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第 109 回熊本麻酔学会 抄録集 熊本麻酔専門医会

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第 109 回熊本麻酔学会 抄録集 熊本麻酔専門医会
第 109 回熊本麻酔学会
抄録集
平成 17 年 1 月 22 日(土)
熊本中央病院
熊本麻酔専門医会
ご案内
1.第 109 回熊本麻酔学会
会期:平成 17 年 1 月 22 日(土)10:55∼17:30
会場:熊本中央病院 管理棟2階大講堂
熊本市田井島 1―5―1 ☎096―370―3111
http://www.kumachu.gr.jp/
受付:管理棟2階大講堂前ロビー
受付開始時刻 10:00∼
2.熊本麻酔専門医会役員会 10 : 00∼10 : 30
会場:本館 3 階会議室
3.関連病院部長会 10:30∼10:50
会場:本館 3 階会議室
4.ランチョンセミナー 12:00∼13:00
会場:管理棟2階大講堂
5.特別講演 16:25∼17:25
会場:管理棟2階大講堂
6.新年会・懇親会 17:30∼19:00
会場:熊本中央病院 本館 1 階レストラン
会費:医師 4000 円、医師以外 3000 円
*準備の都合上、参加希望者は 1 月 14 日(金)までに、
ファックスまたはメール(吉武 淳宛)でお申込みください。
*抄録集について
演者等には事前に郵送しております。会場には必ずご持参ください。その他の
方には会場で配付いたしますが、数に限りがございますのでご容赦ください。
*交通機関
バスは便数が少ないため、ご迷惑をおかけします。主な時刻表を掲載しています
ので、ご利用ください。病院駐車場は十分ございますが、できるだけ乗り合わせて
お越し下さい。新年会・懇親会に参加される方は公共の交通機関でお越し下さい。
一般口演要項
1)学会ではコンピュータープレゼンテーションのみのご発表となります。
PowerPoint での発表をお願いします。
2)平成 17 年 1 月 14 日(金)まで(必着)に PowerPoint の演題スライド
内容のファイルだけを入れた CD-R を下記(吉武 淳)宛にお送りください。
スライド枚数は制限しませんが発表が時間内に収まるようにご留意ください。
3)CD-R には、所属、お名前、コンピューターの種類(Windows または Mac)、
PowerPoint のバージョンを必ず明記してください。
4)プロジェクターは発表会場に準備してあります。
5)コンピューターは、Macintosh(OS X)と PC(Windows XP)をご用意
します。ソフトウェアは、Microsoft Office v.X or XP を使用します。
フォントは OS 標準のフォントをご使用ください。
6)動画再生等の特殊コーデックをご利用の場合は、1 月 14 日(金)までに、
下記までご相談ください。
7)発表 30 分前までに会場入り口にてお預かりしたデータの確認をお願いし
ます。学会当日朝、最初のセッションは午前10時より確認できます。
8)発表時間:口演発表は、発表 6 分間、質疑応答 4 分間です。
コンピューター操作:発表中のスライドショー操作は演者でお願いします。
9)最初の受付時に、データメディアをお受け取りください。データは必ず
バックアップをご準備ください。
演題スライド入り CD-R 郵送先・学会に関するお問い合わせ
熊本中央病院麻酔科 吉武 淳
〒862-0965 熊本市田井島 1-5-1
TEL:096-370-3111 FAX:096-370-4002
E-mail: [email protected]
第 109 回熊本麻酔学会プログラム
<開会の挨拶> 10:55∼11:00
熊本麻酔専門医会副会長 満瀬哲郎先生
<麻酔1・その他> 11:00∼11:50
座長:熊本大学大学院医学薬学研究部生体機能制御学分野助手 今泉隆志先生
1.腹臥位のラリンジアルマスク全身麻酔
―手術途中での覚醒が可能であった症例―
熊本再春荘病院麻酔科
柴田義浩
2.低酸素吸入療法下の乳児の麻酔経験
熊本市立熊本市民病院麻酔科、集中治療部*、救急診療部**
増田和之、満瀬哲郎、橋口清明、城 嘉孝、黒坂夏美、尾方信也、佐藤俊秀*、
赤坂威史**
3.胸膜肺全摘術中の大量出血に対して人工心肺を使用した悪性胸膜中皮腫の1例
熊本中央病院麻酔科
馬場知子、前川謙悟、吉武 淳、後藤倶子
4.熊本赤十字病院における気管挿管実習の実態
高遊原南消防本部、菊池広域消防本部*、阿蘇広域消防本部**
山野昭範、中原邦裕*、田尻浩昭**
5.輸液・シリンジポンプの保守点検を実施して
熊本労災病院中央手術部、麻酔科*
嘉悦昌吾、植田公昭、柳 文治*
<ランチョンセミナー> 12:00∼13:00
座長:熊本大学大学院医学薬学研究部生体機能制御学分野教授 寺崎秀則先生
「急性肺障害の病態と治療 ―人工呼吸管理の進歩―」
講師:大分大学医学部脳・神経機能統御講座麻酔学教授 野口隆之先生
<看護> 13:15∼14:15
座長 熊本中央病院手術室中央材料室 田上幸枝師長
6.手術室における電子カルテ運用の実際
熊本リハビリテーション病院
野田小百合
7.安全安楽に側臥位が保持できるマット作製、効果の検討
熊本リハビリテーション病院
本郷五月美、萩原美幸、野田小百合
8.OPCAB 手術患者における体温低下予防の検討
熊本中央病院手術室、麻酔科*
東 眞奈美、田上幸枝、吉武 淳*、後藤倶子*
9.手術室新人看護師がスムーズに独り立ちするプログラムの開発―全身麻酔
における段階的習得評価表を試作して―
独立行政法人労働者健康福祉機構熊本労災病院手術室
小路由香梨、上田幸代、松本春美、田頭久代、森 律子、白岩生美
