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インクジェット - 日本大学理工学部
C-23 家庭用プリンタを用いた有機 EL 薄膜の作製と評価 Fabrication and evaluation of an organic EL thin film using a commercial printer 野田 淳史 2,吉川 貴弘 2,大貫 慧 2,岩田 展幸 3,山本 寛 3 2 2 2 3 3 *Hideo Nishikawa1, Atushi Noda ,Takahiro Yoshikawa ,Kei Oonuki ,Nobuyuki Iwata ,Hiroshi Yamamoto ○西川 英男1, Abstract: As the wet process we paid attention to the ink-jet method using a commercial inkjet printer especially by considering low-cost or applicability for flexible organic substrates. Poly (N-vinylcarbazole) (PVK) in NN'-Bi (3-methylphenyl)-NN '-Bis (phenyl) Benzideine (TPD) was mixtured with ink pigment. The glycerin was used as an organic solvent. Then, luminescent layer was formed on the PET/ITO substrate. Transparent particles were deposited, indicating a successful inkjet print. The size of the particles was approximately 10µm in the diameter. A dropped transparent film was not, however, distributed with regular intervals, but was scattered at random. It is thought that wettability of the ink is not good because of hydrophobic substrates. We tried to prepare a two-dimensional smooth surface on the hydrophilic substrate which was treated by ultra-violet ozone. Controlling a viscosity of the ink will also improve the distribution of dropped films. 1.はじめに 有機エレクトロルミネッセンス(OEL)とは、有機物質に電圧をかけたときに発光する現象であり、有機化合物中に注 入された電子と正孔の再結合によって発光する。低分子材料は真空蒸着法によって、高分子材料はスピンコート法や印 刷法で成膜されている。後者の薄膜作製方法をウェットプロセスと呼び、低温プロセスで高品質の薄膜を形成できる。 このプロセスではフレキシブルで、大面積の素子が容易に作製でき、低コストに作製可能であり期待されている。そこ でウェットプロセスであるインクジェット法に着目し、身近なインクジェット装置として家庭用のインクジェットプリ ンタを用いた。本研究では Poly(N-vinylcarbazole)(PVK)内に N-N’-Bi(3-methylphenyl)-N-N’-Bis(phenyl)Benzideine (TPD)を 色素分散させた混合インクを作製し、家庭用インクジェットプリンタを用いて低コストかつ簡易的にフレキシブルな単 層型の有機 EL 薄膜を作製し、評価する。 2.実験方法 Table1.溶液条件 基板に PET/ITO 基板(東洋紡績製 300R、125µm)を使用した。PET/ITO 基板を 化学式 分量 グリセリン C3H5(OH)3 5 [ml] PVK C42H33N3X2 5 [mg] 溶液条件を Table1 に示す。インクには、ホスト材料に色素含有ポリマーであ TPD C38H32N2 5 [mg] る PVK(東京化成製)、ゲスト材料に青色の蛍光色素を持つ低分子材料の 純水 H2O 10 [ml] 10×10mm2 にカットした。その後、アセトン 5 分、15 分、エタノール 5 分で 超音波洗浄を行った。また、別に UV オゾン処理を 20 分行った基板を作製し た。 TPD(Aldrich 製、純度 99%)を分散させた。