Comments
Description
Transcript
金融工学的アプローチによるERMの方法論 ∼事業リスク評価モデルの活用
京都大学金融工学シンポジウム2007 Global Quantitative Research 金融工学的アプローチによるERMの方法論 ∼事業リスク評価モデルの活用∼ 2007年3月9日 金融経済研究所 金融工学研究センター 太田 洋子([email protected]) 野村証券金融経済研究所 金融工学研究センター 事業数理研究グループ 公開・未公開企業に対して、金融工学的アプローチを用いた経営・財務アドバイスをご提供しています。 個別企業へのアドバイス事例 意志決定支援ソリューション(定量モデル) z 中期経営計画策定に関するコンサルテーション z 中期経営計画策定支援・モニタリングシステム「TRIST」 z 企業の経営計画を踏まえた財務目標値の設定 z 企業価値評価モデル z 最適資本構成を意識した資金調達シナリオの策定 z 格付け推定モデル z 事業提携案件や投資案件に関する定量評価 z 最適資本構成推計モデル z 事業ポートフォリオ再編に関するコンサルテーション z 事業ポートフォリオ評価モデル z 株価形成要因に関する定量分析 z 資本コスト推計モデル(リスクプレミアムの推計、 z 経営管理指標導入に関するコンサルテーション 事業ベータ値の推計、種類株の資本コスト推計など) z 格付け向上に関するコンサルテーション z 最適キャッシュポジション推定モデル z 企業価値向上に関する諸方策の検討 z 発行済み株式数の適正値推計モデル z 企業リスク管理に関するアドバイス z 不動産キャッシュフロー予測モデル z 事業リスク評価に関するコンサルテーション z M&Aプレミアム推計モデル z M&Aシナジー効果に関する定量評価 z M&Aシナジー推計モデル z 株主還元策、株主構成などに関するアドバイス z 事業リスク評価モデル 1 企業リスクマネジメントのプロセス 全社 全社 ① ① 概念・目的の設定 概念・目的の設定 組織、体制 リスク選好、リスク許容度の設定 ② ② リスクの洗い出し リスクの洗い出し 外部要因、内部要因の抽出 影響の方向性確認(プラス/マイナス/双方) 個別事業単位 1) 1) リスクの評価基準策定 リスクの評価基準策定 全社・ グループ全体 ③ ③ リスク リスク 評価 評価 2) 2) リスク評価の実施 リスク評価の実施 定量評価(確率モデル:VaR、EaRなど 非確率モデル:感応度、シナリオ分析など) 定性評価 リスクの相互依存関係の評価 3) 3) リスク管理の現状評価 リスク管理の現状評価 固有リスクマネジメント 費用対効果の評価 4) 4) 残存ベースのリスク評価 残存ベースのリスク評価 ④ ④ リスク リスク 対応 対応 1) 1) リスク選好とリスク許容度 リスク選好とリスク許容度 2) 2) ポートフォリオの視点 ポートフォリオの視点 ⑤ ⑤ 統制活動・モニタリング 統制活動・モニタリング リスクマップ作成(発生可能性と影響度) 残余リスクの評価 リスクの相互依存関係の評価 全社企業価値の最大化 経済資本の配賦、リスクキャピタル推計 成果確認、報告書作成、IT対応、役割と責任 (出所)野村證券金融工学研究センター 2 東京ガスのERMのポイント ① ① 概念・目的の設定 概念・目的の設定 全社 全社 個別 別事 事業 業単 単位 位 個 全社 社・ ・ グル ルー ープ プ全 全体 体 全 グ a z ERMに積極的に取り組む理由・・・①規制緩和の進展、②公益事業としての説 明責任、③グループ企業全体を対象とした全社的視点に基づいたリスク管理、 ④ガバナンス強化。 b z 経営が関与すべき重要リスクを13に特定し、明確化。 z グループ経営の視点から、ハザード以外の価値創造につながる戦略リスクも 対象とする。 c z 定量評価の結果を定性評価によって補正・補完することで、より精緻なリスク マップを作成。 z リスク対応策の策定と実施。 z リスクの見直しと、対応状況の確認と改善。 d z 統括窓口としてリスク管理推進セクションを監査部に設置。 z 各部門、関係会社で、リスク管理推進者を約90人選任。 z リスク管理推進セクションとリスク管理推進者の連携で、グループ内での重要 リスクに対する認識の共有化。 z 対応状況を継続的にフォローするモニタリングの仕組みを制度化。 z トップマネジメントへの報告と、報告の経営判断への適用。 z 有価証券報告書等での開示。 ② ② リスクの洗い出し リスクの洗い出し 1) 1) リスクの評価基準策定 リスクの評価基準策定 ③ ③ リスク リスク 評価 評価 2) 2) リスク評価の実施 リスク評価の実施 3) 3) リスク管理の現状評価 リスク管理の現状評価 4) 4) 残存ベースのリスク評価 残存ベースのリスク評価 ④ ④ リスク リスク 対応 対応 1) 1) リスク選好とリスク許容度 リスク選好とリスク許容度 2) 2) ポートフォリオの視点 ポートフォリオの視点 ⑤ ⑤ 統制活動・モニタリング 統制活動・モニタリング (出所)東京ガス(株)資料に基づき、野村證券金融工学研究センター作成 3 住友商事のERMのポイント a ① ① 概念・目的の設定 概念・目的の設定 全社 全社 全社 社・ ・ グル ルー ープ プ全 全体 体 全 グ 個別 別事 事業 業単 単位 位 個 ② ② リスクの洗い出し リスクの洗い出し 1) 1) リスクの評価基準策定 リスクの評価基準策定 ③ ③ リスク リスク 評価 評価 2) 2) リスク評価の実施 リスク評価の実施 3) 3) リスク管理の現状評価 リスク管理の現状評価 z ERMの目的・・・①業績安定、②体質強化、③信用維持。 z 総合商社ビジネスモデルの変遷によって、ミクロのリスクマネジメントからトータ ルリスクマネジメントへの転換。 z 1998年に全社のリスクを一律の基準で定量化・・・リスクアセット(最大損失可 能性額)=連結B/Sの各資産×ボラティリティに基づいたリスクウエイト。 b z 一方、定量化が困難なクライシスリスクについても、損失の未然防止、損失拡 大の抑制を目指して、全社一律の対応策を策定。 z EaR手法を用いた長期的なリスク評価。案件のバリュードライバー分析により、 事業価値最大化のための事前の対応策と、事後の改善策を検討。 4) 4) 残存ベースのリスク評価 残存ベースのリスク評価 ④ ④ リスク リスク 対応 対応 1) 1) リスク選好とリスク許容度 リスク選好とリスク許容度 c z EaR手法をビジネスライン評価にも活用、ビジネスライン間のリスクの相関関係 等を予測し、グループ全体のポートフォリオ管理を目指す。 z グループ全体の企業価値最大化が目標・・・資本コストを上回るリスク・リターン の達成。各事業部門のリスク・リターンに応じて株主資本を配分。 d z z z z 2) 2) ポートフォリオの視点 ポートフォリオの視点 ⑤ ⑤ 統制活動・モニタリング 統制活動・モニタリング 定量基準は、全社および各セグメントの業績評価基準として完全に定着。 2002年に統合リスク管理TFを立ち上げ。 