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インターンシップ 指導事例集
普通科における効果的な インターンシップ 指導事例集 指導事例集 平成26年5月 北海道教育庁学校教育局高校教育課 はじめに 近年、就職・進学を問わず生徒の進路をめぐる環境が大きく変化している中、北 海道の高校卒業者の早期離職率は、全国を上回っております。この要因としては、 北海道経済部が平成23年度に行った「若年者職場定着促進調査」では、給与や労働 条件にかかわるものを除くと、「仕事上のストレス」、「人間関係」、「仕事にやりが いを見い出せない」等の理由が挙げられております。 こうした課題を解決するためには、自分の能力・適性や職業に対する理解を深め させる指導やコミュニケーション能力を身に付けさせる教育活動を充実する必要が あります。 このため、各学校においては、これまでも生徒や地域の実態を踏まえ、インター ンシップの充実や企業見学会等の実施に取り組んでおり、全日制では、すべての学 校で実施しているものの、在学中に1回以上インターンシップを経験した生徒の割 合を見ると職業学科では92%であるのに対し、普通科では、約36%にとどまって おります。 こうした状況を踏まえ、特に普通科においても、将来を展望させ、学校から社会 ・職業への円滑な移行に必要とされる力を育成する必要がありますことから、この 度、道内外の普通科における効果的な指導事例をとりまとめたところであります。 各学校において、本事例集が有効に活用され、すべての生徒がインターンシップ を経験し、勤労観・職業観等の価値観や自分の能力・適性や職業に対する理解を深 めるなど、社会的・職業的自立に必要な能力等の育成に役立つことを期待しており ます。 平成26年5月 北海道教育庁学校教育局高校教育課長 小 山 茂 樹 目 次 ○ 道内の 道内の高等学校における 高等学校における事例 における事例(★は町立高等学校) 町立高等学校) 事例1 北海道砂川高等学校~2年次生全員による取組~(在籍生徒379名)・・・・・・・・・・・・・・ 1 事例2 北海道札幌手稲高等学校~大学等進学希望者を対象とした取組~(在籍生徒959名)・・・・ 3 事例3 北海道札幌英藍高等学校~インターンシップ実施1年目の取組~(在籍生徒870名)・・・・・・・・・・ 5 事例4 北海道札幌あすかぜ高等学校~1学年320名全員による取組~(在籍生徒869名)・・・・・・・ 7 事例5 北海道共和高等学校~2学年全員が3日間実施~(在籍生徒41名)・・・・・・・・・・・・・・ 9 事例6 北海道伊達高等学校~キャリア発達を支援するインターンシップ~(在籍生徒422名)・・・・・・・・・ 11 事例7 北海道登別青嶺高等学校~地域パートナーシップ会議の設置~(在籍生徒458名)・・・・・・・・ 13 事例8 北海道平取高等学校~生徒の希望に沿った1学年全員の取組~(在籍生徒94名)・・・・・・・・ 15 ★ 事例9 17 北海道知内高等学校~地域に根ざしたインターンシップ~(在籍生徒158名)・・・・・・・・・ 事例10 北海道上ノ国高等学校~生徒が「体験プログラム」を提案~(在籍生徒90名)・・・・・・・・・ 19 事例11 北海道留萌高等学校~関係機関と連携し生徒全員の受入先確保~(在籍生徒434名)・・・・・・・ 21 事例12 23 北海道浜頓別高等学校~インターンシップとキャリア職業研究~(在籍生徒137名)・・・・・・・ 事例13 北海道興部高等学校~事後指導における各教科との連携~(在籍生徒60名)・・・・・・・・・・ 25 事例14 北海道阿寒高等学校~企業で模擬面接を実施~(在籍生徒110名)・・・・・・・・・・・・・・・ 27 事例15 北海道根室西高等学校~普通科2学年全員による3日間の取組~(在籍生徒164名)・・・・・・・ 29 ○ 道外の 道外の高等学校における 高等学校における事例 における事例 事例16 愛媛県立A高等学校~大規模校で学年全員の取組~(在籍生徒789名)・・・・・・・・・・・・・ 31 事例17 鹿児島県立B高等学校~生徒の希望から受入先を決定~(在籍生徒158名)・・・・・・・・・・・ 