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資源環境制約への対応が求められる我が国製造業

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資源環境制約への対応が求められる我が国製造業
我が国ものづくり産業が直面する課題と展望
第4節
第2章
資源環境制約への対応が求められる我が国製造業
図 241-2 新興国における原油需要の拡大
第4節
新興国需要を中心として世界的に資源・エネルギー消
費の更なる拡大が見込まれる中で、我が国製造業の原材
料調達環境は変化しており、資源制約を克服するための
取組に進展がみられる。また、地球温暖化等の環境制約
にも変化を与えはじめている。このような資源環境制約
の高まりがもたらす変化は、我が国製造業の強みである
省エネ・省資源性の向上に係る技術や製品の普及に向け
たチャンスである。ここでは、資源環境制約の高まりが
企業経営に与える影響に加え、これに対する我が国製造
業の対応状況を分析するとともに、省エネ・省資源性の
向上に係る技術や製品を普及させるための諸課題を整理
し、資源環境制約の高まりを背景とした我が国製造業の
強みと課題を示す。
資料:BP「BP Statistical Review of World Energy June 2009」
1
資源制約の企業活動への影響及び克服に向
けた取組
(1)資源制約の現状と企業活動への影響
近年の資源価格の上昇は、鉄鋼業や化学工業等の素材
製造業の出荷額に占める原材料比率を上昇させるととも
各種資源の国際市況の近年の推移をみると、新興国
に、これら素材を用いて生産を行う輸送用機器、電気機
需要の増加を背景に需給の新たな均衡点を模索してい
械、一般機械といった、我が国の輸出の大宗を占める産
るようにうかがえる。我が国においても、2004 年の中
業の原材料比率の上昇を招き、収益圧迫要因となる等、
頃からファンダメンタルズに投機が上乗せされたことに
資源制約の顕在化は我が国製造業の生産上の制約として
より、原油及び粗油の輸入価格水準が上昇し、それにあ
広範に波及している(図 241-3)。このような状況下に
わせるように非鉄金属鉱や液化天然ガスなどの輸入価
おいて、我が国製造業各社の多くは、中長期的に「新興
格も上昇傾向で推移した。原油及び粗油等の輸入価格
国市場の拡大」、「資源国の資源保護政策」、「資源をター
は、世界同時不況等の影響により 2008 年夏から一時的
ゲットとした投機活動」により、「資源価格が上昇して
に急落したものの、2009 年に入ると再度上昇傾向に転
いく」又は今後の資源価格の水準は「全く予測がつかな
じたこともあり、1990 年と現時点の輸入価格を比較す
い」としており(図 241-4)、おおむね6割の企業は、
ると2倍以上の価格水準となっている(図 241-1)。そ
更なる資源価格の上昇により大きな経営リスクが生じ
の最大の要因は、中国やインドを含む非経済協力開発機
ると認識している(図 241-5)。また、資源価格の上昇
構(OECD)加盟国の原油消費量が 1990 年と比較して
は自社の国際的な競争力にも大きな影響を与えると認識
2008 年には 40%以上増加し、世界全体の消費量の約
されており、特に、最終製品製造業と素材製造業の両者
45%を占めるに至っているように、新興国市場の需要
と製品販売価格の交渉をしなければならない部品製造業
拡大にある(図 241-2)。
は、国際的な競争力が低下するととらえる比率が高い
図 241-1 日本における各種原材料輸入価格の変動
(図 241-6)。国際的な競争力を低下させる要因として
は、海外競合企業と比較した原材料となる資源の調達力
の弱さを挙げる企業が最も高い割合を占めている(図
241-7)。
このように、中長期的に新興国市場の需要拡大は続く
とみられる一方、資源産出国の情勢不安と供給リスクも
懸念される中で、更なる資源価格の上昇は我が国製造業
の国際的な競争力の低下要因となりうることから、今後
の資源価格の変動には引き続き注視が必要である。
