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Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
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日本経済再生の条件―シュンペーター型景気回復への処
方箋―
西村, 功
經濟論叢 (1992), 150(4): 17-28
1992-10
https://doi.org/10.14989/44856
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
平 成 四 年 十 月 ﹁日発 行 (毎 月 一日 一回 発行 )
羅 濟論 叢
第150巻
第4号
石 川 常雄 教授 記 念 號
敏
献
辞 … ・
… … … … … ・・… … … ・… … ・… … ・… 瀬
地
田
滋
朗
中 央 銀 行 は そ の 独 自情 報 を ど の よ う に
9
ウ自
金 融 自 由 化 と 公 的 金 融 機 関 … ・… ・… ・… … ・… ・・… 内
7
ー
村
ユ
日 本 経 済 再 生 の 条 件 … … ・… … ・
… … … … … … ・… 西
春
功
野
樹
バ ー ナ ー ド理 論 を め ぐ っ て ・
… … … … … ・・… … … 飯
山
本
哲
香 港 金 融 の外 貨 化傾 向 … … ・
… … ・・… … … … … … 佐
藤
総 投 下 労 働 量
・所 得 率 と 経 済 発 展 … … … … … … 中
島
章
日本 的 経 営 財 務 と企 業 特 殊 的 熟 練 … … … … … … 池
尾
和
48
進
用 い るべ きか ・
… … … … … … ・・… … … … ・… … ・
・島
64
子
86
人
石 川常雄
教 授
略歴
・著 作 目 録
平 成4年10月
東 靖β文 學 経 麿 學 會
102
経 済 論 叢(京
都 大 学)第150巻
(279)ユ7
第4号,ユ992年10月
日本 経 済 再 生 の 条 件
一
シ ュ ンペ ー タ ー型 景 気 回 復 へ の 処 方 箋 一
西
は
92年6月,宮
じ
め
に
崎 義 一 ・京 都 大 学 名 誉 教 授 に よ る 『複 合 不 況(中
出 版 さ れ て 以 来,複
功
村
公 新 書 〉』 が
合 不 況 と い う新 語 が 今 次 景 気 後 退 の性 格 を 端 的 に表 現 した
名 造 語 と して,一 種 の 流 行 語 とす ら な っ て い る。
た しか に 今 回 の 不 況 は,日 本 の み な らず 米 欧 と も共 通 して,バ
ブ ルの 崩壊 に
よ る膨 大 な 不 良債 権 の 発 生 に 伴 う ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ン チ と,従 来 型 の有 効 需 要
不 足 とが 重 な って 増 幅 す る新 し い タ イ プ で あ る。 こ の 間 の バ ブ ル 崩 壊 過 程 に つ
い て,宮
崎 名 誉 教 授 の きわ め て 実 証 的 か っ ヴ ィ ヴ ィ ッ ドな 分 析 は,け
だ し現 時
点 に お け る決 定 版 と い え よ う。
そ こ で 本 稿 で は,宮
崎 論 文 で は あ ま り触 れ られ て い な い 実 物 経 済 面 の 分 析 を
加 え,か っ 過 去 の 不 況 期 の経 験 も踏 ま え な が ら,今 次 の い わ ゆ る複 合 不 況 を 克
服 す る た め の処 方 箋 を 描 い て み た い 。
1不
経 済 情 勢 の 認 識 や 予 測 に は,常
況 の性格 分析
に錯 覚 が つ き ま とい が ち で あ る。 好 況 時 に は
ま だ ま だ 景 気 上 昇 が 続 く か の よ う に錯 覚 し,逆 に不 況 時 に は い つ ま で も立 ち 直
りの 契 機 す ら視 野 に 入 っ て こ な い 。
現 に 今 回 の バ ブ ル 崩 壊 に よ っ て 景 気 が 完 全 な 失 速 状 態 に 陥 っ て い た91年4∼
6月 の 時 点 に お い て す ら,多
企 画 庁)は,「
くの マ ク ロ ・エ コ ノ ミス トや 政 策 当 局(特
景 気 は 減 速 しな が ら も根 強 い 拡 大 基 調 に あ り,"い
に経 済
ざ な ぎ景
18〔280)第150巻
気"の
第4号
記 録 を更 新 す る長 期 好 況 の 可 能 性 大 」 と い う呑 気 な 判 断 を下 し て い た 。
ち な み に 筆 者 は.す
の 不 安 定 性,設
て"い
で に90年 秋 の 時 点 に お い て,逆
資 産 効 果 や 金 融 ・資 本 市 場
備 投 資 の 下 降 を 主 因 とす る 景 気 後 退 局 面 の 到 来 を予 測 し,併 せ
ざ な ぎ景 気"と
