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朝日放送『ムーブ』とドバイ

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朝日放送『ムーブ』とドバイ
1P
腐りきっているのは小役人より政治家
◆ジー・コミュニケーションズ代表
2007・12・03 559号 朝日放送『ムーブ』とドバイ
財部誠一 今週のひとりごと
先週のサンデープロジェクトの特集は見ごたえがありま
した。行政問題を語らせたらこのヒトの右に出る者はいな
いという傑出したジャーナリスト、相川俊英さんのレポート
によるものでした。番宣にはこうあります「雨も降らず台風
でもなかったのに、ある日突然、道路脇の山の斜面が崩
落し、橋が落ちた町がある。なぜ、こんな不可解なことが
起きたのか。この問題を追跡すると、今後、全国各地で起
きる可能性がある国土崩壊の実態にぶつかった。背景に
は『限界集落』、65歳以上が半数以上を占め、存続が難し
くなっている集落が増えていることがあった」。このシリー
ズは見ごたえがあります。また私自身も、あらためて農業
問題への取り組みの重要性を再認識させられました。 (財部誠一)
※HARVEYROADWEEKLYは転載 ・ 転送はご遠慮いただいております。
私は月2度、朝日放送(ABC)の情報番組『ムーブ』に
出演するために大阪に行きます。国内外の取材や講演
会等々の事情から、定期的にテレビに出演することは難
しく、『ムーブ』でも勝手ながら一月に2度出演というわが
まま勝手な変則スタイルになっています。夕方4時から6
時までの『ムーブ』は一般的には「ワイドショー」というカテ
ゴリーに分類されてしまいますが、京都市役所や大阪市
役所の職員たちによる不正行為や、その背後にある同和
問題にまで切りこむといったスクープを連発し、またそれ
を独自取材でキャンペーン化していくなど、キー局では絶
対に見られない報道姿勢を貫いています。しかもそれは
独自取材で行政等のスキャンダルをものにしているばか
りでなく、横並びの安直な造 り込みをしないという点でも
キー局をはるかに凌駕しています。
たとえば夜のニュース番組を立て続けに見ると、ニュー
スの中身も、その伝え方も、なにからなにまでそっくりです。
午後9時NHKの『ニュース9』、10時テレ朝『報道ステー
ション』、11時以降のTBS『ニュース23』、日テレ『ニュー
スゼロ』、フジテレビ『ニュースJAPAN』など、それぞれに
個性的なスタイルはとっているものの、事件や事故の経
済ニュースなどの報じ方といったら、どこもみな最大多数
の視聴者に受け入れられる紋切り型の報じ方しかしない。
思考が常にオール・オア・ナッシングなのだ。物事を多面
的に捉えて、事件や事故の背後にある複雑な事情に少し
でも切り込んでみようという意思がまるで感じられません。
元防衛次官の守屋武昌も朝青龍もみな一緒だ。悪いや
つは悪い。こんなに悪い、あんなに悪い。反省してない。
それもけっこうだが、報道機関を名乗るなら、ライバル番
組とはひと味もふた味も違う独自の取材と独自の見解を
示すことに、ほんの少しでもいいから執着心をもつべきで
す。そんななか「ワイドショー」と軽んじられる朝日放送
の『ムーブ』ほどオリジナリティあふれる報道をしている
番組はありません。もちろん好き嫌いもあるし、客観的
な評価も分かれるとは思いますが、予定調和を一切廃
稲吉正樹 ( いなよし ・ まさき ) 代表取締役社長
1969 年 7 月 3 日生まれ 38 歳。 愛知県蒲郡
市生まれ。 92 年愛知学院大学文学部卒業後、
蒲郡市役所入庁。 94 年がんばる学園を創業、
95 年市役所を退庁。 96 年有限会社がんばる
学園設立。 00 年がんばる学園校舎数が 200
校を突破。 株式会社ジー ・ コミュニケーション
ズへ社名変更、 外食産業へ参入。 02 年上海
展開。 07 年 NOVA 事業譲受、 現在に至る。
◆買収企業一覧
07 年 11 月 NOVA 事業譲受
07 年 5 月 株式会社焼肉屋さかい (51.46%)
(JASDAQ : 7622)
06 年 11 月 中部ロワイヤルグループ (100%)
06 年 11 月 株式会社甚八中部 (100%)
06 年 10 月 株式会社江戸沢 (56.7%)
(東証二部 : 7428)
06 年 10 月 「甲羅」 「季楽」 等、 レストラン
事業譲受
06 年 9 月 「おむらいす亭」 事業譲受契約締結