備考:90 年 1 月= 1 として指数化。
資料:財務省「貿易統計」
137
資源環境制約への対応が求められる我が国製造業
の高まりは、我が国製造業各社の経営戦略や市場ニーズ
図 241-3 出荷額に占める原材料比率(主要業種)
製造業計
90-94 年
95-99 年
00-04 年
05-08 年
57.4%
56.1%
57.0%
61.9%
鉄鋼業
59.3%
57.6%
58.3%
67.0%
化学工業
45.4%
43.8%
45.6%
58.1%
一般機械器具製造業
56.5%
56.1%
56.3%
59.5%
電気機械器具製造業
59.8%
61.3%
61.8%
62.7%
輸送用機械器具製造業
70.4%
67.7%
68.8%
70.3%
備考:数値は各期間の対出荷額原材料比率の平均値。
資料:経済産業省「工業統計調査」
図 241-4 中長期的(今後5年程度)な
想定資源価格と価格上昇要因
図 241-5 資源価格上昇が企業経営に
与えるリスクに対する認識
〔想定資源価格〕
〔資源価格の上昇要因〕
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)(n=3,402)
備考:構成比の各欄の数値の合計は、四捨五入の関係で 100 にならない場合がある。
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)
図 241-6 資源価格上昇による
国際的な競争力の変化
備考:構成比の各欄の数値の合計は、四捨五入の関係で 100 にならない場合がある。
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)
138
図 241-7 資源価格上昇による
国際競争力の低下要因
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)
我が国ものづくり産業が直面する課題と展望
(2)資源制約の克服に向けた取組
第2章
ていなかった試みが企業規模を問わず進みつつある(図
241-10)。また、資源調達に係る契約価格は、資源価格
①原材料調達環境の変化への対応
略に対する認識に変化を与えており、世界同時不況の影
対して市場価格の変動を反映できる仕組みを導入する動
響で業況が低迷する足下においても、製品製造に係る原
きが見受けられる(図 241-11)。このような資源調達
材料を安定的に調達するための権益獲得が商社や素材製
戦略の導入又は見直しにより、約7割の企業で1~5%
造業を中心として進められている(図 241-8)。また、
程度、約2割の企業で6%以上のコスト削減効果がある
我が国製造業各社は、資源制約の克服に向けて、コスト
としている(図 241-12)。 一方、 資源調達戦略を導入
削減策の導入ばかりではなく、資源調達戦略の見直しや
又は見直しをしていない企業は、「 これまでの取引先と
資源制約の克服に向けた技術開発体制の強化を推進し
の関係により原材料の調達先の変更が困難 」 ということ
ている(図 241-9)。例えば、近年の大幅な資源価格の
をその理由として挙げている(図 241-13)。
変動を踏まえ、約7割の企業が資源調達戦略の具体策と
今後の資源価格の水準には不確実性が高いものの、我
して調達先の選別・絞り込みを推進しており、原材料調
が国製造業のコスト構造を見直し、国際的な競争力を維
達に係る社内体制を強化するとともに、コスト削減と収
持・強化していくためには、調達先の見直し、調達方法
益の確保を目的とした資源調達に係る契約条件の変更や
の多様化、企業間連携による共同調達の推進等の調達力
原材料調達方法の多様化等を進める等、平時には実施し
を強化する取組の推進が求められる。
図 241-8 日本企業における権益獲得状況
年
2008 年
2009 年
2010 年
月
国
2
チリ
4
チリ
6
南アフリカ
6
豪州
7
豪州
7
8
豪州
中国
10
ブラジル
11
チリ
1
ベトナム
2
インドネシア
8
カザフスタン
9
チリ
10
ラオス
11
ペルー
12
フィリピン
12
モンゴル
1
