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米国陸上交通長期法 SAFETEA-LU と米国 ITS の動向
米国陸上交通長期法 SAFETEA-LU と米国 ITS の動向 国土交通省 国土技術政策総合研究所 ITS 研究室主任研究官 牧野浩志 同上 ITS 研究室主任研究官(FHWA 国際交流研究員) 山本 巧 技術研究組合 走行支援道路システム開発機構 1.はじめに 山内照夫 2.米国陸上交通予算長期法 2005 年 8 月 10 日にブッシュ大統領の署名 (1)陸上交通予算長期法 により、2005∼2009 年度までの 5 年間を計画 米国においては、陸上交通関係(道路、道路 期間とする米国の次期陸上交通長期法 交通安全、公共交通)について、1956 年以降、 SAFETEA-LU(Safe, Accountable, Flexible 複数年を計画期間とする長期計画法が定期的 and Efficient Transportation Equity Act: A に制定されてきた。この長期計画法においては、 Legacy for Users)が成立した。法律の名前が 計画期間中の陸上交通関係で実施する事業(プ 示すとおり、安全(Safe)で効率的(Efficient) ログラム)の内容や条件のほか、プログラム毎 な交通システムを、利用者への遺産(Legacy の各年度の予算規模、連邦政府から各州への配 for Users)として、説明責任(Accountable)、弾 分予算規模等を定めている。 力性(Flexible)、公平性(Equity)をもって実現 するための法律である。 (2)投資額等の推移 この法律は、2009 年度までの6年間で、道 図−1に近年の陸上交通予算長期法の投資 路、道路交通安全、公共交通の分野に、総額で 規模を示す。SAFETEA-LU の投資規模は、前 史上最高となる 2,864 億ドル(約:32.9 兆円、 長期法である TEA-21 から約 31%の大幅な増 前長期法である TEA21 と比較して 31%増) 額となるなど、過去いずれの計画も前計画を上 もの投資を計画し、深刻化する交通渋滞、交通 回る投資額が確保されている。 事故等の陸上交通問題の改善に資するもので 図−1 ある。本稿においては、法律の概要とともに今 米国交通予算法の推移 回の長期法において「研究・開発段階」から「実 配備」の段階に移行し、いわば、「本流施策」 の一つとして位置づけられた米国 ITS の動向 について報告する。 この背景には、この 10 年間で米国全土の道 路の渋滞はますます悪化しており、道路整備と いったインフラ整備の不足は米国の持続ある 発展の大きな障害となるという国内世論の支 SAFETEA-LU 法案へ大統領サインの瞬間 援があったと言えよう。その証拠として比較的 中立的な立場の議会会計検査院の報告書にお 1 いても渋滞状況の悪化が深刻であるとの指摘 4.SAFETEA-LU の概要 があったほどである。また、全米の道路利用者 (1)予算額 連盟の最新の報告書でも、同様の報告が記載さ ①総投資規模(2004∼2009 年度) SAFETEA-LU の計画年度は、2005∼2009 れている。 年度であるが、TEA-21 延長期間中の 2004 年 度の既出予算額を加味した 2004∼2009 年度 3.SAFETEA-LU 成立に至る経緯 TEA-21 の 次 期 交 通 長 期 法 の 政 府 案 の 6 年間の投資規模は 2,864 億ドル(約 33 兆 SAFETEA は、TEA-21 が期限切れとなる 2003 円)となり、6 年計画であった TEA-21 の総投 年 9 月 30 日の約半年前の 2003 年 5 月 14 日 資額 2,178 億ドル(約 25 兆円)と比較すると、 に公表され、次期長期法案についての議論が本 約 31%の増額となる。 格的に開始されることとなった。 ②分野別の投資規模 大統領側は、アフガニスタンやイラク等との 道路、公共交通、交通安全の分野別に見ると、 戦争による軍事費増大や大幅な減税措置の実 施などにより増大した連邦政府の財政赤字の 2005∼2009 年度5ヵ年での SAFETEA-LU 投 減少に迫られ、かつ、2004 年秋の二期目の大 資総額 2,446 億ドルのうち、道路:1,932 億ド 統領選挙を控えて増税を避けつつ、財政赤字を ル(79%)、公共交通:453 億ドル(19%)、 増大させない範囲での投資規模の増加を主張 交通安全:61 億ドル(2%)となっている。 