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消化器検診中央委員会だより No.19

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消化器検診中央委員会だより No.19
靴遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇轡
山形県医師会消化器検診中央委員会だより
H28年3月31日
No.
19
靴遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇遇轡
幻験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験弦
はじめに
胃がん検診において平成27年度は大きな話題がありました。御存知のように厚生労働省が
対策型の胃がんにおいて50才以上を対象として内視鏡検診を認めました。その実施にあたっ
ては日本消化器がん検診学会(検診学会)から出された“対策型検診のための胃内視鏡検診
マニュアル 2015年度版”に準拠して行われるように指示されております。同マニュアルに
よれば、管理委員会の設置、内視鏡施行医の資格認定、機器や消毒の確認、撮影写真のダブ
ルチェック体制の確立、被検者の履歴とデータ管理などが定められており、どの自治体でも
平成28年4月からの実施は難しいと思われます。最も大きな問題は徐々に減少傾向があると
は言え、住民検診においても10万人の受診者がいますので、何%が内視鏡を希望されるか分
かりませんが対応するマンパワーは到底確保できないでしょう。従って現実的にはこれまで
の胃X線検査を基本とした胃がん検診が主軸にならざるを得ません。山形県では深尾先生や
大泉先生・吉澤先生の指導でヘリコバクター感染を加味した胃X線読影に早くから注目し、
読影力を養うための講習会が何度か開催され、すでに県内の読影担当の先生方の意識も充分
高まった状態にあります。と同時に検診学会より、ヘリコバクター感染が推定される受診者
に何らかの情報提供を行っていくべきという“読影における新カテゴリー分類”が提案され
ました。この点を含めて先行している宮城県体
がん協会の読影状況についての加藤先生の講
目 次
演を田村先生にまとめてもらいました。また、
1)はじめに…………………武田 弘明…1
胃X線検査にABC胃がんリスク評価を加え
とを大泉先生に解説いただきました。将来、内
2)山形県の消化器がん検診の現状と課題
…………………………大泉 晴史
…………………………武田 弘明
…………………………吉澤 和哉…2
視鏡検診の導入を検討しなくてはいけないと
3)宮城県対がん協会・加藤勝章先生の講演
しても、まずは着実に山形県の胃がん検診の精
から………………………田村 真明…9
度を担保しながら、そして増加していく除菌群
4)大腸がん精密検査受診率向上の取り組み
の管理を含めて、より良い山形方式としての胃
…………………………石川 翔太…14
がん検診システムを模索していく必要があり
5)大腸がん検診における大腸内視鏡検査の
た場合には特に早期胃癌の発見率が高まるこ
ありかたについて………半田 和広…15
ます。
また昨年一年間において胃X検診において、
不幸にもバリウムによる腸穿孔が報告されま
−1−
6)山形県胃がん大腸がん検診状況………18
7)おわりに…………………武田 弘明…22
した。平成27年春に日本消化器がん検診学会から深尾先生の名前で、胃X線検診における事
故防止の注意喚起が出されました。今後も注意深く行うことは言うまでもありませんが、便
秘傾向の方は敢えて内視鏡へ誘導してあげるのもよろしいのではないかとも思われます。
一方、大腸がんの罹患数が1位になるという平成27年度国立がん研究センターの予想にも
あるように、一般の方の大腸がんへの関心は非常に高まっています。そのためか山形県にお
ける大腸がん検診を受診される方は年々増加し、さらに大腸がんの発見数も増えています。
しかしながら精検受診率が伸び悩んでいることが大きな問題点とされています。その状況の
中で長井市の精検受診率向上は目を見張るものがあります。そこで長井市役所の石川さんに
改善の経緯などについて寄稿いただきました。ご一読ください。勿論、内視鏡検査を担当す
る我々のスキルアップの努力も重要であることは言うまでもありません。新年度以降も講習
会が予定されております。また大腸がん検診においても便潜血検査によらない内視鏡検診が
いろいろと模索されております。この点に関して半田先生に寄稿いただきました。間もなく
青森県においてAKI
TA St
udyをベースに新たな視点を加えた内視鏡による大腸がん検診の
試みがスタートするという情報もいただいております。
胃がん検診、大腸がん検診どちらも先生方のご協力が不可欠であります。今後の検診向上
のために忌憚のないご意見を頂戴できれば幸甚です。
(武田)
幻験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験験弦
「山形県の消化器がん検診の現況と課題」
診率は31.
9%(日本消化器癌検診学会全国集
山形県医師会消化器検診中央委員会
計)と高率で、長年にわたり全国1位を維
副委員長 大泉 晴史
持しています(表1)。しかし日本一といっ
委 員 長 武田 弘明
ても胃がん検診対象者の1/
3に過ぎません。
委 員 吉澤 和哉
平成27年12月12日に開催された山形県
医師会消化器検診研修会での報告内容です。
2014年 K.
M.
Foc
kが 報 告 し た 世 界 の
Hel
i
cobact
erpyl
or
i
(
H.
p)感 染 率 と 年 齢 調
整胃がん罹患率を見ると、日本は韓国に次
いで世界第2位の胃がん罹患率となってい
ます。また、WHO/
I
ARCが報告した5大陸
の胃がん罹患率では、エリア別で見ると、
山形県は中国の福建省の Changl
e地区に次
平成24年度の山形県の胃がん検診最終
いで世界2位の高い胃がん罹患率の地域に
結果では、検診受診率約30%、精検受診率
なっています。
約76%で、胃がんが237名発見されていま
さて、山形県の平成25年度胃がん検診受
すが、発見率は0.