2005年よりCOSOモデルによるインターナルコントロール活動に統合。 グローバルに、500拠点で350項目につき、網羅的・継続的にPDCAサイクルを 回していく。2008年のJ-SOX施行にも対応。 z 単なる管理ではなく、総合商社ビジネスのコア機能として位置づけ。 (出所)住友商事(株)資料に基づき、野村證券金融工学研究センター作成 4 一般事業会社の現状? 全社 全社 ① ① 概念・目的の設定 概念・目的の設定 組織、体制 リスク選好、リスク許容度の設定 ② ② リスクの洗い出し リスクの洗い出し 外部要因、内部要因の抽出 影響の方向性確認(プラス/マイナス/双方) 個別事業単位 1) 1) リスクの評価基準策定 リスクの評価基準策定 全社・ グループ全体 ③ ③ リスク リスク 評価 評価 2) 2) リスク評価の実施 リスク評価の実施 定量評価(確率モデル:VaR、EaRなど 非確率モデル:感応度、シナリオ分析など) 定性評価 リスクの相互依存関係の評価 3) 3) リスク管理の現状評価 リスク管理の現状評価 固有リスクマネジメント 費用対効果の評価 4) 4) 残存ベースのリスク評価 残存ベースのリスク評価 ④ ④ リスク リスク 対応 対応 1) 1) リスク選好とリスク許容度 リスク選好とリスク許容度 2) 2) ポートフォリオの視点 ポートフォリオの視点 ⑤ ⑤ 統制活動・モニタリング 統制活動・モニタリング リスクマップ作成(発生可能性と影響度) 残余リスクの評価 リスクの相互依存関係の評価 全社企業価値の最大化 経済資本の配賦、リスクキャピタル推計 成果確認、報告書作成、IT対応、役割と責任 (出所)野村證券金融工学研究センター 5 個別事業単位リスクマネジメント 全社 全社 ① ① 概念・目的の設定 概念・目的の設定 組織、体制 リスク選好、リスク許容度の設定 ② ② リスクの洗い出し リスクの洗い出し 外部要因、内部要因の抽出 影響の方向性確認(プラス/マイナス/双方) 個別事業単位 1) 1) リスクの評価基準策定 リスクの評価基準策定 全社・ グループ全体 ③ ③ リスク リスク 評価 評価 2) 2) リスク評価の実施 リスク評価の実施 定量評価(確率モデル:VaR、EaRなど 非確率モデル:感応度、シナリオ分析など) 定性評価 リスクの相互依存関係の評価 3) 3) リスク管理の現状評価 リスク管理の現状評価 固有リスクマネジメント 費用対効果の評価 4) 4) 残存ベースのリスク評価 残存ベースのリスク評価 ④ ④ リスク リスク 対応 対応 1) 1) リスク選好とリスク許容度 リスク選好とリスク許容度 2) 2) ポートフォリオの視点 ポートフォリオの視点 ⑤ ⑤ 統制活動・モニタリング 統制活動・モニタリング リスクマップ作成(発生可能性と影響度) 残余リスクの評価 リスクの相互依存関係の評価 全社企業価値の最大化 経済資本の配賦、リスクキャピタル推計 成果確認、報告書作成、IT対応、役割と責任 (出所)野村證券金融工学研究センター 6 企業が直面するリスク(企業価値の変動要因) 企業リスクの増大 発生可能性=低 影響度=大∼特大 リスクの二つの側面 発生可能性=高 影響度=小∼大 Crisis クライシスリスク(危機的損失) Opportunity 事業リスク(収益機会) マイナス(損失)を減らすリスクマネジメント プラス(価値)を大きくするリスクマネジメント ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ コンプライアンス 訴訟 風評 自然災害 事件、事故、火災 カントリーリスク システムダウン 環境 CSR ■ マクロ(海外景気、国内景気、人口、 関税・規制など) ■ セミマクロ(ライフステージ、市場規模、業界規制、 売り手・買い手との力関係、為替など) ■ 競合(経営戦略、シェア、価格、コスト、品質、 設備投資、M&A、R&D、知財、人材など) ■ 財務(調達、運用、格付け、資本構成、 リスクキャピタル、流動性、与信、減損など) ■ 労務(年金など) (出所)野村證券金融工学研究センター 7 事業リスクの抽出と構造化 ∼インフルエンスダイアグラム∼ 営業利益 PL項目 PL項目 販売数量 価 格 パブリックリスク プライベートリスク セミマクロ 業界景気 商慣行 [経済的要因] ・景気 ・インフレ ・為替 ・金利 R&D 財務体質 シェア 設備投資 知財 契約 人的資源 ブランド戦略 業界規制 マクロ(国内・グローバル) [政治的要因] ・法規制 ・税制 コスト率 [社会的要因] ・人口動態 ・成熟度 [技術的要因] ・技術革新 (出所)野村證券金融工学研究センター z 営業利益をPL項目に分け、パブリックリスク、プライベートリスクに分けて、リスク要因を構造化し、インフルエンス・ダイアグラムを設計する。 z パブリックリスクは、同業他社も等しく影響を受けるリスク。プライベートリスクはその企業独自のリスクを指す。 z パブリックで定量的なものが、最も評価しやすく、プライベートで定性的なものが最も評価が難しい。 8 インフルエンス・ダイアグラムの設計例 営業利益 売上高 PC コスト 販売数量 価 格 総台数 搭載容量シェア 携帯電話 デジタル家電 256Mb 512Mb 歩留り 1Gb ・・・ リスクドライバー DVD レコーダー デジタルTV デジタルカメラ (出所)野村證券金融工学研究センター z 半導体(DRAM)製造専業企業をイメージして、簡易なインフルエンス・ダイアグラムを設計し、収益に重大なインパクトを与えるリスク ドライバーを抽出した。 z リスクファクターとして、営業利益を売上高とコストに、また売上高を販売数量と価格に分解した。その上で、販売数量は総台数、搭 載容量シェア、歩留りの3つに分解した後、それぞれを構成しているリスクファクターにまで分解した。 z 経験情報と過去の変動性分析などから、上図において赤枠で囲ったリスクファクター(価格、デジタル家電[DVDレコーダー、デジタ ルTV]の総台数、搭載容量シェア[1Gb]、歩留り)をリスクドライバーとして設定した。なお、PCや携帯電話、デジタルカメラの総台数、 搭載容量シェア[256Mb、512Mb]は変動性が低いためリスクドライバーとして設定しなかった。 9 リスクドライバーの将来リスクの推定と重要なリスクの抽出 リスクウエイト ベースシナリオの事業価値からの変化額 商品価格:変動リスク -30,000 39.6% 商品価格:変動リスク 10,000 (-30%) (+10%) (-10%) -12,000 歩留り:変動リスク 23.8% 12,000 歩留り:変動リスク (+10%) デジタルTV台数:低下リスク (-10百万台) -20,000 19.8% 8.9% -9,000 DVDレコーダー台数:低下リスク デジタルTV台数:低下リスク DVDレコーダー台数:低下リ スク (-5百万台) -4,000 1Gb:変動リスク -35,000 -30,000 -25,000 -20,000 -15,000 -10,000 -5,000 7.9% 4,000 1Gb:変動リスク (+20%) (-20%) 0 企業価値からの±1σ変化分(百万円) 事業価値からの±1σ変化分(百万円) 5,000 10,000 15,000 0% 10% 20% 30% 40% 50% ※( )内は前提条件 (出所)野村證券金融工学研究センター z トルネードチャート分析では、営業利益に対する各リスクドライバーの影響度の大きさを比較し、優先して対処すべきリスクを明らかにする。 