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「行政財産の目的外使用・貸付け等について」(PDF形式 346
平 成 2 2 年 度 行 政 監 査 結 果 報 告 書 (行政財産の目的外使用・貸付け等について) 平 成 23年 3 月 新 潟 県 監 査 委 員 目 次 第1 行政監査の趣旨 第2 1 2 監査のテーマ及び目的 ………………………………………………1 監査のテーマ …………………………………………………………1 監査の目的 ……………………………………………………………1 第3 1 2 3 4 監査の実施概要 ………………………………………………………1 監査の実施期間 ………………………………………………………1 監査対象所属 …………………………………………………………1 監査の方法 ……………………………………………………………1 監査の着眼点 …………………………………………………………1 第4 1 2 3 4 5 6 7 監査の結果 ……………………………………………………………2 行政財産の定義 ………………………………………………………2 適用除外財産について ………………………………………………2 行政財産に係る条例等の所管 ………………………………………3 行政財産の目的外使用許可 …………………………………………3 行政財産の貸付け等 …………………………………………………7 行政財産における活用されていないスペースの状況と管理体制…8 歳入確保に向けた新たな取組 ………………………………………9 第5 1 2 3 4 5 監査に係る意見 ………………………………………………………9 適正な目的外使用許可事務の確保 …………………………………9 使用料の減免基準の整備 ……………………………………………10 貸付制度の特徴を踏まえた運用 ……………………………………10 活用されていないスペースの管理と活用の促進等 ………………10 自動販売機の設置に係る取扱いの検討 ……………………………11 まとめ ………………………………………………………1 …………………………………………………………………………12 第1 第2 1 2 第3 1 行政監査の趣旨 行政監査は、地方自治法第199条第2項の規定に基づき、県の事務が法令等の定め るところにしたがって適正に執行されているか、県民の福祉の増進に寄与し、最小の 経費で最大の効果を上げているか、組織及び運営の合理化に努め、規模の適正化が図 られているかについて監査を実施するものである。 監査のテーマ及び目的 監査のテーマ 行政財産の目的外使用・貸付け等について 監査の目的 平成18年の地方自治法の改正により、行政財産の貸付け等に係る範囲が拡大されて から4年が経過し、県内外において行政財産の有効活用により収入増を図っている事 例が見受けられるところである。 一方、厳しい財政状況の中、県では可能な限りの歳入確保策を講じることとしてお り、平成23年度の予算編成に当たっても、県有財産の有効活用など、新たな視点で様 々な角度から検討を行うことが必要としている。 これらのことから、当県においても、目的外使用許可や貸付け等により行政財産が 有効に活用されているかについて監査を実施する。 監査の実施概要 監査の実施期間 平成22年9月から平成23年3月まで 2 監査対象所属 知事部局、県議会事務局、人事委員会事務局、監査委員事務局、労働委員会事務局、 教育庁及び警察本部の各所属 3 監査の方法 監査対象となる360所属から提出された監査資料に基づいて書記事前調査を行い、 うち14所属に対して書記による実地調査を行った。 委員による監査は、管財課について実地監査とし、その他の所属については書面監 査とした。 4 監査の着眼点 監査に当たっては、次の事項を着眼点とした。 (1) 行政財産の有効活用に係る体制 ア 目的外使用許可制度の運用方針 イ 貸付け等に係る制度の運用方針 - 1 - ウ エ オ (2) 第4 1 有効活用に向けた目的外使用許可と貸付け等の適用方針 有効活用が可能な財産の管理体制 使用料、貸付料等の減免に係る考え方 所属における行政財産の有効活用の状況 ア 目的外使用許可や貸付け等の根拠は適切か イ 使用料、貸付料等の減免の適用は適切か ウ 有効活用されていないスペースの有無 エ 適用除外財産の占用料等の減免に係る基準の整備状況 監査の結果 行政財産の定義 地方自治法第237条第1項において、「財産」とは、公有財産、物品及び債権並び に基金とされており、さらに同法第238条第1項において、「公有財産」とは、普通 地方公共団体の所有に属する財産のうち次に掲げるもの(基金に属するものを除く。) とされている。 ① 不動産 ② 船舶、浮標、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機 ③ 前二号に掲げる不動産及び動産の従物 ④ 地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利 ⑤ 特許権、著作権、商標権、実用新案権その他これらに準ずる権利 ⑥ 株式、社債(特別の法律により設立された法人の発行する債券に表示される べき権利を含み、短期社債等を除く。)、地方債及び国債その他これらに準ず る権利 ⑦ 出資による権利 ⑧ 財産の信託の受益権 また、同条第3項において、公有財産は、「行政財産」と「普通財産」とに分類さ れ、同条第4項において、行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用 に供し、又は供することと決定した財産とされている。 2 適用除外財産について 適用除外財産とは、行政財産のうち、特別の法律に基づき取得、管理、台帳の備付 け等が規定されているものであり、新潟県公有財産事務取扱規則第11条により、同規 則に規定する財産取得時の総務管理部長への合議や使用許可基準などの適用が除外さ れている財産をいう。具体的には、道路、河川、港湾、漁港、都市公園、下水道など が挙げられる。 適用除外財産に係る占用料等の徴収及び減免に関しては、次のとおり条例で定めら れており、いずれも要領等により具体的な減免基準が設けられている。 書記事前調査を行った所属においては、基準の運用について、特に問題となる事例 - 2 - はみられなかった。 規定等 行政財産 道 路 河 川 海 岸 占用料等の徴収及び減免を 具体的な減免基準を 規 規定している要領等 定 し た 条 例 新潟県道路占用料徴収条例 事務)処理要領 新潟県河川法施行条例 地域機関委任事務(土木建築関係行政 事務)処理要領 新潟県公共海岸占用料等徴収条例 湾 地域機関委任事務(土木建築関係行政 事務)処理要領 ・新潟県港湾管理条例 港 地域機関委任事務(土木建築関係行政 港湾施設使用料並びに水域、公共空地 ・新潟県が管理する港湾区域内及び港 占用料等の減免基準について 湾隣接地域内における行為の規制等 (土木部長通知) に関する条例 新潟県漁港管理条例 漁 甲種漁港施設利用料、使用料及び占用 港 料ならびに水域公共空地占用料の減免 基準 下水道 都市公園 県有土地改良財産 新潟県行政財産使用料徴収条例 行政財産使用料の減免の取扱い基準に ついて 新潟県都市公園条例 地域機関委任事務(土木建築関係行政 事務)処理要領 新潟県行政財産使用料徴収条例 県有土地改良財産の使用料の減免基 準について(農地部長通知) 3 行政財産に係る条例等の所管 新潟県行政財産使用料徴収条例や新潟県公有財産事務取扱規則等の行政財産の管理 に係る条例等については、総務管理部管財課が所管している。また、行政財産のうち 教育財産については、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の規定により、教育 委員会が新潟県教育財産事務取扱規則を所管しており、内容は管財課で所管している 新潟県公有財産事務取扱規則と同様で、運用についても管財課に準ずることとしてい る。 4 行政財産の目的外使用許可 行政財産は、行政目的を達成するために必要な財産であるため、貸付け、交換、売 払い等が原則的に禁止されているが、その用途又は目的を妨げない限度において、そ の使用の許可ができることとされている。 なお、行政財産の目的外使用許可に係る事務は、新潟県公有財産事務取扱規則(教 育財産においては新潟県教育財産事務取扱規則)等により、各課及び各地域機関の長 等並びに学校その他の教育機関の長が分掌することとなっている。 - 3 - (1) 目的外使用許可の取扱い ア 目的外使用許可が認められる範囲 当県においては、行政財産の使用目的が新潟県公有財産事務取扱規則第29条 の7第1号から第7号まで(教育財産においては新潟県教育財産事務取扱規則 第25条第1号から第7号まで)のいずれかに該当する場合に限り使用させるこ とができるとしており、当該規定は、次のとおりである。 ① 国、他の地方公共団体その他公共団体において、公用又は公共用に供する ため特に必要と認められるとき。 ② 県の事務又は事業を推進することに効果があると認められるとき。 ③ 公の学術調査、研究、公の施策等の普及宣伝、その他公共目的のため講習 会、研究会等の用に短期間使用するとき。 ④ 水道事業、電気事業その他の公益事業のため使用することがやむを得ない と認められるとき。 ⑤ 職員その他県の施設を利用する者のための食堂、売店、その他の福利厚生 施設を設置するとき。 ⑥ 災害、その他緊急やむを得ない事態の発生により応急施設として短期間使 用するとき。 ⑦ 前各号のほか、特に必要があると認めるとき。 イ 使用料の減免 新潟県行政財産使用料徴収条例第3条によると、知事は、使用者が当該行政 財産を公用若しくは公共用又は公益の用に供すると認めるときは、使用料の全 部又は一部を免除することができるとしている。具体的には、「行政財産使用 料の減免の取扱い基準について」(以下「減免の取扱い基準」という。)におい て、次のとおり定められている。 第1 条例第3条の規定により使用料を免除することができる場合 1 地方公共団体において、公用又は公共用に使用するとき。 2 県の事務又は事業を推進することに効果があると認められるとき。 3 公の学術調査、研究、公の施策等の普及宣伝、その他公共目的のため に使用するとき。(入場料に相当する金銭等を徴収しないものに限る。) 4 主として職員その他県の施設を利用する者のための食堂、売店、その 他の福利厚生施設を設置するとき。 5 災害その他緊急やむを得ない事態の発生により、必要と認める時間(応 急復旧対策が終わるまでの期間)応急施設として使用するとき。 第2 条例第3条の規定により使用料を5割減額することができる場合 1 公共的団体が直接事務又は事業の用に使用するとき。 2 公の学術調査、研究、公の施策等の普及宣伝その他公共目的のため使 - 4 - 用する場合で実費又は低額な利用料を徴収するとき。 第3 第1及び第2以外の使用で使用料の減免を必要とするもの及び第2の使 用で定めた使用料の減額率により難いものの取り扱いについては管財課長 を経て総務管理部長に協議するものとする。 (2) 目的外使用許可の状況 平成21年度末現在における目的外使用許可の状況は、次のとおりである。 部局等名 使 用 許 う ち 減 減 免 件 減 免 件 条例等によ 実 際 の 徴 減 可 件 数 免件数 数のうち 数 の 割 る 使 用 料 収 減額件数 合 (%) 算出額 (円) 知事政策局 0 0 0 - 総務管理部 79 51 0 県民生活・環境部 32 18 局 3 福祉保健部 免 額 減免額 額 (円) の割合 (円) 0 0 64.56 39,447,782 4,880,397 0 56.25 5,590,053 4,513,900 1,076,153 19.25 2 0 66.67 1,044,468 1,002,312 42,156 4.04 86 62 26 72.09 30,762,447 16,140,596 産業労働観光部 48 23 2 47.92 2,184,329 743,153 農林水産部 67 42 0 62.69 16,661,486 441,042 0 0 0 防 災 0 (%) - 34,567,385 87.63 14,621,851 47.53 1,441,176 65.98 16,220,444 97.35 農 地 部 0 0 0 - 土 木 部 46 3 2 6.52 1,945,012 1,781,493 163,519 8.41 交通政策局 15 4 2 26.67 7,733,966 6,188,952 1,545,014 19.98 各種委員会等 0 0 0 - 0 0 0 村上地域振興局 14 8 0 57.14 781,311 19,150 762,161 97.55 新発田地域振興局 18 15 0 83.33 970,944 30,000 940,944 96.91 新潟地域振興局 79 64 0 81.01 5,055,123 763,877 三条地域振興局 16 14 0 87.50 117,320 3,000 長岡地域振興局 34 27 0 79.41 3,341,562 52,933 魚沼地域振興局 14 8 0 57.14 306,454 28,350 南魚沼地域振興局 12 9 0 75.00 1,551,078 15,000 十日町地域振興局 12 10 0 83.33 809,144 9,000 柏崎地域振興局 14 14 0 100.00 126,193 0 上越地域振興局 35 27 0 77.14 2,264,956 38,365 2,226,591 98.31 糸魚川地域振興局 12 9 0 75.00 1,161,320 10,500 1,150,820 99.10 佐渡地域振興局 