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フレンチパラドックスの謎

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フレンチパラドックスの謎
「フレンチ・
パラドックス」
の
ると70倍!)。そして各国のワインおよび乳
脂肪消費量とIHD死亡率との関係を検討
したところ、
ワイン消費量と高IHD死亡率の
間に逆の相関のあることが明らかになりま
した
(Renaud,S.ら、1992)。
“ワインには動脈硬化を予防する作用が
あるのだろうか”。なかでも特に研究者の
食指を動かしたのが、神秘の色に輝く赤ワ
インだったのです。
世界各国で種々検討が行われるなか、
国立健康・栄養研究所の板倉弘重氏らは、
10人の健康男性を対象に、食事をコントロ
ールの上、赤ワインを400∼500ml/日、
2週
間飲ませたところ、LDLの酸化抵抗性(酸
化されるまでの時間;lag phase)
が有意に
上昇することを『Lancet』
(1994)に発表、
赤ワインが「パラドックス」の謎を解くカギと
して俄然有力視されるに至りました。
赤ワインの抗酸化作用は、渋味物質タン
ニン、赤い色素アントシアンなどのポリフェノ
ールによるものとされ、
これは赤ワインがぶ
どうの果肉だけでなく、果皮や種なども一
緒につぶして発酵させることから多量に含
まれるといいます。ですから皮や種を取り
除いて発酵させる白ワインでは強い抗酸
化作用は期待できません。赤ワイン、
それも
日照量が多く、濃く色づいたぶどうを産す
級料理の代名詞として、若い
私たちの常識は、
こうした国民では血清コレ
る南部のもの(例えばボルドー)
にポリフェノ
女性などに人気のあったフラン
ステロール値が高く、虚血性心疾患(IHD)
ールが多く含まれているといいます。ちな
ス料理。最近は、和食やカジュ
による死亡率も高いと予想するのですが、
みに板倉氏らが試験に用いたワインは「シ
アルな“イタめし”に押されて、やや影が薄
実際には、IHDによる死亡率はヨーロッパで
ャトー・ラグランジュ」といい、
レストランなどで
くなってきた感があります。一億総ヘルシー・
最下位、
イギリスの1/3以下、
ドイツの約1/2
頼むと1本1万円近くするそうです。
ダイエット時代の今日、
あのこってりとしたソ
という数字になっています。
これが「フレンチ・
まさに「酒は百薬の長」という古い言い
ースのかかった高脂肪、高カロリー食が敬
パラドックス」と呼ばれる謎です。
伝えが今、科学的に実証されるのを目の当
遠されたのでしょうか。
もちろん本国のフラ
「フレンチ・パラドックス」については、
様々
たりにしている感があります。それにしても
ンス人は毎日あのようなフルコースを食べて
な解釈が行われてきましたが、最近注目さ
IHDには、血圧を下げてもその発症を減ら
いるわけではないし、最近はあっさり味のヌ
れているのが「赤ワイン説」です。フランス
すことができないパラドックス、喫煙率の高
ーベル・キュイジーヌがフランス料理のイメー
ではワインはいわば“飲む主食”であり、昼
い日本人が欧米人に比べまだIHD死亡率
ジを変えようとしています。
食時“おかず”のパンを噛りながらワインを
が低いというジャパニーズ・パラドックスと、
フランス人は肉や乳製品などの
とはいえ、
飲む姿はごく日常的な風景となっています。
パラドックスに満ちています。このことはとり
動物性脂肪をたくさん摂っているのも事実
実際フランス人の1人当たりの年間ワイン
もなおさずIHDが多因子性の疾患であるこ
です。年間1人当たりの肉消費量はヨーロ
消費量は約67で
r 世界一、
イギリス人の6.5倍、
とを逆に指し示しているものといえましょう。
ッパでトップ、
乳脂肪消費量も平均以上です。
ドイツ人の2.5倍になります(日本人と比べ
高
[参考]近藤和雄、板倉弘重:赤ワイン健康法,
1995.
ごま書房..
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