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北米再生可能エネルギー会議
調 査 報 告 シカゴ 北米再生可能エネルギー会議 再生可能エネルギーの必要性が叫ばれて久しいが、全ての種類の再生可能エネルギーを 包括する会議及び展示会としては世界最大規模と言われる「北米再生可能エネルギー国際 会 議 及 び 展 示 会 」 が 12 月 に カ リ フ ォ ル ニ ア 州 ロ ン グ ビ ー チ に お い て 開 催 さ れ た 。 再生可能エネルギーに関連する展示会・カンファレンスに関しては、各個別のエネルギ ーに関するものがそれぞれに大規模になってきており、本展示会のように全体を包括する 展示会である必要性は徐々に薄れてきているのか、今回の規模自体はそんなに大きくはな く 、 ま た 、 2012 年 12 月 に 予 定 さ れ て い る 次 回 の 展 示 会 で は 、 他 の 展 示 会 と 同 時 開 催 す る ということが発表された。 同会議の概要を以下に報告する。 1.カリフォルニア州における再生可能エネルギーの状況 ① Stuart Hemphill 氏 - サ ザ ン カ リ フ ォ ル ニ ア ・ エ ジ ソ ン 社 ( SCE) 電 力 担 当 上 席 副 社 長 2010 年 の SCE の 供 給 電 力 の う ち 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー を ソ ー ス と し た 量 は 20%未 満 の 割 合 を 占 め た に 過 ぎ な か っ た 。そ れ で も 、SCE は 、米 国 内 の 他 の ど の 電 力 会 社 よ り も 多 く の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー を 供 給 し て い る 。こ の う ち 、地 熱 が 大 半 を 占 め( 53%)、次 い で 風 力 ( 29%)、 バ イ オ マ ス ( 7%)、 太 陽 エ ネ ル ギ ー ( 6%)、 小 型 水 力 ( 5%) で あ っ た 。 米 国 エ ネ ル ギ ー 統 計 局( EIA:Energy Information Administration)の デ ー タ を 踏 ま え る と 、 発 電 事 業 者 か ら 電 力 を 購 入 し 、 送 配 電 を 行 っ て い る SCE は 米 国 内 の 太 陽 光 発 電 量 合 計 の 55%を 購 入 し た こ と に な り 、カ リ フ ォ ル ニ ア 州 の 発 電 量 合 計 の 87%を 購 入 し た こ と と な る 。地 熱 発 電 に つ い て は 、米 国 内 発 電 量 合 計 の 49%を 購 入 し 、カ リ フ ォ ル ニ ア 州 の 発 電 量 合 計 の 59%を 購 入 し た こ と と な る 。 風 力 発 電 に つ い て は 、 米 国 国 内 の 5% 、 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 の 64% を 購 入 し た こ と と な る 。 図表1 SCE に よ る 発 電 量 の う ち 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の ポ ー ト フ ォ リ オ ( 2010 年 ) 小型水力 5% ソーラー 6% バイオマス 7% 地熱 53% 風力 29% ― 17 ― 調査報告 シカゴ ( 出 所 : SCE) 今 後 SCE は 、 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 の 法 律 に 基 づ き 、 2020 年 ま で に 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 供 給 率 を 33%ま で 増 や さ な け れ ば な ら な い 。カ リ フ ォ ル ニ ア 州 の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 発 電 の キ ャ パ シ テ ィ は 、 2003 年 は わ ず か 33MW に す ぎ な か っ た が 、 2011 年 に は 予 測 も 含 め て 2,700MW を 上 回 っ た 。 図表2 カリフォルニア州における再生可能エネルギーキャパシティ (MW) 当年に追加 された量 前年までの 累積 (出所:カリフォルニア公共電力委員会) 導 入 予 定 の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 発 電 能 力 は 2020 年 ま で に 3 倍 増 加 す る こ と が 予 想 さ れ る。