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e-NEXI - 日本貿易保険

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e-NEXI - 日本貿易保険
e-NEXI
2012 年 6 月号
➠特集
再生可能エネルギー特集・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
独立行政法人日本貿易保険 営業第二部
➠カントリーレビュー
オーストラリ ア・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
➠NEXI ニュース
2011 年度の保険事故の特色・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
在 香 港 日 系 企 業 向 け 貿 易 保 険 制 度 セ ミ ナ ー の 開 催 報 告 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 1 4
NEXI の業務体制について(第 3 回)営業第一部・・・・・・・・・・・・・・・・・17
発行元
発行・編集 独立行政法人日本貿易保険(NEXI)
総務部総務・広報グループ
e-NEXI (2012 年 6 月号)
再生可能エネルギー特集
独立行政法人日本貿易保険
営業第二部
「再生可能エネルギー」という言葉が用いられるようになって久しく経ちますが、今ではすっかり日々の社会
生活に定着し、毎日と言ってよいほど、新聞紙上に登場します。”再生可能”とは、”絶えず資源が補充さ
れて枯渇することがない”、という性質を捉えた表現で、風力、太陽光、太陽熱、地熱発電等に代表され
ますが、こうした再生可能エネルギー由来の発電は、既存の電源を一部置換、補完するものとして期待
され、全世界的に広がりを見せています。我が国政府は、本邦企業によるインフラ・システム輸出の一層
の促進に向け、再生可能エネルギーを含む個別 11 分野について積極的な支援を打ち出しており(『産業
構造ビジョン 2010』(産業構造審議会産業競争力部会報告書)、NEXI でも、これまで数多くの再生可
能エネルギープロジェクト向けに、貿易保険制度を通じた支援を行ってきました。今月号では、NEXI の引
受案件と、引受査定の一端をご紹介します。
1.
NEXI の引受実績
ここ数年の NEXI の中長期の保険引受実績には、太陽熱発電、地熱発電、水力発電、風力発電(洋
上)が挙げられます。
引受年
国名
プロジェクト名*
電源
発電規模
保険種
付保額
2010
Spain
Solacor 1
太陽熱
50MW
海事**
€178mil
2010
Spain
Solacor 2
太陽熱
50MW
海事
€176mil
2010
Spain
Solaben 2
太陽熱
50MW
海事
€169mil
2010
Spain
Solaben 3
太陽熱
50MW
海事
€172mil
2011
Spain
Guzman
太陽熱
50MW
海事
€227mil
2011
Spain
Acciona
太陽熱
50MW
海事
€255mil
2011
Jamaica
Maggotty
小水力
6MW
海事
€26mil
2011
New Zealand
Te Mihi
地熱
166MW
バイクレ***
2012
Columbia
Sogamoso
水力
820MW
バイクレ
2012
UK
Gunfleet Sands I&II
洋上風力
173MW
海事
*プロジェクト名は便宜上の略称、**海外事業資金貸付保険、***貿易代金貸付保険
1
NZ$105mil
US$26mil
GBP158mil
1
e-NEXI (2012 年 6 月号)
英国/Gunfleet Sands I&II洋上風力発電所
西国/Solacor 1,2太陽熱発電所
2.
再生可能エネルギーの特徴と導入支援制度
再生可能エネルギーには、(1)枯渇しないため半永久的な利用が可能、(2)CO2 等の温暖化ガスの排
出量が少ないものが多い、(3)エネルギーを需要地近辺で調達できる、(4)化石燃料に代わる新たなエ
ネルギー産業になる、といった長所がある一方、(1)コストが高い、(2)出力変動や資源分布地域の偏在
を伴う、(3)エネルギー密度が低い、(4)環境基準による設置制限がある、といった短所もあります。それ
ゆえ、普及促進にあたっては、これを支援する制度が一般的に導入されていますが、概ね下表に記載し
た 2 つに大別されます(収入を助成する kWh 補助)。また、この他、設備建設費に対する国庫補助金交
付制度(kW 補助)もあります。既存電源との価格差が少ない技術については RPS(3 ページの表御参照)
が適しており、太陽光発電等、既存電源との価格差が大きい技術は、固定価格買取制度が適している
とされますが、どちらが良いかは議論が多いところです。我が国では、「電気事業者による新エネルギー等
の利用に関する特別措置法(平成 14 年 6 月 7 日法律第 62 号)」により、いわゆる RPS 型がこれまで
2
2
e-NEXI (2012 年 6 月号)
施行されてきましたが、本年 7 月より「固定価格買い取り制度」が施行され、太陽光など 5 種類のエネル
ギーで発電した電気を電力会社が国の決めた固定価格で買い取る仕組みが導入される予定です。
固定価格買取制度
価格による規制。
(FIT:Feed in Tariff)
電気事業者に一定の価格での再生可能エネルギーの買取りを義務付けるもの。
下段の RPS 法と異なり、将来の目標導入量の設定は困難。
ドイツ、スペイン、イタリア等で導入。
固定価格買取制度導入国では、高い買取価格によって再生可能エネルギーの導入が進
んでいるが、買取価格を見直す動きあり。
RPS 制度
量による規制。
(RPS:Renewables
電気事業者に一定量以上の再生可能エネルギーの利用を義務付けるもの。
Portfolio Standard)
コストの低い再生可能エネルギーから順に導入可能、数値目標を設定可能という特徴があ
る。
アメリカ(州レベル)、英国、オーストラリア等で導入。
RPS 制度導入国では、目標となる義務量に向けて概ね順調に導入が進んでいる。
3.