32 事例18 山口県立C高等学校~ジョブ・インタビューの取組~(在籍生徒475名)・・・・・・・・・・・・ 33 道内の高等学校における事例 北海道砂川高等学校における実践 ~2年次生全員による取組~ インターンシップの概要 日程・実施生徒数 実施日程 2日間 実施生徒数 2 年 次 1 1 1 名( 全 員 ) 活動のポイント ○ 進路指導部と2年次団の連携強化 ・ 合 同 会 議 を 年 3 回 ( 4 、 7 、 11月 ) 実 施 ・インターンシップの進め方や指導計画、役割分担などを協議 ○ 生徒のニーズに合わせた職種での実施 ・卒業後の就職を見据えるだけでなく、将来の人生設計も含めた取組にするため、 生徒が希望する職種でのインターンシップを実施 <推進体制> 協力依頼 商工会議所等 生徒の受入 進路指導部(主管) 2年次団 教務部 ・事業所への依頼 ・時数カウント ・事前指導、事後指導 ・時間割調整 ・実習先の割当 ・自習監督の割当 事前・事後指導と当日の活動状況 事前指導 ○ 観察による評価 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」( 3 時 間 配 当 ) 1 ハローワーク滝川の職員によるジュニアインターンシップ事前講習を実施 (1時間) ・実習の心構えと留意事項を学習 ・望ましい職業観や社会人としてのマナーの重要性を認識 2 教頭及び進路指導部長による講話の実施(2時間) ・実習の目的を再度確認させ、意識を高揚 ・実施に当たり注意すべき事項等を確認 【配慮事項】 ・受入先の決定前は、希望職種の仕事内容をWebページなどで調べさせ、その理解を深めさせる。 ・受入先の決定後は、その受入先を調べ、業務内容等を把握させる。 ・従業員等と円滑なコミュニケーションが図られるようにするため、部活動や生徒の学校での活 動などをA4版1枚にまとめた自己紹介カードを作成し、事業所に持参させる。 - 1 - 当 日 □日 巡回での観察による評価 程 : 平 成 25年 10月 10日 ( 木 ) ~ 11日 ( 金 )( 2 日 間 ) □受入先:砂川市役所、北海道銀行砂川支店、 砂川市立病院、新砂川農業協同組合、 防衛省自衛隊滝川地域事務所、 他 □巡 合 計 42事 業 所 回:2年次団、進路指導部 ・生徒の健康状態の確認 ・事業所の担当者から生徒の様子等を把握 ・次年度以降の計画に役立てるため、望まし い実習期間や次年度の受入の可否等につい 【消防署で放水訓練を体験】 て、受入先事業所を対象にアンケートの実 施を依頼 【配慮事項】 ・事業所の巡回により、担当者から生徒の様子を聞き取り、必要に応じて生徒に指導する。 ・体調不良などにより欠席する場合は保護者から学校に連絡させた後、学校の担当者から事業所 に連絡するとともに、欠席生徒への対応を相談する。 事後指導 ○ レポートによる評価 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」( 1 時 間 配 当 ) ・実習中に記入した実習日誌の内容等を整理させるとともに、実習で得たことや感 じたことのほか、将来の職業生活に向けての課題等を実習レポートに記載 【配慮事項】 ・直 接的 な体験 の振 り返 りや 反省だ けで はな く、 体験し たこ とを 踏まえ、よ りよい進路 選択や 自らの在り方や生き方について考えが深まるよう指導する。 ・進路目標の実現に向け、職業観を形成するとともに日頃の学習活動の取組の大切さを指導する。 取組の成果 ○ インターンシップを通して、生徒は自らの進路について深く考えるようになり、勤 労観や職業観が育まれた。 ○ 生徒が希望する職種でインターンシップを実施したことにより、職業理解が深まっ た。 今後の課題 ○ 引き続き、受入事業所の確保に取り組む必要がある。 - 2 - 北海道札幌手稲高等学校における実践 ~大学等進学希望者を対象とした取組~ インターンシップの概要 日程・実施生徒数 実施日程 1日間 実施生徒数 1 年 次 320名 ( 全 員 ) 活動のポイント ○ 生徒のニーズに合わせたインターンシップ ・大学等での学びの在り方や大学等卒業後の就職又は社会生活を念頭におき、可能な 限り生徒の希望する職種・業種においてインターシップを実施 ○ コミュニケーション能力の育成を意識したインターンシップ ・コミュニケーション能力の育成を図るために、質問事項を用意して、各事業所等に おいて職員インタビューを実施 <インターシップ実施に係る校内体制> ガイダンス部 ・全体計画立案、運営 ・受入事業との事前折衝 1年次団 ・生徒への指導、巡回指導 ・受入事業所との最終確認 事前・事後指導と当日の活動状況 事前指導 ○ 観察、提出物による評価 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」( 5 時 間 配 当 ) 1 キャリア学習講演会の実施(2時間配当) ・インターンシップの意義や企業が求める人材等について講義を通して、コミュニ ケーション能力及びビジネスマナーを育成 2 エントリーシートと仕事探究ワークシートの作成(3時間配当) ・事前に受入先事業所等に提出する履歴書の作成 【配慮事項】 ・生徒への指導は、グループごとに担当指導教諭を配置する。 ・担当指導教諭用に、指導用マニュアルを作成し、指導内容の統一を図る。 - 3 - 当 日 □日 巡回での観察による評価 程 : 平 成 25年 10月 25日 ( 木 )( 1 日 間 ) □受入先:札幌医科大学附属病院、札幌西税務署 北海道大学総合博物館、石狩市役所 小樽海上保安部他 □巡 合 計 58事 業 所 回:1年次団 受入先事業所等の所在地が小樽市及び石狩管内 全域に及ぶため、1年次団の教諭が分担して巡回 【配慮事項】 ・次年度のインターシップの改善に向け、各事業所等から情 報収集を行う。 事後指導 ○ 【消防署での体験】 記録、発表会での観察による評価 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」( 3 時 間 配 当 ) 1 インターシップのまとめ(1時間配当) ・インターンシップ報告書、受入先事業所への礼状作成 2 インターンシップ報告会(2時間配当) ・グループ毎に発表用シートを活用して報告会を実施 【配慮事項】 ・インターンシップ報告会では、進路選択の視野を広げ高校での学びに生かすことを目的に、 インターンシップにおいて「体験したこと」、「学んだこと」、「今後の学校生活において何 をすべきか」という観点から報告するように指導する。 取組の成果 ○ 生 徒 の 多 く が 、「 大 学 卒 業 後 の 社 会 生 活 」 を 強 く 意 識 し 、 自 己 の 将 来 に つ い て 考 え るとともに、社会において求められる能力と学ぶことの大切さを認識することができ た。 ○ イ ン タ ー ン シ ッ プ 実 施 後 の ア ン ケ ー ト 調 査 結 果 で は 、 96% の 生 徒 が 「 イ ン タ ー ン シ ッ プ は 自 分 の 将 来 を 考 え る 上 で 役 に 立 っ た 。」 と 回 答 し 、 ま た 、 72% の 生 徒 が 「 イ ン タ ー ン シ ッ プ に 参 加 し て 、 今 後 の 高 校 で の 学 習 に 対 す る 意 欲 が 高 ま っ た 。」 と 回 答 し た。 今後の課題 ○ インターンシップの受入先については、生徒のニーズに対応するため、より幅広い 職種・業種の事業所の確保が課題であり、保護者等の協力も得ながら新規事業所等を 開拓する必要がある。 ○ インターンシップ実施により高まった学習意欲を、その後の学習等に生かすための 事後指導の工夫・改善が必要である。 - 4 - 北海道札幌英藍高等学校における実践 ~インターンシップ実施1年目の取組~ インターンシップの概要 日程・実施生徒数 実施日程 1日間 実施生徒数 1年次320名(全員) 活動のポイント ○ キャリア教育推進室の設置 ・3年間を見通したキャリア教育を推進するため、進路指導部内にキャリア教育推進 室を設置 ・室長と1年次団の進路指導部員が中心となりインターンシップ事業を実施 ○ 「キャリアプロジェクト」の実施(本年度は、1年目のためⅠのみ実施) ・ 1 、 2 年 次 生 全 員 を 対 象 に 「 キ ャ リ ア プ ロ ジ ェ ク ト Ⅰ ・Ⅱ 」 を 実 施 ・3年次生の希望者を対象に面接学習などの「キャリアプロジェクトⅢ」を実施 <「キャリアプロジェクトⅠ」> 目的 ○生徒が受入先(企業や公共機関など)を訪問し、経営者や従業員の方々から 仕事の内容などをインタビューすることにより、仕事の社会的な意義や実際 の業務内容についての理解を深める。 