した。 TEA-21 と予算の年平均予算の伸びを比較す 一方の議会側は、増加の一途をたどる交通需 れば、道路:1.33、公共交通 1.33、交通安全 要の増大と交通インフラの老朽化による維持 等:3.18 となっており、絶対予算額は少ない 管理費の増大、深刻化する交通渋滞及び交通事 ものの、NHTSA(National Highway Traffic 故等の交通問題の解消を求める交通関係者や Safety Administration;道路交通安全庁)の担 世論を背景に、増税も許容しつつ大幅な投資額 当する交通安全関係予算の伸びが顕著である。 の増大を主張し、大統領側と激しく対立した。 表- 1 T E A - 2 1 とS A F E T E A - L U の分野別予算比較( * 1 ) 特に各州の強い支持を受けた下院では、持続あ (単位:億ドル) る米国経済の発展や道路利用者の利益を強く ()内はDOT の担当部局 意 識 し た TEA-LU(Transportation Equity TEA-21 SAFETEA-LU (1998∼2003) (2005∼2009) 6ヵ年 Act: A Legacy for Users)を議員立法により可 道路(FHWA) 決した。上院は政府案を一部修正して可決し、 公共交通 (FTA) 上下院の両院協議会が設置され妥協案模索の 交通安全等 (NHTSA等) 議論が続き、現行法の延長に次ぐ延長という異 合計 常事態とまでなった。最終的にブッシュ大統領 年平均(a) 5ヵ年 年平均(b) 年平均伸率 (b)/(a) 1,745 290.8 1932 386.4 1.33 410 68.3 453 90.6 1.33 3.8 61 363 (*2)2,446 12.2 489.2 3.18 (*3)1.35 23 2,178 (*1)2004年予算における各分野別予算額の入手困難なため、年平均予 算額で比較 (*2)TEA-21の暫定延長期間中であった2004年度既出予算分を加算し、 2004∼2009までの6ヵ年では2864億ドル。 (*3)TEA-21と同様、6年間(2004∼9)の総投資額で比較した場合、1.31 (=2864/2178)。 の署名により SAFETEA-LU が法律として成 立したのは、政府案 SAFETEA が公表されて から 2 年 3 ヶ月後の 2005 年 8 月 10 日であっ た。 (2)道路分野の主要施策の特徴 ①プログラム別予算額 表2は、道路分野における主要なプログラム 予算額について、TEA-21 との比較を行ったも 2 のである。SAFETEA-LU においては、プログ 現行制度では将来不足が予想される道路関係 ラムの新設及び改廃がおこなわれており、一概 財源の確保に関する研究等についても規定さ に単純に比較できない部分もあるが、特徴とし れている。 ては、HSIP(Highway Safety Improvement 3)有料道路関係施策の充実 Program;道路安全改善プログラム)の新設 不足する公的資金を補完するため、これまで など、交通安全関係予算の充実が注目される。 限定的に運用されていた有料道路関係施策に 「研究開発」の年平均予算が減少している理由 おいて、インターステート建設費用調達を目的 は、TEA-21 では「研究開発」に計上されてい としたインターステートの道路、橋梁、トンネ た ITS 配備予算が、SAFETEA-LU では基本 ルなどの有料化パイロットプログラムの創設 的に「研究開発」には計上されず、 など、有料道路事業の適用が拡大されている。 CMAQ,NHS,STP 等の事業予算の中に含めて 4)ITS が 「研究・開発」から「実配備」のス 表- 2 道路関係主要プログラム の予算額推移 (単位:百万ドル) TEA-21 SAFETEA-LU 年平均 6ヵ年予 年平均 5年間 年平均 予算伸 算 予算 予算 予算 率 インタ−ステ−ト維 23,810 3,968 25,202 5,040 1.27 持(IM) ナショナルハイウェ 28,571 4,762 30,542 6,108 1.28 イシステム(NHS) 橋梁補修(Bridge) 20,430 3,405 21,607 4,321 1.27 陸上交通改善プログ 33,333 5,555 32,550 6,510 