リスク分析
事業には様々なリスクが内在します。前述の導入支援制度の安定性がその最たるものですが、制度面
以外では、事業収入の源泉となる発電量が、風量や日射量といった気象条件によって大きく左右される
ことや(風力を例に挙げれば風量変動リスク)、厳しい自然条件の中に発電所が建設され、操業が行わ
れることから、発電設備への負担(技術関連リスク)や自然災害(自然災害リスク)への対策も考慮しな
ければなりません。よって、当該事業が抱えるリスクの洗出し、リスクに対する手当て、関係当事者との契
約条件交渉を含め、事業性の検証を綿密に行い、事業性及び事業継続性の確度を高めていく作業が
必要となります。先に挙げた NEXI の引受事例では、その殆どがいわゆるプロジェクトファイナンス方式で融
資組成されているため、NEXI でも融資金融機関とともに、事業性の精査(デューディリジェンス)を、専門
家起用の上で綿密に行いました。以下に、風力発電の事例をご紹介します。
(1)
風量変動リスク
風力発電の場合、風量変動リスクが特有・最大のリスクです。風量変動リスクとは、事業計画通りに風が
吹かない、思ったよりも風が弱いと言ったリスクです。風量の読み違いにより事業が破綻した事例も中には
あるでしょう。よって、納得の行く検証を十分に行い、事業のベースケースを事業者自身がきちんと見極め
ることが重要となります。風況シミュレーションの技法と精度はかなり向上してきているものの、あくまでシミュ
レーションの世界であり、実際には事業がスタートしてみなければわからないというのも事実です。従って、
大きな収入変動が有り得ることも認識し、より多くの参考値を材料として、関係当事者間で納得のいく
発電量を見極めていく姿勢が必要となります。
一般に、風の分析(風況分析)は、最低 1 年間の生データ(10 分平均値)をもとに、年平均風速、風況
3
3
e-NEXI (2012 年 6 月号)
分布、風向分布、風向別風速分布、鉛直分布、乱れ強度等一通りの解析を行い、次に、当該生デー
タが、とある 1 年間のみのデータであることに鑑み、近傍の気象官署等における風況観測年の風況データ
と、過去 10 数年の長期データを比較して、サイトの生データを平年補正する作業を行います。これによっ
て、サイトの平年的な風速が推定できます。そして、風車間の風の減衰ロス(ウエイクロス)、送電・所内ロ
ス、稼動可能時間(Availability)ロス、パワーカーブロス(出力の安全掛け目)、その他数種の掛け目を考
慮しながら、発電量シミュレーションソフトを利用してベースケースを設定します。
ベースケースが定まると、次に行う作業としては、ダウンサイドケースの検証となります。ダウンサイドケースで
想定するシナリオの例としては、風量が減少した場合、稼働率が低下した場合、パワーカーブ(出力)が
劣化した場合、操業費用が増加した場合、借入金利が上昇した場合等が考えられますが、風量につい
ては、超過確率 90%(10 年に 9 年は発現する。逆に言えば、10 年に 1 年はこれを下回る可能性がある
レベル。)を用いる場合が多いです。こうした様々なシナリオに基づくキャッシュフローの分析、すなわち感応
度分析を行い、融資額の妥当性やキャッシュフローの耐性を査定していくことになります。
(2)
技術関連リスク
技術関連リスクのうち、完工リスクは、風力発電に限らず代表的なリスクと言えます。単に発電所が静的
に完成するということではなく、当初計画通り、①決められた期日までに、②決められた予算の範囲内で、
③所定の性能が発揮されるように完成するかどうかということですが、これら三つの項目は互いに関連しあ
ったもので、例えば、期日までに完成しても予算の超過や、性能未達を伴えばキャッシュフローに影響を与
えることになり、予算の範囲内で所定の性能が出たとしても期日が徒過してしまえば、これもまた事業性
に影響を及ぼすことになります。陸上風力発電の場合、建設自体は比較的技術的難易度は高くないと
言われますが、予算超過、期日徒過、性能未達は考慮すべき項目となります。これらのリスクに対する対
策は EPC 契約(建設請負契約)できちんと定めておくことが重要で、一括固定価格での、確定日・完成
品検収後引渡し(通常、プラント引渡し前に一定期間の連続運転で性能を確認する完工試験を行う)
を担保し、これが満たされない場合には、所定のペナルティを EPC コントラクターに負って頂くことで、リスク
を回避若しくは軽減することがポイントとなります。また、発電所の引渡し後も数年は所定の条件に基づ
き性能保証の類を差し入れてもらうのが一般的です。
