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ここをクリック! - 缶詰技術研究会

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ここをクリック! - 缶詰技術研究会
「オペラハウス」オーストラリア(シドニー) KT
目 次
随 想 食料供給と安全・安心…………………………………<高柳敏郎>… 262
解 説 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第8回)
サイクロデキストリン・分岐サイクロデキストリン
……………………………………………<三國克彦>… 264
解 説 シリーズ解説:米の話(第9回)
米の品質(2)精米(機能性精米技術)………<河野征弘>… 274
〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
海外技術・マーケット情報
クリーンな自然食品と食材の課題…………………………………………
MillerCoors社の内面らせん溝付きビールびん …………………………
注目されるラベリング………………………………………………………
食品の栄養価を高める45のヒント…………………………………………
PETボトル製造における省資源化の取り組み …………………………
小売り戦線でグリーン製品が勝つ6つの秘訣……………………………
消化器官の機能を高める健康素材…………………………………………
食品科学が直面する克服すべき課題………………………………………
マイクロカプセル化による天然着色料の安定化…………………………
281 282 283 284 287 289 290 292 295 〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰〰
特別レポート:トイレタリー・化粧品業界における注目市場と容器の関連性
……………………………………………<太田健一>… 296
業界トピックス:家庭用ココア,新商品の寄与で微増…………………………… 301
連載エッセー:食の遠近画法 余震……………………………<五明紀春>… 302
特別解説:食物成分の生理作用と機能性食品−抗酸化活性と生理機能の探索−
……………………………………………<岩井邦久>…
業界の話題………………………………………………………………………………
今月の統計………………………………………………………………………………
最近の技術雑誌から……………………………………………………………………
野菜・果物を巡って(第二十九話)よもぎを摘む……………<吉田企世子>…
FOOD
&
PACKAGING
缶詰技術研究会 http://kangiken.net/
304
312
316
318
323
随 想
食料供給と安全・安心
たか
やなぎ
とし
お
高 柳 敏 郎
(高柳コンサルティング 代表
元㈱イトーヨーカ堂常務取締役)
食品の安全・安心があちこちで日常のように語
ジティブリスト制度」などで整備されている。日
られている。私は「国際食品・飲料展 Foodex
本の消費者の安全・安心に関する法律や制度が複
Japan」に永く関係しており,外国の食品分野
雑で分かりにくい面があるにしても,その運用へ
の方々と接する機会が多くあったが,最近意識し
の信頼度が低いとは思えない。そこで消費者が購
て個々の国の消費者の安全・安心に関する意識に
入する商品に関する周辺事情と情報について考え
ついて質問を試みることにしている。参加国数
てみたい。
は約70であるが,私が話を聞いた欧米の国々で
☆ ☆ ☆
も,安全・安心についての消費者の意識は様々で
商品としての食品の大きな流れは,加工度が上
ある。概して言えることは,日本と同じで,食料
がり続けてきた,ということである。特に魚や畜
自給率に関係なく自国で生産・製造された食品が
肉類の生鮮での販売量は低下傾向であり,何らか
安全だと思っていることである。本来,自給率の
の加工が施された商品が増えている。生鮮であれ
高低は安全・安心の意識に関係ないと思うのであ
ば,品名と産地が主たる表示項目すなわち消費者
るが,自給率の高い国は,安全・安心に関する意
への情報となるが,加工を施せば衛生法上の表示
識が低いようにも思われる。そして感ずることは,
項目が増える。更に,喉詰まりや容器での怪我へ
国民への食料供給が過不足なく行われている多く
の注意喚起の表示に至っては消費者の心配を煽っ
の国で,日本よりも安心して日常の食生活が営ま
ているのではないかと訝りたくなる。
れているということである。関心・意識の高いこ
周知の通り,日本は食品の原料や製品の多くを
とは悪いことではないと思うが,日本の消費者と
外国からの輸入に頼っている。生鮮食品以外の食
海外のそれとは少し違うようである。
品は複数国からの原料により最終製品となってい
日本の食品による危害の防止の枠組みは,食品
るものが沢山ある。従って問題が起こっても追跡
衛生法・JAS法,更に2005年に導入された「ポ
調査に困難や曖昧さがどうしても伴う。
食品と容器
262
2011 VOL. 52 NO. 5
☆ ☆ ☆
と,日付のコマのセット間違い・機器部品の微細
1960年 代 後 半 に , ア メ リ カ は UPC
片の混入・輸入原料や製品に入っている日本で禁
(Universal Parcel Code)の導入を行った。こ
止の添加物などである。いずれも今後も起こりう
の導入の目的のひとつは追跡調査(トレーサビリ
る問題である。故意ではないにしても,消費者に
ティー)も含めた製造者責任をより明らかにしよ
してみれば起こらないに越したことはない。
うとしたものであった。この頃,現地法人に勤務
上記事例の中で,とりわけ日本にとって厄介な
していた私は,アラスカ州のコディアック市に水
のは,輸入原料・製品に入っている添加物である。
産加工(缶詰・冷凍)の工場の建設中であったの
言うまでもなく,日本は食料自給率が低く,多く
で,UPCの導入に緊張したのを覚えている。日
の国々から多種・多様な食料を輸入している。輸
本 で は,UPCに 相 当 す るJAN(Japan Article
出元の国々は,それぞれ自国の食料安全管理のた
Number) の 導 入 が1980年( 昭 和55年 ) 前 後
めの法律や制度を持っている。しかし多国からの
に始まり,これはむしろ流通の合理化を目的とし
輸入食料は,日本の港に到着した時点から,日本
た感が強い。この時私は小売業にいて,これで日
の法律や制度,あるいは慣習で律せられ一元管理
常の仕事が楽になる,と単純に考えてしまった。
されることになる。考えてみれば,これは日本の
しかしJANを利用してのシステム化やデータの
関係者にとってかなりの力仕事である。輸出側・
活用にはその後数年を要したのである。
輸入側共々の協力が無ければ,日本の食品危害管
しかし時間がかかりながらも,JANバーコー
理の綿密な枠組みである筈の「上手の手」から水
ドの採用をきっかけに活用方法も開発・改善が進
が漏るのである。食料の大量輸入が必要な日本で,
んで,製造業や流通業にメリットが広がったのは
今後しばらくは続くと思われるこのような供給環
勿論のこと,消費者へ提供する情報の内容が豊富
境と上手に付き合って行かなくてはならない。
で早くなった。こうなると,製造業は小売業の店
☆ ☆ ☆
舗を中継して自分の製品(商品)の情報を積極的
私が委嘱されているISO22000(食品の安全に
に消費者に流して,競争相手の商品に販売負けし
関する審査・登録制度)の判定委員会でも,原材
ないように,営業活動に利用することを考えるよ
料の供給元が国内・国外どちらであっても,原材
うになった。しかし,営業上のプラス情報はとも
料の安全性は当然ながら最終製品の安全性を左右
かくとして,マイナス懸念のある情報は表に出し
するため,重要なチェックポイントである。また
たがらないという当然の傾向があった。その後表
原材料の安全性は,加工技術・加工設備,そして
示に関する法改正などもあり,時を経て現在に至
それに関わる人達の資質などとともに,良い最終
っている。
製品を造るための出発点である。100%海外から
消費者が食品の安全・安心を享受するためには,
の原材料によって造られている製品も沢山ある。
製造業や流通業のみが対策を考え,責任を負わな
このように考えると,
「質」を伴った「量」の確
くてはならないのか,というと少し首をひねりた
保のための輸入を続けなければならない日本の食
くなる。常識的には,過不足なく正しい情報が容
料供給事情は,世界の食料需給状況との関係も無
器・包装に表示してあれば消費者から問われても
視できない。やはり日本は自給率の問題に押し戻
説明ができる筈である。最近の問題の事例をみる
されるのである。
食品と容器
263
2011 VOL. 52 NO. 5
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第8回)
◆解説◆
サイクロデキストリン・
分岐サイクロデキストリン
みくに・かつひこ
東北大学農学部卒
業。1983 年 塩 水
港精糖株式会社入
社。現在,同社理
事,糖質研究所長。
三國克彦
農学博士
数多くの分子カプセルとしての研究報告がなされ
◆1.はじめに◆
てきた。
サイクロデキストリン(学術和名:シクロデキ
CD は,グルコース単位6個からなるα -CD,
ストリン,CD)はデンプンより得られるオリゴ
7個からなるβ -CD,8個からなるγ -CD がよ
糖の1種で,グルコース単位がα -1,4 グルコシド
く知られている(第1図)
。さらに,グルコース
結 合 で 環 状 に 連 な っ た も の で あ り,1891 年 に
単位が9個∼50 個の大環状 CD1),17 個∼数百
Villers に よ っ て 発 見 さ れ,1904 年 に
個のシクロアミロース2) の存在が報告され,今
Schardinger によってその特異な分子構造が明ら
なお環状糖の世界は広がっている。
かにされた。このとき CD は,高分子の性質を
一方産業利用の面では,1970 年代から,わさ
示したために,構造はオリゴ糖でありながらデキ
びなどの辛味を保持するために食品で利用され,
ス ト リ ン と い う 名 前 が つ け ら れ た。1932 年
今日に至っている。
Pringsheim らが CD の包接作用を発見して以来,
OH
O
O
HO
HO
OH
OH
O HO
OH
O
HO
O
OH HO
O
OH
O
HO
O
HO
OHO
O
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HO
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HO
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O
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HO
OH
OH
ǃ䋭cyclodextrin
O
O
OH HO
O
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ǂ䋭cyclodextrin
O
OH
HO
O
OH
HO
O
O
OH
O
O
OH HO
O
O
OH
DŽ䋭cyclodextrin
第1図 サイクロデキストリンの構造
食品と容器
264
2011 VOL. 52 NO. 5
サイクロデキストリン・分岐サイクロデキストリン
フェラーゼ(EC2.4.1.19,CGTase)を作用させ
◆2.CD の物理化学的特性◆
て得られる。工業的製造法は,酵素反応工程(液
CD はドーナツ状の形をしていて,内側は疎水
化反応,転移反応),精製工程および乾燥工程(製
性(親油性),外側は親水性を示すために,環の
品によっては液状品もある)からなる。マルト
中に疎水性の化合物や官能基を取り込み(包接と
ースがα -1,6 グルコシド結合で CD 環に結合し
呼ぶ),分子カプセルとして機能を発現する(第
たマルトシル CD を分岐サイクロデキストリン
2図)。空孔の内径はα -CD で 約 0.5 nm,β -
(分岐 CD)と呼んでいる。分岐 CD は,マルト
CD で約 0.6 nm,γ -CD で約 0.9 nm である。
ー ス と CD を 高 濃 度 に 溶 解 し, プ ル ラ ナ ー ゼ
それぞれ環の大きさによって取り込む化合物や官
(EC3.2.1.41)を作用させ,脱水縮合することに
能基が異なり,α -CD は直鎖アルキル基を持つ
化合物,β -CD はベンゼン環を持つ化合物,γ 䉭䉴䊃
CD
CD はナフタレンまたはアルキル基2本を環に取
り込むことができる。
ળว䋨൮ធ䋩
CD は酸,アルカリに対して,デンプンや他の
オリゴ糖に比べて安定である。熱に対しても,約
൮ធⶄว૕
160℃程度まで加熱しても安定である。
CD の水への溶解度は 25℃でα -CD が 14.2 g
⸃㔌䋨ᓢ᡼䋩
/100mL, β -CD が 1.85 g /100mL, γ -CD が
23.2 g /100mL であり,β -CD は水への溶解性
䉭䉴䊃
CD
が低い。マルトースがα -1,6 グルコシド結合で
CD 環に結合したマルトシル CD は水に対する溶
第2図 CDの包接化現象
解度が飛躍的に高く,マルトシルβ - CD(第3
図)の溶解度は,β - CD の 100 倍以上である。
OH
CD は環状糖であるため,酵素に対する抵抗性
O
HO
O
O
OH HO
に特徴がある。グルコアミラーゼやβ - アミラー
OH
ゼによって加水分解されず,α - アミラーゼに対
O
HO HO
O
しては,環の大きさによって抵抗性が異なる。こ
O
O
OH HO
HO
OH
だ
O
こで消化吸収に関して述べると,唾液α - アミラ
OHO
すい
ーゼや膵 液α - アミラーゼに分解されにくいα -
O
OH
O
HO
CD とβ -CD は,難消化性糖類で,これらα - ア
HO
ミラーゼによって分解されるγ -CD は可消化性
糖類に分類される。
O
OH
HO
O
OH
HO
O
◆3.CD 製造方法◆
OH
O
HO
CD はデンプンに
HO
OHO
O
HO
O
OH
属などが産生する
第3図 マルトシルβ-サイクロデキストリンの構造
サイクロマルトデキストリングルカノトランス
食品と容器
OH
HO
265
2011 VOL. 52 NO. 5
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用
水に溶けにくい成分を溶解するのに優れ,苦味の
よって得られる(第4図)。分岐 CD は,イソエ
リート
®
として市販され,水溶性が高いために
軽減にも適している(第5図,第1表)。CD 製
品には,α -CD,β -CD,γ -CD と
いった純度の高いものの他に,デン
䊂䉨䉴䊃䊥䊮䉕䌇䋲䈮ᄌ឵䈜䉎෻ᔕ
઀ㄟ䋨䊂䊮䊒䊮╬䋩
プンに CGTase を作用させただけ
ᶧൻ෻ᔕ
䌃䌄䈫䌇䋲䈱❗ว෻ᔕ
の CD とデキストリンの混在タイ
♧ォ⒖෻ᔕ
ടᾲᄬᵴ
ടᾲᄬᵴ
プや,さらに CD 以外のデキストリ
䌇䋲䈱ౣ೑↪
ンを酵素によって低分子化したタ
ᵴᕈ὇ಣℂ䊶䉐ㆊ
イプがある。β -CD は,特異的に
ᵴᕈ὇ಣℂ䊶䉐ㆊ
⣕Ⴎ⣕⦡
生産する酵素があり,かつ結晶性が
⣕Ⴎ⣕⦡
良いため,比較的安価に製造できる。
䉟䉥䊮䉪䊨䊙䊃䉫䊤䊐䉞䊷
䉫
Ớ❗
食品には,一般的にβ -CD もしく
⣕Ⴎ⣕⦡
ྃ㔵ੇ῎
は混在タイプがよく利用されている。
Ớ❗
一 方, α -CD と γ -CD は, 高 価 な
㪚㪛⵾ຠ
ྃ㔵ੇ῎
䌇䋲䋺䊙䊦䊃䊷䉴
健康食品素材を安定化する,あるい
は,生体利用効率を高めるために利
ಽጘ㪚㪛⵾ຠ
用されることが多い。各社の製品を
第4図 CDおよび分岐CDの製造方法
第2表に示した。
◆4.CD
の機能◆
分子カプセルとしての機能は,①揮発性物
質の安定化,②酸素や紫外線などで分解しや
すい物質の安定化,③マスキング(苦みや異
臭の抑制),④水に難溶性・不溶性物質の可
溶化および乳化,⑤吸湿性の改善,⑥生体内
第5図 イソエリート® の水への溶解度
第1表 イソエリート®
利用効率の向上,⑦化学反応の触媒,⑧分子
認識(化学合成の鋳型やクロマトグラフィーの移
の糖組成の代表例
成分名
糖組成(% ,W/W)
α -CD
18.7
β -CD
5.2
γ -CD
6.2
動相や固定相に利用される)などがある。そのう
ち食品に関係するものを第3表に具体的に示した。
次に試験例を挙げて,CD の機能を説明する。
G2- α -CD
22.5
クルクミンはウコンの主成分で抗酸化能があるこ
G2- β -CD
9.7
とが知られているが,光に対し不安定である。ク
G2- γ -CD および(G2)2- α -CD
9.6
ルクミンと乳糖の混合物を対照にし,クルクミン -
(G2)2- β -CD
7.7
(G2)2- γ -CD
2.3
β -CD 複合体に紫外線を照射し,クルクミン残
18.1
存量を比較した試験では,照射2時間後で明らか
その他(オリゴ糖類)
G2 はマルトシル基の略号
食品と容器
な差異が認められ,β -CD がクルクミンを安定化
266
2011 VOL. 52 NO. 5
サイクロデキストリン・分岐サイクロデキストリン
第2表 CD商品とその特徴
メーカー
(販売社)
商品名
日本食品
セルデックス
化工㈱
A-100
主成分
CD 含有量
(%)
特徴
α -CD 98.5 以上
分離精製品,結晶性粉末
B-100 β -CD
98 以上 分離精製品,結晶性粉末
TB-50 β -CD >α -CD >γ -CD
40-45 β -CD およびα -CD で効果がある用途に適する。粉末
SL-20
γ -CD >α -CD >β -CD
20
γ -CD およびα -CD で効果がある用途に適する。
SH-20
γ -CD >α -CD >β -CD
20
γ -CD およびα -CD で効果がある用途に適する。水飴部
水飴部分の分解度が低く,甘味低い。シラップ
分の分解度がやや高く,多少甘味を感じる。シラップ
メルシャン㈱ リングデックス
A
α -CD 98 以上
分離精製品,結晶性粉末
B
β -CD
98 以上
分離精製品,結晶性粉末
PK
α -CD >β -CD >γ -CD
50 以上
α -CD およびβ -CD で効果がある用途に適する。粉末
㈱シクロケム キャバマックス
W6
α -CD 98 以上
分離精製品,結晶性粉末
W7
β -CD
98 以上
分離精製品,結晶性粉末
W8
γ -CD
98 以上
分離精製品,結晶性粉末
塩水港精糖㈱ デキシーパール
α -100
α -CD 98 以上
分離精製品,結晶性粉末
β -100
β -CD
98 以上
分離精製品,結晶性粉末
γ -100
γ -CD
98 以上
分離精製品,結晶性粉末
K-50
α -CD >β -CD >γ -CD
50 以上
α -CD およびβ -CD で効果がある用途に適する。粉末
K-100
α -CD >β -CD >γ -CD
97 以上
α -CD およびβ -CD で効果がある用途に適する。粉末
KS-20
γ -CD >α -CD >β -CD
20
γ -CD およびα -CD で効果がある用途に適する。水飴部
SD-20
β -CD >α -CD >γ -CD
20 以上
α -CD およびβ -CD で効果がある用途に適する。粉末
マルトシル 全 CD80 以上 水への溶解性が良いため飲料などに適する。
α , β , γ -CD 混合
マルトシル CD 粉末およびシラップ
50 以上
分の分解度が低く,甘み低い。シラップ
イソエリート
第3表 食品および食品成分とCD機能との関係
揮発性物質の安定化
ワサビ,メントール,テルペン類など香料,香辛料,精油
酸素や紫外線などで分解しやすい
物質の安定化
CoQ10,ビタミン類,不飽和脂肪酸,リコピン,ルチン,
ローヤルゼリー,グルタチオン,アントシアニン,
クロセチン,フェルラ酸,DHA,アスタキサンチン
マスキング(苦みや異臭の抑制)
ニンニク,ガーリック,トリメチルアミン,短鎖脂肪酸,茶類,
イソフラボン,コタラヒムエキス,ギムネマ酸,ウコン(クルクミン),
朝鮮ニンジン,霊芝,ニガウリ,クチナシエキス,ソーヤサポニン
難溶性・不溶性物質の可溶化および乳化
ナリンジン,ヘスペリジン,ルチン,ナリンゲニンカルコン,
ラズベリーケトン,トコフェロール,カテキン,イソフラボン,卵白
吸湿性の改善
茶エキス,柑橘類エキス,プロポリス,L- カルニチン,調味料
生体内利用効率の向上
CoQ10,α - リポ酸
食品と容器
267
2011 VOL. 52 NO. 5
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用
(第6図)
。
することが明らかにされている3)
β - カロテンはビタミン A の前駆体で重要な
䝣䜱䝖䞊䝹
䝛䝻䝸䝗䞊䝹
成分であるが,熱に不安定である。そこで,
䃑㻙䜹䝸䜸䝣䜱䝺䞁
α -,β -,γ -CD の複合体をそれぞれ 60℃
䝅䝖䝻䝛䝸䝹䜰䝉䝔䞊䝖
に放置し,β - カロテン残存量を比較した。
䝔䝹䝢䝙䝹䜰䝉䝔䞊䝖
䝪䝹䝙䝹䜰䝉䝔䞊䝖
α -CD とγ -CD がβ - カロテンの安定化に寄
䝅䝛䜸䞊䝹
与し,β -CD はほとんど対照と同じであるこ
䝅䝖䝻䝛䝷䞊䝹
䝯䞁䝖䞁
䝅䝖䝷䞊䝹
䝀䝷䝙䜸䞊䝹
䝅䝖䝻䝛䝻䞊䝹
䝛䝻䞊䝹
㻠㻙䝔䝹䝢䝛䝜䞊䝹
䃐㻙䝔䝹䝢䝛䜸䞊䝹
12
䝸䝘䝻䞊䝹
䜹䝹䝞䜽䝻䞊䝹
C
Curucumin
n content (%)
10
䝔䝹䝢䝜䝺䞁
㼐㻙䝸䝰䝛䞁
8
䃒㻙䝔䝹䝢䝛䞁
䃐㻙䝔䝹䝢䝛䞁
䝭䝹䝉䞁
6
㻔㻗㻕㻙㻟㻙䜹䝺䞁
CurucuminLactose
4
㻔㻙㻕㻙䃐㻙䝢䝛䞁
㻜
Curucumin ǃ CD
Curucumin-ǃ-CD
2
㻠㻜
㻤㻜
㻝㻞㻜
㻝㻢㻜
㻯㻰䛾ໟ᥋㔞㻌㻔㼙㼓㻛㼓㻙㻯㻰㻕
㼙㼛㼚㼛㻳㻞㻙䃐㻙㻯㻰
㼙㼛㼚㼛㻳㻞㻙䃑㻙㻯㻰
0
0
5
10
15
Time(Hr)
第6図 クルクミンの化学構造(上段)および
クルクミン包接体の光に対する安定性(下段)
第8図 溶解度法による分岐CDの各種テルペン類に
対する包接能評価(カラー図表をHPに掲載 C007)
包接量:0.1M分岐CD水溶液に溶解するテルペン量から
水に溶解するテルペン量を差し引いて包接量を求めた。
(第7図)
。このよう
とが認められた3)
に環径の違いによって効果が大きく異
ǃ-carote
ene content (%))
12
なることがある。分岐 CD であるマル
10
8
Zeolite-carotene mixture
ǂ-CD complex
ǃ-CD complex
DŽ-CD complex
トシルα -CD(G2- α -CD)とマルト
シルβ -CD(G2- β -CD)を用いて,
6
各種テルペンの包接能を溶解度法で評
4
価した試験では,全体的に G2- β -CD
2
の方が G2- α -CD よりも包接量が高
0
0
50
100
150
200
Time(Hr)
とが明らかにされている(第8図)
。
イソフラボンアグリコン(IFA)はゲ
第7図 β-カロテンの化学構造(上段)および
β-カロテン包接体の安定性(下段)
食品と容器
く,テルペンにはβ環が適しているこ
268
ニステイン,ダイゼニンおよびグリシ
テインの混合物で,骨密度の減少を抑
2011 VOL. 52 NO. 5
サイクロデキストリン・分岐サイクロデキストリン
制する効果が知られている。しかし,IFA は,水
れている。今まで得られたデータを基に,CD の
にごくわずかしか溶解しないため改善が求められ
環径と適合する食品成分を第4表に示した。α -
ていた。そこで,CD による溶解性の改善を試み
CD は低分子もしくは鎖状の化合物,β -CD は6
たところ,β環およびγ環で大きく改善されるこ
員環様化合物,γ -CD はさらに大きな化合物が
4)
。
とが認められた (第9図)
適している。ここで,適した CD 環とは最もよ
ここで実際に産業上利用されているものを説明
く適合したもので,他の CD 環が全く合わない
する。長年安定して CD が使用されているもの
第4表 食品成分と包接に適したCD環
としては,辛味の安定化を目的にした練りわさび
食品成分
などの香辛料類が挙げられる。近年では,高濃度
適合する環径
ヘスペリジン
β -CD
茶カテキン飲料やウコンエキス入り飲料などに,
ルチン
γ -CD
風味もしくは味を改善する目的で CD が使用さ
大豆イソフラボン
β -CD,γ -CD
れている。漬物の色の保持にも CD が利用され,
カテキン類
β -CD
量的にこれら練りわさび,健康飲料および漬物へ
メントール
β -CD
シトラール
β -CD
の使用が飛びぬけて多い。その他には,油脂の安
定化目的に粉末ナッツに使用されたり,吸油改善
の目的で冷凍食品のフライ用衣に使用されている。
さらに,口臭除去タブレット,豆乳ヨーグルト
(味の改善),胡麻豆腐(風味保持)および粉末
茶(風味保持と粉末化基材)にも CD が利用さ
㪋㪌
β -CD
グリチルリチン
γ -CD
コレステロール
β -CD
アリルイソチオシアネート
(わさび辛味成分)
α -CD
カプサイシン
(唐辛子辛味成分)
β -CD
脂肪酸類
α -CD
アルデヒド類
α -CD
