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BCI 人工知能 組込みシステム

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BCI 人工知能 組込みシステム
組込みシステム
応用情報工学科専任講師 望月
寛
複数のマイコンを用いた分散制御システムの外観
BCI
人工知能
応用情報工学科准教授 高橋 数学科准教授 保谷
聖
哲也
家電製品や携帯端末、自動車から人工衛星に至るまで、いろいろ
な機械や機器をコンピュータによって制御するシステムのことを組
込みシステムと呼びます。組込みシステムに用いられるコンピュー
タは対象システムによって多種多様ですが、例えばマイコンと呼ば
れるコンピュータであれば数百円程度で購入できるものもあり、非
常に安価でシステム開発をすることができます。
ロボット分野でも、センサ処理やモータ制御などで組込みシステ
ムがよく用いられていますが、実際のシステム開発では、とくにソ
フトウエア開発が重要となります。その際、センサやモータなどの
ハードウエアを直接制御することから、これらの構成や特徴を意識
しながらプログラミングする必要があると同時に、リアルタイム制
御や高い信頼性が求められる場合も多くあるため、これらも考慮し
て開発することが重要です。このような背景から近年、複数のマイ
コンを協調動作させたり、処理を分担させたりしながら高度な処理
をリアルタイムに制御可能とする、分散制御システムに関する研究・
開発が盛んに行われています。
頭で考えるだけでロボットを操作する、ヒトとロボットをつ
なぐ夢のようなインタフェースを実現する技術が BCI(BrainComputer Interface)です。
BCI では、ヒトの脳機能の活動を計測し、その情報を解析・識別
することでヒトの意図を抽出し、ロボットを制御します。脳機能の
計測には脳波(EEG)や核磁気共鳴画像法(MRI)などがありますが、
近年普及してきた新しい脳機能計測法として、近赤外線光を用い
た装置(NIRS)があります。得られた脳機能情報から、パターン
認識や機械学習の手法を応用して、ヒトの意図を識別します。BCI
が実現すれば、体を動かせない方の介護ロボットの操作や、リハビ
リテーションの効率化に活用できるだけでなく、将来のヒトとロボ
ットをつなぐ新たなインタフェースとして期待できます。
私たちは、EEG と NIRS を使って脳機能を計測し、頭で考える
だけでロボットの移動や腕の制御を実現するための研究を進めてい
ます。
人工知能とは、ロボットについては頭脳部に相当するメカニズム
として位置付けられ、文字通り「知能を人工的に実現する」と解釈
することができます。それでは「知能」とは、一体何を指すのでし
ょうか? この答えは一筋縄ではありませんが、私は「知能とは、
脳内におけるさまざまな情報処理を経て生じる現象を総称したもの
である」という立場で、人工知能の研究を続けています。人間の脳
は、1千億単位の神経細胞とそのシナプス結合により構成されてい
る巨大かつ複雑なシステムであり、それ故に小宇宙にもたとえられ
ます。このような神経回路網を数理的に模したものを「人工ニュー
ラルネットワーク」と呼び、近年では、その挙動を分析することで
脳の働きを解明する手掛かりを得ようとしたり、ロボットの頭脳部
を実現しようとしたりする研究が盛んに行われています。一方、人
間に特有な「言語」は「知能」を実現する上で重要な機能のひとつ
であり、実際に脳のさまざまな部位が関わっていることが分かって
きました。現在、私はこの言語機能と人工ニューラルネットワーク
に焦点を当てて研究を進めています。
理工サーキュラー N o.163
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災害救助ロボット
精密機械工学科准教授 羽多野
正俊
災害救助ロボット(レスキューロボット)には、陸海空などの活
動エリアにより種々のロボットがありますが、精密機械工学科羽多
野研究室では地震災害における要救助者探索型レスキューロボット
と水中レスキューロボットについて研究を行っています。水中ロボ
ットは「理工学部シンボリックプロジェクト」の海洋空間利用分野
の研究で行っている「浮体発電プラントシステムの常時メンテナン
スロボット」の応用として取り組んでいます。
それぞれのロボットについて共通して取り組んでいる問題は、
SLAM 問題と力制御問題です。SLAM 問題は、作業環境認識と自
己位置の高精度同定に関する問題で確率統計論を応用して解決を図
るテーマです。力制御問題は、スリップしやすい路面や、水中など
のボディーが固定されていない環境下で、ドア開け作業などの外界
に対して力を作用させる問題です。
これらの問題が解決できれば、非常に潜水時間が制限される水深
40m を超える深度で、人間の代わりに水中で作業を行うことが可
能となります。
精密機械工学科助教 齊藤
健
パソコンの CPU に使われている微小電子回路作製技術は、髪の
毛1本に5千本の線がかけるほどに発達しています。一方で、従来
のドリルや旋盤等を用いた機械加工では、微小な構造物の作製が困
難でした。そこで、微小電子回路作製技術を使って、従来の機械加
工では作製が不可能であった微小な機械機構を作る技術が開発され
ました。MEMS とは Micro Electro Mechanical Systems の略
であり、日本語では微小電気機械機構と訳されます。MEMS 技術
によって、微小電気機構と微小機械機構を同じシリコン基板の上に
構築することが可能となり、例えばロボットの動きや傾きを感知す
る加速度センサやジャイロセンサなどに応用されてきました。
理工学部でも、マイクロ機能デバイス研究センターで MEMS 技
術を利用することができ、これまでにロボットに搭載する微小な駆
動装置やにおいを検知するセンサなどの開発が進められています。
とくに、MEMS 技術で作製した昆虫型マイクロロボット(写真)
は世界的に有名であり、将来は人間の体内に入って血管に付着した
ゴミを除去するなどの、医療補助への応用が期待されています。
MEMS
体内で活動するロボットを実現するための
小型発電機
精密機械工学科助教 田中 勝之
血圧を利用する圧電発電機(直径80mm)
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理 工サーキュラー No .163
ロボットの小型化に伴い、病気を治すために体内に入り込んで活
動するロボットの開発が期待できます。しかしながら、一般にロボ
ットはバッテリーをエネルギー源としていますが、体内ではバッテ
リーに充電はできません。体内で電力を得るためのエネルギー源が
必要となります。
そこで研究を始めたのが、血圧を利用した圧電発電機の開発で
す。血圧は心臓が伸縮するために上下し、脈流となっています。一
方、圧電材料は、ひずみに伴って電力が発生します。例えば、円筒
の両端に円形の薄い圧電材料の膜を張り付けて脈流の中に置くと、
血圧が高いときに円筒内側は相対的に圧力が低くなり、圧電材料の
膜は内側にへこみます。逆に血圧が低いときには、円筒内側の圧力
が高くなり、外側にふくらみます。つまり、血圧の上下に伴い、圧
電材料の膜が円筒の内側と外側に変形を繰り返し、そのひずみによ
り発電します。現段階では、手のひらサイズの発電機で実験を行っ
ています。
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