それにより、出力が変動する再生可能エネルギー源が送電網に及ぼす影響が増大して きており、電力コストにも影響がでてくる。再生可能エネルギーによる発電が最大容量に 近づくにつれて供給過剰となり、一方で適切な需要水準に釣り合わせるべく、変動運転が 可能な発電資源が再生可能エネルギー源の出力変動を吸収しなければならい。 2010 年 の 時 点 で 、 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 の 合 計 発 電 能 力 の 62%、 す な わ ち 69.5GW の う ち 43GW が 、天 然 ガ ス で あ っ た 。天 然 ガ ス 発 電 能 力 の 94%を 独 立 系 企 業 が 所 有 し て い た 。一 方 、 大 型 水 力 発 電 設 備 が 全 発 電 能 力 の 18%、 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー が 14%、 原 子 力 が 6%を 占めた。再生可能エネルギーの出力変動が送電網に及ぼす影響を緩和するための運転柔軟 性を有する主要なエネルギー源に天然ガスがなりつつあることは明らかである。 天然ガスの価格は、資源が開発・着手されるにつれてさらに下降するとみられる。ただ し、天然ガスプラントを、再生可能エネルギー出力とのバランスをとるための運転柔軟性 を有する発電設備として利用した場合、プラントの始動、停止、出力上昇を頻繁に繰り返 す こ と に よ っ て 発 電 プ ラ ン ト 設 備 の 疲 弊 を 招 き 、メ ン テ ナ ン ス の 必 要 性 が 増 す こ と に な る 。 また、厳格な粒子状物質排出制限や貫流冷却システムの禁止など、カリフォルニア州の環 境規制が運用コストを押し上げ、影響を受けたプラントが閉鎖に追い込まれる可能性もあ ― 18 ― 調査報告 シカゴ る。天然ガスに対しては、再生可能エネルギー発電の継続的な成長にとって必要かつ運転 柔軟性を有する対応電源としてサポートすべきである。 SCE は 、 今 後 5 年 間 で 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 契 約 を 倍 増 す る こ と を 予 定 し て い る 。 ま た SCE は 、送 電 線・配 電 線 の 改 善 に 数 十 億 ド ル を 費 や し 、新 た な 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー プ ロ ジ ェクト用の接続網を拡大し、信頼性向上に取り組んでいる。 ② Daniel Kammen 氏 - カリフォルニア大学バークレー校 再 生 可 能 ・ 適 正 エ ネ ル ギ ー 研 究 所 ( RAEL) 所 長 現 在 、 米 国 の 30 州 と ワ シ ン ト ン DC は 、 特 定 の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 供 給 義 務 化 基 準 ま たは法的拘束力のない目標を設定している。 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 の エ ネ ル ギ ー 効 率 目 標 で は 、 す べ て の 新 規 住 宅 建 設 に つ い て 、 2020 年 ま で に ゼ ロ ・ ネ ッ ト ・ エ ネ ル ギ ー ( zero net energy) を 達 成 、 ま た 2030 年 ま で に 、 す べての新規商業施設建設につきにゼロ・ネット・エネルギーを達成するとなっている。住 宅建設目標は現在の技術で実現可能とされている。システム統合や管理におけるイノベー ションによって、著しい効率性の向上を達成することができる。例えば、一般的な太陽熱 装置を従来の集中制御インバータシステムから分散型マイクロインバータシステムに切り 替 え る こ と に よ っ て 、 同 じ コ ス ト で エ ネ ル ギ ー 収 集 を 5~ 20%増 加 さ せ る こ と が で き る 。 そ れ で も 、商 業 施 設 建 設 に 関 し て 、上 記 目 標 を 達 成 す る た め の 戦 略 は ま だ 定 ま っ て い な い 。 2009 年 に 、 西 部 連 系 送 電 網 区 域 に お け る 米 国 部 分 の 平 均 発 電 量 の 割 合 は 、 32%が 石 炭 、 31%が 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー ( 水 力 25%を 含 む )、 26%が 天 然 ガ ス 、 11%が 原 子 力 で あ っ た 。 