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JAPAN TRUST FUND FOR HIV/AIDS

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JAPAN TRUST FUND FOR HIV/AIDS
JAPAN TRUST FUND
FOR HIV/AIDS
w w w . i p p f . o r g
目 次
中 国
事実を正確に理解する ………………………………………………3
インド
HIV/エイズをトラック運転手の地図上に …………………………5
ケニア
貴重な教訓−HIV/エイズのメッセージを学校に送ったこと ……9
モンゴル
若者には知る権利がある …………………………………………11
ネパール
HIV/エイズに理解を示す職場づくり ……………………………13
パキスタン
タブーを打ち破る …………………………………………………15
ルワンダ
囚人たちの権利のための闘い ……………………………………19
タンザニア
若者をやる気にする ………………………………………………21
ウガンダ
無防備な青少年に手を差し伸べる ………………………………23
ベトナム
命、愛、そして性産業従事者(セックスワーカー)……………25
IPPF(国際家族計画連盟)
とは
どのような組織か
THE INTERNATIONAL PLANNED PARENTHOOD FEDERATION
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で
最大の、任意の非政府組織(NGO)として、性と生殖に関する健康(セクシュアル/リプロダクティブ・ヘル
ス)の供給者であり推進者でもある。
ビジョン
IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュア
リティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識される世界、さらに、さまざ
まな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
使命
•
IPPFは、アドボカシー(政策提言)やサービスを通してセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスお
よびライツを広める運動を実施することにより、特に貧しい人や弱い立場にある人に重点をおいた
個人の生活の質の向上を目指している。
•
•
•
不健康、望まない妊娠、暴力、差別の心配なく、性生活を楽しむ若い人たちの権利を守る。
女性が妊娠を合法的かつ安全に停止させることを選択する権利をもつことを支援する。
性感染症(STIs)をなくし、HIV/エイズの蔓延と影響を減らす努力をしていく。
IPPFの活動の基盤を成す価値観
•
IPPFは、セクシュアル/リプロダクティブ・ライツが国際的に認められた基本的人権であり、すべ
ての人に保障されるべき権利であると確信している。
•
IPPFはジェンダーの平等の確立を目指し、個人の、なかでも若い女性の心身の安寧を脅かし、健
康と人権の侵害が世にはびこることにつながる差別を撤廃するために尽力する。
•
IPPFは、多様性を尊重し、その組織運営と事業に青少年達やHIV/エイズとともに生きる人たちの
参加を得ることに重きをおく。
•
•
IPPFがなすべき事柄を達成し、運動を推進する核心は、ボランティア精神であると考える。
IPPFは、さまざまな社会集団、政府、組織、資金援助組織と提携して活動に専心する。
HIV/エイズ予防に向けたIPPFの活動
IPPFは、HIV/エイズとセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの本質的なつながりを本流に据え
るために活動する。権利推進の活動に続いて、HIV/エイズに対して無防備になっている人たちにはだ
かる障壁を除き、社会的汚名・個人の恥辱意識や差別を減らし、情報および予防とケア・サービスの利
用窓口を提供するために活動する。
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1
日本HIV/エイズ
信託基金(JTF)とは
JAPAN TRUST FUND FOR HIV/AIDS
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログ
ラムを専門に支援する。日本政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主
要な資金源となっている。
日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協会が組織としての能力と運営技術を
高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することである。
特に大きな打撃を受けている諸国に、その重点をおいていく。
JTFは主に以下の事業から成る
•
HIV/エイズ・プロジェクトを実施する加盟協会向けの資金供与
JTF の大半は地域事務局と加盟協会が実施するHIV/エイズ関連プロジェクトの支援に活用される。
プロジェクトを実施する協会には、現在、展開しているセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス
(SRH)と家族計画(FP)の活動を統合していくこと、および自国内でHIV/エイズのケアの分野で活
動している非政府機関(NGO)とネットワークを組むことが期待されている。
•
地域間研修
JTFからの資金により、加盟協会のHIV/エイズ関連活動の能力向上を目指し、毎年1回の地域間職
員研修事業を開催する。この研修事業は、南の協会間の協力関係を強化することを目指している(南
南協力)。
•
行動計画プロジェクト
アドボカシー(政策提言活動)を中心とした行動計画プロジェクトにもJTF基金から支援が出る。地
域間研修の成果の一つとして見込まれているのが、同研修に参加した加盟協会が行動計画プロジェ
クト向けにプロポーザルを作成し、それを提出することである。
2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基
金の支援を受けて合計64のプロジェクトを実施した。どのプロジェクトも特にこれまでにない新しい
ものとなっており、カンボジアのセックス・ワーカーやルワンダの囚人のように高いリスクにさらされ
ている人たち向けの事業から、バングラデシュの縫製工場主などの民間企業向けのものまで広範にわた
る状況のもとで実施されている。
JTFの支援のもと、中国の加盟協会は河南省農村部の若者45万人にHIV/エイズの情報を提供した。
インドの協会では、トラック運転手とその家族2万人を対象にエイズについての知識を広める活動を実
施した。このわずか2例だけをみても、HIV/エイズの予防に向けたプロジェクトがそれを必要とする
人々に届いているかが明確にわかる。重要なことは、IPPFと加盟協会の結びつきによって、これらの
活動が 最大数の対象グループに効果的かつ効率的に、確実に行き届いていることである。
2
日本HIV/エイズ信託基金
中 国
事実を正確に理解する
人口(2001年):
プロジェクト名:家族計画協会のネットワークを活用したHIV予防の農村教育運動
13億人
実施団体:中国計画生育(家族計画)協会(CFPA)
都市人口(2000年):
目的:農村地域のHIV/エイズに対する認識を高め、サービスの能力を向上させる新たな取り組みを展開すること
32%
主要言語:
中国周辺部の村で最初の死者が報じられた時、HIV/エイズの伝染に関する通俗的神話がはびこった。
情報に飢えた環境のため、恐怖と汚名をきせることも拡大した。中国の若者と出産可能年齢の女性の
HIV感染の主な原因は、正確、適切、かつ時機に合った情報の不足にある。青少年はしばしば仕事を探
して農村を離れるが、都会の困難な状況に対応できない。また中国では注射による薬物使用者の間での
HIV感染率も増加しており、これをきっかけに薬物使用者の性と生殖に関する健康(セクシュアル/リプ
ロダクティブ・ヘルス:SRH)の必要性も取り上げられるようになった。
この状況を改善するため中国計画生育協会(CFPA)は以前に実施した「漂流する」若者を対象にした
日本基金によるプロジェクトを積み上げることにした。今回のCFPAのねらいは、若者が都市へ移動す
る前に教育すること、そしてもっと広く「漂流する」若者たちの家族グループの中にHIV/エイズへの認
識が生まれるようにすることだった。
このプロジェクトの目的は、
•
•
CFPAのボランティア−地域社会のメンバーで構成されるもの−の広大なネットワークが、農村地
帯でHIV/エイズのサービスを提供できるよう強化する。
広大な地域をカバーできる費用対効果の高いモデルを提供し、中国のほかの地域にも展開できるよ
うにする。
間違った思い込みへの異議
中国では、感染した人と会話をかわすとHIV/エイズにかかることがあると多くの人が信じている。
このプロジェクト以前には、ウイルスに感染しているとわかっている人の住む村は通らないようにする
と、人々は言っていた。ある調査によると75%以上の人は、新たに感染した人はもはや「普通」の人に
は見えないのだと信じていた。恐怖心が極度に高い地区では、HIV /エイズ関連の訓練活動への出席が
多かった。少人数のグループ活動のつもりだったが、地域の住民総出の集まりになることがしばしばあ
った。
標準中国語
主要宗教:
儒教、仏教、道教、イスラム教、
キリスト教
平均寿命(1995−2000年):
70歳
乳児死亡率(1995−2000年):
出生1000人当たり41
識字率(1995年 概算):
81.5%
1人当たりの国民総所得(1999年):
780 USドル
成人のHIV感染率(2001年末):
0.1 %
中国の若者と出産可能年齢
の女性のHIV感染の主な原
因は、正確で適切な、しか
も時機に合った情報が不足
各地のCFPA地方支部は幅広い地域活動を行った。専門家が招かれて、感染と予防に関する事実を教
えた。知識コンテストを催す一方、村々を回る民族芸能集団による歌、語り、寸劇、劇などを展開した。
住民の認識を高め、参加を促すため、地域のメディアである掲示板、ポスター、スピーカーでの告示な
ども大いに利用された。
していることである。
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で最大の、任意の非政府組織
(NGO)として、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの提供者であり推進者でもある。IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必
要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュアリティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識され
る世界、さらに、さまざまな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
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ある調査によると75%以上の人は、新たに感染
した人はもはや「普通」の人には見えないのだ
と信じていた。
主な成果
地域のネットワークづくり
郡および町レベルで、およそ22
の地域プロジェクトグループが発
足した。
予防パンフレット
約25万世帯がHIV/エイズ予防の
パンフレットを受け取った。これ
は農村部の人々のために特別に作
られたものである。
HIV/エイズの受け入れ
10万人のCFPA会員が相手とコ
ミュニケーションを図る技能を身
につけた。彼らにはHIV/エイズ
の情報と教材が配られた。
教 訓
多数の人の能力向上
このプロジェクトの影響は非常に大きかった
•
•
•
10万人以上の支部職員とボランティアが研修を受けた。
出産可能年齢にある20万人の女性を含む、およそ40万人に情報が与えられた。
コンドームの使用が奨励され、広範囲の配布ネットワークが構築された。
知識およびコンドーム使用の増加
プロジェクト従事者の報告によれば、HIV/エイズに対する農村の人々の認識は高まっているという。
このプロジェクト以降、人々はHIV/エイズは自分たちに関係ないと以前に信じていたことを笑ってい
る。今や人々は情報・教育・伝達(IEC)教材を家族や友人のもとに持っていき、HIV/エイズが自分の
問題であることをみなが必ず理解するようにしている。現在、杞県(河南省)の大半の人は、HIVはど
のようにして広がるか、感染予防にどのような方法があるか、HIV陽性になった場合はどこで支援が得
られるかを基本的に理解している。ただしこの理解を個人の行動に転化することは、依然として世界の
難題である。
プロジェクトの事前調査では、既婚夫婦の70%以上はコンドームを使ったことがないと述べた。こ