11%、陽性適中度は1.
21%
−2−
と、そう誇れる数字ではありません(表2)
。
した。しかし根治的な治療を受けている人
は大体60%で、この数字を裏づけるように
39.
5%の人が亡くなっています。
一方、大腸がん検診の方はどうでしょう。
平 成25年 度 の 大 腸 が ん 検 診 の 受 診 率 は
37.
5%(日本消化器癌検診学会全国集計)
と高率で胃がん検診同様、山形県は長年
トップを維持しております(表4)
。しかし
平成24年度の山形県大腸がん検診結果を
厚生労働省発表の都道府県別胃がんの死亡
見ると、検診受診率は36.
7%と高率ですが、
率順位では、検診関係者の弛まぬ努力にも
精検受診率は69.
3%と70%を割っていま
かかわらず、常にワースト2位でしたが、
す。それでも大腸がんが 345名発見されて
2013年に、ワースト3位に改善しておりま
おり、発見率0.
13%、陽性適中度2.
31%と
す。更なる死亡率改善のためには、より受
胃がんより少し良い結果でした。精検受診
診率の向上を図る必要があります(表3)
。
率がもっと高ければ、より多くの大腸がん
が発見されたと考えられます(表5)
。
2004年から2012年までの、山形市と山形
県全体の年間胃がん罹患数をがん登録から
見ると、山形市で約300人から400人、県全
体では1,
500から1,
800人が罹患しています。
同期間の県全体の罹患数、受療数、死亡
者 数 を 見 ま す と、罹 患 数15,
896人(男 性
10,
550人、女性5,
346人 男女比2:1)、受
療数14,
958人で、治療内容を見ると、外科
手術35.
4%、内視鏡治療22.
1%、外科手術
と化学療法の併用12.
5%、化学療法単独
6.
9%、その他の治療17.
2%、無治療5.
9%で、
94%の人がなんらかの治療を受けていま
−3−
都道府県別の大腸がん死亡率順位では、
これまで常にワースト10以内にランクさ
れていましたが2013年は31位と著名な改
善を認めました。一時的なものなのか今後
央委員会 委員長の武田弘明先生から大腸
注視していきたいと思います(表6)
。
の挿入技術についての詳しいご講演をして
頂きました。そして、さらに2016年の4月
2日、山形県医師会主催で大腸スコープ挿
入法に特化した、スキル向上を目指した研
修会を開催することにいたしました。講師
は二木会の松島クリニック診療部長の鈴木
康元先生にお願いし、山形市医師会館4階
大ホールでご講演いただくことになってお
りますので、大腸二次精検をお引き受けい
ただいている先生は是非ご参加下さいます
胃がん同様、2004年から2012年までの、
ようお願いいたします。
山形市と山形県全体の年間大腸がん罹患数
さて、胃がんに戻ります。胃がんによっ
をがん登録から見ると、山形市で約240人
て年間約5万人が亡くなっていますが、こ
から280人、県全体では1,
200から1,
400人
の数字は45年間ほとんど変わっておりま
が罹患しています。
せん。問題は、私も含めて団塊の世代がい
同期間の県全体の罹患数、受療数、死亡
よいよ胃発がん年齢になってきたことです。
者 数 を 見 ま す と、罹 患 数11,
431人(男 性
この世代の人口は極めて多いので、何も対
:1)で
6,
258人、女性5,
163人、男女比 1.
2
策を講じないと2020年には、胃がん死亡者
胃がんと比較すると女性の罹患が多くなっ
が5万人から6万人に増えるだろうと、北
ています。受療数は10,
779人で、治療内容
海道大学大学院医学研究科がん予防内科特
を 見 る と、外 科 手 術47.
7%、内 視 鏡 治 療
任教授の浅香正博先生がシミュレーション
6.
4%、外科手術と化学療法の併用23.
6%、
化学療法単独6.
9%、その他の治療9.
3%、
不明13.
0%で、94.
4%の人がなんらかの治
しています。
(世界がん研究機関)がH.
pを胃がん発生の
療を受けていました。しかし根治的な単独
原因だと認定しました。そしてその後の研
治療を受けている人は54.
1%で、38.
8%の
究で、H.
pが感染していない人からは胃が
人が亡くなっています。
んがほとんど発症しないということが明ら
大腸がん検診での問題点としては、二次
かになり、広島大学の伊藤公訓先生らは、
精検の受診率が低いということが挙げられ
大腸内視鏡検査が苦しくて受けたくない」
H.
p未感染者からの胃がん発症は胃がん総
数の0.
66%に過ぎず、99.
3%つまり殆どの
胃がんはH.
p感染者であると報告していま
す(表7)
。2013年2月21日 に、H.
p感 染
が少なくない割合でみられることから、よ
慢性胃炎の除菌治療が保険適用になりまし
り苦痛のない大腸内視鏡検査の提供を目指
た。それに追従するように、2014年I
ARC
す意味で昨年、山形県医師会消化器検診中
からH.
pの除菌治療による胃がん予防戦略
ます。
アンケート調査では、
「二次精検としての
−4−
1994年 にWhoの 下 部 組 織 で あ るI
ARC
というのが報告されました。その中では、
合わせにより“胃の健康度評価”つまり胃
全ての国ががん抑制プログラムに胃がんを
がんのリスク診断をするものです。H.
p抗体
加えて、集団ベースでのH.
p感染のスク
は10U/
以上を陽性、PG法はPG1170ng/
ml
ml
リーニングを行うと共に、その治療戦略を
以下かつPG1/
Ⅱ比3.
