/00,310@Y
【技術名称】5−1−1−6
整流回路
【技術内容】
電子時計における整流回路は、時計に内蔵した小型発電機などで発電された交番電流(交流電流)
を整流する回路であって、ダイオードあるいはトランジスターを使って構成される。
図 1 は、運動エネルギーが、小型発電機により電磁誘導で電気エネルギーに変換された後、整流回
路を通して二次電源に蓄えられるシステムの概観図である。
【図】図 1 時計に搭載された小型発電機の概観図
出典 1、「29 頁
図 1 AGS 概観図」
図 2 は、半波整流回路であり、図 1 の発電機が Rc と Xl で等価的に描かれており、その発電機で発
電された交流電流がダイオードにより半波整流され、図 3 に示す電流波形のように半周期のみ二次電
源に伝えられる。
【図】図 2 半波整流回路
出典 2「45 頁
図−9 発電・充電回路の等価回路」
― 336 ―
【図】図 3 半波整流回路の整流電流波形
出典 2「44 頁
図−7 発電電流波形」
図 4 は、半波整流回路と全波整流回路を示す図であり、半波整流回路は前述の図 2 および図 3 と同
一である。
全波整流回路は、ダイオード 4 個によって構成されたダイオードブリッジにより発電電流を全波整
流し、発電電流を全周期に渡って二次電源に伝える。
【図】図 4 半波整流回路と全波整流回路
出典 3、「15 頁
(2.発電効率の向上
― 337 ―
15 頁中央左の図)」
図 5 は、トランジスターを用いた全波整流回路である。
発電電流は、整流用トランジスターTr1 と Tr2 により全波整流されて、充電用コンデンサーC2 に充
電される。
なお、この回路は全波整流機能の他に、チョッピング昇圧機能と 2 倍昇圧機能を持ち、その機能の
ためにトランジスターTr3 と Tr4、ダイオード D1、D2、コンデンサーC1 を備えている。
【図】図 5 トランジスター昇圧整流回路
出典 4、「19 頁
Fig.5 Generating and rectifying circuit」
整流回路は、上記の小型交流発電機を備えた発電電子時計での利用に加えて、時計内に備えられた
電磁コイルへの時計外部からの電磁誘導充電においても、同様に用いられる。
【出典/参考資料】
出典 1:
「自動巻発電ウォッチ用駆動回路の開発」、
「日本時計学会誌
No.126」、
「1988 年 9 月」、
「早川
求、矢部宏、吉野雅士(セイコーエプソン)著」、「日本時計学会発行」、28−40 頁
出典 2:「ウォッチ用自動発電機構の開発」、「日本時計学会誌
No.120」
、「1987 年 3 月」
、「長尾昭一、
安川尚昭、吉野雅士(セイコーエプソン)著」
、「日本時計学会発行」、40−48 頁
出典 3:
「SEIKO「AGS」Cal.4M 系の技術内容」、
「国際時計通信
429 号」
、
「1996 年 1 月」
、
「セイコーエ
プソン著」、
「国際時計通信社発行」
、14−18 頁
出典 4:
「ゼンマイ駆動高精度ウォッチの発電・調速制御システムの開発」、
「マイクロメカトロニクス
Vol.44 No.1」
、「2000 年 3 月」、「小池邦夫、茂木正俊(セイコーエプソン)著」、「日本時計学会
発行」、15−24 頁
【応用分野】1−2−2
エネルギー関係/発電/機械エネルギー利用システム−1
1−2−3
エネルギー関係/発電/機械エネルギー利用システム−2
1−3−1
エネルギー関係/外部充電/電磁誘導方式エネルギー関係/外部充電/電
磁誘導方式
― 338 ―
【技術分類】5−1−1
電子回路/IC/時計用基本回路
【 FI 】G04G1/00,308, G04G3/00@M, G04G3/02
【技術名称】5−1−1−7
時間精度調節回路
【技術内容】
水晶発振器出力を計時基準とする電子時計において、時間精度を向上するための手段であって、発
振周波数そのものを調整するアナログ的手段と、発振器より後段の分周回路を使って論理的に時間精
度を調整するデジタル的手段の二つの回路方式がある。
図 1 は、CMOS インバーターを使用したコルピッツ水晶発振回路で、ロードキャパシタンス(Cl)の