23 17 0 73.91 115,087 24,000 91,087 79.15 庁 890 681 2 76.52 52,588,716 11,440,097 41,148,619 78.25 警 察 本 部 310 231 0 74.52 47,775,364 1,885,064 45,890,300 96.05 1,859 1,339 34 72.03 222,334,115 50,011,181 172,322,934 教 合 育 計 ア 4,291,246 - - 84.89 114,320 97.44 3,288,629 98.42 278,104 90.75 1,536,078 99.03 800,144 98.89 126,193 100.00 77.51 目的外使用許可件数は、全体で1,859件であり、そのうち自動販売機(425件)、 電柱類(318件)、各種団体の執務室等(279件)及び公衆電話(129件)の4つの対 - 5 - 象物件に係る目的外使用許可で許可件数全体の約6割を占めている。特に自動 販売機に係る目的外使用許可件数は全体の約2割を占めるものとなっている。 イ 使用料については、目的外使用許可件数の約7割の1,339件において減免が 行われている。使用料の金額でみると172,322,934円が減免されており、条例 等による使用料算出額の約8割の額となっている。 ウ 減免件数のうち、減額(一部使用料は徴収しているもの)の件数は34件であ り、全減免件数の約3パーセントに過ぎない。減免に該当する事例については、 その多くが全額免除となっている。 エ 書記実地調査の結果、次のような事例が見受けられた。 ① 更新許可の際に、許可理由が新潟県公有財産事務取扱規則第29条の7(教 育財産においては新潟県教育財産事務取扱規則第25条)の各号のいずれに該 当するか、起案関係書類等に明示していない所属が散見された。 ② 更新許可の際に、使用料の減免理由が減免の取扱い基準の各号のいずれに 該当するか、起案関係書類等に明示していない所属が散見された。 ③ 使用料の減免理由に該当しないにもかかわらず、減免を行っている所属が 散見された。 例) 国が設置する測量に係る基準点に対する使用料について、減免の取 扱い基準の第1の1(地方公共団体において、公用又は公共用に使用 するとき。)の基準に基づいて免除しているが、当該規定は、国を対 象としていない。 ④ 特段の事情がないにもかかわらず、同様な物件に対する許可理由や使用料 減免理由が所属によって異なっている事例が散見された。 例) 郵便ポストについての許可理由及び使用料の減免理由に、次のよう なケースがみられた。 所属 許可理由 使用料減免理由 A 規則第29条の7第1号 基準第1-1 B 規則第29条の7第2号 基準第1-2 C 規則第29条の7第4号 基準第1-1 ※ 規則=新潟県公有財産事務取扱規則 第29条の7第1号 (国、他の地方公共団体その他公共団体において、公 用又は公共用に供するため特に必要と認められると き。) 第29条の7第2号 (県の事務又は事業を推進することに効果があると認 められるとき。) - 6 - 第29条の7第4号 (水道事業、電気事業その他の公益事業のため使用す ることがやむを得ないと認められるとき。) ※ 基準=行政財産使用料の減免の取扱い基準について 第1-1 → 使用料免除 (地方公共団体において、公用又は公共用に使用する とき。) 第1-2 → 使用料免除 (県の事務又は事業を推進することに効果があると認 められるとき。) ⑤ 許可期間については、新潟県公有財産事務取扱規則第30条(教育財産にお いては新潟県教育財産事務取扱規則第26条)の規定により原則1年以内、一 定の要件を満たす場合においては5年以内とされているが、10年間の許可期 間としているものや終期を定めていないものが一部にみられた。 5 行政財産の貸付け等 行政財産は、行政目的を達成するために必要な財産であるため、貸付け、交換、売 払い等が禁止されているが、従来から、例外的に一定の場合には、その用途又は目的 を妨げない限度において、その貸付け等ができることとされている。 平成18年には、市町村合併や行政改革あるいは少子化の進展などから、庁舎や学校 等の空きスペースの有効活用等が可能となるよう、新たに一定の場合に建物の一部を 貸し付けたり、土地の貸付けができる一定の場合の拡大などを内容とした地方自治法 の改正が行われ、貸付け等の範囲が拡大されている。 なお、行政財産の貸付け等に係る事務は、新潟県公有財産事務取扱規則(教育財産 においては新潟県教育財産事務取扱規則)等により、各課及び各地域機関の長等並び に学校その他の教育機関の長が分掌することとなっている。 (1) 貸付け等の取扱い ア 貸付け等が認められる範囲 貸付けは、地方自治法第238条の4第2項第1号から第4号までのいずれかに 該当する場合に認められており、当該規定は、次のとおりである。 ① 当該普通地方公共団体以外の者が行政財産である土地の上に政令で定める 堅固な建物その他の土地に定着する工作物であって当該行政財産である土地 の共用の目的を効果的に達成することに資すると認められるものを所有し、 又は所有しようとする場合において、その者に当該土地を貸し付けるとき。 ② 普通地方公共団体が国、他の地方公共団体又は政令で定める法人と行政財 産である土地の上に一棟の建物を区分して所有するためその者に当該土地を 貸し付ける場合 ③ 普通地方公共団体が行政財産である土地及びその隣接地の上に当該普通地 - 7 - 方公共団体以外の者と一棟の建物を区分して所有するためその者に当該土地 を貸し付ける場合 ④ 行政財産のうち庁舎その他の建物及びその附帯施設並びにこれらの敷地に ついてその床面積又は敷地に余裕がある場合として政令で定める場合におい て、当該普通地方公共団体以外の者に当該余裕のある部分を貸し付けるとき。 また、地上権及び地役権の設定は、同じく地方自治法第238条の4第2項第5 号及び第6号のいずれかに該当する場合に認められており、当該規定は、次の とおりである。 ⑤ 行政財産である土地を国、他の地方公共団体又は政令で定める法人の経営 する鉄道、道路その他政令で定める施設の用に供する場合において、その者 のために当該土地に地上権を設定するとき。 ⑥ 行政財産である土地を国、他の地方公共団体又は政令で定める法人の使用 する電線路その他政令で定める施設の用に供する場合において、その者のた めに当該土地に地役権を設定するとき。 イ 貸付料等の減免 行政財産の貸付料等の減免については、新潟県財産の交換、譲与、無償貸付 等に関する条例第5条により普通財産に係る規定が準用され、「普通財産の譲 与、無償貸付等の取扱い基準について」において、次のとおり定められている。 ① 国又は他の地方公共団体その他公共団体又は公共的団体において、公用若 しくは公共用又は公益事業の用に供するときは、当該財産の貸付料の20パー セント相当額の範囲内において減額して貸付けることができる。 ② 地震、火災、水害等の災害により、普通財産の貸付けを受けた者が、当該 財産を使用の目的に供し難いと認めるときは、その期間について無償で貸付 けることができる。 ③ 前記に定めた基準により難い特殊な事情のあるものの取扱いについては、 管財課長を経て総務管理部長に協議するものとする。 (2) 6 貸付け等の状況 平成21年度末現在における貸付けの事例は3件のみであり、うち2件は障害福 祉施設についてPFI方式による整備を実施するに当たり、運営する法人に対し て施設の敷地として貸し付けている事例であり、他の1件は高等学校の敷地を工 事用仮設道路の敷地として市に貸し付けている事例である。 行政財産における活用されていないスペースの状況と管理体制 活用されていないスペースについては、計7所属から次のようなケースが報告され た。 - 8 - 所 属 A 行政財産 数 量 140.15㎡ 地域振興局庁舎 代替施設の建設等により、入居者の 児居住棟、プー 7,424.95㎡ ル、職員住宅 等) C 組織再編による地域機関の統合で庁 舎内に空きスペースが生じている。 福祉施設(重度 B 現在の状況 居住棟や職員宿舎等が使用されなくな り、経年変化のため荒廃した状態で存在 している。 福祉施設(看護 239.64㎡ 師宿舎) 入居希望者のニーズに合わない等の ため、全室入居者がいない状況である。 教科内容の変更により、かつて使用し D 職業訓練施設 54.43㎡ ていた建物が利用されない状態のまま残 っている。 業務内容の変更により、かつて使用し E 試験研究施設 613.67㎡ ていた建物が利用されない状態のまま残 っている。 F G 高 等学 校( プー 1,454.85㎡ ル) なくなったまま残っている。 高 等 学 校 ( テ ニ 3,866.36㎡の一 スコート) カリキュラムの変更等により、利用され 部 カリキュラムの変更等により、利用され なくなったまま残っている。 各所属での行政財産の目的外使用許可や貸付け等の状況については、公有財産管理 システムにより、教育委員会が所管するものについては教育庁財務課で、公安委員会 が所管するものについては警察本部装備施設課で、その他知事部局等が所管するもの については管財課で把握できる仕組みとなっているが、各所属において活用されてい ない行政財産の状況については、これらの3課において特段の把握は行われていない。 