内容 ①取材する事業所(企業や公共機関など)の概要を調べるとともに、取材する 内容を準備する。 ②生徒が事業所を訪問し仕事の内容等を取材する。また、実際に仕事を体験す る。 ③取材した内容をもとにレポートを作成し、プレゼンテーションを行う。 事前・事後指導と当日の活動状況 事前指導 観察、提出物による評価 ○ 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」( 8 時 間 配 当 ) 1 大学教授(講師)による講話(1時間) ・「 学 ぶ こ と 」「 働 く こ と 」 の 意 義 に つ い て 学 習 2 「 未 来 B O O K ( 進 路 ノ ー ト )」 に よ る 学 習 ( 2 時 間 ) ・「 働 く こ と の 意 義 」 に つ い て 学 習 3 キャリアプロジェクトⅠの事前準備(5時間) ・グループ内の役割分担、訪問事業所調査研究、当日のインタビュー内容の準備、 事後のレポート作成要領の確認 【配慮事項】 ・事前指導を通して、インターンシップの意義や心構えについて理解を深める。 ・訪問する事業所について会社概要などの調査を行う事前学習を行うことで、職業理解を 深める。 - 5 - 当 日 □ 日 程 : 平 成 25年 10月 23日 ( 水 ) 1 日 間 □ 受 入 先 :( 株 ) 総 合 商 研 、 当 別 町 役 場 北海道トンボ株式会社、 他 合 計 100事 業 所 □巡 回:1年次団の担任と副担任が一人当たり 2~4事業所を巡回し、生徒の状況を 観察。また、受入事業所の担当者から 感想を聞き取り 【配慮事項】 ・次年度に向けた改善点などについて情報収集を行う。 ・生徒の健康管理・安全管理に努め、事故が起きた場 合の対応について、学校と受入先が共通理解を図る。 【インタビューの様子】 事後指導 記録、発表会による評価 ○ 「 総 合 的 な 学 習 の 時 間 」( 12時 間 配 当 ) 1 グループシェアリング(2時間) ・グループごとにインタビューやインターンシップの記録を整理 2 体験発表会と集録作成準備(7時間) ・グループごとにプレゼンテーションと集録への掲載内容の検討と資料等の作成 ・体験発表会の予行練習 3 体験発表会(3時間) ・保護者や受入事業所関係者を招き、発表会を実施 4 集録発行 【配慮事項】 ・体験を振り返ることで、高等学校で学ぶことと働くことの関連について考えさせる。 ・体験発表会を通して、自己の在り方・生き方について考えさせる。 取組の成果 ○ 事 業 所 等 へ の 訪 問 を 通 し て 、生 徒 が「 働 く こ と 」の 意 義 を 知 る と と も に 、「 社 会 人 」 の働く姿を直接知ることができた。 ○ 事業所等でのインタビューを通して、コミュニケーションを図ることの重要性はも とより、社会人としてのマナーや、時と場所に応じた言葉遣いの大切さなどについて 学ぶことができた。 ○ グループでの事前準備や事後の取組を通して、役割分担したり、協力することの大 切さや難しさを学ぶことができた。 今後の課題 ○ 1年次の「キャリアプロジェクト」における、インターンシップの役割を明確にす るとともに、3年間を通した体系的、系統的なキャリア学習を構築する必要がある。 ○ 体験発表会の内容が単なる体験内容の振り返りや反省等が中心であったことから、 インターンシップを通して明確になった課題を踏まえ、2・3年次での目標やこれか らの在り方生き方についての考えを深められるよう、指導を改善する必要がある。 - 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