の数字はプロジェクト実施以降、40%に下がった。無料のコンドームも入手しやすくなった。無料コ
ンドームの配布は2001年の39万個から、2002年末には58万個に増加した。
地元の参加が不可欠
プロジェクト成功の鍵をにぎるの
は、対象となる人々の積極的参加
である。
事例研究
参加型の研修による理解の向上
ティン夫人が初めてHIV/エイズについて聞いたのは、北京で働いていた村の人が戻って来た時
だった。彼はいつも具合が悪そうだった。しばらくすると彼の体調が悪いのはエイズのせいだとい
う噂が広まった。
「はじめのうち私たちはみな、完全に彼から遠ざかり、道を歩いている彼やその
家族にさえも、誰も近寄ろうとしませんでした」とティン夫人は言った。
「近寄ったら自分たちもエ
イズになると、みんなが思っていたのです。それは村でプロジェクトが始まる数カ月前のことでし
た。プロジェクトの人たちはこの村で講話やショーを催し、私たちはもっとくわしく知ろうと出か
けました」
参加方式の採用により、技能と知
識の伝達が強化された。
地元当局の取り込み
地元当局と地域リーダーによる支
援は非常に重要である。
「今はみんなHIV/エイズに関してはるかに気が楽になりました。私たちが隣人にしてあげられる
ことはあまりなかったのですが、彼の奥さんを支えることはできます。彼女は最初、夫の病気の介
護をしながら、私たちから疎外されることに対処しなければなりませんでした。今、彼女もHIV陽
性の検査結果を受けています。でもプロジェクト以降、私たちは知識を得て、共感できるようにな
りました。だから彼女に話しかけたり慰めたりしています。今はウイルスがどのようにして感染す
るのか、どうすれば自分自身を守れるのかわかっているので、前ほど恐れてはいません」
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログラムを専門に支援する。日本
政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本政府が資金全額を拠出してお
り、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協
会が組織としての能力と運営技術を高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することであ
る。2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基金の支援を受けて合計64のプロ
ジェクトを実施した。
4
日本HIV/エイズ信託基金
インド
HIV/エイズをトラック運転手の地図上に
人口(2001年):
プロジェクト名:トラック運転手向けの性感染症とHIV/エイズに関する教育、カウンセリングおよび予防に関する
10億人
プロジェクト 若者人口:
実施団体:インド家族計画協会(FPAI)
目的:モハリでのトラック運転手の間での性感染症とHIV/エイズの感染を減らし、より安全な性的活動を推進する
こと
50%
都市人口(2000年):
28%
主要言語:
インドのHIV蔓延率は比較的低いが、1990年代半ばには、大きな危険にさらされている集団が所々
にあることが明らかになった。インドの全国エイズ予防プログラムでは、トラック輸送業界にいる人た
ちの15−35%はHIV陽性者であると推定していた。彼らは感染しやすい小集団からより広い範囲に伝
染される「橋わたし」役を果たしているとみられている。その理由は、簡単である。移動を仕事とする
彼らは、自宅から遠く離れていることが多い。
ヒンディー語、ウルドゥー語
現在、インドでHIV/エイズとともに生きる人たちは400万人近くいる。この疫病の拡大が加速する
のを懸念する要因がいくつもある。
55%
その要因とは次のようなものである。
62歳
•
•
•
•
主要宗教:
ヒンドゥー教、イスラム教
識字率(1997年):
平均寿命(1995−2000年):
貧困な農村から仕事を求めて、より発展した都市中心地に人々が転入する。
乳児死亡率(1995−2000年):
識字率が52%と低い(男性67%に対して女性43%と格差がある)。
出生1000人当たり73
汚名をきせることと各種の差別をする。
HIV/エイズ、感染経路、予防法についての基礎的事実を知らない人が多い。
人々がHIV/エイズについて正しいことを知らず、それに感染した人に汚名をきせることが多いため、
HIV/エイズとともに生きる人たちが保健サービスを受けようとしても平等に扱ってもらえないことに
つながることが頻繁に起きる。伝染の恐れがあるからと、エイズ患者が隔離病棟に閉じ込められている
例も報告されている。カースト制度と(組織的な抵抗のため、減っているとはいえ)女子、女性の地位
が低いのも要因の一部をなす。サービスを受ける道がないこと、特に農村地域での緊急問題に対応でき
ないことも、HIV/エイズの拡大に油を注いでいる。
安全でない生活習慣の理解
複数の相手との性交渉、男性同士のセックス、アルコール中毒、コマーシャル・セックスワーカーと
の定期的な接触、性感染症の治療を定期的に受けていないこともトラック運転手の仲間がHIV感染に無
防備になる要因となっている。無防備な性行動がインドのHIV感染件数の86%を占めるとみられる。
1人当たりの国民総所得(1999年):
440 USドル
成人のHIV感染率:
0.8%
人々がHIV/エイズにつ
いて正しいことを知ら
ず、それに感染した人
に汚名をきせることが
多いため、HIV/エイズ
地域に根ざした包括的なアプローチ
とともに生きる人たち
トラック運転手と助手が2002年と2003年に実施されたJTF支援プロジェクトの対象であった。
2001年度分日本信託基金からの資金供与を受け、インド家族計画協会(FPAI)モハリ支部がトラック
運転手と国道ハイウェー沿いの35キロにわたる地域社会を対象に実施したプロジェクトの期間が延長
されたものである。
が保健サービスを受け
ようとしても平等に扱
ってもらえないことが
頻繁に起きる。
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で最大の、任意の非政府組織
(NGO)として、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの提供者であり推進者でもある。IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必
要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュアリティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識され
る世界、さらに、さまざまな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
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「活動をしたら、その分、
はっきりと結果が出まし
た。トラック組合も運転
手仲間も知識レベルは非
最近の評価では、プロジェクトの主な新機軸は、移動中のトラック運転手と自宅で待つその家族を同
時に対象としたことで、より価値の高い二段構えのプロジェクトとなったことにある。これまでのプロ
ジェクトとは違い、今回はトラック運転手組合も活用した。そのため、トラック運転手との定期的な交
流が盛んになり、メッセージの伝達範囲も広がった結果、行動変容の度合いが高まった。過去にもトラ
ック運転手を対象とするプロジェクトが数多く実施されたが、調査をした参加者のうち、これまでに他
のHIV/エイズ事業に出会った経験がない人は99%という驚くべき高さだった。
常に高いですよ」
FRAI
モニタリング・チーム
「プロジェクトが始まって
からというもの、妻以外
の相手とセックスをする
時は、みんな用心深くな
りましたね」
ダーバのオーナー、
トラック組合ロパー
「プロジェクトが終わって
しまったら、活動を続け
ることはわれわれの義務
です」
トラック運転手
6
このプロジェクトの狙いは、性感染症とHIV/エイズに関する意識づくり、カウンセリング、蔓延防
止、そしてより安全な性行動習慣の促進であった。政府当局、非政府組織、地元の任意団体や宗教指導
者、教育者、親、パンチャヤット(村議会)議員とオピニオン・リーダーを相手にした提言活動も実施
した。他のNGOと協調したことで情報・教育・伝達(IEC)資料の共同利用ができた。
非常に積極的な活動により、2002年になって初めてプロジェクト主催者は宗教指導者との連携体制
を打ち立てた。これにより、二つの利点があった。一つは、トラック運転手とその家族の生活に影響力
をもつ人たちを一員として取り込んだこと。もう一つは、礼拝の場を学習集会、カウンセリング、診療
サービス、専門医紹介などのプロジェクト活動の場として活用する可能性が開かれたことである。その
結果、6000人以上のトラック運転手とそのパートナーがカウンセリングを受けた。
生計と結び付けること
利益を得たのは男性ばかりではなかった。地域社会の女性が自助グループに参加するようになった。
グループは全国農業・農村開発銀行と連携しており、経済的向上の可能性ともつながっている。グルー
プの中で訓練されることによって、ピア(仲間)・グループ・エデュケーターが育ち、このプロジェク
トを一緒に実施するようになった。トラック運転手の中でも何人か選ばれてピア・エデュケーターとし
て研修を受けた。ピア・エデュケーター1人が5人にメッセージを伝えると見られており、彼らの波及
効果はかなりの範囲まで届くことになる。
コンドームの使用もプロジェクトの優先事項の一つで、より多くの人が入手できるようにするため、
新たな配布窓口もいくつか設けた。意識向上プログラムを200回程度実施し、アウトリーチ・ワーカ
ーを養成し、行動変容を目指した資料を幅広く配布した。巡回展示会、大衆集会、パネル討議、ビデオ
を観る会、街頭演芸などを行う他に、文化的行事を実施したり、世界エイズ・デーを活用したりして周
知をはかった。地域住民の健康一般と医療ニーズについて語り合う「健康キャンプ」を通して、プロジ
ェクトの知名度も上がった。
知識の向上とともにサービス需要が急増した。その他の好ましい効果もあった。今やコンドームは全
トラック運転の救急箱の常備品になった。熟練のプロジェクト・アウトリーチ・ワーカーがトラック運
転手相手に効果的なカウンセリングを行っている。ピア・エデュケーターとの接触や集団意識づくり集
会などの機会に、より安全な性的実践に向けて非常に積極的な姿勢をとられるようになった。FPAIは
このプロジェクトを他の地域に拡大し、ガレージの係員や整備工、それに現在は小型トラックやタクシ
ー、リキシャを運転しているが、ゆくゆくは長距離、積載量の大きいトラックの運転手になりたいと希
望しているような人たちも対象に含めていくべきであると確信している。
教 訓
組織を挙げての動機づけ
FRAI本部とIPPF地域事務局との緊密な連絡がプロジェクトの中心グループの動機を高める要因と
なった。
継続する研修
ピア・エデュケーターたちがプロジェクト期間終了後も活動を続けるには、支援が必要である。
指導者を巻き込むこと
宗教指導者その他の地域の指導者とともに活動することはプロジェクトに向けた参加者動員だけで
なく、ワークショップ会場その他の施設の提供を受ける上で貴重であった。事前に十分に計画し、頃
合いよく組合リーダーやオピニオン・リーダーと相互にやりとりをする方法は、彼らの支持を得るの
に重要であった。
7
無防備の性行動がインドのHIV感染件数の
86%を占めると見られる。
利益を得たのは男性ば
かりではなかった。地
事例研究
になった。
トラックの運転を始めて20年以上になるシン氏は、トラック3台のオーナーである。元農民で今年
50歳のシン氏は、現在、運転手として働いてくれている息子と甥が自分の事業を継いでくれるのを楽
しみにしている。このプロジェクトを通して、彼はHIV/エイズの本当のことを初めて知った。それま
でにもHIV/エイズというのは耳にはしていたが、それを問題視したことはなく、自分にも危険が及ぶ
ものとは考えていなかった。
「最初は、家を離れている時に複数の相手とセックスしていたなんて認め
たくはなかったんで、プロジェクトのワーカーが組合に訪ねてきた時にも何も言わなかったんだ。で
も、そのうち友人がピア・エデュケーターになって、われわれ全部に話すことが任務だって言い出し
た。もう逃げられなくなったね。とうとう他の運転手も引き連れてHIVに感染してないかどうか、自
発的にカウンセリングと抗体検査(VCT)を受けることにしたんだよ」
知識の向上とともにサー
自分で運転する生活には疲れたので、自作農地を耕したり、ティールームでクリケットでも見なが
ら、妻と家で時間を過ごしたりしたいとシン氏は考えている。
「うちの村にもプロジェクトがやってき
て、女性や若者にHIV/エイズの話をしたんだ。検査を受けろっていうもんだから、とうとう妻に告白
したよ。性感染症を彼女にうつしたんで、薬を飲んでもらわないとならなかったからだ。彼女、わか