図表3 エネルギー供給源別割合 ( 出 所 : Daniel Kammen 氏 資 料 ) ― 19 ― 調査報告 シカゴ 再生可能エネルギーや原子力が石炭に取って代わるほど拡大した場合、西部連系送電網 区域における米国部分は、持続可能な低炭素エネルギーを供給する最も高い潜在能力を有 する一つである。 国 際 エ ネ ル ギ ー 機 関 に よ る と 、 2010 年 に 世 界 中 で 14 億 の 人 々 が 電 力 を 持 た な か っ た 。 さ ら に 10 億 の 人 々 が 、 断 続 的 で 信 頼 性 の な い 電 力 に 頼 っ て い た 。 現 在 の 人 口 傾 向 が 続 い た 場 合 、 2030 年 に は 12 億 の 人 々 が 依 然 と し て 電 力 の な い 状 態 で あ る こ と が 予 想 さ れ る 。 これらの人々のほとんどが、サハラ以南のアフリカ、またはインドやその他のアジア発展 途 上 国 に 住 ん で い る 。 世 界 の ほ と ん ど の 地 域 で 、 電 力 を 持 た な い 人 々 の 数 は 2010 年 と 比 較 し て 2030 年 ま で に 減 尐 す る 見 込 み で あ る が 、 サ ハ ラ 以 南 の ア フ リ カ で は 、 そ の 数 が 4 億 6,500 万 人 か ら 5 億 4,400 万 人 に 増 加 す る こ と が 予 想 さ れ る 。 興 味 深 い こ と に 、 2010 年 に 中 国 で は 依 然 と し て 電 力 の な い 人 々 が 農 村 部 に 800 万 人 い た が 、 2030 年 ま で に は そ の数がゼロになるとみられる。 再生可能エネルギーを活用していくことは、これらの枯渇地域における電力需要を満た すための非常に有効な手段の一つであり、国連事務総長によるハイレベル会合である 「 Sustainable Energy for All」で も 世 界 的 な エ ネ ル ギ ー ミ ッ ク ス の 中 で 、再 生 可 能 エ ネ ル ギーについては、その割合を倍増させる必要があるとされた。 ③ Michael Webster 氏 - ロ サ ン ゼ ル ス 市 水 道 電 力 局 ( LADWP) 電 力 技 術 マ ネ ー ジ ャ ー LADWP は 米 国 内 最 大 の 市 営 公 益 事 業 で あ る 。 LADWP は 400 万 人 を 超 え る 顧 客 に サ ー ビ ス を 提 供 し て い る 。 LADWP は 垂 直 的 に 統 合 さ れ た 組 織 で も あ り 、 発 電 と 配 電 を 行 っ て いる。 ロサンゼルスにおける電力供給は転換期の真っただ中にあり、これは多くの州法や州の 政 策 が そ う し た 変 化 を 促 し て い る 。 LADWP に と っ て の 課 題 は 、 石 炭 火 力 発 電 の 廃 止 、 沿 岸 発 電 所 か ら の 海 洋 冷 却 の 廃 止 、 2020 年 ま で に 電 力 の 33%を 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー か ら 発 電すること、効率を高め炭素排出量を低減することなどの環境目標を達成しつつ、競争力 のある電力料金と高い信頼性を維持することである。 LADWP は カ リ フ ォ ル ニ ア 州 だ け で な く 、 ワ シ ン ト ン 、 ネ バ ダ 、 ユ タ 、 ワ イ オ ミ ン グ お よびアリゾナ州でも再生可能エネルギープロジェクトを展開中で、自体の送電線を使用し て都市にそれらの電力を供給しつつある。 2000 年 代 半 ば の ほ と ん ど に お い て 、 LADWP の 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー 発 電 シ ェ ア は 約 6% 前 後 で あ っ た 。 2 年 間 の 急 成 長 を 経 て 2010 年 に は そ の シ ェ ア が 20%に 跳 ね 上 が り 、 カ リ フォルニア州の他の主要電力会社すべてを凌ぐまでになった。 ― 20 ― 調査報告 シカゴ 図表4 カリフォルニア州の電力会社における再生可能エネルギーの割合 20% Southern California Edison 15% Pacific Gas and Electric 10% LADWP 5% San Diego Gas and Electric 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 ( 出 所 : Michael Webster 氏 資 料 ) カ リ フ ォ ル ニ ア 州 は 、2010 年 に 発 電 量 の 約 40%を 占 め た 石 炭 火 力 発 電 を 2027 年 ま で に 廃止する予定である。