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当日の事例紹介 - 独立行政法人日本学生支援機構
事例紹介 株式会社エヌデーデー 代表取締役 塚 田 英 貴 こんにちは、株式会社エヌデーデーの塚田と申します。今後の企業と大学の協力の在り 方についてと題しまして話を進めてまいります。学生支援機構様はインターンシップの事 例についての紹介を期待されていたようですが、当社ではインターンシップを実施してお りませんので、一度お断りしました。しかし、インターンシップの事例ではなく、キャリ ア形成に関する大学への提言でも構わないとのことでしたので、お引き受けし、一中小企 業の社長として、率直に思うところをまとめてみました。 まずは目次です。会社概要、事業概要、採用実績、当社における人材育成モデル、そし て、本日最も申し上げたいことである、当社が大学に求めることを3つ、1 つ目が学生への 啓蒙、2つ目にインターンシップについて、最後に大学との連携についてです。 恐れ入りますが、当社の概要について、少し紹介させていただきます。設立が 1971 年で 創業から 45 年目に入りました。売上は昨年実績が 40 億、社員数が 316 名、本社は新宿か ら電車で5分ほどの中野坂上にあり、事業所が茨城県の水戸にございます。事業内容は、 システムインテグレーション、数値解析、病院のヘルプデスクなどです。次のスライドで もう少し補足させていただきます。経済産業省の制度であったSI認定を取得、また、税 務署から優良申告法人として表敬されております。ISO9001、プライバシーマーク、ISMS の認証も取得しております。 そして、事業概要です。先ほどの会社概要で触れました事業内容をもう少し詳しく説明 します。当社は独立系のシステムインテグレータでありますが、得意分野を定めて、そこ を追求するのが基本的な姿勢です。現在の得意分野は、まず医療です。大学病院様や国公 立病院様、そして、調剤薬局様のシステムなどを手掛けております。次に公益。インフラ 系である鉄道会社様や自治体様とお付き合いしております。次に金融。こちらで最も得意 としているのがクレジット系で、実は私自身もエンジニアとして関わった分野です。最後 に、解析と制御です。解析は研究機関様やメーカー様がメインのお客様で、シミュレーシ ョンや数値解析を行っております。制御は、ダム制御や送電制御といった電力関連事業を 多く手掛けております。 次に、当社の採用実績です。最近 10 年の採用人数の実績です。男女別、文理別で一覧表 にしました。採用人数については、2010 年以前は 20 名近い人数を採用できていましたが、 2011 年から 2013 年においては、リーマンショックなどの影響があり、新卒の採用人数を 減らさざるを得ませんでした。ただ、ここ 2 年は復調傾向にあります。男女については、 採用基準はまったく同等ではありますが、受験者数は圧倒的に男性が多いため、採用実績 としても、男性の比率が大きくなっております。文理についても、差別なく採用をしてお りますが、こちらも受験者数が理系学生の方が多いこともあり、結果として、理系の採用 人数が多くなっていると思います。 1 次に、最近 10 年の採用実績校です。本日は全国から大変多くの大学のご担当者様がお見 えになっているようですが、当社の実績としては、関東圏の大学が比較的多いです。先ほ どご講演いただいた岩手県立大学さんの採用実績はなく、大変申し訳ありません。今後は ご縁があることを願っております。 次に、全社員の出身校の割合を人数順にまとめました。最も多いのが日本大学さんです。 私も OB ですが、特に意識して多く採用したというわけではなく、単純に卒業生の数が多 いからだと思います。東京理科大学さんからも、特に優先して採用することはないのです が、昔から採用人数が多く、ありがたいと思っております。ちなみに、右下に小さく載せ ていますが、国公立大学が 22%、私立大学は 78%となっております。 次に、人材育成モデルです。当社では、新人をいかに早く、戦力となるシステムエンジ ニアにするかは重要な経営テーマと捉えていますから、新入社員の教育を伝統的に重視し ております。まず、入社から 3 ヵ月は IT の基礎を重点的に学習させます。