1.17 ラム(STP) 渋滞緩和・大気改善 8,123 1,354 8,609 1,722 1.27 プログラム(CMAQ) 交通安全改善プログラ 5,064 1,013 ム(HSIP) − − 皆増 研究開発 2,881 480 2,149 430 0.90 テージへ ITS は TEA-21 まで研究開発の分野(Title V)に記載され、その使途は限定されたもので あったが、SAFETEA-LU においては、新設さ れ た Real-Time System Management Information Program(リアルタイム情報収 集・提供システム)の整備にあたり、STP(陸 上交通改善プログラム) 、NHS(ナショナルハ イウェイシステム)、CMAQ(渋滞・大気汚染 改善プログラム)などの予算法 Title I に書か れてある Federal-aid Highway Program(連 邦補助道路プログラム)中の多くのプログラム 計上されることとなったためである。 の予算適用が可能となった。このように、ITS ②主要施策のポイント が従来の「研究・開発」の段階から「実配備」 1)安全関係予算・施策の充実 を行う連邦補助プログラムの推進にあたり中 核的な役割を担う本流施策として位置づけら 法律名の冒頭に「Safe」と表現されていると れることとなった。 おり、HSIP の新設や新たな歩行者・自転車利 用者施策である SAFE Route to School(通学 路安全対策)など、交通安全関係施策が充実・ 5.ハイウェイ関係施策のポイント 強化されている。 (1)財源の確保 2)財源の確保 ①Highway Trust Fund への繰入拡大 Financing 増税を行なわない範囲で可能な限り投資額 TEA-21 で一般会計に繰り入れられていた を確保するため、TEA-21 では一部が一般会計 Gasohol(ガソホール;エタノール混合燃料) に繰入れられていたガソホ−ル税について、全 税の一部をハイウェイ・トラスト・ファンドに 額をハイウェイ・トラスト・ファンドに繰入れ 繰入ることとした。 るなどの財源確保策が導入されているほか、 ②全国陸上交通インフラ・ファイナンス委員 「全国交通インフラ・ファイナンス委員会」の 会の設立(National Surface Transportation 設立や「道路利用課金導入に関する研究」など、 Infrastructure Financing Commission) 交通財源としてのハイウェイ・トラスト・フ 3 ァンドの将来の妥当性、代替案などの検討を行 ン・プログラム(新規) (Express Lanes う。 Demonstration Program) ③道路利用課金導入に関する研究 現行で有料道路、HOV 車線のある道路又は Road 新規有料車線を対象として、料金徴収は ETC Users Fees Study 現行の燃料消費量に応じた課金ではなく、実 のみに限定。連邦交通省長官が ETC 標準を策 際の走行距離に応じて課金を行う道路利用料 定する。HOV 車線の有料化の場合は可変式料 金の導入にむけた研究を推進する。 金制度を義務付け、その他の道路は任意に可変 ④州政府への配分予算額の最低保障率を引 式料金制度を導入できるとしている。 上げ (3)安全 各州への最低保障率(ハイウェイ・トラス Improving Safety ト・ファンドに対する寄与額度と実際に連邦政 HSIP(Highway Safety Improvement 府から配分される予算額の比率の最低限度)を Program)の創設 連邦補助道路プログラムのコア・プログラム 段階的に引上げる(2005 年度:90.5%、2006 年度:91.5%、2008 年度∼92%)。 として、道路交通安全対策に資するインフラ整 ⑤資金調達手法の拡充(Innovative Finance) 備プログラムとして創設された。TEA-21 では、 1)TIFIA(Transportation Infrastructure STP(Surface Transportation Program:陸 Finance and Innovation Act)の拡充 2)State 上交通プログラム)の予算額 10%の安全対策 Infrastructure Banks(SIBS、州インフラ銀 への充当が規定されていた。 州政府は、SHSP (State Strategic Highway 行)の拡充がなされた。 