石炭火力発電は、エネルギー効率化に向けた取り組み、再生可能エ ネルギー発電、および天然ガスの組み合わせによって取って代わられる予定で、カリフォ ルニア州における天然ガスの使用は倍増するとみられる。 図表5 水力 5% エネルギー源の変化 その他 2% 原子力 10% 水力 3% 原子力 7% その他 10% 石炭 39% 天然ガス 47% 再生可 能エネル ギー 20% 再生可 能エネル ギー 33% 天然ガス 24% ( 出 所 : Michael Webster 氏 資 料 ) ― 21 ― 調査報告 シカゴ 現 在 は 海 洋 冷 却 を 利 用 し な が ら も 、 新 た な 冷 却 シ ス テ ム を 2029 年 ま で に 設 置 す る こ と を 予 定 し て い る 発 電 所 が 9 つ あ る 。そ れ ら の 設 備( 新 た な 冷 却 シ ス テ ム )の う ち 3 つ が 現 在着工している。 LADWP は 締 結 済 み の 契 約 が 満 了 し た 時 点 で 、石 炭 の 使 用 を や め る 予 定 で あ る 。2015 年 ま で に 、 旧 式 の 477MW ナ バ ホ 石 炭 火 力 発 電 所 に 取 っ て 代 わ り 、 300MW の 複 合 サ イ ク ル 天然ガス発電能力と、再生可能エネルギー発電および効率改善に向けた幾つかの取り組み が活用されることになっている。 2.イノベーションからセキュリティへ:米軍と再生可能エネルギー ① Peter Asmus - パ イ ク リ サ ー チ 社 ( Pike Research) 上 級 リ サ ー チ ア ナ リ ス ト 米軍は世界中で、石油をはじめとするあらゆる形態のエネルギーの最大の消費者となっ ている。米軍は、アフガニスタンで使用する化石燃料は、物流も考慮すると 1 ガロン当た り 400 ド ル を 費 や し て い る こ と に な る 。ま た 、現 場 で 最 も 使 用 す る 化 石 燃 料 は 、実 は 車 両 運搬用ではなく発電用である。 図表6 国防総省による再生可能エネルギー調達量推移 (M$) その他 地熱 風力 太陽光 (出所:パイクリサーチ) パイクリサーチ社は先般、マイクログリッドに関するレポートを発表した。マイクログ リッドは、複数のディーゼル発電機をシステム内に組み込みネットワーク化し、化石燃料 の消費量を抑えることができ、また、ネットワークに接続されていない分散型で、再生可 能エネルギー発電を現場で一体化することができる。国内の軍事基地用に、固定式マイク ― 22 ― 調査報告 シカゴ ロ グ リ ッ ド が 開 発 さ れ つ つ あ り 、20 件 を 超 え る プ ロ ジ ェ ク ト が 進 行 中 で あ る 。プ ロ ジ ェ ク ト の ほ と ん ど が 2MW 未 満 で あ る が 、 こ れ ら の マ イ ク ロ グ リ ッ ド は 合 計 で 尐 な く と も 300MW の 電 力 を 供 給 す る 可 能 性 を 持 っ て お り 、 大 規 模 に 配 備 さ れ た 場 合 、 そ れ 以 上 の 電 力が見込まれる。 市場は小規模ながら、移動式マイクログリッドも現場の僻地用に開発されており、現場 が頻繁に変わっても仮設することができる。ロッキード・マーチン社やハネウェル社とい っ た 大 手 軍 需 産 業( 防 衛 関 係 契 約 企 業 )は 、国 防 総 省( DOD)関 連 の 実 証 プ ロ ジ ェ ク ト に 取 り 組 ん で お り 、再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー を 使 用 し な い 場 合 で も 、化 石 燃 料 の 消 費 量 を 50%も 低 減 す る こ と が で き る 。 さ ら に DOD は 、 戦 場 、 特 に 燃 料 部 隊 で 800 名 以 上 の 米 国 契 約 企 業社員が死亡しているアフガニスタンにおいて、現場での死傷者を減らす手段として移動 式マイクログリッドに大きな興味を示している。 Skybuilt Power 社 は 、小 型 の 標 準 貨 物 コ ン テ ナ か ら ソ ー ラ ー・パ ネ ル( 太 陽 電 池 パ ネ ル ) と小型風力タービンを配備する移動式パワーステーションを開発した。これらは、迅速な 設置・分解・移動が可能であり、その際にわずかな作業員と訓練が必要なだけである。 イギリス、カナダ、フランスおよびオーストラリアの軍部も、マイクログリッドの開発に 活発に取り組んでいる。ロールスロイス社はこの分野の先端企業になった。 軍部が政策を基盤とする大きな推進力となっている一方で、太陽エネルギーは、カリブ 海諸国など、比較的に辺鄙な、ディーゼル燃料を大量に輸入する多くの開発途上地域にお いてコスト競争力をつけており、マイクログリッドの開発もそれらの地域で著しく拡大し そうだ。