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処分場の換気・排水に関する検討
3-16 1. 処分場の換気・排水(3.4.3.1) はじめに 第 2 次 TRU レポートでは,3.4.3.1 操業全般に関する検討において,操業に関する前提条件, 廃棄体等の物流,及び運転管理の考え方について整理されており,放射線管理の観点においても, 換気施設,及び排水処理施設を設置する必要があることが示されている。また,処分場の換気・ 排水に関する具体的な記述は行っていないが,安全・確実な操業を行うためには処分場の換気・ 排水システムの検討は不可欠である。ここでは,処分場の換気,及び排水方法に関する検討結果 について取りまとめる。 2. 処分場の換気 TRU 廃棄物処分施設においては,建設,操業,閉鎖期間が重複しないことから,換気は建設段 階と操業・閉鎖期間に区分される。建設期間における換気は通常のトンネル等の建設における換 気方法と同等であるため,ここでは操業・閉鎖期間における換気方法について取り扱う。 操業・閉鎖期間における換気の主な要件は以下のとおりである。 ①作業員の安全性の確保 ②人工バリア材の長期性能に影響を及ぼすような事象を生じさせない ①については,汚染された空気を換気することを念頭に,第 2 次 TRU レポート 3.2.2.5(5)で示 された地下施設レイアウトを参考に概略検討した換気方法の一例を示し,②については緩衝材の 品質確保に着眼した換気の検討例を以下に示す。 (1) 作業員の安全性に着眼した換気方法の例示 処分場の換気は,坑道全面を利用した坑道換気法を基本とするが,給気立坑・斜坑から給気さ れ主要坑道及び処分坑道を経由し,排気立坑から排気される坑道換気と,主要坑道から給気され 処分坑道を換気後,再び主要坑道に排気する局部換気により構成する(図-1 参照)。 換気方法の概要を以下に示す。 ・換気は 1 系統とし,立坑 2 本のうちの 1 本と斜坑を給気用,もう 1 本の立坑を排気用 とする。 ・立坑,坑道への換気は,排気立坑地上部に送風機を設置する排気方式により行う。装 置数量は 2 系列以上とし,冗長性を確保する。なお,外部へ排気する際には,必要に 応じて集塵機を設置し,坑内の粉塵を除去して排気する。 ・処分坑道の換気は,処分坑道が閉塞し坑道換気が不可能となることから局部換気で対 応する(図-2 参照)。操業の進捗に伴い換気用ダクトを移動する必要があるため,遠 隔操作型伸縮ダクトを用いるものとする。 ・主要坑道の換気ルートには,給気用坑道と排気用坑道間の漏風を防止するため換気用 遮断隔壁と風量調節隔壁を設置する(図-1 参照)。風量調節隔壁は風量を制御しなが ら一方向のみに空気を通し,人及び物を移動可能とする二重シャッター構造とする。 1 ・汚染された空気が発生した場合,ダンパ等の切替えに時間を要することから,排気は 1 系統として常時すべての排気を HEPA フィルターに通すことで対応する。 そのために, 換気装置と HEPA フィルターのセットを 2 系列として冗長性・メンテナンス性を持た せることとする。 ・空調設備は地上給気立坑口に設置し,処分坑道内温度及び湿度を設定値以内に確保す るよう給気温湿度を調整する。 給気立坑 排気立坑 地上坑口に空調装置を設置 地上坑口にフィルター・送風機を設置 換気用遮断隔壁 斜坑 換気用遮断隔壁 換気用遮断隔壁 伸縮ダクト 局部換気装置 局部換気装置 局部換気装置 局部換気装置 局部換気装置 風量調節隔壁 局部換気装置 図-1 坑内換気設備配置概念図 図-2 局部換気装置 2 (2) 緩衝材の品質確保 緩衝材の施工方法はベントナイトと砂の混合材料を予め高密度に圧縮したベントナイトブロッ クを積み重ねる方法等が検討されている。 締固められたベントナイトが大気中に曝された場合,温度及び湿度の条件により吸水・膨張又 は乾燥・収縮によるひび割れなどの変状が生じる。とくに処分坑道内は高温多湿状態となること が想定されるため,緩衝材の施工性や施工後の品質に影響を与える可能性がある。 a. 