アルゼンチン
主要対象品目
概要
日系出資企業等
(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が住(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構
銅・金等
友金属鉱山(株)に探鉱権益を譲渡
(JOGMEC)、住友金属鉱山(株)
英国企業が間接的に保有する現地鉱山企業の 30%の権益
銅
丸紅(株)
を獲得
鉄鉱石・マンガン等 現地企業の株式 20% を追加取得
住友商事(株)
現地企業の協力を得て、低品位銅精鉱から非鉄金属を回収
銅
日鉱金属(株)
する湿式精錬技術の実証化試験を実施
カナダのウラン資源大手企業と共同でウラン鉱山の権益を
ウラン
三菱商事(株)
獲得
銅・レアアース等 現地企業とメーベル・クリーク地域の共同探鉱契約を締結 (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)
銅荒引線
合弁子会社による銅荒引線の製造設備の建設に着手
日鉱金属(株)
JFE スチール(株)、新日本製鐵(株)、住友金
日韓企業連合で、現地鉄鋼石生産・販売会社の株式 40%
鉄鋼石
属工業(株)、
(株)神戸製鋼所、日新製鋼(株)、
を取得
伊藤忠商事(株)、POSCO
銅
2010 年9月までの独占探鉱権取得
伊藤忠商事(株)
日越石炭・鉱物資源政策対話の際に、現地企業と鉱山の共
レアアース
双日(株)、豊通(株)
同開発に合意
ニッケル
ニッケル鉱山の開発権益を獲得
三菱商事(株)
現地企業とウラン鉱石残渣からレアアースを回収する事業
レアアース
住友商事(株)
に合意
権益取得以降、鉱量確認探鉱、選鉱試験等を終え、プロジェ 日鉱金属(株)、三井金属鉱業(株)、パンパシ
銅・モリブデン
クト・ファイナンスによる資金調達の活動等を本格的に開始 フィック・カッパー(株)
銅
ラオス政府から銅鉱床の探鉱権を取得
双日(株)、日鉄鉱業(株)
日鉱金属(株)、三井金属鉱業(株)、パンパシ
銅
銅鉱床開発プロジェクトがフィージビリティスタディへ移行
フィック・カッパー(株)
ニッケル
現地企業の株式 8.5%を追加取得
住友金属鉱山(株)
フランス企業が現地で進めるウラン資源探鉱開発プロジェ
ウラン
三菱商事(株)
クトに参画
豪州企業とともにリチウム資源開発のための事業化調査に
リチウム
豊田通商(株)
関する覚書を締結
備考:年月はプレスリリース等年月。
資料:各社プレス発表資料等より経済産業省作成(10 年3月)
139
資源環境制約への対応が求められる我が国製造業
の変動を即時反映できるよう契約時に取り決めた価格に
第4節
資源制約の高まりは、我が国製造業各社の資源調達戦
図 241-9 資源制約の克服に向けて取り組む方策
備考:中小企業は、資本金3億円以下の企業。大企業は中小企業以外の企業。
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)
図 241-10 資源調達戦略の具体策
備考:中小企業は、資本金3億円以下の企業。大企業は中小企業以外の企業。
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)
図 241-11 資源調達時の契約価格
図 241-12 資源調達費用削減効果
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)(n=201)
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)(n=780)
図 241-13 資源調達戦略の導入(見直し)を実施しない理由
備考:①中小企業は、資本金3億円以下の企業。大企業は中小企業以外の企業。
②構成比の各欄の数値の合計は、四捨五入の関係で 100 にならない場合がある。
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)
140
我が国ものづくり産業が直面する課題と展望
第2章
ものづくり企業による調達戦略の見直し