また、有機溶媒として市販のインクによく使われる高粘度、高沸点のグリセ リン(C3H5(OH)3)(国産化成製、純度 98.5%)を使用した。インク作製は、グリセリンと PVK を 10 分間超音波分散後、ス ターラーを用いて 200℃で 60 分間攪拌した。その後、純水、TPD を加え、20 分間攪拌した。 プリンタ側の設定には Canon 製 ip2600 のドライバを使用した。印刷のプロパティよりインクカートリッジの設定を” ブラックのみで印刷”に設定した。インクカートリッジに純水、エタノールを詰め、”クリーニング”を実行しノズルを クリーニングした。同様に、”インクのふき取りクリーニング”、”給紙ローラクリーニング”をそれぞれ実行した。 有機 EL 薄膜は、家庭用インクジェットプリンタ(Canon 製 ip2600)を使用した。作製したインクをカートリッジに詰 め替え、カートリッジを家庭用プリンタに装填した。次に A4 用紙の印刷場所に洗浄した PET/ITO 基板を張り付け、 PET/ITO 基板上の 1×1mm2 にインクを塗布した後、自然乾燥させた。その後、Ag ペーストを綿棒を用いて塗布し、こ れを陰極とした。 1:日大理工 学部 子情 2:日大理工 院 電子 3:日大理工 教員 子情 297 3.評価方法 インクジェット法により塗布した基板の膜の形成と不純物の付着の確認の為に光学顕微鏡(Optical Microscope)を用い て観察した。作製した試料の ITO 面と Ag ペースト膜を直流電源に接続して電圧を印加させ、発光するかどうかを確認 した。電圧は 5V 間隔で電圧を印加した。 4.結果 Fig1 に光学顕微鏡像を示す。基板表面に粒状の膜が形成されていることより、イ ンクジェット特有のドット印刷を確認することが出来た。ヘッドクリーニングを 10 回行った後の光学顕微鏡像を Fig2 に示す。Fig1 と比べると膜は透明な薄膜を確認 できた。作製した試料の ITO 面と Ag ペースト膜を直流電源に接続して電圧を印加 させたが発光は確認できなかった。 5.考察 Figure1.クリーニング前 Fig1 より、作製した溶液が無色透明な液体だったのにもかかわらず、家庭用イン クジェットプリンタを用いて塗布した膜は黒くなっていた。これはインクヘッドが 完全にクリーニングされておらず、インクヘッドまたはタンクに黒インクが残留し ていたと考えた。基板に塗布して形成された粒の粒径は 5~20µm とバラつきがあ る。粒径 20µm 付近の粒が黒インクに当たる。また、黒インク以外の粒径にバラつ きがあることから液滴の制御ができてないことが確認できた。これはインクの粘度 の違いによるものであると考える。Fig2 より、ヘッドクリーニングにより残留イン クが減少し、カートリッジが改善された。ヘッドのクリーニングの回数を増やすこ Figure2.クリーニング後 とによって残留インクを取り除くことが可能である。液滴の量の変化はインクの粘 度の変化によるものだと考える.これより、インクの溶液条件の改善が必要である。電圧を印加したが発光することは できなかった。これは、光学顕微鏡像からわかるように膜が形成されていなかったためと考えた。 6.まとめ 家庭用インクジェットプリンタを用いて有機 EL 薄膜の作製を行った。膜は形成されなかったがインクジェット特有 のドット印刷は確認することができた。これより、基板に UV オゾン処理により基板を親水性に、インクの条件を変更 することにより液滴の制御をすることによって断裂のない平坦な有機 EL 薄膜が成膜される可能性はある。よって、UV オゾン処理とインク条件を変え、断裂のない平坦な有機 EL 薄膜の作製を行う。カートリッジ内のヘッドクリーニング 回数を増やすことによって残留インクの減少を図った。ヘッドクリーニング回数によって確実に残留インクが減少した。 これより、カートリッジ内の残留インクが完全になくなるまでクリーニングを図る。 7.謝辞 実験室,実験装置の使用にあたり,御協力頂いた日本大学量子力学研究所の職員の皆様に深く感謝致します. 8.参考文献 [1]有田 圭一、堀井 美徳、木山 拓哉、草野 浩幸、北川 雅彦、小林 洋志「PVCz を用いた色素混合型 PLED に おける白色発光素子の設計と特性」映像情報メディア学会技術報告 26(5) pp.37-42 2002 年 [2]鈴木 充典、都築 俊満、小山 珠美、山口 哲彦、古川 忠宏、時任 精士「燐光材料を用いたインクジェット法 によるフレキシブル有機 EL ディスプレイの作製」電子情報通信学会技術研究報告 106(499) pp.53-56 2007 年 [3]大森 裕、吉野 勝美「有機量子井戸構造 EL 素子」応用物理第 64 巻第 3 号 pp246~249 1995 年 [4]大西 敏博、小山 珠美 「高分子 EL 材料-光る高分子の開発-」共立出版 2004 年 [5]板谷 明 「ポリビニルカルバゾール」 ぶんしん出版 1990 年 298