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次 - Clydebank Asbestos Group
目 次 PS-01 Ivancica Trosic ポスター・セッション アスベスト関連ハザーズ予防への寄与 イワンチカ・トロシック 医学研究・労働衛生研究所[クロアチア] 抄録: 近年、アスベスト使用とアスベスト含有物質の製造に起因するリスクをなくすために、共同の取り組 みが世界的に行われている。アスベスト関連の健康へ危険性についての懸念の急速な高まりを反映 して、欧州連合におけるアスベスト使用は2005年には完全に禁止されこととなっている。今日、アスベ スト・リスクとその発展途上国への移転の脅威に対する一致協力した行動が緊急に求められている。 現在、1960年代または1970年代に建設されたヨーロッパの建物は、最初の改修時期に来ているが、 それらのほとんどはアスベストを含んでいる。多くの場合、アスベストの存在は、改修工事を開始した 後に発見されている。さらに、アスベストはすでに禁止されたと一般には信じられているが、この危険 な物質は、いまだに様々な製品中に加えられている。アスベスト含有物質が公共及び商業用建築物、 プラント及び機器中にどの程度存在するかの評価は、アスベストに関連する健康ハザーズの予防に おいて決定的に重要な方向性を与える。 このような状況の下で、選択された46種の建材が、イギリス安全衛生庁(HSE)の適正アスベスト含 有物質分析法MDHS77を用いて分析された。分析は、偏光顕微鏡、調査サンプル、及び、必要となる 高い分散作用を持つ液体によって行われた。46種の物質のうち、30物質はアスベスト含有であると判 定された。22物質がクリソタイル、5物質がクロシドライト、13物質がアモサイト、1物質がアンソフィライト をそれぞれ含んでおり、一方、アクティノライト及びトレモライトは検査されたどの物質にも含まれてい なかった。少なからぬケースで、複数の種類のアスベストがひとつの物質の中で検出された。検査さ れたアスベスト含有物質のうち、8物質が2種類、3物質が3種類のアスベストをそれぞれ含有していた。 アスベスト含有物質の効果的なモニタリングは、アスベスト管理のよい実践例となるのみならず、その ようなアスベスト製品とアスベスト代替品の国際的なデータバンクを築くことに対して、価値ある貢献を する。 PS-02 Mary Nicol ポスター・セッション 4人の妻とひとりの弁護士 マリー・ニコル、カロライン・コーク、ジャン・ロガーズ、アン・ホーウェルズ アスベスト・アウエアネス・ウェールズ[イギリス] 抄録: このポスター発表の主旨は、アスベスト被災者とその家族を支援する組織を設立するための方法 論の概要を示すことにある。 現在進めている、われわれのこの組織の設立の狙いと目標、そして、地理的な困難さにもかかわら ず、それらを達成するために展開している手段について論じる。 われわれは、世界の文化的、地理的、そして政治的風土の違いは承知しているが、人類としてアス ベストの使用禁止を支持するという点において一致していると感じている。 支援組織を設立したいが、どこから手をつけたらよいのか分からないという人々に対し、このポスタ ーが何らかのアイデアを提供し、勇気を与えるならば幸いである。 PS-03 Geoff Lansley ポスター・セッション アスベスト及びシリカへの職業曝露による疾病・死 亡に対する補償のモデル:労災補償(粉じん疾患) 法1942-1967年 G・ランスリー、S・キジアック、R・バクレー ニュー・サウス・ウェールズ粉じん疾患補償基金[オーストラリア] 抄録: 【はじめに】 オーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州において、様々な工業や商業で働く労働者た ちはアスベストやシリカに曝露した。州政府は、無過失補償制度を1927年に設立し、その後、これら 労働者の特別な要求を満たし、補償手続を能率化するために、1967年に改正を行った。 【方法】 NSW州の全ての雇用者から小額を徴収して補償基金にあてた。粉じん疾患補償基金(DDB)は、 スクリーニング・サービスを行っている。医療当局(Medical Authority)が疾病と障害の程度を決定し、 労働組合と雇用者の代表からなる基金が、補償金額を決定する。請求申請また手続自体には、法的 代理人をたてる必要はない。中皮腫のような悪性の疾病に罹った者には独自の請求手続があり、認 定は平均4∼6週間以内になされる。 【結果】 医療当局は毎年、3,000∼3,500症例を評価する。2002/2003年度に、基金は、総額5,5079,000オ ーストラリア・ドル(約43億円)の補償を認めた。DDBは、粉じん疾患について研究し、その目的のため に3,000,000オーストラリア・ドル(約2億3,700万円)以上の資金拠出を行った。DDBはまた、低額な有 料スクリーニング・サービスを、アスベストに曝露した可能性のある雇用者及び従業員に対して提供し ている。これらの労働者(2002/2003年度には6,000人以上にスクリーニングを実施)は、その後の生 涯にわたってDDBにモニターされる。 【結論】 DDBは、ニュー・サウス・ウェールズ州の労働者に、訴訟を行ったり、それに伴う精神的負担を与え ることなく、低価格、効率的、効果的、そして公平な補償制度を提供している。ニュー・サウス・ウェー ルズの補償モデルは、無過失補償制度における世界の模範となるものである。 PS-04 Rebecca Hyland ポスター・セッション アスベスト起因肺がんの補償を受けたNSW粉じん疾患基金請求者 に関するレビュー:1998-2003年 レベッカ・ハイランド ニュー・サウス・ウェールズ粉じん疾患補償基金[オーストラリア] 抄録: オーストラリアは、過去50年間にわたってアスベスト材の大口ユーザーであった。ニュー・サウス・ウ ェールズ州粉じん疾患基金(DDB)は、ニュー・サウス・ウェールズ州で雇用されている間のシリカまた はアスベストの吸引が原因と考えられる障害をもつ労働者に補償を提供する法的機関である。 補償機関が長年直面しているジレンマは、過去に粉じん曝露を受けた人の肺がんが、直接職業上 の曝露に起因すると認定するのに十分であるかどうかを決定するプロセスにある。