っていたと思うんだ。男なんてみんな外に出れば、みな、あちこちで寝るから、おれだけが聖人君子
だなんて思っちゃいなかったはずだ。そうさ、プロジェクトはわれわれにはいいことだった。息子は、
同じような危険な目にはまずあわないと思うね」
域社会の女性が自助グ
ループに参加するよう
ビスの需要が急増した。
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログラムを専門に支援する。日本
政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本政府が資金全額を拠出してお
り、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協
会が組織としての能力と運営技術を高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することであ
る。2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基金の支援を受けて合計64のプロ
ジェクトを実施した。
8
日本HIV/エイズ信託基金
ケニア
貴重な教訓-HIV/エイズのメッセージを学校に送ったこと
人口(2001年):
プロジェクト名:ナクル地区の上級小学校でのHIV/エイズを支援するための教育省担当官・児童の保護者向けのア
3100万人
ドボカシー(提言活動)
都市人口(2000年):
実施団体:ケニア家族計画協会(FPAK)
33%
目的:学校でのHIV/エイズ・サービスへの支援体制をつくり、若者がHIV/エイズ総合予防サービスを受けやすくす
主要言語:
ること
スワヒリ語、英語
主要宗教:
1980年代半ばにケニアの産科診療所でHIV感染者第1号の届け出があって以降、HIV/エイズはケニ
アの最も深刻な保健問題となった。2001年までに、この感染症のために90万人もの子どもが孤児と
なった。この状況を改善するには、青少年たちに注目していくことが必須であることが当局の目には明
らかだった。2003年、ケニア家族計画協会(FPAK)は難しいことではあるが、HIV/エイズ・プロジ
ェクトをあえて学校に導入させることを決定した。
キリスト教、アフリカ伝統宗教、イス
その第一歩は、ケニアのナクル地区の上級小学校で、学校を基盤とするHIV/エイズ教育の実施案を
受け入れるよう、児童の保護者と教育当局向けに提言することであった。
1人当たりの国民総所得(1999年):
若者を念頭に、FPAKではプロジェクトを通して下記のことをねらった。
•
•
•
•
ラム教
識字率(1997年):
79%
360 USドル
平均寿命(1995−2000年):
教育省の担当官に学校でのHIV/エイズ・プロジェクトに責任意識をもってもらう。
52歳
子どもたち向けにHIV/エイズの知識と予防について教えることを家庭と学校に受け入れてもらう。
乳児死亡率(1995−2000年):
ピア(仲間)・エデュケーターのネットワークと支援体制を構築して、性感染症およびHIV/エイズに
ついて周知をはかるとともに、性と生殖に関する健康(セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス:
SRH)サービスを利用しやすくする。
出生1000人当たり65
地域のグループとNGOと共同し、若者中心の対応を強化する。
教育省担当官、保護者、PTA、オピニオン・リーダー、その他の有力地域グループと会合を開き、
プロジェクトの意義と必要性について理解を求めた。このような組織と共同で事業を実施したり、参加
を得たりすることは、子どもだけでなく、地域のより広い範囲にプロジェクトの成果が広まることにつ
ながり、非常に有益である。
プロジェクト実施校として4校を選び、児童の中から無記名投票でピア・カウンセラー候補者を選ん
でもらい、教師とPTA代表とともに研修を受けさせた。研修後、ピア・カウンセラーとなった子ども
たちは自分の学校だけでなく、近くの学校にも出かけて行って、アウトリーチ活動をした。若者の心に
訴えるように工夫されたこのアウトリーチ活動には、在校生だけでなく卒業した男女を含めて約5000
人が参加した。詩、歌、芝居、講演、グループ討議などを通してメッセージが青少年の心にしっかりと
刻み込まれ、参加者はHIV/エイズについて、そしてリプロダクティブ・ヘルス全般について学んだ。
性感染症についても知識を得て、さらにカウンセリングや自発的に受けるカウンセリングとHIV抗体検
査(VCT)の専門機関への紹介を受けた。
成人のHIV感染率:
15%
若者向けのセクシュアル
/リプロダクティブ・ヘ
ルス活動は、彼らのニー
ズや関心に合わせ、妥当
かつ適切なものでなけれ
ばならない。
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で最大の、任意の非政府組織
(NGO)として、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの提供者であり推進者でもある。IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必
要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュアリティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識され
る世界、さらに、さまざまな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
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9
主要な成果
政府の認可
教育省がプロジェクト実施を認可
し、各学校と契約した。
若者が利用しやすい対応に向けた能力強化
若者向けのセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス活動は、彼らのニーズや関心に合わせ、妥当で
適切なものでなければならない。FPAKは、各種サービスを統合した全体的な取り組みが必要であると
考えたため、プロジェクトは意識づけの研修だけに留まらなかった。
ピア・エデュケーターの育成
ピア・エデュケーターとして若者
40人を採用し、研修を行った。
感染した若者が支援を受け、情報を入手でき、ケアや治療サービスへの入口となる「検査後」クラブ
が設置された。モデル4校のそれぞれに特別のピア・ユースクラブと支援資料センターが設置された。
指導とカウンセリング担当教師がクラブ活動の調整役となった。つまりプロジェクトが日常生活の一部
となり、これによってプロジェクトの継続性が確保された。
トレーナー・グループの育成
プロジェクト経験により、若者に受け入れやすいHIV/エイズ・サービスを実施し、パートナーシッ
プを構築するFPAKの能力は格段に上がった。
教師とPTA代表24人が研修を受
け、ピア・エデュケーターを支援
する人たちの養成をはかった。
最大の影響を求めたネットワークづくり
組織を超えた協調と連携を発展させることに特別な注意を払ったが、これが利用可能な人材や物的資
源を追加することになった。提携相手の組織がピア・エデュケーターとトレーナーの養成を助けてくれ
た。サービス提供者はVCTカウンセリング方法と抗ウイルス薬の投与の研修を受けた。
HIV/エイズ周知度上昇
5000人に近い青少年がHIV/エ
イズとリプロダクティブ・ヘルス
関連の教育を受けた。
プロジェクト顧問委員会は男女同数で構成され、親、教師、若者の参加とフィードバックのための発
言の場を提供した。
SRHサービスの提供
若者230人向けにSRHサービス
を提供し、性感染症の治療、軽い
慢性症状の手当て、カウンセリン
グなどを実施した。
専門家紹介
若者150人以上に 他団体が行う
VCTサービスに紹介した。
教 訓
教育当局の支援
教育当局の参加と支援なしにはどんな学校プロジェクトもうまくいかない。
融通性のある取り組み方法
地元の提携関係の構築
プロジェクト活動は、前もって設定したプログラムにしたがって実施するのではなく、学校の行事
日程に合わせて予定を組み、生徒と教師に時間的な負担をかけないようにする。
協力者56人と会合を重ね、プロ
ジェクト実施と進捗状況に関する
検討をした。
研修の必要性
職員の入れ代わりが激しいため、トレーナーの数がその分多く必要になる。
能力強化
プロジェクトを通してFPAK 内
の若者に利用しやすいサービスが
発展しその実施技術が高まった。
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログラムを専門に支援する。日本
政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本政府が資金全額を拠出してお
り、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協
会が組織としての能力と運営技術を高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することであ
る。2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基金の支援を受けて合計64のプロ
ジェクトを実施した。
10
日本HIV/エイズ信託基金
モンゴル
若者には知る権利がある
人口(2001年):
プロジェクト名:ウランバートルの大学寮に寄宿する学生のためのHIV/エイズ教育
250万人
実施団体:モンゴル家族福祉協会(MFWA)
都市人口(2000年):
目的:性感染症・HIV/エイズの予防について正確な情報を提供し、コンドームの利用を増やすこと
65%
主要言語:
モンゴル語
今のところ、モンゴルのHIV感染はほんのわずかしか報告されていないが、これで満足している訳に
はいかない。HIV/エイズへの認識は決定的に低いのである。セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス
(SRH)サービスを若者が利用するのは容易ではない。若者が正確なSRH情報と適切なサービスを利用
できるようにするため、寄宿学生を対象にしたプロジェクトが展開された。
モンゴルでは、2002年は「学生の年」だった。つまり政府が若者向けプロジェクトに今まで以上
に承認と評価を与えた年だった。
主要宗教:
ラマ教(大乗仏教)
識字率(1997年):
99%
平均寿命(1995−2000年):
62歳
またこの年は、MFWAがHIV/エイズの認識・予防運動を大学生対象にしようとして、選択した年だ
った。
全体的手法の採用
この国の首都ウランバートルの大学寮全部を対象としたインターアクティブの研修集会では、活発な
討論、役割演習、ビデオ鑑賞などが行われた。扱った話題は、家族計画と望まない妊娠、アルコール中
毒、家庭内暴力、安全なセックス、そして性感染症・HIV/エイズの感染と予防などだった。
学生の理解度を、一日がかりのワークショップの前後にわたって判定した。国立モンゴル大学の学生
の知識は、プロジェクトによって平均24%改善された。
乳児死亡率(1995−2000年):
出生1000人当たり66
1人当たりの国民総所得(1999年):
390 USドル
成人HIV感染率(2001年末):
0.1%以下
若者たちには性と生殖
に関する健康(セクシュ
メッセージのネットワーキング
アル/リプロダクティ
メッセージを広めるにあたり、各寮を担当する教官とソーシャルワーカーの協力を得ることができた。
ソーシャルワーカーたちはプロジェクト用教材をほかの教育施設で使用して、見事なネットワークを展
開した。ピア(仲間)・エデュケーターたちはウランバートルその他の場所の2500人以上の青少年に
情報を伝えた。
ブ・ヘルス:SRH)の
ワークショップには140名の学生と、各地から選ばれた40名が出席した。16−25 歳の若い工場
従業員たちと失業中の若者たちが学生に加わった。教師とソーシャルワーカーはウランバートル青少年
育成センターの協力で、リーダーになるための研修を受けた。
フィードバックは、サ
サービスを利用するよ
う勧めた。彼らからの
ービスを提供する側が
もっと若者に利用しや
すい方法を開発するの
に役立った。
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で最大の、任意の非政府組織
(NGO)として、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの提供者であり推進者でもある。IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必
要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュアリティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識され
る世界、さらに、さまざまな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