CoQ10
γ -CD
α - リポ酸
β -CD
㪊㪌
㪊㪇
㪉㪌
160
㪉㪇
㪈㪇
㪌
㪇
㪛
㪚D
−㪄C
α
㱍
䢋䢕䢀䡸䢕-䃑-CD
䃐㻙䝸䝫㓟䛾ᵓ㐀
㪈㪌
㪛
㪚D
−㪄C
β
㱎
㪛
㪚D㪛
㪚D
㪚D㪛
㪚D㪛
−㪄C
−㪄C
−㪄C
−㪄C
γ
β
γ
β
㱎
㱏
㱎
㱏
−
−
−
㪄
2㪄
2 㪄
G
U㪞
㪞G䋲
㪞G䋲
㪞G㪬
䃐-䝸䝫㓟⃰ᗘ (mM)
㪠㪝
㪝㪘 䇭㪚㫆㫅 㫋㪼㫅 㫋㫊䋨 㫄
㫄㪾㪆㪾䋩
㪋㪇
ステビア類
第9図 溶解度法によるイソフラボンアグリコン
(IFA)に対する溶解量
かく
溶解量:10%(w/v)CD溶液10mLにIFA70mgを加え攪
拌し,溶解した画分を凍結乾燥し,粉末中のIFA量
を測定して求めた。
GUG-β-CD:グロクロニルグルコシルβ-CDの略。
食品と容器
120
䢋䢕䢀䡸䢕-䃐-CD
80
䡮䡻䡰䢔䡬䢀 P
䢋䢕䢀䡸䢕-䃒-CD
40
䃐䚸䃑䚸䃒-CD
0
200
100
௙㎸䜏CD⃰ᗘ (mM)
300
第10図 α-リポ酸のCD水溶液への溶解性
(カラー図表をHPに掲載 C008)
269
2011 VOL. 52 NO. 5
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用
という事ではない。
に深く関与し糖代謝を亢進することから,健康食
CD の利用目的は,物質を安定化することが多
品として注目されている。しかし,①水に対する
かったが,最近では生体内利用効率が向上するこ
溶解性が低い,②熱に不安定である,③イオウ臭,
とで利用されることが増えてきた。代表的なもの
辛味が強いという欠点があった。α - リポ酸は,
6)
は,α - リポ酸やコエンザイム Q10(CoQ10)
水に加えると凝集してしまうが,CD 水溶液に加
である。α - リポ酸は,糖からのエネルギー産生
えると完全に溶解し,透明な溶液になる。特にそ
の効果は,マルトシルβ -CD が最も
0
䍭䍷䍢䍚䍷ȕ-CDⶄว૕
ȕ
ᾲᵹ
ᵹ㊂䋨mW
W䋩
高 い( 第 10 図 )。 示 差 走 査 熱 量 計
ȕ-CDⶄว૕
-1
(DSC)でα - リポ酸 -CD 複合体の吸
䍐䍝䍒䍶䍎䍢 Pⶄว૕
-22
Į-CDⶄว૕
-3
Ȗ-CDⶄว૕
熱ピークを観察したところ,β環系で
吸熱ピークが見られず,α - リポ酸の
Į-䊥䊘㉄න⁛
-4
安定化に優れていることが分かった
䍭䍷䍢䍚䍷ȕ-CDන⚐ᷙว‛
-55
(第 11 図)。さらに CD はα - リポ酸
-6
の吸収を高めること 5) と辛味を低減
40
50
60
80
70
᷷ᐲ䋨͠䋩
90
100
䋼ಽᨆ᧦ઙ䋾
ⵝ⟎䋺␜Ꮕ⿛ᩏᾲ㊂⸘(DSC)
することが報告されている。CoQ10
(第 12 図)は電子伝達系における補
᣹᷷ㅦᐲ ͠/ i
᣹᷷ㅦᐲ䋺5͠/min
䍙䍻䍪䍽䍷㊂䋺Į-䍶䍬䍽㉄䈫䈚䈩1.0mg
酵素としてエネルギー産生に関与する
第11図 α‐リポ酸− CD(重量比1:9 )複合体の融解熱量
とんど溶解しない,②光や熱に不安定である,③
O
CH3O
重要な成分である。しかし,①水にほ
生体への吸収率が低いという欠点があった。
CH3
CD によって CoQ10 の水への溶解性は改善さ
れないが,包接沈殿を形成して水への分散性は向
H
CH3O
C
O
CH3
上する。CoQ10 にはβ -CD やγ -CD が適してお
10
り,DSC では CoQ10 単独と比較して吸熱ピー
第12図 コエンザイムQ10の化学構造
ȕIsoⶄว૕
Ȗ-CDⶄว૕
ȕ-CDⶄว૕
ȕ
CDⶄว૕
Į-CDⶄว૕
0
ᾲᵹ㊂䋨mW
W䋩
クが非常に小さくなる(第 13 図)。女性健常人(各
䍡䍼䍕䍛䍢䍶䍻ⶄว૕
CoQ10න⁛
Q න⁛
-11
群 5 名 ) に CD 複 合 体(CoQ10 量 と
して 300mg)を摂取してもらい,血
しょう
漿 中の外因性 CoQ10 を経時的に測定
し た と こ ろ,CD 複 合 体 は い ず れ も
CoQ10 単独と比較して摂取4時間以
䋼ಽᨆ᧦ઙ䋾
-22
降有意に高い値を示した(第 14 図)。
⹜ᢱ㊂ 䋺 CoQ10䈫䈚䈩1.0mg
᣹᷷ㅦᐲ 䋺 2͠/min
摂取0−8hr における外因性血漿中
総 CoQ10 濃度−時間曲線下面積値は,
-33
40
30
50
60 70 80
᷷ᐲ䋨͠䋩
CD 複合体はいずれも CoQ10 単独と
90 100
比較して有意に高い値を示した(第
第13図 CoQ10−CD複合体のDSC分析
食品と容器
15 図)
。このことより,CD が CoQ10
270
2011 VOL. 52 NO. 5
サイクロデキストリン・分岐サイクロデキストリン
እᅉᛶ⾑₢୰ CoQ10⃰ᗘ (ng/ml)
の吸収を促進すること
が 明 ら か と な っ た。
α - リ ポ 酸 や CoQ10
以外にも,現在注目さ
れている抗酸化物質や
ビタミン類などの生体
内利用効率の改善が証
明されるものと期待す
る。
1000
ᖹᆒ್ 㼼 ᶆ‽೫ᕪ䚸 n=5
800
䠆䠆
p䠘0.01
600
䠆䠆
䠆䠆 䠆䠆
䠆䠆
䠆䠆 䠆䠆
䠆䠆
䠆䠆
400
䠆䠆
200
䠆䠆 CoQ10䠉䃒-CD 」ྜయ
䠆䠆
䠆䠆CoQ10䠉䃑Iso 」ྜయ
CoQ10䠉䃑-CD 」ྜయ
0
-200
古くからCDが難消
CoQ10
0
8
12
16
ᦤྲྀᚋ䛾᫬㛫 (hr)
4
化性オリゴ糖で,腸内
20
24
第14図 外因性血漿中総CoQ10濃度の経時変化(カラー図表をHPに掲載 C009)
のビフィズス菌を増加
させたり7),血液中の中性脂肪
4000
AU
UC 0 - 8 h
hr 䋨ng㬍hr/ml䋩
を低下させること8)は知られて
い た が,2000 年 以 降 CD を 経
口摂取した時の生理機能に関す
る報告が増えてきている。特に
目立つのはα -CD の経口摂取
に関してで,悪玉コレステロー
ルと呼ばれている LDL コレス
ᐔဋ୯ 㫧ᮡḰ஍Ꮕ䇮
㫧ᮡḰ஍Ꮕ n
n=5
5
䋪䋪
p䋼0.01
3000
䋪䋪
2000
䋪䋪
䋪䋪
1000
0
CoQ10
-1000
テロールの低下9),糖の吸収阻
せつ
害,親油性物質の体外への排泄,
CoQ10Ȗ-CD
ⶄว૕
CoQ10ȕ-CD
ⶄว૕
CoQ10ȕIso
ⶄว૕
第15図 摂取0−8hrの外因性総CoQ10濃度−時間曲線下面積値
第5表 CDPが効率良く吸着する化学物質例
分類
物質名
*
CDP の種類
用途など
鉱 物
ヨウ素
α
消毒剤,液晶材料
アミノ酸
トリプトファン
α
必須アミノ酸,飼料の添加
インドール 化合物
インドール
β
排泄臭,天然ジャスミン油,低濃度で花香
インドール酢酸
α
植物ホルモン(伸長作用)
アルキルベンゼンスルホン
酸ナトリウム
α
家庭用・工業用合成洗剤
ドデシル硫酸ナトリウム
α
洗剤,タンパク質可溶化
カテキン
β
茶の渋味,生理活性(抗う蝕,抗酸化など)
エピガロカテキンガレート
α
茶の渋味,生理活性(抗う蝕,抗酸化など)
ケルセチン
β
たまねぎ等,染料,抗炎症,抗酸化など
ヘスペリジン
β
柑橘果汁の白濁の原因,血流改善,抗アレルギー
ダイジン
β
大豆,イソフラボン,女性ホルモン様作用
ゲニスチン
β
大豆,イソフラボン,女性ホルモン様作用
界面活性剤
ポリフェノール
食品と容器
271
2011 VOL. 52 NO. 5
シリーズ解説:糖質素材の機能と利用
アレルギー性疾患の改善が報告されている 10)。
いる。
さらに興味深いことには,可消化性糖と考えられ
最新の話題を提供すると,トレチノイン(オー
ていたγ -CD でも,ビフィズス菌を増加させる
ルトランスレチノイン酸)は,米国ではシワ・に
ことが報告された
11)
。
きびの治療医薬品として認可されており,皮膚の
最近,非常に取り扱いが簡便なビーズ状の CD
若返り薬として使用されている。しかし,単独で
12)
。これは,も
処方すると肌が赤くなり,むけてくるという難点
ともとダイオキシン類やビスフェノール A など
があった。そこで,トレチノインを CD で包接
環境汚染物質を除去するために開発されたもので
すると皮膚への刺激が低下し,肌が赤くならずに
ある。食品分野でも有用であり,LDL コレステ
シワを改善できることが報告され,日本では,院
ロールを増加させ,心臓疾患のリスクを高めると
内治療薬として広まりつつある。
ポリマー(CDP)が開発された
されているトランス脂肪酸の除去にもこの CDP
◆6.CD の安全性◆
は有効である。さらに除去だけではなく,有用な
化合物の抽出にも利用できる。例えば,茶葉から
CD の安全性に関して述べると,JECFA(食
カテキン類,大豆からイソフラボンが効率的に抽
品添加物合同専門家委員会)は,α - およびγ -CD
出される(第5表)。
は ADI(1日許容摂取量)* を特定する必要のな
CD は食品以外の分野でも,化学品,化粧品お
い物質で,β -CD の ADI は5mg/kg 体重/日であ
よび医薬品と幅広く利用されている。代表的なも
ると評価した。ADI に関して法的な規制は全く
のとしては,消臭スプレー「ファブリーズ」が挙
ないが,日本 CD 工業会としてβ -CD の食品へ
げられ,CD を配合することによって消臭効果を
の推奨配合量を食品分類ごとに設定して,CD メ
にお
高めている。「ファブリーズ」は特定の匂いを対
ーカーからユーザーに案内している[CD工業会
象としていないが,CD は加齢臭の本体であるノ
の ホ ー ム ペ ー ジ(http://www1a.biglobe.ne.jp/
ネナール(nonenal)を包接することができる
13)
cyclodextrin/)参照]。
*
(第6表)。加齢臭を消臭する製品に応用できる
ADI とは,ヒトがある物質を毎日1生涯にわたり食べ続
と考えられる。さらに,保湿性,消臭効果や抗菌
けても,安全な量(1日当たりおよび体重1kg 当たり)
性を持たせた機能性肌着にも CD が利用されて
である。
第6表 包接複合体中のCDに対する不飽和アルデヒドのモル比
◆7.今後の展望◆
α CD
β CD
γ CD
crotonaldehyde
−*
−*
0.98
-2-pentenal
−*
−*
1.00
重要な遺伝子を目的の臓器や細胞に
医薬の分野では,遺伝子治療に
-2-hexenal
0.75
−*
1.04
送るベクターとしてデンドリマーが
-2-heptenal
0.51
0.82
1.18
注 目 さ れ て お り, こ れ に CD を 結
-2-octenal
0.55
0.85
2.10
-2-nonenal
0.55
0.94
2.39
-2-decenal
0.48
0.62
1.56
-2-undecenal
0.40
0.39
1.18
化学工業の分野では,リングスライ
-2-dodecenal
0.38
0.45
1.49
ドゲルという今までの物理ゲルや化
高まることが明らかになってきた。
学ゲルと異なるゲルが開発され注目
*No Precipitation
食品と容器
合することによって,細胞選択性が
272
2011 VOL. 52 NO. 5
サイクロデキストリン・分岐サイクロデキストリン
を浴びている。リングスライドゲルは,8の字型
海外に眼を向けると,中国,韓国から東南アジ
をした動く架橋(CD)を持つ革新的なゲルで,
アにかけた地域では,CD の食品への利用に対す
架橋点が動くという性質からこれまでのゲル材
る興味が高まっており,今後この地域での CD
料に求められるさまざまな性能(強靱性,伸長性,
の利用が期待される。
膨潤性,衝撃吸収性,透明性など)を高いレベル
☆ ☆ ☆
で付与できる。このような特性から医療用生体材,
本稿は東北関東大震災がおきた直後に出稿致し
医療品,化粧品,繊維,塗料,衝撃吸収剤などへ
ました。本紙を借りて,被害に遭われた皆様に心
の応用が期待されている。以上のように今後 CD
よりお見舞い申し上げます。ひとりでも多くの方
は食品以外の分野にも利用が広がっていくと思
が救助されることを心から強く祈念致します。
われる。 参考文献
1)大森ら,第 25 回シクロデキストリンシンポジウム
2)T. Takaha et al. ,
209-223(1985)
271, 2902(1996)
9)E. M. Wagner et al.,
3)L. Szente et al.,
57, 1046-1051(2008)
32, 81-89(1998) 10)寺尾啓二,新機能性食物繊維α - シクロデキストリン,
4)三國ら,第 22 回シクロデキストリンシンポジウム講
㈱ハート出版(2008)
演要旨集,p.79-80(2004)
11))J. K. Spears et al.,
5)高橋ら,第 24 回シクロデキストリンシンポジウム講
59, 257-270
(2005)
演要旨集,p.96-97(2006)
6)H. Takahashi et al., 31,
8)M. Suzuki et al.,
講演要旨集,164-165 (2007)
12)菊地ら,特開 2006-143953
57, 193-197
13)K. HARA et al.,
(2010)
44,
241-245, 2002
7)桜井ら,特開昭 57-138385
【おわび】
フード・フォラム・つくば 20 周年記念講演会の中止
皆さまにご案内しておりました表記の講演会ですが,中止させていただくことになりました。
原子力発電所の事故はまだ終息しておらず,逆に放射能の農産物や水産物などの食品への影響は大きくなって
おり,食品関係者の皆さまはその対応や震災後の対策に追われていることなどが,主な理由でございます。さ
らに,本会に多く参加いただいているつくば市内の研究機関についても,筑波大学や産総研はじめ,多くの機関の
建物,研究施設等にかなりの被害が出ており,復旧に時間がかかることなども中止の判断の1つといたしました。
この状況がどの程度まで続くか見えない中で,本年度中の実施は難しいと存じますが,来年度を“復興1年目
としての講演会企画”として検討していきますので,その折には,またご案内させていただきたいと存じます。
【お問い合わせ先】
フード・フォラム・つくば事務局 五十部(いそべ)・高松(たかまつ)
E mail:takama@affrc.go.jp(高松)
http://www.fft.gr.jp TEL:029 838 8010/FAX:029 838 8005
〒 305 8642 茨城県つくば市観音台 2 1 12 (独)農研機構 食品総合研究所内
食品と容器
273
2011 VOL. 52 NO. 5
シリーズ解説:米の話(第9回)
●解説●
米の品質(2)精米(機能性精米技術)
か わ の・ ゆ き ひ ろ
宮崎大学農学部農業
工学科農業機械専攻
修士課程終了。株式
会社サタケ入社。現
在,システム事業本
部企画管理部推進室
推進部長。
河 野 征 弘
3次機能が求められるようになった。すなわち米
●1.はじめに●
は,現在1次・2次機能の食の高級化である「安
日本における米消費量は,1962 年には国民1
全・安心・美味しい」から炊飯の簡便化・利便化
人当たり 118.3kg/ 年あったものが,2005 年には
である「無洗米・二次加工食品」に移り,「健康
59.7kg/ 年以下(農林水産資料統計)にまで減少
食品および機能性食品としてのお米」すなわち3
し,適正栄養バランスである P(タンパク質),
次機能のある米が求められている。
F(脂質),C(炭水化物)の内,脂質とタンパク
これらの機能を満足するにあたり,精米技術も
質の摂取割合が適正範囲を超えるようになった。
同時に,米の食味向上・維持のための「食味を重
その結果,高齢化社会を迎えて過去にはなかった
視した精米技術」が,無洗米とその炊飯・2次加
ガン,心臓病,高血圧,糖尿病などの生活習慣病
工を含む「無洗米加工技術」と玄米および白米,
が急増している。
無洗米に機能性成分を付加する「機能性精米技術」
このようなことを背景に米の食に対する消費者
お
に展開された。
い
ニーズは,単に栄養があって美味しいことを求め
さらには,この「機能性精米技術」は精米工場
る1次・2次機能ではなく,疾病予防効果のある
で発生する副産物(精米で玄米を白米にした後に
ぬか
はい
発 生 す る 精 米 糠・ 胚 芽・
無洗米糠など)に含まれ
る機能性成分を抽出する
機能性成分抽出技術と抽
さ
出工程で発生する残渣 を
バイオマスとして利用す
るバイオマス技術へと展
開されるものと考えられ
第1図 精米技術の発展史的分類
食品と容器
274
る(第1図)。
2011 VOL. 52 NO. 5
米の品質(2)精米(機能性精米技術)
る。この無洗米を加工する装置には乾式無洗米装
●2.精米技術の変遷●
置と湿式無洗米装置がある。乾式無洗米装置は,
(1)1次および2次機能を有する「食味精米
排水処理装置が不要であるが,加工された無洗米
技術」 は炊飯前に1∼2回洗う必要がある。湿式無洗米
第2図は,玄米の断面組織を表したものである。
装置は,炊飯前の洗米を必要としない無洗米を加
精米において食味向上を維持するためには,米の
工することができるが,大量の排水を処理するた
こ
表面の果皮・種皮・糊 粉層を合わせた一般的に
めの微生物処理装置や乾燥装置を必要とする。
「糠」と呼ばれている部分を均一に除去しかつ滑
米の消費を拡大するためには,洗わなくても
らかに仕上げるかが精米技術のポイントである。
よいお米が低コストで大量生産できる排水処理装
また,精米技術では,それ以外に「精米効率の
置を必要としない新しい無洗米装置の開発が必要
向上」(糠を小動力で除去する方法や製品コスト
である。(株)サタケは,無洗米の食味向上と品質
を下げる技術),「精米歩留まりの改善」
(精米時
の安定,生産コストの低減,作業環境の改善,多
に発生する,精米不良である砕米や水分低下,精
品種少量生産への対応など,新たなコンセプトに
米ムラをなくす)項目も重要である。
①精米作用の要因
果皮
糠層
精米作用は米粒,すなわち米という材料の組織
種皮
糊粉層
を外周から内部に向かって順次除去し,穀粒の内
部組織を露出させる作用であり,摩擦(擦離)
,
(アリュロン層)
切削,研削,衝撃等の直接的因子があり,それら
がさまざまな比率で合成される(第3図)。
胚乳
(デンプン)
一般的には,研削作用(玄米の果皮・種皮の剥
第2図 玄米表皮および糊粉層
離が目的)と摩擦作用(糊粉層の一部剥離が目的)
を組み合わせた作用で
HP
N=
玄米を白米にする。米
の形質(硬い・軟らか
2
・n・
(π・D)
・L
N:平均とう精圧力 μ:摩擦係数 n:回転数
D:精白転子直径 L:精白転子長さ HP:負荷
(所要駆動動力)
い・短粒・長粒)によ
って研削作用と摩擦作
研削の模式図
摩擦の模式図
(擦離は米粒内層で発生する)
用の比率は変わる。
②無洗米加工技術
R
現 在, 精 米 工 場 で
金剛砂
は,一般消費者や炊飯
R
業界のニーズである炊
F+f
飯の簡便化・利便化を
N
N
( F+f)
´
N´
F
F´
R´
追 求 し た「 研 ぐ( 洗
N´
う)」ことを省略でき
る無洗米を生産してい
食品と容器
R´
第3図 精米作用の要因図
275
2011 VOL. 52 NO. 5
シリーズ解説:米の話
基づいて,従来の無洗米とは異なる新しいジャン
その後に,穀物を基材とした緩衝材(熱付着材)
ルのお米が加工できる無洗米装置の開発に成功し
を使用することで,胚乳を傷つけることなく糊粉
た。この新しい加湿精米装置は,炊飯業界が現在
層のみを完全に取り除くことができる。このこと
抱えている諸問題を解決することができ,また,
により米の旨み層を残した,食味の良い無洗米を
加工された新しい米商品は,米消費の大半を占め
開発することができた。
る一般家庭での炊飯を簡便化できるなどの多大な
第4図に無洗米の加工フローを示す。
うま
メリットをユーザーに与えることができる。 ●3.機能性精米技術の開発●
この無洗米加工装置は,白米表面へ5% の加水
無洗米の加工技術が確立したことで,この加工
を行い,糊粉層を粒粒摩擦により効率的に軟化し,
第4図 無洗米の加工フロー (カラー図表をHPに掲載 C010)
高付加価値
無洗米
無洗米を基本とし、
これに付加価値
(機能性成分)
を
つけたもの
無洗胚芽米
高性能胚芽精米機により精米された胚芽残存率の高い
胚芽米を加工することで完成した無洗米
無洗高機能性米
米本来の糠や胚芽、無洗米糠から抽出した機能性成分や
米以外の食物から抽出された鉄・ビタミン等が富化された
無洗米
無洗ギャバ米
新製法により生成されたギャバが胚芽から胚乳に移行して
いるため搗精後も80−90%程度残り、ギャバ含有量が普通の
精白米の約15倍、
ビタミン・ミネラル等も豊富に含まれる無洗米
第5図 高付加価値米の展開
食品と容器
276
2011 VOL. 52 NO. 5
米の品質(2)精米(機能性精米技術)
技術を基本とし,これに付加価値(機能性成分)
に光沢を出すことができ見た目もきれいで,かつ
を付けた新たな精米技術を展開した。すなわちこ
栄養に富んだ無洗胚芽米ができた。
れは,機能性精米技術であり高付加価値無洗米と
第6図に無洗胚芽米の外観を示す。図中の黄色
呼ぶことができる。
い部分(←)が胚芽を示している。
高付加価値無洗米は,第5図で示すような付加
(2)無洗機能性米(コーティング米)
価値を付けることによりさまざまな商品を開発で
消費者は,各種ビタミン・ミネラルを付加した
きた。
安全で,美味しく,炊飯が簡便な無洗米を求めて
高付加価値米開発の背景は,玄米の主成分と
いる。この消費者のニーズに対応して保健機能食
白米の成分を比較すると分かる。すなわち玄米は
品を沖縄食糧株式会社,社団法人日本精米工業会
およそ 70% のデンプン,8% 内外のタンパク質
と共同開発をした。
とその他,脂肪・灰分・ビタミンと水分により構
このコーティング米は,食物繊維(増粘性多糖
成されており第1表の五訂増補日本食品標準成分
類)を被膜剤とし,鉄(Fe:4mg/100 g)とビ
表に玄米・精米・炊飯米の可食部 100 gの成分を
タミン(V.E:6mg/100 g)がそれぞれに混合
示す。
されたコーティング液を,無洗米表面に均一に添
この表から,玄米を精米して白米にすること
加・乾燥した無洗機能性コーティング米である。
により,脂質,灰分(ミネラル)およびビタミン
第7図に無洗機能性コーティング米外観図,お
が特に減少することが分かる。すなわち,精米で
よび第8図に無洗機能性コーティング製品を示す。
取り除いた果皮,種皮,糊粉層の一部を含む米糠
(3)無洗ギャバ米(GABA= γ‐アミノ酪酸)
と胚芽には,有効成分であるビタミンやミネラル
無洗米の課題としては,無洗米の処理段階で,
が豊富に含まれており,これらを有効利用したり
3次機能である抗酸化物質ビタミン,ミネラル,
米に付加したりする必要がある。
食物繊維などは,玄米の表皮・種皮・果皮・糊粉
(1)無洗胚芽米
層に含まれる。そのために,精米・無洗米処理段
胚芽米とは,残芽率 80
第1表 五訂増補日本食品標準成分表(可食部100gあたりに含まれる成分表)
%以上の精米であり加工方
る研削方式で加工される。
胚芽米は胚芽部分に栄養が
種 類
うるち米
法としては,精米作用であ
カロリー 水分 たんぱく質
(kCal)
(g)
(g)
脂質
(g)
炭水化物
(g)
灰分
(g)
ビタミン
(mg)
玄米
350
15.5
6.8
2.7
73.6
1.2
0.41
精白米
356
15.5
6.1
0.9
77.1
0.4
0.08
炊飯米
168
60.0
2.5
0.3
37.1
0.1
0.02
豊富にあるが,白米と比較
すると外観品質で光沢がな
く見た目がやや劣り,炊飯
時の洗米で胚芽が取れてし
まうという点があった。
このことを解決するため
に無洗米の加工技術を取り
入れた無洗胚芽米を開発し
た。このことにより米外観
食品と容器
第6図 無洗胚芽米外観(矢印:胚芽)
(カラー写真をHPに掲載 C011)
277
第7図 無洗機能性コーティング米外観
(カラー写真をHPに掲載 C012)
2011 VOL. 52 NO. 5
シリーズ解説:米の話
階の加工段階で機能性成分の大半が失われること
したギャバなどの機能性成分を胚乳部に移行させ
である。そこで玄米の胚芽部に蓄積されているグ
ることが特長である。
ルタミン酸に着目しグルタミン酸からギャバを生
また,このギャバ生成玄米(ギャバ米)は,乾
成し,胚芽部に自然に吸収させることで,米が本
燥後の胴割れ発生が少ないことから,通常の精
来有する栄養成分を損なうことがなく,機能性成
米・無洗米加工が可能となり,加工歩留まりの低
分ギャバを含んだ米を製造することができた。こ
下を最小限に抑制できた。
のギャバは,血圧調整作用や神経の鎮静,中性脂
その結果,この無洗ギャバ米は,ギャバだけで
肪の抑制といったさまざまな効果が期待されてい
はなく,その他の機能性成分であるイノシトール,
る機能性成分で,米などの植物に幅広く含まれて
フィチン酸,ビタミン,ミネラルなどが通常の無
いることが知られている。
洗米より多く含まれていることが確認できた。
このギャバ富化法は,玄米に送風する風の温湿
この無洗ギャバ米は,外観品質や食味が従来の
度を制御する湿り空気方式で,胚芽や糠層に生成
無洗米と同程度であることから,日常の食生活の
中で美味しく健康づくりをしていくことができる。
第9図にギャバ玄米・無洗ギャバ米の加工フロ
ーを示す。
●4.副産物の有効利用●
精米技術は,玄米を白米に加工する技術だけで