DDBは、珪肺また は石綿肺の存在、または25繊維/ml・年のアスベスト曝露を判定基準として用いている。本研究では、 臨床的、職業的及び曝露の特性を検討するために、過去5年間に、粉じん関連肺がんとしてDDBか ら補償を受けた全ての請求者に関する情報をレビューする。 1998年から2003年の間に、総計138人の元労働者が、ニュー・サウス・ウェールズ州粉じん疾患基 金からアスベスト関連肺がん(n=127)とシリカ関連肺がん(n=11)として補償を受けた。疾病タイプ、 病理所見、併発している他の疾病、喫煙履歴及び肺組織繊維数などを含む臨床的情報が、DDBの ケース・マネージャーにより実施された面談インタビューに記録された職業履歴とともに検証された。3 人の産業衛生専門家により作成されたアスベスト曝露評価についての評価が行われた。 このコホートの全ての症例は男性であり、その多くはオーストラリア生まれ(75%)であった。平均年 齢は72歳で、67%は元喫煙者であり、平均37パック・年の喫煙歴であった。腺がん(38%)及び扁平 上皮がん(28%)が最もよく見られた組織学上の細胞タイプであった。アスベストに曝露すると考えら れる上位3の職種は雑役工、港湾労働者及び配管工であった。上位3の産業は建築/建設業、アスベ スト製品製造業及び発電所であった。アスベスト曝露のあった者中で、51人は石綿肺(41%)であった。 アスベスト曝露の産業衛生的評価は個人によって大きな変動があった。 PS-05 Anthony Johnson ポスター・セッション オーストラリア・ニュー・サウス・ウェールズ(NSW)における中皮腫の 発症率 アンソニー・ジョンソン ニュー・サウス・ウェールズ粉じん疾患補償基金[オーストラリア] 抄録: オーストラリアはアスベストの一人当たりの使用量が世界で最も多い国のひとつである。われわれは、 ニュー・サウス・ウェールズ州(NSW)における過去15年間の悪性中皮腫(MM)の発生率を報告し、こ れらのデータを他の公表されている数値と比較する。 【方法】 1985年から2001年までの悪性中皮腫(MM)の発症率は、オーストラリア中皮腫サーヴェイランス・プ ログラム(AMSP)、オーストラリア中皮腫登録(AMR)、ニュー・サウス・ウェールズ州中央がん登録 (CCR)及び粉じん疾患基金(DDB)のデータに基づいている。 【結果】 粉じん疾患基金(DDB)は、1985年から2001年までの間に、悪性中皮腫の補償を受けた患者数は 年間25人からほとんど100人まで増加したことを見出した。ニュー・サウス・ウェールズ州(NSW)では、 がんの届出が法的に義務づけられている。中央がん登録(CCR)は、観察期間の最後には、悪性中 皮腫の年間届出数が150を超えると報告した。オーストラリア中皮腫登録(AMR)は、1980年に公式な 自主的届出制度として始まったオーストラリア中皮腫サーヴェイランス・プログラム(AMSP)を引き継ぐ ものである。がん登録の相互チェックは定常的に実施されている。われわれの調査結果によれば、オ ーストラリア中皮腫登録(AMR)の年間症例数は、同時期の中央がん登録(CCR)とほぼ同等である。 【結論】 ニュー・サウス・ウェールズ州(NSW)における中皮腫の発症率は増加し続けている。同州の男性の 発症率(年間10万人に対し4.5人)は、世界で最も高い数値のひとつである。アスベスト曝露が報告さ れた事例の中で最も多い産業は建設業である(21%)。アスベストは、1970年代までニュー・サウス・ウ ェールズ州(NSW)で広く使用されており、このことは中皮腫が今後も増加し続けるであろうことを意味 している。 PS-06 Rodica Dumitru ポスター・セッション ルーマニアのいくつかの産業におけるアスベストへの職業曝露 ロディカ・スタネスク・ドミトル1、バリ・コンスタンチネスク1、エレーナ・ルース2 1 ブカレスト公衆衛生研究所労働衛生部[ルーマニア][参加できず・ポスター提出] 2 ポリテクニク大学工業化学部[ルーマニア] 抄録: 本報告の目的は、ルーマニアのいくつかの産業、アスベスト・ガスケットの製造(Ⅰ)、アスベスト織 物の製作(Ⅱ)、アスベスト・セメントの製造(Ⅲ)、におけるアスベストへの職業的曝露について調査す ることにある。この目的のために、次のようなパラメータを評価した。空気中のアスベスト濃度、尿中の アスベスト濃度、及び、喀痰細胞診に関し、職業的に曝露した労働者群とコントロール群の比較。 空気中及び尿中のアスベスト繊維はその長さと径が測定され、空気中及び尿中の濃度が測定され た。われわれは、サイズと化学的成分のデータを得るために、エネルギー分散型X線マイクロアナライ ザ装置に接続したフィリップス社の515走査型電子顕微鏡を使用した。サッコマンノ(Saccomanno)法 が痰細胞検査に使用された。製造工程(Ⅰ)及び(Ⅱ)において空中の、飛散していたクリソタイル繊 維、製造工程(Ⅲ)においてクリソタイル及びクロシドライト繊維の存在を確認した。 空気中の繊維バーの長さと径の平均値についてはⅡ>Ⅰ>Ⅲであることが分かった。空気中のア スベスト濃度はⅢ>Ⅰ>Ⅱであった。空気中の繊維サイズと尿中の繊維サイズについては類似性が みられた。 尿中のアスベスト濃度(尿1ml中の繊維数、及び、尿1ml中のアスベスト重量)はⅢ>Ⅰ>Ⅱであっ た。尿中の繊維の一部は分解していた。コントロール群では尿中にはアスベストは検出されなかった。 製造工程(Ⅰ)及び(Ⅲ)の痰細胞検査では、粉じんを取り込んだマクロファージと気管支細胞のマ イルドな軽度異型細胞(atypia)が見られた。製造工程(Ⅱ)では同様な軽度異型細胞(atypia)が見ら れたが、貪食細胞(マクロファージ)は少なかった。 結論として、アスベスト・セメント製造における職業的曝露は、下記理由でルーマニアにおいてもっ とも有害なもののひとつであると考える。 −空気中にクロシドライト・ファイバーが存在する −空気中のファイバーが小さい −空気中のファイバー濃度が高い PS-07 Neonila Szeszenia-Dabrowska ポスター・セッション ポーランドにおけるアスベスト加工工場労働者の医学検査の管理 及び協力:AMIANTUSプロジェクト ボゼンナ・スタンキビック−コロスズチャ1、ネオニーラ・スゼスゼニア-ダブロウスカ2、ズ ザンナ・ズベルト2 1 ポーランド保健省[ポーランド] 2 ノファー職業病研究所、ロッツ[ポーランド] 抄録: ポーランドにおけるアスベスト加工工場の元労働者に対する定期的な追跡健康診断は、1997年6 月19日公布(2003年3月14日改正)のアスベスト含有製品使用禁止法により義務づけられている。