z (右図)リスクウエイト=(楽観リスク+絶対値(悲観リスク))/Σ(楽観リスク+絶対値(悲観リスク))。この場合、価格変動、歩留り変動、デ ジタルTV台数低下リスクが比較的大きな事業リスク要因になっていることがわかる。 z (左図)特に下方リスク(ベースシナリオの事業価値からマイナス方向への変化リスク)に着目すると、価格変動リスクやデジタルTV台数低 下リスクのインパクトが最も大きい。 10 トータル事業リスク分布の把握と事業価値評価 トータル事業リスク分布 平均値/リスク 250 200 発 150 生 回 100 数 50 計画 達成確率 ベースシナリオ事業価値 300,000(百万円) リスク(-1σ): 無相関 平均から下方乖離リスク 平均値 最小値 中央値 (百万円) 450,000 400,000 350,000 300,000 250,000 200,000 150,000 100,000 50,000 0 最大値 (出所)野村證券金融工学研究センター z 複数のリスク・ドライバーによる多次元モンテカルロ・シミュレーションの例。 z ベースシナリオは平均値よりも右側に位置しており、かなり楽観的なシナリオであると言える(計画達成確率が低い)。 z 事業リスクを平均値からの下方乖離リスクと見るのが一般的であり、ここでは、(-1σのリスク-平均値)を絶対値表示したものを、下 方リスクとして定義する(なお、リスク・モニタリング基準の大きさは、経営判断の問題であり、より保守的に捉える場合には、-2σで も-3σでも良い)。 11 レンジ形式による業績予想開示の有効性について (東証、決算短信に関する研究会報告H18.3より一部抜粋の上、野村證券金融工学研究センター編集) z 投資者は、実績が特定の予想値を中心としながら上下する可能性があることを理解している。 z まずは従来通り、会社が中心値と考える特定の予想値を明確に示す。その上で、事業環境の動向等 による業績の変動幅が大きく、特定の数値(予想期待値の平均値、中央値など)のみによる予想が困 難な場合には、予想レンジの開示で代替することが望ましい。 z この場合、レンジの上限・下限となるそれぞれのケースにおける事業環境の状況等の説明が適切に行 われること、レンジ幅が適切なものであることなど、レンジによる予想が投資者にとって適切なものとな るための対応が必要とされる。 z また、事業内容・業種により、前提条件(為替レート、原油価格等の定量的情報)の変動により業績予 想値が大きく変動する可能性がある会社については、当該前提条件(さらに、その変動による業績へ の影響)を開示することが望ましい。 12 リスクの共通尺度 ∼リスクファクターとファクターモデル∼ 株式ファクターモデル ri = β i rm + α + ε i ・・・式① 企業iの株式リターン=銘柄iの株式市場に対する感応度(ベータ値)×株式市場リターン+定数項+残差リスク 株式市場成分 固有成分 z 実際の企業iの株式リターンは、株式市場リターンを含む複数のファクターで説明される。 z 例えば、金利、為替、物価、天候、石油など。 ri = β i1 F 1 + β i2 F 2 + β i3 F 3 + ・ ・ ・ +α + εi z ・・・式② 全ての銘柄に共通のリスクファクター(コモンファクター)を見つけて、合理的に管理する。 リスクファクターを把握する z リスクマネジメントでは、まず、管理対象のリスク発生の原因となる要因(ファクター)を特定することが重要で ある。リスク構造を把握する。 z リスクファクターがわかれば、そのリスクへの対応方法を考えることが容易になる。 z リスク構造分析の高度化は、企業リスクマネジメントの高度化につながる。 13 事業リスク評価モデル開発の試み Model A:公開情報に基づく事業リスクモデル(汎用版事業リスク評価モデル) 公開情報に基づいたファンダメンタルリスクモデル。 できるだけピュアな事業単位で、その事業に固有のパブリックリスクと、一部のプライベートリスク(主に競合他社との関係を表す指標) から構成されるモデルである点が特長である。業界ごとに、事業内容を反映した共通のリスクドライバーが存在し、それが個別事業の バリューチェーンの説明において重要な役割を果たしているという前提に立っている。 対外的な視点で、一企業の個々の事業セグメントが抱えるリスク(事業リスク)を把握することができる。 Model B:カスタマイズ版事業リスク評価モデル 事業セグメント単位のModel Aを組み合わせ、かつ、企業独自の価値創造ストーリーを反映させたプライベートリスクに関する情報をリ スクドライバーとして付加することで、企業全体のリスク(企業リスク)を測るモデルを開発することができる。 プライベートリスクはもちろん、パブリックリスク内のセミマクロにおける事業リスク構造は、日々、変化するものであり、さらに分析手法 や目的によっても、結果が変わってくる。また、METIの報告書では、「事業リスクは、企業毎にユニークなものであって、画一的なモデ ルによって計測・評価されるものではない」と明言されている。これを踏まえると、企業単位のリスクを測るモデルは、個々の企業ごとに ユニークなものが適当である。 定量化が困難なプライベートリスクをいかにして定量的に把握するかがポイントとなる。 14 事業価値に影響を与えるコモン・リスクファクター 【売上高リスク評価モデル】 カテ ゴ リー 意味 マクロ生産数量 マクロ (M) プライベート (P) ラグ フ ァク ター 方向性 鉱工業生産 + 1 鉱工業生産伸び率 + 1 マクロ価格 長期金利 セミマクロ (S) 【ファクター選定の視点】 優先度 企業物価指数 1 10年国債応募者利回り 1 10年国債応募者利回り前年差 1 為替 円ドルレート変化率 1 業種セミマクロ NINDSセミマクロ指数 + 人的資源 従業員数 + 3 資産投資 前期総資産成長率 + 3 業種内優位性 総資産シェア + 3 ファンダメンタルモメンタム 前期売上高 セミマクロ (S) プライベート (P) ラグ 販売数量 価 格 パブリックリスク プライベートリスク セミマクロ 意味 フ ァク ター 方向性 優先度 マクロ生産数量 鉱工業生産伸び率 + 1 長期金利 10年国債応募者利回り 業界景気 商慣行 R&D 財務体質 シェア 設備投資 知財 契約 業界規制 1 為替 円ドルレート変化率 業種セミマクロ NINDSセミマクロ指数 + 2 NINDS企業数 + 2 NINDS企業数^2 − 2 業種内競争圧力 コスト率 売上高 4 【営業利益率リスク評価モデル】 マクロ (M) PL項目 PL項目 2 (出所)野村證券金融工学研究センター カテ ゴ リー 営業利益 1 垂直統合度 売上高付加価値率 + 3 業種内優位性 総資産シェア + 3 固定費比率 販管費率 − 3 資産投資 減価償却費 