の 比 較 の 無 意 味 さ を 指 摘 して い た(90年10月2工
日付 日本
経 済 新 聞)。
他 方,不
況 下 の 経 済 調 整 が 遅 々 と して 進 まず,さ
らに信 用 シス テ ムに対 す る
不 安 感 が 根 強 く潜 在 して い る現 状 で は,回 復 の シ ナ リオ を 容 易 に 描 く こ とが で
きず,こ
と に ミ ク ロ の 視 点 か らは トン ネ ル の 出 口が 全 く見 え て こ な い の が 実 感
で あ ろ う。
しか し,好 況 の 後 に は 必 ず 不 況 が あ り,そ れ は や が て 次 の 好 況 に 転 ず る。 も
ち ろ ん 今 回 は,回
復 局 面 が 定 着 す る ま で に な お 全 治3年
あ ろ う。 で は,不
況 か ら立 ち直 るた め の 条 件 は 何 か 。
こ れ を解 明 す る た め に,過
ほ どの 期 間 を 要 す る で
去 の 不 況 時 の 経 験 と学 習 効 果 が 有 益 な ヒ ン トと な
ろ う。 い うま で も な く,今 回 の 不 況 は これ ま で 経 験 の な い 新 しい タ イ プ の そ れ
で あ り,バ ブ ル の 崩 壊 を 背 景 とす る 不 良 資 産 の 発 生 に伴 う信 用 シ ス テ ム の 不 安
と,実 物 経 済 面 で の需 給 失 衡 と が 相 乗 的 に 作 用 して お り,「 複 合 不 況 」 と呼 ば
れ る ゆ え ん で あ る 。 した が っ て 過 去 の 不 況 に そ の 類 型 を求 め る こ とは 不 可 能 で
あ る が,不 況 対 策 の ヒ ン トを探 るた め に,あ
め る とす れ ば,昭
え て表 面 的 な 現 象 面 の類 似 性 を 求
和40年 不 況 と,二 次 に わ た る 石 油 危 機 不 況 とが 合 成 され た 姿
と い え よ う。
(1)昭
和40年 不 況 と の類 似 的 共 通 点
ま ず40年 不 況 と の 共 通 点 を 考 察 す る 。
そ の 第 一 は,不
況 の 基 本 的 背 景 ・誘 因 が,外
生 的 要 因 で は な く,も
っぱ ら 内
生 的 要 因 に 求 め られ る点 で あ る。
第 二 は,資 本 市 場 ・信 用 機 構 の 不 安 と実 物 経 済 の 不 況 とが 同 時 に 発 生 し,そ
れ が 複 合 的 に 作 用 した 点 で あ る。
日本経済再生の条件(281)19
40年 不 況 は 、 昭 和30年 代 決 の 証 券 ブ ー ム が 峠 を越 え,運
自転 車 操 業 的 な 株 価 の 維 持 が 行 き詰 って,危
用 預 りを テ コ とす る
機 的 な 証 券 不 況 を惹 起 した もの で
あ っ た 。 これ に 伴 う一 般 投 資 家 の パ ニ ッ ク を 未 然 に 防 止 して 信 用 シ ス テ ム の 安
定 を保 全 す る た め,日 銀 の 特 別 融 資 に よ る証 券 会 社 の救 済 が 行 わ れ た こ とは 記
憶 に新 しい 。
この 間,す
て は,企
で に 景 気 拡 大 が 天 井 に 達 して い た に もか か わ らず,産
業界におい
業 間 信 用 と銀 行 融 資 の 膨 張 に支 え られ て,在 庫 の 積 み 増 し と設 備 投 資
の 増 強 が 行 わ れ た 。 こ の 結 果,国
っ て 経 済 が 減 速 す る や 否 や,一
際 収 支 改 善 の た め の 引 締 め政 策 へ の転 換 に よ
挙 に需 給 の 不 均 衡 と企 業 収 益 お よ び 財 務 体 質 の
悪 化 が 顕 在 化 す る に至 っ た。 これ が 当 時,「
マ ク ロ と ミ ク ロの 乖 離 」 と い わ れ
た 高 度 成 長 下 に お け る企 業 の 収 益 低 下 を もた ら した わ け で あ る 。 しか も,大 型
倒 産 の 頻 発 に よ っ て,ミ
で は,今
ク ロの 不 況 感 は 一 段 と増 幅 され た 。
回 の バ ブ ル 不 況 と40年 不 況 と の共 通 的 性 格 は 何 で あ ろ う か 。
今 回 の不 況 は,基 本 的 に は1980年 代 後 半 の 超 金 融 緩 和 と異 常 な 低 金 利 政 策 の
も とで 発 生 し た 資 産 イ γ フ レ と,金 融 機 関 の 融 資 急 増,企
内生 的 要 因 を発 生 源 と して い る 。 す な わ ち,ユ985年9月
業 の債 務 膨張 とい う
の プ ラーザ合 意 以 降 の
国 際 的 な 金 融 緩 和 と 日 本 の 内需 主 導 型 経 済 へ の 転 換 要 請 に 対 応 して,日
本銀 行
は 長 期 に わ た って 超 緩 和 政 策 を実 施 した 。 特 に1987年2月
に至 る
2年3ヵ
月 の 間,公
ラ イ(M2+CD)も87年
定 歩 合 は2.5%の