石 綿肺、中皮腫、肺がんなど、一般に知られているアスベスト曝露による健康影響は、アスベスト粉じん に曝露した労働者への追跡健康診断に政府の予算を投入する理由として十分なものである。 定期 健康診断は、(兆候前の段階も含めて)病気の初期の段階での診断を可能にし、それにより病気の進 行を妨げ、遅らせるための適切な処置をとることができる。 この法律の規定を実効あるものにするべく、追跡健康診断が始められた。法律により指定されたポ ーランドの28のアスベスト加工工場の労働者全員が、定期健康診断とアスベスト関連疾患用の無料 の治療薬を受けることになった。アスベスト加工工場は国内に散在していたので、多数の医療機関が 診断に関わる必要がある。よって、12の医療機関の数十人の内科医による健康診断の実施と管理が 必要となっている。 実施と管理にあたっては、以下の点に重点を置いている。 (1) 標準化された健康診断方法及び適切な訓練や相談の実施 (2) 職業的にアスベスト粉じんに曝露した労働者の呼吸器への悪影響の観察 (3) アスベスト曝露作業者の登録の一元化 (4) 予防的健康診断の結果のデータベース化 2000年から2003年の間に終了したこの健康診断は、管理センターに集められた「健康診断カード」 の記録をもとにデータベース化され、そこにはこのプロジェクトによる4,850人の労働者と6,830回の健 康診断結果が集められている。4,850人の労働者のうち、698人(14.4%)が石綿肺と診断された。また、 16件の肺がんがあり、また、11人が胸膜中皮腫と診断された。 放射線診断により、1,486人(30.6%) の横隔膜上限局性壁側胸膜肥厚斑が発見され、1,778人(36.7%)の肺のX線写真に陰影が見つか った。従来の診断に比べ放射線診断では11.7%の患者に以前よりよくない診断が下されたが、臨床 検査のみの場合は4.6%の患者にとどまった。 このように、追跡健康診断の実践は、アスベスト繊維の曝露による疾患の発見に有効な結果をもた らしている。 PS-08 Neonila Szeszenia-Dabrowska ポスター・セッション 石綿肺により補償を受けた労働者における悪性及び非悪性の死 亡率 ウルズラ・ウィルジィンスカ、ネオニーラ・スゼスゼニア-ダブロウスカ、ウィスロウ・ジィム スカ ノファー職業病研究所[ポーランド] 抄録: 本研究の目的は、石綿肺と診断された人々における、アスベストに起因する悪性疾病のリスクを調 べることであった。この研究は、1970年から1997年に石綿肺と診断された、全てのポーランドの労働 者群(907人の男性と490人の女性)を対象とした。この追跡調査は、診断日から開始されている。全 体で421人の死亡が記録され、死亡者の93.3%の死因が追跡されている。男性(死者数300人、標準 化死亡比127)、女性(死者数121人、標準化死亡比150)ともに著しい過剰死亡が認められた。この増 加は主に、良性の呼吸器疾患(男性:死者数42人、標準化死亡比344、女性:死者数20人、標準化死 亡比789)、肺がん(男性:死者数39人、標準化死亡比168、女性:死者数13人、標準化死亡比621)、 胸膜中皮腫(男性:死者数3人、標準化死亡比2,680、女性:死者数3人・標準化死亡比7,207)による。 アスベスト繊維吸引の累積量を考慮すると、肺がん、胸膜中皮腫による死者数の明白な増加は、25 繊維・年/ml以上の繊維に曝露することに起因する、と判明した。この結果は、石綿肺の罹患者は、悪 性の腫瘍とりわけ肺がんと中皮腫を発症するリスクが高いことを示している。 PS-09 Stanislawa Szalucha ポスター・セッション ポーランドにおいて使用されるアスベスト及びアス ベスト含有製品の根絶 政府のプログラム スタニスラバ・スザルーチャ 経済労働社会政策省[ポーランド] 抄録: アスベストは、ポーランドでは約3,000種の工業製品の製造に使用されており、主には屋根材、側 壁材、配管などの建築材(少なくとも約85%)が前世紀を通じて使われていた。 ポーランドのアスベスト製品の総量は、約15,000千トンと推定され、そのうち14,900千トンはアスベス ト・セメント板(1,351,500千m2)で、残りの600千トンはパイプやその他のアスベスト・セメント製品である。 現在、アスベスト粉じんに曝露すると石綿肺、肺がん、胸膜中皮腫、あるいは良性の胸膜病変を引き 起こすことがよく知られている。 1997年から、元経済省はアスベストを経済界、特に建設業から排除する計画に必要な基礎を提供 するために多くの調査や専門家による分析を実施した。2002年5月、閣僚会議(内閣)は、ポーランド からアスベストとアスベスト含有製品を排除するための計画を実施することを決めた。 この計画の目的は下記のようなものである。 ・ (ポーランドの国土からアスベスト廃棄物を一掃し)、長年使用されたアスベスト含有製品をを除 去すること ・ ポーランド国民の健康に及ぼすアスベストの悪影響を排除すること ・ 自然環境に対するアスベストの影響を削減すること ・ アスベスト含有物質に関する欧州連合(EU)規制と手順を実施するための適切な条件作りを行う こと この計画の主な課題は、アスベスト含有物質の継続的な除去と保管のための条件を定義すること である。アスベスト含有製品の除去は廃棄物の生成を余儀なくし、その廃棄物に対処する唯一の方 法はそれらを保管することになる。既存または新規の埋立地に保管されているアスベストとアスベスト 含有製品の処分の問題は、廃棄物保管に関する指令Directive 1999/31/ECの履行によって解決さ れるであろう。 この計画の実施によって期待される利点 ・ ポーランドにおけるアスベスト関連疾病と死亡を減させること ・ ポーランドの国土を長年使用されたアスベスト含有物質から浄化すること ・ 生命と健康に及ぼすアスベストの危険性について人々の注意を高めること ・ 自然環境に対するアスベストの影響をなくすこと PS-10 Shigemitsu Takayama ポスター・セッション 空調・配管工事従事者における胸部病変の検討 高山重光 管工業健康保険組合健康管理センター[日本] 抄録: 【目的】 空調・配管工事従事者では建築現場での間接的石綿曝露による健康障害が懸念される。