Safety Plans:ハイウェイ安全戦略計画)を策 (2)有料道路関係プログラムの拡充 定し、計画の達成状況について年次報告を交通 Tolling ①インターステート有料化新規パイロット 省長官に提出しなければならない。 事業(新規) (Interstate System Construction ②SHSP(ハイウェイ安全戦略計画) 事故データに基づく科学的分析により、優先 Toll Pilot Program) インターステート建設費用調達を目的とし プロジェクトを選定し、パフォーマンス・ベー たインターステートの道路、橋梁、トンネルな スの事故削減目標を設定することとされてい どの有料化を実施、全国で3事業を選定する。 る。事故削減効果の測定等の評価システムの構 ②インターステート改良・維持管理有料パイ 築も規定されている。 ロットプログラム(継続) (Interstate System ③Safe Routes to School(通学路安全プログ Reconstruction and Rehabilitation Toll Pilot ラム) 通学路での学童の歩行・自転車の安全確保を program) 料金収入がなければ、十分に維持管理・改良 目的として新規創設されたプログラムで、イン 事業を実施できない場合に有料化を実施、全国 フラ整備・計画の他、周知・広報活動費も補助 で3事業を選定する。 対象である。 ③バリュ−プライシング・パイロット・プロ ④Work Zone Safety(工事区間の安全確保) 2006 年度より年間 500 万ドルの補助プログ グラム(継続) (Value Pricing Pilot Program) ラムが創設された。 渋滞、大気汚染等の緩和を目的に弾力的な料 金体系を導入する全国 15 事業を支援(2009 年度までに 5900 万ドルの予算措置)する。 (4)渋滞緩和 Congestion Relief ④エクスプレス・レーン・デモストレーショ ①Real-Time System Management 4 グエリア電化事業(電気供給によりアイドリン Information Program(新規) グ回数を減らすことが可能)が記述されている。 連邦交通省長官が全州の主要道路のリアル タイムでの交通量や旅行時間等の交通情報を 観測収集・提供するシステムを構築する能力を ( 6 ) 計 画 手 続 き 等 の 効 率 化 Improving 確立しなければならないとされた。州政府間と Efficiency の情報共有により、セキュリティ向上、異常気 ①環境影響評価手続きの迅速化 環境影響評価の関連機関の協力調整体制、パ 象・事故発生時の対応の迅速化、州間のドライ バ−への旅行情報提供に活用される。さらに、 ブリックインボルブメント、紛争解決、意見提 長官は、データ交換フォーマットを2年以内に 出期限などの改善により、プロセスの迅速化を 整備しなければならないとされている。それら 図る。 のために NHS, STP, CMAQ の各プログラム 環境影響評価に関する連邦交通省の権限と 予算の充当が可能とされている。 責任をすべて州交通部局に委譲するパイロッ ②Road Pricing トプログラムをアラスカ、オハイオ、オクラホ 1)単独運転の車両、ハイブリッド車の HOV 車 マ、テキサス、カリフォルニアの各州で実施す 線利用の許容 る。 単独運転車両に有料で HOV 車線の利用を ②計画策定続きの簡素化 MPO による計画策定予算額を増額(全体予 許可する権限を州に認めている。この場合 ETC が義務化される(いわゆる HOT 車線)。 算額の 1%→1.25%)するとともに、計画更新 HOV 車線における低排出車(ハイブリッド車) 期間の拡大(2or3年→4年)を図る。 の優遇措置の実施も州に認められた。無料で単 ③Highway for LIFE Pilot Program 独による HOV 車線利用を認めるか、一般車両 建設期間の短縮及び建設中の安全の向上や の単独運転よりも低料金とするかは州の裁量 渋滞緩和を目的に、新技術の活用や新たな契約 とされている。 方式の導入等を行う事業に対し、インセンティ 2)HOV車線の運用効率の確保 ブ付与を行うプログラムで、事業あたり 500 万ドルを上限として事業コストの最高 20%ま HOV 車線において、朝夕のピーク時間帯の で、対象事業は 15 件までとされている。 