か ら89年5月
低 位 に 据 え 置 か れ,こ
の 間 マ ネ ー ・サ プ
か ら90年 に 至 る4年 間 に わ た り2桁 の 急 増 が 続 い た 。
こ の よ う な 異 常 な 金 融 政 策 を背 景 と し て,地 価 ・株 価 の 急 騰 とい う資 産 イ ン
フ レが 発 生 した こ とは い う ま で も な い が ,同 時 に 実 物 経 済 面 に お い て も過 大 投
資 が 発 生 した 。 な か ん ず く1988年 度 か ら90年 度 ま で3年
年 率15%(実
質)の
に わ た って 設 備 投 資 が
急 増 を続 け た こ とが,現 在 の 需 給 失 衡 を 招 来 した こ とは 明
白 で あ る。 石 油 危 機 不 況 を 克 服 し て 以 降1980年 代 前 半 に お い て は,設
備 投資 が
.きわ め て 安 定 した 着 実 な ペ ー ス で 成 長 した 。 そ の 内 容 を み る と,① 長 期 的 な経
営 戦 略 に 立 っ たR&Dお
よ び 新 事 業 の 開 発 投 資,②
情 報 ネ ッ トワ ー クの 構 築 ,
20(282)第150巻
物 流 改 革,省
投 資 の3分
第4号
力 化 を 包 含 した 広 義 の 合 理 化 投 資,③
需 要増 加 に見 合 った能 力 増
野 の パ ラ ソス が 適 度 に保 た れ て い た 。 こ の よ うな 質 的 バ ラ ン ス が,
着 実 な投 資 増 加 の も とで の 需 給 の 均 衡 と,企 業 の 体 力 強 化 を 可 能 な ら しめ た わ
け で あ る。
しか し な が ら,超 金 融 緩 和 に 伴 う資 金 調 達 コ ス トの 極 端 な低 下 は,企 業 の 投
資 戦 略 の 厳 し さ を失 わ せ る結 果 と な った 。 しか もバ ブ ル経 済 の も とで の 経 済 の
水 膨 れ 現 象 が,過
大 な需 要 予 測 の 錯 覚 を生 み,企 業 を 安 易 な 投 資 拡 大 へ と走 ら
せ た 。 前 述 の 投 資 急 増 期 間 に お い て,生
産 能 力 拡 大 投 資 の 比 重 が 異 常 に増 大 し,
そ の 結 果 経 済 の 減 速 に伴 っ て 需 給 バ ラ ン ス の天 衝 が 一 挙 に 顕 在 化 す る に 至 っ
た。
これ を企 業 の 収 益
財 務 体 質 の面 か らみ る と,過 剰 な資 金 調 達 に よ る過 大 投
資 と財 テ クの 行 き詰 ま りが,超 低 金 利 時 代 の終 束 に 伴 って 急 激 な収 益 悪 化 と な
っ て 表 わ れ た 。 す な わ ち,設 備 過 剰 と需 要 減 退 か ら稼 働 率 が 急 速 に 低 下 す る一
方,減
価 償 却 費 の 増 嵩 と金 利 上 昇 に よ っ て 固 定 費 負 担 が 増 大 し,営 業 利 益 の 大
幅 な 低 下 あ る い は 赤 字 化 を 招 来 した 。 こ の よ う に,過 大 投 資 に よ っ て 資 本 の 回
転 率 が 低 下 す る と 同 時 に,財
テ クの 失 敗 か ら資 金 の 固 定 化 と保 有 資 産 の 質 的 悪
化 ・含 み 損 の 発 生 と い う,い わ ゆ る 「バ ラ ン ス シ ー ト不 況 」 の様 相 を 呈 して い
るわ け で あ る。
昭 和40年 不 況 と 今 次 の バ ブ ル 不 況 は,い ず れ も信 用 シ ス テ ム の 不 安 と企 業 の
財 務 体 質 悪 化 と が 複 合 し て い る点 に お い て 共 通 で あ る が,信 用 シ ス テ ム の 動 揺
が40年 不 況 で は 証 券 業 の み に限 定 さ れ て い た の に対 して,今
回 は 金 融 ・証 券 ・
ノ ンバ ン ク を包 含 す る き わ め て 広 範 囲 の 業 界 が 資 産 デ フ レ の 衝 撃 を 受 け て い る
の が 特 徴 で あ る。
②
石 油 危 機 不 況 と の類 似 点
次 に 石 油 危 機 不 況 との 共 通 点 に つ い て 考 察 し た い 。 い う ま で も な く,石 油 危
機 不 況 は 原 油 供 給 の将 来 に対 す る危 惧 と原 油 価 格 の 断 絶 的 上 昇 とい う,多 分 に
日本経済再生の条件(283)21
政 治 的 な 外 部 要 因 が 発 生 源 で あ っ た 。 こ の点 で,今
回の不 況 は もっぱ ら内部要
因 に 起 因 して お り,そ の 性 格 を 異 に して い る。
しか しな が ら,こ の よ うな 相 違 が あ る に せ よ,不 況 発 生 後 の プ ロ セ ス,す
な
わ ち中 期 的 な 経 済 成 長 率 の 屈 折 と経 済 全 般 に わ た る リス トラ ク チ ュ ア リン グが