今回、 従事者の今後の健診方針策定に役立てることを目的とし石綿曝露に関する胸部病変の検討を行っ た。 【方法】 過去の石綿曝露の指標とされる胸膜肥厚斑所見を主体に、健診時の胸部単純X線所見を検討し た。対象は問診情報から職業性石綿曝露歴ありと考えられた男性192名であり、平均年齢は57歳。41 名では直接的曝露、151名は間接的石綿曝露歴ありと考えられた。単純X線は120kV、125mAで撮 影し、読影は、呼吸器内科医3名と放射線科医1名で行った。側壁、face-on、横隔膜各部位における 胸膜肥厚・石灰化所見、肺線維化所見、問診情報等との関係を検討した。 【結果】 肺線維化所見の頻度は低かったが、胸膜肥厚所見は間接的石綿曝露群でも高頻度に認められ、 直接曝露群ではさらに頻度が高かった。肥厚所見は側壁で他の部位に比較して高頻度で認められ た。 【考察】 空調配管工事従事者は職業性石綿曝露の機会が多く、長期の潜伏期間を経て発症する石綿関 連疾患に対する対策は極めて重要である。問診で得られる情報は極めて有用であり、石綿曝露量の 多いと思われる群に対しては、今後禁煙支援を含む新たな健診システムを検討する必要があると考 えられた。 PS-11 Shigeharu Nakachi ポスター・セッション 阪神大震災によるアスベスト被害の経験と教訓 中地重晴 環境監視研究所・有害化学物質削減ネットワーク(Tウォッチ)[日本] 抄録: 1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災によって、約300万人が被害を受け、そのうち約6,433人 が犠牲となった。また、26万戸以上の家屋やビルが破損したといわれている。その中で、倒壊し解体 された家屋は約12万4千戸、鉄筋のビルディングで、倒壊し、使用不能になったものは約1,500棟にの ぼった。倒壊したビルディングの中には、吹き付けアスベストが使用されているものが、少なく見積もっ ても100棟以上あった。 地震直後から、ビルの解体、撤去が行われたが粉じんの飛散が問題となった。水道が復旧していく 中で、散水しながら解体作業を行うように行政が指導したが、ズサンな解体作業も多かった。2月半ば に、日本でその当時すでに使用禁止になっていたクロシドライトが吹き付けられた解体現場で、最大 250f/lという高濃度のアスベスト粉じんの飛散を確認した。 ボランティアと「被災地のアスベスト対策を考えるネットワーク」を結成し、電話相談や被災地のパト ロールを行った。吹き付けアスベストのあるビルを見つけ出し、行政と業者にきちんと解体作業を行う ように要請した。市民のネットワークの活動で、被災地でのアスベストの飛散が低減されたと考えられ る。震災時の経験と教訓を報告する。 PS-12 Naoki Toyama ポスター・セッション 建設解体現場における気中石綿濃度測定と曝露防止対策 外山尚紀1、名取雄司2 1 東京労働安全衛生センター・作業環境測定士[日本] 2 亀戸ひまわり診療所[日本] 抄録: 日本では輸入された石綿の9割以上が建材として利用され、その大部分が現存している。それら建 材を使用した建物の解体、改築に従事する建設労働者はアスベスト曝露の高リスク集団であり、今後 も長期的なリスク管理が求められる。一方、建設現場は木造から鉄筋まで多様であり、石綿含有建材 も吹き付け材、乾燥壁、天井、配管等多様であり、作業者の曝露は一様ではない。本報告では、石綿 含有建材の除去作業時の気中石綿濃度を測定し、作業者の曝露濃度の推定と、また、可能な曝露 防止対策を試行しながら気中濃度測定を行ない、対策の効果を評価した。日本産業衛生学会の許 容濃度等の勧告による評価値によれば、石綿は0.1f/cm3以下のオーダーでの管理が求められるが、 石綿含有建材を破砕しながら除去する作業では、作業者が数f/cm3の石綿曝露を受ける可能性があ る。一方、飛散の抑制と封じ込めの対策により、評価値以下での管理は可能であると思われた。 PS-13 Paul Jobin ポスター・セッション 水俣の悲劇からJOSHRCの創立へ−日本の労働組 合では新しいスピリットが誕生 ポール・ジョバン フランス国立公衆衛生医学研究所(INSERM)、パリ第7大学[フランス] 抄録: 労働組合の衰退と産業公害を、工業化社会がもたらす2つの主要な問題だと考えると、日本で起き た事柄は興味深い経験として他の国々の参考になるだろう。 1950年代末までに、日本の労働組合の大半は、労使協調路線の道を選んだ。その結果、生産主 義方針がもたらす産業公害が無視され、比較的高い賃金と企業福祉とひきかえに、労災職業病を病 んだ労働者は口を閉ざし続けたのである。 水俣では、最初、いわゆる水俣病を引き起した企業の労働者は、被害者を無視していた。しかし 1962-63年の安定賃金闘争で第一組合に残り、経営者側から差別を受けた第一組合員は、別れた 「御用」の新労被害者を無視し続けたのに反し徐々に水俣病被害者と手を結んだのである。1970年 に彼らは公害ストを行い、1972年水俣病裁判では被害者の立場に立って労働者も証言した。このよう な行動を通して、労働組合の新しいスピリットが生まれた。 水俣の経験に学び、全国の工業地帯では(東京、京浜、名古屋、大阪等)、少数派組合の若い労 働者は、それまで大企業組合に無視され続けた下請けや零細企業に入り込んで、労災職業病の闘 いに積極的に取り組んだ。そして、1990年代よりコミュニティ・ユニオンを創立した。同時に、労災職業 病と環境問題の密接な関係や、公害輸出問題などを、社会問題として浮き上がらせることに成功した。 この運動の中で、石綿公害の社会問題化に重要な役割を果たした田尻宗昭氏は、全国労働安全セ ンター連絡会議(JOSHRC)の設立にも努め、氏の弟子達はGAC2004(2004年世界アスベスト東京会 義)の中心的主催者である。 PS-14 Alison Reid ポスター・セッション アスベスト単独の量関連影響を超える石綿肺罹患の肺がんリスク に対する影響 アリソン・ライド1、ニコラス・デクラーク2 1 ウエスターン・オーストラリア大学公衆衛生学部[オーストラリア] 2 ウエスターン・オーストラリア大学児童保健研究所[オーストラリア] 抄録: 【前提】 アスベスト曝露の状況がわかっている患者において、石綿肺の存在が肺がん発生の必須条件(前 駆)であるかどうか考察すること。 