発電所が完成し、引渡しを受けると、いよいよ長期に亘り事業が開始されることになります。風力発電所
は基本的にコンピューター制御であり、操業上の技術的難易度はそれ程高くないと言われていますが、燃
料に相当する風は無尽蔵ながら蓄積ができないことから、安定的な操業レベルの確保(Availability の確
保)が極めて重要となります。なぜなら、折角、期待通りの風が吹いていても機械が不具合で頻繁に止ま
ってしまっては収入が得られないからです。よって、操業保守面においては、発電機メーカからの性能保証
の取得や、O&M 契約(操業保守契約)を締結の上、操業保守業務の内容を定めると共に、予定された
メンテナンスや、不可抗力以外の時間は常に風車が稼動可能な状態にあることを確保(Availability の確
保)することが重要となります。Availability については保証値を設定し、O&M コントラクターの責で保証値
を下回った場合には所定のペナルティを負って頂く形での長期の O&M 契約を締結することが理想的で
す。
4
4
e-NEXI (2012 年 6 月号)
(3)
自然災害リスク
自然災害では、主として、落雷、台風、地震、電気的機械的事故等による事業停止が想定されます。
発電事業向けには、概ね必要とされる損害保険種目が定まっていますが、物損対策として火災保険及
び 機 械 保 険 ( Property All Risks ) 、 物 損 事 故 に ひ も つ く 修 繕 期 間 中 の 利 益 保 険 ( Business
Interruption)、及び、第三者賠償責任保険(Third Party Liability)の類をベースに必要な特約を加え
ていくことになります。
4.
おわりに
NEXI ではこれまで、フィードインタリフ制度に基づくスペイン太陽熱発電や、特段の導入促進制度に基づく
助成なしでもコスト競争力を有するニュージーランドの地熱発電案件他、証書制度型のイギリス洋上風
力発電等、再生可能エネルギープロジェクトについては幅広く支援実績を積み重ねてきました。今後も、
再生可能エネルギー分野における本邦企業の海外展開を積極的にサポートしていきたいと考えていま
す。
以上
5
5
e-NEXI (2012 年 6 月号)
6
カントリーレビュー「オーストラリア」
<Point of View>
・オーストラリア経済は、資源輸出に支えられ堅調に推移してきている。
・オーストラリア経済の課題は、中国への過度な依存の緩和、インフラや労働力のボトルネック解消
に加え、政治や政策面での不安定性の解消である。
1.資源輸出に支えられ堅調なオーストラリア経済
オーストラリアは、数少ない資源輸出先進国として、特異な地位を占めている。2008 年の金融危
機以降のオーストラリア経済を概観すると、成長率は概ね 2%台、消費者物価上昇率は 3%程度、
失業率も 5%台で安定的に推移している。(表1)また、豪ドル為替動向も、対米ドルで堅調に推
移し、日米欧先進国や一部新興国で経済が悪化する中、全体としては堅調に推移している。
表1
2008
2009
2010
2011
2012
実質 GDP 成長率
2.5%
1.4%
2.5%
2.0%
3.0%p
消費者物価上昇率
4.4%
1.8%
2.8%
3.4%
2.7%p
失業率
4.3%
5.6%
5.2%
5.1%
5.2%p
出所 IMF
2012 年の p は予測値
オーストラリアの輸出について、まず輸出品目構成を見ると、鉄鉱石(21%)と石炭(19%)が主
力であり、以降、金、農産物などが続いている(グラフ2)。また、輸出相手先については、中国がトッ
プであり、以下 日本、韓国と続き、対アジア、特に中国が輸出相手国として重要となっている(グラ
フ3)。また、時系列で見ると、直近 5 年(2006 年から 2010 年)でみても中国向けの割合は 11%か
ら 23%に急速に高まっており、インドやタイ等を含めたアジア新興国向けの台頭は顕著である。オー
ストラリア経済がアジア新興国の経済成長とそれに伴う資源需要の高まりに乗って順調に推移してい
ることが見て取れる。
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e-NEXI (2012 年 6 月号)
出所:Trade at a Glance 2011(オーストラリア政府、外務貿易省)
オーストラリアの資源輸出は上記に見るように既に品目ベースで、エネルギー、鉱物、農産物とバ
ランスが取れているが、今後はこれに現在開発中/計画中の液化天然ガス(LNG)輸出が本格的に