10.心臓血管手術後患者のせん妄に対する芳香の効果
熊本大学医学部附属病院 6 病棟 7 階、徳島大学医学部保健学科*
本田由美、川西千恵美*
11.手術室スタッフにおける燃え尽き現象の実態調査
熊本市立熊本市民病院中央手術部
宮川賀奈子、濱田まり子、原口奈々、寺本千代美
<麻酔2> 14:15∼15:15
座長:熊本赤十字病院麻酔科 田邊康彦先生
12.クモ膜下出血後の心電図異常と CK 値の検討
熊本大学医学部附属病院麻酔科、熊本大学大学院医学薬学研究部生体機能
制御学分野*
大友 純、杉田道子、志茂田 治*、寺崎秀則*
13.周術期静脈血栓塞栓症予防における弾性ストッキングの問題点
健康保険八代総合病院麻酔科
束野友里、坂梨祐司、竹下次郎
14.生体肝移植術で多発した上肢末梢神経麻痺について
熊本大学医学部附属病院麻酔科、熊本大学大学院医学薬学研究部生体機能
制御学分野*
吉村依里子、西 賢明、志茂田 治*、寺崎秀則*
15.特発性間質性肺炎(IIP)亜急性増悪期患者の麻酔経験
熊本大学医学部附属病院麻酔科
吉村依里子,釆田千穂
16.救急救命士の気管挿管実習を終えて
熊本労災病院麻酔科、八代消防署救急隊消防 2 課*
林田信乃、塚本正義*、柳 文治、後藤真一、西岡裕子、川本和彦
17.脳槽シンチで自家血パッチ治療の効果が確認された髄液漏症例
済生会熊本病院麻酔科
江嶋正志、岩政浩子、坂田羊一朗、古庄千代、國徳裕二、加藤清彦、
原武義和
<ペインクリニック・救急> 15:15∼16:15
座長:国立病院機構熊本医療センター麻酔科 上妻精二先生
18.心拍再開にニフェカラントが有効であった心室細動の 1 例
熊本市民病院救急診療部、集中治療部*、麻酔科**
赤坂威史、豊田直以、佐藤俊秀*、満瀬哲郎**、橋口清明**、増田和之**、
城 嘉孝**、黒坂夏美**、福本早由美**、尾方信也**
19.熊本地域医療センター医師会病院麻酔科レジデント研修 10 ヶ月を振り返って
熊本地域医療センター医師会病院麻酔科
川越誠志、本間恵子、高群博之、後藤慶次、田上 正
20.救急現場における新しい顎先挙上器の試作
熊本リハビリテーション病院、木下クリニック*
伊佐二久、石坂信子、岡本泰介、渡辺 実、田尻和也、野田小百合、木下幸大*
21.当院でのペインコントロール目的の院内コンサルトについて
熊本大学医学部附属病院麻酔科、熊本大学大学院医学薬学研究部生体機能
制御学分野*
洲崎祥子、永田千代子、田代雅文*、志茂田 治*、寺崎秀則*
22.鍼治療が劇的効果を示した脊柱管狭窄症の一例
熊本リハビリテーション病院
石坂信子、伊佐二久、岡本泰介、桑原公倫、森 喜代美、井野美穂子
23.極細針を用いたステロイドくも膜下投与療法(ITSS)の整形外科領域脊椎
疾患での効果
NTT西日本九州病院麻酔科、整形外科*
大津哲郎、飯干 明*、吉田尚紀*、伊勢紘平*
<特別講演> 16:25∼17:25
座長:熊本中央病院麻酔科 吉武 淳先生
「循環器領域の最近の話題」
講師:熊本中央病院循環器科部長 大嶋秀一先生
<閉会の挨拶> 17:25∼17:30 熊本麻酔専門医会会長 田上 正先生
ේ災センター入口
バス停
正面玄関
ේ災センター入口より会場(管理棟
2 階大講堂)に
お入りください。
(学会当日正面玄関は閉まっています。ේ災センター入口は正面玄関から建物を
挟んだ反対側にあります)
熊本バス時刻表(土曜ダイヤ)
料金220円
中央病院行き
交通センター行き
センター発
中央病院入口
経由地
出仲間発
センター着
経由地
7:45
8:06
通町筋
7:48
8:09
通町筋
8:30
8:51
通町筋
8:08
8:29
通町筋
8:35
8:55
本荘
8:48
9:09
通町筋
9:00
9:21
通町筋
9:18
9:39
通町筋
9:10
9:30
本荘
10:13
10:34
通町筋
9:25
9:45
本荘
10:23
10:35
本荘
9:40
10:01
通町筋
11:23
11:44
通町筋
10:00
10:20
本荘
11:58
12:10
本荘
10:34
10:55
通町筋
12:23
12:44
通町筋
10:45
11:06
通町筋
12:43
12:55
本荘
11:25
11:45
本荘
13:03
13:24
通町筋
11:29
11:50
通町筋
13:58
14:10
本荘
11:50
12:11
通町筋
14:23
14:44
通町筋
12:20
12:40
本荘
14:38
14:50
本荘
12:20
12:41
通町筋
15:28
15:49
通町筋
13:24
13:45
通町筋
15:48
16:00
本荘
13:35
13:55
本荘
15:53
16:14
通町筋
13:59
14:20
通町筋
16:18
16:30
本荘
14:10
14:31
通町筋
16:33
16:54
通町筋
14:35
14:55
本荘
17:13
17:34
通町筋
15:35
15:56
通町筋
16:30
16:51
通町筋
16:45
17:05
本荘
17:40
18:01
通町筋
18:40
19:01
通町筋
*A ホーム3番のりば
本荘:浜線バイパス→中の瀬車庫
通町筋:‫ؿ‬座橋→浜線バイパス→中の瀬車庫
第 109 回熊本麻酔学会ランチョンセミナー
日時:平成 17 年 1 月 22 日(土) 12:00∼13:00
会場:熊本中央病院管理棟2階大講堂
座長
熊本大学大学院医学薬学研究部先端生命医療科学部門
成育再建・移植医学講座生体機能制御学分野
教授 寺崎秀則 先生
急性肺障害の病態と治療
―人工呼吸管理の進歩―
講師
大分大学医学部脳・神経機能統御講座麻酔学
教授 野口隆之 先生
共催:熊本麻酔専門医会 小野薬品工業株式会社
1 腹臥位のラリンジアルマスク全身麻酔