【手法】 西オーストラリアのクロシドライト鉱山と精製の町、ウイットヌームの元労働者と居住者で、アスベスト 曝露の状況(曝露の継続期間、曝露の程度、はじめて曝露した時期)が把握できる2,214人に対して、 ビタミンA(はじめの5年間、半分の対象者にベータカロチン、他の対象者にパルミチン酸レチノール) を用いたがん予防プログラムへの参加を求めつつ、年毎の胸部レントゲン撮影、喫煙状況の調査を 行った。 はじめのエックス線写真の読影は、1998人の調査対象者に対して、1990年から1996年の間、レント ゲン写真による石綿肺の証拠を得るため、国際対がん連合(UICC)の分類(ILOの分類)に基づいて 行われた。コックス比例ハザードモデル(Cox proportional hazards modelling)は、石綿肺とアスベスト 曝露、肺がんの関連を評価するために実施された。 【結果】 12%の調査対象者において、初期のX線写真から、レントゲン診断に基づく石綿肺の証拠が得ら れた。喫煙歴は、肺がん発症との最も強い関連性を示し、現在の喫煙者のリスクが最も大きかった(オ ッズ比=31.7(95%信頼性区間:4-235))。エックス線写真により石綿肺と診断された患者(オッズ比 =2.15(95%信頼性区間:1.21-3.82))と、アスベスト曝露のあった者(オッズ比1.24(95%信頼性区 間:1.05-1.45))は、肺がんのリスク増加との明確な関連性を示した。 【考察】 ウイットヌームの元労働者と居住者を対象とした今回の調査では、石綿肺は、アスベストを原因とす る肺がんの必須の前駆疾患ではなかった。これらの結果は、肺がんを引き起こしているのはアスベス ト繊維そのものであること、肺がんは石綿肺の疾患があるなしにかかわらず発症すること、一方、石綿 肺の存在は肺がんのリスクを増加させること、との仮説を裏付けるものである。これは、曝露を過小評 価した結果である可能性がある。 PS-15 Claudio Bianchi ポスター・セッション 港湾でのアスベスト曝露と胸膜中皮腫 クラウディオ・ビアンチ イタリア対がん協会・環境がん研究センター[イタリア] 抄録: 過去数十年にわたって、大量のアスベストが多くの工業国によって輸入されてきた。アスベストは主 として海路で輸入されたため、港は激しい汚染にさらされることになった。1960年から1980年の間、年 間5千トンから1万8千トンのアスベストの積荷が、トリエステ港(*訳注)経由で入荷された。鉱物のアス ベストは、袋詰めか箱詰めで輸入された。これらの容器は破損していることが多く、その結果、大量の 粉じんが撒き散らされた。その汚染がいかに深刻であったかについては、1977の地域保健機関の産 業医学部門(Occupational Medicine Unit of the Local Health Authority)による記録が残されている。 現在の研究では、1968年から2004年までに、トリエステ港の港湾労働者の中で見つかった23の胸膜 中皮腫の症例が報告されている。18例においては解剖所見がある。患者はすべて男性で、年齢は39 歳から80歳(平均年齢は61歳)であり、ほとんどがアスベストを含む様々な商品の荷役作業に従事し ていた。十分な時系列的データが入手できた18人のうち、12人は1950年以降に作業を開始していた。 大多数の患者は20年以上勤務していた。潜伏期間は25年から60年(平均38年)であった。17の解剖 所見がある症例で調べたところ、通常の肺組織標本で、15の症例にアスベスト小体が検出された。トリ エステ地域で実施された他の職業群と比較した調査によれば、港湾労働者は、他の職業群に比べて より短い潜伏期間を示し、通常の肺切片において、より多くのアスベスト小体が検出された。これらの 結果は、アスベストに対する非常に激しい集中的な暴露があったことを示している。トリエステ港にお ける港湾作業に起因する事例として、他に、二人の女性の胸膜中皮腫の症例がある。患者はともに 港に面した住宅に住んでいた。経歴からは、アスベストの職業暴露も家庭内暴露もみつからなかった。 うち一人に行われた解剖所見では、通常の肺切片でいくらかのアスベスト小体が認められた。 * 訳注:トリエステ:イタリア北東部にある港湾都市。トリエステ港は南ヨーロッパの重要な貿易拠点と して、古くから栄えてきた。 PS-16 Claudio Bianchi ポスター・セッション 船舶解撤におけるアスベスト曝露 クラウディオ・ビアンチ イタリア対がん協会・環境がん研究センター[イタリア] 抄録: アスベストは造船で広く使用されてきており、船の中でアスベストが使用されていない場所を見つけ るのは難しいほどであった。アスベストのすべての種類が使用されてきたが、その中には一般的に最 も危険であると考えられているクロシドライトも含まれる。船舶解体は、適切な防護措置がとられない場 合には、重度のアスベスト曝露の原因となる。船舶の解体はこの20年間でアジアのいくつかの国々に 集中してきている。現在、世界の船舶解体のうち約90%がバングラディッシュ、インドおよびパキスタン で行われている。最も重要な船舶解体現場はインドのグジャラート州の海岸にあるアランにある1。ブラ ジルの写真家(セバスチャン・サルガド)によって1989年にバングラディッシュで撮られた一連の印象 的な写真はこれらの作業場現場の深刻な状況を説明している。これらの国々で実施された調査研究 によれば、船舶解体作業に従事する人々はその作業の危険性について知らされていない2。解体技 術は原始的で防護措置はほとんどなされていない。近隣の村まで環境汚染していることがパキスタン で報告されている3。問題は中央アジアの国々に限られたことではない。地中海地域で重要な船舶解 体場所はトルコの西海岸にあるアリアガであり、盛んに行われている。船舶解体における緊急事態に 立ち向かうために国際的な連携が必要である。 1. Langewiesche W. The Outlaw Sea. North Point Press, New York, 2004 2. A.R.