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語学と映画と 母校と故郷

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語学と映画と 母校と故郷
巻頭言
語学と映画と
母校と故郷
ふるかわ
ひろなり
古川 弘成
一般社団法人日本貿易会 常任理事
阪和興業株式会社 社長
早朝に会社で英語と北京語を根気よく学び始めてから数年がたちました。
社員に TOEIC 750 点取得クリアと言っている手前、背中を見せたいと思ったのが動機
ですが、そもそものきっかけは 1993 年に 47 歳にして初めて駐在員として香港へ赴任した
ことにさかのぼります。それまで所属していたところは国内部門で、いわゆる超ドメス
ティックといわれており、しかも建材を担当していたキャリアですので語学力不足を痛
感しました。香港という土地柄、英語、北京語、さらに広東語を同時に学ぶことになり、
苦痛でもがく中、家庭教師をつけたのはもちろん、自分でも学習方法を試行錯誤し、映像
で学ぶのが一番だとの考えに至り、日々、家ではテレビを見て、週末は映画館に通って
努力し始めました。
その病が高じて結局、語学より映画ファンへと変身し、帰国後も週末は映画館に通うのが
生活の一部となりました。
語学の勉強の一環のため、普段はほとんどハリウッド映画を鑑賞していますが、一方でたま
に見る邦画は感動的なストーリーが多く、よく涙腺を刺激されています。そんな中、この夏、
足を運んだ邦画の中で 3 作の素晴らしい作品に出会いました。
一つは「終戦のエンペラー」
第一生命様にお願いし、映画の舞台になった日比谷の旧 GHQ 本部のマッカーサー執務室を
見学させていただき、その後映画を鑑賞しました。
二つ目は「風立ちぬ」
主人公のモデルになった堀越二郎氏は現在の三菱重工業様で零戦の設計に携わっていました。
その金属材料にチタンが使用されていた?映画の中で住友軽金属様の名前が出てきて業界関係
者として驚きましたが、この話、ライバルメーカーさんによればその当時、その金属は作って
おられなかったとか…どちらが本当でしょうか?
4 日本貿易会 月報
巻頭言
母校の奈良県立畝傍高校
それと「少年 H」
作者妹尾河童の自伝小説、監督は高倉健主演の「あなたへ」で評判だった降旗康男。水谷豊・
伊藤蘭夫妻共演。
第 2 次世界大戦と終戦の神戸を舞台に、軍国化、暗い時代を耐えた家族を描く感動作。鑑賞
中、
涙があふれる中、主役の少年 H の学校での軍事教練のシーンの神戸第二中(今の兵庫高校)、
校舎の背景がどこか懐かしいと思ったら、わが母校の奈良県立畝傍高校(写真参照)ではない
かと気付きました。
畝傍高校は明治 29 年設立で、神武天皇即位の地ということで建国神話をイメージし、昭和 8
年に帝冠、仏教様式の鉄筋コンクリート造りで、当時の校舎としては破格の予算で建築されま
した。日本近代建築 2000 に選ばれており、国の登録有形文化財に指定されています。校章は
やたがらす
きん し
神話の八咫烏からきており、金鵄であります。
はねづ
河瀬直美監督「朱花の月」、NHK 朝ドラの「ふたりっ子」のロケ地にもなりました。
朝ドラといえば、ただ今放映中の「ごちそうさん」のロケ地にもなっている母校近くの街並み
の橿原市今井町を紹介いたします。
ダイワハウス様のテレビコマーシャルで、古い旧家の庭を女子学生が自転車で通るシーンも
思い出されます。
ほり
今井町は1540 年前後、天文年間に本願寺一向宗の寺内町として周囲に濠と土壕を巡らし防御を
ひきましたが、本願寺の降伏と同時に明智光秀のとりなしで屈服しました。その後、江戸幕府
の天領となり、自治都市・商業都市として栄え、「海の堺 陸の今井」と呼ばれ、藩札と同じ
価値のある独自の紙幣「今井札」も流通し、かつては「大和の金は今井に 7 分」「金の虫干し
玄関まで」といわれるほど繁栄していたようです。
とうりょう
最後に、今井町は私の生れ故郷であり、先祖はその町並みの大工の棟梁であり、今井町が
そのまま栄えていれば大手ゼネコンの創業家だったのではと夢見ながら筆をおきます。
JF
TC
2013年12月号 No.720 5
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