0以下を陽性とするも
地域毎に模索することを勧める、つまり胃
のです(表8)。A<
B<C<Dの順に胃がんリス
がん対策としての除菌治療を推奨するとい
クが高くなる事が判っています。撮影検査
うものです。
法は日本消化器がん検診学会のガイドライ
ンに基づいて行い、山形市医師会の読影医
師によるダブルチェック方式でX線所見上
チェックされた人と、ABC分類でB、C、D
と判定された受検者に二次精検として内視
鏡検査を勧奨しました。
山形市医師会では2010年と2011年に山
形市の一般住民に対するABC(胃がんリス
ク評価)分類併用胃がん検診を実施しまし
た。深尾彰先生(山形大学理事、副学長、
公衆衛生学講座教授)のご厚意で、先生が
統括する山形大学グローバルCOE(COEプ
ログラム「分子疫学の国際教育研究ネット
対象になった3,
517名の年代別ABC分類
ワークの構築」による地域住民を対象とし
を見てみると、
(表9)のようになり、報告
たコホート研究2009年12月承認)コホート
されている他の地域と比べると、山形市の
研究のセッティングを用いたハイリスクア
一般住民のH.
p感染率が非常に高いという
プローチによる胃がん検診の評価に関する
ことがわかります。
研究として山形大学医学部倫理委員会の承
認を受け、全ての受診者に書面でのイン
フォームドコンセントを得て行ないました。
2年間で山形市全域を網羅する予定でし
たが、コホート研究についての説明や承諾
を得るのに時間が掛かったこともあり予定
の2/
3での実施に止まりました。対象はH.
p
除菌者やPPI
服用者等の不適格者を除いた
3,
517名となりました。ABC分類は血清H.
p
抗体価と血清ペプシノゲン(PG)法の組み
3,
517名の中から21名の胃がんが発見さ
−5−
れました(表10)
。X線所見だけでチェッ
されたが ABC分類でB、C、Dのため内視鏡
クされた症例は発見胃がん21例中6例の
検 査 を 勧 奨 さ れ た 人 が1,
875人 で、う ち
みで、あとの15例はABC分類を契機に発見
機に発見されています(表11)
。すなわち
57.
0%の1,
069人が二次精検を受け15例の
胃がんが発見され、発見率は0.
8%でした
(表12)
。偽陽性が多いわけですが、二次精
検後にB、C群の人は除菌治療に回り胃発が
早期癌の多くは内視鏡治療で対処されてお
ん抑制効果を得るというメリットがありま
り、それだけにX線では示現され難かった
すので、X線とABC分類の併用で検診をや
と考えられ、ABC分類による胃がんハイリ
る意義は大きいと思います。これまで職域
スク群集約が有用であることを示している
に関しての報告はありましたが、今回の検
といえます。
討で一般住民に対するABC併用検診も極
されました。また21例のうち16例が早期が
んですが、そのうち13例がABC分類を契
めて有用であることが明らかになりました
ので、山形市では平成27年度から一般住民
対象胃がん検診ではオプションの形ですが
併用検診を行っています。今後はそれを行
政の施策として実施していただけるよう、
山形市医師会として山形市の方にお願いす
る予定です。
ABC分類併用X線検診を実施する上で、
いくつか問題点があります。
胃がん発見率を契機別で見ると、A群で
第一はABC分類自体の問題点です。最
チェックされた人が83名いましたが、74%
近除菌例が多くなっていますが、除菌する
の61人が二次精検を受け胃がんの発見は
と約8割の方がA群になってしまう点です。
ありませんでした。X線で異常をチェック
2013年2月にH.
p感染胃炎に対する除菌
されたのが180人で84.
4%の152人が二次
治療が保険適用拡大になり、今後益々増加
精検を受け6例の胃がんが発見され、発見
する除菌例への対応が必要で、問診の中に
率は3.
1%でした。X線では異常なしと判定
除菌の有無、その成否について必ず組み入
−6−
れることが不可欠です。また除菌歴のある
体陰性高値例が極めて多いということが分
人はABC分類を受けないように周知徹底
。
りました(表14)
し、E(Er
adi
cat
i
on)群として別に扱う必
要があります。理想的には除菌をした医療
機関で定期的内視鏡検査による経過観察が
望ましいわけですが、それぞれの施設での
内視鏡検査のキャパシティの問題もあるこ
とから、X線検診を受け皿とするシステム
作りも必要だと考えます。
第二は、A群とD群におけるH.
p抗体陰性
高値の問題です。H.
p抗体のカットオフ値
は10U/
で、10U/
以上が陽性、10U/
ml
ml
ml
次に大泉胃腸科内科クリニックで、H.
p
未満が陰性と決められていますが、3U/
ml
抗体陰性高値例に対してUBT(尿素呼気試
未 満 をH.
を
p抗 体 陰 性 低 値、3~9.