値により発振周波数が変化する。本例では、電気的に静電容量可変な電荷注入型フローティング電極
MOS キャパシター(PEAC)を使ってインバーターの入力側 Cl 値を変え、発振周波数の調整を行なって
いる。
その他の回路手段としては、PEAC に代わって、トリマコンデンサーの使用や、チップコンデンサー
を所定の発振周波数になるように選択的に使用するなどの方式がある。また、コンデンサー時分割接
続方式と呼ばれ、容量値の異なる大小二つのコンデンサーを用意し、それぞれを時分割的に使用して、
そのデューティー比を選択することで平均周波数を調整する方式もある。
【図】図 1 アナログ的時間精度調整回路例
出典 1、「3 頁
第 2 図 発振回路」
― 339 ―
図 2 は、水晶発振回路の発振周波数を固定したままで、分周回路の分周比を論理的に変化させて時
間精度調整を行なう回路方式のブロック図である。本例では、本回路方式を温度補正用に応用してい
る。
この回路方式では、調整の分解能を上げるとともに調整幅を確保するために、発振回路直後の高い
周波数領域の 5∼6 段の分周器を使って分周比を変化させている。このようなデジタル的な時間精度調
整は、その調整が 10 秒周期で行なわれ、その結果、約 3.5ppm の調整分解能と約 3.5×25∼3.5×26ppm
の調整幅を実現している。
【図】図 2 デジタル的時間精度調整回路ブロック図例
出典 2、「8 頁 Fig−5 論理緩急方式のブロック図」
また、調整の分解能を上げる別な手段としては、調整周期を長くする方法もあるが、一般的な時計
の歩度測定器のゲートタイムである 10 秒を越える場合は、歩度測定のための工夫が必要となる。
【出典/参考資料】
出典 1:「電気的に周波数調整可能な高精度水晶発振器の開発」、「日本時計学会誌
No.124」、「1988
年 3 月」、
「落合修、田村富士夫、増茂好孝、谷口利夫(セイコー電子部品)著」
、
「日本時計学会
発行」、1−14 頁
出典 2:「全論理緩急方式の年差時計」、「日本時計学会誌
No.127」、
「1988 年 12 月」、「井上裕一、小
田切博之、政木広幸(セイコー電子工業)著」
、「日本時計学会発行」、3−15 頁
― 340 ―
【技術分類】5−1−1
電子回路/IC/時計用基本回路
【 FI 】G04G3/00@L, G04G3/02@D
【技術名称】5−1−1−8
温度検出・補正回路
【技術内容】
水晶発振器出力を計時基準とする電子時計において、時間精度を向上させるための回路であって、
IC 内蔵の感温発振器により温度測定し、水晶発振器の発振周波数温度特性を補償することで、広範囲
の温度環境において高精度を実現する技術である。
図 1 は、温度補償システム・ブロック図であり、感温発振器(Thermo Sensing OSC)の測温結果をプ
ログラマブル ROM(P−ROM)データを用いて温度測定回路(Temperature Measuring Circuit)で補正
し、それに基づいてロジック調整回路(Logical Adjustment Circuit)で補償量を決定し、分周回路
(Divider)で周波数補償する。
このブロック図では、周波数補償を分周回路のみで行なっているが、
【技術分類】電子回路/IC/時
計用基本回路の【技術名称】
「時間精度調節回路」の項で説明する発振周波数そのものを調整するアナ
ログ的時間精度調整回路を併用する場合もある。
【図】図 1 温度補償システム・ブロック図
出典 1、「4 頁 Fig−1. 温度補償システムのブロック図」
図 2 は、水晶発振器と感温発振器の温度特性を示しており、水晶発振周波数は温度に対して負の二
次曲線であり、感温発振周波数は直線性を持つ。
― 341 ―
【図】図 2 水晶発振器と感温発振器の温度特性
出典 1、「4 頁 Fig−2. 水晶発振器と感温発振器の温度特性」
感温発振器で得られたデータは、カウンタなどで構成された温度測定回路で二乗処理される。その
際、P−ROM の補正データを使って各次数項の係数を補正して、水晶発振周波数に形状を適合させ、必