2 低酸素吸入療法下の乳児の麻酔経験
-手術途中での覚醒が可能であった症例 熊本再春荘病院麻酔科
熊本市立熊本市民病院麻酔科、
集中治療部*、救急診療部**
柴田義浩
増田和之 、満瀬哲郎、橋口清明、 城 嘉孝、黒坂夏美、尾方信也、
佐藤俊秀*、赤坂威史**
気道をラリンジアルマスクで確保し、手術
低酸素吸入療法は、先天性心疾患により肺
途中での覚醒も問題なく行なえた、腹臥位
血流量の増加をきたして心不全となる乳児
全身麻酔症例を経験したので報告する。
に有効な方法として普及しつつある治療法
72歳、女性の後頚部腫瘤摘出術が予定さ
である。当院でも平成 15 年から本治療法
れた。既往歴は高血圧のみであった。
を導入し、術前に低酸素吸入を施行してい
仰臥位の状態で、プロポフォール(P)と
る症例を経験するようになった。
フェンタネスト(F)で麻酔を導入し、ら
【症例と方法】この 2 年間で経験した症例
せん入りラリンジアルマスク(LM)を挿
数は 9 例(術前体重 1.7-3.6kg)である。
入後、患者を腹臥位とした。麻酔の維持は、
術中の低酸素吸入は術前に使用していた人
酸素-笑気- P -Fで行なった。腹臥位でも換
工呼吸器を持ち込み、空気を窒素で希釈す
気は容易であることを確認し、手術を開始
した。術中、腫瘤が見つからないため、一
ることで FIO2 を 0.17-0.20 とした。正確
に衡正された酸素濃度計を用いた。施行術
度、覚醒させ、腫瘤の位置を再確認するこ
式は VSD 閉鎖術 2 例、PDA 結紮術+肺動
ととなった。仰臥位に戻して覚醒させると、
脈絞扼術が 2 例、大動脈離断/縮窄症根治
患者は座位の状態で腫瘤の正確な位置を示
+肺動脈絞扼術が 2 例、Jatene 手術 1 例、
すことが可能であった。完全覚醒にもかか
PDA 結紮術+Brock 手術+BT シャント術
わらず、LMの違和感を訴えることもなか
が 1 例、肺動脈絞扼術が1例であった。全
った。再度、腹臥位で手術を再開、腫瘤摘
例,手術室までの移動中は FIO2 0.21 で
出が行なえた。
用手換気を行った。9例中6例で手術室に
今回、LM による気道確保であったが、LM
て低酸素吸入を再開したが,3例では低酸
は、気道に対して刺激が少ないだけではな
素吸入を再開せずに様子をみた。麻酔はフ
く、いったん位置が決まってしまえば、体
ェンタニル+パンクロニウムで行った。開
位変換によっても位置がずれることはなか
った。
胸後の手術操作で肺を圧排し始めた時点,
あるいは外科的に肺血流量をコントロール
できるようになった時点で低酸素吸入を中
止した。手術室での低酸素吸入時間は
105-195 分であった。本法の効果と術中
問題点をあわせて検討し報告する。
3 胸膜肺全摘術中の大量出血に対して
人工心肺を使用した悪性胸膜中皮腫の
4 熊本赤十字病院における気管挿管
実習の実態
1 例
熊本中央病院麻酔科
高遊原南消防本部、菊池広域消防
本部*、阿蘇広域消防本部**
馬場知子、前川謙悟、吉武 淳、
山野昭範、中原邦裕*、田尻浩昭**
後藤倶子
悪性胸膜中皮腫は稀な疾患で予後不良であ
平成16年7月に救急救命士の処置拡大に伴
る。化学療法や放射線療法が有効でなく、
い気管挿管が実施できるようになった。
手術が可能でも周術期の死亡率は 4-30%
実施要件として、62時間の追加講習と30
と高い。今回、胸膜肺全摘術中に大量出血
症例の病院実習が定められた。
を来し人工心肺を使用し救命し得た症例を
そこで救急救命士3名が熊本赤十字病院に
経験した。【症例】53 歳男性。微熱・咳嗽
て気管挿管実習を実施した結果を発表する。
で発症、CT 上右胸水と胸膜肥厚を認め悪
3名が同意を得て気管挿管を実施した延べ
性胸膜中皮腫と診断され右胸膜肺全摘術を
90名の患者の実態を調査した結果、性別
予定した。術中は片肺換気とし、麻酔は硬
の比率は、男性41名(45%)、女性49名
膜外麻酔を併用、イソフルラン、フェンタ
(55%)であった。年代別では、50代が
ニルで維持した。胸膜剥離後、肺門部のリ
ンパ節廓清中に突然大量出血を認め血圧が
22名と最も多く、続いて60代(17名)
、20
代(16名)、40代(14名)、30代、70代
50mmHg に低下した。圧迫止血しながら、
(共に10名)
、80代(1名)の順であった。
半側臥位とし右大腿動脈に送血管、大腿静
また、診療科別では、外科が26名と最も
脈に脱血管を挿入したが脱血不十分で、上
多く、続いて整形外科、産婦人科(共に24
大静脈にも脱血管を挿入した。低体温、Vf
名)
、耳鼻科(11名)で、心臓外科、内科、
下で出血部位が肺動脈本幹と判明し縫合止
泌尿器科は少数であった。
血した。人工心肺を離脱後心膜を合併切除
診療科別の男性のトップは、整形外科で19
し終刀した。手術時間は 11 時間 45 分、
名、女性では産婦人科の24名となった。
術中出血量は 4300ml であった。術翌日
また、同時にアンケートを実施した結果、
に抜管、術後経過は順調で、23 日目に退
57名から回答を頂いた。
院となった。【考察および結語】悪性胸膜
救急救命士の気管挿管実習について「事前
中皮腫の手術では、片肺、胸膜、心膜と広
範囲に合併切除するため出血が多い。特に
(入院前)に知っていたか」の問いに20
名が知っていたと答えた。
本症例のような進行例では、胸膜肥厚のた
また、「同意を決断した時期は」の問いに
め肺門の血管処理が困難で出血の危険性が
多くが「麻酔科担当医師の説明を聞いて決
高い。術中大量出血の可能性を念頭にいれ
断した」と答えた。
た麻酔管理が重要である。
同意を得た患者の背景として、公務員(元
を含む)8名、救急車で運ばれた4名、看
護師4名,ボランティア活動をやっている
2名などがいた。