不 可 避 で あ る点 に お い て,両 者 は 共 通 点 が 多 い 。
石 油 危 機 不 況 は,原
油 価 格 急 騰 に伴 う コス ト構 造 お よ び価 格 体 系 の 革 命 的 変
化 に 対 応 す る経 済 構 造 の 大 転 換 を 惹 起 した 。 す な わ ち,エ ネ ル ギ ー お よ び 諸 資
源 の コス ト急 騰 が,市
場 機 能 を通 じて 省 エ ネ ・省 資 源 型 技 術 お よ び商 品 の 開 発,
企 業 経 営 ・家 計 行 動 の 変 化 を 促 進 し,経 済 全 般 に わ た っ て 資 源 ・エ ネ ル ギ ー 多
消 費 型 構 造 か ら省 資 源 ・省 エ ネ 型 構 造 へ の 転 換 を も た ら した 。 ま た これ と同 時
に,マ
ク ロ経 済 面 で は,過 去 の 高 度 成 長 期 の年 平 均10%成
長 経 済 か ら,5%成
長 経 済 へ の 急 激 な 屈 折 が 起 っ た 。 こ の よ うな環 境 変 化 に対 応 して,企
業 は 従前
の10考 成 長 経 済 を 前 提 と した 経 営 戦 略 ・経 営 体 質 か らの 脱 却 と,5%成
長 を前
提 と し た 経 営 の 再 構 築 を迫 られ た わ け で あ る。 具 体 的 に は 徹 底 した 減 量 経 営 と
効 率 化 を 通 じて コ ス ト軽 減,損
益 分 岐 点 の 引 下 げ に 注 力 した 。 同 時 に 経 営 資 源
の 重 点 的 再 配 分 に よ っ て 高 付 加 価 値 部 門 の 育 成 強 化 を 図 り,エ ネ ル ギ ー ・資 源
の 高=ス
ト時 代 に 適 合 した 経 営 体 質 へ の 転 換 に経 営 努 力 を傾 注 した 。 これ ら一
連 の リス トラが 完 了 す る こ と に よ って 石 油 危 機 不 況 か ら の脱 出 と景 気 回 復 が 可
能 とな っ た の で あ る。1976年 か ら79年 に 至 る4年 間 は 毎 年 約5%の
持 続 し て い る に もか か わ らず,そ
の2年
の 前 半 の2年 間 ば 不 況 感 が 根 強 く残 り,後 半
に 至 っ て 急 速 に 景 気 回 復 感 が 強 ま った と い う事 実 は,こ
的 に 示 す 証 左 とい え よ う。 す な わ ち過 去 の10劣 成 長 か ら5%成
応 す る 調 整 の プ コ セ ス が 前 半 の2年
うや く経 済 の 構 造 転 換,企
さ らに,こ
経済 成 長 を
に は ま だ 完 了 せ ず,後
の 間 の 事 情 を端
長 へ の 移 行 に対
半 の2年
に至 って よ
業 経 営 の リス トラの 効 果 が 顕 現 化 した も の で あ る。
の よ う な過 程 を 経 て,日 本 の 産 業 界 は 石 油 危 機 前 よ り も さ らに 強 靱
な 国 際 競 争 力 を具 備 す る こ と に成 功 し た 。
今 回 の不 況 は,そ
の発 生 源 の性 格 が 異 な る に せ よ,1980年
代 後 半 のバ ブル 時
22(284)築
代 に お け る6%成
上50巻 第4号
長 経 済 を 前 提 と した 経 済 運 営,企
業 経 営,家
計 行 動 か ら,3
%成 長 経 済 へ の 移 行 に 伴 う各 経 済 セ ク タ ー の 調 整 と して と ら え る こ と が で き る。
こ の 意 味 に お い て 石 油 危 機 不 況 の 経 験 か ら学 ぶ べ き点 は 多 い とい え よ う。
11不
さ て,今
況 克 服 の条 件
回 の バ ブ ル 不 況 の 性 格 を上 記 の よ う に と ら え る な らば,不
況克服の
処 方 箋 も ま た お のず か ら 明 らか で あ ろ う。 これ を企 業 経 営 お よ び マ ク ロ経 済 政
策 の 両 面 か ら論 じて み た い 。
(1)企
業 の経 営革 新
まず 第 一 の 基 本 的 要 件 は企 業 の リ ス トラ クチ ュ ア リ ン グで あ る が,こ れ に は
バ ブ ル の 後 遺 症 か ら の 脱 却 と,将 来 へ 向 け て の 需 要 創 出 とい う2面 が あ る。
①
損 益 分 岐 点 の 引 き下 げ
そ の 一 つ は,企 業 の ス リ ム な 経 営 体 質 へ の 再 構 築 で あ る。 前 述 の 通 り,今 回
の 不 況 の 性 格 を表 徴 す る連 続3年
間 の減 益 とい う収 益 力 の 低 下 ぽ,バ
ブル 時 代
の 拡 張 路 線 の も と で,経 費 の ぜ い 肉 が 付 着 し,財 務 体 質 が 急 激 に 悪 化 した こ と
に起 因 す る 。
そ こ で 差 し当 って は 切 りつ め 易 い3K(交
経 費 の 削 減 が 先 行 して い るが,収
際 費,交
通 費,広
告 費)な
益 体 質 の 根 本 的 な 改 善 に は,固