要な周波数補正量を算出し、その結果を用いて周波数補償している。
図 3 は、上記により補償された水晶発振器の周波数温度特性を示しており、水晶発振周波数が二次
曲線の温度特性からフラットな温度特性に補償されているのが分かる。
【図】図 3 補償前後の水晶発振器温度特性
出典 1、「9 頁 Fig−8. 最大緩急量と補償温度範囲」
― 342 ―
図 4 は、感温発振器の構成例であり、比較的大きい温度係数を持った半導体抵抗を時定数に組み込
んだ CR 発振回路である。この発振回路は、周波数 f=1/(2.2CRt)で発振し、温度によって Rt の値
が変化するので、それに応じて発振周波数が感温特性を持つ。感温発振器の構成は他にもあり、その
詳細は【技術分類】電子回路/IC/付加回路・特殊回路の【技術名称】
「リングオシレーター(温度セ
ンサー)」にて、説明される。
【図】図 4 感温発振器の構成例
出典 2、「90 頁
図5
感温 CR 発振器」
本技術は、特に高い時間精度が要求される年差時計で使用される。
【出典/参考資料】
出典 1:「全論理緩急方式の年差時計」、「日本時計学会誌
No.127」、
「1988 年 12 月」、「井上裕一、小
田切博之、政木広幸(セイコー電子工業)著」
、「日本時計学会発行」、3−15 頁
出典 2:「時計用 IC の現状と展望」、
「日本時計学会誌
No.150」
、「1994 年 9 月」
、「花岡忠史(シチズ
ン時計)著」
、「日本時計学会発行」、85−94 頁
【応用分野】2−1−1
2−1−2
時間・時刻標準(含む:調節、補正)/内部時間標準/水晶発振式
時間・時刻標準(含む:調節、補正)/内部時間標準/原子時間標準式
― 343 ―
【技術分類】5−1−1
電子回路/IC/時計用基本回路
【 FI 】G04G1/00,308
【技術名称】5−1−1−9
モーター駆動回路
【技術内容】
モーター駆動回路とは、指針表示式電子時計(アナログクオーツ)において、モーターに連結され
た指針を適宜運針させるための手段であって、補正パルス運針、正転運針、逆転運針、正逆早送り運
針などの様々な運針を実現する回路技術である。
電子時計の指針用モーターは、一般的な 3 針表示式または 2 針表示式アナログクオーツにおいては、
図 1(a)に示すように、二つのインバーター構成のモータードライバーが 1 対となって、所定の時間
間隔でモーターを駆動する。一方、多機能多針表示式アナログクオーツでは、複数のモーターを、図
1(a)のように個々のモータードライバーで駆動する方法と、図 1(b)のように一部のモータードラ
イバーを兼用して複数のモーター用の駆動回路を構成する方法がある。このように、IC 内で大きな面
積割合を占めるドライバーを兼用することによって、チップ面積を大きく削減することができる。
図 1 のタイミングチャートは、3 つのモーターが見かけ上同時に回転している状況を示している。
【図】図 1 通常ステップモーター駆動回路と改良型多針時計用ステップモーター駆動回路
出典 1、「35 頁
図−4 ステップモータ駆動回路」
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図 2 は、多機能多針アナログクオーツにおける種々のモーター駆動パルス形状を例示しており、指
針表示で様々な機能を実現するために、種々の運針が例示の駆動パルスにより可能となっている。
Compensated Pulse および Logical setting−second Pulse は、補正パルス運針であり、前者はモ
ーター負荷が大きくて回らないとき、後者はローター位置と極性が合わず回らないときに、それぞれ
補正パルス P2 を出力する。Standard Pulse は通常の基本周期運針(例えば、1 秒毎運針)用の駆動パ
ルス、Fast Motion Pulse は正転早送り運針用の駆動パルス、Backward Pulse は逆転運針用の駆動パ
ルスで、3 発の運針パルスを連続して極性を反転させモーターに与え、1 発の逆転運針パルスとしてモ
ーターを逆回転させている。
