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インド・パキスタン: パイプライン・ガス輸入計画の行方は不透明;イランに

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インド・パキスタン: パイプライン・ガス輸入計画の行方は不透明;イランに
更新日:2006/4/28
石油・天然ガス調査グループ:坂本茂樹
インド・パキスタン: パイプライン・ガス輸入計画の行方は不透明;イランに代わってト
ルクメニスタン・ルートがにわかに脚光、ミャンマー・ルートは CNG 事業が浮上
(WGI、GMT、現地紙、コンサルタント・コメント等)
南アジア(インド、パキスタン)のパイプライン・ガス輸入計画(輸入先:ミャンマー、イラン、トルクメニスタ
ン)が進展していない。いずれの輸入ルートも、産ガス国の国際政治上の問題、さらにパイプライン通過
国とのトラブル等が障害になっており、少なくとも 2010 年頃までにガス輸入が実現する可能性は低いも
のと見られている。
パイプラインに代わるガスの調達手段は LNG となり、パキスタンでは初めての LNG 受入基地建設の
計画が検討されている。しかし、LNG の国際価格が当面高止まりする趨勢にあり、インド、パキスタンが国
内で販売できる価格で購入することが難しいため、当面は、南アジア市場の LNG 輸入量が大きく増加
する可能性はないものと考えられる。インドでは国産ガス供給見通しが増加傾向にあり、LNG 輸入計画
の一部が先送りされる見通しである。
1. インド、パキスタンが輸入を計画するパイプライン・ガス事業
(1) パイプライン・ガス輸入計画の見通し
南アジア(インド、パキスタン)がパイプライン・ガスを輸入する計画が進展していない。将来のガス需要
増加に対処するため、インド等の関係国は数年来、次の 3 ルートによるパイプライン・ガスの輸入計画を
精力的に検討してきた。
① ミャンマー・ルート(ミャンマーShwe ガス田からインド東部へ)
② イラン・ルート(IPI パイプライン、Iran – Pakistan–India)
③ トルクメニスタン・ルート(TAPI パイプライン、Turkmenistan–Afghanistan–Pakistan–India)
しかし、産ガス国を巡る国際政治上の軋轢、パイプラインが通過する近隣諸国間のトラブル等が障害にな
って、現在のところ、いずれの計画も実現の見通しが立っていない。インドのエネルギー関係者の多くは、
2010 年までにパイプライン・ガス輸入が実現する可能性は低いものと見ている。
-1Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、
機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたも
のであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結
果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申
し上げます。
図 1 インドのパイプライン・ガス輸入ルート、ガス関連設備(国内パイプライン、LNG 受入基地)
以下、個々のパイプライン・ガス輸入ルートおよび LNG 輸入事業の現況を述べる。
2. ミャンマー・ルート(ミャンマーShwe ガス田からインド東部へ)
(1) 現況
ミャンマーからのガス輸入計画は当初バングラデシュ陸上を経由する最短ルート(地図上のミャンマー
①ルート)が想定されていた。イランなど他ガス・ソースのパイプライン通過国(パキスタン、アフガニスタ
ン)に比べると、インド/バングラデシュ間には大きな政治的問題が少ないと考えられ、計画は順調に進
展するものと思われた。しかしながら、バングラデシュがインドに求めたネパールへの電力輸送回廊など
-2Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、
機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたも
のであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結
果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申
し上げます。
いくつかの問題をめぐって、両国は結局合意に至らずに、2006 年 3 月時点でバングラデシュ陸上パイ
プライン・ルートは断念されている。
なお、ミャンマーからの輸入ガスは、西ベンガル州コルカタなど東部の諸都市で消費することを想定し
ている。2006 年 2 月にインド石油天然ガス相がミャンマーを訪問して、ガス輸入覚書に調印しており、
GAIL (Gas Authorith of India、インドガス公社(インド側当局))は最短での輸入開始時期を 2009 年
頃と見ている。
(2) インド当局(GAIL)が検討するミャンマー・ガス輸入販路
バングラデシュ陸上を通るルートに代わり、インド側は次のオプションから成る輸入ルート・方法を検討
している:
②バングラデシュ陸上を回避して沖合を通る海底パイプライン・ルート(地図上のミャンマー・ルート②)
③バングラデシュを迂回してインド北東部を通るパイプライン・ルート(地図上のミャンマー・ルート③)
④CNG(圧縮天然ガス)事業としてShweガス田と西ベンガル州揚げ地との間をCNG船でシャトル輸送
⑤その他(LNG 事業、タイへのパイプライン輸送)
しかし、上記のいずれの案も当初のバングラデシュ陸上ルートに比べてコストアップあるいは繁雑に
なるため、決め手に欠ける。②バングラデシュ沖合の海底パイプライン案および③インド北東部諸州(アッ