チャウドリー・レポン バングラディッシュの船舶解撤ビジネスにおけるアスベスト 世界アスベス ト東京会議 2004年11月19∼20日(GAC2004全体会議セッション2) 3. ノア・ジーハン他 女性の健康と環境曝露:パキスタン・ノースウエストフロンティア州マルダン地区 サライ・キリにおける中古船舶からのアスベスト・リスク 世界アスベスト東京会議 2004年11月19∼ 20日(GAC2004ワークショップE) PS-17 Lundy Braun ポスター・セッション 補償のための国際的標準に向けて:アスベスト曝露の人間への影 響評価への総体論的アプローチ ランディ・ブラウン1、ソフィア・キスティング2 1 ブラウン大学アフリカ研究・環境研究・病理学[アメリカ] 2 ケープタウン大学公衆衛生・家庭医学校労働・環境衛生部[南アフリカ]] 抄録: ほとんど50年間、石綿肺を患ってきた労働者たちは、政府やアスベスト産業界に健康被害につい て補償を求めてきた。いままでのところ、損害や障害の評価基準は世界中で異なっている。このように 異なる理由は、ひとつには、石綿肺を診断し個人の病状の程度を決定する簡単な方法がないこと、こ の病気の複雑で多様な進展、そして病気の範囲を決めている訴訟の論争的で対極的なあり方に由 来する。法的体系は、この病気が容易に定義でき、一様であり、予測できる状態にあるという概念に 依存している。最も適切な石綿肺の診断は、臨床検査、石綿肺にいたる個人の曝露履歴と徴候学、 X線撮影による変化、及び肺機能の低下の証拠を用いてなされる。しかし、労働者の補償の歴史は 労働者と産業界との間の深い不信感が根底にあり、それは様々な団体が医師と患者の経験を受け入 れる度合いに影響を与える。その結果、うわべがより客観的なX線と肺機能測定に頼るようになってき ている。これら2つの技術だけに頼ることにはいくつかの問題がある。第一に、肺機能テストは、定量 的データを生成するので、容易に信頼性のある説明しやすいデータが得られるという前提が固定観 念としてある。ある場合には、これは障害に対し融通のきかない数値基準を使用するという結果となっ た。第二に、肺機能検査は、広く行き渡った 人種補正 race correction 実施のために差別的になり 得るということである。第三に、唯一の基準としてのX線撮影を用いたアスベストの診断は、肺繊維症 は重症の場合も含めて、X線撮影では損傷の証拠が検出されないことがあり得るということである。診 断のためにひとつの特定の手段や方法だけが用いられるよりも、われわれは診断と障害の確定に対 する総体的なアプローチ(holistic approach)、すなわち、補償にあたり患者を評価する場合には、患 者の経験、臨床的評価、X線撮影、CTスキャン、そして肺機能検査が総体的に採用されるべきことを 主張する。 PS-18 Linda Reinstein ポスター・セッション 怒りを行動に変えて リンダ・ラインスタイン アスベスト疾患啓発協会(ADAO)[アメリカ] 抄録: リ ン ダ ・ ラ イ ン ス タ イ ン 、 彼 女 は ア ス ベ ス ト 疾 患 啓 発 協 会 ( Asbestos Disease Awareness Organization)とアスベスト啓発連合(ADAO Coalition for Asbestos Awareness)の役員であり、創設 者の一人であって、怒りを行動に変えた人である。 リンダは、知ることが予防や早期診断、最新の治療や治癒につながると考え、彼女の数十年に及 ぶ非営利活動の経験や高度なコミュニケーション技術、広範なネットワークを駆使し、アスベスト疾患 啓発協会を設立した。 一連の誤った診断に続いて、何か月もの間、診断が下されないままの症状に耐えた後、彼女の夫 は、手術によって中皮腫にかかっていることが確認された。病気の厳しい経過予測と根治療法の選択 肢が少ないことに打ちのめされて、リンダはアスベストと医学的情報について徹底的なリサーチをはじ めた。100年間にもわたる、有害な物質と病気との結びつきを示すアスベスト関連の文書や数多くの 治療上の助言を公衆の面前にさらして、リンダは、いつか他の人を助けるために、彼女の情報源や知 識、経験を分かち合おうと決意した。今あるように、アスベスト曝露と被害者や家族に対する影響につ いて、公衆を教育しようと。 リンダは、あなた自身の市民活動の組織をうまく設立したり管理したりするために、活動の広げ方、 組織、主な要素、コツなどを共有しようと考えている。 PS-19 Nguyen Ba Toai ポスター・セッション ベトナムの屋根材工場におけるアスベスト使用の現状 グエン・バ・トアイ ハノイ大学土木工学部[べトナム] 抄録: べトナムでは、クリソタイル・アスベストが屋根材、摩擦材、断熱材、耐火衣類の製造に使用されて いる。クリソタイルの90%以上が全アスベスト・セメント屋根材工場(約35か所)で使用されている。その 生産量は年間、約6千万平方メートルである。クロシドライトやアモサイトほどには危険ではないが、クリ ソタイルはじん肺や肺がんを引き起こす。アスベスト・セメント屋根材工場に多くの汚染物質があるが、 クリソタイルが最も危険である。クリソタイル・ダストの状況は2002年末に実施された国の調査団の環境 測定でより明らかになった。 まず空気汚染の主な理由を説明する。むき出しの製造ライン、水をかけない研削、汚染防護システ ムの欠如、安全と環境保護に関する知識の欠如。 次に国が調査した10工場におけるアスベスト労働者の職業病に関する調査結果を示す。労働者 1,032人について胸部X線撮影によりアスベスト関連肺疾患を検査した。 その後で、全てのアスベスト・セメント工場における汚染を低減するために必要な措置に対する取 組みと、べトナムにおけるアスベスト代替の研究への取り組みについて説明する。 最後に著者は、労働者の健康を守るために既存の汚染を防ぐための代替案、及びクリソタイルが 非汚染物質に置き換えられるまでの間、アスベスト・セメント屋根材工場の持続可能な発展を確実に するための案を提言する。 PS-20 Andy Oberta ポスター・セッション 既存アスベスト・セメント製品の修理と維持管理に関 する新しい規格 アンディ・オバータ 環境コンサルタント、ASTMインターナショナル・アスベスト管理作業グループ[アメリカ] 抄録: 2年前のギリシャ・アスベスト会議で、アンディ・オバータは、ASTMインターナショナルが新たな規格 を作成すると発表した。その規格は出版されたところである。彼は、その規格について検討したりコメ ントを加えてくれた人たちに感謝の意を表明する。 