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若者が利用しやすいサービスの促進
「プロジェクト以前は、私たち
は性感染症・HIV/エイズや望
まない妊娠など、SRHについ
ての情報を事実上、何も受け
取っていなかった。避妊薬
(具)を買うお金がなかったば
かりに妊娠してしまった女の
子たちを知っている」
ピア・エデュケーターはまずMFWAについて、HIV/エイズだけでなく若者に影響のあるもっと広い
セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの問題についても、情報の発信源であり支援の提供者である
との知識を深めた。若者たちにSRHのサービスを利用するよう勧めた。彼らからのフィードバックは、
サービスを提供する側がもっと若者が利用しやすい方法の開発に役立った。
MFWAはこのプロジェクトを中国国境地帯に広げたいと願っている。中国国境地帯では、極度の貧
困のせいで非常に多くの少女が売春をするようになっている。現地のMFWAセンターのネットワーク
により、実施内容は比較的ストレートなものになるだろう。またMFWAは中国国境地帯の公共部門の
保健組織とうまく協力しているだけでなく、ほかのNGOからもレベルの高い支援を受けている。
影響の測定
学生、国立モンゴル大学
「うちの従業員の86%は女性
で、大半は田舎で中学を終え
学生たちは大学の寮でHIV/エイズのパンフレットと、正しい使用法を添えたコンドームを配布した。
女子学生には、望まない妊娠を避けるための経口避妊薬が配られた。ピア・エデュケーターの中には、
上級生に無視されるのではないかと心配した者もいたが、プロジェクト活動が高いレベルで認識されて
いたことから、全体的にみて彼らの努力は大成功だったことが分かる。ある調査によると、大学生の
50−60 %がプロジェクト活動について知っていたことがわかった。
て都会に出てきた16−25 歳
の若者だ。彼らの多くは、こ
のプロジェクトによって初め
てHIV/エイズのことを聞い
た。都会と田舎の若者の情報
格差は、まるで昼と夜のよう
に大きい」
工場経営者、アーマノ
教 訓
無料支給と利用しやすさ
お金のない若者にとって、無料の避妊教育とコンドームは非常に重要である。
ピア・エデュケーターの更なる必要性
若者は移動をしやすいので、もっと多人数を訓練する必要がある。
受益者の参加
プロジェクトの計画と実施に若者が参加することが、より大きな成功を導く。
提携協力関係の発展
NGOおよび政府組織との協力は有益である。
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログラムを専門に支援する。日本
政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本政府が資金全額を拠出してお
り、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協
会が組織としての能力と運営技術を高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することであ
る。2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基金の支援を受けて合計64のプロ
ジェクトを実施した。
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日本HIV/エイズ信託基金
ネパール
HIV/エイズに理解を示す職場づくり
人口(2001年):
プロジェクト名:新規採用されたネパールの警察官のためのアドボカシー(政策提言活動)を通したHIV/エイズ予防
2350万人
プログラム
都市人口(2000年):
実施団体:ネパール家族計画協会(FPAN)
12%
目的:HIV感染に対して無防備な新規採用の警察官の間で認識を強め、行動変容をはかること
若者(15−29歳)人口:
26%
ヒマラヤ山脈に取り囲まれたネパールは南アジアで最も貧しい国の一つである。1988年に最初に感
染が発見されて以来、HIV/エイズは無防備なグループ内に留まっていたものが、次第にこの山間の王
国内の広範囲な社会に広がってきている。無防備な性行為と若者の都市流入がネパールにおけるHIV/
エイズの広がりの2大要因である。いくつかのグループが大きいリスクを抱えることになれば、この病
気の蔓延が急激に深刻化することもありうる。
全体的に見ればHIV/エイズの感染率は比較的低いが、2005年までには15−49 歳の年齢層の成人
死亡総数の約20%がエイズ関連のものになると予測されている。無防備なグループの中にはすでに非
常に高い感染率を示しているものもある。カトマンズでは注射による薬物使用者の間のHIV感染率は
70%近い。
複合的なリスク要因
主要言語:
ネパール語
主要宗教:
ヒンドゥー教(90%)
識字率(1997年):
38%
乳児死亡率(1995−2000年):
出生1000人当たり83
平均寿命(1995−2000年):
57歳
広範囲にわたるリスク要因が、若者の感染の可能性を増大させる。青少年はしばしば仕事を求めて故
郷を離れ、その多くが性感染症・HIV/エイズを持ち帰る。新しい都市移住者は低賃金の衣料・カーペ
ット製造業で働くが、そこでも貧困のために収入を補おうと危険な手段に走ることがある。インド国境
周辺に見られるセックス産業で働かせる目的での若い少女の人身売買も若者の感染率を高めることにつ
ながっている。
1人当たりの国民総所得(1999年):
220 USドル
成人のHIV感染率(2001年末):
0.5%
もう一つの懸念される職業が警察である。多くの警察官がネパールの地方から新規に採用されている。
これは2001年の都市人口がネパールの人口の12%にすぎないことを考えれば驚くべきことではな
い。
ネパールのHIV/エイズ関連団体の課題は農村社会で十分な教育を受けていない人口のニーズに応え
るような取り組み方を工夫することであった。これは小学校レベルを対象にした初のHIV/エイズ対策
事業ということになろう。
無防備な性行為と若者
の都市流入がネパール
におけるHIV/エイズ
新モデルの構築と検証
の広がりの2大要因で
FPANはこのプロジェクトの実施地として二つの警察学校を選んだ。これら2校はFPANが新モデ
ルを展開するための理想的な環境を提供してくれた。
ある。
•
大部分の新入り警察官には高等教育や経済的上昇の恩恵に浴する機会がなかった。
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で最大の、任意の非政府組織
(NGO)として、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの提供者であり推進者でもある。IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必
要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュアリティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識され
る世界、さらに、さまざまな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
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主な成果
最高幹部による承認
事業計画の実行に関しては、ネパ
ール警察の検察官、その他の上層
幹部の承認を得た。このレベルの
賛同を得たことが決定的であっ
た。
トレーニング・オリエンテーション
新規採用警察官および中心的な警
察教育担当者45名を対象とする
2日間のオリエンテーションプロ
グラムを実施した。全体で
1050名の新規採用警察官が20
講座を受講した。
見直しと改善
問題点が早期に解決したのは、見
直しを随時行ったからである。そ
れを通じて警察本部、教育センタ
ーおよびFPANスタッフの間で将
来計画についての協力関係ができ
た。
•
•
新規採用警察官は、都市の誘惑の中にいるので特に感染のおそれが高い。
警察官訓練カリキュラムにはHIV/エイズに関する項目は含まれていなかったので、将来の教育計画
の中に特別に考案した研修モジュールを取り込んでいけるはずである。
このプロジェクトはHIV/エイズに対する認識を高め、危険な性行動に対して影響を与え、HIV/エイ
ズの感染率を低下させる研修コース・モジュールを案出するために始まった。HIV/エイズに関する基
本的な理解をネパール警察の管理職や内務省内に広げることによって、組織内でHIV予防プログラムを
進める能力が高まるだろう。これは後に続く世代の警察官にも必ず利益になるはずである。
継続性の確立
この活動計画は国家の非常事態が発生したためにその年の内に中断してしまったが、FPANはこの
プロジェクトが新規採用警察官の間でのHIV感染率を下げることに役立ったと確信している。このプロ
ジェクトを通して開発された新しい講座モジュールは既存の警察官養成カリキュラムに組み入れられ
る。FPANはその中核事業の中からいくつかの支援活動を行うことになる。
警察学校におけるマルチメディア教材の利用
•
•
•
•
性感染症・HIV/エイズに関する冊子を配布した。
•
HIV/エイズに関するメッセージをペンやTシャツ、タオルなどに印刷した。
タイ家族計画協会(PPAT)が製作したビデオをネパール語に翻訳しダビングした。
映画会を開催し、引き続いて活発な討論会を持った。
安全な性行動、HIV/エイズとともに生きる人たちに対する理解、若者のためのセクシュア
ル/リプロダクティブ・ヘルス教育の必要性などを訴えるフォークソングコンテストを開催
した。
教 訓
運動の強化
性感染症・HIV/エイズに関する事業が他の組織でも導入されるようになれば、このメッセージはさ
らに強められるだろう。
フォローアップ
FPANはHIV/エイズ関連の事業をその活動の中核的部分に確実に組み入れなければならない。
エンパワーメント(能力強化)
プロジェクトを持続させるためには、独自の教育計画を実行する組織に対し必要な能力を備えてもら
うことが不可欠である。
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログラムを専門に支援する。日本
政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本政府が資金全額を拠出してお
り、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協
会が組織としての能力と運営技術を高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することであ
る。2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基金の支援を受けて合計64のプロ
ジェクトを実施した。
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日本HIV/エイズ信託基金
パキスタン
タブーを打ち破る
人口(2001年):
プロジェクト名:若者のための性感染症・HIV/エイズ予防のための提言活動
1億4400万人
実施団体:パキスタン家族計画協会(FPAP)
都市人口(2000年):
目的:若者の HIV/エイズに関する情報とサービスを受ける権利を支援する地域社会の体制を構築し、かつ若者の間
に性感染症・HIV/エイズとその予防法に対する認識を高めること
37%
若者人口(15−29歳):
25%
パキスタンにおけるHIV/エイズの感染率はそれほど高くなく、報告されているほとんどのケースは
注射針を使った薬物使用者のものである。しかし事態が急速に変わる可能性はある。世界の他の地域と
同様に青少年は特に無防備である。パキスタン家族計画協会は、この点を考慮して、若者を最優先する
ことにした。
パキスタンを危険にさらす要因がいくつかある。人口移動の増加、低識字率、貧困の増大、それに貧
困層が生き抜くために危険の多い手段をとらざるを得ないこと、などがそれである。約40%が最低生
活水準以下の暮らしをしている。報告されているHIV感染者の大部分は20−40 歳の年齢層である。
HIV/エイズを恥辱と受け止め、汚名をきせることは国全体に蔓延する問題である。他の多くの国々と
同様、パキスタンでも、HIV/エイズとともに生きる人々は孤立や差別、虐待の対象になっている。
FPAPスタッフによって、日本信託基金(JTF)が加盟団体向けに行う地域間の教育活動の一環とし
て小規模な「実験的」プロジェクトが展開された。
主要宗教:
イスラム教(97%)
主要言語:
パンジャブ語、ウルドゥー語
識字率(1997年):
43%
乳児死亡率(1995−2000年):
出生1000人当たり95
平均寿命(1995−2000年):
59歳
適切で質の高い情報が手に入らないため、通説や誤解が若者の性やリプロダクティブ・ヘルスに関す
