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一 自然科学の因果律と業因業果の比較 ・ - J

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一 自然科学の因果律と業因業果の比較 ・ - J
一
藤
彰
顕
う。 業 因 業 界 は、 本 来 的 に、 経 験 的 に 実 感 さ れ る も の で あ
宗 教 体 験 はも とも と 経 験 的 認識 で あ る こと は、 自 明 であ ろ
あ る。
を も って主 観 的 実 感 であ ると いう 経 験 的 認識 に到 達 した の で
想 は、 人 間 の悲 願 を も と に、 理性 的 認 識 を へて展 開 さ れ、 業
佐
因 果 律 よ り み た る 正 信 偶 ・和 讃 の 一分 析
自 然 科 学 の因 果 律 と 業 因 業 果 の 比 較
自 然 科学 と り わ け物 理 学 に お い ては、 前 件 があ る現 象 を 生
み だ す と き、 因 果 性 が存 在 す る と いう。 (注1)
自 然 科 学 の歴 史 に お い て、 ﹁物 理現 象 に は、 因 果 関 係 は み
係 に ついて論 議 す る の で は な く、 前 件 と 後 件 の現 象 と の 関係
し かた に よ っても 経 験 的 認 識 で実 感 さ れ た も のと いう こ とを
たもの)悪 因 苦 果 (苦が実感されたも の) と い う 因果 の あ ら わ
業 因 業 果 が 善 因善 果 でな く、 善 因 楽 果 (
楽 果 の楽 が実感 され
と め ら れず、 継 起 関 係 が あ るだ け だ と いう 説﹂ か ら、 因 果 関
を 統 計 的 な関 係 で と らえ よ う と す る 傾 向 にな って き て い る。
る。
し か し、 医 学 者 ク ロー ド ・ベ ル ナー ルや 現 代物 理 学 者 M・ プ
う かが い知 る こ とが でき よ う。
業 因 は、 相 続 し て、 転 変 し て、 業 果 と な る と いう認 識 であ
ラ ンク な ど は、 因 果 関 係 の 法 則 を み いだ す ことが 科 学 の進 歩
であ ると いう。
続 を 経 験 し て-業
果 の起 る ご と
起 る関 係 を経 験 し て-相
る。 ﹁業 因 と いう現 象 と業 果 と いう 現 象 と の問 に、 し ば し ば
ぬ手 段 ・暫 定 的 段 階 とし て し か 考 え ら れ ず、 目 的 は、 あ く ま
に業 因 を思 い起 す。﹂ (注3) こ の 考 え 方 は、 自 然 科 学 の 初
ク ロー ド ・ベ ルナ ー ルは いう。 ﹁統 計 的 法 則 は、 や む を 得
でも 因 果 の法 則 であ る。﹂ と。 (注 2) M・ プ ラ ン ク も 彼 と
と おり で あ る。
期 の考 え 方、 因 と果 の継 起 関 係 と 類 似 し て い る。 ︹
表 1︺ の
藤)
仏 教 の業 因 業 界 の論 理 の展 開 は次 のと お り であ る。 業 の思
同 じ 趣 旨 の ことを 述 べ因 果 性 の認 識 を 強 調 し て い る。
因 果 律 よ り み た る 正 信 偶 ・和 讃 の 一分 析 (佐
-23-
因 果 律 よ り み た る 正信 偶 ・和讃 の 一分析 (佐
藤)
不 昧 因 果 ・不 落 因 果
省 的 認 識 であ った。 ︹表 2︺ のと お り であ る。
二
仏 教 の因果 の問 題 を 論 ず る揚合、 認 識 の ど の レベ ルに お い
ても、 不 昧因 果、 不 落 因 果 を 考察 す る必 要 が 生 ず る。 ﹁因 果
に昧 か ら ず﹂ と は、 因 果 の必然 性 を認 め る 立場 で あ る。 因 果
の道 理 を みと め な が ら、 な おか つ、﹁因 果 に 落 ち な い﹂ た め
に は、 ど ん な 論 理 が 展 開 され てき た ので あ ろ う か。 自 由 意 志
信 偶 の分 析
は、 ︹
表 3︺ の と お り
と逆転す る論理構造
し て の因 が 浬 架 の楽 果
る 余 地 は な い。 生 死 と
り、 自由 意 志 の介 入 す
は、 罪 業 深 重 な の であ
的 認 識 と し て、 自 己
が 不 落 因 果 を 達 成 す る と い う論理 で あ る。 親 鷲 の場 合、 自 省
であ る。
三、 横 超 に よ り因 果 を こえ る-正
悪 因 と し て の自 己 が苦 果 を得 な い で、 楽 果 を 得 る論 理 は、
親 鷺 に よれ ば、 横 超 の働 き (如 来 の本 願 力 に よ る と す る。 正
信 偶 の分 析 に入 る に あ た って、 善 道 の ﹁観 無 量 寿 仏 経 疏﹂ の
-24-
業 因 業 界 の考 え 方 は、 親 鷺 に いた って、 自 省 的 認 識 へと展
開 さ れ た。
業 の 世 界 を 認 識 の対象 と す る こと な く、 自 己 の中 に これ を
を う け と った の であ
る。 善 業 ・悪 業 とも
に、 凡 夫 に は、 善 悪
を 決 定 す る基 準 も も
ち あ わ せ て いな い の