サム、メガラヤ)を経由するため距離が大幅に伸びる北東迂回ルート案は、ともに大幅コストアップになる。
GAIL は④CNG 事業に関して、2006 年 3 月末に国際入札によって輸送業者を決定する計画を発表し
た。これに対して日本、ノルウェー、マレーシアなどの企業を含む合計8 グループが入札参加を表明した
と言われる。ミャンマーShwe ガス田から西ベンガル州コルカタまで直線で約 600km の距離があるが、
シャトル輸送コストはまだ不明であり、その採算を疑問視する見方もある。
(3) ミャンマー・ガスのインド以外への輸出可能性(中国、韓国、タイ等)
ミャンマーは対インド輸出とは別に、2005 年 12 月に中国 CNPC と Shwe ガス売買に関する覚書を
締結した。Shwe ガス田から雲南省瑞麗への陸上パイプラインを建設してガスを輸出する計画と言われ
る。数量的には中国、インド両国に対する輸出も可能との見方もあるが、中国へのガス輸出に関する詳細
は未詳である。
また、パイプラインによるタイへの輸出、Shwe ガス田を LNG 事業として開発し、中国、タイ、韓国へ輸
出する案などが取り沙汰されているが、まだ構想段階の域を出ないものと見られる。
-3Global Disclaimer(免責事項)
本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、
機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたも
のであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結
果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申
し上げます。
3. イラン・ルート (IPI パイプライン、Iran – Pakistan–India)
イランのガス供給源は大規模ガス田の South Pars であり、インドのアイヤル前石油天然ガス相がこの
パイプライン・ガス輸入計画を熱心に推進してきた。しかしイラン現政権は核開発を巡って国際社会との
対立を深めており、現在の政策を掲げる限り本計画の実現は難しいものと考えられる。しかし南アジア市
場は中長期的にイランからのガス輸入は必須であり、インド側(GAIL)は、「イランを巡る政治問題から、
実施計画の遅れが見込まれるが、関係国との交渉は継続していく」として、輸入開始時期を示さないもの
の検討を継続する構えである。る。
イラン(売り手)、インドおよびパキスタン(買い手)の 3 国は 2006 年 3 月半ばにイランの首都テヘラン
において初の 3 者会議を開催し、ガス・パイプライン建設の検討を継続することで基本合意して、売買条
件の交渉に入った。しかしイラン側は、パキスタン国境渡しで$6/MMBtu の厳しい売買条件を提示して、
インドが長期的に希望する価格帯$4.5~5/MMBtu との間に大きな差異があり、売買条件の合意には至
らなかった。次回の 3 者会議は 2006 年4 月の最終週にパキスタンの首都イスラマバードで開催される。
4. トルクメニスタン・ルート(TAP(I)パイプライン、Turkmenistan–Afghanistan–Pakistan–(India))
(1) インド石油天然ガス相、TAP(I)計画に参加を表明
2006 年 2 月中旬にトルクメニスタンの首都アシガバードで TAP(I)計画の Steering Committee
(運営委員会)が開催された際、インドが初めてオブザーバーとして参加した(石油省および GAIL
関係者)。続いてインドのデオラ石油天然ガス相は 2 月下旬に、インドの TAP(I)計画への参加意
思を表明した。3 ヶ月間程度を目処にして、自国政府の承認を求める手続きを実施するものとされ
る。
パキスタン、トルクメニスタン両国は閣僚級会議にて、パキスタンがトルクメニスタン南東部の
ダウラタバード(Daulatabad)ガス田から 3,200MMcfd のガスを 2010 年以降 30 年間にわたっ
て輸入する覚書に調印している。売買価格など詳細の条件は未定である。また、アジア開発銀行が本
計画の市場化調査に参画している。なお、1990 年代にユノカルがダウラタバード・ガス田からイ
ンドへのガス・パイプライン建設を検討したが、パイプライン通過国アフガニスタンの治安悪化で
計画を断念した経緯がある。
IPI 計画(イランからの天然ガス輸入)の実現性が遠のいた結果、TAPI 計画(トルクメニスタン
からのガス輸入)が相対的に浮上した感がある。TAP 計画の事業費は$35 億と見積もられている。
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、
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のであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結
果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申
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(2) TAPI 計画の特徴
TAPI 計画はアジア開発銀行を通じて米国政府の間接的支援を期待できることから、IPI 計画(イ
ラン)よりも政治リスクが少ないものと見られている。
TAPI 計画の障害は、なおテロリストとの関与が懸念されるパイプライン通過国アフガニスタンの治安
問題をどのように見るかになろう。
また 2006 年 4 月上旬、中国とトルクメニスタンが石油ガスの共同事業を含む協力契約に調印した。両
国は天然ガス・パイプラインの建設でも合意し、2009 年からトルクメニスタン産ガスを中国に輸出する計