寄与していく見込みであり、2020 年には現在の世界最大の LNG 産出国・カタールの年間約 7,500
万トン(2011 年)を上回り、1 億トンの大台に乗るとの見方もある。尚、これは昨年度の日本の LNG
輸入量(8,318 万トン)を超える規模である。また、既存の輸出品目についても、例えば将来的なコメ
の対日輸出増加を見越して品種改良に研究開発投資を行うなど、競争力の維持・強化に努めて
おり、中期的に見ても輸出成長の潜在力は高い。
2.資源大国 オーストラリアの今後の課題
将来に亘っても順調にみえるオーストラリア経済だが、今後に向けての課題を以下挙げてゆきたい。
第一に、高まる中国への依存である。上記に見るように中国経済の成長とそれに伴う資源需要が
オーストラリアの資源輸出の牽引役である反面、そのことが中国経済の景気変動や経済政策転換
へのオーストラリア経済の脆弱性を高める結果となる。中国が今年から公式に成長率目標を引き下
げていること、現状、中国経済は、欧州危機を受けての輸出減速や引き締め政策の効果などから
減速傾向を強めており、これに連動してオーストラリア経済にも足元減速し、また、豪ドル為替相場
も軟調推移するなど、連動性が高まっている。また、主力輸出品の鉄鉱石と石炭は中国の鉄鋼業
への原燃料供給だが、中国の鉄鋼業は企業乱立による過当競争、特に中小鉄鋼メーカーにおける
非効率且つ過剰な設備、また CO2 排出を含む高い環境負荷といった問題を抱えており、こうしたこと
に対処する当局の産業政策や環境政策にも大きなインパクトを受けることにも留意が必要である。
既に中国政府は 2010 年には全国的な鉄鋼業の再編案を策定し、例えば山西省では現状は省内
で 200 社以上ある鉄鋼メーカーを 2015 年までに 10 社程度まで減らす計画である。
第二に、新興国だけでなく米国やカナダ等先進国とのコスト競争力を確保し今後も資源輸出大
7
7
e-NEXI (2012 年 6 月号)
8
国としての持続的発展のためには、インフラ面及び労働力(特に技能労働者)のボトルネックへの対
応と、それに伴うコスト上昇への対処が課題である。
インフラについてみると、鉄道、港湾といった輸送インフラの拡張や新設が不可欠であり、政府は
「Infrastructure Australia」法を 2008 年に制定し、鉱業支援インフラ建設に 60 億豪ドルの予算を
割当てるなど、インフラの開発に努めている。しかし、連邦政府と州・準州や地方自治体関連機関
の間、また、各産業間、更に港湾と鉄道といった案件間の戦略的調整が十分と言えず、インフラ整
備の遅延等の問題が生じている。
労働力不足や賃金コストの上昇については、特に深刻な技能労働者の不足を反映して 2011 年
1 月発表の豪州統計局調査結果によれば、鉱山労働者の平均年収は 115 千豪ドルで全労働者
平均の 68 千豪ドルを大幅に上回っており、今後も上昇圧力が強い。また、更なる賃上げや待遇改
善を要求してストライキも頻発している。これに対し政府は、「国家資源部門雇用タスクフォース」を
2009 年に結成し、2010 年の最終報告書では、綿密な労働力計画、スキル開発プログラムの実施、
産学連携による教育拡充や補助拡大、一時的移民ビザ拡充、待遇改善(FIFO:フライイン・フライ
アウト 等)への補助、などを打ち出した。
ただ、労働組合が支持母体である現労働党政権の労働政策は全般的に労働者寄りで大胆な移
民導入といった抜本策が無いことから、技能労働者不足、賃金上昇、スト頻発といった問題は容易
に解決しないとの見方が多い。
最後に、安定的民主国家であり、日米欧と同様の良好なビジネス環境が用意された先進国との
印象が強い同国だが、途上国や新興国とは比較にならないものの、意外にも最近政治や政策が必
ずしも安定しないこと、また、資源課税強化が現実のものとなり主力産業である鉱業セクターに逆風
となる政策を取っていることへの注意喚起をしておきたい。
政治動向については、今年 2 月に前首相のラッド外相(当時)が突如辞任し、ギラード現首相と
党首選で争うという事態が生じた。結果はギラード首相の圧勝となったが、後述する炭素税等の資
源課税の動きへの不満から現政権への支持率は昨年以来低迷を続け、労働党内の不和が露呈
したこともあり今年 4 月の世論調査でギラード首相への満足度は 36%に低下、与党労働党支持率
も 27%に低下している。今後、炭素税等が施行される夏以降の支持率の推移次第では、来年 8
月迄に行われる連邦議会選挙をにらんで再度今年 2 月のような「政局」もありうる不安定な政治状
況との見方が多い。
鉱業関連の政策では、炭素税及び鉱物資源利用税が今年 7 月に導入される。炭素税は CO2