で あ る。 ﹁善 悪閣
の二
つ総 じ ても て存 知 せ
ざ るな り ﹂ と いう 自
悪 因 か ら楽 果 へ の
分析図式 〔
親鷲〕
〔
表3〕
因果関係 の比較
〔
表1〕
求 め て ゆ き、 業 を も って、 自 己 自 身 の罪 業 の深 重 の深 さ の相
認 識 の レベ ル
〔
表2〕
玄 義 分 の分 析 を す る。 ︹表 4︺ のと お り で あ る。 共 発金 剛 心
が起 る と き、 横 超 に よ り、 四流 (悪因と しての自己 の四流)が
四
横 超 によ り 因 果 を こえ る-和
讃 の分 析
心 が、 自 己 の悪 因 を 転 じ て、 (
横超 して) 楽 果 に せ る も の (︹
表
和 讃 を 分 析 し て みる と、 本 願 に より、 信 心 が生 じ、 そ の信
正 信 偶 の中 で、 自 己 の悪因 が楽 果 に 逆 転 し て い る 句 は、
7︺-︹ 表 18︺ の分析) と 念 仏 が自 己 の悪 因 を 楽 果 に転 ず る も
た た れ る と す る。
正 信 偶 の中 で悪 因 が楽 果 に転 じ て い る句 の前 の句 には、 必
︹表 5︺ の と おり であ る。
︹表 19 ︺ で は、 き え て、 ︹表 20 ︺ で は、 度 脱 し て、 ︹表 21 ︺ で は、 の
の (︹
表 19︺-︹表 22︺ の分析。 この場合 の念仏 の働 き と し て は、
ず 信 心 が 入 って いる。
そ こり ぬ、︹
表 22︺ では、うまる の意味 で使 わ れ て い る。念仏 の働
き は ︹表(︺
25
の)
とおり である。
) と、 本 願 が 横 超 す る も の (︹
表
23︺ の分析) と、 信 心 が 転 ず る も の (︹
表 24︺ の分析) と の四 つ
親 鷺 の信 の強 調 は、 正 信偶 の分 析 にお い ても そ う で あ った
のパ タ ー ンに分 類 でき る。 ︹表 26︺ のと お り で あ る。
が、 特 に 和 讃 の分 析 に お いて 明確 とな る。
す な わ ち、 悪 因 が楽 果 に横 超 し て、 因 果 の必 然 性 を こえ て
い る 場 合 に は、 必 ず そ の和 讃 の中 に、 本 願、 信 心、 念 仏 の い
つ れ か、 ま た,
は、 これ ら の三 つが 取 り 入 れ ら れ て い る。
の課 題 であ る。
自 然 科 学 の概 念 で宗 教 が ど こま で解 釈 で きう る か が今 の私
における) 因 果 律 の対 比 が 明ら か と な る。
る。 か く し て、 自 然 科 学 の因 果 律 と 宗 教 に お け る (
特 に親鷺
自 己 の悪 因 を 横 超 し て楽 果 を 得 せ し む ると い う親 鷺 の論 理
であ る。
藤)
る。 ︹表 6︺ の と お り
中 心 は信 心 と な って い
偶 に お い て は、 転 回 の
は、 因 果 律 に よる 分 析 で、 よ り明 確 な も の と な った の で あ
正 信 偶 の分 析
が、 生 死 を浬 繋 に転 じ
〔
表5〕
て い る の であ る。 正 信
観 経 疏 の横 超
因 果 律 よ り みた る 正 信偶 ・和 讃 の 一分 析 (佐
-25-
喜 愛 心が 煩 悩 を 浬梨 に、 見 敬 大 慶 心が 五悪 趣 を た ち、 信 心
る転 回 の論 理
〔
表4〕
正信偶 におけ
〔
表6〕
〔
表8〕
〔
高 讃 願(曇)b〕
〔
表12〕
〔
高讃 願(曇)f〕
〔
表11〕
〔
高 讃 願(曇)e〕
〔
表15〕
〔
高 讃 願(善)i〕
〔
表14〕
〔
高 讃 願(曇)h〕
〔
表7〕
〔
高 讃 願(天)a〕(4注)
藤)
〔
高 讃 願(曇)〕
因 果律 よ り み た る正 信 偶 ・和 讃 の 一分 析 (佐
〔
表9〕
〔
表18〕
〔
浄 讃 念1〕
〔
表17〕
〔
正 讃 願k〕
-26-
〔
表10〕
〔
表13〕
〔
高 讃 願(曇)〕
〔
表16〕
〔
高 讃願(曇)g〕
〔
正 讃 願j〕
因 果 律 よ り み た る正 信 偶 ・和 讃 の 一分析 (佐
藤)
1
﹁哲 学 の講 義 2
六 五頁。
認 識 II﹂ 一九 七 六 年、 P・ フ ル キ エ著
筑
岩 波 文 庫。
﹁業 の思 想 ﹂ 佐 々木 現 順 著
﹁実 験 医 学 研 究 序説 ﹂ ク ロー ド ・ベ ル ナ ー ル著
摩蜜旦房
論 文 中例 え ば、 ︹表 23︺ の高 讃 (善 ) と は、 高 僧 和 讃 善 導 と
(名 古 屋 音 楽 大学 助 教 授 )
レグ ル ス文 庫。
ー ン
ター
タ ー(パ
(パ タ ー(パ
タ ー(パ
ン1)ン2)ン3)ン4)
3
2
〔
表25〕 念 仏 の 働 き(和 讃)
4
いう こと を意 味 す る。
-27-
悪 因 の楽 果 へ の転 化 パ ダ
〔
表26〕
〔
高 讃 念(源 信)5〕
〔
表22〕
〔高讃(善)1〕
〔
表23〕
〔
高 讃(善)A〕
〔
表24〕
〔
浄 讃 念2〕
〔
表19〕
〔
高 讃 念(竜)3〕
〔
表20〕
〔
高 讃 念(道)4〕
〔
表21〕
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