る考え方を支配している。このプロジェクトの目的は、若者の間に性感染症・HIV/エイズの知識を広
めることのほかに、性感染症やHIV/エイズに関するサービスや質の高い情報を受け取る権利を若者に
保障するよう地域社会の支援を獲得することも含んでいた。
コミュニティを取り込む
プロジェクトでは就学、不就学の若者とをその教師、親とともに対象にした。これは大きな変化であ
った。パキスタンでは若者と年長者との間の中身のある対話はまれだからである。また、このプロジェ
クトは政府、非政府機関および宗教指導者たちとのネットワークの構築も推進した。教師と宗教指導者
が「マスター・トレーナー」となり、就学・不就学の若者をピア(仲間)・エデュケーターとなるための
指導にあたった。
パキスタンの3つの辺境農村地域−ペシャワール、北部地域およびチャクワール−にある2校(共学
校)が事業実施校に選ばれた。地域で受け入れてもらうために、教育当局、教師およびコミュニティの
宗教指導者の参加を得て問題に対する自覚を高めるための会合を開催し、続いて親たちが自由に参加す
るセッションも持った。
1人当たりの国民総所得:
470 USドル
成人HIV感染率(2001年末):
0.1%
HIV/エイズを汚名と受け
止めることは国中に蔓延し
ている問題である。他の多
くの国々と同様、パキスタ
ンでもHIV/エイズととも
に生きている人々は孤立や
差別、虐待の対象となって
いる。
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で最大の、任意の非政府組織
(NGO)として、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの提供者であり推進者でもある。IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必
要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュアリティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識され
る世界、さらに、さまざまな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
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「このようなプロジェクトは若者に自分の健康状態に関しての自覚だけで
はなく、彼らの権利や潜在能力についての自覚をも生み出している。こ
のプロジェクトを通して、若者の自尊心を高め、自分の家族や国家のた
めに彼らが果たすことができる極めて重要な役割について理解させるこ
とができる」
ムハメド・アシャラフ・チァータ(FPAP事務局長)
主な成果
親の参加
1200名の親たちが公開集会に
参加した。社会・文化的な視点に
立つ情報を提供すること、親や教
師が常に知識を持っているように
しておくことが緊要になってきて
いる。
当初は不承不承であったが、教育当局は教師のプログラムへの参加を認め、学校敷地の利用を許可し
た。
JTFの資金援助による若者事業が、女子対象の事業、男子若者対象の事業、イスラムと家族計画プロ
ジェクトなど、FPAPの他事業と関係づけて実施された。
適正なメッセージを浸透させる
マスター・トレーナー
教師24名、宗教指導者24名が
選ばれ、マスター・トレーナーに
なる研修を受けにイスラマバード
に派遣された。その内の半数が女
性であった。
ピア・エデュケーション
72名の学生(男女同数)がピア・
エデュケーターとなる教育を受け
た 。 1 8 0 0 名 の 若 者( 男 女 同 数 )
が144のピア・エデュケーショ
ン講座と48のグループ研修に参
加した。
最初の一歩はHIV/エイズ予防のための若者活動にコミュニティの支援を得るために必要な一連の情
報をまとめることであった。それに続いてマスター・トレーナー、教師、地域の世話役および青少年を
対象にした総合的な教育マニュアルと教材を開発した。これらの教材は多くの領域をカバーし、病気、
専門医への照会、予防、治療、在宅ケア、支援体制、カウンセリング、対人コミュニケーション、ピ
ア・エデュケーション、生活技術などの基本的な情報が含まれている。
パキスタンの若者にとっての危険因子
非識字
若者の非識字率は全体で46.05%、女子に限ると61.85%である。非識字と男女不平等と
が15−24 歳の年齢層の無防備性を強烈に高めている。
一度経験してみたい気持
思春期の若者は好奇心が強く、性や薬物の経験を求める傾向がある。
教材の開発
利用しやすく、文化的に配慮が行
き届いた若者向けの教材セットが
作成された。中には印刷教材、ビ
デオ、オーディオ・カセット、街
頭芝居が含まれている。
誤 報
権威のある情報とリプロダクティブ・ヘルスサービスがないため、人々はインチキ療法を頼
りにする。
人口移動
パキスタンの若者が職を求めて家を離れるのは普通のことであり、その結果、孤立と孤独感
から彼らは危険な性行為に走りやすくなる。
観光のリスク
特に北部地域にある地方では観光関連の仕事に就く機会が一般的である。若者はしばしばガ
イドやポーターとして働き、この他にも外国人旅行者に対し関連サービスを提供している。こ
のような環境下で、極端な貧困とセックスの誘惑が若者を無防備にしている。
質の高い情報の入手
リプロダクティブ・ヘルスに関して話し合うことで若者の性行動を早めてしまうという一般
的な思い込みがあり、それが家族内の率直な話し合いを妨げている。家族内の上下関係で青少
年の地位が低いこともまた、彼らが質の高い性と生殖に関する健康(セクシュアル/リプロダク
ティブ・ヘルス:SRH)情報を手に入れる手だてが限られている理由である。
社会的に弱い立場
若者に関連が多い別の要因としては、社会的疎外、失業、薬物使用、性的搾取を含む身体
的・精神的虐待、性差別などがある。
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このプロジェクトでは地域や集団の多様性とジェンダーの問題に細心の注意を払い、包括的な取り組
み方法を導入した。親たちとの自由参加セッションが開かれ、そこでも若者のHIV/エイズ・プロジェ
クトの必要性が強調された。男性の問題、女性の問題は別々のセッションで扱われた。教師と宗教指導
者のための研修プログラムを開発した。プログラムでは両性とも等しく対象とされた。若者の研修セッ
ションが進む中、ピアグループが組織され、研修の対象となる青少年が選ばれるとともにピア・カウン
セリングが始まった。
コミュニティ・リーダーの参加
より保守的ないくつかのコミュニティにおいては不安も見られたが、このプロジェクトが教育当局、
教師、親、宗教指導者、住民代表などの支援を得ているという事実が人々に対する説得力を発揮した。
宗教政党が支配しているコミュニティでは最初、若者に対してセクシュアル/リプロダクティブ・ヘル
スやHIV/エイズに関する情報を提供するという考え方に対しては最も強い抵抗があったが、FPAPの
HIV/エイズに関する教育を前もって受けていた宗教指導者がそこで効果的な働きをした。
親、教師、宗教指導者の参加を得たことはプロジェクトの成功の決定的な要素であった。彼らの参加
によってプロジェクトは大多数に受け入れられるような形で社会的に確実に根を下ろし、そこに若者を
参加させることを可能にした。おそらく最も重要なことは、広い分野からの参加を得たことで、繰り広
げられたHIV/エイズに関するメッセージが、青少年の生活の中で影響力をもつ他の情報源からのメッ
セージと衝突することはなかった、ということである。
「パキスタンでは若者のリ
プロダクティブ・ヘルス
は非常にデリケートな問
題だが、それでもSRHと
HIV/エイズに関する信頼
できる情報が、特に高等
学校教育の場においては、
非常に重要であるという
認識はある。このプロジ
ェクトは学生のたちの理
解を高めるだけではなく、
この病気に対する教師の
知識と姿勢をも改善した」
学校教師、ペシャワール
17
「私たちはこのような情報を子どもたち、なかでも娘たちに伝えるこ
とを常に恐れてました。セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスに
関する情報やサービスは学齢期の子どもにはそれほど重要ではない
し、そのような情報を与えれば、子どもが早くから性的な行動に目覚
めることになるんじゃないかと考えてたんです。でも今は子どもたち
には現在や将来の自分の人生に影響するあらゆる情報を受け取る権利
があるとはっきりわかりました」
母親、チャクワール
「この問題に関する誤解は、
宗教指導者たちの認識を改
善して初めて払拭できるも
教 訓
学校をベースにした活動
学校における活動は社会的な相互作用と結束を生み出す。学校のような機関の積極的な参加があれ
ば今回のようなプロジェクトの効果は格段に高まる。
のである。いたずらな抵抗
は何もよい結果を生まない
でしょう」
広範囲な分野からの参加を求める
パキスタン社会においてこの種のプロジェクトを成功させるためには、親と宗教指導者の参加を得
ることが最も重要である。
宗教指導者、ギルギット
教材の開発
メッセージや研修計画や行動変容を促すコミュニケーション教材を入念に練り上げ、作り上げるこ
とが重要である。
ピア・エデュケーション
適切な教育がなされ、設備が整っていれば、ピア・エデュケーションは若者に働きかける最善の方
法論であることは疑いない。
若者の能力を高めること
能力強化プログラムを通して、青年は自分たちに将来の指導者になるための測り知れない能力が潜
在していることを実感できる。
「このプロジェクトが人々
の社会的、文化的な価値観
細心の注意を払ったアプローチ
秘密保持、プライバシーおよび社会・文化的な慣行を厳守することを約束すれば、若者はセクシュ
アル/リプロダクティブ・ヘルスに関する情報やHIV/エイズ関連のサービスに多大な関心を払う。
に強い注意を払っていたこ
とに感銘を受けました。お
そらくそれがこのプロジェ
クトを大きな成功に導いた
理由でしょうね」
政府の教育担当官、
チャクワール
事例研究
ムハマド氏が15歳の時に通っていたペシャワールにある学校では、性について語ることなど思い
もよらなかった。
「私は教室で、特に教師たちとリプロダクティブ・ヘルスやHIV/エイズについて話し
合ったことは一度もないし、それは私にコーランの読み方を教えてくれたモウラナ(Moulanas、宗
教学者)についても同じことだった。両親と話し合うことなども全くありえなかった。今では私は、
このような考え方や生き方をしていたために私は多くの困っている人々の助けになることもできなか
ったし、自分自身を深く知ることもできなかったのだ、ということがわかる」
ムハマド氏は、ピア・エデュケーターに選ばれてから、どうすれば他人に影響を与えることができ
るかを理解していく過程で、自分自身について非常に多くを学んだと思った。
「このプロジェクト以前
にはわれわれはリプロダクティブ・ヘルスに関して知っていることはほんのわずかで、それも役に立
つことも少しはあったが多くはくだらないことだった。例えば私はウイルスによる感染とか予防など
については実際、全く理解していなかった。教育を受けてから私はいっそう強く責任感を持つように
なった。私が学んだことは生涯持ち続けていくつもりだし、命を救うための情報を他の人々に伝える
立場を持ち続けるつもりだ。教育は実に意義深いものだった」
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログラムを専門に支援する。日本
政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本政府が資金全額を拠出してお
り、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協
会が組織としての能力と運営技術を高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することであ
る。2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基金の支援を受けて合計64のプロ
ジェクトを実施した。
18
日本HIV/エイズ信託基金
ルワンダ
囚人たちの権利のための闘い
人口(2001年):
プロジェクト名:ルワンダの刑務所におけるHIV/エイズの予防
800万人
実施団体:ルワンダ家族福祉協会(ARBEF)
都市人口(2000年):
目的:HIV/エイズの感染と予防について囚人の注意を喚起すること
6%
刑務所収監人口(1994年):
12万人
2004年4月は、世界を震撼させたあの大量虐殺事件の10年目にあたる。内陸の小国であるルワン
ダは、1994年の残虐な民族闘争のために荒廃し、アフリカにおける最も人口密度の高い国の一つであ
ったこの国から数百万人もの難民が生まれた。
今日では国の刑務所は戦争犯罪を問われる何万もの人々で今なお膨れ上がっている。
刑務所収監人口(2003年):
7万人
主要言語:
キンヤルワンダ語、フランス語
この国の刑務所内では公には性行為は禁止されているが、大部分の囚人は他の囚人とコンドームを使
わない性行為を日常的に行っていると考えられている。同性愛や男性が男性と性行為を行うことにまつ
わるタブーは、政策面においても事業の実施上も難題として立ちはだかっている。
主要宗教:
キリスト教、イスラム教
ルワンダの巨大な囚人人口の中の高いHIV感染率−および彼らが釈放された時点での蔓延の激化の予
想は、ルワンダ家族福祉協会(ARBEF)に衝撃を与え、活動のきっかけになった。この活動を支えるの
はHIV/エイズの予防の方法を手にすることは基本的かつ普遍的な人権であるという原理原則である。
2002年のARBEFによるプロジェクト実施以前にはルワンダの刑務所制度の中でHIV/エイズに対す
る手だては何ら打たれていなかった。
識字率(1997年):
このプロジェクトの主な目的はHIV/エイズ感染と感染予防に対する囚人の意識を高めることにあっ
た。主な目標はプロジェクト終了時には受刑者の50%までがコンドームを使用するようにすることで
あった。大量虐殺事件以来、農村部におけるHIVの感染率はほぼ都市部と変わらないまでに上昇してい
る。
平均寿命(1995−2000年):
2003年に大統領令が出され、病気、高齢あるいは事件当時未成年であった囚人が多数釈放された。
「正義の遅滞は正義の否定に等しい」という原則に基づき、伝統的裁判所が現在、拘留者の裁判のスピ
ードアップのために使われている。このような地域基盤の法廷では刑罰よりも和解が強調されている。
多数の囚人が近い将来に釈放される見込みで、HIV/エイズがさらに広く地域に拡大していくことを暗
示している。
ARBEFは、まずニーズを判断してから、刑務所の環境に特有の予防法を担当するボランティアおよ
び地域保健職員を養成し、動員した。刑務所を所管する政府職員と会合を持ち、彼らの支援を得た。引
き続いて刑務所管理官向けのセミナーやワークショップを開催した。HIV/エイズの現実について囚人
に自覚させるために教育や意識づくりの講座を実施した。コンドームを普及させるための配布網も拡充
した。多くの囚人がさらに深く学ぶことに関心を示し、自覚を高める講座の後では自発的に受けるカウ
ンセリングと抗体検査(VCT)の要求が急増した。
62%
1人当たりの国民総所得(1999年):
250 USドル
39歳
乳児死亡率(1995−2000年):
出生1000人当たり122
成人のHIV感染率(2001年末):
8.9%
囚人の釈放がHIV/エ
イズの流行を煽るこ
ともありうる。
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で最大の、任意の非政府組織
(NGO)として、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの提供者であり推進者でもある。IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必
要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュアリティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識され
る世界、さらに、さまざまな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
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19
大量虐殺事件以来、農村地域のHIV感染率は都市部とほぼ変わ
らないまでに上昇している。
主な成果
ピア・エデュケーション
ルワンダの12の行政区内にある
17の刑務所で1500人を超すピ
ア・エデュケーターを養成した。
パートナーシップ
囚人たちは熱心かつ協力的で、直面する問題を処理するのにレベルの高い能力を示した。ピア(仲
間)・エデュケーターが出所することになると、即座に他の囚人がその役割を引き継いで、プロジェク
トが途切れることがないようにしている。HIV/エイズへの自覚を高めるためのプログラムは刑務所の
医務室の日常活動の中に組み込まれたが、ピア・エデュケーターの役割は非常に重要である。ARBEF
が刑務所内で行う事業に継続的に役割を果たし、囚人たちが必要とする最新の教育と支援を確実に受け
られるようにすることが理想である。釈放された囚人もまた、刑務所内の弱者たちとより広範囲の国民
との間の架け橋として活動できるであろう。
刑務所管理官との間によい関係が
できあがった。
HIV/エイズ・クラブ
HIV/エイズに関しての話し合い
を運営するために教育を受けた囚
人たちによって、いくつかの刑務
所に特別なクラブが設立された。
結 果
行動変容
囚人たちはより責任ある性的行動をとるようになった。
健康を追求する行動
医療当局に報告された性感染症に感染した囚人数が減少した。
囚人たちへの接近
このプロジェクトの終了までには
刑務所人口の87%がHIV/エイズ
に関する講座を受講した。このよ
う な「 気 付 き 」を 育 て る た め の 講
座は刑務所医務官の職務の中核と
なっている。
参加と意味のある参画
囚人はHIV/エイズに関する知識と理解を積み上げることに真剣な関心を示した。
教 訓
効果の観察
HIV予防に関する基本的なニーズ
の査定および態度に関する研究を
行い、その結果、HIV/エイズお
よびセクシュアル/リプロダクテ
ィブ・ヘルス事業の担当者に囚人
のニーズに関する有用な情報を提
供した。また、それによってプロ
ジェクトの結果生じた行動変容を
観察することも可能になった。
支援体制
刑務所内での組織化が教育・訓練事業を可能にした。
資料がものを言う
HIV/エイズ関係の新しい出版物や学習資料に対する切実な要求がある。刑務所内の教育担当者が
専門的な情報や教育・コミュニケーション資料を入手できるようにする必要がある。
全体的アプローチと治療手段
HIV/エイズとともに生きる囚人が結核(TB)−HIV感染者が感染する最も一般的な日和見感染
症−のような感染症の治療を受けられなければ、この種のプロジェクトは困難になる。
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログラムを専門に支援する。日本
政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本政府が資金全額を拠出してお
り、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協
会が組織としての能力と運営技術を高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することであ
る。2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基金の支援を受けて合計64のプロ
ジェクトを実施した。
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日本HIV/エイズ信託基金
タンザニア
若者をやる気にする
人口(2001年):
プロジェクト名:若い人のHIV/エイズ予防に向けた行動変容を促す対話
3600万人
実施団体:タンザニア全国家族協会(UMATI )
都市人口(2000年):
目的:ムワンザ市内の10−25 歳の青少年のHIV感染を減らすこと
33%
識字率(1997年):
73%
タンザニアでのHIV/エイズ感染率は高く、数々の努力にもかかわらず、最近の趨勢はますます上昇し
ている。最も増加率が高いのは青少年たちである。UNAIDSの2002年の推定では国内の15−49 歳
の人口全体の15%以上がHIV陽性だった。ジェンダー格差が大きいことを考えると、男性よりも女性の
感染者の方がずっと多いと思われる。この危機の増大に対応して、保健従事者はタンザニアの若者を中
心としたプロジェクトを企画実施することに注目しはじめている。
1人当たりの国民総所得(1999年):
260 USドル
平均寿命(1995−2000年):
51歳
タンザニアのIPPF加盟団体は、2002年に青少年向けの行動変容を促す対話を重視した若者プロジェ
クトを実施した。
乳児死亡率(1995−2000年):
出生1000人当たり81人
同プロジェクトのねらい
•
•
10−25 歳の青少年の間でのHIV感染を減らす。
ムワンザ市内の若者に複数のセックス・パートナーをもつことの危険について伝え、彼らの行動変容
を促す。
社会的・文化的慣習と通念が、青少年たちのHIV/エイズに感染しやすさを左右する。例えばムワンザ
市では、子どもたちはかなり若い頃から性的活動を始めると言われている。複数の相手と性交渉をする
ことは社会的に容認されている;年配男性は少女を相手として求め、処女とセックスすればHIV/エイズ
が治ると信じている。夫をエイズで亡くした女性を夫の兄弟が相続する(結婚する)という慣習も青少年
たちの立場を弱くする。
成人のHIV感染率:
7.8%
若者(15-24歳)のHIV感染率:
6.7%
地域住民の参加と協力で広
い範囲に知識が浸透する結
事実の正確な把握
HIV/エイズ活動の効果を高めるには、正確なデータが大切である。またHIV/エイズ・プロジェクト
が若者にふさわしく、適切であるためには、彼らの行動やどんなものに影響を受けやすいかを知ること
も重要である。ムワンザ市のプロジェクトで実施した調査では、若者の40%がコンドームを使っていな
いことが判明した。その上、女子は、HIV/エイズよりも予期しない妊娠の方をより恐れていることがわ
かった。HIV/エイズは自分たちにはより遠い脅威と思っているようだった。青少年たちは、8歳か9歳
で性的初体験をしたと言い、自分たちの親のHIV/エイズ知識や意識は非常に限られていると述べた。
果となった。プロジェクト
評価によると、若者や地元
社会、宗教指導者、市内で
活躍するNGOの積極参加が
このプロジェクトの明らか
な「特筆すべき強み」であっ
若者が利用しやすい施設の強化
家族計画クリニックを拠点として実施されたムワンザ市プロジェクトでは、若者と一緒に活動するこ
とで、彼らが健康志向の行動をとり、セックスの相手の数を減らしコンドームを正しく使うよう促した。
プロジェクトでは、市内の保健施設からサービス要員12人の能力を強化し、若者が利用しやすいサービ
スの強化に努め、同時に地域の有力協力者の能力を高め、情報、教育およびサービスを支援したり実際
に行ったりしてもらった。市内11校の教師20人に研修を受けさせ、日常的に情報を提供するようにし
た。このようにプロジェクト期間中に幅広い活動が実施された。
た。
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で最大の、任意の非政府組織
(NGO)として、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの提供者であり推進者でもある。IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必
要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュアリティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識される
世界、さらに、さまざまな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
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「このプログラムの最もよいところは、危険にさらされた
若者を対象にしてはいるけれど、実際にはみんなのために
もなるように、社会全体にも対象を向けていることです」
フォーカス・グループに参加した親、テメケ若者センター
「個人や地域社会がHIV/エイ
ズから自分を守れるようにす
るには、次の三つが必要です。
1)この疫病の緊急性を理解
地域との関係を構築し、支援を得ること
地域住民の参加と協力で広い範囲に知識が浸透する結果となった。プロジェクト評価によると、若者
や地元社会、宗教指導者、市内で活躍するNGOの積極参加がこのプロジェクトの明らかな「特筆すべ
き強み」であった。
するための基本的事実、2)
適切なサービスの利用のしや
報告された好結果
すさ、3)行動変容または安
さらになお追跡調査が必要であるが、初期の印象として報告の多くは、10代妊娠の減少など、プロ
ジェクトが好ましい結果を出したことをうかがわせる。
全な行動を続けることを支援
する環境」
ジュディス・ドレル、評価員、
2003年 ムワンザ市
「エイズの蔓延で、社会は伝
統文化にみる理想とそれら
の理想と相反する過酷な現
実に目を据えざるをえなく
なります。現在の状況を変
えるためには行動変容を促
す対話が重要な役割を果た
すので、これを特別に配慮
した責任ある対応の基調と
していく必要があります」
ジュディス・ドレル、評価員、
2003年 ムワンザ市
教 訓
地域住民参加