はなく精米加工により発生する副産物の有効利用
も重要な機能性精米技術の一つである。
第8図 無洗機能性コーティング製品
(沖縄食糧株式会社販売)
もみ
精米工場では,調製(乾燥∼籾すり),加工(精
米∼無洗米)
原料
玄米
ギャバ生成
ギャバ移行
水分調整
加水し胚芽中のギャバを
生成します
生成したギャバを胚乳部
へ移行させます
安全保存水分まで、
乾燥させます
の各工程から,
各種の副産物
が発生する。
第 10 図 の
副産物の高付
加価値商品に
ギャバ
玄米
精米加工
ギャバ
白米
無洗米加工
無洗
ギャバ
示すように籾
は,籾すり工
程で副産物の
籾殻と玄米に
分類される。
副産物の発生
(胚芽・糠・砕米)
この籾殻は,
第9図 ギャバ玄米・無洗ギャバ米の加工フロー
(カラー図表をHPに掲載 C013)
食品と容器
278
炭化処理をす
ることで練炭
2011 VOL. 52 NO. 5
米の品質(2)精米(機能性精米技術)
や豆炭などの燃料に利用できる。また籾殻は,籾
約 20% の油脂を含む精米糠は,酵素失活処理装
殻ブリケットをリアクター内で燃焼して得られる
置で加熱・乾燥処理後,ヘキサンによる化学抽出
燃焼ガスを利用したガス化発電,また籾殻をボイ
や高圧の圧搾装置で機械的に米糠油が搾油される。
ラー燃料にして得られる籾殻蒸気発電で電気エネ
搾油後の米糠油や脱脂糠は,γオリザノール,フ
ルギーに変換できる。さらに,それらの排熱は生
ェルラ酸,ステロール,イノシトールやフィチン
籾などの乾燥用熱源としても利用できる。
酸などの3次機能のある機能性成分を多く含む。
次に,玄米の精米・無洗米の加工工程では,精
このことから,その有効活用が今後の課題となる。
米糠,無洗米糠と砕米が副産物として発生する。
また,精米糠から分離した新鮮な胚芽は,機能
(副産物)
籾
玄米
精米工程
砕米
製粉工程
米粉
ライスドリンク
製菓工程
製パン/製麺工
分離工程
精米工程
発酵工程
胚芽
搾油工程
精米糠
粉砕工
脱脂米糠
無洗米工程
造粒工程
無洗米処理糠
製菓工程
籾摺工程
籾殻ガス化発電工程
籾殻
炭化物処理工程
籾殻炭
米 菓
米粉パン/米粉麺
GABAエキス
米糠油
脱糠米糠
(食糧化)
栄養強化米
健康スナック
電 気
練炭/豆炭
第10図 副産物の高付加価値商品の開発
第11図 循環型精米システム概要
食品と容器
279
2011 VOL. 52 NO. 5
シリーズ解説:米の話
性成分抽出装置を利用することで5%濃度のギャ
●5.まとめ●
バエキスが抽出できる。砕米は,目的に応じて乾
式 / 湿式粉砕処理をして米粉にすることで,人造
以上のことから,機能性精米技術の展開と課題
米・米パスタ・米麺・米菓・米粉パンの原料にな
は,米という穀物を機能性素材として考え,精米
る。また,発酵タンク内で砕米を水中粉砕し,こ
工場の各調製・加工工程から排出される副産物の
の乳液にアミラーゼやプロテアーゼを添加して発
有効利用ができる循環型精米システムを開発し,
酵処理をすることで機能性ライスドリンクを製造
そのシステムを組み込んだ精米工場を米食品精米
できる。
工場として再構築することである。第 11 図に循
無洗米処理工程で発生する無洗米糠(糊粉層)
環型精米システムの概要を示す。
は,イノシトール,フィチン酸,ギャバなどの機
その結果,三つの消費者ニーズである「安全,
能性成分やビタミン B,E,や K,Mg などのミ
安心,美味しいお米」,「炊飯の簡便化・利便化し
ネラルに富む。このことから子豚などの動物性飼
たお米」,「健康食品および機能性食品としてのお
料やデキストリンを混ぜて打錠したサプリメント,
米」を同時に満足できる米商品の創造と精米工場
健康菓子などの原料素材として利用できる。
の段階的事業拡大ができるものと考えられる。
研究例会のご案内
食品膜・分離研究会(MRC)2011 年度総会・第 23 回春季研究例会
◇日 時:2011年6月14日(火)
TEL&FAX 048-224-3336(事務局 渡辺敦夫)
◇場 所:川口総合文化センター リリア
e-mail:[email protected]
〒332−0015埼玉県川口市川口3−1−1
◇プログラム(12:40∼17:00)
TEL:048−258−2000 FAX:048−258−2100
2011年度総会(MRC会長挨拶 議事)
(京浜東北線川口駅西口下車至近)
研究例会
◇主 催:食品膜・分離技術研究会(MRC)
①ビール・発泡酒等およびビール用飲料の商品コン
◇協力機関:東京農工大学農学部付属硬蛋白質利用
セプトと消費の動向 笹本所長
研究施設
アサヒビール(㈱酒類研究開発本部)
◇参加費(円/人):民間会社・特例会員=20,000円
②食品分野におけるUFおよびMF中空糸膜ろ過
/人,民間会社非会員=30,000円/人,当会顧問・
の利用 古本五郎
国公立研究機関・大学等教育機関:会員=12,000
(旭化成ケミカル㈱膜・水処理事業部)
/人,非会員=18,000円/人
③スパイラル膜モジュールを想定した平膜評価試験
(5/21以降の申し込みは+5,000円)
の概要とその適応例
◇最終締切日:2011年6月10日(金)
川村幸太(トスク㈱)
◇参加申し込みおよび問い合わせ
④PVDF中空糸膜モジュールの特徴とその応用
食品膜・分離技術研究会(MRC)本部事務局
峯岸進一(東レ㈱)
〒332−0015 川口市川口1−1−3−3211
交流会(17:05∼19:00)
食品と容器
280
2011 VOL. 52 NO. 5
クリーンな自然食品と食材の課題
(
)47( 10・10)文献 №5637
ロンドン,トラファルガー広場の4基目の彫像
タピオカデンプンを使っていても,パンなどのベ
台作品候補として先ごろ話題になったイギリス伝
ーカリー食品では良しとされてもソースなどでは
統のお菓子バッテンバーグケーキであるが,ケー
タピオカデンプンではなくトウモロコシデンプン
キメーカーにとってはそんな話題よりも,そのピ
でなければという消費者のこだわりがあるし,も
ンクとイエローの独特の色が天然の着色料に変え
っと大きな問題としてはコストということがある。
たことで本来の色合いが出なくなり,消費者から
そういう意味では既存の製品を作り変えるより
苦情が出るのではないかという心配の方が大きか
も,新しい製品を出す方が簡単だという考え方も
ったが,それは杞憂に終わった。とはいえ,今後
ある。既存の食品ではひとつの素材の使用を止め
食品メーカーが「クリーンラベル」を目指すうえ
るとそれがその食品全体に影響するということが
で,もし製品が従来のものと変わったとしたら,
あるので,各素材について食品全体の観点からそ
その製品の販売は大丈夫なのだろうか?
の変更を考えるべきだが,これは手間もコストも
天然の素材を使ったいわゆるクリーンラベル食
かかる大変な仕事なので,それならいっそ食品全
品を求める消費者の要求は強まるばかりだが,か
体をゼロから作り上げた方が良いというわけであ
といって天然の材料もしくは人工的でない材料を
る。
使った結果,その食品の味や色,質感などが変わ
着色剤,香料,保存料,甘味料,抗酸化剤,乳
ることには消費者は抵抗する。ただし,気をつけ
化剤など食品添加材料の研究機関,Leatherhead
なければならないのは,天然の素材というものに
Food Research 社が 2011 年度に発表の予定で行
対する認識というものは,消費者の層あるいは地
っている調査は,米国と欧州における自然食品と
域によってまちまちであるということである。
素材の今後のトレンドに関するデータを分析し,
その一方で,クリーンラベルというものにもは
それがこれからどう展開し,どう食品業界に影響
っきりと決まった定義があるわけではない。使用
を与えていくのかを見ようというものである。
を避けるべき,あるいは表示から外すべき素材に
食品素材のサプライヤーにインタビューすること
ついては各社各様のリストがあり,統一されたも
によって合成素材から天然素材への転換の動向を
のはない。ただ,それらのリストを見ると,その
見ると共に,英国,フランス,ドイツ,イタリア,
内容の95%以上はほぼ同じであることから,それ
そして米国について消費者のクリーンラベルとい
ならクリーンラベルについての定義をはっきりさ
うものに対する認識の違いが国やグループによっ
せようという動きが出てきている。 てあるのかどうかを探り,それが食品メーカーに
すなわち,クリーンラベル食品には化学的ある
とってどういう意味合いを持つのか,そしてそれ
いは人工的な添加物を使わず,また,加工には消
によって企業の将来戦略上なにが必要となるのか
費者が知っている伝統的な加工法を用いようとい
をまとめるという。
うものである。このような試みに対する食品関連
蛇足ながら,同社によると,あるイタリアの研
業界の反応はおおむね好意的であるが,ではそう
究機関の研究では,拒食症と過食症の患者にコン
かといってある素材をノーとして,代わりに別の
ピューターによるバーチャルレストランでバーチ
天然素材ものを使えばOKかといえば,ことはそ
ャル食品を出したところ,本物の食品に対するの
う単純ではない。
と同じような反応を示したという。つまりは,コ
例えば,
天然の素材である
(グルテンを含まない)
ンピューターゲームも「クリーンラベル」の領域
食品と容器
281
2011 VOL. 52 NO. 5
にまで近づいてきたということで,これは今後の
示唆を与えるものとなるかもしれない。
クリーンラベル自然食品開発にあたってひとつの
(大池静男)
海外技術情報
MillerCoors 社の内面らせん溝付きビールびん
(
)47( 10・10)文献 №5640
Miller Lite Vortex Bottleが,5月1日より小
売店および飲食店で発売され,ビール市場にセン
セーションを巻き起こしている。この新しい長首
ガ ラ ス び ん は, オ ハ イ オ 州 ペ リ ー ズ バ ー グ の
Owens-Illinois社(O-I社)の設計,開発および製
造によるものだが,その特徴は,O-I社が特許を
持つびん首内部の浮き彫り加工にある。Vortex
Bottleは,従来の長首びんに機能的かつ美的な特
性を付与する4組のらせんを付けて成形されてい
る。ビールが注がれると,隆起部が渦巻きを作り,
独特の飲料体験を楽しめる。
「Vortex Bottleにより,すばらしいピルスナー
風味のMiller Liteが人々の関心を集めている」と
Miller Liteのマーケティング担当役員であるP.
MOERTI氏は説明する。「ピルスナー風味をそのま
ま流れださせる溝が,びん首内部に特別に設計さ
いる。若い消費者を狙った,ガラス製品というよ
れたこのVortex Bottleは,12オンスのガラスビ
り,包装容器の新規導入だといえる」。 同氏は,
ールびんでここ数年で見られなかった重要な刷新
MillerCoors社が迅速にその革新性を採用したこ
である」。
とを称賛する。「それが,MillerCoors社の事業拡
実際,O-I社は,その新しいびんをガラスのビ
大の要諦である」と同氏は言う。
ールびんではスクリュー・キャップ以来の最大の
多くの人の手がこの取り組みを「掻き立てる」
発 明 と し て 絶 賛 す る。「 そ の び ん は, ま さ に
「Vortex」は,今年導入したいくつかの製品の
か
Miller Liteをほかと差別化し,小売店の棚でも際
第1弾である」とMAGNUS氏が続けて語る。O-I社
立って目立つ」とO-I社のグローバル・イノベー
の新規投入品には,軽量ガラスのワイン用びん
「こ
ション部門でVPを務めるM.LONSWAY氏は語る。
や,飲料用の黒色ガラスびんもある。O-I社は,
れは,ガラスの製造科学を革新的包装デザインに
2010年末までには,4千万ドルを研究開発に投
いかにして融合させられるかという優れた事例で
資することになるだろう。「当社は,研究開発人
ある。その新しいびんは,特別のブランド体験を
員を3倍に増した。これは,長期的な会社方針
生み,かつ容器そのものが実際,消費者の目を引
で あ る 」 と 同 氏 が 断 言 す る。 現 時 点 で は,
くのに効果的である」と言う。
MillerCoors社 が, ビ ー ル 分 野 に お け るVortex
O-I社のビール部門のマーケティング・マネジ
Bottleの権利を持っており,MillerCoors社が望
ャーであるS.MAGNUS氏は,Vortex Bottleは,21歳
む限り,ビール分野では,同社に独占権がある」
から30歳までの消費者層をターゲットにしている
とMAGNUS氏は付言する。ただし,その他の飲料
と説明する。「消費者が,その体験を気に入って
分野でもVortexには興味があると同氏は言う。
食品と容器
282
2011 VOL. 52 NO. 5
「それは,パターンやデザインの多様性に力を
市場での成功
貸す」。
ライト・ビールが,引き続き,ビール分野にお
そのびんは,包装ライン上でどのように動くの
ける支配的な位置を占めている。MillerCoors社
だろうか?そのびんの外側も,その滑らかなガラ
の社長兼最高販売責任者であるT.LONG氏の報告。
スの外面もほとんど変わっていないため,ウィス
「毎日,消費者は,ほかの部類よりも何倍も多く
コンシン州ミルウォーキーにあるMillerCoors社
ライト・ビール分野のビールを飲む。低アルコー
の醸造所の包装ラインの稼働を良好に維持するた
ルのライト・ビールに対する需要が実に強い。当
めに,特に要求されることは全くといっていいほ
社は,こうしたブランドをより今日的意義あるも
どない。同醸造所では,びんに充填されラベルが
のにしていかなくてはならないのである」と同氏
貼られ梱包されるが,「Miller Lite Vortex Bottle
は言う。それがまさしくVortex Bottleの核心で
によるびんの充填または出荷方法には,なんら大
ある。
きな変更が必要ではなかった」とMOERTI氏は説明
(常盤恭徳)
する。
海外技術情報
注目されるラベリング
(
)34( 10・11)文献 №5641
今日の飲料ラベルは,消費者の目を引き,棚か
氏は,シェルフライフ
ら飲料を取り出させるための有用な手段である。
の延長やより軽量な容
「ラベリングは,ブランドと消費者とのコミュ
器に適したバリアース
ニケーションをもたせる最も効果的な方法である
リーブも開発されてい
ことには変わりがないが,販促の観点から消費者
ると付け加えている。
の注意を引くために,ますます容器の形状や機能
「金属蒸着ペーパー
に注力しているように見える。360°全周のグラ
は豪華な外観を生み出
フィックとともに,容器の形状に適合するラベル
す。ラベルデザインは
を創出できることは,このトレンドを活気付ける
非常にシンプルなもの
ものである」とHammer Packaging社のD.WEGMAN
から,不透明インクを
氏は言う。
用いた銀色に輝く
新しいガラス容器の外観
派手なグラフィッ
トレンドのトップを維持するため,常に新しい
ク ま で が 実 際 に は 見 ら れ る 」 とInnovative 素材が公開されている。
Labeling SolutionsのK.POPOVICH氏は言う。
「カットアンドスタック(cut and stack)ラベ
同氏は,棚での力強い存在感をもたらすシュリ
ルのための合成素材は,白無地と同様に,豪華な
ンクラベルへの転換にも言及している。
外観や耐久性,耐湿性をもつ透明や金属蒸着ラベ
「シカゴ,ニューヨーク,セントルイスにティ
ルも実用化されている。透明なフィルム素材も,
ーカフェをもつ Argo Tea社は,最近RTD茶を発
より自然で豪華な外観を得るために,感圧ラベル
売した。曲面形状のガラスボトルは,フレーバー
製品で利用されている。また,シュリンクスリー
ごとにモダンな外観をもつシュリンクスリーブで
ブ用には,不透明で光を透さず,マット状外観を
装飾されている」と同氏は言う(第1図)。
提供できるPETGフィルムが用いられている」と
過去数年の間に,複数の企業がラベリング材を
Fort Dearborn Co.社のG.CHAPDELAINE氏は言う。同
改 善 す る 新 し い 技 術 を 導 入 し て い る。 前 出 の
食品と容器
283
第1図 ArgoTeaラベルデザイン
2011 VOL. 52 NO. 5
Hammer Packaging社のWEGMAN氏は,ロールで
コスト削減
適用できるシュリンクフィルム(RAS),表面に
「企業は,とくに厳しい経済状況のなかで常
印刷されたシュリンクスリーブおよびロール形状
にコスト削減の機会を探っている」と
で供給できるラベルについて言及している。RAS
C HAPDELAINE氏は言う。同氏は,かれらの顧客のた
フィルムは,ユーザーに高い効率とフィルムの軽
め,コスト削減となる基材,代替印刷法,サプラ
量化をもたらす。表面印刷はユーザーにとって,
イチェーン管理プログラムなどを精査することを
単一材料のフィルムが使用でき,ラミネート層を
提唱している。
「経済が悪化するとき,2つの相
排除できる。これらの刷新は,環境的にも有利な
反するトレンドが予想される。マーケティングを
製品を生み出す。
抑制しコスト低減策を求めるブランドと,メッセ
地球に優しい素材
ージやグラフィックをリフレッシュすることによ
ラベルが環境に優しいことやサステナブルであ
りブランドを後押しする力を引き出そうとするブ
ることは,今日の飲料製造にとって非常に重要で
ランドである」とWEGMAN氏は言う。
ある。
外観の変更やリフレッシュに加え,常に材料に
「サステナビリティーの分野が成長するとみて
注目することも,厳しい経済においては重要である。
いる」とWEGMAN氏は言う。
今後の方向
例えば,Hammer社は消費者から回収した廃
棚での印象,機能性,サステナビリティー:製
棄紙を30%含むラベル用紙,消費者から回収し
造業者はこれら3つのポイントが,製品を刷新す
た耐湿紙を10%含む用紙,溶剤を用いず硬化エ
るには非常に重要であると認識している。「飲料
ネルギーが50%少ない電子線硬化インクを提供
のラベリングは,新素材が市場に導入されるに従
している。
い,ますます環境に優しくなっていくだろう。こ
「よりサステナブルな素材への一貫した要求が
れらはまた,パッケージのデザインに強く影響さ
ある。それらはFSC-certified(森林管理協議会で
れる」とWEGMAN氏は言う。
認証された)リサイクル材や消費者から回収され
2次元バーコードを備えたラベルは,技術に明
たリサイクル材である。多くのサプライヤーは,
るい消費者と密接な関係を作るかも知れないし,
これらの素材の開発を続けており,これらはサプ
一方デジタル印刷も,量産効果により印刷コスト
ライチェーン全体にとっても有益である」と前出
を低下させるものとしてより主流になることが期
のPOPOVICH氏は言う。
待されている。
(十時正義)
海外技術情報
食品の栄養価を高める 45 のヒント
(
食品の栄養価を高めることは時に必要とされ,
)40( 10・9)文献 №5639
か異なるものであると考えられている。
消費者へのアピールとなるため積極的に取り組む
2.機能強化とは,加工,貯蔵過程で失われた可
食品会社も多い。しかし,以下45項目に示され
能性のある栄養素を添加したり,その食物が本
るように,それは決して簡単なことではない。
来含んでいた栄養素を初期以上に添加したりす
栄養強化(Fortification)の定義
ることを意味する。
1.純粋主義者は,栄養強化とはビタミンやミネ
3.現実的に考えて,栄養強化,機能強化,処方
ラルの添加といったその食品に本来存在しない
変更の間に大きな差はない。最終製品がすべて
ものをその食品に加えることだと言う。栄養強
確実に安全性・適法性・受容性・安定性の基準
化自体,機能強化(Enhancement)とはなに
をクリアするには,技術上の課題がいくつか解
食品と容器
284
2011 VOL. 52 NO. 5
決されなければならない。
活性分子が失われやすいため機能強化(栄養強
市場需要
化の対義語)する場合がある。ビタミン類や生
4.まず,市場が本当に栄養強化を求めているの
物活性分子は,熱,光,湿度,空気などの働き
かという問題がある。栄養強化にはメリットが
によって破壊されるため,添加されたビタミン
あると分かっていても,消費者全員が好意的な
類も失われる可能性がある。
わけではない。水道水に虫歯予防のためフッ化
14.安定性試験を実施する際には,実際の製品と
物を加えることに反対する人々も,自分たちが
同じ包装形態であることに注意しなければなら
口にするものに何を添加するのが正しいのか,
ない。例えば,飲料のビタミン含有量は,入っ
人それぞれに意見が異なる。
ているボトルによって安定性が異なるというこ
5.栄養強化が一般的に容認されていると分かっ
とが十分にあり得る。
ていても,反対意見も多くある。ばかげた例を
15.混ぜたり熱したりする過程で添加された栄養
1つ挙げてみよう。ボトル1本飲めば,推奨1
素が損なわれる可能性もあるため,試験のプロ
日摂取量のビタミンを摂取できる強いアルコー
セスも重要になってくる。
ル飲料を,ヒトは正当化しない。
安定性に関する懸念
6.結局のところ,消費者が何を求めるか,食品
16.天然生物活性物には膨大な数の自然変異があ
会社が栄養強化をどう考えるかで決まる。
り得るため,その成分を添加する前の安定性が
規制障害
関係する。例えば植物エキスを加える場合,エ
7.フルーツジュースにビタミンCを加える単純
キスが添加時点で生物活性要素があることをチ
な場合でも,より複雑な食品に別の成分を加え
ェックしなければならない。
る場合でも,その効果を実証する必要がある。
17.さらに,植物エキスおよびその他の成分につ
8.この数カ月間で,欧州食品安全機関(EFSA)
いて,よく似た植物は多数存在し,一般的でな
は,製品や成分の記載に代わる栄養機能表示に
い成分は間違われやすいのできちんと確認する
ついて見解を示した。これまで栄養機能表示の
必要がある。
記載はほとんど認められてこなかった。
処方・検査の信頼性
9.EFSAが現在認めていない栄養機能表示のう
18.あいにく,成分妥当性の検査法は統一されて
ち,効果的だということが確実になり,食品会
いない。機能性成分の純粋性や確実性を証明す
社がEFSAが求める表示規則を守れば,将来的
るのは簡単ではない。オリーブオイルなどの物
に使用許可が下りるものもあるだろう。
質に関しては,確実性,純粋性,品質を判断す
10.心機能向上やガン予防,肝臓障害予防などの
るための幅広い化学的指標や指示薬で確認する
主な健康効果は,実証が難しい場合が多い。大
という方法が一般的である。
がかりな臨床試験には費用がかかり,結果が出
19.研究機関は,確実性,純粋性,品質を判断で
るまで時間もかかる。
きるような方法を科学的に証明する必要がある。
11.集中力アップ,意識レベル向上,リラックス
しかし,現実にはこれらの方法は確実な保証と
効果など,栄養強化による即効効果は比較的証
はいえず,単なる目安でしかない。
明しやすい。臨床試験は今なお必要だが,所要
20.分析方法を統一するだけでなく,適切なサン
時間は短くなってきている。
プルの選択も分析の課題である。サンプリング
具体化に向けての取り組み
と試料調整は,正確な分析結果を出すために重
12.医学的な機能表示は別として,食品や飲料の
要となる。
生物活性成分の表示量を実証するためには,ま
21.以上のどれも,どの成分を加えるかについて,
だやるべき事がたくさんある。
栄養強化が持つ問題点をきちんと認識し,サプ
13.ヒント2を見てみよう。ビタミン類や生物
食品と容器
ライヤーがしっかりと監査やテストを行えば,
285
2011 VOL. 52 NO. 5
問題が軽減できるということだ。
われることが多く,そのため油に酸化防止剤を
処方上の課題
入れることがあるが,製品に酸化防止剤を加え
22.製品に添加された成分の組み合わせが良くて
ても良いということではない。
も,果たしてそれらは実際に機能するのか? 色彩の選択
製品へのオメガ−3やビタミン,カルシウムの
31.新たに加えた成分が色彩にも影響を与える場
添加がもたらす影響と,それに付随する結果は
合,成分添加前の色に戻すためには合成着色と
何なのだろうか。
自然着色という2つ方法がある。
23.添加される成分がほんの少し変更されただけ
32.味,色,安定性,口あたり等の問題で栄養強
でも製品に影響を与える。そのため栄養強化を
化の調整が必要な場合,その過程では試行錯誤
定式化するには,変更した成分に適応させるた
が繰り返されるが,経験豊かな調合者によるス
め全体の処方も変更を必要とする場合がある。
ピーディーで適切な処置により,製品が市場に
製品の味や濃度,色,安定性,口あたり,pH
出回るまでの時間を短縮している。
バランス等に影響を与える可能性があるからだ。
33.実験台で作業している調合者も,実証プラン
24.味とは複雑なもので,ある「味」と別の「味」
ト施設に行くべきである。研究所で開発された
を足しただけでは予想できず,香り,色,口あ
ものが簡単に製品となり市場に出回るという誤
たりや食感も味覚に影響を与える。
解が生じかねないからだ。
苦味への取り組み
34.訓練された消費者パネルによる官能検査も,
25.機能性成分を加えることで出る味のうち一般
製品を最適化するのに役立つ。
的に最も嫌がられるのが苦味である。口内には,
望ましいレベル?