資源制約の克服に向けた具体的な取組として、ものづくり企業では、「調達先の選別・絞込みの推進」、「原
第4節
材料調達に係る社内体制の強化」、「企業連携による共同調達の推進」等を進め、自社のコスト構造を見直し、
競争力を維持・強化する試みを進めている。例えば、ソニー(株)では、2009 年4月の機構改革において「調
達本部」を新設し、従来、調達機能を有していたプロキュアメントセンター及び各事業本部の資材調達機能を
資源環境制約への対応が求められる我が国製造業
移管し、調達に係る組織再編を実施した。同社は、調達機能の一元化による調達基盤の整備や調達先の選別・
絞込み等により、2009 年度以降の資材調達コストを 2008 年度との比較において約 20%(約 5,000 億円)
削減することを目指している。
また、(株)デンソーでは、2009 年1月に「調達グループ」を新設し、コーポレートセンター所属の調達
部及び各事業グループ所属の購買部を集約した。同社は、この調達組織の一元化により、購買担当者の調達に
関する専門性を高め、調達機能の総合力を強化することを目指している。
一方、ダイキン工業(株)では、中国ルームエアコン大手であり、インバータルームエアコンの共同開発な
どを行っている珠海格力電器有限公司(中国)と、エアコンの原材料・部品の共同調達に係る提携を図り、新
興国市場におけるシェア拡大を念頭に置いたコスト競争力の強化を推進している。
サウジアラビアへの化学メーカーの進出拡大
石油化学製品の主な原料として、日本では、原油を精製して得られるナフサが用いられているが、近年、中
東ではエタンを主原料とする石油化学製品製造設備の新増設計画が相次いで進められている。エタンは原油産
出時の副産物であり、ナフサと比べ高いコスト競争力を有する点が特徴である。住友化学(株)(以下「住友
化学」という。)は、世界最大の石油会社であるサウジ・アラムコとの合弁会社であるペトロラービグを設立し、
同社にサウジ・アラムコが所有していた製油所を移管し高度化を図るとともに、石油化学製品製造設備を新設
するという、世界最大級の石油精製・石油化学統合コンビナート事業(ラービグ計画)をサウジアラビアにお
いて推進している。原料面で優位性のある中東に生産拠点を確保することで、住友化学は、経済成長著しい中
国や地理的に近接する欧州市場で事業拡大を図る考えである。昨年、住友化学は、ラービグ計画において新設
した設備を本格稼動させ、更に現在は、サウジ・アラムコとともにラービグ計画第2期計画の FS 調査を進め
ている。この計画では、新たに確保する 3,000 万立方フィート/日のエタンと約 300 万トン/年のナフサを
主原料に、エタンクラッカーの増設や芳香族プラントの新設を通じた高付加価値な石油化学製品の生産を予定
しており、ペトロラービグの一段の発展を目指している。
また、三菱レイヨン(株)は、サウジアラビア基礎産業公社(SABIC)と合弁会社を設立し、2013 年を目
標に生産量が世界トップシェアであるメタクリル酸メチルモノマー(MMA モノマー ※1)等の生産をサウジア
ラビアにおいて開始する。SABIC との提携は同社のグローバル戦略の1つであり、現地の安価な原料を用い
た圧倒的なコスト競争力を有する生産拠点を構築することなどを目
【 (住友化学(株)ラービグ計画) 】
(英国)を約 16 億米国ドルで買収・連結子会社化するなど、同社の
的としている。なお、同社は、大手 MMA メーカーであるルーサイト
図 石油化学コンビナートの外観
コア事業である MMA 系事業のグローバル展開を加速させることによ
り、世界シェアの拡大を目指している。サウジアラビアでの生産計画
では、ルーサイトが保有する製法である「新エチレン法」により、年
間 25 万トン程度の MMA モノマーを製造するとともに、既存技術を
用いて年間3万トン程度のアクリル樹脂であるメタクリル酸メチルポ
リマー(PMMA)の生産を予定している。
このように、資源国へ生産拠点を立地し、安価な原料を用いて高付
加価値製品の製造・販売を実現することにより、収益力と国際競争力
の向上を図る動きが我が国の化学産業において活発化している。