既往の研究例 環境条件が緩衝材に与える影響を把握することを目的に,小型のベントナイトブロックを温度 及び湿度を一定に保った養生室中に 3 ヶ月間保管し,その寸法や含水比等を計測した既往の研究 (畔柳ほか,2004)の成果を以下にまとめる。 (a) 実験条件 供試体はベントナイトと砂を乾燥質量比で 7:3 の割合で混合し,水分を加えて含水比調整した 後,乾燥密度 1.6Mg/m3,直径 10cm,高さ 5cm の円筒形に静的に締固めて作成した。実験は気中の 条件(温度,湿度)と供試体製作時の初期含水比をパラメータとして実施した。表-1 に実験ケー スを示す。 表-1 ケース No. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 (b) 実験ケース一覧 気中条件 供試体 初期含水比 温度 湿度 7% 80% 14% 21% 40℃ 7% 95% 14% 21% 7% 20℃ 48% 14% 21% 実験結果及び考察 図-3 に供試体含水比の経時変化を示す。含水比の変化は実験開始から約 20∼40 日程度でほぼ 収束し,ケース No1,4 のみ含水比が増加した。また,計測の結果,実験前後の供試体の直径及び 高さの変化率は,含水比が最も増加したケース No.4 でそれぞれ 3.8%及び 5.5%増加し,最も減 少したケース No.9 で 1.7%及び 2.4%減少した。一方,ひび割れは実験開始から 0.5∼1 日以内に 供試体表面に発生し,乾燥の影響が大きいケース No.9 では,供試体内部を貫通するひび割れも確 認された(図-4 参照)。 これらの実験結果から,ベントナイトブロックはその初期含水比と気中の条件によって,吸水・ 膨潤又は乾燥・収縮の変状の形態及び程度が決定されると考えられた。 3 22 No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8 No.9 含水比(%) 18 14 ① ② ③ ②温度 40℃,湿度 95% ①温度 40℃,湿度 80% 10 6 ③温度 20℃,湿度 48% 2 0 20 40 60 経過日数(日) 図-3 100 含水比の経時変化 ①No.4(初期含水比 7% 温度 40℃ 湿度 95%) 図-4 80 ②No.9(初期含水比 21% 温度 20℃ 湿度 48%) 供試体ひび割れ状況(経過日数 1 日) ベントナイトブロックの変状により,緩衝材の施工精度の低下や他の人工バリアの上載荷重に よる破壊等が生じる可能性がある。したがって,このような変状を抑制する対策が必要である。 図-3 から,気中の条件ごとに供試体の初期含水比に関わらず,時間の経過にともない含水比が一 定置に収束することがわかる(この値を以下,平衡含水比という)。 図-5 に気中の温度及び湿度と平衡含水比の関係を図示した。また,一定の温度条件下であれば, 湿度と平衡含水比には相関関係があると想定し,その関係を表す近似線を同図に示した。 4 12 平衡含水比 (%) 10 8 6 4 20℃ 40℃ 2 0 0 20 図-5 40 60 湿度 (%) 80 100 平衡含水比と湿度の関係 図-5 の関係が成立するならば,緩衝材施工時においては,①気中の条件により,初期含水比を 予め図-5 の近似線から求められる平衡含水比に一致させたベントナイトブロックを製作し施工 に用いる,また,逆に②製作されたベントナイトの任意初期含水比に応じて,初期含水比が平衡 含水比となるよう気中の条件を図-5 の近似線から求め,施工中その条件を保つよう空調管理する, という二つの方法によって,ベントナイトブロックの変状を抑制できる可能性が示唆された。 なお,図-5 に示す関係については,今後のデータ取得や実験研究の成果による見直しと検討が 必要である。 b. 緩衝材の品質確保に着眼した空調管理について a.の実験結果より,ベントナイトブロックを定置した後,乾燥や吸水によるひび割れを防止す るために温度,湿度の管理を行う必要性が示唆された。 したがって地温などの影響により坑道内で温度・湿度差が生じることを考慮し,すべての位置 で同じ温度・湿度に保たれるような空調管理方法を検討しておく必要がある。 すべての位置で同じ環境とするためには,坑道内送風・排気ダクトの送風・排気口を密に設け るなどの対策が必要と考えられる。 