苦味の感覚器官が20種以上あるが,栄養強化を
35.ビタミンおよびミネラルは,食品の栄養価強
成功させるには,それらの苦みを克服する必要
化の手段として最も歴史が古く,最も扱いやす
がある。
いとされている。もちろん前もって混合されて
26.苦味をあえて加えるケースも多々ある。例え
おれば調合がより簡単になる。
ば,機能性成分より苦味の少ないほかの苦味成
36.特にビタミンは,添加の適正量が微妙である。
分を少量加えることで,機能性成分の苦味を軽
1日当たりの摂取推奨量以上のビタミンを摂
減することができる。
取・添加する消費者や食品メーカーも存在する。
27.また,苦味を隠すために甘味料を使用する方
37.鉄分やカルシウムなどのミネラルの課題は,
法もある。タウマチンやNHDC
(neohesperidine
生物活性を持たせることである。
dihydrochalcone)などの甘味料には,甘みを感じ
栄養価強化の選択肢
させないレベルで苦味を隠す効果がある。
38.一般的に,西洋人は東洋人より内臓状態につ
28.さらに,乳化剤で苦味分子を「包み込む」と
いて人に話すことを嫌う。にもかかわらず,プ
いう方法や苦味成分をカプセル状のものに閉じ
ロバイオティクス細菌やプレバイオティクスフ
込める方法もある。
ァイバーの添加には積極的である。
その他の問題
39.オートムギ由来の水溶性繊維は,高価ではあ
るがコレステロールを下げる働きを助け,不溶
29.ほかに嫌がられる味として,豆乳の「豆臭さ」
や, ビ タ ミ ンBの「 肉 臭 さ 」, 魚 油 の「 魚 臭
性繊維より効果が得られる場合が多い。
さ」,ビタミンCの「酸味」がある。これらを
40.現在,多くの製品が魚,植物,藻類由来のオ
うた
感じさせないようにするのも課題の1つだ。
メガ−3脂肪酸配合を謳っている。オメガ−3
30.食品会社は魚油やハナニラオイルなど油状の
は来源により脂肪酸の種類が異なるので,オメ
機能性成分を好んで使うが,これらは酸化しや
ガ−3の出処を明確にすることが重要である。
すいという問題がある。魚臭いのはもともと嫌
41.大豆が心機能にもたらす効果はUSFDAが認
食品と容器
286
2011 VOL. 52 NO. 5
めてきたが,大豆製品市場はその割に拡大しな
む成分はほかにもあり,食品会社は製品に加え
い。当初の大豆製品には「豆臭さ」があったが,
豆臭さを隠す処方により,味も良くなった。
ようと検討している。
44.栄養強化の成功は,すべての成分を理解する
ことから始まる。そうすれば,添加する必要が
42.スタノールとステロールの,コレステロール
を下げる作用もまた知られており,スプレッド
あるものはすべて適応させられる。
やヨーグルトの多くに添加されてきた。
45.経験豊富な栄養強化学者と新製品開発専門家
成功へ向けて
は製品が市場に出回るスピードを速め,栄養強
43.果物にあるポリフェノールや酸化防止剤,グ
化を成功へ導くのである。
ルコサミンやガラナのような生物活性物質を含
(野呂佳菜子)
海外技術情報
PET ボトル製造における省資源化の取り組み
(
)250( 10・11/12)文献 №5645
限りある資源を節約し次世代へ引き渡すとい
の石油と23kWhのエネルギーが必要とされるこ
う今日的課題に向かって,エネルギーと資源の効
とを考えれば,それが環境に対していかに大きな
率化を目指すことは産業界,消費者のみならず,
責任を伴うものであるかが分かる。
社会全体にとって大きな関心事となっている。ド
消費者であれ,販売者であれ,商品が環境に優
イツ教育科学・研究技術省(BMBF)では各産業に
しいものであるかどうかは大きな関心事であり,
おけるこうした省エネ,省資源のプロジェクトに
環境に良い商品ということになれば,その方がよ
対し援助を行っているが,その中のひとつにKHS
く売れるということになるわけであるから,同じ
Corpoplast,Institute for Plastics Processing
PETボトルでも使うエネルギーや材料が少ない
(IKV),AdPhos Innovative Technologies,
ほうが,CO2の排出量も少なくなり,その表示も
Okertaler Mineralbrunnenの各社・団体からな
できるというメリットを持つことになる。2006
るチームによるPETボトル製造のエネルギー・
年に初めて英国でCO2排出量(カーボンフットプ
資源効率向上プロジェクトがある。
リント)表示が始まって以来,それを実施してい
プロジェクトに参加している上記4者の役割分
る国はまだ少ないが,いずれそのような時代が来
担は以下のようになっている。
るのは時間の問題であり,そのための準備をして
・IKV:プロジェクト全体のコーディネートと個
おかなければならない。
別のプロセスシミュレーションのサポート
一般に,PETボトルのコストの70%はその材
・KHS Corpoplast:PETボトル設備技術,運転
料代,これをプリフォームにし,ボトルに成形す
技術,材料特性研究,ボトルのデザイン
るコストがそれぞれ15%とされており,製造に要
・AdPhos Innovative Technologies:近赤外線に
するエネルギーを減らせば,それはコスト削減に
よるプリフォーム加熱エネルギーの効率化
直結するわけであるから,ボトルの軽量化という
・Okertaler Mineralbrunnen:KHS Corpoplast
のは最優先で取り組むべき課題である。
社のInnoPET BlomaxシリーズIIIの設備を備え
次に重要なのが材料加熱に必要なエネルギーの
た充填工場で,当該設備によるプロジェクトの各
量であるが,ここで留意すべきはプリフォームの
種実証実験
口部は加熱されないので,この部分の重量は計算
今日,世界で5,000億本,ドイツだけでも250
に入らないということである。例えば,プリフォ
億本が生産されているPETボトルの原料は石油
ーム全体の重量が25gで口部の重さが5gである
から作られるが,1kgのPETを作るのに1.9kg
とすれば,5gを引いた20gが計算対象となるわ
食品と容器
287
2011 VOL. 52 NO. 5
けである。そしてもうひとつは,ボトルを膨らま
例えば,III型機の場合,ブローステーションは機
せるための圧縮エアーで,成形に実際に使われる
械的に制御しているのに対し,IV型機ではサーボ
有効使用量といわゆるデッドスペース量の2つに
モーターを使っているためよりフレキシブルかつ
分けて計算する必要がある。
高精度の制御が可能で,設備全体の稼動速度を落
こうした前提に立ってチームは実際のラインで
としてもストレッチ加工のスピードは変わらない
のデータ収集を行った。当該設備はブローステー
ので,III型機より低速でも同じボトル強度を得る
ションが14あり,1.5リットル,重量31gの炭酸
ことができる。
飲料用ボトルを1時間に25,000本,年間で1億
ボトルの軽量化による熱エネルギーと圧縮エア
本生産している。 ーの使用量削減についてみてみると,III型機では
チームはまず,タテ,ヨコの二軸延伸成形条件
ヒーターモジュールに旧来の赤外線放射を採用し
に変化をつけたときボトルの性質がどう変わるか
ているが,プリフォーム壁面の温度分布を分析す
をテストした。ひとつは延伸スピードを上げると
ると熱と冷却エアーの組み合わせによっては15
材料の強度が増し,それだけボトルの軽量化がで
∼20%のエネルギー節減が可能であることがこ
きるという仮説の検証と,そうして成形したボト
れまでのテストから分かっている。それによれば,
ルの強度や耐熱性に問題はないかという検証であ
プリフォームの加熱に必要な電力はPET1kg当り
る。検証は弾性係数(E-modulus)によって行い,
現 行 の0.15kWhか ら0.12kWhと な り, 電 力 コ ス
約10%の強度アップという結果が得られた。この
トが0.10ユーロ/kWhとすれば,年間7,800ユーロ
結果が実用上も得られるということになれば,約
の節約となる。
3%,即ち31g→30gへのボトル軽量化が可能と
IV型機ではプリフォームの加熱に近赤外線を
いうことになり,年間では100トンもの材料節減
使っている。近赤外線を使うことでエネルギー密
が実現する。PETの価格はキロ1.20ユーロ程度
度が高くなり,また加熱ゾーンを密閉型チャンバ
であるので年間では12万ユーロのコスト削減に
ーにしているので,III型機に比べ最高30%程度
なり,この3%の軽量化によりCO2排出量も3%
の電力が節減できる見込みである。プロジェクト
減ることになる。
チームではさらに将来的にはレーザーによるプリ
ボ ト ル の 形 状 も 大 き な フ ァ ク タ ー で,KHS
フォーム加熱も検討している。
Corpoplast社では長年に亘ってその研究を続け
プロジェクトのもうひとつの大きなテーマは圧
ており,これまで約9,000種類の形状をテストし
縮エアー量の削減である。ボトルのブロー成形に
てきている。内容物や充填工程の条件によって,
使われる圧縮エアーは実際の成形に使う有効エア
コンピューターを使って形状をシミュレーション
ー量とデッドスペース・ボリューム,すなわち,
してボトルのデザインを決め,ユーザーの要件に
設備の構造上失われてしまうエアー量に分けて考
マッチすればプロトタイプを作り,実機と同じ機
える必要がある。有効エアー量はボトルのデザイ
能を備えたラボ機で生産テストし,所期の性能が
ンと給排気システム,またエアーのリサイクルシ
得られれば実機での生産に供するという手順を踏
ステムによって左右される。Okertaler工場の場
んでいる。
合,エアバックシステムという2つのリサイクル
これまでプロジェクトチームが使ってきた
システムがある。エアバックシステム1ではボト
InnoPET Blomax シリーズIII型機は,パルス加
ル成形に使ったエアーの一部を取り出して他のブ
熱システム,プリフォーム間のスペーシングの極
ローステーションでも使っている。 小化などによって業界でも最もエネルギー消費量
エアバックシステム2は残存エアーをエアーコ
の少ないPETボトル成形機とされているが,今
ンプレッサーに再循環するシステムである。チー
回これを上回る持続可能性と低コスト化を実現し
ムはこの再循環の効率化に取り組んでおり,これ
た次世代型シリーズIV型機が登場してきている。
までのところ諸々の対策と併せて合計36%の圧
食品と容器
288
2011 VOL. 52 NO. 5
縮エアー量節減を見込んでいるが,これによって
PETボトルのエネルギー,資源効率化プロジェク
年間26,000ユーロの電力料の節減となる。また,
トは様々な成果を生んでおり,2011年末に最終的
設備を次世代のIV型機とした場合には,デッド
な報告書が提出されることになっているが,これ
スペースのエアー量が減るためさらに5∼15%
によって将来のPETボトル製造のあるべき姿の
の節減が可能だという。 ひとつの見本が示されることとなるだろう。
以上のように,ドイツ政府の支援を受けたこの
(大池静男)
海外技術情報
小売り戦線でグリーン製品が勝つ6つの秘訣
(
)20( 10・8)文献 №5621
私たちは,近いうちにウォルマートの商品棚に
「100パーセントリサイクル品」という表現は,
ある価格表示の隣には「環境スコア」
(環境パフ
「65パーセントリサイクル品」より優れている。
ォーマンススコア 訳注1)が記載され,スマー
さらに,製品カテゴリーの基本機能を示していな
トフォンを使ってそのバーコードをスキャンすれ
ければ,それは効果的であるとは言えない。
ば,その製品やそれを作るメーカーがどのくらい
3.リサイクルを主張することによって点数
グリーンなのかを知ることができるようになるだ
をかせぐことはできるが,すべてのカテゴリー
ろう。それまでは,メーカーの環境問題への取り
で点数をかせげるわけではない
組みを消費者に伝えるのは,メーカー任せであり,
参加者は,概してリサイクルの考え方は受け入
その最も良い表示場所がまさに製品ラベルである。
れるけれども,リサイクル材料から作られたもの
私たちが継続実施している消費者調査(シェルト
を,必ずしも好むわけではなかった。彼らは,リ
ングループが行う,毎年4回の全国調査および数
サイクルされたプラスチック材料からの包装容器
多くのフォーカスグループ調査)によると,グリ
などは受け入れたが,多くの参加者はリサイクル
ーン製品かどうか,消費者はパッケージを見るこ
された繊維から作られる衣類が快適かについては
とと,ラベルを読むことによって判断することが
懐疑的だった。また何人かは100%再生紙を使用
最も多い。
するペーパータオルの品質について疑問を表明し
何が最も効いているかを調べるために,最近,
た。
私たちはサンプルとして試作したものと市場に流
4.どんな専門用語も使用しない
通しているパッケージをテストした。
消 費 者 が「GMO不 使 用 」 や「 低VOC」 な ど
このテストで得られた幾つかのキーポイントを
の産業用語を理解してくれるとは思わないことで
取り上げてみる。
ある。これらの用語はほとんどの参加者にとって
1.最重要情報をパッケージの前面に入れる
無意味であり,貴重なラベルスペースの浪費だっ
製品を調査したところ,多くのメーカーでは,
た。一般的にメーカーで使われている説明,例え
製品のラベルに最も重要な主張を織り込んでいな
ば「再生可能なエネルギーによって生産されてい
いことがあった。しばしば参加者が欲する詳細な
る」という説明を,ほとんどの消費者は正しく理
表示(アンモニア無しというような特徴)が背面
解できないし,これらは低い評価だった。一方
に隠れ,前面の表示を見て重要ではないと無視さ
「太陽エネルギーによって生産されている」とい
れてきた。
う説明はすぐに理解できるフレーズであり,非常
2.可能な限り具体的文言にする
に受けが良かった。
「100パーセント天然」という表現は,「オー
5.消費者はメーカーが考えるほど,
「認証」
ル天然」という表現より評価されている。さらに
されたものを多くは買わない
食品と容器
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2011 VOL. 52 NO. 5
製品を選ぶ一番の理由として,
「製品の認証」
もちろん,メーカーが環境について主張したく
を挙げた回答者は少なかった。フォーカスグルー
なければ,上記6つの秘訣は重要ではない。消費
プの参加者のうち1名のみ,クロロックス社の
者は,いずれは真実を把握しようとするが,その
“グリーンワークス”クリーナーが取得している
うち必ずしも正確に理解しようと商品棚で得られ
シエラ・クラブ(環境保全を目的とする組織)の
る情報以上にわざわざ調べようとはしなくなる。
認証に着目し,SCジョンソン社の“スクランブ
(杉本雅邦)
ルバブル”クリーナーに付いたグッド・ハウスキ
訳注1:米国カリフォルニア州等で実施されているも
ーピング・シール
(品質保証のお墨付き 訳注2)
ので,環境パフォーマンスに関するスコアでは,スモッ
に注目したのは2名だけだった。
グと地球温暖化についてそれぞれ1∼10点のスコアが表
6.色彩は重要である
示されている。
製品の色合いや色の濃さは,
「グリーン製品」
訳注2:グッドハウスキーピングとは,1922年創刊
であることを認知されるのに影響する。洗剤や汎
のアメリカの婦人向け月刊誌,同誌の製品テストは権威
用クリーナーの分野においては,参加者の大多数
があり,そのお墨つきとして,「グッドハウスキーピング
は,クリアな,または無色の製品を「より自然で
シール」が与えられる。品質保証の代名詞。
ある」と結び付けて考えた。
海外技術情報
消化器官の機能を高める健康素材
(
)NS3( 10・10)文献 №5636
消化器官は,疾病,食事,感情的なストレス
プロバイオティクス
に影響される複雑なシステムである。消化器官に
“Probiotics”は「生命のために:for life」を
関する一般的な健康障害には,胸焼け,炎症性腸
意味し「生きた微生物で,十分な数があれば,宿
疾患,腹部膨張,下痢,ガス,胃痛,胃痙攣など
主(host)に健康効能を与えるもの」と定義されて
の胃腸疾患がある。健康な消化器官は,リューマ
いる。
チ性関節炎などの自己免疫疾患のリスクを低減さ
せることができる。
プで,人体内で 400以上のプロバイオティク種を
( 乳 酸 菌 )は乳酸生産菌のグルー
そう
ヒトの大腸内の細菌叢は,消化器官の健康に非
構成している。乳酸菌は次のような多くの利点を
常に重要な役割をもっている。腸内の細菌叢は少
持っている。
なくとも 500種類以上の菌種によって構成され
・成長因子を活性化し,ミネラルの生物利用能を
ている。これらは,発がん物質の転換,ビタミン
向上させる
の生産,胆汁酸の分解,栄養素の消化などに影響
・粘液バリアーを安定化させ,腸への浸透性を低
をもつ。ある種の細菌叢は,胃腸炎耐性,血中脂
減させる
肪,抗潰瘍,乳糖不耐症,胃腸の免疫において有
・乳酸や過酸化水素を産生することで,病原菌を
益な効果をもつ。
抑制する
細菌叢とそれらの有効性に関連した食品やサプ
・免疫改善効果がある
リメントに関する出版物は過去10年の間に急激
国際連合食糧農業機関(FAO)/世界保健機構
に増加した。プロバイオティクスやプレバイオテ
(WHO)の専門委員会は,プロバイオティク微生
ィクス,食物繊維および酵素を含む栄養成分は,
物を評価するためのガイドラインを提案した。
消化器官の免疫とともに腸内細菌叢を通して健康
プロバイオティク種は,
な消化システムを強化する利点がある。
1)胃液や胆汁などが存在する消化器官を生きた
食品と容器
290
2011 VOL. 52 NO. 5
まま通過できること
結果結腸の細菌叢はより健康な組成へ向かう。
2)腸内の粘膜に付着して増殖できること
細菌叢の多様性や代謝活性に影響を与えるプレ
3)グラム陽性菌で(必ずしも限定されないが)
,
バイオティクスは,その結果として免疫システム
と
(腸内細菌)
を調整する。最近の興味は,脂質やミネラルの代
の2つの属を含むこと
4)確立されたテスト法(
謝に対するプレバイオティクスの有効性やがん予
,動物および
防に焦点を当てている。これらの効果の大半は,
人体実験)で特殊な健康効能を示すこと
例えば腸内細菌叢を介した効果というような間接
5)確立された投与処方と投与期間をもつことな
的なものである。
どが可能である。食品用途としてのプロバイオテ
一般的なプレバイオティク素材としては,フル
ィク製品は,よい味とにおいをもち,適切なシェ
クトオリゴサッカライド(FOS)
,短鎖のフルクト
ルフライフをもつことと定義されている。
オリゴサッカライド,イヌリン,オリゴフルクト
ある種のプロバイオティクスは,人体の免疫シ
ース,その他の非消化性のオリゴサッカライドな
ステム機能を最適化し,消化器官の粘液バリアー
どが含まれる。食物繊維も小腸での吸収を阻止し,
を調整することによって防御機能を強化すること
大腸内の細菌叢によって加水分解や発酵されるこ
ができる。消化器官には免疫システムの約70%
とで,プレバイオティクスとして働く。イヌリン
が存在する。
やオリゴフルクトースは有効な消化器官内の細菌
プロバイオティクの効能としては,
叢増殖を選択的に促進することが示されている。
1)ロタウイルスの症候または抗生物質に関連す
FOSは,タマネギ,チコリ,バナナ,アーテ
る下痢および乳糖不耐症の予防や期間の低減
ィチョークなどの広範囲の植物性食品に自然に含
2)がん促進酵素の濃度や消化器官内の腐敗菌の
まれており,腸内細菌叢により短鎖脂肪酸から,
低減
水素,乳酸塩,その他の代謝産物に代謝される。
3)消化器官の疾病の予防や軽減など
難消化性デンプン(Resistant starch:RS)は,小
4)消化器官内の炎症性疾患に関連する細菌性異
腸では吸収されないデンプンである。消化器官で
常,炎症,その他の病状に対する有益な効果
十分に分解されないため,RSはプレバイオティ
5)結腸の過敏症による便通の正常化
クスの食物繊維としての健康効能をもつ。市販さ
6)乳幼児におけるアレルギーやアトピー症の予
れているRSの主原料はコーンスターチである。
防および軽減
プレバイオティクスの供給源として研究されて
7)呼吸器官の感染(一般的風邪,インフルエン
いるその他の食物繊維には,アメリカオオバコ,
ザ)の防止
グアーガム,ライムギ粉,オオムギ,オレンジジ
プレバイオティクスの目的
ュース絞りかす,コムギ由来のRS,ガムアカシ
イギリスの研究者たちは,ある種の炭水化物が
アなどがある。
腸内細菌の成長を非選択的に増進することができ,
プロバイオティクスとプレバイオティクスは組
これにより消化器官に影響を与えることをはじめ
み合わせて用いられ,
“symbiotic”という新語が
て報告した。これが,ヒトの消化器官では消化さ
作り出されている。
れず,腸内細菌叢によって選択的に発酵させられ
生きた微生物(プロバイオティクス)の添加は,
る物質,すなわちプレバイオティクの概念である。
特殊な成分(プレバイオティクス)と共同で,プ
プレバイオティクとして分類される食品素材の
ロバイオティク生物の生存率を向上させる。
ためには,消化器官の前半部分では,加水分解や
消化のための酵素
吸収されてはならず,結腸内で有益な微生物(プ
20以上の酵素が,栄養素の吸収,転換,代謝,
ロバイオティクス)によってのみ利用される物質
除去と同様に消化のために働いている。消化酵素
である。このように微生物の増殖を刺激し,この
は3つに分類されている。タンパク質分解酵素ま
食品と容器
291
2011 VOL. 52 NO. 5
たはプロテアーゼはタンパク質をアミノ酸に分解
す免疫細胞の能力強化,抗炎症成分の生成促進に
する。リパーゼは脂質を分解し,アミラーゼは炭
よる免疫反応を亢進させるなどの,多くの免疫シ
水化物を分解するのに必要である。植物,真菌類,
ステムに有益な影響を与える。
動物ベースの素材は最も一般的な外因性の酵素で
代謝活性や免疫に影響する正常な細菌叢や内分
ある。酵素製剤が消化不良改善のためにしばしば
泌システムは研究の重要な領域として残されてい
用いられる。
る。将来,消化器内の細菌叢の組成を調査して,
プロテアーゼは炎症時の組織の損傷緩和に重要
診療を行うことが可能になる。プロバイオティク
である。プロテアーゼは免疫システムとそれらと
ス,プレバイオティクス,シンビオティクスおよ
結合する物質(抗原)によって作り出される抗体
び酵素は,消化器官の健康や免疫に有効な効果を
を形成する免疫複合体の分解強化のために働く。
もつ細菌叢の栄養改善に貢献する。
タンパク質分解酵素は,微生物やウイルスを殺
(十時正義)
海外技術情報
食品科学が直面する克服すべき課題
(
食品科学者たちは今日,さまざまな問題に直面
)36( 10・11)文献 №5643
・水−現代・将来における不足,農業と食品加工
している。しかし40年前に第三回食品科学技術国
の結果
際学会がワシントンで招集され,食品科学技術国
・肥満−対処法と食品科学の果たす役割
際連合(IUFoST)が設立されたときも事態は同
・食品関連リスク・栄養・健康問題に対する消費
じだった。以下1970年の第三回学会(SOS/70)
者のあり方の予想と現実
と最近の学会との違いを大まかに比較し,今日の
気候変動
重要課題について検証しよう。
極地の氷山や氷河の溶解や二酸化炭素凝縮によ
進化する議題
る海水の酸性化など,一世紀以上前に始まり,特
40年間の激動は学会の変化にも表れており,分
にここ50年間で急速に進んだ気候変動を我々が経
科会・総会双方で分野の細分化が起きている。「グ
験していることに疑いの余地はないと思われる。
ローバル化」「バイオテクノロジー」「遺伝子組み
気候変動は慣性的な部分が大きい。厳格な対策を
換え」
「ナノテクノロジー」
「プロバイオティクス」
施したとしても,温室効果ガスの濃度は停止も後
「機能性食品」など,70年代当時は想像もつかな
退もなく,この先何十年も上昇を続けるだろう。
かったことが議題の中心になっている。
コンピューター解析による将来像を知っている
SOS/70と最近3回の学会で取り上げられた60
人も多いが,食品生産/加工における課題のひと
の議題のうち,共通しているのは官能評価・
(広
つに降雨パターンの再分配があり,アメリカ中西
義の)食品安全性・食品の化学的/物理学的構造・
部など主要農産地域の降雨量減少が予想されてい
食品科学技術教育・食品加工・穀物・栄養の7項
る。多くの自然植生と同様に農業生産も北へと移
目にすぎない。継続性と激変の双方に着目し,変
動している。現在の穀倉地帯で降雨量が減ると,
化への対応力を将来へ持続させられるよう願わず
農地が放牧地へ転換され,穀物の値段が上昇する。
にはいられない。
最も深刻なのは,人口が急増しているのが発展
議題となった課題
途上国であり,そうした国の多くで干ばつ被害が
最近の学会で取り上げられた4議題を以下に挙
大きくなりやすいということである。さらに海面
げる。
上昇や台風の最初かつ最大の被害を受けるのが海
・気候変動とその食品生産/加工への影響
岸地域であり,そこには世界の最も貧しい人々が
食品と容器
292
2011 VOL. 52 NO. 5
多く暮らしている。
米メーカーでは節水に努め,30%以上の節水に成
我々はこうした気候変動が食品加工に与える影
功した。
響を予測することしかできないが,一方でエネル
青果物も洗浄・運搬・加工過程で大量の水を使
ギー消費を減らし,化石燃料依存から脱却しつつ
う。PepsiCo社では既にボトル洗浄を浄化した空
ある。
気で行っている。加工工場では水濾過・浄化シス
環境に配慮した包装への関心も高まっている。
テムを導入し,程なく水の再利用を実現できると
長い目で持続可能性を考えるなら,再利用可能プ
いう。
ラスチックや生物学的に分解可能なプラスチック
肥満の蔓延
の開発が望ましい。
1970年当時は話題にならなかったが,後に大き
穀物の価格上昇につれて伝統的肥育肉の値段が
な問題となったのが肥満で,特に子供の肥満は深
上がると,肉の消費が減り,省エネルギーで低価
刻とされる。統計の数値は嘆かわしいもので,ア
格農産物を原料とする「代替品」が登場するかも
メリカでは1980年から2004年までに成人の肥満
しれない。こうした製品が受け入れられるとの予
が倍増し,人口の1/3を占めるまでになった。今
測は安易であり,消費者の味の好みが変化すると
日では成人の約61%が体重過多もしくは肥満であ
しても,それは非常にゆったりとした速度にすぎ
る。同時期に子供の肥満は3倍以上となり,今や
ない。
19%を占める。肥満を招く原因についてもっと学
水不足
ぶ余地が大いにあると肝に銘じなければいけな
1968年G.HARDIN氏は著名なエッセー「共有地の
い。
悲劇」の中で,限られた資源(すなわち“共有地”)
最近までの150年間,人類は見つけられるだけ,
という条件下で人口が増えると,個人と共同体い
作れるだけの食物を生き残るために必要とし,カ
ずれにもジレンマが生ずると書いた。個人が共同
ロリーは高いほど良しとされた。我々人類と食物
放牧地でより多くの牛や羊を飼おうとすると,牧
との関係にはこうした分かち難い遺伝的背景があ
草が減って共同体に損害を与えるが,その人はよ
る。これにどう対処するか。
り多くの収入を手にするのか,それとも共同体に
肥満した子供がファストフード店で食事をして
迷惑をかけない範囲で収入を増やそうとするの
いる写真を見ると,まず親が悪いと考える。次に
か?歴史や最近の出来事からわかるように,個人
怒りがこみ上げて来る。なぜ人は多すぎる食事を
の欲望は良識を常に上回る。共同体側からすれば
選ぶのか,子供にそれを許すのか。苦し紛れにフ
個人の欲望を野放しにするか,公の利益のために
ァストフード店を“カロリーだけ”などと揶揄し
抑制するかの選択を迫られ,ついにはより広く生
たり,“加工食品”を攻撃したりする手合いが多
産効率の良い“共有地”を探すことになる。水ほ
すぎる。選択の自由はあっても,正しい選択がで
どこのジレンマを象徴する資源はない。
きない人をどう導くか?
