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機械電子工学 研究内容

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機械電子工学 研究内容
機械電子工学
原子分子材料科学高等研究機構 教 授 江刺正喜
1949 年に仙台で生まれ、東北大学大学院博士課程の電子工学専攻を修了しました。その後
東北大学の電気系での助手、助教授の後、1990 年から機械系の教授となりました。現在は原
子分子材料科学高等研究機構 (WPI-AIMR) の教授で、同時にマイクロシステム融合研究開発セ
ンター ( μSIC) のセンター長をしております。2009 年度から 2013 年度までの最先端研究開
発支援プログラム (FIRST) では「マイクロシステム融合研究開発」の中心研究者になっていま
す。中学・高校時代からの趣味の延長で電子回路が得意です。学生時代から半導体技術を応
用した小形センサや集積回路、マイクロシステム (MEMS) の試作開発を行ってまいりました。
特に企業を支援して製品化することを熱心にやっております。仙台市を中心とした MEMS パー
クコンソーシアムの代表を 2005 年より、また 2010 年より次世代センサ協議会の会長を務め
ています。「半導体集積回路設計の基礎」培風館 (1981 年 )「電子情報回路 I, II」昭晃堂 ( 平成
元年 )、「はじめての MEMS」森北出版 (2011 年 ) などの著書や、紫綬褒章 (2006 年 ) などの
受賞暦があります。古い機械を見たり集めたり、また昔の論文などをもとにして技術史の講
義などをしております。その他、高校生と一緒に装置を組み立てたりして教えるプログラム
も行っています。
研究内容
◆ マイクロシステム
半導体集積回路は多数のトランジスタを形成して情報処理しますが、これに感じるセンサや動くアクチュエータなどを形成することもで
きます。これはシステムの入力部や出力部でのユーザインターフェースなどの部品として重要な役割をはたし、マイクロシステムや MEMS
(Micro Electro Mechanical Systems) と呼ばれています。これを実際に試作し、実用化する研究を 40 年以上行ってきました。図 1 はその試
作実験室ですが、ここは自作の設備を中心にしたもので 20mm 角の小さなシリコン基板のプロセスを行います。装置類は維持が容易で手
軽に使えるため、全工程を実際に経験した人材を育成でき、また自由度が大きいため多様な研究に適しています。今まで 100 社以上の会
社が常駐して試作開発を行い、以下のように製品化もしてまいりました。図 2 は集積化容量型圧力センサで、圧力による容量変化を検出
する容量検出回路を集積化しています。図 3 は通電加熱による熱膨張差で動くアクチュエータを内蔵したスイッチで、最新の LSI テスタに
用いられています。図 2 や図 3 にはウェハ状態で蓋をして封止する技術が重要な役割をはたしています。図 4 は静電浮上回転ジャイロで、
直径 1.5mm のシリコンリングが高速ディジタル制御により内部で浮上して毎分 74,000 回転し、角速度や加速度を高精度に検知できます。
図 5 は 2 軸光スキャナで、光が反射して戻る時間から距離画像センサに用いられており、駅のホームにおけるドアなどで安全監視に使わ
れています。現在は携帯無線機器をマルチバンド化してサーバから画像などをダウンロードしやすくするため、高周波集積回路上にフィル
タを形成する研究を行っています。このようなマイクロシステムは種類ごとに作り方が異なり、しかも少量であることが多いので、開発や
製造で設備投資すると採算が合わないこともあります。このため使わなくなった半導体製造施設を有効活用し、会社が人を派遣して利用す
る「試作コインランドリ」( 図 6) を運営しています。
図 1. 自作設備を中心とした MEMS 試作実験室
図 2. ウ
ェハ状態で封止をした集積化容量型圧力
センサ
図 3. LSI テスタに用いられる MEMS スイッチ
図 4. 静電浮上回転ジャイロ
図 5. 距
離画像センサに用いられる 2 軸光
スキャナ
図 6. 試作コインランドリ
http://130.34.94.150/coin/index.html
オープンコラボレーション
実際に試作し実現してみせる実証的な研究には、試作や検査などのために一連の設備群が必要です。これを共用して、多くの人が利用で
きるようにすることを大切にしてきました。研究室ごとに装置をそろえるようでは、このような研究はできないからです。またマイクロシ
ステムでは電気・機械・光・材料・バイオ医療などの技術を融合させるため、多様な知識に効率的にアクセスできることが重要です。これ
にはオープンにして情報が入ってくるようにし、それを活用できるように整理し、外部の人の要求に適切に応えて情報提供ができるように
しなければなりません。このような「オープンコラボレーション」の環境を創ってきました。2005 年から仙台市を中心にした「MEMS パー
クコンソーシアム」をやっていますが、これには 80 社程が参加しております。会費は一口 5 万円 / 年と安いのですが、会員にはそれほど
特典はありません。しかしそれを財源として、毎年 3 日間無料の「MEMS 集中講義」を各地で開催したり、iCAN( 国際ナノマイクロ技術応
用コンテスト ) では高校生や大学生の国内大会を開催したり、国際大会に派遣したりしています。国際的な連携も行っていますが、ドイツ
のフラウンホーファ研究機構と仙台市は 2005 年より協定を締結し、毎年「Fraunhofer symposium in 仙台」を開催しており、また同機構
の ENAS 研究所長 (Prof. Thomas Gessner) のスタッフ数名が研究室に常駐して共同研究を行っています。ベルギーにある IMEC は半導体分
野で有名な研究機関で、我が国の関連企業からも多くの人が派遣されていますが、東北大学は米国のスタンフォード大学およびスイスのロー
ザンヌ工科大学 (EPFL) と共に 2012 年に IMEC の Strategic partner になりました。このような「オープンコラボレーション」による人材育
成や産学連携などに関し、「検証 東北大学江刺研究室 最強の秘密」彩流社 (2009) で紹介しています。
http://www.mems.mech.tohoku.ac.jp/index.html
http://www.mu-sic.tohoku.ac.jp/
http://www.mmjp.or.jp/tmc-seminar/column/es-column/es-column.html
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