9U/
ml
験)を実施しH.
p陽性率をみました(表15)。
H.
p抗体陰性高値といいます。このH.
p抗体
陰性高値を示す群の中に現感染者が混在す
るという問題です。そこで実際A群とD群に
おけるH.
p抗体陰性高値例がどの位の頻度
なのか、またH.
p抗体陰性高値例の中で現感
染者がどの位の頻度なのか検討しました。
先ず山形市医師会健診センターのデータ
で、ABC分類受験者6,
405名におけるA群と
D群の頻度を見ると、A群が53.
8%(3,
445
名)
、D群が2.
2%(139名)でした(表13)。
抗体価が高くなるにつれて陽性率が高くな
る傾向があり、全例で見ると40.
4%が陽性
でした。つまりH.
p抗体陰性高値例の40%
が現感染者だったという結果でした。この
ことからA群、D群の判定であっても陰性
高値例であればUBT等を行いH.
p感染の
有無をきちんと見極めなければいけないと
いうことになります。この他D群の中には
自己免疫性胃炎やH.
p未感染者も混入して
くる事も分かってっています。以上の結果
そしてこの2つの群のH.
p抗体陰性高値例
から、画像検査抜きにしてABC分類だけ
の頻度を見ると、A群が15.
3%(526名)、D
で胃がん検診を代用することは受検者に不
群が69.
1%(96名)であり、D群でのH.
p抗
利益をもたらす結果を招きかねず避けなけ
−7−
ればなりません。
きました。また参加しにくかった米沢置賜
最後にX線胃がん検診の読影に関するこ
地区、新庄北村山地区でも同様の読影実践
とについて述べます。日本消化器がん検診
研修を開催いたしました。
学会付置研究会から新しい胃X線読影区分、
読影をお願いしている先生方の問題は一
管理区分が答申されました(表16)。今後
応解決しましたが、受検者にH.
p感染胃炎
はこれに基ずいた読影、管理が必要になり
(又は可能性)があることをどういう文面で
ます。読影判定区分1はH.
p未感染者で異
伝えるかという問題が残っています。各郡
常なし、3a~5は二次精検に回り、胃がん
市地区医師会は勿論のこと県を初め行政側
を認めなければ除菌というルートに乗るの
からの住民への啓発を早急に行う必要があ
で問題ありません。今後の最大の問題は、
ります。そして平成29年度からは全県下で
管理区分は精検不要、読影判定区分2の
新しい胃X線読影区分、管理区分に基ずい
H.
p感染慢性胃炎相当胃です。これまでは
異常なしの報告になっていました。H.
p感
た検診を実施したいところです。宮城県で
染慢性胃炎に対する除菌治療が保険適用と
カバーしているという特殊性もありますが、
なり、こういう人がすべからく除菌を受け
平成26年から既に実施しています。その状
る権利を得たことから、胃がん検診受検者
況を伺いながら山形県で始める際の参考に
にH.
p感染慢性胃炎である(または可能性
させていただきたいと思っています。
がある)ことを知らせる義務が生じたわけ
まとめ。平成24年度の胃がん検診と大腸
です。したがって胃がん検診は胃がん発見
がん検診の受診率は、山形県はそれぞれ
だけでなくH.
p感染を考慮した胃の背景粘
29.
5%、36.
7%と高く、これまで通り全国
膜の読影も必要になったわけです。こう
1位の受診率でした。これからの胃がん検
いった状況から県医師会では3年前から
診ではハイリスク群の集約と除菌への流れ
H.
p感染を考慮した胃X線検診読影研修会
を確立する意味でもABC分類X線併用検
(山形市2回、酒田市1回)を開催し、現
診が望ましいと考えます。ただしABC分類
(既)H.
p感染胃X線所見、H.
p未感染胃X
では、A群、D群でH.
p抗体陰性高値例の
線所見の読影技術の習得をして頂けるよう
約40%が現感染者ですので、この事に留意
アンサーパッドを用いた実践研修を行って
した対応が必要であると同時に画像検査を
は、対がん協会が県の胃がん検診の殆どを
併用することが不可欠だと思います。X線
読影では日本消化器がん検診学会の読影区
分と管理区分に従って、H.
p感染を考慮し
た胃背景粘膜診断を行うことが必須になり
ます。そしてこれまで異常なしとしていた
被験者にH.