地域の人たちの問題意識を高め、宗教指導者などの有力者と協力していくことは重要である。
能力強化
HIV/エイズ専門の研修の必要性と職員の能力を軽視してはならない。これは特に関連事業の統合を
はかる際に必要である。研修と意識づくりには十分な時間をかける必要がある。
提携の力
ネットワークとパートナー関係を築いたおかげで、他のHIV/エイズ分野のNGOと緊密に活動する
機会が生まれ、彼らのもつ専門知識や技術から多くの助力を得た。
治療の選択肢
陽性との診断が出た後に治療や支援が受けられるようになれば、VCT向けの提言活動がもっとうま
く進むと考えられる。
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログラムを専門に支援する。日本
政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本政府が資金全額を拠出してお
り、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協
会が組織としての能力と運営技術を高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することであ
る。2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基金の支援を受けて合計64のプロ
ジェクトを実施した。
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日本HIV/エイズ信託基金
ウガンダ
無防備な青少年に手を差し伸べる
人口(2001年):
プロジェクト名:ウガンダのムバララで性感染症・HIV/エイズに感染している、または影響を受けている臨時雇い
2400万人
で物売りをしている若者のケアと支援
都市人口(2000年):
実施団体:ウガンダ家族計画協会(FPAU)
14%
目的:社会から取り残された若者やサービスの行き届かない農村社会における性と生殖に関する健康/権利(セクシュ
主要言語:
アル/リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:SRHR)を推進すること
HIV/エイズの蔓延率を減らすことに関しては、ウガンダはアフリカの優等生と言える。しかし、あ
る程度の成功は収めているものの、依然として社会から取り残され絶望的貧困にあえぐ農村社会は多く、
蔓延の危険は過ぎ去ってはいない。
英語、スワヒリ語、
ルガンダ語
主要宗教:
キリスト教、イスラム教
この国の実態を示すいくつかの指標は次のようなものである。
識字率(1997年):
HIV/エイズのケアや支援を必要としているウガンダ人は200万人近い。
64%
この疫病のため、120万人もの子どもが孤児となった。いまや、HIV/エイズはかつての結核やマラ
リアよりも脅威であり、年間死亡数の12%を占めるに至っている。
乳児死亡率(1995−2000年):
出生1000人当たり106
貧困、栄養不良、清潔な水を手にする方法が少ないなど、保健衛生資源への圧迫が大きいにもかかわ
らず、ウガンダのHIV/エイズ予防事業の成功は広く喝采を受けている。
平均寿命(1995−2000年):
大統領自らが音頭をとり、HIV/エイズ予防教育が学校でも行われている。しかし、中等教育まで進
学する子どもは12%にすぎないため、学校に行っていない子どもを対象にしていくことが大切であ
る。
1人当たりの国民総所得(1999年):
社会から取り残された集団に向け取り組みの新機軸を考える
ウガンダ家族計画協会(FPAU)は、ムバララ市西部でタクシーの客引き、レンガづくり職人、ボダ
ボダサイクル(自転車での配送業ならびにタクシー)、バーテンダー、洗車人、行商人、理容師、その
他、臨時雇いの物売り、それに貧しい農村を対象に、HIV/エイズ予防、ケア、支援サービスを実施し
た。
都市部でこのような仕事についている人の多くは若く、性的にも活発であり、その中には複数の相手
と性的関係をもっている人もいる。彼らは、自分の相手が感染していたり、友人や家族の中にも感染者
がいたりで、その困難な対応に孤立無援で直面している場合もある。
臨時雇いの若者プログラムの第一義的な目標は、町にいる最も無防備な青少年の間での性感染症・
HIV/エイズの蔓延を減らすことだった。農村普及事業では、住んでいる場所が町から遠すぎてサービ
スを受けたくても受けられない住民向けに健康教育とリプロダクティブ・ヘルス関連の一括事業を実施
した。
42歳
320 USドル
成人のHIV感染率(2001年末):
5%
ウガンダでは、正規の賃
金を得る職業に就いてい
る人は少ない。このため、
従来の職場単位でのHIV/
エイズ予防活動は状況に
合っておらず不適当であ
る。他の感染に無防備な
集団と同様に、臨時雇い
の物売りたちにも彼らの
ニーズに合った独自の
HIV/エイズ予防プロジェ
クトが必要である。
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で最大の、任意の非政府組織
(NGO)として、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの提供者であり推進者でもある。IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必
要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュアリティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識され
る世界、さらに、さまざまな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
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主な成果
HIV/エイズ・ケアの統合
プロジェクトはFPAUの実施して
いる家族計画サービスとHIV/エ
イズ・ケアと支援との統合を強化
した。
VCTサービスの実施
500人以上が無料ないし補助金
を受けたVCTサービスを受けた。
性感染症の治療をした
800人以上の患者が性感染症の
治療を受けた。
ピア・エデュケーターたちの
大活躍と成果の向上
ピア・エデュケーター20人が8
つのクラブを設立し、いろいろな
職業の人たち向けに活動した。研
修を受けた彼らは忙しい日々を送
った。家庭訪問は延べ3000回
に及び、HIV/エイズを主題に地
元の言葉と英語でドラマを4回上
演し、歌を7曲、詩を4篇、劇を
2作つくった
それがすべてではない。ピア(仲間)・エデュケーション・クラブや若者が利用しやすい診療所を通
して、家族計画、産前産後ケア、予防接種、性感染症の蔓延防止と治療、受胎、セクシュアル/リプロ
ダクティブ・ヘルス、および関連問題に関するカウンセリングサービスと合わせて自発的に受けるカウ
ンセリングとHIV抗体検査(VCT)の事業を提供した。
このような努力の結果、プロジェクトの後、臨時雇いの人たちがより責任のある健康的な選択をする
ようになった。
地域に根ざした宗教的集団の力の活用
社会から隔絶された社会集団と接触するのは通常はむずかしいが、これには教会を拠点とするVCT
のアウトリーチ活動を通して乗り越えた。
日曜日の教会の礼拝は、点在して住んでいる農村住民が一堂に集まる数少ない場である。この信仰集
団での教育活動はこのプロジェクトの成功の秘訣であった。
プロジェクト従事者は当初、宗教指導者がこのプロジェクトに巻き込まれることに消極的ではないか
と懸念したが、幸いなことに、これは杞憂であった。教会指導者のなかには信徒たちに紹介してくれた
だけでなく、中には積極的に支援してくれ、更衣室をカウンセリング室として使わせてくれた人もいた。
教 訓
事業の統合は複雑である
HIV/エイズ・サービスと家族計画サービスの統合はうまくいくはずであるが、そのためには、戦略
的、運営・運用面の要因を考慮しなければならない。
宗教的集団の価値ははかりしれない
教会やその他の宗教組織は大勢の人と接するチャンスを与えてくれる。農村の教会を通してのアウ
トリーチ活動の方が市中の常設クリニックよりも多くの人に接触できた。今後は、イスラム教の信者
向けにアウトリーチ活動をするための一層の努力が必要である。
フリーダイヤルの相談の成功
無料電話による相談に1662件
の通話があった。
サービス内容の向上
サービス提供者5人がVCTとケア
および支援の訓練を受けた。検査
室のサービスが向上し、常設およ
び移動巡回サービスの能力が強化
された。
その他の組織との結び付き
その他の組織とのネットワークづくりは重要である。それによって持続可能性が高まり、多くの分
野を横断した取り組みができるようになる。
適正資料
IEC資料は、地元の言葉で準備する必要がある。
参加
プロジェクトの企画に住民を巻き込むことが重要であり、プロジェクトが外から地域社会に押しつ
けた場合よりもその影響の強さに格段の違いがある。
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログラムを専門に支援する。日本
政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本政府が資金全額を拠出してお
り、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協
会が組織としての能力と運営技術を高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することであ
る。2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基金の支援を受けて合計64のプロ
ジェクトを実施した。
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日本HIV/エイズ信託基金
ベトナム
命 、 愛 、 そ し て 性 産 業 従 事 者( セ ッ ク ス ワ ー カ ー )
人口(2001年):
プロジェクト名:ベトナムのセックスワーカーのHIV/エイズ予防に関し、VINAFPAの力量を高める
7900万人
実施団体:ベトナム家族計画協会(VINAFPA)
都市人口(2000年):
目 的:政策立案者の認識を高める、サービス提供能力をつける、ピア(仲間)・エデュケーションおよびHIV/エイズ
の予防とケアのモデルを開発すること
20%
主要言語:
ベトナム語
かつてベトナムでは、注射器を使って薬物を打つ時に不潔な針を共同で使うことがHIV/エイズの広が
りの主たる原因であったが、この疫病は急速に拡大した。そして激しい伝染病の例にもれず、この病気
もほかの無防備なグループへと向かった。現在注目されているのはセックス産業である。つまりセック
スワーカー、そのお客、そして両者の安定的パートナーだ。
ベトナム家族計画協会(VINAFPA)はIPPF地域事務局と連携して、セックス産業に適した慎重な方法
を開発する必要性について、政策立案者の配慮を促すことに奮闘した。このプロジェクトはセックスワ
ーカー、特に女性の、セクシュアル・ヘルス/ライツを促進するうえで、また、もっと広範囲の人々にセ
ックス産業とHIV/エイズの拡大との関係をよりよく理解させるうえで、重要なステップになった。セッ
クスワーカーの健康の必要性は重要な問題であるが、セックス業が恥辱として扱われ、不法な職業であ
る社会にあって、この必要性を満たすのは、引き続き困難である。
主要宗教:
仏教、カトリック教、道教、
儒教
識字率(1997年):
93%
1人当たりの国民総所得(1999):
370 USドル
平均寿命(1995−2000年):
67歳
都市の現場をいくつか選び、そこのセックスワーカーを対象にVINAFPAは以下のことに着手した。
•
•
•
•
セックス産業におけるHIV/エイズ予防の認識を高める。
•
セックス産業に関わる仕事をしているVINAFPの中心スタッフに、技能の開発と実際的体験を通じて
能力をつけさせる。
この差し迫った問題について、政策立案者の認識を高める。
乳児死亡率(1995−2000年):
出生1000人当たり40
セックスワーカーの性感染症・HIV/エイズ感染率を下げる。
成人のHIV感染率(2001年末):
ハノイ、ホーチミン市、ダナンのホテル、レストラン、その他公衆の場で行われているセックスワー
カー間の仲間支援を進展させる。
0.3%
保護装置の考案
メイン・プロジェクトでは革新的方法とることを決定し、
「女性サーバークラブ」の発足に邁進した。こ
のクラブは、将来ほかの現場にも導入できるよう、ピア・エデュケーションと支援のモデルを提供する
ものである。教育とは別に、クラブはHIV/エイズとともに生きるセックスワーカーが切実に必要とする
支援基地を提供した。また支援から治療に至るサービスを利用する窓口にもなった。セックスワーカー
がしばしば身分を明かすのを恐れ、ちゃんとした病院になかなか行かない環境では、これは特に貴重な
ことだった。