排出トン当たり 23 豪ドル(14 年から更に年 2.5%ずつ引き上げ)を CO2 排出上位 500 企業に課す
内容であり、鉱物資源利用税は一定以上の利益を上げる鉄鉱石、石炭企業から、各種控除後
実効税率で 22.5%程度を課税するというもの。これらに加え、今後、現状鉱業セクターに認められて
いる加速償却を認めない、また、ディーゼル燃料補助金を削減する、といった鉱業セクターを狙い撃
ちした政策も議論されている。こうした課税強化の動きは、鉱業セクターの投資意欲、経済全体の
活力や国際競争力を削ぐリスクがあるばかりでなく、炭素税が現政権支持率低下の主要な要因で
8
e-NEXI (2012 年 6 月号)
あり、かつ与野党間の政策論争の焦点となるなど政治的不安定さをもたらす原因となっている点で
警戒を要する動きといえる。
以 上
9
9
e-NEXI (2012 年 6 月号)
2011年度の保険事故の特色
独立行政法人日本貿易保険
債権業務部
1.
はじめに
今回は「2011年度の保険事故の特色」についてご紹介いたします。
2008年9月のリーマン・ショック以降、保険事故の発生状況(金額ベース)は、2009年度及び
2010年度と 2 年連続で増えていましたが、2011年度は減少に転じました。一方、保険金支払
(金額ベース)については過去3年間ほぼ横ばいで推移しております。
次項から、詳細データを示しながら、具体的にご説明させて頂きます。
2.
2011年度の保険事故発生と保険金支払いの実績
(1) 信用危険/非常危険別の推移
(単位:百万円)
区分
危険区分
2011 年度
前年度比
36,151
46,872
3,974
8%
件数
709
285
133
47%
金額
12,031
11,283
11,333
100%
件数
234
139
99
71%
金額合計
48,182
58,154
15,307
26%
件数合計
943
424
232
55%
非常危険事故
金額
7,176
4,603
7,017
152%
件数
88
91
34
37%
金額
3,268
3,972
1,342
34%
件数
134
52
15
29%
金額合計
10,445
8,574
8,359
97%
件数合計
222
143
49
34%
信用危険事故
保険金支払
2010 年度
金額
信用危険事故
事故発生
2009 年度
非常危険事故
注:事故発生は、各年度内に受理した危険発生通知・損失発生通知に基づく計数。
2011年度の事故発生状況については、全体(信用危険+非常危険)で232件、153億円の危
険発生・損失発生通知書が提出されました。経済危機の影響を受けた前年度と比較すると、件数、金
額ともに減少しました。信用危険事故については、件数は5割減、金額ベースは9割減となりました。他
方、非常危険事故については、件数は3割減となりましたが、金額ベースではほぼ同水準となりました。
実際の保険金支払いについては、2011年度は全体で49件、83.6億円を支払いました。前年度
と比較すると、金額ベースでほぼ横ばい(件数は減少)となりました。信用危険事故については、一件あた
りの金額が大きな船前事故案件について保険金を支払ったことから、件数は6割減ながら金額では5割
増となりました。非常危険事故については、件数、金額ともに7割減となりました。
<2009年度~2011年度の事故の推移>
10
10
e-NEXI (2012 年 6 月号)
信用危険事故の推移
事故発生
(百万円)
非常危険事故の推移
保険金支払
事故発生
(百万円)
50,000
保険金支払
50,000
45,000
45,000
40,000
40,000
35,000
35,000
30,000
30,000
25,000
25,000
20,000
20,000
15,000
15,000
10,000
10,000
5,000
5,000
0
0
2009年度
2010年度
2011年度
2009年度
2010年度
2011年度
(2) 地域別
<2011年度の地域別実績>
(単位:百万円)
事故発生金額
地域
信用危険
非常危険
2,084
1,445
6
105
334
0
3,974
アジア(中近東を含む)
ヨーロッパ
北・中米
南米
アフリカ
オセアニア
合計
保険金支払金額
信用危険
4,912
0
77
4,773
1,570
0
11,333
非常危険
5,624
1,262
33
0
99
0
7,017
5
0
77
951
309
0
1,342
<2011年度の地域別事故発生金額>
事故発生金額 信用危険