p感染胃炎があることをどう伝
えるか、どう行動していただくかが喫緊に
取り組むべき課題だと考えます。
−8−
1.2015年には公表された胃がん検診ガイ
「He
l
i
cobact
erPyl
or
i感染を
ドラインのポイントの紹介
( 省略 )
基軸としたこれからの胃癌検診」
宮城県における対策型胃X線検診への
He
l
i
cobact
erPyl
or
i胃炎診断
胃X線診断による胃炎・萎縮と胃がんの
導入の実際と課題
リスクについてはピロリ菌の話が出る以前
から萎縮と胃癌の肉眼型、組織型が密接に
宮城県対がん協会がん検診センター
結びついているとの中村恭一先生のいわゆ
加藤勝章 先生の講演から
る「胃癌の三角」の概念を取り上げお話し
田村 真明
された。萎縮と腺境界診断はピロリ菌感染
を判断することはもちろんだが、胃癌の発
平成27年12月12日に山形県医師会消化
生リスク、発生部位、組織型までの予測が
器検診研修会が山形市医師会館で開催され、
X線診断で出来る。そう言った意味でも今
宮城県対がん協会がん検診センター副所長
X線診断、X線検診にピロリ菌感染、胃炎
の加藤勝章先生から上記演題でのご講演を
の診断を載せると言うのは、非常に有用な
頂きました。今回その概要についてご報告
ことと思っている。これらのことも踏まえ、
致します。
宮城県では平成26年度からピロリ感染を
考慮した胃癌検診胃X線読影をしていると
1994年 にI
ARCが ピ ロ リ 菌 を 胃 癌 の
のことであり、この実績から講演内容を主
def
i
ni
t
ecar
ci
nogenと認定し、2013年の報
に報告された。
告書では胃癌の%はピロリ菌感染が原因で
あり、除菌によって胃がん発生率を30~
2.ピロリ菌感染胃X線診断の実際
40%減らすことが出来る、との報告がなさ
れた。また本邦で平成25年2月からピロリ
多数のスライドでの症例提示で詳しくご
菌感染胃炎へ除菌治療が保険適応拡大と
解説された。
(今回のこのご講演内容は3月
なったことが大きいが、胃がん対策はピロ
末頃作成予定の山形県医師会学術雑誌に加
リ菌感染症対策になりつつあると言える。
藤先生から掲載予定であり、またピロリ菌
若年者はピロリ菌未感染者が増えているこ
感染胃X線診断については昨年度の消化器
とでもあり、未感染者は胃癌低リスク、現
検診中央委員会だよりNo.18への現山形大
感染と既感染者は高リスクであり、今後、
学医学部第二内科の吉澤和哉先生からのご
胃癌リスク評価に基づく高リスク集団への
寄稿、平成26年の中島滋美先生の当研修会
検診と除菌による胃癌予防のフレームワー
でのご講演とも重なりますのでここでは省
クを構築して行くことが大切であると述べ
略させて頂きました。
)
られた。
−9−
3.胃X線検診のための読影判定区分(カ
テゴリー分類)について
消化器がん検診学会胃X線検診の読影基
準に関する研究会から消化器がん検診学会
に答申された「胃X線検診のための読影判
定区分」についての解説をしていただいた。
このねらいは胃X線検診の読影精度を管理
するために、要精検と精検不要を分けるた
めの可能な限り簡便な基準を策定し、統一
スライド3
された読影区分・管理区分のもとで疑陽性・
偽陰性の要因を解析して対策を立てること。
もう一つは対策型X線検診を通してピロリ
菌感染に対応する目的から策定されたもの
であるとのことであった。(スライド1~
5)
スライド4
スライド1
スライド5
スライド2
−10−
カテゴリー分類をX線フィルムで症例を
また、宮城県では1回目の読影後に2回
示しながら解説して頂いた。前記の表に具
目の読影をし、1回目の読影結果を修正出
体例の無い例として
来ることにしているが当初、平成26年4月
では1回目診断と2回目診断に20%程度
斬1点集中型の皺襞集中像があり、存在が
の差があった。しかしアトラスやCDの配
確実でほぼ良性
布、講習会の開催などの研修(目合わせ)
→ カテゴリー3aまたは2。
を通して、平成27年3月にはまだ隔たりは
斬小さなバリウム斑~線状陰影
大きいものの、10%程度まで改善してきて
→ 存在自体がはっきりしない、
いるとのことであった。
しかしあるとすれば良性。
宮城県での胃X線検診とABC分類を同
→ カテゴリー3a。
時に受けた157例で血清抗体価3U/
未
ml
斬胃角部小弯の軽度変形と複線化
満とPG法陰性を血清学的未感染相当とし
→ 病変はありそうだが良悪性の判定困難。
て規定し、感度、特異度を検討してみた。
→ カテゴリー3b。
3~9.
を陰性高値とすると、画像的
9U/
ml
斬胃体部大弯の壁変形
に見て7~8割とかなり高い率で既感染、
→ 病変があるかないかはっきりしない、
現感染が入ってくる。これに対して、X線
しかしあるとすれば進行癌かも。
診断でのピロリ感染の診断精度は対策型で
→ カテゴリー3b。
は 比 較 的 感 度 が 高 く93.
1%、特 異 度 も
97.
6%と良好な結果が得られ、他からの報
などを提示し解説を頂いた。
告でも同じような結果になっているとのこ
とであった。
4.平成26年度からの宮城県における対策
また、カテゴリー分類を完全に導入した
型胃X線検診へのカテゴリー分類導入の
平成26年では18万例の検診中、異常なしが
実際
41%、胃炎診断が45.
5%であった。これを
宮城対がん協会での人間ドックでのABC
とにかく未感染だけはきっちりと診断す
分類のデータを比較すると年齢層別のピロ
る。胃炎、萎縮のない未感染胃だけを異常
リ菌未感染と既感染+
現感染の比率変化が
なしとする。未感染と既感染、現感染、ま
きれいに一致しており、(少しの差はあり、
たは既感染と現感染が判定不能の例もある
ABC分類などとのX線検査の併用などが
が、迷ったらとりあえず「胃炎」と付けて
重要な要素になってくるものとは思われる
おく→カテゴリー2。除菌例、既感染も含
ものの)X線診断での胃炎診断の確かさが
めて全て胃炎のカテゴリーでフォローする。
裏付けられているデータであったとのこと
既感染でどんなにきれいに見えても、その
であった。
人は胃炎として、カテゴリー2として囲い
込む、と言うことで宮城では対応している
とのことであった。
−11−
5.胃炎と診断された受診者への通知の問題
6.除菌治療の胃癌予防効果の問題
下記の表のような通知をしており、あま
除菌治療がどの程度本当に胃癌予防に効
り強い表現は使っていないがピロリ菌感染
果があるのかと言った問題は難しい。特に
と胃炎の文字があるだけでインパクトは大
高齢者についての除菌適応をどこまでする
きく、検診後のピロリ除菌治療受診者が3
のか。1万2千人のデータではピロリ菌感
~4倍程度に急増したとのことであった。
染の有無にかかわらず施行した一般集団か
らの胃癌発見率が0.