資料:住友化学(株)資料
※1 「MMA モノマー(Methyl Methacrylate Monomer)」は、水族館の水槽、自動車のテールランプ、携帯電話の表示窓、
液晶ディスプレイ(LCD)用バックライトの導光板など、様々な用途に用いられているアクリル樹脂の原料である。
141
(3)資源制約の克服に向けた取組
②資源代替材料の開発とリサイクル材の活用
められている。例えば、レアメタルの代替材料開発につ
いては、2006 年に閣議決定された「第3期科学技術基
資源国における資源ナショナリズムの台頭や輸出抑制
本計画」を踏まえ、物質・材料の機能・特性の発現機構
等の資源の国家管理強化による政策的な供給制限、新興
を明らかにすること等で、レアメタルなどの希少元素や
国需要の増加による世界規模での需要拡大等により、
有害元素を使用しない代替材料及び使用量低減技術を
中長期的な安定供給が困難になることが想定される資源
開発することを目的に、経済産業省においては「希少金
について、代替材料の重要性認識が高まりつつある(図
属代替材料開発プロジェクト」、文部科学省においては
241-14)。現時点では、自社製品の原材料について 「 代
「元素戦略プロジェクト」が進められている。希少金属
替材料を利用していない 」、「代替材料はない 」、「代替
代替材料開発プロジェクトでは、当初の研究対象鉱種で
材料の有無を特に把握していない」という企業が多く、
あった透明電極向けインジウム、希土類磁石向けジスプ
代替材料の利用は限定的ではあるが、代替材料が省エ
ロシウム、超硬工具向けタングステンに加え、2009 年
ネ・省資源に資するということを目的とした利用が一部
から排ガス浄化向け白金族、精密研磨向けセリウム、蛍
の企業において始まりつつある(図 241-15・16)。現在、
光体向けテルビウム及びユーロピウムの4鉱種を開発対
普及が望まれる代替材料としては、二酸化炭素(CO2)
象鉱種として追加するなど研究開発領域を拡大させてい
排出量削減に寄与するバイオプラスチックなどが部品製
る。一方、文部科学省の元素戦略プロジェクトでは、
造業及び最終製品製造業で高い割合を示しており、価格
対象鉱種を限定せず、抜本的な代替や大幅な使用量削
が上昇傾向にあるレアメタルの代替材料に関しては、製
減を目指した基礎的な研究開発を進めている。また、リ
品を作るうえで不可欠な原材料となっていることから部
サイクル材料の開発・利用も活発化しており、家電、
品製造業で高い割合を示している。また、金属材料に比
OA 機器、自動車において使用されるプラスチックに関
べて軽量かつ高強度という特色を有している炭素繊維に
しては、再生プラスチックの純度の維持、プラスチック
ついても、コストや成形加工方法等の解決すべき課題は
の再生工程の簡素化、再生プラスチックの用途拡大等を
あるものの、今後の用途拡大を見込んでニーズが高まり
目的として、民間企業によるリサイクル材料に関する特
つつある(図 241-17)。
許の使用許諾や無償開放などが進められている状況にあ
このような中、産官学による代替材料開発が着々と進
図 241-14 代替材料の重要性認識
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)
142
る。
図 241-15 代替材料の利用状況
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)
我が国ものづくり産業が直面する課題と展望
図 241-16 代替材料を利用する理由
第2章
図 241-17 普及が望まれる代替材料
第4節
資源環境制約への対応が求められる我が国製造業
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)
資料:経済産業省調べ(09 年 12 月)
化石燃料利用抑制に寄与するバイオプラスチックの代替利用
自動車メーカーや自動車部品メーカー等による素材転換の動きが進みつつある。「車室空間のオール植物
化」をテーマに共同開発を続けてきたトヨタ紡織(株)、トヨタ自動車(株)、東レ(株)は、表皮材に植物由