ど一 般
定費 比率 の低
減 に よ る 損 益 分 岐 点 の 引 き下 げ が不 可 欠 で あ る。
現 在,製
造 業 の 損 益 分 岐 点 売 上 高 比 率 は90%と,過
去 の ピ ー ク で あ った 石 油
危 機 不 況 時 の 水 準 に ほ ぼ 達 し て い る。 石 油 危 機 当 時 の 損 益 分 岐 点 の上 昇 は,原
油 ・原 料 価 格 の 急 騰 に伴 う変 動 費 の 増 嵩 が 主 因 で あ っ た の に 対 して,今
回 は人
件 費 お よ び減 価 償 却 費 を 中 心 と す る固 定 費 の未 曽有 の 増 大 が 主 因 で あ る。 し か
しな が ら,減 価 償 却 費 ・利 払 い 費 は バ ブ ル期 ゐ 過 大 投 資 と資 金 の 固 定 化 が 原 因
だ け に,当 面 そ の 大 幅 な 圧 縮 ほ 困難 で あ る。 した が っ て そ の 実 現 の た め に は,
不 採 算 部 門 お よ び 遊 休 資 産 の 整 理,高
付 加価 値 の本 業 部 門 へ の経 営資 源 の重 点
日本経 済再 生の条 件(285)23
的 再 配 分 を 中 心 に,経
営 全 般 に わ た る ダ ウ ン サ イ ジ ン グ(減
量:経 営)に
よ っ て,
固 定 費 比 率 の 引 き下 げ と大 幅 な効 率 化 を 同 時 に 図 る こ と が 必 要 で あ る。
②
新 た な需 要 創 造 型 の 事 業 開 発
い ま 一 つ の リス トラ は,新
た な 需 要 創 造 へ 向 け て の前 向 き の 対 応 で あ る。 前
述 の 減 量 経 営 に よ る 経 費 の 圧 縮 は,企
件 で あ る が,そ
業 の リス トラ に と っ て 前 提 と な る 必 要 条
れ だ け で は 十 分 条 件 とぽ な ら な い 。
不 況 か ら の 脱 出 に は,果
確 に 見 定 め,新
断 な ぜ い 肉 落 し を 実 行 し た う え で,経
た な 収 益 源,有
営 の 目標 を 明
効 需 要 の 創 出 の た め 重 点 投 資 を 図 る こ とが 不 可
欠 で あ る。
石 油 危 機 不 況(特
に 第 二 次)の
克 服 に 際 し て,企
営 に よ る コ ス ト削 減 を 実 現 す る と 同 時 に,他
革 に 対 応 し て,新
素 材 の 開 発,ニ
業 は 一 方 で 徹 底 的 な減 量 経
方 で は コ ス ト構 造 ・価 格 体 系 の 変
レ ク ト ロ ニ ク ス 技 術 と 高 度 の ソ フ トを 駆 使 し
た 新 事 業 の 創 出 と 画 期 的 な 生 産 性 向 上 に 取 組 ん だ 。 こ れ が 省 資 源 ・省 ニ ネ 時 代
に お け る 高 付 加 価 値 商 品 と世 界 で 最 先 端 の 生 産 シ ス テ ム を 生 み 出 し,ユ980年
代
前 半 の イ ノ ペ ー シ コ ソ型 景 気 回 復 へ と 結 び つ い た わ け で あ る 。
現 在 の 不 況 局 面 で は,バ
が,そ
ブ ル の 崩 壊 と い う 現 象 面 の み が 強 調 され が ち で あ る
の 底 流 に お い て,1980年
代 後 半 の 低 コ ス ト時 代 か ら高 コ ス ト時 代 へ の 移
行 と い う 構 造 変 化 が 起 っ て い る こ と を 看 過 し て は な る ま い 。 す な わ ち,バ
ブル
時 代 に エ ク イ テ ィ ・フ ァ イ ナ ン ス に よ っ て 実 質 金 利 ゼ ロ で 調 達 で き た 長 期 資 金
は,今
後 は 中 期 的 に 最 低6%の
水 準 に シ フ ト し て 定 着 す る で あ ろ う。 ま た,高
齢 社 会 の 到 来 と労 働 時 間 短 縮 は 慢 性 的 な 労 働 需 給 の ミ ス マ ッ チ ン グ な い し 労 働
力 不 足 を 通 じ て,人
件 費 の 増 大 を 招 来 し よ う 。 さ ら に,環
ニ テ ィ ー 活 動 の 要 請 な ど,企
箋 保 全 対 策,コ
ミニ
業 の 社 会 的 コ ス トは 従 来 に な か っ た 新 し い コ ス ト
増 要 因 と し て 付 加 され る。
こ の よ う な 高 コ ス ト時 代 に 対 応 す る ビ ジ ネ ス 機 会 を 創 出 す る イ ノ ベ ー シ ョ ン
が 必 要 で あ る 。 例 え ば,ソ
フ ト ・エ ネ ル ギ ー を 利 用 し た 環 箋 保 全 型 商 品 ・サ ー
ビ ス を 比 較 的 低 価 格 で 供 給 す る技 術 開 発,画
期 的 な省 力 シス テ ムの開 発 。 高齢
24(286)第
ユ50巻 第4号
者 が 自 力 で 社 会 生 活 を 営 む こ と を 補 助 す る 各 種 の 商 品 ・サ ー ビ ス の 開 発 。 生 産,