3 財務レバレッジ 有利子負債比率 3 ファンダメンタルモメンタム 前期利益率 4 マクロ(国内・グローバル) 政治的要因 法規制 税制 経済的要因 景気、 インフレ、 為替、金利 社会的要因 技術的要因 人口動態 成熟度 人的資源 ブランド戦略 技術革新 (出所)野村證券金融工学研究センター (出所)野村證券金融工学研究センター 15 業種別事業リスク評価モデル① ∼素材・機械・自動車・エレクトロニクス∼ 売上高モデル 業種名(NINDM) 1 化学 2 鉄鋼・非鉄 3 機械 4 自動車 5 電機・精密 業種名(NINDS) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 ガラス・セメント 合繊 綿紡 紙・パルプ 石油 総合化学 ファイン・ケミカル 電子材料 高炉・電炉 特殊鋼・金属製品 非鉄 電線 環境装置・プラント 建設機械 工作機械 軸受・工具 ロボット・空圧機器 その他産業機械 造船・重機 自動車 自動車部品 タイヤ 産業用エレクトロニクス 通信機器 民生用エレクトロニクス 電子部品 半導体製造装置 精密・フィルム その他産業用電機機器 R^2 0.71 0.76 0.76 0.77 0.77 0.95 0.78 0.77 0.78 0.71 0.76 0.84 0.67 0.77 0.77 0.87 0.68 0.72 0.67 0.88 0.82 0.86 0.74 0.74 0.83 0.74 0.81 0.76 0.63 Total 7 6 5 4 7 6 8 4 3 6 5 6 6 7 7 6 4 10 4 5 7 4 6 5 7 9 6 5 9 ファクター数 M S P 3 1 2 2 1 2 3 0 1 2 0 1 3 1 2 2 1 2 3 1 3 1 1 1 2 0 0 3 0 2 2 1 1 2 1 2 2 1 2 2 1 3 3 1 2 3 1 1 2 0 1 5 1 3 1 0 2 2 1 1 2 1 3 3 0 0 2 1 2 2 0 2 4 0 2 5 0 3 3 1 1 2 0 2 4 1 3 L 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 M 29% 18% 37% 34% 17% 19% 25% 30% 48% 33% 38% 31% 19% 16% 31% 31% 51% 31% 16% 19% 23% 55% 31% 17% 34% 40% 41% 19% 39% 利益率モデル リスクウエイト S P 13% 19% 13% 17% 0% 15% 0% 27% 17% 19% 37% 18% 11% 15% 16% 9% 0% 0% 0% 18% 9% 9% 12% 15% 12% 23% 14% 32% 15% 21% 17% 8% 0% 20% 11% 24% 0% 38% 22% 18% 17% 18% 0% 0% 13% 17% 0% 42% 0% 12% 0% 22% 19% 14% 0% 33% 18% 16% L 39% 52% 48% 40% 47% 26% 48% 45% 52% 49% 45% 43% 46% 38% 33% 45% 29% 34% 45% 41% 42% 45% 40% 42% 54% 37% 27% 48% 27% R^2 0.73 0.81 0.84 0.84 0.92 0.74 0.71 0.77 0.72 0.81 0.75 0.79 0.78 0.78 0.85 0.85 0.95 0.87 0.76 0.81 0.80 0.85 0.78 0.79 0.75 0.86 0.89 0.88 0.86 Total 7 6 5 7 6 6 8 7 5 8 6 4 7 7 7 5 4 7 4 5 7 2 6 6 7 7 7 4 8 ファクター数 M S P 2 0 4 2 0 3 2 0 2 1 1 4 0 1 4 1 0 4 3 0 4 2 0 4 2 0 2 2 1 4 3 0 2 1 0 2 1 1 4 1 1 4 3 0 3 1 1 2 0 1 2 3 0 3 1 0 2 2 0 2 2 1 3 0 0 1 2 0 3 1 0 4 3 0 3 2 0 4 1 1 4 0 0 3 2 0 5 L 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 M 8% 8% 11% 4% 0% 5% 13% 12% 32% 7% 20% 8% 6% 3% 15% 17% 0% 7% 5% 7% 11% 0% 7% 4% 10% 8% 4% 0% 4% リスクウエイト S P 0% 82% 0% 73% 0% 56% 4% 80% 6% 52% 0% 93% 0% 64% 0% 87% 0% 17% 2% 81% 0% 73% 0% 87% 4% 85% 2% 88% 0% 81% 8% 43% 5% 90% 0% 83% 0% 87% 0% 75% 3% 60% 0% 53% 0% 88% 0% 92% 0% 83% 0% 83% 5% 89% 0% 97% 0% 91% L 10% 19% 33% 12% 42% 3% 23% 1% 51% 10% 7% 5% 6% 6% 4% 32% 6% 10% 8% 18% 27% 47% 5% 4% 7% 9% 2% 3% 5% (出所)野村證券金融工学研究センター 16 業種別事業リスク評価モデル② ∼消費・流通・情報・公益・インフラ∼ 売上高モデル 業種名(NINDM) 6 医薬・ヘルスケア 7 食品 8 家庭用品 9 10 商社 小売り 11 サービス 12 12 13 ソフトウェア ソフトウェア メディア 14 15 通信 建設 16 住宅・不動産 17 運輸 18 公益 業種名(NINDS) 30 31 32 33 34 36 37 38 39 40 41 42 44 45 46 47 48 49 50 51 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 医薬品 ヘルスケア 素材食品 加工食品 酒類・飲料・タバコ 化粧品・トイレタリー アパレル・スポーツ用品 その他個人向け製造 商社 百貨店 専門店 GMS・CVS 外食 個人向けサービス 企業向けサービス アミューズメント システム・アプ リケーショ ン 映画・娯楽 放送 出版・広告 通信インフラ・インターネットサービス スーパーゼネコン 中堅建設 道路舗装 設備工事 住宅 不動産 住設機器 海運 空運 トラック運送 電鉄 港湾・倉庫 電力 ガス R^2 0.73 0.71 0.68 0.68 0.66 0.50 0.87 0.82 0.63 0.84 0.64 0.72 0.73 0.68 0.70 0.39 0.77 0.64 0.68 0.62 0.70 0.94 0.83 0.89 0.83 0.67 0.58 0.79 0.72 0.96 0.63 0.65 0.80 0.96 0.97 Total 5 4 6 5 3 1 6 8 6 5 6 4 4 4 6 2 6 2 6 3 5 4 6 6 7 8 5 8 6 4 5 4 7 4 6 ファクター数 M S P 2 1 1 1 