7 歳入確保に向けた新たな取組 当県では、歳入確保に向けた新たな取組として、県庁本庁舎内の壁面等を企業広告 用のスペースとして目的外使用許可を行っている。 平成21年度末現在においては、5法人に対して許可しており、その面積の合計は29. 04㎡、その使用料の合計は1,118,619円となっている。また、許可の理由は、新潟県 公有財産事務取扱規則第29条の7第7号(特に必要があると認めるとき。)となって いる。 第5 1 監査に係る意見 適正な目的外使用許可事務の確保 目的外使用許可の事務については、減免理由に該当しないにもかかわらず減免を行 っている事例や、特段の事情がないにもかかわらず同様な物件に対する許可理由や使 用料減免理由が所属によって異なっている事例、また、規則で定める許可期間を超え - 9 - て許可している事例がみられた。これらの要因としては、事務担当者が、どのような 規定に基づいて許可しているのか、使用料の減免をどのような根拠に基づいて行って いるのか等について、十分理解しないまま事務処理を行っていることが考えられる。 特に更新許可時においては、事務担当者が許可理由や使用料減免に係る根拠規定の確 認を行わず、起案関係書類等にもこれらに係る記載を行っていない事例が散見された。 行政財産の管理に係る条例等を所管する管財課においては、適正な目的外使用許可 事務が確保されるよう、関係課と連携しながら各所属へ指導を行うことが必要と考え られる。 2 使用料の減免基準の整備 使用料の減免については、減免の取扱い基準において、該当要件と減免率について 規定しているが、減免については「できる」規定となっており、減免としない場合の 詳細な基準等は規定されていない。 また、減免の取扱い基準においては、5割減額することができるケースとして「公 共的団体が直接事務又は事業の用に使用するとき」が規定されているが、一方で、免 除することができるケースとして「県の事務又は事業を推進することに効果があると 認められるとき」の規定も設けられているため、県の業務に関連のある各種団体の執 務室等の使用料は後者の規定を適用し、免除するケースがほとんどである。 管財課においては、減免とならない場合や5割減額することができる場合の分かり やすい基準等の作成について検討することが必要と考えられる。 なお、その際には、目的外使用許可を行っているもののうち、件数ベースでは約7 割の減免が、使用料ベースでは約8割の減免が行われていることを踏まえ、使用形態 や社会経済情勢の変化も考慮し、使用料収入の増加の観点からも検討することが望ま れる。 3 貸付制度の特徴を踏まえた運用 行政財産の貸付けについては、平成18年の地方自治法の改正により対象となる財産 の範囲が拡大されたところであるが、当県における貸付事例は3件のみとなっている。 「新潟県公有財産事務取扱規則の施行について」や「新潟県教育財産事務取扱規則の 施行について」に規定されているとおり、当県においては行政財産の貸付けについて は「特例事項」であり、制度の運用に当たっては慎重を期する必要があるとしている ため、運用事例が少数にとどまっているものと考えられる。 しかしながら、行政財産の貸付けは、借地借家法の適用を受ける契約であり、より 長期的かつ安定的な活用が確保されるという特徴を有していることから、財産を有効 に活用する観点からは、この特徴を踏まえたニーズに対応することも必要である。 したがって、貸付制度の範囲の拡大の趣旨に沿った活用が行われるよう、運用通知 の改正など仕組みの整備について検討することが必要と考えられる。 4 活用されていないスペースの管理と活用の促進等 行政財産の活用されていないスペースについては、今回の監査時に7所属から事例 - 10 - が報告されたところであるが、活用されていないと思われるスペースが今回の報告事 例以外にも見受けられるなど、各所属の管理が必ずしも十分ではない状況がみられた。 そもそも、行政財産は、公用又は公共用に供する財産であり、その用途又は目的が 消滅した場合には、普通財産として管理すべきものである。 したがって、活用されていない行政財産については、まずはその行政財産としての 存続の検討が必要であり、その上で、当該行政財産の有効活用を検討することになる。 この有効活用の検討に当たっては、各所属のみに判断を任せるのではなく、担当す る部局等を定めた上で、空きスペースに係る情報を全庁的に把握し、一定の方針を示 した上で進めていくことが必要と考えられる。 