アスベスト・セメント製品の問題はアスベスト繊維の飛散の問題であるが、ここでは、天候などの自 然の原因に加えて、特にこの規格の優れた点として、維持管理、改造(築)、修理の作業における物 理的な損傷による飛散を取り上げている。 E2394として知られているこの規格は、既存のアスベスト・セメント製品を除去することができないとき に、それらのアスベスト製品を取り扱う作業における問題を提示している。 E2394は、粉じんを生じさせ、アスベスト繊維を大気中に飛散させる可能性のある作業を分類して いる。手順にしたがって作業をすれば、大気中の繊維に曝露する機会を減らすことができる。 皆さんはたぶん、多くの種類のアスベスト・セメント製品をご存知であると思うが、アスベスト・セメント 製品は、世界で最も広く使用されているアスベスト繊維を使った製品である。ここではいくつかの実例 があげられている。 E2394は、それらの製品の使用にあたって、なぜこれらの作業手順が必要かということ、及びその背 景にある原則を説明している。監督者は、付録にある作業手順を作業者を訓練するために使ったり、 現場での作業の際のチェックリストとして使用することができる。 これらの実例の中で、E2394に含まれている二つの作業手順が図を使って説明されている。エアダ クトに作られた穴は、手動のこぎりによって切断されたものである。こちらの穴は、サイディングに、電 動ドリルを低速駆動させて開けられたものである。 粉じんや繊維の飛散は、主に、洗剤を混ぜた水や髭剃りクリームなどを使った湿潤化対策や、でき る限り手工具を使って作業を行うことで防止される。電動の工具や特殊な真空掃除機は、特別な作業 や管理方法を必要とするが、それは、E2394の一部のユーザーが入手できない可能性がある。 E2394は、このような屋根材や壁材などの新しいアスベスト・セメント製品を設置することは奨励して いない。ここにあるようなサイディングの取り外し作業のような大掛かりな解体プロジェクトは、ある程度 の手順は適用可能であるが、対象とはしていない。 維持管理や改造(築)、修理の作業を指揮する監督者や管理者は、細かな手順だけでなく、もとに なっている原則に精通している必要がある。政府やNGOの代表者は、この規格を、労働者や地域住 民を守るための法令や作業規則の作成のために利用するべきである。 E2394はASTMのウェヴサイトから、現在、北アメリカにおいては38米ドル、他の地域で41米ドルで オンラインによる購入が可能である。皆さんが自分たちの国で取得したいということであれば、それに 関する情報のリストが、ここのアドレスのサイトで入手できる。 ASTMは規格に対するコメントや問い合わせを歓迎している。規格は、発行されたあとも見直しを続 けるものだからである。それぞれの国の規格団体についての情報は、上に述べたリストを参照してほ しい。 訓練は規格を利用する上で重要な部分を占めている。ASTMは、規格が使われている様々な国で の訓練を提供している。E2394を利用する上での訓練について、皆さんからの問い合わせを歓迎して いる。 設立後106年に及ぶ活動の中で、ASTMは11,000もの合意に基づく規格を提供してきており、それ らは世界中で使用されている。そこでの、新しい規格を作成したり、現在の規格を改定したり、訓練を 提供するための資金は、規格や関連する出版物の販売によって得られているのである。 PS-21 Kyla Sentes ポスター・セッション アスベスト禁止カナダ(BAC) カイル・センテス アスベスト禁止カナダ(BAC)[カナダ] 抄録: 世界規模でのアスベスト禁止を推進する使命に加えて、アスベスト禁止カナダ(BAC)は、被災者を 助け支援したいという強い希望をもって設立された。しかし、カナダの地理的な広がりのために、被災 者とその家族のための取り組みと活動の調整は、簡単なものではなかった。それを効果的なものにす るために、BACは、州ごとの補償システム、アスベスト曝露に関連した立法、確保できる専門家、そし て社会的支援に関連して、州ごとで情報伝達の調整を行っていかなくてはならない。 PS-22 Rahma Mohammed Refaat ポスター・セッション アスベスト肺と癌が11のアスベスト企業で働くエジプト労働者をの みこむ ラーマ・マホメッド・レファット 弁護士、労働組合・労働者サービス・センター[エジプト] 抄録: 21世紀にもなって労働者がまだアスベストに職業的に曝露しているとは、ぞっとする話であるが、そ れは事実である。エジプトにおける1万人もの労働者が、11のアスベスト製品製造会社でアスベストに 対する深刻なリスクに継続的に曝されている。11の会社とは次の会社である。 1. エジプト・パイプ・セメント製品−セイグワート(公的セクター) 2. エジプト渦巻きばね会社−ヤヤット(公的セクター) 3. エジプト・スペイン・アスベスト−オウラ・ミサ 4. モウニア・カメル・ロウカ社 5. シゴラ貿易統合契約 6. セイファ貿易供給 7. 統合貿易機関(U.T.O) 8. アスベスト・エジプト工場−イスメイル・タウフィック& 9. エジプト・イタリア・ブレーキMIB−ミスル・ブレーキ 10. イギリス・マホムド EL −グインディ ・プラスティック機器 11. アウムド・ヘイムド・シャハット・サンズ アスベストの職業曝露は、適用される制限曝露レベルや安全対策を考慮しないこれらの会社の中 で広範囲に見られる。雇用期間中もそのあとも、医療健康診断や他の調査のための検査を行うといっ た、真剣な対策が全くとられてこなかった。 エジプト当局は、1998年に、アスベストの輸入を防止する省令を作成したが、2か月半の後、産業 界や雇用者の圧力を受けて後退してしまった。国内通商大臣(はじめの省令を制定)は、アスベストの 輸入と禁止に対する例外を認めるための新しい省令(no.97/1999)を制定したが、彼は、アスベスト製 品製造会社は、作業状況を、法律に適合するように再度調整することが可能だと述べている。これら のすべての会社は、公的セクターも含めて、状況を改善するためのどのような手段もとってこなかった と、現在述べている。 全国労働安全衛生協会(政府機関)は、アスベスト繊維に対する職業曝露が、呼吸器官にどのよう な影響を与えるのかということを調査してきた。調査の被験者の人数は556人である。