25%、除菌失敗例から
(スライド6)
は0.
47%、驚くことに除菌成功例からの胃
癌発見率は0.
25%と一般住民と変わりない
結果であった。この傾向は除菌後5年、10
年、15年経過しても同じような一定程度
の右肩上がりのカーブが続き、やはり除菌
後も癌の2次予防対策が非常に重要である
と言うことが分かったとのことであった。
(スライド8・9)
スライド6
医師会の医師間でピロリ菌や胃炎に対し
ての温度差が大きい。また受診者もずっと
異常なしで来たのが平成26年から胃炎と
診断され困惑する、と言うようなことを想
定し、医師会へ受診者指導の協力のお願い、
自治体、受診者へのパンフレットや説明会
での広報活動を通した啓発活動をしている
とのことであった。
(スライド7)
スライド8
スライド9
スライド7
−12−
最後に今後の胃がん検診は本来的には血
受診し、胃カメラや除菌について相談する
清学的なピロリ菌診断(ABCリスク分類
ように説明する、リスクの高い人は年に1
など)を併用しながらより検診対象を絞り
回は必ず胃X線検診を受けるように説明す
込み、精度と発見効率を上げていくことが
る、など。
)
望まれる。しかしピロリ抗体陰性高値の問
(質問:内視鏡検診は宮城県ではどのような
題や胃癌検診ガイドラインでのABC分類
の評価の問題等もあり、現状ではなかなか
方向なのかについて)
そこまで踏み切れない所もある。X線のほ
マンパワーの問題が一番大きいが、自治
うだけでも未感染、既感染+
現感染を分け、
体の予算の問題、2年に1回にすることに
後者を強く重点的に見ることにより精度と
もサービス低下の懸念もありまだ大きな動
発見効率を上げていくことが望まれる。胃
きはない。当分X線逐年検診での対応をし
炎をみることは胃粘膜をみることであり、
ていく。将来的にはX線、内視鏡の隔年検
がんの発見にも通じるはず。より質の高い
診も考えられるかも。
胃X線検診を!と締めくくられた。
(スライ
ド10)
(質問:鶴岡市ではABCリスク分類を導入
したが発見胃癌22例中X線で発見されたの
はわずかに2例のみであり、他はB、C、D
群であるために内視鏡検査にまわった群か
ら発見された。しかもX線での見落とし例に
進行胃癌が2例含まれていた。このことから
X線検診は飛ばしてB、C、D群はすべて内
視鏡検査にした方が良いのではないか)
ABC検診としては陰性高値の問題があ
る。また、初年度の検診率は高くなるがそ
スライド10
の後の受診率が急速に低くなる。受診者名
簿をどうやって維持していくのかなどの問
7.講演後の質問
題がある。
(質問:胃炎診断を導入後の困難について)
これに対する回答として、地区や医師間
(質問:除菌群からの胃癌発見率が0.
25%だっ
でのピロリ菌除菌への温度差が大きく、特
たがこの中の背景粘膜はどうだったのか)
に消化器専門医を受診するとあまり問題が
萎縮の進行した胃の除菌後から発見され
ないが、専門外の医師を受診すると対応に
た癌が多かった。肥厚性胃炎を含めて萎縮
戸惑ってしまう例がある。Q&A集を作成
の少ない胃の除菌後からは胃癌の発見は少
し医師会から開業医に配布してもらった。
なかった。
(対応例としては、慌てて除菌する必要は無
いので、心配なら消化器専門の医療機関を
以上のようなご講演、ご質問、ご回答で
−13−
あったと思われますが、記録違い、記憶違
いもあるかも知れません。間違いがあった
場合はご容赦申し上げます。質問について
は記載するかどうか迷いましたが重要な問
題が含まれていると思われましたので質問
者ご本人のご発言ニュアンスと多少変わっ
てしまっているかも知れませんが(ご質問
の先生のお名前は出さずに)敢えて記載さ
せて頂きました。
当県でもX線による背景胃粘膜診断を踏
図1
まえた読影力向上に努力し、これに出来る
文書にて、
「受診状況の確認」と「未受診者
だけABCリスク分類の情報を加味した読
への受診勧奨」を同時に実施します。電話
影環境、データベース構築を進めることに
勧奨では、電話の繋がらない人がいると、
よって効率的、高精度の胃癌検診を進めて
そのまま3月の文書での勧奨のみになって
行くことが重要であると思われました。
しまうことがありました。しかし、精検受
診率の低さによる危機感の煽りを受けると
同時に、精検受診をしないことによってが
大腸がん精密検査受診率向上の取り組み
ん発見が遅れるという本人の不利益を考慮
し、日中電話が繋がらないときは夕方、仕
長井市役所 健康課保健師 石川 翔太
事から帰宅する時間帯に電話をかける、本
人不在の時は家族に確認を取り、本人に伝
初めに、長井市における大腸がん検診の
えてもらうなどしてなるべく漏れの無いよ
精 検 受 診 率 に つ い て は、平 成22年 度 の
う追求するように心がけました。
84.