【図】図 2 種々のモーター駆動パルス形状
出典 2、「15 頁
Fig.3 Motor Driving Pulse」
上述のようなモーター駆動回路技術は、特に多機能多針アナログクオーツに応用されている。
【出典/参考資料】
出典 1:「1/100 秒計測を可能にしたアナログクオーツストップウォッチについて」、「日本時計学
会誌 No.117」、「1986 年 6 月」、「小田切博之、清野喜彦(セイコー電子工業)著」、「日
本時計学会発行」、30−39 頁
出典 2:「アナログ多機能クォーツの開発 2II −キャリバー5T・7T 回路システム−」、「日本時計学
会誌 No.134」、「1990 年 9 月」、「川口孝、鈴木裕、矢部宏(セイコーエプソン)著」、「日
本時計学会発行」、11−22 頁
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【技術分類】5−1−1
電子回路/IC/時計用基本回路
【 FI 】G04G1/00,308
【技術名称】5−1−1−10
低電圧・ローパワー化
【技術内容】
ローパワー化は電子時計における最重要課題の一つであり、低電圧化は電子回路を極低電圧で駆動
しその消費電力の低減を実現する回路技術である。
C−MOS IC の消費電力 P は、電源電圧 V、動作周波数 f、負荷容量 C とすると、P=fCV2 となる。そ
こで、回路の低消費電力化のために、1.5V の銀電池を電源とするアナログクオーツ用 IC は、IC に内
蔵したレギュレーター回路により動作電圧を 1V 程度に低電圧化している。そのため、IC 内のトラン
ジスターは、スレッシュホールド電圧(Vth)=0.35∼0.45V に設計されている。また、3V のリチウム
電池を電源とするデジタルクオーツでも、低スレッシュホールド電圧トランジスターとレギュレータ
ー回路を使った低電圧駆動が採用されてきている。スレッシュホールド電圧が小さくなるとリーク電
流が増大するので、スレッシュホールド電圧特性の作りこみが容易なシリコンゲートプロセスが時計
用 IC では主流である。
図 1 は、レギュレーター回路の例であり、バンドギャップリファレンスで作られた基準電圧を C−
MOS の演算増幅器でインピーダンス変換している。この回路では、演算増幅器部分の増幅率を適当に
選ぶことで出力電圧を任意に決めることができる。
レギュレーター回路を使用することで、消費電力の削減だけでなく、電池電圧の変動に対して回路
動作マージンを大きくでき、かつ水晶発振回路の周波数電圧依存性が大幅に改善される。
【図】図 1 レギュレーター回路
出典 1、「87 頁
図3
レギュレータ回路」
上述の技術は、多くの電子時計で採用され、特に低消費電力化が必要な発電・充電式電子時計に応
用されている。
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一方、低電圧動作化を一層進めるために半導体プロセス面でも改善が検討され、ソース・ドレイン
周りの低接合容量と急峻なサブスレッシュホールド特性を有する完全空乏型 SOI(Silicon−On−
Insulator)といった新しい半導体プロセスも使用されるようになっており、さらなる低電圧動作化、
ローパワー化が図られている。
図 2 は、完全空乏型 SOI トランジスターの断面構造と、ゲート電圧対ドレイン電流特性の一例であ
る。
【図】図 2 SOI トランジスターの特長
出典 2、「7 頁
Fig.2 FD 型 SOI トランジスタの特長」
【出典/参考資料】
出典 1:「時計用 IC の現状と展望」、「日本時計学会誌 No.150」、「1994 年 9 月」、「花岡忠史(シ
チズン時計)著」、「日本時計学会発行」、85−94 頁
出典 2:「アナデジ混載 LSI の低エネルギー化技術」、「マイクロメカトロニクス
Vol.44 No.4」、
「2000 年 12 月」、「門勇一(NTT 通信エネルギー研究所)著」、「日本時計学会発行」、7−12
頁
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