5 輸液・シリンジポンプの保守点検を
6 手術室における電子カルテ運用の
実施して
実際
熊本労災病院中央手術部、
熊本リハビリテーション病院
麻酔科*
嘉悦昌吾、植田公昭、柳 文治*
野田小百合
[はじめに] 当院では平成14年8月より
臨床工学技士(以下CE)1名が採用になり、
当院では昨年12月から電子カルテシステ
ムが発足した。電子カルテ導入までの期間
臨床工学技士部門が開設された。平成15
は半年と短く、手術申し込み・検査オーダ
年4月より輸液ポンプ(以下IP)シリンジ
ー・麻酔科指示・看護記録・コスト表・手
ポンプ(以下SP)の保守点検を開始した。
術台帳などの用紙を電子化するためにベン
[方法] CE室にて清掃・保守点検・補修
ダー・情報システム科と協議しシステム立
を実施した。点検内容は、外装点検・流量
ち上げをする事となった。オーダリングを
測定・閉塞圧測定・バッテリー駆動・各ア
はじめ、電子カルテの未経験者が多い中、
ラーム動作確認とした。また病棟より不具
システム開発は容易ではなかった。手術室
合発生による点検依頼器は“点検依頼伝票”
の看護記録に関しては取り組みをしている
に不具合内容を記載し返却することとした。
病院も少なく、特に当院では術前、術中、
院内補修はメーカー実施のメンテナンス講
術後を1枚の用紙で記録、術中記録はフォ
習(初級編)を受講した後、開始した。
[結果] 平成16年11月現在、保守点検件
ーカスチャーティングを使用しているため
そのままの様式を電子カルテに反映でき、
数298件(IP:263件 SP:35件)中、
導入によるスタッフの戸惑いが少なく済む
異常なし222件、院内補修57件、メーカ
ような工夫が必要とされた。電子カルテ上
ー補修19件であった。 また病棟からの点
のテンプレート(様式集)を利用し記録様
検依頼件数、92件中83件に異常がなかっ
式を作成し現在に至っている。術中外回り
た。 平成16年10月にメンテナンス講習(エ
看護師がカルテ入力するにはまだ問題があ
キスパート編)を受講した。
るが、電子カルテのメリット、デメリット
[考察] 点検依頼件数92件のうち約90%
を含め現状と今後の課題について報告する。
が異常を認めず、各病棟への基本的な操作
方法の講習実施の必要性が示唆された。 メ
ンテナンス講習(エキスパート編)の受講
により、院内補修内容の拡充が出来、メー
カー補修の削減が可能になると考えられた。
効率的な運用を図るため機器台帳や保守台
帳をパソコンにてバーコード管理する必要
性が考えられた。
[まとめ] IP・SP の保守点検を実施した
ことで 76 件の不具合を発見でき、未然に
事故を防ぐことができた。
7 安全安楽に側臥位が保持できる
8 OPCAB 手術患者における体温低下
マット作製、効果の検討
予防の検討
熊本リハビリテーション病院
熊本中央病院手術室、麻酔科*
本郷五月美、萩原美幸、野田小百合
東 眞奈美、田上幸枝、吉武 淳*、
後藤倶子*
当院での手術は565件中69件
(12.2%)が側臥位手術であった。体位変
過去 3 年間の OPCAB 100 例中 74 例に
帰室後末梢冷感がみられ 29 例にシバリン
換時スタッフの負担が大きくかつ時間を要
グが起きている。シバリングは心臓の酸素
し、患者に対する体圧や皮膚への障害も少
需要を増加し、不整脈・虚血・スパスムの
なくない。われわれは体型に合わせて波型
リスクを高める。低体温防止が重要と考え
カーブのマットを試作し、肩の部分は引き
保温方法を改良し従来の方法とシバリング
抜けるよう工夫した。新マットを用いて患
の頻度を比較した。[対象と方法] OPCAB
者への体圧、皮膚症状、必要時間、スタッ
46 症例で A 群(n=26)は加温ブランケ
フ労働力等を比較検討したので報告する。
ットを敷きタオルケットを使用、B 群(n
=20)は A 群の保温方法に加え①入室 30
分前から電気毛布で保温②終刀後清拭時の
ハイポエタノール中止③清拭後電気毛布で
保温を行った。手術室入室時から ICU 帰
室後 5 時間まで手掌温と直腸温を経時的に
測定した。[結果]直腸温は全時点で 2 群間
の差はなかった。手掌温は麻酔開始時に A
群が 34.6℃B 群が 35.5℃と B 群が 0.9℃
有意に高く吻合開始時まで高値を示したが、
その後低下し ICU 帰室 5 時間まで差はみ
られなかった。シバリングは A 群 9 例
(35%)B 群 1 例(5%)で B 群で有意に減少
した。手術時間・出血量・輸液量・体表面
積・合併症に有意差はなかったがノルアド
レナリンの使用率は A 群 81%B 群 35%で
A 群が高かった。[結語]保温方法改良後シ
バリングの頻度は減少したが保温との関連
性は明らかにできなかった。しかし入室前
からの保温は末梢温の低下予防に効果があ
り今後は終刀後の体温低下をいかに防ぐか
症例を重ね検討したい。
9 手術室新人看護師がスムーズに独り
立ちするプログラムの開発
10 心臓血管手術後患者のせん妄に
対する芳香の効果
—全身麻酔における段階的習得
評価表を試作して—
独立行政法人労働者健康福祉機構
熊本大学医学部附属病院6病棟7階
熊本労災病院 手術室
徳島大学医学部 保健学科*
小路由香梨、上田幸代、松本春美、
田頭久代、森 律子、白岩生美
本田由美、川西千恵美*
手術室看護師には、手術介助・麻酔の介助・
【目的】香り(セドロール)の介入が心臓
ME機器の取り扱いなど多種多様な看護技
血管手術後患者の睡眠状態を整え、せん妄
術を習得する事が求められる。しかし当院
の予防やせん妄発症後の回復に有効である
では近年手術件数の増加に伴い、新人教育
か否かを検証する。【対象】術前に研究へ
に十分な時間が取れなくなっている。当手
の同意の得られた待機手術患者 21 名。
【方