9%から平成24年度の76.
5%まで下降し
ましたが、平成25年度に88.
4%、平成26年
度に90.
0%と改善をしました。精検受診率
2つ目のポイントは、大腸がん検診の結
の推移につきましては図1をご覧ください。
がた健康推進機構から提示されたもので、
平成24年度には県内でも下位の精検受
大腸がん検診(便潜血2日法)の結果「1
診率でしたが、平成25年度から精検受診率
日でも3+が出た人」または、
「2日とも陽
が改善しました。その要因と考えられる3
性の人」です。この人たちに対しての訪問
つのポイントを報告します。
を健康課保健師8人全員で対応しました。
1つ目のポイントは、精検未受診者への
通常は約1か月後に検診結果説明会や郵送
電話勧奨を徹底したことです。長井市では
で結果を渡しますが、大腸がん検診の結果
毎年1月頃にその年度の精検未受診者への
のみ、約1週間で保健師が訪問して本人に
電話勧奨をしています。それでも未受診の
手渡して説明します。これにより精検を受
場合には、3月頃に返信用封筒を同封した
けなければならないという意識が高まり、
−14−
果において一定条件に該当した人に至急訪
問を実施したことです。その条件は、やま
【秋田STUDY】2)
受診率が高くなったと感じています。
3つ目のポイントは、検診申込みの用紙
2009年より厚生労働省第3次対がん総
とともに大腸がん検診についてのパンフ
合戦略事業として、
“大腸内視鏡検診による
レットを全戸に配布したことです。長井市
大腸がん検診の有用性評価研究”が開始さ
の場合、検診受診年度の前年度1月頃に全
れた。この研究の対象は秋田県仙北市・大
世帯に対して、検診の申込みをとります。
仙市の研究参加に応諾した40~74歳の男
この申込書とともに大腸がん検診について
女。逐年便潜血検査免疫法群とそれに、1
のパンフレットを配布してみようと試みた
回の検診全大腸内視鏡検査を併用する群に
のが平成25年度分の検診申込みのときで
無作為に割り付けられ、それぞれの群を10
した。パンフレットによって大腸がん検診
年間経過観察することとなった。プライマ
の精検受診の大切さと大腸がん検診の手軽
リ・
エンドポイントは大腸癌死亡率、セカン
さを周知できたと考えます。
ダリ・エンドポイントは累積進行・浸潤癌罹
最後に、今後も大腸がんの早期発見のた
患率、大腸癌に対する精度(感度・
特異度)、
め健康課全員で現在の取り組みを継続しな
さらに内視鏡検査による偶発症・
苦痛度。対
がら、検診の受診率と精検受診率の維持・
象者数は当初の仙北市の15,
000人からそ
向上を目指していきたいと思います。
の後大仙市にまで拡大され、43,
000人が追
加され、6年目を迎えている。ちなみに秋
田県全体の大腸癌75歳未満年齢調整死亡
率 は 研 究 開 始 時 の2009年 で は 全 国3位
大腸がん検診における
(12.
7/
10万)であったが、2014年では全国
大腸内視鏡検査のありかたについて
山形県医師会消化器検診中央委員会
6位(11.
321/
10万)となっている。
委員 半田 和広
内視鏡検査の質の評価としては、盲腸到
達率、抜去時間、前処置評価、鎮痙薬使用、
adenomadet
ect
i
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eなどをあげ、費用対
【はじめに】
大腸がん検診の有用性については、便潜
効果についても、検討されている。全大腸
血検査や、S状結腸内視鏡検査による検診
内視鏡検査のS状結腸内視鏡検査に対する
での死亡減少効果が示され、大腸ポリープ
有効性は特に右側結腸腫瘍の認識にあると
診療ガイドライン20141)では便潜血検査に
思われるが、l
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よる検診が、推奨の強さ1、エビデンスレ
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SSA/
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ベルAで「有用であるため、実施すること
ついて見識が深く、陥凹型早期癌について
を推奨する。
」と標記されている。しかし、
も診断能の優れた秋田での研究は特に興味
全大腸内視鏡検査を用いた検診については、
深いものと考えられる。
まだ十分なエビデンスがないため、現在そ
の有用性について検討が行われている。
【新島STUDY】2)
本研究は、昨年紹介させていただいた、
国立がんセンターがん予防・検診研究セン
ターの松田尚久先生らの研究。2011年から
−15−
3年間東京都新島村をモデルとした「内視
のリスクは低下させないと結論づけられ、
鏡検査による大腸がん検診受診率50%を
注目されている。
達成目標」に「対策型検診としての大腸内
その後、北欧米諸国、米国などで数件の
視鏡検診の安全性・
有効性評価」を主目標と
ランダム化比較試験が開始されている。
された。
【考察】
対象は40~79歳の新島住民の男女1,
671
今回は2014年に出版され、現在ホームペー
名。大腸内視鏡検査(TCS)による検診研
ジ上で公開されている日本消化器病学会編
究参加の応諾が得られた方に対し、3年間
の大腸ポリープ診療ガイドライン 1)と最近出
で全例への(TCS)が計画された。
版された松田尚久先生らが編集された著書 2)
その結果、3年間で789名(47.