画を検討するものと言われる。トルクメニスタンは現在、国際市場向けのガス販路をロシア経由パイプラ
インに依存しているために不本意な低価格でのガス販売を余儀なくされており、ロシアを介さないガス販
路開拓に躍起になっている。TAPI 計画(南アジア向け)と中国への輸出計画との摺り合わせはまだ
精査されていない。供給元は共にダウラタバード・ガス田であるために、仮にインド、中国の 2 大市
場への供給が実現した場合、埋蔵量および供給方法の技術面等に関する懸念が考えられるため、さ
らに検討を要する。
5. LNG
パイプライン・ガス輸入計画の遅れが必至の状況にあるため、当面のガス需給調整は LNG 輸入
に頼らざるを得ない。しかし、LNG 国際価格は高止まりしており、インドおよびパキスタンが国内
市場向けに販売できる価格で長期契約を締結するのは難しい局面にある。
(1) インド
a. 概況
2 件の LNG 事業が操業を開始している。その中で、市場価格のカーゴを投入するハジラ基地(シェル
/トタール)は、高騰した国際価格 LNG の気化ガスに買い手がつかず、最初の 2 カーゴ受入の後は後
続カーゴの受け入れ計画がない。GAIL が同基地の使用権を得て、自社カーゴを投入する計画などの
交渉が行われている。ペトロネットが操業するダヘジ基地は、2002 年に有利な購入条件で契約したカタ
ール LNG を投入しており、順調に運営されている。さらに同基地の設備拡張計画やカタールから新た
に LNG を購入する交渉などが続けられている。
今後の LNG 輸入量は国産ガス供給力との見合いになる。現時点では、LNG 国際価格が高いために、
インドの希望価格で新たな LNG 売買契約を締結するのは無理である。また今後国産ガス供給力の増加
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本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、
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果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申
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が期待できそうな状況にあるため、当面 LNG 輸入の大幅な増加は必要ないものと考えられる。
一方、イランからの LNG 輸入交渉は、最初の 500 万トン分の契約が締結済みであり、続く 250 万トン
分は価格等条件が合意されずに未締結の状態である。しかし、イランには国際政治上の問題から液化
プラント建設に欧米技術を導入できない事情があり、LNG 事業の行方は判然としない。
表 1 インドの LNG 輸入事業
b. 新規 LNG 案件の動向
ダボール LNG 基地(操業者 Ratnagiri、GAIL/ 発電公社 NTPC 等の共同出資会社)に併設される
火力発電所が、当初はナフサを燃料として 2006 年 5 月に操業を開始する予定である。その後、カター
ルとの 2 年間の短期契約によって輸入する LNG を投入する計画であるが、そのタイミングは定まってい
ない。
IOC が計画していた南部ベンガル湾岸エノーレ基地計画(タミール・ナドゥ州)は、延期になった。同地
域を含むインド中部・南東部の諸都市には、リライアンスがベンガル湾のディルバイ・ガス田の国産ガス
を供給する計画を立てており(2008 年~)、計画が順調に進めば南部東岸に LNG を輸入するニーズが
当面無くなるためである(図1 の国内ガス・パイプライン計画参照)。同様に、ONGC が計画していた南部
西岸のマンガロール LNG 基地計画(カルナータカ州)も先送りされる見通しである。
(2) パキスタン
パキスタン政府は、パイプライン・ガスの早期輸入実現が難しくなる中で、LNG 輸入計画を進めようとし
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機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたも
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果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申
し上げます。
ている。
国有ガス会社Sui Southern Gas Co.は 2005 年にコンサルタントを指名して LNG 基地建設を検討し
ている。現段階の計画では、南部シンド州カラチ近郊のポート・カシム(Port Qasim)に LNG 受入基地
を建設し、その処理能力は 350-450 万トン/年ということである。操業開始時期は明らかにされていない
が、2010 年までに LNG 基地を完成させる予定と言われる。しかし国産ガスは$2~3/MMBtu 程度で販
売されているものとみられ、LNG を国産ガスと競合できる価格で調達するのは現時点で無理である。政
府は、スポット/短期契約で高いカーゴを買うつもりは無いとして、20~30 年の長期売買契約を締結す
べく、アルジェリアとカタールと交渉中であるといわれる。
パキスタンは石炭資源を有さないが、天然ガス資源が比較的豊富である(2004 末の可採埋蔵量 28tcf
=インドの約 87%、2005BP 統計)。商業エネルギー供給の中では天然ガス比率が石油を凌いで最も
高い。パキスタンのガス生産量(23.2bcm、2004 年)はインドの約 80%であるが、インドとの人口規模の
違いを考慮すると、1 人あたりのガスの供給量はインドの 5 倍以上となっている。
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