9 割以上で、一定の最低速度が維持できない場 合、単独運転車両の利用を制限または禁止する 6.米国 ITS の動向 ことが規定された。 SEFTEA-LU の影響を大きく受けるのが、 (5)環境の保全 Environmental Stewardship 米国の路車協調により大幅な事故削減とモビ ①CMAQ(Congestion Mitigation and Air リ テ ィ 改 善 を 目 的 と し た VII(Vehicle Quality Improvement) Infrastructure Integration)プロジェクトであ 州及び MPO(大都市圏計画機構)は、ディ ろう。VII は連邦交通省、各州道路管理者、自 ーゼル改良装備、費用効率の高い車両の導入な 動車メーカーが推進する DSRC(狭域通信) ど大気質を改善するプロジェクトやプログラ を活用した道路と車両、車両と車両の通信によ ムを優先するよう規定された。州や地方の大気 る協調システムの開発プロジェクトである。 質関連機関に助言を求めることを奨励してい 特徴的なのは、DSRC の双方向通信を活用 る。補助対象事業の拡大(インフラ以外にも対 することで、交差点を中心とした交通安全対策 象を拡大)がなされ、ディーゼル改良装備導入 の実現、プローブ情報収集による道路管理や運 に関する支援・普及活動、トラック用パーキン 用の高度化、VICS のような情報提供まで一気 5 に行おうとしている点である。これまでの 進めていくことが連邦交通省の長官に求めら TEA21 Vehicle れており、DSRC を活用した路車協調サービ Initiative)による自動車中心の ITS 研究開発 スを目標とする VII を中心とした ITS の研究 プログラムであったが、新法では路車協調シス 開発が積極的に進められていくことになるだ テムの研究開発が明確に位置づけられた。これ ろう。 で は IVI ( Intelligent まで、DSRC を活用した路車協調システムは VICS や ETC の導入で世界の ITS をリード 日本の Smartway プロジェクトや AHS のみで してきた日本であるが、一気に加速する米国の あったが、実配備を目指していくと VICS や 動向には注意が必要である。ITS は、交通安全 ETC で実績のある日本の路車協調システムと や渋滞解消という国内の交通問題の解決手段 類似のプロジェクトにならざるをえないこと でもあるが、国際標準化の主導権争いという観 をこれまでの研究開発を通じて米国も理解し 点では国際競争でもあるのだ。 現在、スマートウェイプロジェクトの一環と てきたということなのであろう。 今年の7月には VII アーキテクチャーと機 して国土交通省と民間企業 23 社で進められて 能要件に関する報告書 Ver1.1 が発行された。 いる DSRC を活用した新しい路車協調システ 5.9GHz の DSRC プロトタイプも近々製作さ ムの開発はそういった意味でも重要になる。安 れ、来年には様々な実験が行われる予定である。 全運転支援などの情報提供、駐車場の料金支払 そして 2007 年には一部システムについて実配 い、道の駅でのインターネット接続など様々な 備すべきか否かの判断を行うとされている。今 サービスに活用できる ITS 車載器の登場は、 後とも VII を中心とした米国の ITS 研究開発 路車協調の新しいプラットフォームとして世 の動向を注視すべきであろう。 界から注目されている。2007 年に一部のサー ビスのスタートが予定されており、日本の ITS 7.おわりに からも目が離せない。 全米ハイウェイ網の整備は 10 年前に終わっ たといわれた米国であるが、議会での議論やそ の結果として米国史上最大規模の予算規模の 新法を成立させた事実を見てみると、国家の持 続ある発展のために道路の果たす役割は重要 であり、継続的な道路への投資が国富を増大さ せるという米国市民のコンセンサスが存在し ている気がする。 そういった世論を背景にし、4万3千人にも 上る交通事故による死者を5年で3分の1に 減少させるという大統領の強い意志も積極的 な道路投資への理由になっている。 交通事故や渋滞を減らすためのツールとし て期待されているのが ITS である。全米に張 り巡らされた国家ハイウェイネットワークの 改良に加え、既存の道路のオペレーション(運 用)を積極的に行っていこうという方向である。 新しい交通長期法で国家戦略として ITS を 6