2%)が
から大腸がん検診における大腸内視鏡検査
参加し、711名が(TCS)検診を受け、そ
に関する著述を紹介させていただいた。
の内23名(3.
2%)に大腸癌が発見された。
胃がん検診に内視鏡を用いるように、大
また、今後の課題として、①安全性評価、
腸がん検診にも内視鏡を用いれば、便潜血
②検査処理能力、③コスト面、④質の担保
検査のみによる検診より有効に思えるが、
などの点についての検証・整備の必要性が
比較研究によりそれを証明するのは時間と
あげられた。
多大な労力を要するものと思われた。今後、
2)
【海外の臨床試験】
大腸内視鏡によるがん検診が実際に行われ
1)s
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gmoi
dos
copyによる検診の評価研究
るためにはその有用性の確認とともに、安
s
i
gmoi
dos
copy検診の有効性は2件の症
全かつ効率的に内視鏡検査が出来る体制の
例対照研究3),4)で直腸・
S状結腸がん死亡率
確保が必要と思われる。また、効率的な検
のリスク低下が示唆されていた。その後、
査とするための指針となるガイドラインと
1900年代からランダム化比較試験による
有効性の検討が開始された。最近まで10~
11年を観察期間とする4件 5)~8)の研究が報
して、国内外のpol
yps
t
udyからポリープ切
告され、3件で死亡率減少効果が、4研究
ンスのあり方もさらに決定され、より少な
で 罹 患 率 減 少 効 果 が 示 さ れ た。ま た、
い回数で効率的な検診が行われる体制作り
s
i
gmoi
dos
copy検 診 に よ る10年 以 上 継 続
も必要と思われた。
する大腸癌の死亡率、罹患率低下の効果が
大腸内視鏡検査は、ここ230年の間によ
示唆された。
り苦痛の少ない検査となったと思われるが、
2) 全大腸内視鏡検査(
によ
col
onos
copy)
やや負担の掛かる前処置や、挿入困難な症
除後の経過観察は3年後で十分とする結果
が出たように、日本国内の初回サーベイラ
例があり、今なお検査の供給は十分でない
る検診の有効性評価研究
c
ol
onos
copy検診に関する評価研究は最
と思われる。大腸がん検診における大腸内
近になり信頼性の高い観察研究が報告され
視鏡検査の有用性が証明されようとしてい
はじめた。Baxt
らの症例・
対象研究 によ
er
る昨今、内視鏡の改良や手技研修により、
るとc
ol
onos
copy検診では左側大腸がん死
大腸内視鏡をより身近なものとすることが
亡リスクは低下させるが、右側の結腸がん
今後の課題と思われる。
9)
−16−
文献
8) Sc
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−17−
−18−
−19−
−20−
−21−
胃がん・大腸がん検診 年次データ推移
味した読影がより普及すれば4~5%に
実に32年分の推移が提示されています。
なっていくかもしれません。なお現時点で
胃がんにおいて住民検診の受診者数は残念
胃がんの発見数は横ばいです。一方、大腸
ながら低下して来ています。平成20年の一
がん検診の受診者は増加傾向です。要精検
般財源化で大きく減少した後も徐々に減少
率は6~7%で変化はありませんし、要精
傾向です。背景には除菌後にかかりつけで
検受診率も80%弱のままです。しかし、大
定期内視鏡検査へ回って胃X線検診をはな
腸がん発見数は過去最高となっており、大
れたことなどが考えられます。また要精検
腸がんの罹患数の増加傾向が気になります。
(武田)
率は9%ですが、ヘリコバクター感染を加
お わ り に
山形市医師会健診センターにおける胃
しやすい下地がすでにあると思われます。
X線検査の要精検率は6%程度と伺いま
今後、都会と地方のコントラストにも注
した。ヘリコバクターを加味した読影の
目すべき点かと思います。
目が十分に養われるとさらに低下するも
内視鏡による胃がん検診でもう一点気
のと思われます。その一方で、山形でも
になることですが、ヘリコバクター感染と
平成29年の春からになると思われます
いう視点をまったく考慮していないとい
がカテゴリー2
(慢性胃炎)の受診者に対
うのも問題かと思います。絞り込みにおい
してどのような情報を提供すべきかなど、
てもそうですし、実際にヘリコバクター未
今後議論の焦点のひとつと思われます。
感染の場合にどう指導したらいいのか、日
アンケートの集計が待たれるところです。
常診療と若干ギャップを感じます。
情報の内容によっては内視鏡へかなりの
さて、平成28年7月の検診学会の東北
数が誘導されるのではないかと思います。
地方会は山形で開催です。本たよりで話
山形は検診機関が充実していますが、
題になった点をさらに掘り下げて議論で
都会では検診機関がなく胃がん大腸がん
きればと思っております。この場を借り
検診にしても個別に医師会の先生が対応
て恐縮ですが、多くの先生方さらにはス
する場合が多いと聞きます。その場合、
タッフの方々に参加をお願いしたいと思
管理委員会がしっかり機能する必要はあ
います。
(武田)
りますが、胃X線ではなく内視鏡を選択
−22−
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