以下に空調管理方法の一例を以下に示す。 5 大気中より吸引した空気の 温度を調整(地上施設) ③温度センサー 加熱用ヒーター 冷却用クーラー ④地上送風機 (②温度調節器) (地上施設) ①外気導入装置 排気 吸引 地温等の影響 により温度,湿 温度管理 度が変化する ⑤立坑(送風側) ⑮立坑(排気側) 地下深部 500∼1,000m ⑪処分坑道 ⑩坑道内送風ダクト ⑥温度・湿度セ ⑭排気装置 (地下施設) ンサー (⑯排気用ダクト) 湿度管理 ⑬温度・湿度センサー 温度管理 ⑫温度・湿度センサー 加熱用ヒーター 加湿器 冷却用クーラー (⑦温度調節器) 除湿器 (⑧湿度調節器) ⑨送風機 坑道内に空気を供給する前に,温度調整,湿度調整 し,必要な条件を満たすようする(地下施設) 図-6 空調管理方法例 (地上施設) ・①の外気導入装置により空気を取り入れて,②の温度調節器で温度調節を行う。そ の際,③の温度センサーで管理し,所定の温度を満たすように調節する。(ここで 設定する温度は,外気温や⑤立坑内での地温を考慮して,⑦,⑧とともに⑪処分坑 道内で必要な空気調整を効率的に行えるように設定する。 ) ・温度調節した空気を④によって送り出し,⑤の立坑内を送風する。 (地下施設) ・立坑内では,地温によって空気の温度・湿度が変化すると予想されるため,⑥で地 下施設に流入する空気の温度・湿度を測定する。 ・⑥での測定結果を基に,坑道内に送風する空気の温度・湿度条件を満たすように⑦, ⑧で温度・湿度を調節し,⑨の送風機によって⑩の坑道内送風ダクトを通じて,⑪ の処分坑道内に空気を送風する。 ・⑫,⑬の温度・湿度センサーによって,⑪の処分坑道内の温度・湿度を管理し,⑦, ⑧にフィードバックする。(⑦を設置しない場合は,⑪の温度センサーでの測定デ ータは地上施設の①へフィードバックされる) ・⑭の排気装置によって,坑道内の空気を⑮の立坑内を通じて外部へ排気する。 6 3. 処分場の排水 処分場地下施設の建設時に発生する湧水や坑内での使用水,及び操業から閉鎖終了までに地下 坑道から発生する恒常湧水は,作業員の安全性や地下坑道の力学安定性等を確保するために,地 下排水施設,設備を設置し,地上に排水する必要がある。 とくに廃棄体定置後には,廃棄体近傍を通過した湧水も集水することから,放射性物質が混入 する可能性があるため,系統中に排水ピット及びモニタリング設備を設置し,汚染拡大を防止す る。 (地下施設) 処分坑道内で発生した湧水は,自然流下方式等により処分坑道端部に設置した排水ピットに集 水する。その他の主要坑道,連絡坑道,坑底施設,斜坑からの湧水についても適宜排水ピットを 設置し,それらに集積された地下水を主要坑道,坑底施設に設置した配水管,配水ポンプ等によ り,立坑下端の集合ピットに強制配水する。集合ピットに集積された地下水は,立坑に設置した 排水管,排水ポンプ等により,さらに地上へ揚水する。 (地上施設) 地下施設より揚水された地下水を原水槽に移送し,モニタリング後,管理基準以下であれば直 接,管理基準以上であれば希釈後,濁水処理設備に移送する。ここで除染処理や浮遊物質量(SS) , pH 等の調整を実施した後,放水する。 4. 結論 安全・確実な操業を行うために重要となる処分場の換気,及び排水方法に関する検討結果につ いて取りまとめた。 換気方法については,作業員の安全性に着目した換気方法,及び緩衝材の品質確保に着眼した 換気・空調方法を例示した。後者については既往の緩衝材の暴露試験結果に基づき概略検討した 結果であるが,現状十分なデータがあるわけではなく,今後のデータの蓄積や緩衝材の要求性能 の見直し等に応じて適宜見直していく必要がある。 また排水方法についてはその概念を例示したが,今後想定される岩盤からの湧水量や操業方法 等の具体化に応じて,より詳細な排水方法,設備を検討していく必要がある。 7 参考文献 畔柳幹雄,小林一三,増田良一,稲継成文,金谷賢生(2004) :ベントナイトブロックの気中にお ける変状に関する実験的検討,原子力学会 2004 年秋の年会,I50,平成 16 年 9 月. 共同作業チーム(2000) :TRU 廃棄物処分概念検討書,JNC TY1400 2000-001,TRU-TR2000-01. 8