来ポリエステルを、シートクッションパッドにひまし油由来ポリオールを、ドアトリムオーナメント基材にケ
ナフ繊維及びポリ乳酸を活用することで、室内表面積の約 60%にバイオプラスチックを導入した新型車を販
売している。ひまし油由来ポリオールやケナフ等の活用は、他の自動車メーカーの製品にも広まってきてお
り、バイオプラスチックは既に自動車部品に求められる機能を果たす素材としての位置付けを確立しつつあ
る。なお、トヨタ紡織(株)では、中長期的に自動車内装材料の 20%(重量ベース)の植物材料化を目指し
ている。このように、資源制約下における自動車部品における素材転換を目的として、化石燃料利用抑制に寄
与するバイオプラスチックの導入が加速している。
【図 トヨタ自動車新型車「SAI」におけるエコプラスチック ※1 採用部位】
資料:トヨタ紡織(株)資料
※1 「エコプラスチック」は、自動車用に開発された、一般的なバイオプラスチックに比べ耐熱性、耐衝撃性などを向上させた植物由来(植物を原料とする)成分を含むプラスチッ
クの総称を指す。
143
都市油田の有効利用に資する PET 樹脂のリサイクル
都市部で大量に発生する廃プラスチックの回収やリサイクルを通じて、バージン原料の利用抑制を図る「都
市油田」という考え方が広まりつつある。そのうち、PET ボトルは単一素材で回収も可能なため、その有効
利用に向けた期待が高い。
PET ボトルやオレフィン系の樹脂などの再生加工・販売を行う協栄産業(株)は、回収 PET ボトルからバー
ジン原料に匹敵する品質の PET 樹脂(以下「再生ペレット」という。)を製造しており、その再生ペレットは、
一般的な用途である白衣やユニフォーム、梱包資材ばかりではなく、自動車フロアマット、コピー機のトナー
ボトル等にも採用されている。また、同社は、再生ペレットの活用による環境負荷低減効果について、原油か
ら PET 樹脂を製造した場合と、回収 PET ボトルから再生ペレットを製造した場合の CO2 排出量の LCA 分析
を実施している。その結果、PET 樹脂1kg を原油から製造した場合には約 1.577kg の CO2 が排出されるのに
対し、回収 PET ボトルから製造した場合では
【図 再生 PET 樹脂の CO2 排出量】
0.583kg と、約 63%の CO2 排出削減効果があ
るとしている。さらに、同社は、中国やインド
における風力発電プロジェクトから、再生ペ
レット製造時の CO2 排出量に相当する 5,000
ト ン 分 の 排 出 権(CER) を 活 用 し、 カ ー ボ ン
ニュートラル樹脂として販促を行うことで、環
境配慮型製品へのシフトを進める企業等を対
象として新たな需要を獲得している。
このような PET 樹脂の有効利用は、枯渇性
天然資源の利用抑制と CO2 排出抑制を両立す
る取組であり、リサイクル事業の主目的が従来
の廃棄物対策から資源環境制約対応へ転換し
ている事例として位置付けることができる。
資料:協栄産業(株)資料
(4)資源制約の克服に向けた取組
ら極めて重要である(図 241-18)。 特に、 普及が期待
される次世代自動車用の高性能モーターや蓄電池、太陽
③レアメタルの確保に向けた動き
レアメタル(希少金属)は、液晶テレビや携帯電話等
光パネル等の新エネルギー分野、省エネルギー分野の需
の IT 関連製品や次世代自動車をはじめとする高付加価
要拡大が見込まれており、我が国の産業競争力の強化を
値・高機能製品の製造に必須の素材であり、その安定供
支える製品に使用されるレアメタルの安定供給確保の重
給は我が国製造業の国際競争力を維持・強化する観点か
要性が高まっている。
図 241-18 主なレアメタルの使用例
〔主なレアメタルの使用例〕
〔携帯電話に使用される主なレアメタル〕
144
資料:経済産業省作成
我が国ものづくり産業が直面する課題と展望
第2章
品目について、輸出数量制限の強化や輸出税の引き上げ
レアメタルの消費が世界規模で拡大したことにより、
といった輸出抑制策を実施している(図 241-21)。こ