物 流 の 全 面 的 再 編 成 に よ っ て 環 境 対 策 と コ ス ト ・ダ ウ ン の 一 石 二 鳥 的 効 果 を 実
現 す る シ ス テ ム の 構 築 な ど 。 つ ま り,一
て,画
見
不 利 に 作 用 す る 要 因 を逆 手 に と っ
期 的 な コ ス ト ・ダ ウ ン と新 た な 需 要 創 造 ,収
益 機 会 に 結 び つ け る した た
か な 経 営 革 新 が 求 め られ る 。
②
金融 シス テ ムの安 定 性確 保
次 に第 二 の 要 件 は,今
回 の不況 を性 格 づ け る金融 機 関経 営 の質 的低 下 に よ る
心 理 的 不 安 要 因 と ク レ ジ ッ ト ・ク ラ ン チ の 懸 念 を早 急 に 除 去 す る こ と で あ る。
40年 不 況 当 時 は,証 券 業 界 の 経 営 危 機 に よ る パ ニ ッ ク を 予 防 す るた め,日 銀
特 融 と銀 行 の 救 済 融 資 とい う緊 急 措 置 の 発 動 に よ っ て 危 機 を乗 り切 る こ とが で
き た 。 今 次 の 金 融 不 況 は,証
券 業 界 に と ど ま らず,銀
行,ノ
ンバ ン ク を含 め た
金 融 セ ク タ ー の 全 分 野 を巻 き込 ん だ 広 範 な 不 況 で あ り,し か も グ ロ ー バ ル な 拡
が りの な か で 発 生 し て い る 。
そ こで,今 後 の 対 応 も国 際 的 な ス タ ン ダ ー ドに立 脚 した 正 攻 法 に よ っ て ,信
用 シ ス テ ムへ の 信 頼 感 を修 復 す る に 足 る も の で な げ れ ば な ら な い 。 そ の キ ー ・
フ ァ クタ ー は 次 の2点
①
で あ ろ う。
デ ィス ク ロ ー ジ ャ ー の 徹 底
そ の 一 は,金
融 機 関 の 経 営 内 容 に 関 す る デ ィス ク ロ ー ジ ャ ー の 徹 底 で あ る 。
最 近 に お け る信 用 不 安 の主 因 の 一 つ に,金 融 機 関 が 抱 え る不 良 資 産 の 金 額 お よ
び そ れ に 対 す る引 当 の実 施 状 況 につ い て の 不 透 明 性 が あ る こ と は い う ま で もな
い 。 し た が っ て,こ
の よ う な運 用 資 産 の 実 態 と引 当 金 計 上 の 基 準 に 関 す る デ ィ
ス ク ロ ー ジ ャ ー の 徹 底 に よ っ て,金 融 機 関 経 営 の透 明 度 を 格 段 に 高 め ,信
用シ
ス テ ム へ の 不 安 感 を払 拭 す る こ とが 不 可 欠 で あ る。
た だ し,こ れ を 実 施 す る に 当 っ て は.同
時 に そ の後 の 不 良 債 権 整 理 の 計 画 を
明 確 に 示 す こ とが 前 提 と な る 。 か りに こ の 計 画 を 明示 す る こ と な く,デ ィ ス ク
μ 一 ジ ャ ーだ け を強 制 す れ ば,か
え って 金 融 機 関 の 経 営 に 対 す る不 安 感 を増 幅
日本経芝
葺再生の条件(287)25
し,信 用 シ ス テ ム の 動 揺 を来 す 恐 れ が あ る。 この 債 権 整 理 計 画 の 明 示 とは,次
に述 べ る金 融 機 関 自 ら の対 策 と政 策 当 局 の 制 度 的 ・行 政 的 対 応 の両 面 を 含 む も
の で あ る。
②
不 良 債権 の早 期 償却
そ の 二 は,前
記 デ ィス ク ロ ー ジ ャ ー と表 裏 一 体 の 課 題 と し て,サ
ウ ン ドバ ン
キ ン グ の維 持 の た め,現 在 抱 え て い る 不 良 債 権 を短 期 間 で 一 挙 に償 却 す る こ と
が 必 要 で あ る。
これ を ア メ リ カ の 商 業 銀 行 の 事 例 に つ い て み る と,80年
資 の 不 良 化,途
上 国 向 け カ ン ト リー リス ク貸 金 の 累 増
代 以 降,石
油 開発 融
バ ブル期 の不 動 産関 連
融 資 の 急 増 と,相 次 い で 貸 出 債 権 の 質 的 内 容 が 悪 化 す る事 態 が 起 った 。 これ に
対 し て,各 行 そ れ ぞ れ 独 自 の対 策 を講 じ た の は も ち ろ ん で あ る が,共
と して は,大
規 模 な人 員 削 減,資
産 売 却 と同 時 に,不
通 の手 段
良債 権 の償 却 を一 挙 に実
施 して い る。 こ の 結 果,短
期 的 に は 赤 字 決 算 と配 当率 の 引 き下 げ とい う事 態 を
余 儀 な く され た もの の,膿
を 出 し切 る こ と に よ っ て そ の後 の 業 績 回 復 は 比 較 的
順 調 な ケ ー ス が 多 か った 。
日本 の 場 合,第
二 次 大 戦 後 の 約50年 の 長 き に わ た っ て,金
融機 関 が軒 並 み に