事故発生金額 非常危険
(百万円)
(百万円)
2,500
5,000
2,084
4,913
4,773
4,500
2,000
4,000
3,500
1,445
1,500
3,000
2,500
1,000
1,570
2,000
1,500
334
500
6
105
1,000
0
500
0
0
77
0
0
アジア
(中近東含)
ヨーロッパ
北・中米
南米
アフリカ
オセアニア
アジア
(中近東含)
ヨーロッパ
北・中米
南米
アフリカ
オセアニア
①事故発生状況
2011年度の信用危険事故の大半はアジア(52%)とヨーロッパ(36%)で発生しました。非常危険
事故は、アジア(中近東を含む)と南米で約9割を占めました。非常危険の事故発生事由について触れ
ると「為替取引の制限」(28%)及び「その他本邦外事由」(54%)が上位を占めました。「為替取引の
制限」は南米における外貨割当規制によるものでした。
②保険金支払い状況
11
11
e-NEXI (2012 年 6 月号)
2011年度は全体では83.6億円を支払いましたが、その内、アジアの約49億円(67%)とヨーロッ
パの約13億円(15%)が太宗を占めております。
非常危険事故については、南米の9.5億円(71%)に次いで北アフリカの3.1億円(23%)の支払
となり、信用危険事故については、アジアの56.2億円(80%)、ヨーロッパの12.6億円(18%)となり
ました。
3.
2011年度信用危険事故の事故発生状況の分析
(1) 保険種別
保険種
包括区分
企業総合
一般企業
貿易一般
組合
個別
限度額設定型
-
輸出手形
-
簡易通知型包括
-
再保険(受再)
-
中小企業
-
貿易代金貸付
-
海外投資
-
海外事業資金貸付
-
合計
金額(百万円)
1,502
1,165
817
293
12
177
6
0
2
0
0
0
3,974
構成比
37.8%
29.3%
20.6%
7.4%
0.3%
4.4%
0.1%
0.0%
0.1%
0.0%
0.0%
0.0%
100.0%
件数
構成比
45
4
17
46
5
12
2
0
2
0
0
0
133
33.8%
3.0%
12.8%
34.6%
3.8%
9.0%
1.5%
0.0%
1.5%
0.0%
0.0%
0.0%
100.0%
保険種毎の信用危険事故の発生状況は、企業総合保険、組合包括保険等の包括保険が約9割
を占めました。2010年度との対比では、組合包括保険での事故発生金額が大きく減少した一方、輸
出手形保険での事故発生金額がやや増加ました。
(2) バイヤー格付別
危険区分
バイヤ格付ー引受時
金額(百万円)
GA
GE
EE
信用危険
EA
EF
PU
合計
14
298
9
1,149
1,238
1,265
3,974
構成比
0.4%
7.5%
0.2%
28.9%
31.1%
31.8%
100.0%
バイヤー数
1
3
1
4
42
4
55
構成比
1.8%
5.5%
1.8%
7.3%
76.4%
7.3%
100%
バイヤー格付別では、EF 格に事故が集中しています。ただし、件数は少ないながら金額ベースでみると、
EA 格も事故発生金額の約3割を占めています。
※バイヤー格付けの内容はこちらのHPを御覧ください
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e-NEXI (2012 年 6 月号)
http://www.nexi.go.jp/product/confidence/
(3) 填補範囲別
危険区分
てん補範囲
金額(百万円)
0
3,797
177
3,974
船積前
信用危険
船積後
その他
合計
構成比
0.0%
95.5%
4.5%
100.0%
件数
構成比
0
121
12
133
0.0%
91.0%
9.0%
100.0%
填補範囲別では、2011年度中には「船積前」事故の危険発生・損失発生通知書の提出はありま
せんでした。「船積後」事故の発生状況も、前年度と比較して、件数、金額共に減少しています。
(4) 信用危険の事故発生状況の特徴
2009年度の上期(2009年4~9月)をピークに、信用危険事故の発生件数は減少・鈍化傾向にあ
り、2011年度下期は68件まで減っています。世界経済危機の影響が長引く中、事故多発に対応す
るお客様各社のリスク管理強化、損失防止・軽減への積極的な対応の成果によるものと考えられます。
また、金額ベースでも、2010年度にはアジア(中近東を含む)において信用危険事故が増加しましたが、
2011年度は大幅に減少しました。
4.