06 年 8 月 株式会社イー ・ シー (100%)
06 年 6 月 株式会社モンタボー (100%)
06 年 5 月 伊豆の高級温泉旅館 「玉峰館」
事業譲受
06 年 4 月 株式会社パオ (52.3%)
(東証二部 : 7474)
06 年 3 月 株式会社ハーシーズ (100%)
06 年 3 月 株式会社キューズファクトリーズ
(100%)
06 年 3 月 常楽酒造株式会社 (100%)
06 年 1 月 株式会社パオ (34.4%)
(東証二部 : 7474)
05 年 9 月 「焼肉かるび」 「小麦家」 店舗譲受
05 年 9 月 株式会社パオ (15.2%)
(東証二部 : 7474)
05 年 8 月 「とりあえず吾平」 事業譲受
05 年 7 月 平禄株式会社 (51.0%)
(JASDAQ : 2694)
05 年 4 月 株式会社サンウェイ (100%)
05 年 2 月 株式会社キャッツ (100%)
04 年 11 月 株式会社サンモリッツ (100%)
04 年 8 月 株式会社鈴の屋 (100%)
04 年 5 月 株式会社鈴庄 (100%)
避けて通れなくなってきた政界再編
2P
し、東京から呼んできた日替わりのコメンテー
ターの個性を最大限に発揮させ、予想外の展
開を許すという番組作りには頭が下がります。
私は金曜日の担当で、その月の日程を見な
がら、不定期に月2回の出演をしていますが、
出演日には必ず『財部経済シンクタンク』なる
コーナーがあり、木曜までに報道された経済
ニュースについて、短いVTRや写真等々をま
じえながら解説するのですが、自分でも言うの
もなんですが、これがなかなか面白いのです。
極論すれば、10分やるから、好きなことをしゃ
べってよい、ということです。基本的にはテー
マは私が決めますが、私がノーアイデアなら、
スタッフが提案してきたもののなから私がチョ
イスするというやりかたです。ここ2度ほど、印
象的な放送が続きました。11月第1週、ベトナ
ム取材から帰国直後、スタッフからどうしても
破綻した英会話学校「NOVA」についてやりま
せんかと連絡がはいりました。しかも「NOVA」
そのものではなく、「NOVA」の事業と店舗を
引き継ぐことになった名古屋の「ジー・コミュニ
ケーションズ」について話して欲しいというので
す。率直にもうしあげましょう。
「知らない!」
上場もしていない、名古屋の会社について
10分語るのは無理だよと言ったのですが、ど
うしてもやってくれという。要するに「調べてく
れ」というわけです。こちらも代替案もなく、や
むなくあの手、この手で名古屋人脈をたどって
「ジー・コミュニケーションズ」を調べてみると、
これがなかなかいい会社なのです。テレビの
ニュース番組は「学習塾と外食産業の分野で
M&Aを繰り返しながら、成長してきた若手経
営者の会社」ということしか伝えていなかった。
これは新聞も変わらなかった。
ところが、調べてみると、M&Aといってもホリ
エモンとは大違い。一見すると、めったやたら
に学習塾と外食産業を買いまくっているように
みえるのですが、そこには明確な原理が働い
ており、経営能力が問題で破綻に陥った企業
ばかりをターゲットに買収し、経営そのものを
立て直すことで企業再生をはかっていたので
す。まさに米国のターンアラウンド・ビジネスで
す。新生銀行や宮崎のフェニックスリゾートを
買収、再建したリップル・ウッドのビジネスモデ
ルと本質的にはまったく同じことをやっていた
のです。『ムーブ』の私のコーナーではこうした
話を展開したのです、いまどきこんなことを伝
えられるテレビ番組は世の中に存在しません。
ドバイに挑む日本農業
また先週はいまや世界中のセレブが集まる
最高級リゾートとして知られるようになった「ド
バイ」をとりあげました。きっかけはドバイの政
府系ファンドがソニーの株を大量取得したとい
う1本のニュースでした。ドバイの政府系ファ
ンドといえば、米国での拠点づくりのためにユ
ニクロが、なにがなんでも欲しいと買収を仕掛
けた「バーニーズNY」を横からかっさらってし
まったのもドバイの政府系ファンドでした。
たまたま数年前にスタッフがドバイの高級リ
ゾートを取材した映像もあったので、そんなも
のもまじえながらドバイ首長国の国家戦略華
について話しました。UAE(アラブ首長国連
邦)のなかでもドバイは石油資源が豊富では
なく、はやくから「脱石油」を目指した国づくり
に取り組んできました。その中心人物は昨年
首長に就任したムハンマド氏ですが、彼は皇