術室の新人教育においては、プリセプター
法】手術後 1 病日に「せん妄の危険性が高
制とチェックリストを用いて3ヶ月毎の評
い」もしくは「せん妄」状態である患者を、
価を行っているが、新人看護師の知識や技
香り介入群、香り非介入群に振り分けた。
術の到達度が明確でなく、教育段階がわか
香り介入は香り「セドロール」の吸入器を
りにくい。また独り立ちしているにも関わ
らず、新人看護師に戸惑いや知識不足な場
用いて手術後 3 日間行った。せん妄の評価
として J-NCS スケール(日本語版ニーチャ
面がみうけられた。従って、現在のチェッ
ム混乱・錯乱スケール)を用いた。睡眠の評
クリストでは新人看護師が本当に理解出来
価はアクティグラフ(mini-mortionlogger
ているのか、又指導が十分に行えているの
actigraph;AMI社製、米国)を用いた。
か明確でなく、知識・技術が不十分なまま
【結果考察】対象者は香り介入群 8 名(平
患者の介助を一人で行わせているのではな
均年齢 66.9±4.2 歳)
、香り非介入群 13 名
いかと疑問があがった。今回、全身麻酔に
(平均年齢 67.3±2.2 歳)であった。香り
おける段階的習得評価表を作成することで、
介入は、せん妄の発症率を見かけ上減少さ
指導者側も新人看護師の到達度が明確にな
せていたが、統計的な差は認められなかっ
り、新人看護師も不安なく独り立ちできる
た。香り介入による睡眠効果では、手術後
のではないかと考えた。今回の研究におい
の総睡眠時間、夜間睡眠時間において差を
ては、試作のみで終わっているが、今後実
践し改善を加え、新人教育プログラムを確
認めたが、術前 1 日にも差があることから、
香り介入以外の要因を排除する事はできず、
立していきたいと考えている。
有効であると断定できなかった。
11 手術室スタッフにおける燃え尽き
12 クモ膜下出血後の心電図異常と
現象の実態調査
CK値の検討
熊本市立熊本市民病院中央手術部
熊本大学医学部附属病院麻酔科、
熊本大学大学院医学薬学研究部
生体機能制御学分野*
宮川賀奈子、濱田まり子、原口奈々、
大友 純、杉田道子、志茂田 治*、
寺本千代美
寺崎秀則*
【目的】患者に質の高いケアを提供するた
クモ膜下出血後は心電図異常が生じやすい
め、看護者自身が健全なメンタルヘルスを
といわれている。またCK値は心筋障害の
保持することは重要である。しかし、医療
指標であると考えられている。今回我々は
従事者に燃え尽き状態・神経症が多いと言
クモ膜下出血を発症した患者のCK値と心
われている現状がある。当手術室スタッフ
電図異常との関連について調査した。
間で「ストレスを感じる。」とよく耳にす
【対象】2002年1月から2003年12月の2
るが、実際の精神健康度がどのような状況
年間にクモ膜下出血を発症した患者35名
か疑問を抱いた。そこで今回、燃え尽き現
を対象とし、後向き研究を行った。
象の実態調査を行った。
【結果】35名のうちCK値の上昇が見られ
【方法】Pines によるバーンアウト測定ス
たのは10名、心電図異常が出現したのは11
ケール、年齢、看護師・手術室経験年数、
職場環境要因 50 項目、ストレス対処法に
名であった。心電図異常のある患者では陰
性T波の出現が多く、CK値の上昇が有意
関する質問紙を用いて検討した。
に高かった。
【結果】当手術室スタッフに占める燃え尽
【考察】クモ膜下出血後の心電図異常とし
き群の割合は、45%であることが明らかに
て ST 変化、T 波異常などがあげられる。
なった。年齢・経験年数別にみた燃え尽き
また最近精神的ストレスや身体的ストレス
群の割合では 20 代・40 代、経験年数 5
により発症するタコツボ型心筋症がクロー
年未満、11 年以上のベテラン群で高くな
ズアップされているが、クモ膜下出血後に
った。職場環境要因 50 項目を健全群・燃
タコツボ型心筋症を発症する場合もあり心
え尽き群にてχ2 検定を行い、対人的要因
電図異常及び CK 値に異常を認めた患者は
が燃え尽き現象に深く関与していることが
タコツボ型心筋症を発症していた可能性も
分かった。ストレス対処法については、健
ある。タコツボ型心筋症による心機能低下
全群が積極的対処行動をとり、燃え尽き群
は消極的・回避的対処行動をとる対照的な
は自然軽快すると言われているが、左室破
裂の報告もある。クモ膜下出血後に心電図
結果が得られた。
異常及び CK 値の異常を認めた場合、タコ
ツボ型心筋症を疑い慎重な麻酔管理を施行
するべきである。
13 周術期静脈血栓塞栓症予防における 14 生体肝移植術で多発した上肢末梢
弾性ストッキングの問題点
神経麻痺について
健康保険八代総合病院麻酔科
熊本大学医学部附属病院麻酔科、
熊本大学大学院医学薬学研究部
生体機能制御学分野*
束野友里、坂梨祐司、竹下次郎
吉村依里子、西 賢明、
志茂田 治*、寺崎秀則*
周術期静脈血栓塞栓症予防として、当院手
2004 年 4 月から 8 月にかけての生体肝移
術部では平成15年8月より弾性ストッキン
植術[LDLT]で,レシピエント[R]と
グ(以下ES)を導入しているが、足背部
ドナー[D]に術後上肢末梢神経麻痺が多
に水泡を形成したりESが緩すぎるなど適
発した.LDLT の R および D 併せて 25 症
切な圧が加わっていないと思われる症例を
例(R:14|D:14)のうち 6 例(R:4
経験した。また、メーカーによってもその
|D:2)に術後上肢末梢神経麻痺(正中
特性に差があることも考えられた。そこで
神経[M]麻痺 5 例(左:2|右:3),右
今回、手術患者を対象にES着用時のスト
尺骨神経[U]麻痺 1 例)を認めた。麻痺
ッキングによる圧迫圧を実際に測定し、適
は一過性の軽度が 4 例(R:3|D:1),