1 1 2 0 3 2 0 2 1 0 1 0 0 0 3 0 2 4 0 3 3 0 2 3 0 1 2 0 3 1 0 2 1 0 2 2 0 1 3 1 1 0 0 1 3 0 2 0 0 1 4 0 1 1 0 1 1 1 2 0 1 2 3 0 2 2 1 2 4 0 2 4 1 2 1 1 2 3 1 3 3 0 2 1 1 1 2 1 1 1 0 2 3 1 2 2 1 0 2 1 2 L 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 M 14% 9% 16% 17% 15% 0% 26% 31% 40% 30% 17% 7% 6% 19% 39% 0% 44% 0% 81% 32% 12% 0% 26% 11% 34% 32% 10% 25% 36% 15% 30% 13% 24% 22% 9% 利益率モデル リスクウエイト R^2 Total S P L 20% 20% 46% 0.87 6 29% 40% 21% 0.92 5 0% 19% 65% 0.86 8 0% 20% 63% 0.81 6 0% 21% 64% 0.85 4 0% 0% 100% 0.91 4 0% 12% 62% 0.68 6 0% 24% 45% 0.93 5 0% 21% 39% 0.83 5 0% 14% 56% 0.84 4 0% 41% 43% 0.72 4 0% 35% 58% 0.96 5 0% 49% 45% 0.79 5 0% 40% 41% 0.79 3 15% 15% 30% 0.84 7 0% 74% 26% 0.72 3 0% 19% 37% 0.87 6 0% 12% 88% 0.84 6 0% 9% 9% 0.88 5 0% 40% 28% 0.85 5 21% 40% 27% 0.68 3 54% 21% 25% 0.55 4 0% 32% 42% 0.80 8 16% 26% 48% 0.94 5 0% 18% 49% 0.86 6 19% 19% 29% 0.85 5 14% 18% 57% 0.95 4 6% 25% 44% 0.81 5 0% 16% 49% 0.67 5 33% 31% 21% 0.75 4 24% 11% 35% 0.83 2 0% 37% 50% 0.83 2 18% 15% 43% 0.81 4 33% 0% 45% 0.70 1 31% 12% 48% 0.67 3 ファクター数 M S P 1 0 4 0 0 4 2 1 4 2 0 3 0 0 3 1 0 2 2 0 3 1 0 3 1 0 3 0 0 3 0 0 3 0 0 4 0 0 4 0 0 2 2 0 4 1 0 1 2 0 3 1 0 4 0 0 4 0 0 4 0 0 2 1 0 2 2 1 4 0 0 4 0 1 4 2 0 2 1 0 2 2 0 2 0 0 4 2 0 1 1 0 0 1 0 0 1 0 2 0 0 0 1 0 1 L 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 M 2% 0% 3% 3% 0% 3% 6% 2% 12% 0% 0% 0% 0% 0% 6% 12% 5% 5% 0% 0% 0% 24% 5% 0% 0% 7% 6% 8% 0% 56% 11% 8% 5% 0% 22% リスクウエイト S P L 0% 77% 21% 0% 85% 15% 2% 85% 10% 0% 79% 18% 0% 34% 66% 0% 74% 24% 0% 80% 13% 0% 74% 24% 0% 28% 60% 0% 85% 15% 0% 87% 13% 0% 92% 8% 0% 88% 12% 0% 61% 39% 0% 75% 19% 0% 58% 30% 0% 88% 7% 0% 63% 31% 0% 93% 7% 0% 99% 1% 0% 89% 11% 0% 68% 8% 2% 76% 17% 0% 94% 6% 3% 79% 18% 0% 80% 14% 0% 51% 43% 0% 59% 33% 0% 78% 22% 0% 16% 28% 0% 0% 89% 0% 0% 92% 0% 50% 45% 0% 0% 100% 0% 16% 62% ※サンプル数調整のため、34酒類・飲料と35たばこ、42GMSと43CVS、および52通信インフラと53インターネットサービスは、それぞれ同業種扱いとした。 (出所)野村證券金融工学研究センター 17 事業リスクウエイトの比較① ∼素材∼ 【売上高のリスクウエイト】 0% 10% 20% 30% 40% 50% 【営業利益率のリスクウエイト】 60% 70% 80% 90% 0% 100% ガラス・セメント ガラス・セメント 合繊 合繊 綿紡 綿紡 紙・パルプ 紙・パルプ 石油 石油 総合化学 総合化学 ファイン・ケミカル ファイン・ケミカル 電子材料 電子材料 高炉・電炉 高炉・電炉 特殊鋼・金属製品 特殊鋼・金属製品 非鉄 非鉄 電線 電線 マクロ セミマクロ プライベート ラグ(前期売上高) (出所)野村證券金融工学研究センター 10% 20% マクロ 30% 40% セミマクロ 50% 60% プライベート 70% 80% 90% 100% ラグ(前期利益率) (出所)野村證券金融工学研究センター 18 事業リスクウエイトの比較② ∼機械・自動車・エレクトロニクス∼ 【売上高のリスクウエイト】 0% 10% 20% 30% 40% 50% 【営業利益率のリスクウエイト】 60% 70% 80% 90% 100% 0% 環境装置・プラント 環境装置・プラント 建設機械 建設機械 工作機械 工作機械 軸受・工具 軸受・工具 ロボット・空圧機器 ロボット・空圧機器 その他産業機械 その他産業機械 造船・重機 造船・重機 自動車 自動車 自動車部品 自動車部品 タイヤ タイヤ 産業用エレクトロニクス 産業用エレクトロニクス 通信機器 通信機器 民生用エレクトロニクス 民生用エレクトロニクス 電子部品 電子部品 半導体製造装置 半導体製造装置 精密・フィルム 精密・フィルム その他産業用電機機器 その他産業用電機機器 マクロ セミマクロ プライベート ラグ(前期売上高) (出所)野村證券金融工学研究センター 10% 20% マクロ 30% 40% セミマクロ 50% プライベート 60% 70% 80% 90% 100% ラグ(前期営業利益率) (出所)野村證券金融工学研究センター 19 エレクトロニクス(民生+産業)事業リスク評価モデル 営業利益 (出所)野村證券金融工学研究センター 売上高モデル Type 利益率モデル Factor T値 Type Factor T値 M 鉱工業生産 6.93 M 2 M 鉱工業生産伸び率 9.67 M 鉱工業生産伸び率 8.41 M 6 M 円ドルレート変化率 3.35 M 10年国債応募者利回り前年差 -2.23 P 5 P 売上高付加価値率 11.10 P 従業員数(基準化) 2.80 P 6 P 販管費比率 -8.21 L 前期売上高(基準化) 24.26 P 7 P 減価償却費(対数) -4.77 定数項 -6.78 L 2 L 前期売上高営業利益率 