太子時代から「脱石油戦略」のリーダーとして
知られ、NYタイムズの「世界の10人」に選ば
れたこともあるほど、傑出したリーダーとして
世界から認められている人物です。オイルマ
ネーでじゃぶじゃぶの中東産油国のなかで、
ドバイはいわばゲートウェイの役割を担うにい
たっています。世界120カ国の一流企業
5500社が進出。多くの企業がドバイを基点
に中東全体をカバーするようになってきました。
しかし近年はそうした役割だけではなく、ドバ
イそのものを世界1魅力的なリゾートにしたて
あげていく戦略も見事に結実してきました。ホ
テルの客室数はおよそ3万室。1年に訪れる
観光客数は人口のおよそ5倍近い630万人。
世界で唯一衛星から見えるリゾート島として知
られる『ザ・パーム』には、ビル・ゲイツやデイビ
ット・ベッカムなどが別荘をもっていることで有
名です。また世界で唯一の7つ星ホテル(自
称)『ブルジュ・アル・アラブ・ホテル』は、全室ス
イート、一番小さな部屋でも165平米。
まさにドバイ株式会社です。
そこには明確な戦略があり、ドバイ株式会社は
「世界一」と「中東一」をうたい文句に、強いブラ
ンドイメージの構築に邁進しています。日本の
「ようこそジャパン」戦略やオリンピックで国起こ
しという、途上国的発想とはまるで違います。
日本は本当に井の中の蛙になりはてました。
その最たるものがマスメディアなのですが、自
分が一番先頭にいるつもりだが、じつは世界の
現実からは周回遅れになっていることを認識し
なければなりません。
ただし、日本もすてたものじゃない。
PHPの『VOICE』で来月から農業をテーマにし
た短期集中連載を始めますが、その取材のな
かで驚くべき話に遭遇しました。農業というと規
制と補助金に守られたどうしようもない業界と
いうイメージがありますが、農協にも脱補助金
にも依存せずに、見事な農業経営を展開して
いる農家がじつは少なくないのです。日本の農
業そのものに可能性がないのではなく、現在
の農業政策や農協、またそれにおんぶに抱っ
この農家が破綻の危機に直面しはじめている
だけで、農業そのものには大きな発展可能性
がじつは残されています。顧客をいっさいかえ
りみず、味も品質も関係なし。完全なプロダクト
アウトでやってきた農業は破滅の危機に瀕して
いますが、顧客の顔をしっかりと見ながらマー
ケットインで生産をする農業が日本全国に興り
つつあるのです。その論理的な支柱となってい
る雑誌『農業経営者』が面白い企画をしました。
「世界一金持ちのドバイに、世界最高の農産物
を売り込もう」というのです。すでに手をあげて
いる農家が5つほどあるそうです。
ドバイも面白いが、農業も面白い。今後の取
材にご期待ください。 (財部誠一)
◆ドバイ
アラブ首長国連邦を構成する首長国のひと
つであり同国の首都。 アラビア半島、 ペル
シア湾の沿岸に位置する。 石油埋蔵量が
少量の為、 石油依存型経済からの脱却を
志向。 1980 年代の半ば頃から産業の多角
化を進める。 1981 年に開設された 『ジュベ
ル ・ アリ ・ フリーゾーン (JAFZ)』 は、 外資
直接投資の自由、 外国人労働者の雇用の
自由を保障する経済特区で、 外国企業や
資本の進出を促進した。 金融と流通、 観
光とハード、 ソフトのインフラの充実に力を
入れ、 日本や欧米の大企業が進出、 名実
ともに中東の金融センターとしての位置を占
める。 「中東のシンガポール」 と呼ばれ市
内には倉庫や超高層ビル、 高級ホテル、
別荘などが立ち並ぶ。
◆アラブ首長国連邦 歴史
紀元前 3000 年頃にさかのぼる居住痕が存在。
7 世紀イスラム帝国、 次いでオスマン・トルコ、
ポルトガル、 オランダの支配を受ける。 17 世
紀以降、 英国のインド支配との関係で、 この
地域の戦略的重要性が認識された。 18 世紀
にアラビア半島南部から移住した部族が現在
のア首連の基礎を作った。 1892 年英の保護
領。 1968 年英がスエズ以東撤退を宣言した
ため、独立達成の努力を続け、1971 年 12 月、
アブダビ及びドバイを中心とする 6 首長国 (翌
年 2 月ラスルハイマ首長国が参加) が統合し
てアラブ首長国連邦を結成した。
編集・発行
ハーベイロード・ジャパン
〒105-0001
港区虎ノ門5-11-1
オランダヒルズ森タワー805
TEL 03-5472-2088
FAX 03-5472-7225
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