多 額 の延 滞 貸 出 債 権 を抱 え る と い う事 態 が 皆 無 で あ っ た こ と に 加 え,い わ ゆ る
護 送 船 団 方 式 の 行 政 の も とで 横 並 び 意 識 の 経 営 が 常 態 化 して い た 。 ま た 貸 倒 引
当 金 の 計 上 や 貸 出 債 権 の 償 却 に つ い て も,税 務 上,行
制 約 が 設 け られ,各
政 上 の きわ め て 限 定 的 な
金 融 機 関 が 自 己 責 任 に お い て 自主 的 に 処 理 す る余 地 が 小 さ
か った。
しか し,こ れ ま で の よ う な横 並 び 方 式 を続 け る こ とは も は や 限 界 に 達 して い
る 。 も し か りに,今 後 も横 並 び 意 識 の も と に,不 良 債 権 の 償 却 を先 送 り して 表
面 上 の 利 益 を 計 上 し,実 力 不 相 応 の 納 税 を 続 け て い る 限 り,体 力 は 次 第 に低 下
す る こ と は 必 定 で あ る 。 ひ い て は 自 己 責 任 で 健 全 経 営 を維 持 し得 る体 力 を保 持
し て い る金 融 機 関 ま で も,早 晩 そ の 余 力 を失 う恐 れ な し と しな い 。
この際
実 態 の デ ィ ス ク ロー ジ ャ ー と 同 時 に,早
急 に債 権 償 却 を実 施 す べ き
26(288)第150巻
第4号
で あ り,そ の 結 果 経 常 損 益 の 赤 字 計 上,配
当 の 引 下 げ ま た は 一 時 停 止 と い う事
態 を 生 じ て もや む を 得 な い で あ ろ う。 む しろ 国 際 的 な ス タ ン ダ ー ドか ら い え ば,
金 融 機 関 が 自 己 責 任 の も と に サ ウ ン ド ・バ ンキ ン グの 維 持 の た め,一
時 的 に赤
字 決 算 を す る の は常 識 で あ る。 逆 に償 却 を 遅 延 し て表 面 的 に 黒 字 を 計 上 した と
し て も,そ れ は 不 健 全 な 粉 飾 と して 国 際 的 信 用 を 失 うで あ ろ う。
これ に 関 す る 行 政 ・制 度 面 の 対 応 と して は,貸 倒 引 当 金 の 計 上 お よ び 債 権 償
却 に つ い て,一
律 の 制 限 的 な 基 準 を 緩 和 し,税 務 上 も極 力 金 融 機 関 の 自主 的 判
断 に 委 ね て.無
税 償 却 の 余 地 を大 き くす る方 式 に移 行 す べ き で あ る。
さ ら に,横 並 び 行 政 か ら の脱 却 と 自 己 責 任 原 則 の 徹 底 は,必 然 的 に 金 融 機 関
の 体 力 格 差 の 顕 現 化 を もた ら し,自 力 解 決 が 不 可 能 な 金 融 機 関 の 存 在 を も白 目
の も と に 曝 す こ とに な ろ う。 これ に 対 して は,信
用 不 安 を 未 然 に 防 止 す るた め,
別 途 救 済 措 置 を 用 意 す る こ とが 不 可 欠 で あ る。
(3)多
様 な政 策 手段 の発動
さ らに 第 言 の 要 件 と し て,経 済 の縮 小 均 衡 を 防 止 す る 多 様 な政 策 手 段 の パ ッ
ケ ー ジが 必 要 な こ と を指 摘 した い 。
景 気 回 復 の 基 本 的 条 件 が,前 述 の 通 り企 業 ・金 融 機 関 の 自力 に よ る リス トラ
に あ る こ とは い う ま で も な い 。 しか しな が ら,民 間 の 自己 責 任 に よ る経 営 再 建
は,当
然 の こ と な が ら広 範 に わ た る経 費 削 減,大
規 模 な ス ト ッ ク調 整,さ
は 雇 用 調 整 を 伴 う。 そ の 過 程 で 生 ず る縮 小 均 衡 作 用 を 放 置 す れ ば,経
芽 を 摘 み 取 る の み な らず,景
らに
済回復 の
気 の 底 割 れ を来 す 可 能 性 もあ る。
した が っ て,政 策 当 局 は タ イ ミ ン グ を 失 す る こ と な く総 需 要 の 減 退 を カ バ ー
す る た め の 政 策 手 段 を 講 ず る必 要 が あ る。 ち な み に,日 本 総 合 研 究 所 の 試 算 に
よ れ ば,企
業 が 損 益 分 岐 点 の 引 下 げ に よ っ て収 益 体 力 の 回 復 を 実 現 す る た め に
必 要 な 固 定 費 圧 縮 額 は,1992年
現在 の 全 産 業 ベ ー ス(金
兆 円 に 達 す る。 した が って,こ
の需 要 減 少 に見 合 っ た 総 需 要 の 造 出 が 必 要 と な
る わ け で あ るD
融 ・保 険 を除 く)で4
日本経済再生の条件(289>27
そ の た め に は,政 策 効 果 に制 約 の あ る公 共 事 業 の み に傾 斜 した 対 策 だ け で な