6.62 定数項 3.15 R^2 0.84 R^2 0.95 (マクロ) 鉱工業生産 14% (マクロ) 鉱工業生産伸び率 14% (モメンタム) 前期売上高(基準 化) 62% 10年国債応募者利 回り前年差(マクロ) 3% 従業員数(基準化) 7% (プライベート) (モメンタム) 前期売上高営 業利益率 12% (プライベート) 減価償却費(対 数) 10% (プライベート) 販管費比率 23% 鉱工業生産伸 び率 (マクロ) 15% 円ドルレート変 化率 (マクロ) 5% 売上高付加価 値率 (プライベート) 35% 20 売上高、営業利益率の推定結果(日立製作所) 【売上高(基準化ベース)】 【売上高営業利益率】 2.0 10.0% 1.5 8.0% 売上高営業利益率 0.5 0.0 -0.5 -1.0 -1.5 6.0% 4.0% 2.0% 0.0% -2.0% 相関:0.99 -2.5 実績値 推計値 (年度) 相関:0.98 -4.0% 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 -2.0 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 売上高(基準化) 1.0 実績値 推定値 (年度) ※日立製作所の過去22年間の売上高を基準化している。 (出所)野村證券金融工学研究センター (出所)野村證券金融工学研究センター 21 売上高(対前期増減額)の要因分解、および売上高リスクの大きさ (日立製作所) 【売上高(対前期増減額)の要因分解】 【各リスクファクターに対する売上高リスク】 1,500,000 366,031 (1,364,108) 前期売上高(基準化) 1,000,000 111,015 (63,512) 売上高(対前期増減額) 従業員数(基準化) 500,000 前期総資産成長率 0 95,138 (8.19%) 441,840 (4.59%) 鉱工業生産伸び率 -500,000 鉱工業生産 48,543 (5.6) 0 100,000 200,000 300,000 400,000 -1,000,000 500,000 (百万円) ファクター1σ変化に対する売上高変化額 -1,500,000 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 (年度) 鉱工業生産 前期売上高(基準化) 鉱工業生産伸び率 残差 前期総資産成長率 前年度売上高変化額 従業員数(基準化) ※ ( )内数値は過去22年間のデータの1標準偏差σ。 ※ 各リスクファクターが1σ変動した場合に、売上高に与える 影響額を表す。 ※ 日立製作所の売上高は、景気変動による影響がもっとも 大きい。 (出所)野村證券金融工学研究センター 22 営業利益率の要因分解、および利益率リスクの大きさ (日立製作所) 【営業利益率の要因分解】 【各リスクファクターに対する利益率リスク】 25% 15% 売上高営業利益率 10% 5% 0.60% (2.45%) 前期売上高営業利益率 20% 減価償却費(対数) 8.92% 6.12% 4.43% 5.04% 0.10% (0.2) 販管費比率 6.77% 7.08% 6.55% 4.53% 2.95% 2.88% 0% 4.01% 4.09% 3.49% 4.07% 2.48% 2.18% -0.43% 1.87% 2.14% 0.90% (2.06%) 3.09%2.70% 売上高付加価値率 1.50% (3.2%) -1.47% -5% 鉱工業生産伸び率 0.80% (4.48%) -10% 0.0% 0.2% 0.4% 0.6% 0.8% 1.0% 1.2% 1.4% 1.6% ファクター1σ変動に対する利益率変化 -15% -20% 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 (年度) 鉱工業生産伸び率 前期売上高営業利益率 売上高付加価値率 残差 販管費比率 売上高営業利益率 減価償却費(対数) ※ ( )内数値は過去22年間のデータの1標準偏差σ。 ※ 各リスクファクターが1σ変動した場合に、売上高営業利益 率に与える影響度を表す。 ※ 日立製作所の売上高営業利益率は、売上高付加価値率 (=[役員報酬+給料+賃貸料+減価償却費+租税+支 払利息+経常利益]/売上高)による影響がもっとも大きい。 (出所)野村證券金融工学研究センター 23 将来営業利益予想の分布(日立製作所) 600,000 400,000 楽観(実現確率16%) アナリスト予想 300,000 200,000 中立(実現確率50%) 100,000 悲観(実現確率84%) 2008E 2007E 2006E 1996 1995 1994 1993 1992 1991 1990 1989 1988 1987 1986 1985 0 1984 営業利益(百万円) 500,000 (出所)野村證券金融工学研究センター 24 今期営業利益予想の分布、および重要なリスクファクターの把握 (日立製作所) アナリスト予想値(210,000百万円) 600 -1σ +1σ 100% 90% 500 80% 300 50% 40% 200 30% -3.10% 3.10% 鉱工業生産伸び率 -4.60% 4.60% 販管費比率 -2.10% 2.10% 円ドルレート変化率 -10.40% 10.40% 減価償却費(対数) -0.25 0.25 鉱工業生産 -7.09 7.09 -1 1 -0.60% 0.60% 20% 100 10% 0 0% -195,200 -156,400 -117,600 -78,800 -40,000 -1,200 37,600 76,400 115,200 154,000 192,800 231,600 270,400 309,200 348,000 386,800 425,600 464,400 503,200 542,000 580,800 619,600 658,400 697,200 736,000 観測数(回) 60% 累積実現確率 70% 400 売上高付加価値率 従業員数(基準化) 10年国債応募者利回り前年差 -150,000 -100,000 -50,000 0 50,000 100,000 150,000 ファクター1σ変化に対する営業利益変化額(百万円) 営業利益(百万円) (出所)野村證券金融工学研究センター (出所)野村證券金融工学研究センター 25 来期営業利益予想の分布、および重要なリスクファクターの把握 (日立製作所) アナリスト予想値(300,000百万円) 600 -1σ +1σ 100% 売上高付加価値率 -2.40% 2.40% 鉱工業生産伸び率 -4.60% 4.60% 販管費比率 -2.10% 2.10% 前期売上高営業利益率 -1.30% 1.30% -10.40% 10.40% 前期売上高(基準化) -0.22 0.22 30% 減価償却費(対数) -0.12 0.12 20% 鉱工業生産 -5.35 5.35 10% 従業員数(基準化) -0.71 0.71 -0.60% 0.60% 90% 500 80% 