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レジュメ - 早稲田大学

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レジュメ - 早稲田大学
2016 年度早稲田大学教育学部講義「日本史Ⅰ A」
5.ヤマト王権の形成―原始から古代へ
2016. 5.11. 大橋 幸泰
はじめに
「日本」国号成立以前の日本列島:現代人が想定する、あらゆる境界を前提としない視点が必要
1.日本列島の形成と旧石器文化
アジア大陸から分離以前、現在の日本列島付近に人の移動
→旧石器文化の展開
*相沢忠洋による岩宿遺跡の発見(1946)を契機に、日本列島にも旧石器文化の存在が確認される
→現在、確実な旧石器文化の遺跡は、3 万年前以降(1 万年前まで)の後期旧石器時代のもの
石器製作技術:北方アジア大陸のそれと共通
→後期旧石器文化とそれに続く縄文文化の担い手:東北アジア系の人びと
2.縄文文化の成立
地球環境のサイクル:周期的な氷期の後、1 万 5 千年前から温暖化、1 万年前最終氷期終了
→この間、縄文海進により、アジア大陸と地続きだった日本列島が分離
自然環境の変化:温暖化、海面上昇、日本列島の成立
→豊富な魚介類、中・小型獣、落葉広葉樹林(東日本)・照葉樹林(西日本)、の登場
→縄文文化の形成(1 万 5 千年前以降)
*環境の変化に応じて、有用な道具(弓矢・土器・磨製石器など)の開発
縄文人の社会
・採集経済を基本:豊かな食物を狩猟・漁労によって獲得
・初期農耕:リョクトウ・ヒョウタン・エゴマ・クリ・イネ(陸稲:灌漑設備による水稲農耕ではない)など
・縄文土器による食料の貯蔵・加工・調理
・交易ネットワークの存在:産地が限定された黒曜石の広範囲な分布
・定住のための大型集落の出現:竪穴住居
・祭祀・呪術の重視:アニミズム、土偶、精製土器(縄文土器の 2 割前後)
→自然環境に適応した生活:食料の内容など、地域による差異が顕著
* 1500 年継続した三内丸山遺跡:大型建造物、食料の大量貯蔵
*ただし、三内丸山遺跡でも同時期の人口は 100 人前後か
3.農耕の開始と弥生文化
北部九州へ水稲農耕伝来(3000 年前):朝鮮半島からの渡来人
→水稲農耕、九州・中国・四国・近畿を経て日本列島へ浸透:ただし、東日本へは日本海側を北進
→太平洋側の東日本では縄文文化が残存、東北北部では水稲農耕は定着せず(北海道を含めて、続縄文文
化への移行)、南西諸島では水稲農耕の定着は未確認
*北海道では、続縄文文化から擦文文化・オホーツク文化へ
*弥生文化の地域性:弥生時代の始期(紀元前5~4世紀)とは、西日本地域に水稲農耕が定着した時期
-1-
弥生人の社会
・生産経済への移行:水稲農耕を基本
・弥生土器・鉄器などによる生産性の向上
・集落規模の拡大、人口増加
・青銅器(銅鐸のほか銅剣・銅矛・銅戈など武器形祭器)を使った祭祀の実行:地中へ埋納
→水稲農耕による利害の発生:利水問題・余剰生産物をめぐる争いなどのため、戦争の本格的開始
→環濠集落の登場:外敵から共同体を守るとともに、共同体内部の管理強化
→王墓の出現(紀元前 1 世紀):副葬品の存在により階級差が確認できる
*たとえば、吉野ヶ里遺跡
→共同体的「クニ」の簇生から小国分立へ:首長による中国皇帝への朝貢(史料 1・2)
4.小国分立からヤマト王権の成立へ
小国分立から地域的首長連合の形成へ:共通王墓の造営(2 ~ 3 世紀前半)
*たとえば、山陰地域では多数の四隅突出型墳丘墓、吉備地域では王墓に共通の特殊壺・特殊器台
→「倭国」という緩やかな連合体の成立(史料 2)
*連合の理由:朝鮮半島からの鉄資源の安定的確保
*この間、小国の抗争と連合により、しばしば戦争が展開(2
世紀中後期):高地性集落の存在
(146 ~ 189)
「桓霊間、倭国大乱」(146 ~ 189、『後漢書』「東夷列伝」)
地域的首長連合の延長上に、邪馬台国連合の成立(史料 3)
→卑弥呼は「倭女王」:小国連合体から共立された倭王
*女性の呪術・祭祀的首長、男性の政治・軍事的首長:ヒメヒコ制による統治の可能性
3世紀から、西日本の広域首長連合の成立を想定できる:近畿中央部~瀬戸内海沿岸部~北部九州
→纏向遺跡・箸墓古墳の存在と併せて考えると、邪馬台国近畿説が有力
*西日本の邪馬台国連合(ヤマト王権の原初形態)に対して、東日本の狗奴国連合が存在した可能性
* 3 世紀後半から、巨大で定型化した墳丘墓(前方後円墳)が登場:特に、4 世紀後半~ 5 世紀、奈良盆地
から大阪平野にかけて、巨大前方後円墳が築造される
*ただし、倭国王以外にも、吉備地域・関東地域に巨大前方後円墳が存在(5 世紀中期まで築造)
→5世紀後期、地域首長と比較して、倭国王の優位性確保:ヤマト王権の確立
おわりに
原始から古代への転換
a.採集経済から生産経済へ:ただし、日本列島一律に転回したのではない
b.生産経済の定着とともに「境界」(共同体・身分・ジェンダー)の形成:ただし、歴史的可変性をもつ
【参考文献】
金関恕・大阪府立弥生文化博物館編『弥生文化の成立』(角川書店、角川選書、1995 年)
吉村武彦『日本の歴史 1 日本社会の誕生』(岩波書店、岩波ジュニア新書、1999 年)
小嶋茂稔「「倭国」の形成と「邪馬台国」」(『歴史評論』710、2009 年)
外岡 昇「創られた「天皇陵」」(歴史科学協議会編『天皇・天皇制をよむ』東京大学出版会、2008 年)
「陵墓限定公開」30 周年記念シンポジウム実行委員会編『「陵墓」を考える』(新泉社、2012 年)
【付 記】
大橋のホームページに講義済みのレジュメを公開している。欠席した場合、ここからダウンロードのこと。
http://www.f.waseda.jp/yohashi/
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