新人の IT スキ ルの習熟度にはばらつきがありますが、習熟度の高い低いいずれの新人も成長できるよう 工夫を凝らしています。7 月に各部署へ正式配属となり、実務をこなしながら、お客様の業 界や業務内容について IT スキルと合わせて学ばせています。翌年 1 月には、合宿形式での 研修を行います。ここには私を含め経営層も参加し、新人の生の声を聴くことで交流を深 めています。最後に、論文発表会です。システムエンジニア 1 年の卒業論文という位置づ けで、プレゼンもしっかりやってもらっています。この発表会には入社したての新人にも 参加させており、キャリアプランをイメージする上で参考になっていると思っております。 次に、2 年目以降の研修を一通り並べました。まず、NEM という、いわゆる徒弟制度で す。名称はニューエデュケーションモデルの頭文字を取りました。当社では従来から先輩 から若手へ技術の継承が徒弟的に行われていましたが、3 年前に制度として確立し運用して おります。この制度では、若手社員一人に対して先輩社員一人がつき、1 年間の教育計画を 立て、その計画に沿って最後までフォローしていきます。次に FF 研修です。FF とはフル フレッジの略で一人前という意味があり、4-6 年目の社員が到達する人事制度上のステージ でもあります。この研修は、FF に昇進した社員を対象としており、リーダーとしてのスキ ルを習得する 2 泊 3 日の合宿形式で行っています。ちなみに、新人の合宿同様、私を含め 経営層も参加します。もう一つ、プロジェクトマネジメント研修について補足します。当 社においてプロジェクトマネジメントスキルは必要不可欠なスキルと位置付けています。 この研修は PMBOK に基づくプロジェクトマネジメントの基礎を学ぶものであり、全社員 に受講させているのが特徴です。 次に、採用方針です。まず、当社では面接を重視しており、1 次選考から面接を実施して います。重視するポイントが 4 つあり、ポテンシャル、モチベーション、コミュニケーシ ョン、そして最も大事にしているのが、「真摯かつ良心的な姿勢」です。これは、ビジネス に関わる上で必須だと思いますし、当社のシステムエンジニアには、外せない資質と考え ています。また、IT スキルについては、高いスキルを持っていれば評価はしますが、それ よりも、先に述べました 4 つのポイントを重要視しております。 2 ここからが、本日最も申し上げたいことです。当社が大学に求めることというテーマで 話を進めてまいります。まず、学生の世界とビジネスの世界には大きなギャップがあると 思います。昔の話ではありますが、これは私自身も経験していますし、面接を通して、学 生と接していく中でも感じます。よって、就職活動において、初めてビジネスの世界を知 るのはでは遅いと思いますし、就活という切り口からのみビジネスの世界を知るだけでは 不十分なはずです。 当社における、早期退職者の傾向ですが、ほとんどは、他業界や他業種へ転職していま す。これは、システムエンジニアという職種に対して明らかなミスマッチが起きています。 当社が採用の段階で学生の意向を見抜けなかったことも否めませんが、学生自身が、就活 時に自分に合った業界、職種を追求しきれていなかったとも言えるのではないでしょうか。 すでに、各大学では様々なキャリア教育を行っているとは思いますが、学生が、より夢中 になれる業界や職種を見つけるため支援について、一中小企業の社長としての提言をさせ てください。 ギャップを埋めるためにどうするか。学生に対して、ビジネスの捉え方を啓蒙していた だけないでしょうか。ビジネス倫理、ビジネスモデル、ビジネスマンの心得、そして、産 業構造。産業構造は業界によって、それぞれ違いますし、学生が自発的に勉強するのは難 しいところだと思います。それから、ビジネスの面白みについても何とか啓蒙できないも のでしょうか。ビジネスとは、本来面白いものであるはずですし、それをうまく伝えられ れば、社会へ出る学生にとっても価値のあることだと思います。 民間企業へ就職を希望する大学生の数は文部科学省のデータによりますと、約 42 万人だ そうです。ちなみに、中小企業に限っても、30 万人と推定されています。これは、非常に 大きな数字であり、ビジネスを学ぶニーズは大いにあるのではないかと思います。 