300 50% 40% 200 100 0 0% -215,700 -177,900 -140,100 -102,300 -64,500 -26,700 11,100 48,900 86,700 124,500 162,300 200,100 237,900 275,700 313,500 351,300 389,100 426,900 464,700 502,500 540,300 578,100 615,900 653,700 691,500 観測数(回) 60% 累積実現確率 70% 400 円ドルレート変化率 10年国債応募者利回り前年差 -150,000 -100,000 -50,000 0 50,000 100,000 150,000 ファクター1σ変化に対する営業利益変化額(百万円) 営業利益(百万円) (出所)野村證券金融工学研究センター (出所)野村證券金融工学研究センター 26 売上高リスクのエレクトロニクス企業間比較 【売上高(基準化ベース)の要因分解】 【日立-松下のリスク要因格差】 基準化売上高差要因分解 5.0 残差 -0.57 0.25 前期売上高(基準化) 3.0 -0.08 従業員数(基準化) 2.0 1.94 1.55 1.15 1.0 1.06 1.02 0.81 0.79 0.31 10年国債応募者利回り前年差 0.00% 鉱工業生産伸び率 0.00% 鉱工業生産 0.0 -0.8 鉱工業生産 従業員数(基準化) 基準化売上高 鉱工業生産伸び率 前期売上高(基準化) シャープ 三菱電機 富士通 日本電気 ソニー 東芝 松下電器産業 -1.0 日立製作所 基準化売上高要因分解 4.0 0.0 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 基準化売上高 10年国債応募者利回り前年差 残差 (出所)野村證券金融工学研究センター 27 営業利益率リスクのエレクトロニクス企業間比較 【売上高営業利益率の要因分解】 【日立-松下のリスク要因格差】 利益率差要因分解 20% 残差 -1.8% 10% 5% 4.66% 2.70% 0% 3.79% 2.56% 1.98% 5.85% 前期売上高営業利益率 4.38% 3.79% -0.1% 減価償却費(対数) -5% -0.3% 販管費比率 2.6% -10% 売上高付加価値率 -15% 鉱工業生産伸び率 販管費比率 残差 シャープ 三菱電機 富士通 日本電気 ソニー 東芝 松下電器産業 -20% 日立製作所 利益率要因分解 15% -2.4% 円ドルレート変化率 0.0% 鉱工業生産伸び率 0.0% -3.0% -2.0% -1.0% 0.0% 1.0% 2.0% 3.0% 売上高営業利益率 円ドルレート変化率 減価償却費(対数) 利益率 売上高付加価値率 前期売上高営業利益率 ※ 日立よりも松下の方が残差が大きいことから、松下にはコモン ファクターだけでは説明できない要素が存在する。 ※ 松下の利益率の方が日立よりも優れている主な要因は、売上高 付加価値率が高いことにある。 (出所)野村證券金融工学研究センター 28 企業リスクマネジメント手法の概要 企業リスク評価 企業リスクマネジメント手法 保有・取得 リスクキャピタル M&A&D 軽減 回避 オペレーショナル (ex.為替リスクに対する円 建決済、現地生産など) リアルオプション (投資計画の縮小、延期、 中止、撤退など) 転嫁・共有 デリバティブ 証券化 保険・ART 企業価値の最大化・安定化 (出所)野村證券金融工学研究センター 29 リスクマネジメント戦略によるリターン向上・リスク低減効果 3,000 2,500 頻度 2,000 1,500 1,000 500 0 1,500 1,700 1,900 2,100 2,300 2,500 2,700 2,900 3,100 3,300 3,500 3,700 3,900 4,100 4,300 4,500 理論株価(円) 事業価値(億円) ベースシナリオ リスクマネジメント後 (出所)野村證券金融工学研究センター 30 全社リスクマネジメント 全社 全社 ① ① 概念・目的の設定 概念・目的の設定 組織、体制 リスク選好、リスク許容度の設定 ② ② リスクの洗い出し リスクの洗い出し 外部要因、内部要因の抽出 影響の方向性確認(プラス/マイナス/双方) 個別事業単位 1) 1) リスクの評価基準策定 リスクの評価基準策定 全社・ グループ全体 ③ ③ リスク リスク 評価 評価 2) 2) リスク評価の実施 リスク評価の実施 定量評価(確率モデル:VaR、EaRなど 非確率モデル:感応度、シナリオ分析など) 定性評価 リスクの相互依存関係の評価 3) 3) リスク管理の現状評価 リスク管理の現状評価 固有リスクマネジメント 費用対効果の評価 4) 4) 残存ベースのリスク評価 残存ベースのリスク評価 ④ ④ リスク リスク 対応 対応 1) 1) リスク選好とリスク許容度 リスク選好とリスク許容度 2) 2) ポートフォリオの視点 ポートフォリオの視点 ⑤ ⑤ 統制活動・モニタリング 統制活動・モニタリング リスクマップ作成(発生可能性と影響度) 残余リスクの評価 リスクの相互依存関係の評価 全社企業価値の最大化 経済資本の配賦、リスクキャピタル推計 成果確認、報告書作成、IT対応、役割と責任 (出所)野村證券金融工学研究センター 31 ポートフォリオの視点で評価する ポートフォリオ理論による事業部門評価(1999年度∼2003年度の平均値) 100% グループ全体の最適事業ポートフォリ グループ全体の最適事業ポートフォリ オ(有効フロンティア)を左上方に押し オ(有効フロンティア)を左上方に押し 上げるのに効果的な投資案件。 上げるのに効果的な投資案件。 80% 期待リターン(EP/投下資本の平均値) 期待リターン B M&A対象事業 可能であれば子会社上場に加えて、戦略的投 可能であれば子会社上場に加えて、戦略的投 資家(同業他社等)への売却も検討されるべき 資家(同業他社等)への売却も検討されるべき 部門。最悪の場合は清算。既公開会社に関し 部門。最悪の場合は清算。既公開会社に関し ては、保有持分の売り切りも考え得る。 ては、保有持分の売り切りも考え得る。 