おわりに
2011年度は、NEXI の保険金支払い総額は前年度と同水準となりました。一方、ベルン・ユニオンの
統計においては、保険金支払い総額は2009年の5,446百万ドルをピークに、2010年は3,440百
万ドルに一旦下がったものの、2011年は3,919百万ドルと上昇に転じている状況です。2012年度
は、こうした傾向に加え、欧州債務危機の影響、緊張の続く中東・アフリカ情勢等により、非常危険、信
用危険とも保険事故が発生する可能性があります。
お客様におかれましては、引き続き損失防止・軽減へのご協力をお願いいたします。万が一、保険事
故が発生しましたら、下記までご連絡頂きますようお願いいたします。
また、保険事故等に関連して、保険の内容や保険金請求等の各種手続き等について、ご質問・ご不
明な点等がございましたら、ご遠慮なく NEXI の下記窓口までお問い合わせください。
お問い合わせ先: 日本貿易保険(NEXI)債権業務部 査定回収グループ
TEL:0120-673-094(フリーダイヤル)
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e-NEXI (2012 年 6 月号)
在香港日系企業向け貿易保険制度セミナーの開催報告
独立行政法人日本貿易保険
独立行政法人日本貿易保険(NEXI)では、本年 2 月に香港の輸出信用機関である香港輸出信用
保険局(HKECIC)と再保険協定(※注)を締結いたしました。この再保険スキームの利用促進を図ること
のほか、契約リスク管理の手段として貿易保険のメリットを知っていただくため、在香港日系企業向けのセ
ミナーを 5 月 31 日に実施しました。
メーカー、商社、大手金融機関、地方銀行等などから 96 名の皆さまにご来場を頂きました。ご参加い
ただきました皆様には、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。
(※注)この再保険協定は、Quota Share(比例特約)再保険を導入しています。
これは、予め NEXI-HKECIC 間で引受条件等を協定上決めておき、その範囲内で HKECIC が
引き受けたリスクの一定割合を自動的に再保険者である NEXI が引き受けるスキームで、引受
審査のスピードアップなどお客様の利便性向上が図られます。
1.開催日程
日 時:2012 年 5 月 31 日(木) 15:00~17:00
場 所:香港日本人倶楽部
2.プログラム
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e-NEXI (2012 年 6 月号)
時 間
15:00
プレゼンター
内 容
開会
香港輸出信用保険局 コミッショナー
Mr. Ralph Lai
独立行政法人 日本貿易保険 理事長
15:00~15:20
(20分)
鈴木 隆史
1.主催・共催者挨拶
在香港日本国総領事館 大使
隈丸 優次 様
香港日本人商工会議所
明石 健太郎 様
独立行政法人 日本貿易保険 15:20~15:55
(35分)
2.日本貿易保険 講演
営業第一部 営業企画グループ 主任
「貿易保険制度の概要とHKECとの再保険協定について」
金山 勇作
(質疑応答含む)
― 休 憩 15 分 ―
香港輸出信用保険局
16:10~17:00
(50分)
3.香港輸出信用保険局 講演
マーケティングディビジョン 「効率的なリスクマネジメントでビジネスの拡大を」
アシスタントゼネラルマネージャー
Mr. Iso Wong
(質疑応答含む)
17:00
※広東語により講演(通訳あり)
閉会
3.最後に
本セミナーではご来場いただいた方から多数のご質問や、セミナー終了後に個別のお問い合わせをいた
だくなど、大変好評な反響を頂きました。
日本貿易保険は、今後とも海外の貿易保険機関との連携を通じ、我が国企業の国際的な事業展開
を積極的に支援してまいります。
「セミナーの様子」
*NEXI によるアジア再保険協定締結の取組について
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e-NEXI (2012 年 6 月号)
近年、本邦企業の海外進出が加速し、海外(特にアジア地域)に生産拠点を設け、海外の現地法人か
ら第三国へ直接輸出を行うケースが増加しています。
NEXI は、アジア各国に所在する日系企業の第三国向け輸出支援を主たる目的として、アジア各国の輸
出信用機関(ECA)と再保険協定を締結しています。本協定の締結により、締結相手国が引き受けた
日系企業の輸出取引について、NEXI が再保険を引き受けることが可能となり、現地日系企業の輸出
取引に係るリスクの軽減を図っています。支援が可能な対象国の拡充を図るため、今後も同様の取組を
進めて参ります。
<アジア再保険協定締結国・地域>