そこで、ここからは少し乱暴かもしれませんが、率直に思うところを述べさせていただ きます。大学において、ビジネスとはどういうものかを学ぶための科目を設置していただ けないでしょうか。学部を問わず受講でき、90 分を 15 回(半期)程度がよいでしょう。さら に、社会科学系の学部では必修科目にしていただけるとうれしいです。講師は、企業 OB で、かつ当該大学の OB が望ましいです。恐らく、ボランティアに近い形で貢献してくれ ると思います。この企業 OB について、最近であれば団塊の世代の方々が多く該当します。 この方たちの中には、壮絶なビジネスを経験している方が多くいらっしゃって、そのノウ ハウを活用すべきだと思います。 インターンシップについて。冒頭でも述べました通り、当社には実績がありません。正 直に申し上げますが、中小企業にとって、インターンシップを実施することは、非常にき ついことです。もし実施するなら、システムエンジニアの就業体験ができて、業務に興味 を持ってもらえて、学生がワクワクしながら取り組めるような内容でなくてはならないと 思っています。期間も 5 日間以は必要です。これを実現するには相当な時間とマンパワー がかかるため、やはり難しいです。一方で、採用支援会社からは、宣伝機会をつくるため、 1 日コースなど短い時間での実施を提案されますが、採用と結びつけることに違和感があり 3 ますし、1 日で意味のあるインターンシップはイメージできず、現時点ではインターンシッ プの実施予定はありません。このように申し上げると、大学側からは反感を買ってしまう かもしれませんが、ご容赦いただきたいです。 インターンシップを学生のキャリア教育という意味で実施するなら、企業側は本気で準 備しなくてはなりませんし、かつ、優秀な社員が指導するべきだと考えています。様々な 業界において、学生のキャリア教育として価値のあるインターンシップを実施している企 業は少なからずあると思います。しかし、中小企業において、少なくとも当社においては、 インターンシップの準備、実施について、実現する余裕がないのが現状です。公的なイン センティブがあれば実施できるケースもあるかもしれませんが、当社としては難しいと思 います。 そこで、インターンシップを実施できなくても、別のモデルで貢献できないか考えてみ ました。それは、ビジネス系科目の設置について提言したときにも話した、大学 OB の活 用です。ただ今回は、企業 OB ではなく現役社員を活用します。現役社員を大学学内に派 遣し、システムエンジニアとして、ビジネスの現場や業界で求められる資質などを伝えま す。学内に派遣することで、双方向のコミュニケーションがとれるため、インターンシッ プに近い形を作れると思います。社員はシステムエンジニアですから、教えることにはあ まり慣れていないかもしれませんが、現場の生の声は学生にとってキャリアを考える上で 意味があるのではないでしょうか。一方、当社社員にとってもメリットがあります。学生 に教えるということで、インターンシップほどではないにしろ、周到に準備をしますし、 学生に対して話をすることで、大いに勉強になることがあるはずです。また、このモデル ですと、インフラを整備する必要がなく、ノート PC1 台を持ち込むだけで実現できます。 さらに、日程や時間を限定できるため、仕事との調整もしやすいと思います。 当社の場合は、大学に社員を派遣するモデルの方が、純粋なボランティアとして、大学 のキャリア教育に貢献しやすいです。 「現役社員による大学でのリアル体験型ビジネス実習」 として、大学内に環境およびシステムを構築していただけないでしょうか。当社としても 社員の育成になるわけですから、機会があれば惜しみなく協力できます。 ここまで、一中小企業の社長として、本音で意見を申し上げてきました。最後のスライ ドは、OB は母校のために一肌脱ぎます、としました。当社には多くの大学出身の社員が在 籍しております。しかし、大学側から当社に対して、何かお願いをされるケースはほとん どありません。この講演をきっかけに、特に大学生のキャリア教育について、何らかのご 協力ができれば幸いです。それでは、このような場所で大変僭越ではありましたが、最後 までご清聴いただきありがとうございました。 4