米・加・豪ほか多くの農産国の水利用は持続可
栄養表示ラベルは本当に必要だが,正しい食の
能性の域をはるかに超えている。また人類が使う
選択に結びつくまでには至らず,ラベル情報の効
水のうち2/3は食品生産が消費する。現在の水供
果的利用法教育も不十分だった。手軽に満足でき
給を持続可能なレベルに保つために,本当の意味
て安価な食と,高価で健康に良い食が目の前にあ
でのコストを認識すべきである。農業においては
れば,消費者が前者を選ぶということが不幸にも
まん
や
らん
ゆ
かんがい
氾濫地での灌漑抑制・センターピボット灌漑・無
往々にしてある。さらに,内科医が患者に対して
耕農業の採用などが有効な節水方法である。
食に関するアドバイスをしても報酬を得られない。
水不足は食品加工にも深刻な影響を与える。最
しかし,健康管理改正法案がこのほど米議会を通
近まで60億ガロンのビールを造るのに300億ガロ
過し,資格を持った管理栄養士も含め,予防医学
ンの水を使い,残りは廃水として処理していたが,
に報酬が支払われる希望が出て来た。
食品と容器
293
2011 VOL. 52 NO. 5
これまでも公共キャンペーンによって禁煙や車
家庭菜園・オーガニック・地産地消・遠隔地農産
の安全性向上が実現している。コストは食の選択
物の敬遠などが起きている。
における主要要素であり,従ってより良い選択を
第三に科学技術への不信がある。テクノロジー
指導しようとする側にとっても重要である。たば
が膨大かつ複雑になり,教育が追いつかない。さ
こ製品にかかる税金が高くなって消費の抑制につ
らにBP社が起こしたメキシコ湾への原油流出の
ながった。清涼飲料への課税を検討中の州もある。
ような科学技術とは無関係の事件が大げさに報道
戦時中は下院が利益税を施行した。肥満との戦い
され,消費者の不信に拍車をかけ,栄養表示ラベ
において,我々はカロリー税を取り立てるべきだ
ルには“○○を含まない(○○は消費者が警戒し
ろうか?
ている素材)”などとわざわざ書かれている。
食のコスト管理の中で,気候変動と水不足によ
数年前,筆者は心配と新規発明および情報発信
って強制的に植物中心の食生活への移行が起きて
との関連性について調べた(第1図)
。発明当時は
いることは,事の解決を容易にしてくれるかもし
情報発信もないため心配もない。情報発信が始ま
れない。より高度な加工が求められ,まだ実用化
ると心配(A)が上昇してピークに達し,情報が
されていない科学技術が視界に入る。M.POLLAN氏
さらに詳細になると徐々に下降して“成熟”レベ
以下“加工食品”を肥満のもとだと批判した人々
ルCへ向かう。情報を得足りない消費者の認識パ
は,加工によって実は大幅なコスト削減が可能で
ターンは,メディアへの関心が最高のピーク直前
あり,食品加工は将来において重要な役割を果た
の変動が大きく,そこから一気に下降に転ずる。
すという事実を無視している。
科学技術に携わる者として,また筆者個人として,
食品科学技術は低コストで栄養素に富み,しか
関心が高いうちの情報発信に貢献すべきである。
も見た目が良くて食べやすい食品作りという困難
な課題に直面していくこととなる。このほどミズ
ーリ大学が鶏肉特有の舌触りを持つ大豆製品を開
発した。甘くて砂糖の口当たりを持つノンカロリ
ー甘味料や,脂肪の“ような”味で低カロリーの
製品も望ましい。
リスク管理と現実
灌漑やバイオテクノロジーといった技術発展が
お門違いの非難を受けることもある。原因は主に
以下の3点である。
第一はリスクのとらえ方にある。1969年に発表
第1図 心配と情報量の方程式
した論文の中でC.STARR氏は“自発的”リスク(管
将来に向けての対立と管理
理できると考える)のほうが“非自発的”リスク
食品科学者として,我々は恐るべき挑戦にも立
(“彼ら”のほうから我々にのしかかってくるた
ち向かわなければならない。地球環境が大きく変
め,管理できない)の何千倍も受け入れやすいと
化する中で,食糧の価格をできる限り低く抑えつ
述べた。残留農薬・食品添加物・遺伝テクノロジ
つ,栄養価・入手しやすさ・利便性を維持・改善
ーなどは“非自発的”な部類に入る。対照的に,
しなければならない。水やエネルギーをもっと効
家庭における食品の取り扱い間違いや肥満につな
率良く使わなければならない。食品加工において
がる食の選択などは管理できそうな気がするため,
は無駄を減らし,廃棄物利用や分解処理も行わな
“自発的”リスクとして受け入れやすいとされる。
ければならない。これからの40年間で30億人分の
第二に食品添加物や残留農薬,
“加工食品”は
食糧を確保し,健康に良い食の選択へと人々を導
ちゅう
消費者個人の手の届かない範疇にある。このため
食品と容器
き,リスクと利点を見極めなければならない。
294
2011 VOL. 52 NO. 5
おそらく最大の課題は,これからはより多く,
汚染対策のため,車から馬へ回帰するわけにはい
より良い科学技術が必要だと消費者を説得するこ
かない。挑戦によって未来が開ける。やるべきこ
とだろう。後退は許されない。排ガスによる大気
とは山積みである。
(力丸みほ)
海外技術情報
マイクロカプセル化による天然着色料の安定化
(
)65( 10・12)文献 №5654
多くの消費者は合成着色料ではなく,天然のも
㪝㪛㩽㪚㩷㪰㪼㫃㫃㫆㫎㩷 䋵㩷
のを求めている。企業もそれに応えて新製品には
䓼
䔠
䓴
䕕
天然着色料を用い,従来製品も合成着色料から天
然着色料に替えている。
しかし,天然着色料の使用には課題があり,熱
੃ൻ䊆䊮䉳䊮䉣䉨䉴㩷
੃ൻ㱎䉦䊨䊁䊮㩷
䊙䉟䉪䊨䉦䊒䉶䊦ൻ䉺䊷䊜䊥䉾䉪㩷
や 光, 低pH, 酸 化 な ど で 劣 化 し や す い と,
㩷 㩷 䋱䌨㩷 㩷 㩷 䋲䌨㩷 㩷 㩷 䋳䌨㩷 㩷 㩷 䋴䌨㩷 㩷 㩷 䋵䌨㩷 㩷 㩷 䋶䌨㩷 㩷 䋷䌨㩷 㩷 㩷 䋸䌨㩷
Chr.Hansen社 の 商 品 開 発 担 当 役 員B.M ADKINS
第1図 マイクロカプセル化ターメリックと
他の黄色着色料との耐光性比較
氏は言う。食品の着色料は合成,天然にかかわら
ず,最適かつ安定した処方を選択することが最高
の性能を得るための鍵である。天然着色料の最大
も,マイクロカプセル化ターメリックと乳化βカ
の課題は安定性であり,当初の色調を食品のシェ
ロテン,乳化ニンジンエキス,参考としてFD&
ルフライフ期間中維持しなければならない。
C yellow5を比較した。分光光度法および視覚で
製品開発者のニーズや課題,食品や飲料の要件
比較できるように色強度を調製し,高強度の光に
を考慮し,Hansen社はマイクロカプセル化技術
8時間暴露した。マイクロカプセル化ターメリッ
を用いた天然着色料CapColorsを開発した。
クは色調,色強度の変化が最小で,最も良い耐光
色の調製で最優先すべきことは,色素を用途に
性能を示し,FD&C yellow5と比べても優れて
合った形態にしたり,システムにうまく組み込む
いた(第1図)。45℃に56日間暴露させた類似
ことである。例えば,ターメリックはアルコール
の実験でも,マイクロカプセル化ターメリック飲
には少し溶けるが,基本的にはほとんどの溶媒に
料は,ほかの天然色素よりデルタE値が低く最も
不溶性である。親水性にするには,通常ポリソル
安定しており,FD&C yellow5と同等であった。
ベート80を用いて乳化するが,乳化したターメリ
Hansen社 は,CapColor技 術 を 用 い て 天 然 色
ックは光にさらされると退色する。ここで,マ
素をマイクロカプセル化して,安定性が高く,水
イクロカプセル化したターメリックが優位性を発
分散性の良い液状およびパウダー状の着色剤を供
揮すると同氏は言う。
給できる。この技術は,アナトーやパプリカ,カ
乳化ターメリックとマイクロカプセル化ターメ
ルミン,βカロテン,クロロフィルに適用されて
リックについて,0.08%添加ソフトドリンクを調
いる。そして実用に際しては,光や熱,酸化に強
製し,強い光の条件下で比較実験をした。色調,
い耐性を持ち,広範囲のpH域(2.5∼8.0)で高い
色強度の変化を比色計のデルタE値で測定した
安定性を持ち,かつ鮮明な色調を有する天然着
結果,マイクロカプセル化ターメリック製品は色
色料である。CapColorsは液状のものや水で戻
強度や色調にほとんど変化がなく,乳化ターメリ
すもの,例えば砂糖菓子や飲料,シリアル,スナ
ック製品は退色が顕著であった。
ック,ベーカリー製品,乳製品,ドライミックス
典型的なソフトドリンク処方による別の実験で
などさまざまな用途に向いている。 (伊藤るり)
食品と容器
295
2011 VOL. 52 NO. 5
特別レポート
トイレタリー・化粧品業界における
注目市場と容器の関連性
超コンパクト洗剤がもたらす市場の変化
ンパクト型は3割近くを占めるに至っている。今
近年,生活用品のカテゴリーにおいて,従来の
年4月には,P&Gジャパンからも同様の「アリ
市場構成比を大きく変えたものといえば,衣類用
エールレポイオンコートジェル」が発売されてお
液体洗剤だろう。かねてより,その使い勝手やコ
り,しばらくこの勢いは止まりそうにない。
ストパフォーマンスの良さから,粉末に迫る勢い
花王,ライオン,P&Gジャパンの大手3社,
で成長してきた液体洗剤だが,2009年に花王から
また,ニッサン石鹸の「ウルトラファーファ」は
「アタックNeo」(写真1)
,2010年にライオンか
じめ中堅各社から続々と発売されている超コンパ
ら「トップNANOX」(写真2)など,すすぎが
クト洗剤は,その名の通り,容器も従来の半分以
1回で済む,節水・節電につながる,といったメ
下のサイズとなっている(1∼1.2kgが一般的な
リットを持つ,いわゆる“超コンパクト”型洗剤
通常の液体洗剤に対し,超コンパクト型は400∼
が発売されて以降,さらにその勢いは加速。経済
500g)
。「アタックNeo」の発売当初は,小型化,
産業省が発表した今年1月のメーカー出荷統計で
軽量化されたことで,小売店から陳列時のボリュ
も,粉末の規模を上回っており,今後ますますそ
ーム不足を指摘する声もあったが,現在では,コ
の差は顕著になってくるものと思われる。
ンパクトゆえのメリットをあらゆる場面で発揮し
また,液体洗剤全体の構成比においても,超コ
ているようだ。
あるメーカーでは「ついで買いや衝動買いする
消費者が増えている」と分析する。
「コンパクトな
ため,商品の持ち帰りが楽になり,特売や新製品
写真1(カラー写真をHPに掲載 C0014)
食品と容器
写真2(カラー写真をHPに掲載 C0015)
296
2011 VOL. 52 NO. 5
を目にしたときについ買ってしまう人が多いよう
ションが広がるなどアイテム自体は増加傾向にあ
です。収納場所も取らないので,家庭内にいくつ
るため,大きさや形状のみならず,商品特長を容
か在庫を抱えていても気にならないのでしょう」
易に認識させる工夫も今後の容器には求められそ
(某メーカー)。小型化,軽量化したことで,ティッ
うだ。
シュペーパーやトイレットペーパーと並んで,か
洗顔・クレンジングで泡で出るタイプが増加
しょく
さばる商品の代表的だった洗剤のイメージを払 拭
洗顔料やクレンジング料では,泡で出てくるポ
している。
ンプタイプの商品が肌に摩擦を与えないと人気を
店頭でも,小型化で空いたスペースを活用する
集めている。ユニリーバ・ジャパンが今春発売し
機会が増えるなど,売り場を効率的に使っており,
た「ダヴプロエイジマッサージムース泡洗顔」の
洗剤のみならず,関連分野のマーチャンダイジン
ように“泡洗顔”を前面に打ち出している商品で
グにも好影響を与えているようだ。
は,マッサージに適した弾力のある泡が出てくる
小型化で容器面でも新たな競争
ことが大事なポイントとなる。原液成分の配合と
従来の洗剤市場では,いずれも似かよった形状
容器内部のメッシュで泡の質が決まるため,各社
そろ
の製品が揃っていた。各社の間では洗浄力など性能
がそれぞれ工夫を凝らしているようだ。美容意識
面で競うことが多かったが,小型化とともに独自性
の高い女性の間では,マッサージをしながら洗う,
ぼっ
のある容器の採用という新たな競争も勃発してい
泡パックをするといった使い方が広まっているこ
る。
とから,今後も泡の訴求は重要なトレンドになる
同じ用途の商品がそれぞれ違う形で売り場に並
と見られる。
ぶため,容器デザインには消費者に超コンパクト
クレンジング料では,ユニリーバ「ダヴ」ブラ
洗剤であることを認識させるという重要なアプロ
ンドの「オイル泡クレンジング」
(写真3)や「リ
ーチが必要になってくる。また,香りのバリエー
キッド泡クレンジング」(写真4)が好調なほか,
コーセーコスメポート「ソフィティモ」も
2月より「スピーディ泡オイルクレンジン
グ」,「スピーディ泡リキッドクレンジン
グ」を発売した。この4品はいずれもヘッ
ド部分が大きいため,小さな力で楽に押す
ことができる。女性が使用する商品のため,
楽に押せるという点は大切なポイントとな
る。
小さな力で押せることがポイント
洗顔料やクレンジング料だけでなく,そ
の他の泡で出るポンプタイプの商品も,消
費者の声を受けて着々と開発,発売されて
いる。
牛乳石鹸共進社は,今春,ボディソープ
「カウブランド無添加泡のボディソープ」
(550ml)を発売した。「泡で出る大容量
のボディソープが欲しい」といったニーズ
く
を汲み取ったもので,1プッシュで泡が通常
写真3(カラー写真を
HPに掲載 C0016)
食品と容器
写真4(カラー写真を
HPに掲載 C0017)
297
の3倍(1ccから3cc)出るという業界最
大の吐出量が特長。容器のサイズが大きく
2011 VOL. 52 NO. 5
なったことで,密封性の確保やポンプの押しやす
発売された花王の「ブローネ泡カラー」(写真7)。
さなどが課題となったが,容器の提供メーカーと
手で泡をもみ込むという新提案で,瞬く間に市場
協働し,問題のないレベルに仕上げた。
を席巻。以降,同社の黒髪用「プリティア」やホ
また,泡の商品ではないが,力を入れなくても
ーユーの「シエロ」
,ダリヤの「サロンドプロ」と
使いやすい容器という観点から,小林製薬は,昨
泡タイプのヘアカラーの発売が続いた。その後も
年ヒットした衣類をひんやりさせる冷感持続スプ
シュワルツコフヘンケルの「フレッシュライト」
レー「シャツクール」をリニューアルした。新製
が参入するなど,もはや泡タイプのヘアカラーを
品として,マイルドミントの香りの「シャツクー
持たないメーカーの方が希少となっている。
ル女性用」(写真5)をトリガー式で発売したこ
当初,泡剤型には消極的かと思われた老舗のホ
とから,既存の「シャツクール」も,ワンプッシュ
ーユーは,昨年,容器を30回ほど振って立てた泡
式からトリガー式に変更(写真6)
。シャツ全体に
を手ですくう「ビューティラボふりふりホイップ
サッとスプレーするには,トリガー式が力もいら
ヘアカラー」を発売。従来の商品になかったかわ
ずに押しやすいとあって,バイヤーや流通関係者
いらしく派手な容器が話題をさらった。今春には
からも高い評価を得ているという。
より明るい仕上がりの「同シャイニーヘアカラ
楽しさ背景にヘアカラーでも泡が台頭
ー」(写真8),若年男性向けに「レクシィホイッ
今後,規模の拡大が見込まれる“泡”市場とし
プヘアカラー」を発売し,顧客層を広げている。
て,注目を集めているのがヘアカラーだ。洗顔料
さらに,マンダムも「ギャツビー」と「ルシード
やクレンジング料では,前述の通り,すでに肌へ
エル」から“ジェルをもみ込むと泡に変わる”と
のやさしさと洗浄力を両立させた泡タイプの人気
いう新商品を投入。使い始めはジェルなため,タ
が高まっている。泡質の良い固形石鹸が通信販売
レにくく,狙ったところを染めやすいという。
で空前のブームになったのは記憶に新しい。某ヘ
泡で出てくるヘアカラーは,かつても存在した
アカラーメーカーでは,成長を見込む泡市場をよ
が,泡の質や染まりやすさがネックになり人気が
り発展させていくには容器およびパッケージのデ
出なかった。しかし,昨今の泡タイプは,品質を
ザインが重要になると分析している。
改良し,格段に染まりやすくなった。さらにポイ
泡のヘアカラーブームの火付け役は,2009年に
ントは,ブラシではなく“自分の手で染める”と
ねら
写真5(カラー写真を
HPに掲載 C0018)
食品と容器
写真6(カラー写真を
HPに掲載 C0019)
298
写真7(カラー写真を
HPに掲載 C0020)
2011 VOL. 52 NO. 5
いう簡便さにあ
る。
「手に勝る道
具はない」
(某メ
ーカー)という
ように,面倒な
セルフカラーリ
ングがグッと身
近なものになっ
た。ヘアカラー
は「泡で出てく
る」だけでは飽
きたらず,自分
で振ったり泡立
てたりするとい
う“ユーザー参
加型”に変わっ
てきているの
写真8 「ビューティラボ ふりふりホィップシャイニーヘアカラー」
<シルキーアッシュ><ハニーレモン><アプリコットベージュ><ベビーピンク>
(カラー写真をHPに掲載 C0021)
だ。
泡タイプの台頭で,簡単さと楽しさが加わった
また,ジュジュ化粧品は今春の新ブランド「アサ
ヘアカラー市場。
「今後,市場の柱は,液状,クリ
ラク」にUVカット,化粧下地,ファンデーショ
ーム,泡タイプの3本になる。特に人口が減少す
ン,コンシーラーの4つの機能を兼ね備えた泡タ
る中『使ってみたい』と消費者に思わせる戦略が
イプのファンデーション「モーニングホイップBB
取りやすい泡タイプはまだまだ伸びるはず。その
ファンデーション」をラインアップした。
ためには思わず店頭で手に取ってしまうような容
クチコミなどを通じて,ヒット商品が生まれや
器デザインが重要になってくる」
(同)という。ホ
すい化粧品だが,今後はBBクリームの泡タイプ
ーユーの「ビューティラボふりふりホイップヘア
に注目してみるのも面白いだろう。
カラー」はまさにそこを着眼点にヒットを飛ばし
継続的に行われる環境配慮への施策
ているわけである。
容器に関連した環境への配慮も,各企業がCSR
BBクリームの泡の動向に注目
の観点からも重要視している。
*
さらに,最近では,BBクリーム にも泡タイプ
花王やライオン,P&Gなど大手メーカーが中
が登場し,注目を集めている。日本ロレアルは
心になって構成する日本石鹸洗剤工業会では,以
「メイベリンニューヨーク」の「ピュアミネラル
前より製品の濃縮化やコンパクト化,あるいは容
BB」シリーズから「ピュアミネラルBBムース」
器の詰め替え用の発売により,廃棄する容器包装
を発売。整髪料や日やけ止めではよく見られるム
のプラスチック使用量の削減に努めてきた。
ース(泡)だが,メイクでは,一部の下地で採用
その結果,2008年におけるプラスチック使用量
される程度にとどまっており「ムース形状のBB
は前年より5%減の60万8000トンとなり,1995年
アイテムは世界初。空気を多く含むため,肌にな
比で16%の削減に成功した。各企業の動向として
めらかに伸びて“極薄づき”になる」
(担当者)と
は,花王が「ビオレu」の詰め替えパウチ全体の
いう。
寸法を見直したほか,注ぎ口の形状を工夫するこ
とで樹脂の使用量を6%削減。ユニリーバ・ジャ
*
:美容液,ファンデーションなどが一つになったクリ
ームで,メイクアップがこれ一つで仕上がる。
食品と容器
パンは「ラックススーパーリッチシャイン」の詰
299
2011 VOL. 52 NO. 5
め替えパウチの構造を変更することで使用量を20
チック,紙とプラスチックという具合に異なる材
%削減している。P&Gジャパンは2007年より食
質を組み合わせた容器には材質別に分離して破棄
器用洗剤「ジョイ」のボトル本体の50%にリサイ
しやすい構造になるよう工夫している。
クル樹脂を使用している。
また,コーセーグループでは,自社製造してい
また,前述の超コンパクト洗剤も,そのコンパ
る一部の容器について,プラスチックの成型時に
クトさからプラスチック使用量の削減に加え,生
発生した残材を再原料化する装置を独自に開発し,
産, 輸 送 時 のCO 2 削 減 に 貢 献 し て い る。 花 王
キャップやサンプル容器の原料として積極的に使
「アタックNeo」は製造から廃棄までの全行程に
用している。
おいてCO2 排出量を21%削減,ライオン「トッ
市場の活性化と環境配慮を追求
プNANOX」はプラスチック使用量を30%以上削
トイレタリー・化粧品業界では,超コンパクト
減し,同じく全行程でCO2 の20%削減を達成し
洗剤のように,市場の活性化と環境への配慮を明
ている。
確に追い求めたものが存在する。特に現在は東日
また,化粧品メーカーではコーセーコスメポー
本大震災の影響から,省エネに対する意識が国民
トが1998年に親会社のコーセーが社内基準として
の間で高まっている。合成洗剤の排水が環境に与
「容器包装形態エコ基準」を制定して以来,省資
える影響云々は別にして,超コンパクト洗剤が節
源化への取り組みを続けている。
水,節電だけでなく,生産から輸送までの全行程
商品開発における企画設定エコ指針として「包
で環境への負荷を低減しているという事実がもっ
装材料のリサイクルユース,リユースしやすい仕
と世間に知れ渡れば,おのずと液体洗剤市場の成
様にすること」と定めており,容器や包装の素材
長は加速化されていくだろう。
に一層の配慮を施している。また,金属とプラス
(洗剤新報社 太田健一)
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《内容》
水の科学〔1〕水と生命の誕生と進化/〔2〕水の不思議:水と水溶液/〔3〕水の新たな利用法(機能水)とそ
の評価 水と食品〔1〕食品中の水の状態/〔2〕食品加工と水/〔3〕微生物と水/〔4〕調理と水の関わり/
〔5〕お茶類と水 水と生活・文化〔1〕日本人と水利用,健全な水循環を目指して/〔2〕水道水の安全性とおい
しさ/〔3〕容器入り飲用水の国際規格:食文化と商売の観点から
(1)
(2)/〔4〕おいしい水とまずい水(水質
・成分との関係)/〔5〕水道水とミネラルウオーターはどう違う?