太陽光発電の価格が下がりつつあり、移動式マイクログリッド開発の主な推進力 となっている。高度な蓄電に関するイノベーションも、今後重要になるであろう。 ② Morgan Adam 氏 - SunPower Corporation SunPower 社 は 、 さ ま ざ ま な 連 邦 施 設 に 大 規 模 な ソ ー ラ ー 施 設 を 幾 つ か 提 供 し て き た 。 図表7 太陽光発電市場規模予測 ( 出 所 : Morgan Adam 氏 資 料 ) ― 23 ― 調査報告 シカゴ 太 陽 光 エ ネ ル ギ ー に 対 す る 連 邦 レ ベ ル の 需 要 は 、今 後 5 年 間 で 著 し く 拡 大 す る も の と 予 想 さ れ る 。 太 陽 エ ネ ル ギ ー の 連 邦 市 場 の 規 模 は 2015 年 ま で に 330MW に 達 す る こ と が 予 想 され、この電力の大半が、連邦機関の契約としては比較的新しい事業協定である電力購入 契 約 ( PPA) を 通 じ て 供 給 さ れ る と み ら れ る 。 連 邦 政 府 は 2025 年 ま で に エ ネ ル ギ ー 消 費 の 25%を 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー と す る 目 標 を 掲 げ て い る 。 こ れ は お よ そ 5GW の 発 電 能 力 に 相 当 す る 。 ③ Paul Reep 氏 - OriginOil 社 上席副社長 米軍による再生可能エネルギーを確保する動きにより、高度なバイオ燃料開発が急速に 進められている。その際に選ばれる燃料は、食物連鎖や水の供給経路に影響を及ぼすもの であってはならない。藻類が主要な供給原料になることが予想される。 2020 年 ま で に 使 用 量 の 50%を 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー と い う 海 軍 の 目 標 を 達 成 す る た め に は 、航 空 機 や 船 用 の 石 油 代 替 エ ネ ル ギ ー が 年 間 800 万 バ レ ル 必 要 に な る 。排 出 量 は 従 来 の 燃料を下回らなければならず、性能は従来の燃料と同等以上でなければならない。施設は 毎 年 尐 な く と も 年 間 1,000 万 ガ ロ ン を 生 産 し な け れ ば な ら な い 。 世 界 の 藻 類 バ イ オ 燃 料 市 場 は 2010 年 の 10 万 ガ ロ ン か ら 2011 年 に は 100 万 ガ ロ ン に 成 長 し 、 2013 年 を 迎 え る 前 に 1,000 万 ガ ロ ン に 達 す る こ と が 予 想 さ れ る 。 今 後 の 生 産 量 は 2018 年 ま で に 年 間 当 た り 10 億 ガ ロ ン に 達 し 、2025 年 ま で に 年 間 当 た り 60 億 ガ ロ ン に 達 す る で あ ろ う 。10 億 ガ ロ ン は 1,050 億 ド ル の 価 値 を 持 つ こ と が 予 想 さ れ る 。世 界 の バ イ オ 燃 料 市 場 の 年 間 成 長 率 は 、 2017 年 ま で 平 均 で 年 間 12%と な る こ と が 予 想 さ れ る 。 図表8 バイオ燃料の需要量推移 (10億ガロン) その他 先端バイオ 燃料 2009年時のエタ ノール生産量 セルロース ( 出 所 : EPA) EISA 認 定 の 全 米 再 生 可 能 燃 料 基 準 に よ る と 、 米 国 の バ イ オ 燃 料 生 産 能 力 は 2022 年 ま で に 360 億 ガ ロ ン に 達 す る 見 込 み で 、し か も 従 来 の エ タ ノ ー ル が 一 切 含 ま れ て い な い 。藻 ― 24 ― 調査報告 シカゴ 類は急成長を遂げつつあるバイオ燃料であり、不足している部分の多くを補うことになる だろう。藻類の生産者らは従来型の製油所に輸送することなく、現場で燃料を生産するこ とができる。 3.電力会社に対する再生可能エネルギー統合の推進 ① Trevor Curry 氏 - Black & Veatch 社 再生可能エネルギーコンサルタント 断続的な発電を行う再生可能エネルギー源を従来の継続型の発電に近づけるための研究 開発が進行中である。その方法は、より多くの事後対応的なサポートを送電系統に提供す ることであり、それによりエネルギー生産や収益への影響を最小化しつつ安定性と信頼性 を向上させることができる。太陽光および風力発電用の新技術は送電系統へのある程度の サポートを提供できる。 より新たなシステムに設置されつつあるソーラーインバータはある程度の事後対応的な サポート材料となり得る。