そのうち476人は、 一般に、シグワート社で、セメントの混じったアスベスト粉じんに様々な期間曝露した。80人の対象グ ループは、作業の期間中、アスベスト・セメント粉じんに一切曝露することなく、ほぼ同じ年齢で曝露グ ループと同じ社会経済基準での生活をした。他方で、作業環境のサンプルの採取、測定が行われた。 この調査の結果は次のとおりであった。 作業環境でのアスベスト繊維濃度は高い測定結果を示した。特に、パイプ切断作業では、 82.13f/mlという曝露制限基準とは比較にならない数値だった。 331人の曝露労働者(69.54%)は、一つかそれ以上の臨床的症状(痰がからまない咳、痰のからむ 咳、喀血または血痰)があった。研究では、たいていのアスベスト疾患はこれまでのところ治療法がな く、それらの疾患にいったん罹ってしまうと、それは徐々に悪化するということが明らかにされた。臨床 症状としては、さまざまなパターンがあるが、以下のように、曝露期間が長くなるにつれて増加してい る。アスベスト工場で5年以下の期間アスベストに曝露した労働者の40.63%、10年から15年雇用され ていた労働者の59.77%、15年から20年働いた人の81.52%、20年から25年間雇用されていた労働者 の83.02%、25年以上雇用されていた労働者の86.05%が症状を示した。 曝露した労働者の21.85%が、アスベスト肺に罹患しているとみられた。今述べた研究は10年以上 前から行われ、多くの勧告が出されているが、今なお1万人以上の労働者が、適用される曝露レベル や安全対策が考慮されない作業の中で、アスベストに曝露している。 オラ・エジプト・アスベスト製品会社 この会社は、1983年以降、ラマダン市10番でアスベスト製品の製造を行っているが、必要とされて いる安全対策や安全基準を無視し続けてきた。この会社の120人の労働者は、曝露制限基準や他の 曝露基準の範囲をこえるアスベストに曝露している。その結果、そのうちの46人が癌に罹患した。オ ラ・エジプト社の労働者たちは、団結して、エジプト当局に、工場を閉鎖すること、必要とされている安 全対策や基準を守る保証が得られない限り再開しないように求めてストライキを行った。 オラ・エジプト社の問題について、われわれセンターはエジプトのアスベスト産業に対して申し立て を行った。これによって、自分たちに対して故意に行われている殺人的犯罪に対して要求している労 働者との意見交流の機会が得られた。事実と詳細を明らかにしつつ、それ基づきながら、私たちは異 なる団体と関係する機関に裁判を提起した。そして、最近、議会の健康委員会がアスベスト産業の活 動を停止させることを勧告した。 しかし、他方、産業界、雇用者、他の政党、行政すらも圧力をかけてきた。だが、われわれはまだ挑 戦している。 PS-23 Noor Jehan ポスター・セッション パキスタンとタイにおけるアスベストの写真 ノア・ジーハン ペシャワール大学環境科学部助教授[パキスタン] 抄録: パキスタンの各所においてアスベストの環境的な健康への危険性及びリスクに関し、さまざまな事 実が、写真という形で記録され、語られている。 これらの場所は、パキスタンにおける、不適切で不法な取り扱いや、保管、移動などが行われたり、 採掘、粉砕、研削、処理などの過程で純粋及び混合のアスベスト製品が使用される場所や、地域の アスベスト製品や廃船の中からかき集められた輸入アスベストが使用される場所などを含んでいる。 (写真1∼10) これらの写真は、パキスタンにおける環境と健康に対する危険性とリスクとを、質実ともに、雄弁に 語っている。 私の最近のタイ国訪問時に、バンコク、チュンボリ、パサイアなど様々な都市で、様々な製品として 膨大な量のアスベストが消費され、それらが様々な産業分野で不適切な取り扱いをされていることを 示す写真を、資料として収集した。 これらの写真は、タイにおける現在及び将来のアスベストの健康リスクの概観と全体像を示すもの である。私の観察によれば、タイは将来、数年後にはアスベストによる大災害が発生するかもしれない 世界で数少ない国のひとつになるかもしれない。 PS-24 Corrinne Heaney ポスター・セッション 正義を求めて コリン・ハーネイ 北アイルランド・アスベスト被災者の正義[イギリス] 抄録: 造船、保温、建設などの産業で広く使用されていたアスベストは、苦痛や病気そして死の遺産をも たらした。現在ではもはや使用されていないが、この極めて有害な物質ののっぴきならぬ後遺症は今 日でも北アイルランドで顕著に見ることができる。アスベスト関連の疾病で最も影響を受けているのは 造船産業(ハーランドとウルフ)及び発電所や工場での建設工事に関わった人々である。 私の祖父、ロバート(ボブ)は1950年代から60年代にポーティシェアド発電所で働いていた。彼は保 温工事の監督であり、ウイリアム・ケニオンやケープ・アスベスト・コントラクツなどの会社の下で働いて いた。彼は1978年8月15日に腹膜中皮腫で死亡した。 私の叔父、エディーもまたイングランドに働きに出かけた。保温技術者の見習いとして働いた。彼も また数年間、ケープ・アスベスト・コントラクツで働いた。彼は1978年6月に腹膜中皮腫で死亡した。 私の叔父、デニスはデリーでケープ・アスベストの保温プロジェクトで働いた。彼はクールキーラー 発電所でアスベストに曝露したようである。彼は1994年にアスベスト関連の肺がんで死亡した。 私の父、トムは15歳の時にポーティシェアド発電所で彼の兄弟エディーと働き出した。彼もまた見 習い技師として働いた。彼はやがて保温技師となり、ケープ・アスベスト、ターナー&ニューオール、コ ーク・インシュレーションなどいくつかの会社で働き、デリーのクールキーラー発電所でも働いた。彼の 父親と二人の兄弟がアスベストによって引き起こされる疾病で死亡したのを見た後に、彼もまた病気 になった。1999年11月に彼は胸膜中皮腫であると診断された。彼は2000年8月21日に死亡した。 これは、現在、アスベスト関連疾病に苦しんでいる多くの人々の一つの例に過ぎない。我々は、家 族を養うために一生懸命働いたのに、単にアスベストに曝露したというだけで人生のさかりにおいて 苦しみ、死んでいく一つの家族全体をそこに見る。北アイルランドでは造船業と建設産業があるので このような問題が拡がっている。これらの人々は正直に生きようとしただけなのに、今、彼らは苦しみ死 んでいく。正義はどこにあるのか? 次⇒