−その境界をめぐって− 水と産業〔1〕清
涼飲料と水/〔2〕醸造と水/〔3〕水の新しい利用:精密洗浄用機能水と超臨界水/〔4〕海洋深層水/〔5〕紫
外線殺菌装置の現況 水と健康〔1〕体液とそのはたらき/〔2〕体液の代謝調節とその異常/〔3〕スポーツと
水/〔4〕肌と水
缶 詰 技 術 研 究 会 電話 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 ファックス 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
食品と容器
300
2011 VOL. 52 NO. 5
業
界
ト
ピ
◇家庭用ココア,新商品の寄与で微増
10年の家庭用ココア市場は,天候などの影響で
月により浮き沈みがあったものの,年間では前年
並みをクリアし微増で着地した。
家庭用ココアは,健康ブームで市場が盛り上が
った03年をピークにその後減少傾向となってい
たが,06年以降はほぼ横ばいと安定した規模で
推移している。商品はスタンダードタイプの「ミ
ルクココア」が中心だが,スティックタイプは好
調に推移。また,新たな切り口の新商品も登場し,
市場を活性化した。
1∼3月の伸びが市場をけん引
今シーズン(昨年末からの冬場)は,7∼8月
の記録的な猛暑に加え,シーズンインの9月まで
残暑が続いたことで,一部商品では販促を延期す
るなどスタートが遅れた。その後,10 ∼ 11月の
動きもやや低調。11月は前年,インフルエンザ
関連の研究成果が発表されたことなどから需要が
高く,その反動などで落ち込んだ模様。1∼3月
は気温が低かったことやバレンタイン需要などで
持ち直した。また,3月の震災後,家庭用製品を
中心に需要が高まり,通期では前年並みをクリア
し微増での着地となった。
商品では,スタンダード「ミルクココア」の大
袋タイプが引き続き売場の中心商品を占めている。
ただ,徳用タイプは依然として特売商材としての
販売が多く,「依然価格訴求が強く,動きが鈍か
った」(流通筋)状況。
個包装タイプは,分包やスティックなど様々な
形態で展開。ココアの個包装商材は分包タイプが
主流であったが,最近では縦型のスティックタイ
プのアイテムも増加。徳用タイプに比べてユニッ
ッ
ク
トプライスが高いなどの特性もあるが,スティッ
クの新商品などは好調に推移している。一方,ピ
ュアココアは前年並み∼微増での着地。月によっ
て変動はあったものの,年間を通してほぼ前年並
みの着地となった。家庭用ココアは,0.5%増の
168億円(出荷ベース)で着地。工業用を含む全
体では,0.4%増の222.3億円で着地した。
ココアパウダー供給量
10年(1 ∼ 12月累計)実績は,国内生産は22.5
%減の1万5,075トン,輸入は20.2%増の1万8,765
ト ン。 ト ー タ ル は 数 量 ベ ー ス で3.5 % 減 の 3 万
3,840トンとなった。輸入は1万8,000トン台に回
復しここ10年で最も高い伸びを示している。
原料は,カカオ豆,砂糖,粉乳などいずれも原
料高が続いている。特にカカオ豆は,昨年も相場
が高騰し,メーカーの収益を圧迫。各社値上げな
どは現在予定していないが,「値上げの前に特売
の是正が先決」(メーカー)との声もあり来シー
ズンへ向けて対応を検討していく。
今後の市場
今シーズンのココア市場は,猛暑や長引く残暑
などの影響が懸念されたが,後半気温が下がった
ことや,新商品の寄与もあり前年をクリアした模様。
長く横ばい傾向の続くココア市場だが,今シー
ズンは明るい兆しもあった。家庭用ココアは依然
としてファミリー層が中心だが,20 ∼ 30代以上
の“大人向け商材”が好調に推移し全体の需要を
底上げしているようだ。また,個包装タイプもラ
イフスタイルの変化などに伴い,今後さらに拡大
する見通しで,徳用タイプとは異なるより差別化
された提案が期待される。
(業界誌記者 稲野結子)
第1表 家庭用ココア・メーカー別実績
年度
メーカー
森永製菓
明治製菓(明治)
片岡物産
ネスレ日本
名糖産業
和光堂
日本ヒルスコーヒー
その他
合
計
2007 年
金額
シェア
6,800
40.9
4,850
29.1
2,970
17.8
930
5.6
170
1.0
150
0.9
90
0.5
680
4.1
16,640
100.0
ス
2008 年
金額
シェア
6,800
40.8
4,700
28.2
3,270
19.6
930
5.6
230
1.4
160
1.0
70
0.4
490
2.9
16,650
100.0
日刊経済通信社調(単位:百万円)
2009 年
金額
シェア
7,200
43.1
4,690
28.1
3,270
19.6
930
5.6
220
1.3
160
1.0
50
0.3
200
1.2
16,720
100.0
2010 年見込み
金額
シェア
7,150
42.6
4,600
27.4
3,400
20.2
1,050
6.3
180
1.1
180
1.1
50
0.3
190
1.1
16,800
100.0
注)1.年度は各企業決算年度 2.一部日刊経済通信社推定 3.金額は出荷ベース 4.ハウス,グリコはその他に合算
食品と容器
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「でも課長とは一蓮托生,逃げたりはしません
食の遠近画法
よ」
余 震
ご
みょう
○
とし
筆者は,偶々,大学キャンパス防災責任者とし
はる
五 明 紀 春
て十年ほど経つ。年一回の防災訓練の司令塔とし
(女子栄養大学教授)
て,消防署員の指導の下,マニュアルに従って,
「こんな大事なことを,上司の私に,何故,隠
事故発生,避難誘導,安全確保などの訓練を,型
していた? ホウレンソウ(報告・連絡・相談)
どおりこなして終わる。幸い,この間ずっと,何
は組織で働く者のイロハ,とあれほど口酸っぱく
事もなかったので,この防災訓練が実際に役立つ
言って来たじゃないか」
のかどうか,検証する機会はなかった。
「お言葉ですが,僕は現場の仲間たちと,課長
毎度,訓練の状況設定に,それなりの新工夫を
のあなたに何度も意見具申して来ました。でも,
こらしても,どうしても身が入らないのは己むを
そのうちそのうち,と握りつぶすだけ。このまま
得ないことだった。たぶん,起こってもいない事
放っておくといつか大変なことになると,あれほ
故を想定するのと,実際に発生した事故を目の当
ど申し上げて来たのに。ああ,どうすればいいん
たりにするのとでは,まったく異なった状況にな
です? こんなひどい事態になってしまって」
るのではないかと,参加者全員が暗黙裏に承知し
「いや,すまん。前言撤回。だけど聴きたいのは,
ていたからであろう。
こっちなんだよ。君,いったいどうすれば?」
防災組織の構築,連絡網の整備,避難通路の設
「もう駄目です」
定などは,未発の事故に向けてのリスク管理であ
「現場を一番よく知っている君たちの心配を,
る。しかし,勃発した事故に遭遇しての臨機即応
課長として,部長のお耳には入れて来たつもりだ。
の行動は,いくら防災訓練を積んだところで,本
だけど,上はぜんぜん動かなかったんだ」
質的に異なるのではないかと感じて来たのである。
「万事休す。弁解している事態ではありません。
リスク管理とクライシス管理とは別物であろう,
トップは何を考えて来たんですか?」
と。つまり,
「火の用心活動」と「火消し作業」
「絶対大丈夫,想定外,と上から言われれば,
の違いである。
一課長の立場で,それ以上は何も言えんよ。君た
実際,ご存知のように,その違いを検証する機
ちの提案は,膨大なコストがかかる話なんだから」
会が,当然のことながら,予告なしにやって来た。
「ですから,真面目に危機対策に取り組む者が,
防災訓練マニュアルどおりの整然とした退避どこ
現場には,もう誰もいません」
ろか,教室の学生たちは,めいめいの判断(動物
「組織である限り,トップの志の水準は超えら
的本能?)で,教室から賢明にも広場へと逃げ降
れないんだよ」
りた。防災責任者の出る幕もなく,学生たちは,
「僕らは,所詮,組織人間,命令に従う兵隊」
正しくも自己防衛に奔ったわけである。
「わが社はどうなるんだろう」
しかし,防災責任者の出番は,まったく予期し
「そんなことより,目の前の大火事を早く消す
ない状況下で訪れた。地震後の広域停電で,300
のが先決。ああ,それにしても,この事態は絶望
人を超える学生・教職員が,構内で一夜過ごすハ
的。もはや打つ手なし」
メになった。防災マニュアルにはまったく書いて
「君,本当にすまん。現場の生の声に代わって,
ない想定外事態である。膨大な寝食のロジステイ
部長やトップをもっと強く突き上げていればよか
ックスに,筆者は,徹夜で忙殺されることになっ
った。ああ,悔やまれる」
た。この際,肝腎なことは,マニュアルではなく
食品と容器
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「最終責任者の存在」であることが了解された。
か? 古代エジプトのピラミッドもその一つだろ
○
う。科学技術の進んだ現代,群盲よろしく,専門
時ならぬ集団宿泊は,それまでの防災訓練では,
家たちは,せっせと巨像を撫で回している。ピラ
まったく視野には入っていなかった事態である。
ミッド工法は,今もって古代史の謎であるようだ。
したがって,そのようなことが,起こるのか,起
しかし,誰かが,いつか作ったものにはちがいな
こらないのか,まさに「想定しようのない事態」
い。ピラミッド建造時代は数百年に及ぶから,当
であった。
時,その工法は着実に伝承されていたはずだ。し
しかし,この度の原発事故の要因である大津波
かし,いつしか途絶えて,今となっては誰一人知
は,前から当事者の視野の内には入っていたらし
る者がいない。不思議なことである。
い,と報道で知った。真相は「心配していたらキ
時折乗るジェット旅客機に,ふと古代ピラミッ
リがないので目をつぶった」ということらしい。
ドが重なる。この複雑にして精妙な巨大マシーン
いったん目をつぶれば,したがって,このような
がいつまで作られ続けるのだろうか,と。やがて
大規模な津波被災は「起こらないと想定」して,
その作り方は,誰にもわからなくなってしまうの
「費用対効果理論」に基づいて,すべてのことは
だろうか? そうならないため,最低限,その設
整合的に進行することになろう。
計,組み立ての技術者たちを養成し続けなければ
「人間の知性は,その固有の性質から,それが
なるまい。そんな教育システムが,果たして,こ
見出すより以上の秩序と斉一性とを,容易に事物
れから数百年も続くのだろうか?
のうちに想定するものである」
(ベーコン『ノブ
原発にもこれと似たような感慨を覚える。簡単
ム・オルガヌム』桂寿一訳,岩波文庫)
には息の根を止められない,まるで異次元の技術
これは,現に見ている世界だけで,全世界を断
らしい,と思える。この厄介な施設のお守り役に
定する誘惑に人間は勝てない,と言っている。不
人間はいつまで耐えることができるのか,と。
可知の事態を締め出す思考法は,一般に合理的か
○
つ理性的とみなされる。しかし,光だけを見て,
1755年リスボン地震では,津波犠牲者1万人を含
闇を見ることを忘れた,畏れを知らない思考法は,
む5万人以上が死んだ。推定マグニチュード8.7
傲慢の謗りを免れない。どころか,これほど現実
というから,この度の大震災級である。カトリック
離れした思考法もあるまい。いったい現実のすべ
国家の首都リスボンの祭日,多数の敬虔な信者た
てを透視する視力を,人間が持ち合わせているは
ちが命を奪われたことは,深刻な「精神的余震」
ずがないではないか。真の現実主義は畏れを知っ
となって,ヨーロッパ思想界を根底から揺さぶった。
ている。不測の事態こそ常に考慮に入れていなけ
啓蒙思想家ヴォルテール(仏1694-1778)は,
神(創
ればならないはずである。
造主)が慈悲深いわけがない,と主張した。ジャ
トップが「絶対安全」の旗を振れば,その途端,
ン=ジャック・ルソー(仏1712-1778)は,都市化
末端に至るまで,安心して腰を下ろしてしまう。
による人災とし,田園生活に還れと叫んだ。若きイ
それが組織防衛の生理であり,宿命である。そし
マヌエル・カント(普1724-1804)は地震のメカニズ
て壊滅的かつ悲劇的な結末を,上から下まで迎え
ム研究に没頭した。デカルト(仏1596-1650)が近代
ることになる。組織防衛が,組織を破壊する。ま
科学の基礎として打ち立てた「明証性・確実性」
さにパラドックスである。
の哲学も,この地震後には揺らぎ始めたと言われ
○
る。この度の震災の「歴史的余震」のマグニチュ
いったいこんなものを誰がどうやって作ったの
ード測定には,少し時間がかかるかも知れない。
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特別解説
食物成分の生理作用と機能性食品
−抗酸化活性と生理機能の探索−
い わ い・ く に ひ さ
東北大学大学院農学
研究科博士課程修了。
三菱化成株式会社入
社。青森県産業技術
開発センター,青森
県立保健大学大学院
健康科学研究科助教
授を経て現在,青森
県立保健大学健康科
学部栄養学科教授。
農学博士
岩 井 邦 久
く浸透してきたためにほかならない。特に,健康
1.はじめに
寿命延伸の目標のもと,生活習慣病の予防のため
がん
高齢化が進むわが国において,癌や生活習慣病
には適切な食生活,適度な運動,充分な休養が提
は深刻な問題である。特に,糖尿病や高血圧症な
唱されている。健康志向の高まりは,近年の売り
どは予備軍を含めると膨大な人数に達すると考え
上げは減少しているものの,ここ十数年にわたっ
られている。生活習慣病には不適切な食事,運動
て健康食品の市場が成長し,堅実な規模を保ち続
不足,喫煙や肥満などが関与しており,発症の低
けていることが何よりの証左である。
年齢化が進行していることには食事を中心とした
多くの生活習慣病では,過剰な活性酸素による
ライフスタイルの欧米化が原因と指摘されている。
酸化傷害がその発症にかかわっていることが明ら
そのため,食の安全・安心への関心の高さと共に,
かにされつつあり1),一次予防のためには活性酸
食が有する三次機能が注目されている。それは,
素の働きを抑える,すなわち抗酸化作用を備えた
食による疾病の一次予防の重要性が人々の間に広
食品が有用であるとの認識が広まり,抗酸化物質
に関する研究や食品の開発が盛ん
に行われている2)。また,機能性
の科学的根拠も求められるように
なっている。
そこで,本稿では生理作用を利
用した機能性食品について抗酸化
活性に焦点を当て,食素材の探索
と生理機能の解明について紹介す
る。
2.活性酸素と生活習慣病
癌や生活習慣病の発症には,
「活
╙
ᕈ㉄⚛
↢ ⚦⢩
㉄ ்ኂ
第1図 活性酸素の発生と細胞内の酸化傷害
食品と容器
304
性酸素」や「フリーラジカル」に
よって引き起こされる酸化傷害が
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かかわっている1)。
活性酸素とは大気
中の酸素よりも活
性化された酸素と
第1表 食品の機能
一次機能
栄養性
主栄養素(糖質,タンパク質,脂質),アミノ酸,有機酸
微量栄養素(ビタミン,ミネラル等)
二次機能
嗜好性
味(呈味成分)
,香(香気成分,アルコール等)
色・外観(色素,光学特性,形状等)
力学特性(粘性,弾性,歯ごたえ,舌触り等)
音響特性等
三次機能
生体調節機能性
抗変異原性,血圧調節,吸収・排泄,脂質代謝等
その関連分子の総
称であり,フリー
ラジカルとは「不
対電子」を有する分子や原子のことである。どち
成分が多数存在することが明らかになってきてい
らも化学的に不安定で非常に高い反応性を持って
る。これらは生理機能成分と呼ばれ,機能成分を
いるため,周りの物質を酸化し,細胞に酸化傷害
増加・濃縮するなどしてその有益な生理作用が発
を引き起こす。しかし,疾病の原因となるだけで
現しやすく加工された食品が機能性食品である
(第2図)。
はなく,ウィルスや癌細胞を死滅させ身体の防御
に寄与する働きも有する。ほとんどの生物では酸
4.地域食資源の抗酸化活性探索
素の利用過程において種々の活性酸素が生体内で
発生しているが,それらを消去する抗酸化ビタミ
抗酸化物質に関する研究や食品の開発では,新
ンや抗酸化酵素などの巧みな防御機構も備えてい
しい素材の探索が活発になっている。そこで我々
るため,健康な生体内で発生する活性酸素は必ず
は,地域の農水産物の有用性を探るために,抗酸
しも怖いものではない。しかし,疾病などによっ
化活性を指標としたスクリーニングを行った。す
て防御機能が弱ったり,外的要因により消去しき
なわち,抗酸化活性の強い農水産物を見いだし,
れないほどの過剰な活性酸素が生成し,その発生
その食品の生理機能探索や活性成分の検討を効率
と消去のバランスが崩れた時には生体膜や細胞を
的に進めるためである。
構成する生体内分子が損傷され,各種疾患が誘発
ここには,青森県特産あるいは特産化を進めて
される(第1図)。
いる食品のうち,農産物9品目の抗酸化活性を示
した(第2表)。抗酸化活性の測定にはさまざま
3.機能性食品と生理活性の研究
な方法があるが,簡易な方法として微弱発光を測
食品には3つの機能があり(第1表),その中で
定するXYZ-dish法3) を用いた。この発光は,大
も「健康の維持・増進」に関与する三次機能が注
久保ら4)が見いだした活性酸素,抗酸化物質,エ
目されている2)。特に,生活習慣病を予防する観
ネルギー受容物質の3物質が存在した時に生成す
点から,抗酸化作用に関する研究が盛んで,この
る現象であり,我々はこの原理を応用して多様な
機能を持った食品の開発が期待されている。
食品の抗酸化活性を簡便な処理で測定できる方法
これまで,非栄養素は人体にとって役に立たな
を確立した3)。ここでは標準物質として没食子酸
いと考えられてきた。しかし,食物
繊維は消化吸収されないが,腸内細
菌の栄養源となり,その二次代謝物
が身体に役立ったり,有益な腸内細
そう
菌叢を増加させたり,さらには物理
せつ
的性質により有害物質を吸着・排泄
するなど人間の生理状態に良い影響
を及ぼすことが明らかとなった。こ
のように生来の栄養素ではなくとも,
第2図 機能性食品の概念
人体にとって有益な影響をもたらす
食品と容器
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(GA)を使用し,試料の微弱発光量をGA相当
で抗酸化活性が認められたものはスルメイカの肝
濃度として抗酸化活性を表した。
臓 と 墨 汁 袋 お よ び ツ ル ア ラ メ(
可食部で過酸化水素(H2O2)に対する抗酸化活
)であり,魚類や貝類の可食部の抗酸
性の最も強いものはゴボウであり,次いでアピオ
化活性は強くはないことが明らかになった。イカ
ス,ナガイモの順になった。一方,非可食部では
墨汁には抗腫瘍活性があり5),ツルアラメはポリ
ナガイモ皮が最も強く,次いでゴボウ皮となった。
フェノールを豊富に含むことが分っていた。しか
ヒドロキシルラジカル(・OH)に対する活性も同
し,ツルアラメの生理作用に関する報告は少なか
様の傾向を示し,ゴボウとナガイモ皮に強い抗酸
ったことから,我々はその後も検討を進め,血糖
化活性が得られた(第2表)
。また,ゴボウの活
上昇抑制作用を見いだすに至った6)。
性成分は容易に水へ抽出されることも示唆された。
これら以外にも多くの果実類や野菜類の抗酸化
生体への影響はH2O2よりも・OHが大きいこと
活性を評価しており,ベリー類,ブドウ類,ハー
からゴボウの抗酸化性は有望であり,またゴボウ
ブ類などに既に報告されているような抗酸化活性
の活性に匹敵する強さのナガイモ皮も興味深い。
を認めている。果実や野菜類の活性には抗酸化性
ナガイモ皮を生で食する可能性は皆無であること
ビタミンやポリフェノールが関与しているが,現
から,加工産業で利用可能となれば,これまでほ
在,これらの抗酸化活性測定はORAC(Oxygen
ぼ廃棄されていたナガイモ皮を有効活用する新た
Radical Absorbance Capacity:活性酸素吸収能
な展開も期待できる。
力)法が主流になっている。これは,アメリカで
データは示していないが,水産物10品目の中
開発・改良されてきた方法で,食品中の抗酸化力
を分析する方法として優れて
第2表 農産物の抗酸化活性(μmol/g GA相当)
可食部
全体
いるとして欧米では広く認知
皮
H2O2
·OH
されている。日本においても,
H2O2
·OH
H2O2
·OH
つがる
0.296
0.626
0.371
1.029
1.572
3.055
さまざまな食品の抗酸化活性
ふじ
0.276
0.552
0.551
0.866
1.209
3.128
を評価するにあたって統一的
王林
0.349
0.645
0.556
0.887
1.530
2.815
な指標が求められていること
ニンジン
0.572
0.470
−
−
−
−
ニンニク
0.163
0.234
−
−
−
−
から,ORAC法の普及が図ら
大根
0.005
0.006
−
−
0.151
0.507
ゴボウ
4.483
8.866
−
−
15.983
8.226
果もこの方法での検証が今後
ナガイモ
0.822
0.063
−
−
17.075
7.677
必要である。
アピオス
1.448
3.562
−
−
−
−
データは 3 回測定の平均値を表示した。 −は測定せず。
第3表 ゴボウの水浸漬,煮沸による活性の変化(μmol/g GA相当)
条件
実
·OH
9.57(1.00)
21.74(1.00)
2分
7.11(0.74)
5分
煮沸
5.ゴボウの
抗酸化活性
ゴ ボ ウ(
)
H2O2
·OH
18.09(0.83)
0.44(0.05)
4.96(0.23)
6.26(0.65)
20.20(0.93)
0.90(0.09)
4.65(0.21)
10 分
5.90(0.62)
16.92(0.78)
1.00(0.10)
7.41(0.34)
した。ゴボウを食す際には,
30 分
6.01(0.63)
19.52(0.90)
0.96(0.10)
5.72(0.26)
水洗し,皮をむいた後に水に
5分
0.88(0.09)
1.69(0.08)
0.79(0.08)
2.07(0.10)
10 分
0.87(0.09)
1.34(0.06)
0.44(0.05)
1.47(0.07)
30 分
0.65(0.07)
1.42(0.07)
0.32(0.03)
1.77(0.08)
未処理
浸漬
浸漬液,煮汁
H2O2
れている。従って,上述の結
データは 3 回測定の平均値を表示した。
( )内数値は実の未処理に対する活性比を示した。
食品と容器
の抗酸化活性は水への移行性
が示されたことから,加工や
調理による活性の変化を検討
さら
いた
晒し(灰汁抜き),煮たり炒め
ることが一般的である。そこ
で水に浸けると,浸漬時間と
ともにゴボウの実の抗酸化活
306
2011 VOL. 52 NO. 5
性は減少した(第3表)。この時,浸漬液には茶色
と推察され,浸漬液に活性があることから,ゴボ
の着色が見られ,それは浸漬時間とともに濃くな
ウ自体だけでなく加工の際に発生する灰汁なども
り抗酸化活性も増大したことから,ゴボウの抗酸
抗酸化剤として活用できることが考えられる。ま
化活性にはこの褐色色素が深く関与していること
た,水に抽出されやすく熱で失活しやすいことか
が推察された。また,煮沸するとわずか5分で抗
ら,加熱などによる活性の低下を最小限に抑える
酸化活性は生実の10%以下となり,煮汁の活性も
こと,灰汁抜きにより流出する活性成分を有効利
時間とともに低下した(第3表)。従って,ゴボウ
用することなどが加工の際の課題である。
の抗酸化活性には水に容易に抽出される褐色色素
さらに別の方法で抗酸化活性を検討したところ,
がかかわっており,これは熱により分解または変
β-カロチン法で強い酸化抑制効果が見出された。
性し失活する性質がある。
また,電子スピン共鳴装置(ESR)を使用した
ゴボウにはビタミン類は少なく炭水化物が主成
ラジカル消去活性の測定では,・OHおよびスーパ
分であり,その多くはイヌリンである。昔からゴ
ーオキシドアニオンラジカル(O2 ̄・)に対してゴ
ボウは新陳代謝を良くする食品とされてきたが,
ボウ水抽出物の濃度依存的なシグナルの減弱が観
豊富な食物繊維が腸の作用を促し,大腸癌や動脈
察され,ゴボウにラジカル消去が認められた(第
硬化予防の点から注目されている。また,イヌリ
3図)。この様に,原理の異なる測定法で抗酸化活
ンは体内でブドウ糖に変換されないため高血糖に
性が認められたことは,ゴボウが抗酸化性に優れ
も有用である。ゴボウの熱水抽出物は肝障害を抑
ていることを示唆している。
制し,過酸化脂質を減少させ,その中にはタンニ
6.アピオスの生理作用
ンのほかにクロロゲン酸誘導体の1,5-ジカフェオ
イルキナ酸や1,5-ジカフェオイル3-サクシニルキ
次に,アピオスについて検討した。アピオス
7)
ナ酸などが含まれている 。これらのことから,
(
ゴボウの抗酸化活性はクロロゲン酸類によるもの
Medikus)はマメ科のつる性
植物で,3∼4mにまで伸び,葉は5∼7枚の複
第3図 ゴボウ水抽出物添加時の・OHおよびO2 ̄・のESRスペクトル
PBS:緩衝液,AsA:アスコルビン酸,BWE:ゴボウ水抽出物
食品と容器
307
2011 VOL. 52 NO. 5
葉で,5∼10cm間隔で地下茎の節が肥大してイ
理作用を検討した。青森県倉石産アピオスの一般
モとなる(第4図)。11月ころに成熟したイモを
栄養成分を測定した結果,アピオスはジャガイモ
じょ
食すことができ,ジャガイモと自然薯を合わせた
より大豆に近い成分組成であることが明らかにな
ような味を呈する。
り,大豆より低脂肪で,カルシウム,カリウムお
北米原産のアピオスは,青森県にリンゴが導入
よびビタミンCは大豆より多く,栄養素の点から
された際に苗木の土中に混じって日本へ入ってき
も健康的な食資源であることを改めて確認した。
たと考えられており,実際に青森県が栽培法を確
7.アピオスの血圧に対する作用
立し種芋を頒布している。星川らの研究8)や,栄
養価が高く身体に良いとの言い伝えがあることな
5%アピオス粉末食を自然発症高血圧ラット
どから,アピオスは健康食品として注目を集めた。
(SHR)に摂取させ,血圧の変化を測定した(第
また,ゲニステインなどの機能成分がアピオスか
5図)。その結果,加齢とともに上昇する血圧がア
ら見いだされており,便秘解消,産前産後の障害
ピオス摂取2週目から3週目にかけて低下傾向を
緩和,抗肥満効果,高血圧の解消,精力減退の克
示し,3週間後には非摂取(コントロール)より
服,肝臓疾患や腰痛緩和効果などの体験談もある
有意に8∼11%低下した。また,3週間のアピオ
が,根拠となる生理作用の科学的な報告は多くは
ス摂取で増加した血圧は,非摂取に比べて10∼30
ない。
mmHg(17%)減少した。この結果より,アピオ
そこで,我々は身近なアピオスに興味を持ち,
スが血圧の上昇抑制作用を有することを初めて明
抗酸化活性スクリーニングの結果を機にアピオス
らかにした9)。また,アピオス抽出物を経口投与
の有益性を科学的に解明することを目的として生
した場合でも10∼20mmHgの降圧作用が得られ
た。これらの摂取量を食事摂取量に換算する
と38∼115gとなり,有用性の実証には作用
成分や作用機序とともに,作用量と持続性な
どの解明が課題となった。
高血圧は動脈硬化に結びつき,心臓病や脳
卒中などをもたらす病態であり,日本には約