ソーラーインバータを、分散した多くの拠点を介して大規模に 活用すれば、きわめて有益であろう。風力タービンも、動いているタービンの慣性を利用 することによってある程度まで送電網サポートにつながろう。 分散した再生可能エネルギー発電サイトを送電網サポートシステムとして活用する際の 課 題 は 、 そ れ ら の サ イ ト を 信 頼 で き る SCADA( 地 理 的 に 分 散 し た シ ス テ ム 群 を 集 中 的 に 監視制御するシステム)によって単一の制御アーキテクチャに統合することである。ただ し適切なコンピュータのネットワーク化やコンピュータ制御ができれば、追加的な電気設 備を設置する必要はない。 ② Ron Davis 氏 - BWE Engineering 社 送電・配電担当ディレクター 再 生 エ ネ ル ギ ー の 統 合 に 関 す る 電 力 会 社 の 焦 点 は 、費 用 対 効 果 と 信 頼 性 に 絞 ら れ て お り 、 電力会社は個々の顧客や発電装置よりも全体的なシステムを念頭に置いている。風力発電 や太陽光発電など変動的な発電の比率が上がると、電力会社の既設の発電所および送電線 共にその運転や計画がより困難かつ複雑になる。安定した均一な電力を提供するという任 務は、最新かつ高性能の設備や制御装置が設置されるにつれて、きわめて複雑化しつつあ る。 送電系統は、再生可能資源の出力変動の影響を受けることにより、基本的により双方向 性のシステムになってきた。古い設備では現在必要な詳細レベルの電気流量モニタリング ができない。他方では、ソーラー設備で現在稼働している多くのインバータには「スマー トな」接続性がなく、したがって電力会社にとってリアルタイムで出力を知ることは困難 である。 多くの電力の顧客は自ら太陽光発電をし(たいていは電気料金や総出費を下げることが 目 的 )、送 電 網 に 接 続 す る こ と を 望 ん で い る が 、で き る だ け 地 元 の 電 力 会 社 を 避 け た い と 思 っている。これにより、さまざまな場所にある大量の分散型発電設備を接続する際に電力 会社が直面する複雑な問題が理解されていないことが分かる。場所次第で、再生可能発電 が送電の安定性を高めることもあるが、逆に安定性を妨げることもあるのだ。 ― 25 ― 調査報告 シカゴ 政府、電力会社、開発事業者、その他からの利害関係者グループを集めて、さらにコミ ュニケーションを図り、計画を練ることが必要である。そうした利害関係者には、電力会 社の業務や再生可能技術の複雑さに関する豊富な知識が要求される。そうすることによっ て、電力会社は自体の見解や、再生可能エネルギー開発を統合する際に直面する多くの潜 在的に困難かつ微妙な電力問題を提示しやすくなる。 一部の電力会社は現在、自体の管轄区域の地図を作成しつつあり、再生可能エネルギー を成長させるにあたりどの区域を最も優先すべきか、どの区域で設備改善が必要か、また 送電系統に有害な影響を防ぐためにどの区域を避けるべきかを明らかにしている。これら の地図ではそれぞれの郵便番号に至るまで詳細が示されている。そうした資源は、個々の 顧客や地方自治体にとってもきわめて有益である。 ③ Neel Master 氏 - Petra Solar 社 戦略担当副社長 太陽光発電技術の大規模な展開と統合は、スマートグリッド(次世代送電網)技術の展 開および統合と同時進行するものであり、またそれに依存的である。送電網における太陽 光発電の広範な普及に伴う問題、すなわち送電の複雑さや通信・モニタリングの必要性な どの問題の多くが、スマートグリッドを適用することによって解決・緩和される。特に、 分散型小規模太陽光発電も、こうした問題の幾つかを緩和する役割を果たそう。太陽光発 電技術やスマートグリッド技術は、送電系統統合のための分散型パッケージとして束ねる ことによって、電力会社にとってさらに効果的かつ魅力的な存在となり得る。 4.不安定な政治状況における再生可能エネルギー政策 低価格で豊富なエネルギー、特に天然ガスは、米国のメーカーにとって競争上のメリッ トが大きく、海外企業の誘致にも役立っている。再生可能エネルギーの商品化は、普及の 加速化と同時に電力ビジネスを困難かつ低収益なものにするという二重効果をもたらして きた。ただし、規模の経済によって恩恵を受ける最大規模の企業は例外である。太陽光発 電のようなビジネスは、当初考えられていたほど高価値なセクターではないのかも知れな い。基本的に、ワシントンにおける党派間の行き詰まり状態が選挙向け政治と相まって、 論争を招きそうな政策変更が不可能となっている。インセンティブや有利な開発政策を得 るには、より個々の州や地方自治体に目を向けることが大事である。主な連邦エネルギー 関 連 法 案 の 制 定 は 2013 年 ま で あ り そ う に な い 。 ― 26 ―