セックスワーカーは性と生殖に関する健康(セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス:SRH)、HIV/
エイズ予防、そして前向きに生きることなど、貴重な知識を得て力をつけていった。そして今度はクラ
ブのメンバーが個人やグループの集会でほかの多くのセックスワーカーに呼びかける活動にかかわるよ
うになり、プロジェクトの規模は劇的に拡大した。
国際家族計画連盟(IPPF)は、149カ国の加盟協会で構成される世界的ネットワークである。また世界で最大の、任意の非政府組織
(NGO)として、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの提供者であり推進者でもある。IPPFは、すべての女性、男性、若い人が必
要とする情報とサービスを利用できる世界、セクシュアリティが基本的人権の一つとして人生の自然かつ大切な側面であると認識され
る世界、さらに、さまざまな選択が十分に尊重され、汚名をきせたり差別をしたりすることのない世界を目指している。
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セックスワーカーはセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス、
HIV/エイズ予防、そして前向きに生きることなど、貴重な知識
を得て力をつけていった。
主な成果
技能開発
HIV/エイズ予防と呼びかけのスキ
ル は 、 ハ ノ イ の「 ホ ッ ト ス ポ ッ ト 」
で働いている500 人とクァン・ニ
ンの100 人のセックスワーカーに
伝授された。
政策立案者への影響
2つの地区のワークショップで上級
政策立案者の参加は60名に達し
た。セックスワーカーに関し、効果
的なHIV/エイズ・プロジェクトが
必要だという合意が得られた。
政策決定者の考え方を変えること
ベトナムではセックス産業に従事するのは違法である−それゆえ世論は否定的になり、政策立案と社
会サービスはセックス産業に敵対するような方向に向かいがちである。したがって最優先事項は、政策
立案者を巻き込んでセックスワーカーのニーズに応えて、彼等にHIV/エイズやその他のヘルスケアを
提供する際に好都合な政策を考案させることだった。特定のグループから一般住民にHIV/エイズが広
がるのを減少させるうえで、これは過去20年間に得た数々の教訓のなかでも重要な進歩と言える。
プロジェクトは大衆組織と地方当局レベルの60人以上の方針決定者を動かした。今まで当局がセッ
クス産業をその違法性のゆえに考慮の対象としない選択をしていたことを考えるとこれは実に心強いこ
とだった。今では、ベトナムの政策立案者はセックス産業の現実と先見性ある対応の大切さを理解する
ようになっているので、この革新的な非主流のサービス提供が改善されることを期待したい。
ピア・エデュケーターのネットワーク
VINAFPA、女性連合と青少年連合
の協力によりピア・エデュケータ
ー・モデルが開発された。ハノイで
は3つのピア・エデュケーターチー
ムが研修後に活動を開始した。彼ら
は500 人のセックスワーカーに会
ってカウンセリングと助言を与え、
またHIV/エイズ予防のためコンド
ームの使用を勧めた。
専用クリニック
このプロジェクトへの支援でクァ
ン・ニンに専用クリニックが設立さ
れ、クラブのメンバーの健康管理を
行っている。
貴重なデータ
状況調査により、ベトナムのセック
ス産業とHIV/エイズについて、状況
とニーズの貴重な分析が得られた。
メディアの活用
VINAFPAの雑誌に連載した特集記
事は、セックス産業でのHIV/エイ
ズ活動に関する一般市民の意識を広
め、HIV/エイズ予防の認識強化に
役立った。
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プロセスへの情報提供
セックスワーカーを対象に実施した調査により、政策立案者は恐るべき情報をいくつか得ることになっ
た。
以下のことが初めて明らかになった。
•
セックスワーカーの約90%はHIV/エイズに対する高度の認識を持ち、自分たちがいかに感染しや
すいかを理解しているものの、その行動はリスクを減らすほどは変化していない。
•
•
セックスワーカーのおよそ60%はコンドームを時どきしか使わないか、あるいは全く使用していない。
ホテル、クラブ、レストランのバーホステスの大半は性感染症に感染している。中には100%の例
もあった。
これらはプロジェクトによって明らかになった事実のほんの一部であるが、この調査結果は、ベトナ
ムのセックスワーカーとそのお客の生命にかかわる広範な方針決定の際に考慮されている。
外部組織との協力でより大きな影響力を目指す
外部組織との協力もプロジェクト成功の鍵であった。協力関係はプロジェクトの成功を継続させる中
心をなすはずである。例えば、NGOのユースハウスとザ・ライトから来た若者問題専門家と公衆衛生
専門家と契約を結び、ハノイにHIV/エイズ・ピア・エデュケーター500人を超えるネットワークの人
選と構築を手助けしてもらった。この中には、セックスワーカーや、レストラン、ホテル、マッサージ
パーラーで働く女性が含まれている。
2004年3月、VINAFPAはほかのNGOと会合を持ち、セックス産業の人々のために活動した体験を
伝える計画を立てた。これに続けて、セックスワーカーのHIV/エイズ予防に関して共通の意見に到達
する目的のために、政策立案者、行政官、オーガナイザー、そしてピア・エデュケーターが参加する全
国ワークショップを開催する予定である。VINAFPAが日本信託基金の補助金を得て開発したモデルを
微調整して活動する能力を持つようになれば、政府と国際組織に提案できるようになり、将来は同種の
プロジェクトへの支援が確実になることだろう。
「ホテルやレストランで働いている女性はセックスワーカーになるリスク
が非常に高い。労働条件のために、彼女たちはいとも簡単にセックスワ
ーカーになってしまう。それが職場であったり、そうでなければ他の場
所で−」
警察官、バイ・チェイ
事例研究
「“女性サーバークラブ”に参
加するよう、人に勧めるのは
レストラン・ホステスのチョンさんは27歳で、自分を「セックスワーカー」とは考えていないし、
プロジェクト以前は仕事に伴うリスクについても考えようとしなかった。「私は時どき仕事のあと、お
客−“ボーイフレンド”とか“恋人”−を友人の所に連れて行きます。私たちの稼ぎはあまりよくな
いので、臨時のお金を稼がなければなりません。私たちはみんな家族を養っています。エイズのこと
は聞いていましたが、そのことは考えませんでした。せいぜい、自分がかかったら悲しいだろうと思
っただけでした」
「プロジェクトが始まる以前はコンドームを手に入れる方法がありませんでした。当時レストラン
のボスは関心を持っていなかったし、こちらもボスを全くあてにしていなかった。今はコンドームを
容易に入手できますし、クラブを通じてリスクのことと自分自身を守る方法を知りました。コンドー
ムを使うよう主張することに関して強くなったとみんな感じています。みなで団結しているのでお客
はコンドームを使うしかないからです」
「多数の同僚が自分はHIV陽性だと知っています。検査を受けたからです。それでHIV/エイズは私
たちみんなにとってぐっと現実のものになりました。今はHIV/エイズのことを多くの人が知っている
し、支援もあります。クリニックに定期検査に行けるし、性感染症の治療も受けられる。専用クリニ
ックはよいですね、仲間と自由に情報をやりとりできますから。仲間は役に立つ専門的知識と情報を
教えてくれます。今度は私たちが、クラブに入っていないほかの人たちにそれを伝えることができま
す」
難しい。彼女たちは自分がセ
ックスワーカーであることを
認めたくないからだ。クラブ
が一対一のカウンセリングに
代わるものだとすれば、クラ
ブを別の名前で呼ぶ必要があ
る。例えば“ヤングマザーク
ラブ”とか“女子青年クラブ”
とか。そうすれば彼女たちは
恥ずかしがらないし、ほかの
人と一緒に参加するようにな
るだろう」
プロジェクトリーダー、
ハノイ
「セックス産業は密かに行われているので監視が難しい。注射器での薬物の使用によってセックス
ワーカーも危険にさらされているが、たいていは自分のHIVの状態にとかく無関心だ。医療サービ
スを受ける機会がほとんどないからである」
クァン・ニン警察局スポークスパーソン
「女性従業員にコンドームを配ることはジレンマになりがちだ。ホテルやレストランですぐにコン
ドームが使えるとなると、売春が積極的に奨励されていると人々は思いかねない。しかしコンドー
ムを入手できなければ、HIV/エイズを予防することはできない」
保健局スポークスパーソン
「女性従業員の定期健康診断はとてもよいことだ。彼女たちの健康ニーズに取り組む機会になる。
彼女たちのサラリーは低いので、彼女たちの健康に必要なことができるようわれわれは経済的援助
をするべきである」
ホテルのオーナー、ハノイ
w w w . i p p f . o r g
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「うちの従業員はたいていが
地方出身で学歴は低く、
HIV/エイズへの認識も低い。
ほかの機関と協力してちらし
を配り、HIV/エイズの予防
もあわせて、従業員の認識を
高めることができてとてもう
れしい」
レストランオーナー、
クァン・ニン
「クラブは知識や専門的スキ
ルを教えてくれて、女性従業
員の教育にきわめて重要な役
割を果たしている。彼女たち
には以前よく話をしたものだ
ったが、自分には専門知識が
なかったし、彼女たちの反応
も悪かった」
ホテルマネージャー、
クァン・ニン
日本HIV/エイズ信託基金(JTF)は、IPPFに設置された初の基金で、加盟協会のHIV/エイズ予防プログラムを専門に支援する。日本
政府が資金の全額を拠出しており、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本政府が資金全額を拠出してお
り、IPPFがHIV/エイズに対応するための主要な資金源となっている。日本信託基金の目標は、IPPFおよびアフリカとアジアの加盟協
会が組織としての能力と運営技術を高め、効果的で斬新な性感染症・HIV/エイズの予防とケア・プログラムの実施を推進することであ
る。2000年 10月にJTFが設置されて以来、これまでにアフリカとアジアの加盟協会32団体がこの基金の支援を受けて合計64のプロ
ジェクトを実施した。
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日本語版制作協力:
IPPF東京連絡事務所
(財)家族計画国際協力財団(ジョイセフ)内
〒162-0843 東京都新宿区市谷田町1-10
保健会館新館
電話 03-3268-5875
Fax
03-3235-7090
E-mail:[email protected]
URL :http://www.joicfp.or.jp
Regent’s College
Inner Circle
Regent’s Park
London
NW1 4NS, UK
T: +44 20 7487 7900
F: +44 20 7487 7950
[email protected]
www.ippf.org
CREDITS: Text: Linda Pithers from Clovelly Communications | Karena du Plessis from Lalibela Media | Design: Jessica Finkelstein
Photographs: Mark Thomas - Pakistan insert page 1 (IPPF) | Maryse Hodgson: Rwanda and Vietnam inserts | Jenny Mathews: Nepal insert,
IPPF insert (second from top). cover (third from top), JTF insert (third from top) | John Rowley: China insert | Liba Taylor: Kenya insert
FPAI: India Insert, IPPF insert (bottom left) | JTF: Tanzania Insert, cover (second from top), JTF insert (second from top), IPPF insert (third from top)
IPPF: cover (top right), JTF insert (top right), Pakistan insert page 3 | PPAZ: cover (bottom right), JTF insert (bottom right, IPPF insert (top left)
FPAU: Uganda insert | プライバシー保護のため、本文中、一部の名前を変更しています。
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