なお、行政財産は、本来、行政目的を達成するために必要な財産であり、目的外の 利用については慎重を期するとする姿勢は当然であるが、行政財産の活用により歳入 増加を図っている他の自治体の動きなどを考慮すれば、目的外使用許可や貸付け等に ついて、より活用しやすいものとし、行政財産が有効に活用されるよう、関係諸規定 についての整備を検討することが必要と考えられる。 5 自動販売機の設置に係る取扱いの検討 (1) 当県における自動販売機の設置状況 自動販売機については、今回監査の対象とした360所属のうち、ほぼ半数の177所 属で設置されていた。また、設置台数は、推計で531台(目的外使用許可は面積を 単位として行っていることから、1平方メートルにつき1台として台数に換算し た。)であり、県の庁舎や学校等の教育機関のほとんどで設置されていることが認 められた。 (2) 自動販売機の設置に係る使用料 自動販売機の設置については、目的外使用許可により対応しているところである が、その使用料については、美術館や博物館など公の施設に設置しているものにつ いてはほとんどが徴収されていたが、庁舎や学校等に設置しているものについては、 減免の取扱い基準の第1の4(主として職員その他県の施設を利用する者のための 食堂、売店、その他の福利厚生施設を設置するとき)に該当するものとして免除さ れているものがほとんどである。 (3) 全国の状況 従来、庁舎等への自動販売機の設置については、全国的に、行政財産の目的外使 用許可により行われてきており、使用料についても1台につき年間10,000円から20, 000円程度が一般的であったが、平成19年度に一部の自治体が自動販売機の設置者 の公募を行った結果、使用料収入が大幅に増加した。その後、自動販売機の設置に ついて一般競争入札等を導入する自治体が増加し、社団法人地方行財政調査会が平 成22年9月に行った調査(※1)においては、都道府県レベルにおいて半数以上の自 治体が導入している。また、財団法人地方自治研究機構が平成21年10月に行った調 査(※2)では、一般競争入札等の導入後の収入額の平均が自動販売機1台当たり21. - 11 - 9倍の500,117円にもなるとの報告がなされている。 仮に、この単価を当県に設置されている自動販売機に当てはめると、2億6千万 円ほどの収入増加が見込まれるところである。 なお、自動販売機の設置については、目的外使用許可ではなく貸付け等を利用し ている自治体もみられるところである。 ※1 ※2 自動販売機の設置に係る一般競争入札等の導入状況(都道府県) 導入済み 29 左欄導入済みの内訳 一般競争入札 15 検 討 中 16 総合評価方式 3 予定なし 2 そ の 他 11 価格競争の実施による収入額の変化 (都道府県、市町村合わせて95団体の調査結果) 実施前の収入額の平均=1台当たり 22,855円 実施後の収入額の平均=1台当たり500,117円 → 21.9倍 (4) 自動販売機の設置に係る一般競争入札等の導入の検討 上記のように、当県の自動販売機の設置に係る使用料については、減免の取扱い 基準により免除されているケースがほとんどであるが、全国的には一般競争入札の 実施等により歳入の確保を図っている自治体も増加してきている。 したがって、自動販売機の設置を目的外使用許可により認めるのか、あるいは、 貸付けやその他の方法により認めるのか、その考え方を整理した上で、一般競争入 札を含めた様々な方策を検討することが必要と考えられる。 なお、仮に目的外使用許可により認める場合には、現行の福利厚生目的を理由と した使用料の免除の取扱いが適当か、併せて検討すべきである。 まとめ 今回の監査は、平成18年の地方自治法の改正による行政財産の貸付け等の範囲の拡大な どを背景として、「行政財産が有効に活用されているのか」という観点で実施し、上記の 意見を述べたところである。 行政財産は、その性質上「積極的な活用」という観点から利用が行われてきたものでは ないが、自治体を取り巻く社会経済情勢が厳しさを増す中で、行政財産としての用途や目 的を損なわない範囲において積極的な活用を検討することは、今後益々必要になると思わ れる。 当県では、現在、庁舎壁面等を企業広告用として目的外使用許可を行ったり、公の施設 のネーミングライツスポンサーの募集をするなど、これまでにない新たな取組により財産 の有効活用を図っているが、自動販売機の例をはじめ、他の自治体において行われている 多くの取組の事例を参考にしながら、行政財産をはじめとした財産の有効活用に向けたさ らなる取組を期待するものである。 - 12 -