シンガポール(シンガポール輸出信用保険会社:ECICS)、マレーシア(マレーシア輸出入銀行:MEXIM)、
インドネシア(インドネシア輸出保険公社:ASEI)、タイ(タイ輸出入銀行:THAI EXIMBANK)、台湾(台
湾輸出入銀行:TEBC)、香港(香港出口信用保険局:HKECIC)
お問い合わせ先:
日本貿易保険(NEXI) 営業第一部 営業企画グループ
TEL:03-3512-7665
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e-NEXI (2012 年 6 月号)
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NEXI の業務体制について
各部・グループ紹介 第3回
~営業第一部~
営業第一部の御紹介
営業第一部は、お客様が貿易保険をご利用になる入口の部分となる、事前のご相談、
引受可否の検討、保険契約締結・保険証券発行までの各種業務を担当する他、その後の
内容変更のご相談等も含め長期にわたりお客様とコミュニケーションをとっています。
また、変化する経済状況に応じて、お客様のニーズに合う新しいサービスの開発も行う
等幅広い業務を行っています。今回は営業第一部各グループについて御紹介いたします。
●営業企画グループ
営業第一部全体の統括及び調整役として、制度改正、中小企業支援対策、他機関との
連携強化、再保険の引受等を担当しています。さらに、営業全般に関わる事項のうち部
内の他グループの所管外業務も担当するため、その業務は多岐にわたっています。
最近では、中小・中堅企業を中心とする地域企業の海外進出を支援するため、地方金
融機関との提携を通じた貿易保険の普及に取り組んでいます。
また、本邦企業の海外展開進展に伴い日系海外子会社による取引のリスクヘッジに対
するニーズ・重要性が高まるなか、海外ECA及び現地民間損害保険会社の再保険を引受
けることにより、我が国の企業の海外展開を積極的に支援しています。
●お客様相談室(カスタマー・リレーションズ・チーム)
貿易保険全般のご相談、ご質問、ご要望の総合窓口としての役割を果たします。
初めて貿易保険をご利用になるお客様やご利用を検討いただいているお客様に対し、
貿易保険制度の基本的な内容をご説明したうえで、適切な保険商品のご案内や円滑な付
保手続きのためのお手伝いをするほか、貿易保険の概要をご理解いただくためのセミナ
ーも開催しています(本年は7月に開催予定)。よりきめ細やかなお客様対応ができる
ように、本年4月から陣容を更に拡充し、フォローアップ機能を強化いたしました。
●引受グループ
引受グループでは、①2 年未満基準外案件(国ごとに定めた案件枠、ユーザンス制限、
L/C 条件等の「引受基準」を満たさない案件)、②2 年以上のバイヤーズクレジットで借
入国政府保証または一流銀行保証付案件、③2 年以上のバンクローン案件(ツーステッ
プローンとも呼ばれる)について引受可否の検討を行っています。お客様から案件の情
報を伺い、審査部等と連携して国及び案件のリスクを総合的に勘案して引受の可否を検
討します。
また、フロンティアカントリーにおける本邦企業活動支援のための取組も行っていま
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e-NEXI (2012 年 6 月号)
す。イラク財務省、イラク貿易銀行(TBI)と協議を行い、より貿易保険を付保しやす
くする Framework Agreement の締結につなげました。他に、今後 2 年間で 5 億ドル相当
のクレジットラインを設定したミャンマー向け施策実現に向け、先方政府実務担当者と
の打ち合わせ等も行っています。
●契約業務グループ
貿易保険の全保険種の契約を締結し、証券を発行するグループです。貿易保険の事前
準備(お客様登録、バイヤー登録・調査、特約締結等)、保険契約相談、内容変更及び
既存付保案件のモニタリング対応(事故発生前まで)を行っています。
契約業務グループは、3チームに分かれ対応しています。
-包括保険チーム
・保険契約手続対応保険種:設備財包括保険(機械設備、鉄道車両、船舶)、技術提
供保険、企業総合保険、限度額設定型貿易保険、簡易通知型包括保険
・その他対応業務:シッパー及びバイヤーの登録、バイヤー信用調査依頼
-短期保険チーム
・保険契約手続対応保険種:貿易一般保険(個別)、中小企業輸出代金保険、輸出手
形保険、消費財(鉄鋼)包括保険、前払輸入保険、海外フロンティング(個別)担
当業務
・その他対応業務:個別保証枠(枠取り、枠戻し、変更)
-中長期保険チーム
・保険契約手続対応保険種:貿易代金貸付保険、海外事業資金貸付保険、海外投資保険
※ 相談対応、案件審査、内諾書発行までは、営業第二部、引受グループが対応
以上
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