く,投 資 減 税 ・所 得 減 税 も併 せ た 多 様 な手 段 を組 み 合 わ せ て 発 動 す るの が 効 果
的 で あ ろ う。 た だ し、 減 税 財 源 は,長 期 的 な財 政 体 質 の 悪 化 を 防 止 して 中 期 的
な均 衡 財 政 と 経 済 の ビル ト ・イ ン ・ス タ ビ ラ イ ザ ー機 能 を維 持 す る観 点 か ら,
景 気 回 復 時 の 財 政 余 剰 金 か らの 優 先 償 還 を義 務 づ け た 特 例 国 債 に よ るべ きで あ
る。
経 済 政 策 に お け る最 重 要 の 眼 目は,政
策 の 失 敗 は,進
策 発 動 の タ イ ミン グ で あ る。 過 去 の 政
む と き も退 く と き も,そ の タ イ ミ ン グ の遅 れ に あ っ た とい っ て
過 言 で は な い 。 今 回 の 景 気 調 整 の主 体 が 民 間企 業 ・金 融 機 関 に あ る こ とは も ち
ろ ん で あ る が,政
策 当 局 も経 済 運 営 の 失 敗 の責 任 を,今 後 の タ イ ミ ン グ の よ い
政 策 発 動 に よ っ て 果 す べ き で あ ろ う。
IIIむ
す
び
前 述 の 通 り,日 本 の産 業 界 は か つ て 石 油 危 機 と い う経 済 構 造 の 変 革 期 に 直 面
して,そ
の克 服 の 第 一 局 面 と して 徹 底 的 な減 量 経 営 に取 り組 み ,次
に第二 局 面
と して 省 エ ネ ・省 資 源 型 経 済 構 造 へ の 転 換 の 担 い 手 と な る 各 種 の イ ノ ベ ー シ ョ
ン に果 敢 に 挑 戦 した 。 特 に第 二 次 石 油 不 況 か らの 回 復 局 面 で ,筆 者 は こ れ を
"新 シ
ュ ンペ ー タ ー 型 景 気 回 復"と 性 格 づ け た(1984・2・11付
週 刊 ダ イヤ モ
ン ド誌)。
今 次 の バ ブ ル 不 況 の 克 服 に お い て も,ま
さ に この イ ノ ベ ー シ ョ ンが 必 要 で あ
る。
シ ュ ン ペ ー タ ー は,『 経 済 発 展 の 理 論 』 に お い て
,経 済 発 展 の 原 動 力 は 企 業
家 の イ ノ ベ ー シ ョ ン に あ る と結 論 づ け,イ
い 財 貨 の 生 産,②
新 しい 生 産 方 法 の 導 入 ,③ 新 しい 販 路(市
材 料 な どの 新 し い 供 給 源 の 獲 得,⑤
こ の5つ
の 通 り。
ノ ベ ー シ ョ ン の 内容 と して ,① 新 し
新 し い組 織 の 実 現
場)の
の5要
開拓
④原
素 を挙 げて い る
の 新 機 軸 を現 実 の 課 題 に 照 ら して 解 釈 しつ つ ,一 言 で 簡 記 す れ ば 次
。
28(290)第150巻
第4号
第 一 の 新 しい 財 貨 の 生 産 一
先 端 技 術 を体 化 し た 高 度 技 術 集 約 商 品 。 環 境 保
全 型 商 品 お よ び環 境 修 復 技 術 。 各 種 シル バ ー ・サ ー ビス な ど。
第 二 の新 しい 生 産 方 法 の 導 入 一
CIMの
資 源 リサ イ ク ル ・シ ス テ ム。CAD,CAM,
導 入 に よ る高 度 省 力 生 産 シ ス テ ム な ど。
第 三 の新 しい販路 の開 拓一
ユ ー ザ ー の ニ ー ズ を敏 感 に と ら え る揚 棄 型 マ ー
ケ テ ィ ン グ 。 通 信 カ タ ロ グ販 売 等 低 コ ス ト商 品 の 提 供 な ど。
第 四 の 新 しい 供 給 源 一
各 種 新 素 材 の 開 発 に よ る材 料 革 命 。 情 報 資 源 の シ ス
テ ム 化 に よ る生 産 ・販 売 ・在 庫 ・物 流 管 理 な ど。
第 五 の 新 し い組 織 一
ス リム で風 通 しの よ い組 織 。 顧 客 の ニ ー ズ に 敏 感 に レ
ス ポ ン ス し得 る柔 軟 な組 織 。 女 性 お よ び 中 高 年 者 の 有 効 活 用 な ど。
こ の よ う な イ ノ ベ ー シ ョ ンの 担 い 手 で あ る企 業 家 精 神 を重 視 した シ ェ ンペ 一
夕 ー は、 「不 況 は 好 況 へ の 準 備 期 間 で あ る」 と の 名 言 を遺 し て い る。 こ の 言 葉
が 今 日ほ ど大 き な 意 味 を もっ こ とは 近 年 稀 有 で あ った と い って 過 言 で は あ る ま
い。
昨 今 の 情 勢 か ら,欧
米 の 一 部 で 日本 経 済 斜 陽 論 が さ さ や か れ て い る と 聞 く が.
日 本 経 済 の 強 さ の 根 源 で あ る"変
化 に 対 す る 企 業 の 柔 軟 な 対 応 力"は
い まだ 決
して失 われ て いな い。
(工992.10.13)
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