切な圧迫圧が加わっているかどうかを検討
遷延したものは 2 例(R:1|D:1)で,
した。
方法)対象は術前からESを着用している
このうち 1 例では反射性交感神経性萎縮症
(RSD/CRPS typeⅠ)を生じた。
患者。ESは3社の製品(ハイソックスタ
一般に,術中体位による上肢神経麻痺は肘
イプ)を用いた。手術終了後に回復室にて
部管での圧迫による U 麻痺,手根管部で
足首部・腓腹部・膝部の3箇所のストッキ
の圧迫による M 麻痺の頻度が高いとされ
ング圧を小さなバルーンを用いた水圧式測
る.橈骨動脈穿刺時の手関節伸展で手根管
定器で測定し、患者の下肢の太さ、肥満度
部の M 神経が圧迫された可能性があるが,
とストッキング圧の関連を検討した。
M 麻痺症例で麻痺側と動脈穿刺側が一致し
結果)各製品とも概ね設定した圧迫圧に近
たのは 5 例中 2 例であった。また,肩関
かったが、メーカーにより、設定圧よりも
節固定した状態で上肢回外伸展すると神経
足首部で圧が高く腓腹部で低くなる傾向や、
が過伸展されて M 麻痺を生じることがあ
足首部より腓腹部の圧が高く逆の圧勾配と
る。LDLT ではケント鈎支持棒を使用する
なる傾向などの特徴があった。また、肥満
度によって圧迫圧が変わる傾向のESもあ
ことから,これによる肩関節圧迫固定も原
因のひとつと推察した。
った。
対策としてケント鈎支持棒で肩関節を圧迫
結論)ES 着用時には適切な圧迫圧が加わ
しないように調整し,上肢台での肢位を回
っているか確認する方が望ましい。各メー
外位とした。対策を講じた 2004 年 9 月
カーによって特性が異なるので、製品の選
以降,上肢末梢神経麻痺は生じていない。
択も必要である。
15 特発性間質性肺炎(IIP)亜急性
16 救急救命士の気管挿管実習を終えて
増悪期患者の麻酔経験
熊本労災病院麻酔科、
熊本大学医学部附属病院麻酔科
八代消防署救急隊消防2課*
吉村依里子,釆田千穂
林田信乃、塚本正義*、柳 文治、
後藤真一、西岡裕子、川本和彦
73 歳女性、身長 149 cm、体重 35 kg。
IIP の 亜 急 性 増 悪 期 に 膿 気 胸 を 併 発 し 、
2004年10月第1週から11月第2週の5週間
で,1名の救急救命士の気管挿管実習(以
VATS 右肺部分切除術が予定された。鼻カ
下挿管実習)を終了したので報告する。
ニューラ O2 3 L/分下での動脈血ガス分析
【方法】挿管実習のパンフレットを診療科
で は 、 pH 7.403、 PaO2 108 mmHg 、
外来,入院窓口,病棟,麻酔科外来で配布
PaCO2 63 mmHg と高炭酸ガス血症で、
し,意思表示結果を回収できた79症例に
呼吸努力が強く、身体活動は極度に制限さ
ついて,協力者の割合,実習の成功率,合
れていた。麻酔は酸素‐空気‐セボフルラ
併症などについて調査した。
ンと硬膜外麻酔の併用で行い、ダブルルー
【結果】79症例中,協力の意思を示した
メンチューブを用いて一側肺換気を行った。
のは40症例だった。協力の意思表示があ
虚脱中の患側肺に CPAP を付加して低酸
っても,麻酔法・リスクなどの理由で実習
素血症 を回避で きたが、 高炭酸ガ ス血症
を行わなかった症例が6症例あった。外科
(PaCO2 94∼132 mmHg)とそれに伴
う酸血症(pH 7.07∼7.19)に難渋した。
17症例,整形外科7症例,形成外科3症例,
その他7症例の34症例で実習し,30症例
右中葉の破裂部が大きく部分切除が不能で
で成功した。成功した30症例のCormack
あったため広背筋充填術を行った。しかし
& Lehane分類はGrade1 26症例,Grade2
術後リークが再発したため気管支内視鏡的
4症例,Grade3 0症例,Grade4 0症例で,
6
に右 B 気管支にシリコン充填術を施行し
失 敗 し た 4 症 例 で は Grade1 1 症 例 ,
たがリークは消失しなかった。現在人工呼
Grade2 1症例,Grade3 2症例,Grade4 0
吸管理中である。IIP で術後に急性増悪し
症例だった。術後の合併症として口腔内損
た患者の致死率は 100%であるとの報告が
傷が3症例あったが歯牙損傷はなかった。
ある。本症例は術前から亜急性増悪の状態
【結語】5 週間で,挿管実習の意思確認が
で高リスクであったが、内科的治療は限界
できた予定手術患者の約半数で協力が得ら
で、救命のためには外科的治療を選択せざ
れた。挿管実習の成功率は 88%だった。
るをえなかった。当疾患は対側肺も病的で
あり、一側肺換気中に高度の低酸素血症と
軽微な合併症があったが,損害賠償が必要
な問題とはならなかった。
高炭酸ガス血症を生じやすいので、ECLA
を用いて肺を換気しない術中呼吸管理も考
慮する必要がある。
17 脳槽シンチで自家血パッチ治療の
18 心拍再開にニフェカラントが有効で
効果が確認された髄液漏症例
あった心室細動の 1 例
済生会熊本病院麻酔科
熊本市民病院救急診療部、
集中治療部*、麻酔科**
江嶋正志、岩政浩子、坂田羊一朗、 赤坂威史、豊田直以、佐藤俊秀*、
古庄千代、國徳裕二、加藤清彦、
満瀬哲郎**、橋口清明**、増田和之**、
原武義和
城 嘉孝**、黒坂夏美**、福本早由美**、
尾方信也**
【症例】28 歳女性【主訴】起立性頭痛【既
心拍再開にニフェカラントが有効であった
往歴】内因性うつ病、縊頚、薬物中毒【病
心室細動の 1 例を経験したので報告する。
歴】平成 15 年 10 月 25 日発熱(40℃台)
、
【症例】78 歳男性【既往歴】糖尿病,心
頭痛を主訴に当院救急外来を受診し、肝機
筋梗塞【現病歴】2004 年 12 月 3 日 9 時
能障害が認められたため入院となった。入
30 分頃,仕事中に大声を出して倒れたの