60% D コア事業 戦略分野 (グループ外に出してもいい事業) C F 40% E M L 20% A G K リスク低減戦略 H J 分社化・IPO 0% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% I -20% 合理化策の検討 N 抜本的改善・整理・撤退 -40% 事業リスク(EP/投下資本の標準偏差) 事業リスク (出所)野村證券金融工学研究センター 32 リスクの統合/リスクアロケーション戦略 株価リスク 統一尺度による 統一尺度による リスク統合 リスク統合 (EaR、VaR等) (EaR、VaR等) 個別ヘッジ+ リスクアロケーションに よる最適ヘッジ戦略 事業リスク 為替リスク 信用リスク トータルリスクの把握 トータルリスクの把握 (出所)野村證券金融工学研究センター 33 リスク選好とリスク許容度、および最適ポートフォリオ 期待リターン EPOC(=EP/投下資本)の平均値(1999年度∼2006年度) 45% 部門1 30% 部門2 15% 部門3 全体 部門4 部門6 部門10 0% 部門7 部門5 部門8 部門9 部門11 -15% 0% 2% 4% 6% 8% EPOC(=EP/投下資本)の標準偏差(1999年度∼2006年度) リスク 10% 12% (出所)野村證券金融工学研究センター 34 経済資本(リスクキャピタル)の見積もり リスク管理の考え方のイメージ図 許容範囲内(資本市場で事前に想定) 頻度 許容範囲外 定常的リスク 非定常的 リスク 日商上のリスクなど 保有して 対応 取引先倒産、 リーガルリスク、 地震など 資本で カバー 未曾有の 天変地異など 損失 リスクキャピタル (出所)野村證券金融工学研究センター 35 定量モデルの実務への適用 ∼汎用版からカスタマイズ版へ∼ Model A: 汎用版事業リスク評価モデル 企業独自の知的経営資産情報 セグメント情報活用、 将来シナリオの構成項目別 分析母集団・リスクドライバー 定量評価、データ蓄積、 選択などの見直し 分布推定 セミマクロ マクロリスク 詳細プライ リスク ベートリスク 簡易プライ ベートリスク Model B:カスタマイズ版 事業リスク評価モデル (出所)野村證券金融工学研究センター 36 ガラス・セメント 合繊 綿紡 紙・パルプ 石油 総合化学 ファイン・ケミカル 電子材料 高炉・電炉 特殊鋼・金属製品 非鉄 電線 環境装置・プラント 建設機械 工作機械 軸受・工具 ロボット・空圧機器 その他産業機械 造船・重機 自動車 自動車部品 タイヤ 産業用エレクトロニクス 通信機器 民生用エレクトロニクス 電子部品 半導体製造装置 精密・フィルム その他産業用電機機器 医薬品 ヘルスケア 素材食品 加工食品 酒類・飲料・タバコ 化粧品・トイレタリー アパレル・スポーツ用品 その他個人向け製造 商社 百貨店 専門店 GMS・CVS 外食 個人向けサービス 企業向けサービス アミューズメント システム・アプリケー 映画・娯楽 放送 出版・広告 通信インフラ・インター スーパーゼネコン 中堅建設 道路舗装 設備工事 住宅 不動産 住設機器 海運 空運 トラック運送 電鉄 港湾・倉庫 電力 ガス 決定係数 【売上高リスク評価モデル】 【営業利益率リスク 評価モデル】 ガラス・セメント 合繊 綿紡 紙・パルプ 石油 総合化学 ファイン・ケミカル 電子材料 高炉・電炉 特殊鋼・金属製品 非鉄 電線 環境装置・プラント 建設機械 工作機械 軸受・工具 ロボット・空圧機器 その他産業機械 造船・重機 自動車 自動車部品 タイヤ 産業用エレクトロニクス 通信機器 民生用エレクトロニクス 電子部品 半導体製造装置 精密・フィルム その他産業用電機機器 医薬品 ヘルスケア 素材食品 加工食品 酒類・飲料・タバコ 化粧品・トイレタリー アパレル・スポーツ用品 その他個人向け製造 商社 百貨店 専門店 GMS・CVS 外食 個人向けサービス 企業向けサービス アミューズメント システム・アプリケー 映画・娯楽 放送 出版・広告 通信インフラ・インター スーパーゼネコン 中堅建設 道路舗装 設備工事 住宅 不動産 住設機器 海運 空運 トラック運送 電鉄 港湾・倉庫 電力 ガス 決定係数 業種別事業リスク評価モデルの説明力の比較 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 (出所)野村證券金融工学研究センター 37 推定誤差の比較 【売上高リスク評価モデル】 【営業利益率リスク評価モデル】 社名 ランク 平均 標準偏差 社名 平均 標準偏差 1 0.87 0.78 ソニー 1 1.14% 0.91% シャープ 2 0.84 0.86 三菱電機 2 0.79% 0.83% 日本電気 3 0.79 0.50 東芝 3 0.71% 0.34% 富士通 4 0.73 0.55 日本電気 4 0.63% 0.53% ソニー 5 0.70 0.67 富士通 5 0.63% 0.78% 三菱電機 6 0.65 0.66 シャープ 6 0.62% 0.66% 東芝 7 0.54 0.58 松下電器産業 7 0.48% 0.40% 日立製作所 8 0.53 0.44 日立製作所 8 0.35% 0.30% ソニー 1.2% 1.2 1.0 1.0% 松下電器産業 NEC 0.8 シャープ 富士通 ソニー 0.6 三菱電機 日立製作所 0.4 東芝 推定誤差の平均値 推定誤差の平均値 ランク 松下電器産業 三菱電機 0.8% 東芝 NEC 0.6% シャープ 富士通 松下電器産業 0.4% 日立製作所 0.2 0.2% 0.0 0.0 0.2 0.4 0.6 推定誤差の標準偏差 0.8 1.0 0.0% 0.0% 0.2% 0.4% 0.6% 推定誤差の標準偏差 0.8% 1.0% ※過去22年間(84年度∼05年度)の売上高(各企業内で基準化)および営業利益率の推定誤差(実績値-推定値)の各企業内における時系列平均値と標準偏差。 ※各推定誤差の平均値の大きい順によるランキング。 (出所)野村證券金融工学研究センター 38 J-SOXからERMへの発展が企業価値向上につながる z 重要な経営課題として経営陣が積 極的に関与し、全社で対応する。 z 内部統制のレベルも年ごとにアップ する。 z リスク管理に加えて、ガバナンスも向 上し、企業価値向上につながる。 次のステップに進めない企業は・・・ J-SOX法の導入 (2008年4月期以降適用) 【リスクアプローチの採用】 財務報告に係わる重大な虚偽 の表示につながるリスクに着眼 して、必要な範囲で業務プロセス に係わる内部統制を評価する。 【ERMへの基礎ステップは完了】 z バックオフィスを中心とした単 なる文書化プロジェクトで止 まってしまう。 ERMの導入 リスクを全社的視点で、合理 的かつ最適な方法で管理して、 リターンを最大化することで、 企業価値を高める経営管理 手法。 z コスト最小化が目的となってし まい、やがて形骸化する。 z 全体の整合性や継続が失わ れ、内部統制の範囲やレベル は年ごとに低下する。 z 経営陣が気づかない偽証リス クが高まり、企業価値破壊に つながる可能性も。 J-SOX法の導入実績 ∼ERMへの基礎ステップ∼ (出所)野村證券金融工学研究センター 39 本資料は、ご参考のために野村證券株式会社が独自に作成したものです。本資料に関する事項について貴社が意思 決定を行う場合には、事前に貴社の弁護士、会計士、税理士等にご確認いただきますようお願い申し上げます。本資料 は、新聞その他の情報メディアによる報道、民間調査機関等による各種刊行物、インターネットホームページ、有価証券 報告書及びプレスリリース等の情報に基づいて作成しておりますが、野村證券株式会社はそれらの情報を、独自の検 証を行うことなく、そのまま利用しており、その正確性及び完全性に関して責任を負うものではありません。また、本資料 のいかなる部分も一切の権利は野村證券株式会社に属しており、電子的または機械的な方法を問わず、いかなる目的 であれ、無断で複製または転送等を行わないようお願い致します。 40