3,500万人いると言われている。高血圧には,
第4図 収穫したアピオス(A)と洗浄したアピオス(B)
(カラー写真をHPに掲載 C022)
複数の要因が複雑に絡み合い原因が特定でき
じん
ない本態性高血圧と,腎臓病や内分泌系の異
常が原因となる二次性高血圧があり,日
本人では95%以上を本態性高血圧が占
めている。その要因には遺伝因子のほか
に,塩分摂取過多,肥満,喫煙などの生
活習慣があげられ,若年化も問題となっ
ている。
血圧は,レニン-アンジオテンシン系と
カリクレイン-キニン系,さらにはプロス
タグランジン合成系などが相補的にかか
わり合って調節されている。アンジオテ
ンシン変換酵素(ACE)で生成されるア
第5図 アピオス食で飼育したSHRの血圧の推移
データは各群5匹の平均値±標準偏差を表示した。
食品と容器
308
ンジオテンシン-II(A-II)は血管を収縮
させる強力な昇圧物質であり,アルドス
2011 VOL. 52 NO. 5
テロンを介しナトリウムや水の貯蔵量を増大させ
察された。その一方,リンゴやシトラス由来ペク
ることで間接的にも昇圧に関与している。また,
チンではこれら以外にもアピオスとは異なるシグ
ACEはカリクレイン-キニン系にも働き,血管拡
ナルが認められたことから,アピオスF1は中性
張物質であるブラジキニンを分解する。従って,
糖が少なく,ガラクトースやキシロースの様な従
ACEの作用を阻害することはA-IIの生成とブラ
来のぺクチンに含まれている糖が欠如した新しい
ジキニンの分解を抑制することになり,血圧降下
タイプのぺクチン様酸性多糖と考えられた。この
をもたらす。そのため,ACE阻害剤は降圧薬とし
様に,アピオスから新規な酸性多糖が発見された
て臨床利用されている。降圧薬には他に,A-IIの
が,その活性は降圧作用を示すほどではなく,我々
働きを妨げるA-II受容体拮抗薬,ナトリウムと水
はその後の検討でより強いACE阻害活性を持つ
分の排泄量を増やし体液量や循環血液量を減らす
ペプチドを見いだした。
ことで血圧を下げる利尿薬,血管平滑筋細胞への
国内では青森から広まったと言われているアピ
カルシウム流入を防ぎ血管を拡張させて血圧を下
オスには元々食経験があったが,この試験でもア
きっ
しょう
げるカルシウム拮抗薬,末 梢 血管の収縮を抑え血
ピオスが成育に及ぼす悪影響はないことが推察さ
管を拡張することで血圧を下げるα遮断薬,心拍
れた。また,さまざまな効果が経験談として伝わ
数と心拍出量を抑えることで血圧を下げるβ遮断
っていたが,我々はアピオスの生理作用の一つと
薬がある。
して初めて血圧上昇抑制作用を科学的に示し,カ
また,高血圧に対する食生活上の注意点はナト
リウムの多さとACE阻害活性が関与しているこ
リウム摂取量の抑制であるが,ナトリウムの排泄
とを解明した。血圧が高いほど動脈硬化のリスク
を促すカリウム摂取の重要性も指摘されている。
が高まり,それに伴う心筋梗塞や脳出血,脳硬塞な
15mmolのカリウム摂取増加は血圧を1mmHg
どの冠動脈性疾患が引き起こされる可能性が高ま
低下させ,臨床的にもカリウム補給の降圧が認め
る。従って,アピオスの作用はこの悪循環を防止
られているからである。従って,アピオス摂取に
し得る作用であり,生活習慣病の予防に有益な作
よる血圧の上昇抑制には,カリウムの多さと他の
用を有する食資源であることが明らかになった。
そく
生理活性の関与が考えられた。
9.その他の活性と成果の利用
8.アピオスの作用成分の探索
本稿で紹介した抗酸化活性を有するその他の食
そこで,ACE阻害活性を指標にアピオスの降圧
成分を探索した。アピオス水抽出物をゲルろ過ク
ロマトグラフィーで分離した結果,分画物にはペ
プチドやタンパク質が少なく,酸性糖からなるF1,
中性糖が主体のF3,およびF3に若干のF1を含
んだ混合物のF2を得た(第6図)
。F2とF3に
は A C E 阻 害 活 性 が な く ,F 1 は C a p t o p r i l や
Lisinoprilに比較すると弱いながらも濃度依存的
なACE阻害を示したことから,酸性糖でできた
物質が降圧成分であることが予想された。
植物由来の酸性多糖の代表としてペクチンがあ
る。そこでアピオスF1,リンゴおよびシトラス由
来ペクチンの1H-NMRスぺクトルを比較すると,
アピオスF1にはガラクツロン酸やカルボキシメ
第6図 アピオス水抽出物のSephadex G-25
ゲルろ過クロマトグラム
チルなどペクチンで見られる主要なプロトンが観
食品と容器
309
2011 VOL. 52 NO. 5
資源について,我々はツルアラメに血糖上昇抑制
機能性とそれを実感できる製品設計が他との差別
6)
効果を見いだした 。また,青森県環境保健セン
化を図るためにも重要になる。消費者が健康に良
ターはナガイモ抽出物に抗インフルエンザウィル
い食品を食べたいと思うのは当然だが,身体に良
ス活性を発見し,その活性成分はDioscorin A様
いだけで売れる訳ではない。やはり味が良く,健
貯蔵タンパク質であることが弘前大学などの研究
康にも良い,そして便利な食品が好まれる。しか
10)
により同定された 。これらの知見は各食資源の
し,健康食品の中には効果がないだけではなく,
付加価値となるだけでなく,新たな応用分野を切
逆に被害を及ぼすケースもあることから,消費者
り拓く可能性も秘めている。
の眼は厳しさを増している。日本では特定保健用
この様に,我々は食品の三次機能に焦点を当て,
食品(トクホ)が最も信頼性の高い制度として認
新規な生理機能性およびその作用成分を研究した
知されている。しかし,2009年のトクホ市場規模
結果,青森県特産の農水産物のいくつかに抗酸化
が5,500億円なのに対し,健康食品市場はトクホ
活性と生活習慣病を予防し得る生理機能や有益な
の2倍の1兆1,130億円と推定されている。近年,
生理活性を見いだした。
消費者の意識の高さや見極めの厳しさと経済的状
アピオスに関しては,この生理機能を元に新規
況を背景に両者は縮小傾向にあり,今後,表示や
加工食品の開発が始まっている。アピオスは,今
宣伝のハードルが益々高まるとともに,効果のあ
まで一部地域でしか利用されておらず知名度も低
いまいな健康食品は淘汰されることは間違いない。
かったが,新たな機能性食品やその素材を求めて
しかし,高齢者を中心に人々の健康志向が消失す
いる消費者や企業もあることから,生産や製造が
るとは思われず,保健効果のニーズは根強くある
増大する可能性が大いにあると思われる。また,
ことから,それを適切に捉えることが市場活性化
この研究をきっかけに栽培も全県的に広がりつつ
のカギと考えられている。
あり,新たな本県の特産品となり得るであろう。
それと共に消費者ニーズはさらに多様化し,さ
一方,ゴボウやナガイモは既に特産品としての地
まざまな生理機能が求められる。しかし,厳しい
位を確立している。従って,この結果は生産や販
要求に応え得るのは科学的根拠に基づいた生理効
売での付加価値向上に役立つことが期待されてい
果であり,明確な安全性である。そのことからも,
る。この様に,抗酸化活性の探索とそこから始め
本稿で紹介した抗酸化活性の探索と生理機能の解
た生理機能の研究成果は,一次産業から三次産業
明はそれらの動向に合致しており,今後の機能性
に渡って「健康」という消費者が食に求めている
食品開発における貴重な種となり得るものである。
重要な要素を付加価値として付与することになっ
健康寿命の延伸には,食習慣をはじめとする適
た。
切な生活習慣を身につけることが非常に重要であ
とうた
とら
る。その上で,これらの機能性が人々の健康維持,
10.おわりに
特に高齢化社会に対応する『食と健康』に寄与す
機能性食品の開発においては,ニーズに合った
るものであることを期待している。
参 考 文 献
1)吉川敏一:フリーラジカルの科学, 講談社, 1997.
4)Yoshiki Y, Okubo K, Onuma M, Igarashi K:
2)Functional Food and Health, Shibamoto Y,
Chemiluminescence of benzoic and cinnamic acids,
Kanazawa K, Shahidi F, Ho CT eds., American
and flvonoids in the presence of aldehyde and
Chemical Society, Washington, DC, 2008.
hydrogen peroxide or hydroxyl radical by fenton
3)Iwai K, Abe K, Chung SK, Matsu H: XYZ-dish
reaction. Phytochemistry, 39, 225-229, 1995.
method as a new antioxidant activity assay using
5)Matsue H, Takaya Y, Uchisawa H: Antitumor
photon detection. Food Sci. and Biotechnol., 10,
peptidoglycan with new carbohydrate structure
513-520, 2001.
from squid ink. Food Factors for Cancer Prevention,
食品と容器
310
2011 VOL. 52 NO. 5
Medikus), a new crop, under field
pp.331-336, Springer-Verlag Tokyo, 1997.
conditions. Jpn. J. Crop Sci. 64, 323-327, 1995.
6)Iwai K: Antidiabetic and antioxidant effects of
polyphenols in brown alga
9)Iwai K, Matsue H: Ingestion of
in
genetically diabetic KK-Ay mice. Plant Foods Hum.
Medikus tuber suppresses blood pressure and
Nutr., 63, 163-169, 2008.
improves plasma lipids in spontaneously
hypertensive rats. Nutr. Res., 27, 218-224, 2007.
7)Lin CC, Lin JM, Yang JJ, Chuang SC, Ujiie T:
Anti-inflammatory and radical scavenge effects of
10)工藤重光, 加藤陽治, 伊藤聖子, 畑山一郎, 三上稔之,
Am. J. Clin. Med., 24, 127-137, 1996.
市田淳治, 奈良岡馨: ナガイモでインフルエンザ予
防! 生物工学, 87, 256-257, 2009.
8)Hoshikawa K, Juliarni: The growth of Apios(
別刷り合本をご利用下さい
食品加工における微生物・酵素の利用
<新食品編>
本書は既刊の「食品加工における微生物・酵素の利用<伝統食品編>」の姉妹編としてまとめたものある。 伝統食品編では,味噌,醤油,清酒,焼酎,納豆,漬物など伝統食品の製法や新しい機能などを紹介した。 本新食品編ではアミノ酸,新甘味料,新たな機能性食品の生産や利用をはじめ,麹菌や酵母など発酵微生物の遺
伝子解析,育種など,ポストゲノム時代へ向けたの新たな研究開発についても紹介した。ご希望の方は下記あてに
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B5版/本文104ページ 定価1429円+消費税
《内容》監修に当たって(日本大学生物資源科学部教授 春見隆文)/アミノ酸の生産と利用(日本大学生物資源
科学部教授 農学博士 森永 康)/シトルリン,オルニチン(協和発酵バイオ株式会社ヘルスケア商品開発セン
ター学術研究企画室マネジャー 農学博士 柴崎 剛)/醸造調味料とみりん(キリン協和フーズ株式会社食品開
発研究所主任研究員 井村聡明)/エリスリトールの特性と用途開発(三菱化学フーズ株式会社市場開発部第2グ
ループマネージャー 内田 実)/エリスリトールの発酵生産と浸透圧ストレス応答(日本大学生物資源科学部
農芸化学科教授 農学博士 春見隆文)/乳酸菌による保健効果(日本大学生物資源科学部専任講師 博士(農学)
阿部 申・日本大学生物資源科学部教授 医学博士 小田宗宏)/脱酸素低温発酵法による新たなヨーグルト製造
法∼伝統的なヨーグルトを科学することで誕生した新たな発酵方法∼(明治乳業株式会社食品開発研究所発酵乳G
堀内啓史)/食品とバイオフィルム(日本大学生物資源科学部専任講師 博士(農学)
古川壮一・日本大学生物
資源科学部准教授 博士(農学) 荻原博和・日本大学生物資源科学部教授 農学博士 森永 康)/麹菌の遺伝
子資源・遺伝子解析(東京農業大学応用生物科学部醸造科学科教授 博士(農学)
柏木 豊)/パン酵母のパン
生地中での働きと製品特徴および育種・開発(オリエンタル酵母工業株式会社食品研究所所長代理 渡邉 肇)/
醸造用酵母の多様性−ワイン酵母を中心に−((独)酒類総合研究所醸造技術基盤研究部門副部門長 農学博士 後
藤奈美)/乳酸菌の育種と分類((独)農研機構畜産草地研究所 博士(農学) 鈴木チセ)/ポストゲノム時代の
発酵産業−微生物の多様性と可能性(日本大学生物資源科学部農芸化学科教授 農学博士 春見隆文)
缶詰技術研究会
食品と容器
電話 03
(3663)
7251 ファックス 03
(3663)
7253
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2011 VOL. 52 NO. 5
業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より
業界の話題
ポイント=消えた缶詰が証明すること
給に向けて動いている。
(日食 2011/03/28 日付)
キリンビバレッジは「アルカリイオンの水」を
首都圏では,震災の影響で店頭から缶詰が消え
製造する御殿場工場をフル稼働。輸入ミネラルウ
ている。買い占めに代表される急激な需要増によ
オーターの「ボルヴィック」については発注を増
るものだ▼3月の缶詰週販データは,前年を3倍
やした。
以上上回る過去最高となるだろう。一昨年のイン
サッポロ飲料は,新商品の発売延期や製造計画
フル特需と比較にならぬ大幅増が確実だ▼保存性
の整理によりミネラルウオーターの製造を最優先
の高い食品の中でも,“栄養価”という優れた特
する生産計画に変更した。3月の国産ミネラルウ
性が缶詰にはある。保存剤を使用せず,加熱殺菌
オーターの出荷は現時点で前年比8割増で推移し
でパッキングするその製法は,体力維持が重要な
ているという。
災害時には最適だ▼直接的な被災地ではない首都
一方,輸入ミネラルウオーターの「エビアン」
圏で,一時的でも缶詰の在庫がほぼ底をついたこ
を展開する伊藤園は追加発注をかけながら,震災
とは,多くの意味で“残念”なことだ。だが,保
前に発注した商品で対応。大塚食品は「クリスタ
存食の常備が一般家庭に浸透していないことを証
ルガイザー」を製造する米国に増産の要求を出し
明しているともいえる。一過性の需要増でないこ
た。
とを願う。
容器・資材メーカー,安定供給へ全力 機械の稼
清涼飲料業界,「水」生産フル稼働 増産要請に
働時間に制約も
迅速対応
(日食 2011/04/01 日付)
食品業界を支える容器・資材メーカーは,製品
福島第一原子力発電所の事故により,東京や千
の安定供給に全力を挙げる。関東近郊の工場では
葉などの浄水場から放射性物質が検出されていた
徐々に生産が再開しているが,需要の増加に供給
問題で,厚生労働省,農林水産省,東京都などか
が追いつかない状況だ。商品ごとに細かく仕様が
ら水の増産要請を受ける清涼飲料業界は,安定供
決まっており,急な受注に対応が遅れるケースが
給に向けた活動に全力で取り組んでいる。国内生
目立つ。製造に必要な原料配送の遅れや計画停電
産品は,PETボトルなどの容器・資材不足や,計
の影響で,機械の稼働時間が限られることも資材
画停電の影響で工場の生産能力を最大限に生かせ
供給不足に追い打ちをかけている。一方,東北地
ない中でのフル稼働を実施する。また,輸入ミネ
方では稼働のめどが立たない工場もあり,復旧に
ラルウオーターを追加発注するなど,各社とも迅
はまだ時間がかかりそうだ。
速な対応をしている。
東日本大震災は,食品向け容器・資材の供給拠
サントリー食品インターナショナルは,継続し
点に大きな爪痕を残した。震災から3週間たった
てできる限りの生産を行っており,さらに稼働日
現在でも供給体制は整っていない。
の追加,稼働時間の延長などの努力で,3月(震
被災した東北以外のエリアでは,取引先からの
災後)は,前年比1.6倍の出荷をしている。4月は,
増産要請に混乱が続く。他エリアや関係工場から
1.5倍の出荷量が可能な体制をとる。
の調達体制を整えるが,物流の混乱などで原料の
日本コカ・コーラは,震災直後から水の全7工
確保すらままならない。計画停電の影響も大きい。
場で生産体制の最大化を実施。また,海外で生産
機械を安定的に動かすためには,停電による停止
したミネラルウオーターの輸入に関しては検討し
期間以上の“のりしろ時間”を要するものが多く
ている。
「増産したくてもできない」状況だ。
アサヒ飲料も地震直後から六甲工場と明石工場
被災企業は情報収集と現状把握に追われている。
で,水と茶系飲料を最優先で製造開始し,安定供
食品向け包装材を幅広く扱う大日本印刷は仙台の
食品と容器
312
(日食 2011/04/01 日付)
2011 VOL. 52 NO. 5
業界の話題
拠点(宮城野区)が被災。軟包装材や紙器の供給
用途開発の成果もあり,従来の米粉パン・ロー
が止まった。凸版印刷は被害のあった仙台工場(泉
ルケーキは,マーケットに定着した上,惣菜原料
区)で一部生産を再開。他の生産拠点を活用した
中心に米麺を製造販売する大潟村あきたこまち生
代替生産も実施する。段ボール製品を扱うグルー
産者協会は今春,大幅受注増となり,日本製粉で
プ会社の工場(石巻市)も復旧。共同印刷は茨城
は,吸油率が低くカラッと揚がる特質から「業務
県の2工場が被災。即席麺や菓子の包材を生産す
用揚げ粉や天ぷら粉の引き合いが急増」するなど,
る守谷工場は生産を再開したが,北茨城市にある
用途拡大している。
グループ会社の工場は操業を停止したままだ。
そこで,エースコックの「新麺組」
,日本ハム
段ボール・板紙製造のレンゴーは津波の影響で
のチルドパン惣菜,ニチレイフーズの冷凍用揚げ
仙台工場(宮城野区)の1階部分が浸水。当面の
衣など,加工食品メーカーの間で,さらにはガス
稼働は見合わせる。福島矢吹工場(西白河郡)で
トのパンケーキ,リンガーハットのギョウザなど,
も設備損壊の被害が出たが,現在は復旧した。ク
外食チェーンの間で,さまざまな取り組みがスタ
ラウン・パッケージは仙台工場(刈田郡)が被災
ートしている。
したが,外食向けの段ボール製容器や食品容器の
震災の影響で中断したものの,フードアクショ
供給に支障はない。
ンニッポン「米粉倶楽部」TVCMは今春,昨年
飲料容器にも大きな影響が出た。東洋製罐は
に続き2度目となり,放映中はスーパーに消費者
PETボトルや缶詰用の缶を作る仙台工場(宮城
の問い合わせが殺到。さらにコープネットでは「料
野区)が被災。海沿いに立つ工場への立入禁止が
理教室との連動で,米粉パウダーが完売した」と
ようやく解除され,被害状況の把握を進める。茨
し,家庭への浸透がうかがえる。
城の石岡工場,埼玉の久喜工場はインフラが整い
ただ東日本大震災発生後は,原料米生産に支払
次第稼働させる計画だ。
われる助成金が今後も継続されるか否か,さらに
キャップ製造の日本クラウンコルクは茨城の石
は地震や津波による水田被害はもとより,原発事
岡工場が,大和製罐は栃木の真岡工場がそれぞれ
故による放射能汚染もしくはその風評被害の規模
損壊。復旧への取り組みを進める。
が見えない中にあって,生産調整ありきの原料米
製造拠点が静岡にあり,大きな被害を免れた日
制度の存続を危惧する声も高まっている。
本テトラパックはメーカーからの増産要請に伴い,
だが震災の試練を経て,今後の食料安定供給や
工場を週7日24時間フル稼働させ紙パックの供給
環境保全の観点からも,コメの大切さが再認識さ
体制を整える。
れ,主食用だけでなく,多様な加工食品への応用
米粉マーケット,実用化へ動き出す 官民一体で
が可能な米粉は,重要な位置付けを占める可能性
の普及活動が奏功
(日食 2011/04/08 日付)
もある。一方マーケットでは目下,高付加価値素
【関西】TPP,東日本大震災被害といった影響
材の位置付けで多様な用途が開発されつつある。
懸念事項が出てきたが,マーケットは米粉の実用
ここは食品産業が担う分野だ。
化に向けて着実に動き始めている。小麦粉価格高
胃心伝真=日本神話の崩壊
騰の08年にスタートし,この間,官民一体となっ
(日食 2011/04/11 日付)
て実施してきた普及活動が功を奏し,
「3年前は
欧米をはじめ海外の日本食レストランはどこ
米粉そのものについて聞かれることが多かったが,
もガラガラで閑古鳥が鳴いているという。スー
最近は実際に何が作れるのかを問われるようにな
パーの食品売場も一部では,日本の食品を棚か
った」という業界関係者の声が,この流れを裏付
ら外す動きも出ていると聞く。一方,日本では
けている。
中国人など,こぞって多数の在日外国人が母国
食品と容器
313
2011 VOL. 52 NO. 5
業界の話題
へ帰国し,フードサービス業などへの影響も出
日本の食品産業における新製品開発は,まさに
ている▼それもこれも海外からは,もはや日本
将来のために食品科学と技術を含み改善,開発が
列島全土が,まさにチェルノブイリ化したもの
必至だ。
と見られているからだ。専門家は指摘する。自
アメリカから持ち帰った究極の食品開発である
然界に存在する放射線もあり,直ちに人体に影
レーション(軍事配給品)に,
私の知己である人々
響を及ぼすものではないとする数値は,相当な
は,その凄さに興味を抱いてくれたが儲からない
アローワンスをもって設定しており,過敏な反
といった。豊かな食生活に朽ちない食品開発コン
応を問題視する▼風評被害もグローバル化する
セプトを望むことはコスト高になるのか。食品開
今日,日本政府の情報開示のまずさ,対外的メ
発のコンセプトの違いに賛同をもらえなかった。
ディアの一貫性のない報道スタンスも問われる
バブルを経て,本物のグローバル化は食品産業か
▼衛生水準が高く,味覚バランスも良い日本の
らであるはずなのだが。
食品は,世界で極めて高い信頼性がある。それ
今回の大震災でのつらい体験で,明確な加工食
が今,危うくなってきたのか。とすれば官民挙
品開発のコンセプトを再考する時が来たと信じて
げて正しい理解を求めなければならない。日本
止まない。食の開発の新しい時を目指す新製品が
神話の崩壊を懸念したい。
望まれている。
食は国民を守るためのもの 大震災を機に商品コ
物資不足,インフラ問題,豊かなコンビニ主導
ンセプトを再考
(日食 2011/04/13 日付)
の商品開発の産物は,被災地に日配として満足に
巨大地震によって,東北沿岸地域,千葉,鹿島
届けられない。個別のパッケージマテリアルも不
地域を中心としたさまざまな食品製造会社の工場
足している。
が被災した。
食は国民を守るためのもの。国防,国策,法律
食品製造に欠かせない添加物メーカー・素材メ
という3つの概念である的確な判断基準はわが国
ーカーにかなりの被害が出て供給不足となり,多
では明確にしていない。
くの食品会社の資材調達部がそれらの不足と確保
国防は,国民と国民の健康,食生活の安全。国
という難題を抱えた。
策は国際社会と比較してどのような問題を含んで
一方では,保存性の高い加工食品を製造する際,
いるのか。日本の法律,現行の食品衛生法,安全
インフラの打撃により製造ができない。いわゆる
基本法はこれでいいのか。混とんとした食品安全
品不足が起きている。しかし,一般消費者には知
性を明確に確立しなければならない。
る由もなく,他の大きなトラブルなどでメディア
食品ニューテクノロジー研究会講演:食品産業技
は伝えないからだ。
術総合研究機構理事,食品総合研究所所長・林清
被災者の人々の食の厳しさをマスコミは次々と
氏
報道している。飽食の徒になりきっていたわれわ
◆「食品総合研究所の向かうところと最新のト
れに,それはまさに第二次世界大戦直後のヒモジ
ピックス 超高齢社会におけるニーズに対応」
サと食べ物不足・空腹の悲惨な様相にオーバーラ
わが国の高齢化率は2010年には23.1%に達し,
ップされる。
2035年には34%にまで増加する。先進諸国でも飛
今,大災害によって調理済みの便利な食事がも
び抜けて高く,この高齢化が労働人口の減少をは
っとも要求されている。地産地消も良いことであ
じめとする社会システム変革の根源である。高齢
るが,有事にも耐えうる加工食品開発の本髄を見
化は,近代社会の発展・成熟における必然的な現
直すべきだ。
象である。社会の成熟に伴う高齢化は,医療費の
(日食 2011/04/18 日付)
着実な増加をもたらしているが,社会的負担にも
食品と容器
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2011 VOL. 52 NO. 5
業界の話題
限度があり,治療から予防へとパラダイムシフト
質管理技術,ガス置換包装などの保存技術,機能
する必要がある。予防にかかわる科学・技術を発
性食品開発,発酵・醸造技術,食嗜好(しこう)
展させるためには「食と健康」の科学的解明が重
の計測技術,環境技術などの点で技術的に優位で
要である。
ある。弱点としては,国際規格化・標準化への対
食の重要性が叫ばれる一方,食料自給率は41%
応体制が脆弱なことや世界人口の4分の1を占め
と低迷している。未利用のまま廃棄される食料は
るイスラム社会への認識不足がある。遺伝子組み
3割に達している。食べ残しが28%,手つかず食
換えなどの革新技術に対してパブリックアクセプ
品が11%と,食べられるのに廃棄された食品は4
タンスが低いことや食品添加物,残留農薬などの
割を占める。朝食は小中学生の学力にも影響を及
食品規制が極めて厳しいということもデメリット
ぼすほか,成人の健康維持に重要であるが,20代
である。
男性では週2回以上欠食する割合が3割に達して
独法などの公的研究機関には,民間企業の研究
いる。誤った食情報も氾濫(はんらん)し,過大
活動では対応が困難な分野の研究,産学官の共同
に悪い・良いとされる食品があり,フードファデ
研究の推進,さらには急速に進展して国際対応が
ィズムとして警鐘が鳴らされている。さらに,若
求められている。とりわけ,世界少なくとも東南
い女性のヤセ願望の結果,低出生体重児の増加と
アジアのデファクトスタンダードとなりうる規格,
それに伴う疾病が問題となりつつある。
基準の策定のリーダーシップが求められている。
食品分野における研究,技術開発に国境はなく,
抗加齢効果が期待されている抗酸化能の場合では,
日常的に世界との競争にさらされており,ネスレ,
食品総合研究所,健康・栄養研究所のほか民間を
ユニリーバ,ペプシコなどの世界企業が世界の食
含めた13機関が結集し,ORAC測定法における測
品市場を席巻しつつある。世界トップクラスと肩
定値のバラツキ要因を明らかにし,国際的に認め
を並べる食品企業も存在する一方,中小企業が98