院中の髄液検査施行後より起立性の頭痛が
を妻が発見し,救急車を要請した。
生じた。造影 MRI で軽度の硬膜肥厚像を
bystander CPR は行われなかった。9 時
認めた。硬膜穿刺後頭痛と診断して輸液な
45 分救急隊到着。モニタ上 PEA であった。
どの対症療法を行い、一週間後に頭痛は消
CPR を施行されながら,9 時 57 分当院に
失した。薬剤性が疑われる肝機能異常も改
善し退院した。平成 16 年 10 月下旬より
到着した。【来院後経過】来院時,モニタ
上 asystole であった。CPR 中に PEA→VF
再び起立性頭痛が出現し精査加療のため入
と変化した。150J(二相性)でエピネフ
院した。造影 MRI の硬膜肥厚は前回より
リンやリドカインを併用しながら 5 回の除
弱かった。脳槽シンチグラフィーを施行し、
細動を行い心拍再開したが(VT),すぐに
1 時間後の膀胱 RI 集積と L2 レベルと L4/5
pulseless と な り 6 回 目 の 除 細 動 後 に
レベルの脊髄腔周囲に RI 集積を認めた。
asystole となった。再び pulseless VT と
髄液漏所見を認めたため L4/5 より硬膜外
なり,ニフェカラント 5mg 静注を 2 回行
自家血パッチ治療(15ml)を行った。治療 2
ったところ,QRS 幅の広い洞性頻脈とな
日後より体位に影響されない軽い後頭部痛
った。その後,二フェカラント 1.5mg/H
を認めるが起立性頭痛は劇的に改善した。
の持続静注を開始し,VF/VT を再発する
治療 4 日後に再度脳槽シンチグラフィーを
ことなく ICU 入室となった。【考察】除細
施行したが髄液漏所見は見られなかった。
脳槽シンチで自家血パッチ治療の効果が確
動抵抗性の心室細動に対して,二フェカラ
ントが有効であった報告が散見される。本
認された髄液漏症例を経験した。本症例に
例の心拍再開にも二フェカラントが有効で
文献的考察を加えて発表する。
あったと考えられた。
19 熊本地域医療センター医師会病院
20 救急現場における新しい顎先挙上器
麻酔科レジデント研修10ヶ月を
の試作
振り返って
熊本地域医療センター医師会病院
熊本リハビリテーション病院、
麻酔科
木下クリニック*
川越誠志、本間恵子、高群博之、
伊佐二久、石坂信子、岡本泰介、
後藤慶次、田上 正
渡辺 実、田尻和也、野田小百合、
木下幸大*
当院では平成14年度よりレジデントの公
われわれは救急現場における新しい顎先挙
募を行っている。ホームページ上にその研
上器を試作し臨床麻酔に投稿中であるが、
修カリキュラムの内容を掲載している。当
これをアコマ医科器械がモディファイ製作
科研修の特徴は、一般麻酔のほかに、ペイ
したものを紹介する。装置の概要は頚背部
ンクリニックでの疼痛患者管理や緩和ケア
を支点として保持器を接続して前胸部に置
病棟において、末期癌患者のケアを学べる
き挙上器で顎先を挙上した後切れ込みで保
ことである。私は元外科医で、総合診療を
持器に固定する。後頚部への圧迫を軽減す
志す内科医であるが、今後地域に根ざした
るためガーゼでカバーし保持器と鎖で接続
医療を行いたいと考えている。緩和ケアや
し体格に応じて長さを調節出来るよう改造
疼痛管理の知識は今後必ず役に立つと考え
ている。また、慢性的な麻酔科医不足の中、
した。麻酔中の患者で舌根沈下による気道
狭窄に使用したが、換気量、SpO2, 呼
元外科医の私は地方の病院で、麻酔業務に
気 PCO2 等において満足すべき結果を得
関わる可能性もあると考えている。
た。エアウェイ等使用経験のない一般市民
私は、平成 16 年 4 月 1 日より 1 年間の
にも有用と思われる。問題点、禁忌等につ
予定で麻酔科レジデント研修を開始してい
いて付言する。
る。ホームページ上の研修カリキュラムを
読み、病院見学を行い、麻酔科レジデント
に応募した。研修を開始して約 10 ヶ月が
経過した。腹部外科を中心に数多くの麻酔
症例を経験し、ペインクリニックでは、難
治性疼痛患者の治療を学んできた。また、
緩和ケア病棟では、末期癌患者の担当医と
して数例の患者さんを看取った。今回は、
10 ヶ月経過した麻酔科研修を振り返って、
私が学び経験し感じた当科研修の実際を発
表する。
21 当院でのペインコントロール目的の
22 鍼治療が劇的効果を示した脊柱管
院内コンサルトについて
狭窄症の一例
熊本大学医学部附属病院麻酔科、 熊本リハビリテーション病院
熊本大学大学院医学薬学研究部
生体機能制御学分野*
洲崎祥子、永田千代子、
石坂信子、伊佐二久、岡本泰介、
田代雅文*、志茂田 治*、寺崎秀則*
桑原公倫、森 喜代美、井野美穂子
熊本大学病院内において、他科入院中にペ
患者は男、76歳、病名:脊柱管狭窄症、L5
インコントロール目的などで麻酔科へコン
圧迫骨折。
サルトされた症例についてまとめた。
7月22日突然両下肢の激痛が出現した。疼
2004 年 1 月∼11 月までにペインコント
痛は次第に増強、痛みのために僅かの体動
ロール目的で麻酔科へコンサルトされた症
すら困難となったため、救急車にて当院整
例は 47 例で、男性 26 人、女性 21 人で
形外科に緊急入院となる。消炎鎮痛剤の投
あった。平均年齢は 51.7(14∼87)歳で
与と安静で、激痛発作はやや減少したもの
あった。診療科としては泌尿器科が最も多
の、依然として左側臥位以外の体位はとれ
く 9 人で、消化器外科 8 人、婦人科 6 人、
ない状態が続いた。26日仙骨ブロックが
その他 1∼3 人であった。コンサルトの内
行われ、かなり効果があったが、一時的で
容としては癌性疼痛に関するものが 18 人
と最も多く、術後の硬膜穿刺後頭痛や神経