国際需給が逼迫し、多くのレアメタル価格は上昇してい
れらの政策は、今後、需給バランスに大きな影響を及ぼ
る。我が国におけるレアメタル需要規模も拡大傾向に
す可能性があり、注視が必要である。
このように、レアメタルは希少性や偏在性が高く、
代半ばから急増した。2008 年以降は、世界同時不況に
資源国における資源保護政策の影響により、レアメタル
よる業況の低迷も加わり、2006 年をピークにレアアー
を取り巻く環境は不安定な要素が多い。現時点において
ス輸入量は減少傾向にあるものの、2009 年におけるレ
も、レアメタルを利用する企業のうちの半数程度の企
アアース輸入量は 1990 年の4倍程度の水準となって
業は、レアメタルの入手が困難になりつつあるとしてお
いる(図 241-19)。レアアースの世界最大の生産国は
り、将来の国際的な需給逼迫や供給障害が発生する可能
中国であり、その世界シェアは9割を超えている(図
性も懸念されている(図 241-22)。
241-20)。近年、中国は、レアアースを含む多くの資源
図 241-19 金属系原材料の輸入量推移
図 241-20 レアメタルの偏在性 (2009 年の鉱物生産量のシェア)
レア・アース
アンチモン
タングステン
(注)
インジウム
バリウム
ビスマス
備考:90 年= 1 として指数化。
資料:財務省「貿易統計」
第1位
第2位
(単位:トン,%)
第3位
3 カ国合計
中国
インド
96.8%
2.2%
ブラジル
0.5%
中国
ボリビア
南アフリカ / ロシア
90.9%
2.4%
各 1.6%
中国
ロシア
カナダ
81.0%
4.1%
3.4%
中国
韓国
日本
50.0%
14.2%
10.0%
中国
インド
アメリカ
54.5%
14.5%
6.9%
中国
メキシコ
ペルー
61.6%
16.4%
13.2%
99.5%
94.9%
88.6%
74.2%
76.0%
91.2%
備考:(注)地金ベース
資料:U.S. Geological Survey「Mineral Commodity Summaries 2010」
図 241-21 中国の鉱物資源輸出規制策
【輸出数量制限の強化】
-輸出許可証の発給により、輸出可能な者、輸出可能な数量をコント
ロール。
- HS コードベースで、400 品目以上の品目に数量規制を含む輸出許
可証管理を実施。
-対象品目の輸出数量枠は毎年減少。
レアアース(t)
タングステン(t)
アンチモン(t)
モリブデン(t)
インジウム(t)
(数量は概数)
2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年
49,000 45,000 43,500 34,000 31,310
16,300 15,800 15,400 14,900 14,600
65,700 63,700 61,800 59,900 58,700
-
-
N.A. 26,300 25,500
-
-
N.A.
240
233
【輸出税の導入】
- 2006 年から輸出税の課税品目を大幅に拡充。その後、4度にわた
り引き上げ。
-多くのレアメタルについて、5-25% の税率を適用。
ジスプロシウム金属
ジスプロシウム酸化物
06 年 11 月
0%
0%
07 年 6 月
10%
10%
08 年 11 月
25%
25%
09 年 7 月
25%
25%
※各元素代表品目について記載。
※モリブデン、インジウムは 07 年 6 月から対象品目に追加。
【その他】
○増値税の還付撤廃
増値税は付加価値税の一種で、通常輸出の場合は還付。2004 年 1 月以降、還付率引き下げ。(輸出税引き上げと同様の効果)
○海外からの委託製錬の禁止
○外資企業による一部鉱種の採掘を禁止(レアアース、タングステン、アンチモン、モリブデン等)
資料:各種資料を基に経済産業省作成 145
資源環境制約への対応が求められる我が国製造業
あり、特に、レアアース(希土類)の輸入量は 1990 年
第4節
近年、中国をはじめとする新興国の需要拡大を背景に
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