られる誤差範囲内に収まるよう測定法を開発し,
%を占めており,就業者数は全産業の13%,売上
マニュアル化した。妥当性が確認された分析法に
げは8%である。食品研究を支える研究・技術陣
より測定値が担保されることから,商品への抗酸
としては,圧倒的多数の者が企業に属しており(約
化能の任意表示が可能となりつつある。また抗酸
1万4,000人),次いで大学(1,000人),公設機関(800
化能の摂取基準の策定に不可欠な国産農産物の抗
人)であり,独法(独立行政法人)には400人程度,
酸化能データベースを作成するとともに,本測定
そのうち食品総合研究所には100人である。大多
法を東南アジアのデファクトスタンダードとなる
数を占める企業における食品研究の特質としては,
よう海外食品研究機関との連携を調整している。
実施割合が高いにもかかわらず脆弱(ぜいじゃく)
嚥下(えんげ)困難者用食品の基準策定に関して
である。
も,基準策定に向けて関係機関と調整中である。
食品分野では,全く新しい技術やブレークスル
先進諸国だけでなく,発展途上のアジア諸国に
ーとなる技術は少なく,新技術がドライビングフ
おいても,40年遅れでわが国と同じパターンで高
ォースとはなりにくい。一方,人口構成の変化,
齢者比率が増加することから,わが国は世界を一
ライフスタイルの変化に呼応した新たなニーズが
歩リードし,超高齢社会を背景に開発された技術
常に生じており,利便性向上,品質劣化防止,賞
は世界へ展開でき,世界をリードすることも可能
味期限延長,品質管理技術向上などのニーズに応
である。そのためには,国境を越えた基準策定も
じた技術開発が中心である。技術に裏付けられた
重要な要素であり,産業界,研究機関,行政組織
高い品質を評価する消費者の存在が大きな影響を
が一体となり取り組むことが強く求められている。
及ぼし,わが国の研究開発は欧米先進国と比べ品
食品と容器
315
2011 VOL. 52 NO. 5
今月の統計
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食品と容器
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今月の統計
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食品と容器
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最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝバイオマスからエタノールの製造動向
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ɜព៥ɝ微生物試験法標準化の動向と国際整合性
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ɜព៥ɝ特集―食の安心のために∼なくならない異物混
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糖値測定装置の開発とその応用
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色の客観評価を目指して
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ɜព៥ɝ特集1―食品工場の衛生管理技術―
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新動向
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予防の3原則編−―
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ɜព៥ɝトレハロースの新たな生理機能−抗メタボリッ
クシンドローム作用−
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ɜព៥ɝ特集―食品微生物検査の技術動向―
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2011 VOL. 52 NO. 5
最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝ特集―天然系甘味料の機能性―
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ɜព៥ɝ特別企画/豆乳市場と新製品開発・製造技術/
成長を続ける豆乳市場,新分野の開拓に期待
Beverage JapanᶬƉ351 ¶º᷾¸±ᶨ'²²¯µᶩᶮ
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ɜព៥ɝ2010年輸入酒市場 品目別・銘柄別動向(1)
/ワイン市場は堅調に推移,低価格化も底打つ
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ɜព៥ɝアイスクリーム市場,4,000億円突破確実に/
前年の異常値背景に各社予算策定に苦悩
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ɜព៥ɝ微減となった10年の緑茶市場/生産量も減少
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ɜព៥ɝ≪データで見る≫10年ビール類の地域別容器・
タイプ構成比/容器別で業務用樽と缶の存在感増す
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ɜព៥ɝ特集/市場は堅調だが消費は今一歩/冷凍食品
業界の消費活性化策/有力メーカーの商品政策を探
る
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ɜព៥ɝ 3年ぶりに回復したPETボトル飲料/ハード
ル高い今期,さらなる活性化が不可欠
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ɜព៥ɝ鮪缶市場“地殻変動”加速の核心に迫る/輸入
新記録で国産急減,大震災の影響深刻
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ɜព៥ɝ特集1―すっきり,さわやか飲料開発―
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食品と容器
ɜព៥ɝレトルト食品の過去,現在,未来について
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319
2011 VOL. 52 NO. 5
最近の技術雑誌から
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ɜព៥ɝペットフード市場,シニアカテゴリー好調/高
齢化・健康ニーズの商品開発が奏功
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ɜព៥ɝ特集2―食品の殺菌技術―
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ɜព៥ɝ特集1 ―食と包装のコスト&品質マネジメン
トは今!―
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ɜព៥ɝ2010年百貨店歳暮商戦,酒類・食料品ギフトの
動向∼東京・大阪・名古屋地区∼
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ɜព៥ɝ特集─ガラスびん/16年ぶりに市場伸長 市場
拡大にはずみをつけられるか?─
Beverage JapanᶬƉ351 ´º᷾µ¹ᶨ'²²¯µᶩᶮ
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ɜព៥ɝ消費者に節約疲れ 手作り志向を重視する動き
の高まり−平成22年度第2回「消費者動向調査」の
結果−
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ɜព៥ɝ特集─注目される包装機械─
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ɜព៥ɝ研究報文/包装商品の開封応力メカニズムの解
析とその制御方法
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ɜព៥ɝ特集2 ―ヒント大収穫!/食と包装の展示会
ルポ(第45回スーパーマーケット・トレードショー
2011)―
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ɜព៥ɝリサイクル/世界で進むPETボトルのB to B
リサイクル
Beverage JapanᶬƉ351 ´·ᶨ'²²¯µᶩᶮ
ɜព៥ɝ特集 ―ISO22000・FSSC22000の適正運用と認証
動向―
食品と容器
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320
2011 VOL. 52 NO. 5
最近の技術雑誌から
○菓子類に含まれる水分の役割
海
外
Water in Confectionery
編
R.W.Hartel
………………………………………28∼30
○海産物に対する消費者の意識:知識と行動の
ギャップ
邦文の題名は内容に従って付けてありま
すので,原題と異なる場合があります。
Cosumers and Seafood : The Challenge of Matching
Beliefs with Behaviour
Dr Z.Pieniak and W.Verbeke
…………………32∼34
○生合成による持続可能な植物ガムの生産
Sustainable Production of Plant Gums by
Biosynthesis
Food Engineering & Ingredients (U.S.A.) Vol.35
Oct. (2010)
Dr N.Geshi ………………………………………35∼37
○パン酵母菌による食品のアクリルアミド生成
○米国における食品照射の概況
の抑制 Food Irradiation : An Industry Perspective
Using Baker's Yeast to Reduce Acrylamide
S.Ehling et al. …………………………………… 6∼10
Formation in Foods
○食品中の食中毒菌迅速検査装置
A.Chhun and Dr J.Husnik ………………………38∼40
Mammalian Cell-Based Sensors : A Rapid Screening
Tool for Pathogens and Toxins in Food
The World of Food Ingredients (Neth.) Dec.(2010)
P A.Bhunia ………………………………………15∼17
○ 2011年,市場革新のためのトップ10トレンドキー
○一考要する不正食品の横行
ワード
Defining Food Fraud and the Chemistry of the
Key Trends to Win in 2011
Crime : An Overview
L.A.Williams ………………………………………10∼14
Dr J.Spink and Dr D. C.Moyer …………………26∼28
○EUの健康効能表示について ○エネルギー飲料に使用されている主要成分の効果と
How to Beat EFSA
安全性
Dr.J.Gruenwald
Energy Drinks
Dr E.Duchan and N.Patel ………………………30∼33
Naming as a Key Ingredient
○食品の性状特性と受容性
A.Kirk
Colloidal Aspects of Texture Perception
T.v.Vliet
…………………………………16∼19
○キー成分へのネーミングの方法
……………………………………………20∼23
○2010年,減塩・持続性などのキーとなる成分
…………………………………………38∼42
2010-The Key Ingredients
R.Wyers
Food Engineering & Ingredients (U.S.A.) Vol.35
Nov. (2010)
…………………………………………32∼39
○脳撮像テクノロジーを活用した肥満対策 Does Obesity need Brain Surgery?
○プロバイオティクスの役割
H.W.Hoogenkamp ………………………………56∼59
Probiotics―Do They Work?
○リスクを低減する体重管理法
Dr E.Weichselbaum ………………………………6∼8
Weighing in on Claims
○コエンザイムQ10による食品の機能強化 C.A.Soltis …………………………………………60∼63
Enrichment of Foods by Coenzyme Q10
○トマトを使用した味覚の強化
Dr I.Pravst et al. …………………………………10∼13
Taste Enhancement from Tomatoes
○酵素による栄養補助食品素材の合成
S.Bernhardt ………………………………………64∼65
Enzymatic Tailoring of Nutri-Functional Food
Ingredients
A.S.Meyer and J.D.Mikkelsen …………………14∼17
Food Manufacture (U.K.) Vol.86 Feb. (2011)
○全粒に含まれる植物化学物質の健康効能
○食品安全リスクへの対応
Health Benefits of Whole Grain Phytochemicals
We've Got You Covered
Dr.R.H.Liu …………………………………………18∼22
R.Pendrous ………………………………………34∼35
食品と容器
321
2011 VOL. 52 NO. 5
最近の技術雑誌から
Prepared Foods (U.S.A.) Vol.180 Feb. (2011)
○免疫機能改善に効果のある機能素材 ○ソースおよびマリネの将来動向
Building a Better Defense System
Directions in Sauces and Marinades
L.M.Ohr ……………………………………………67∼72
K.Jankowski ………………………………………13∼20
○食品中のグルテン検査法
○甘味飲料税が肥満に及ぼす効果
Testing for Gluten in Foods
Food Tax Impact on Obesity
N.H.Mermelstein …………………………………74∼80
T.A.Smith et al. …………………………………25∼32
○消費者が望む飲料トレンドの傾向
Food Engineering (U.S.A.) Vol.83 Feb.(2011)
Beverage Trends : Consumers Want It All
○稼働を円滑にする食品グレードの潤滑剤
C.Dieroff …………………………………………49∼55
Keep the Gears Running
○着色料市場のトレンド
W.Labs ……………………………………………39∼45
Trends in Global Colorings
○省エネ効果が大きいプラントの新照明システム
C.D.O'Donnell ……………………………………57∼60
The Case for High Benefit Lighting
○天然着色剤の処方
J.Koel
……………………………………………47∼56
Formulating with Natural Colorings
Beverage Worlds (U.S.A.) Vol.130 Feb.(2011)
……………………………………………65∼76
○躍進するエネルギーショット飲料
Take a Shot
Food Processing (U.S.A.) Vol.72 Feb.(2011)
H.Landi …………………………………………100∼102
○焼成食品用素材の動向
○軽量化が進むクロージャー
Baking for the Future
M.Anthony
Weight Watchers
…………………………… WF-3∼WF-11
A.Kaplan …………………………………………… 104
○業績・生産情報端末器としてスマートフォンを利用
There's an App for …That? Beverage Industry (U.S.A.) Vol.102 Feb. (2011)
B.Sperber …………………………………………51∼55
○市場拡大が進む機能性プロテイン飲料
New Formulations Expand Protein's Growth
Food Technology (U.S.A.)Vol.65 Feb. (2011)
J.Jacobsen ………………………………………14∼17
○消費者が求める調理済み食品
○肥満に対する飲料業界の取り組み
Serving up Convenience
Addressing Obesity through Formulation,
M.E.Kuhn …………………………………………28∼36
Innovation
○食品病原体の迅速検査法
J.Jacobsen ………………………………………22∼26
Rapid Pathogen Screening Tools for Food Safety
○成長著しいシュリンクおよびストレッチラベル
A.K.Bhunia ………………………………………38∼43
Growing Shrink and Expanding Stretch Labels
○食品のトレーサビリティー向上を重視した新食品
K.Rehan
安全法とその運用 ○脳の健康に効果のある機能性成分
New Food Safety Law Addresses Product
Thinking About a Longer,Brighter Future
Traceability
J.Zegler ……………………………………………50∼54
K.Nachay …………………………………………44∼45
○味覚,色,機能性をミックスした野菜ジュース
○食品タンパクの不正混入検出と防止
Vegetables Get Juiced for Creativity
Preventing the Adulteration of Food Protein
L.Sichtermann …………………………………………56
…………………………………………40∼42
J.C.Moore et al.
……………………………………………46∼50
The Canmaker (U.K.) Vol.24 Mar.(2011)
○味,機能,栄養強化による乳製品の開発
○成長が続くアルミボトル缶市場
Finding New Ways to Use Dairy
Growing Market
D.E.Pszczola ……………………………………53∼65
D.Searle
食品と容器
322
…………………………………………30∼32
2011 VOL. 52 NO. 5
我が家の作り方は極めて簡単である。摘んだ若
野菜・果物を巡って
葉はゆでてあく抜きをし,刻む。上新粉を練って
少量の砂糖を加えて蒸す。よもぎを混ぜ,摺りこ
ぎ棒を用いてよく搗く。餡を包んででき上がりと
いう方法であるが,美味しく味わったことである。
草餅に用いる小豆餡は漉し餡にすると上等な雰
囲気になるが,どちらかと言えばつぶ餡が好みに
(第二十九話)
よもぎを摘む
合ったので,また手間も少なくて作れるので,専
らつぶ餡入りの餅とした。しかし,時には漉し餡
入りと二種類の草餅を作り,気分が豊かになった
ことである。小豆は圧力鍋で煮ると短時間に仕上
がって具合がよかった。この圧力鍋は結婚した折
に,恩師から頂いた貴重な品である。当時65歳
を過ぎていた恩師が結婚生活を始めた頃に購入し
た鍋であるとのこと。したがって,昭和初期の製
品である。長年愛用したとのことであるが,奥様
もこの圧力鍋を使わなくなったので,活用して欲
しいとのこと。我が家が2代目となったのである。
よし だ
現在,一般家庭で用いている圧力鍋とは構造が異
き よ こ
吉田 企世子
なり,実験室で大量の培養液などを殺菌する際に
(女子栄養大学名誉教授)
用いる機器と同じ構造である。その小型版といっ
た鍋で蓋には4個のねじと圧力計がついている。
よもぎの新芽が萌えると草餅の季節を迎える。
均一に密封するために,ねじを締める時には対角
今では草餅を家で作ることがなくなり,市販品を
線上に締めていくという極めて実験的な雰囲気の
求めるのが当たり前のようになってしまった我が
鍋であるが,300gの小豆を煮るのに丁度よい大
家であるが,結婚した数年間は手作りを楽しんだ
きさで使いやすかった。
ものである。庭のあちこちによもぎが萌えると,
20数年は活用したであろうか,蓋の内側に用
どうしても摘みたくなり,いそいそと草餅作りに
いるパッキングが痛んだので,購入しようとあち
取り組んだものである。いつか春の嬉しい行事と
こちと尋ねたが,入手できず,現在では市販され
して我が家に定着したのであるが,事情で庭が狭
ていないことが解って,使うのをあきらめたので
くなり,よもぎの姿が見られなくなって,草餅作
ある。鍋を廃棄するには残念で,いまだに保存し
りも我が家から消えてしまった。
ている。
子供の頃,端午の節句には必ず母親が作ったよ
新たに購入した圧力鍋は極めて単純な構造で,
もぎ入りの柏餅がおいしく,忘れられない味にな
使いやすく,いまではこの鍋を頻繁に活用してい
っているので,その季節が来ると,子供時代の潜
る。
在意識によるものであろうか,よもぎを摘みたく
よもぎには,もちぐさ,つくろいぐさ,もぐさ,
なる。
さしもぐさ,やいとぐさ,ゆむぎなどの地方名が
草餅は9世紀ごろから食べられてきたようであ
ある。栃木県の北の方ではもちぐさと呼んでいた。
る。3月3日の雛祭りや端午の節句には邪気を払
道路脇や河原の堤に自生していて,ごく普通の野
う力があり,寿命がのびるという中国からの言い
草である。キク科の多年生草本で地下茎が長くし
伝えもある。
っかりしている。葉の表面は深緑色であるが,裏
食品と容器
323
2011 VOL. 52 NO. 5
には白い綿毛があり,香のよい野草である。よく
よる損失は生じない。植物性食品に含有する鉄分
乾いた葉をもむと葉肉は粉末となり,葉裏の白い
は非ヘム鉄なので,肉や魚,卵などのヘム鉄と比
綿毛だけが残る。この残った毛を集めて灸に用い
較して吸収率が劣るが,胃酸により変化し,一部
るので,「もぐさ」とも呼ばれるようになったと
は吸収利用されるのであるから供給源となるので
のこと。「さしもぐさ」のさしは灸をすえる(さ
ある。葉酸が多いことも優れる点である。食物繊
す)の意味であるという。
維が多いことはいうまでもない。よもぎのコクの
よもぎを知らない日本人は殆どいないであろう
ような味わいは,たんぱく質やアミノ酸が多いこ
と予想していたが,若い世代では女性でも草餅は
とによるのであろうと推察される。5%以上のタ
食べているが,よもぎを見たことがないという。
ンパク質が含まれるのである。
地方に住んでいてもこのような野草に関心をもた
もっとも,草餅に用いるよもぎから栄養素を摂
ない世代が増えているようである。寂しい時代に
取しようという意識はないであろうが,野菜とし
なったと思うのは年齢によるものであろうか。
て活用することもあるので,その場合にはこれら
5訂増補食品成分表にはよもぎの成分が掲載さ
の栄養素の供給源として有効である。
れているが,非常に多くの栄養成分を含有するこ
ゆでたよもぎは,お浸し,和え物,炒めもの,
とに驚いた。ひときわ目立つのが,カリウム,鉄,
汁の実,菜飯など広く用いることができる。
β−カロテンなどである。カリウムは890mg/100
現在は各種の野菜が手ごろな価格で容易に購入
gの含量と示されている。しかし水によく溶けて
できる環境にあるから,地方でもよもぎを摘んで
損失が多いミネラルなので,あく抜きをすると含
料理に用いることはあまりないのであろう。しか
量が少なくなることは推察される。ところが,も
し,自然の恵みであるこのような野草にも目を向
と も と 含 量 が 多 い の で, ゆ で た 後 で も250mg
けたいものである。その季節ならではの味わいを
(残存率28%)で多いのである。成人の摂取目標
楽しむ心のゆとりが欲しい。と思いながらも自分
量は一日2,700 ∼ 3,000mgである。カリウムは多
の生活を振り返ると,久しくよもぎを摘む機会を
くの食品に含有するので容易に摂取できると考え
得てないのである。つまり,野草摘みを楽しむ
られているが,調理や加工過程での損失が多いた
ゆとりのない生活を繰り返しているのである。
め,実際には思っているほどは摂取されていない
3月11日の東日本大震災により大きな災害を
のである。β―カロテンは5,300μgの含量でほう
受けたこの機会に,自然の恵みを愛でる生活を見
れんそうの4,200μgを上回るのである。緑黄色
直したいものである。
野菜の代表ともいえる。カロテンは調理・加工に
東日本大震災から1カ月あまり経
私,震災の当日に前の任地から引っ越し,当会の業務
つが,被災地での様子を見聞きする
に携わることになりました。災難がやって来たとならな
につけ沈痛な想いになる。改めてご
いよう努力しますので,よろしくお願いします。(山)
冥福を祈り,またお見舞い申し上げ
ます。今後,被災地での苦難や原発
食 品 と 容 器 第 52 巻 第
事故の先行きに早く改善の見通しが
つくことを願うばかりだが,今回の多くの犠牲を無駄に
発行所 缶
しないためにも,一刻も早い復興とこの復興が新生日本
につながることを期待したい。
定 価
1部 800円
年間 8,000円
(送 料 共)
今月号の「業界の話題」にも震災に関連した記事を多
く取り上げているが,食品・包装業界が受けた影響の大
きさもさることながら,迅速な対応や支援の中に食を担
−禁無断転載−
うものとしての役割と責任を見て,飽食の時代とは言わ
詰 技 術 研 究 会
〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町1−8−4
TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1
FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3
Eメール:[email protected]
郵便振替 0 0 1 5 0 −0− 4 2 2 1 5
編 集 人 発 行 人 飯
田
塚
嶋
秀
一
夫
雄
印刷所
大和サービス株式会社
乱丁・落丁本はお取り替えいたします。
れながら,やはり食は原点だという思いを強くした。
食品と容器
5 号
FOOD & PACKAGING 平成23年 5 月 1 日発行
324
2011 VOL. 52 NO. 5
Fly UP