あったためにペインクリニック外来に持続
硬膜外ブロックの依頼があった。ブロック
因性疼痛・しびれなどが合計 6 人、硬膜外
の前に試みに両下肢の経穴:風市、中涜、
ブロックなどのブロック目的が 6 人、帯状
三里、下巨虚に鍼治療を行ったところ、治
疱疹痛・帯状疱疹後神経痛が 5 人、その他
療開始10分で痛みが軽減しはじめ、終了
が 6 人 で あ っ た 。 対 応 と し て は CPT
時には著名な除痛効果を認めたためにブロ
( current perception threshold ) や サ
ックは行わず、消炎鎮痛剤の投与と週3回
ーモグラフィー・レーザードップラーによ
の鍼治療のみ行うことにした。鍼治療開始
る評価・診断を行ったものが 2 人、ドラッ
後2週目でADL著明に改善し、3週目には、
グチャレンジテストを施行したものが 6 人、
歩行可能となりリハビリが開始された。計
硬膜外ブロック他ブロックを行ったものが
14回の鍼治療を行い35日後に軽快独歩退
6 人、麻薬・補助薬の使用法などの投薬指
院となった。
導を行ったものが 17 人、経過観察や面談
のみが 5 人であった。当院で独自に調合し
10月31日より鎮痛剤も必要としなくなっ
たが、本人が安心のためと希望し、現在ま
ているリドカインゲルを使用したものが 6
で2-3週毎に通院して鍼を施行している。
人だった。癌性疼痛の患者では、当院入院
本症例の疼痛は原疾患によって生じた筋肉
中に永眠した症例が 5 人だった。
攣縮と循環障害によるものであったと思わ
れるが、鍼治療は、この悪循環に対し劇的
に奏功したものと思われる。
23 極細針を用いたステロイドくも膜下
投与療法(ITSS)の整形外科
領域脊椎疾患での効果
NTT西日本九州病院麻酔科、 整形外科*
大津哲郎、飯干 明*、
吉田尚紀*、伊勢紘平*
従来デポメドロールなどのステロイドをく
状改善し治療を得た。CaSでは6例(15)
、
も膜下に投与すると脊髄神経炎を起こすと
CSPでは2例(5)であった。MTSでは8
されてきたが、当施設では極細針と、くも
例(9)に充分なペインコントロールが得
膜下投与が認められているベータメサゾン
られた。感染症や神経損傷は見られなかっ
とブドウ糖のみをくも膜下に投与する治療
た。2例に経過中糖尿病の悪化がみられ
法を考案し、Intrathecal Single-Steroid
ITSSとの関連が疑われたが治療は続けられ
Administration ( ITSS ) と 名 付 け 、 硬 膜
た。
外ブロックと併用しペインクリニックを行
結論:ITSS は整形外科領域脊椎疾患でも
っている。ITSSは局所麻酔薬を用いないた
有効なペイン治療手段となりうる。
め循環動態が極めて安定しており、感覚神
経、運動神経麻痺も起こらない。また、極
細針を用いるため硬膜穿刺後頭痛も極めて
希であるため外来で比較的簡単に繰り返し
実施できる特徴を持つ。治療開始当初より
帯状疱疹、PHN,腰部椎間板ヘルニア
(LDH),
脊 柱 管 狭 窄 症 ( CaS) , 転 移 性 脊 椎 腫 瘍
(MST),頚椎症(CSP)などを治療して来
た。ヘルペス関連疾患ではかなり良好な治
療効果が得られているが今回脊椎関連疾患
の治療成績を報告する。
方法と症例:Portex社製27G、pencil point
needle ,または八光 社製26G、スパイナ
ル針を用い、リンデロン2-4mgに20%ブ
ドウ糖2-3mlを加え該当脊椎間からくも膜
下へ穿刺した。ITSSは週1回-2回程度とし、
その間に硬膜外ブロックを併用した。但し、
MSTに関してはITSSのみ週3-4回行った。
2002年 8月よ り2004年10月まで にLDH
16例、CaS 15例、CSP 5例、MST 9
例、圧迫骨折(COM)1例(合計46例)に
実施した。
結果:全例に合計ITSSを517回実施した。
LDHではITSS併用で12名(16名中)が症
【特別講演】
循環器領域の最近の話題
熊本中央病院循環器科部長 大嶋 秀一先生
平成 16 年8月より薬物溶出型ステントが日本でも使用可能になった。
いわゆるバルーン拡張術が世界で始まって 25 年以上経過した。バルー
ン拡張術の登場は冠動脈バイパス術か内服加療しかなかった虚血性心疾
患の治療に画期的な変化をもたらした。すなわち局所麻酔で狭心症がコ
ントロールできること、比較的高齢者でも安全に治療ができることがわ
かり、日本では飛躍的にカテーテル手術件数が増加した。しかしバルー
ン拡張術には急性冠(動脈)閉塞と再狭窄という大きな欠点が存在した。
急性冠閉塞のため心筋梗塞になったり緊急バイパス手術を受けたりする
患者が存在し、また再狭窄のため再治療を繰り返す患者が存在した。約
10 年前より冠動脈ステント治療が始まり急性冠閉塞回避のための緊急
手術が激減したが、再狭窄による再治療は 20%前後で持続していた。平
成 16 年 8 月より免疫抑制剤がステント内にコーティングされ、ステン
ト 留 置 後 徐 々 に 溶 出 す る 薬 物 溶 出 型 ス テ ン ト ( Drug eluting stent
DES)が国内で使用可能となり、ステント後の再狭窄率が 5%前後とす
ばらしい成績を誇っている。DES に関するこれまでの成績と問題点につ
いて詳述する。
熊 本中 央病 院 循環 器科 で は血 栓溶 解療 法 の一 つの 方 法と して Pulse
Infusion Thrombolysis (PIT)を急性冠症候群、急性肺動脈血栓塞栓症
(APTE)、深部静脈血栓症 (DVT)に対して施行してきた。今回は APTE
および DVT の症例および臨床成績について報告する。
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