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放射線壊死が疑われ 治療に難渋した転移性脳腫瘍症例

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放射線壊死が疑われ 治療に難渋した転移性脳腫瘍症例
放射線壊死が疑われ
治療に難渋した転移性脳腫瘍症例
の検討
CyberKnife 2000
岡山旭東病院
脳神経外科
津野 和幸
1
疾患別症例数
頭蓋外
頭蓋咽頭腫(20)
下垂体腺腫(30
)
下垂体腺腫(30)
悪性リンパ腫 (40)
動静脈奇形・動静脈瘻
神経鞘腫
その他(52
)
その他(52)
176
101
転移性脳腫瘍
108
1155
150
髄膜腫
155
転移性骨腫瘍 13
グリオーマ
サイバーナイフ治療2000症例の疾患別内訳です。
転移性脳腫瘍が過半数を占めています。
2
原発巣別症例数
卵巣癌 10 膀胱癌 10
肝癌 15
腎癌 19
胃癌 27
食道癌 27
大腸癌 118
(10%)
乳癌145
(12%)
その他 75
肺癌
722
(62%)
転移性腫瘍(骨腫瘍も含める)1168例の原発巣別集計です。
肺癌62%、乳癌12%、大腸癌10%となっています。
3
転移性脳腫瘍に対する
定位放射線治療の効果
・縮小・消失
・不変
・増大
:70%
:20%
:10%
転移性脳腫瘍に対する定位放射線治療の効果は、おおよそ縮小・消失70%、不変2
0%、増大10%と報告されています。
4
治療の難しい症例
ƒ
大きい腫瘍:分割照射
ƒ 手術(腫瘍摘出、のう胞ドレナージ)併用
ƒ 局所放射線治療?全脳照射?経過観察?
ƒ
ƒ
ƒ
ƒ
Eloquentな部位
多発症例:局所?全脳?
髄液播種(癌性髄膜炎)・・・全脳照射?
同じ部位の再発・再増大
ƒ 放射線壊死との鑑別、再治療?手術?
▪ 検査方法:MRI, MRS, Tl-SPECT, PET(FDG,Met)
perfusion CT・MRI
サイバーナイフ治療において、治療が難しい症例です。
治療後、同じ部位の再発・再増大の症例が、放射線壊死との鑑別で検討を要します。
5
転移性脳腫瘍 1155例
複数回治療症例 202例
治療回数
8回
7回
6回
5回
4回
3回
2回
1回
1例
1例
3例
4例
10例
33例
150例
663例
202例
のべ 492回治療
転移性脳腫瘍症例で、複数回治療を要した症例は、202例でした。
そのうちの、壊死との鑑別を要し、手術を行った代表例3例を提示します。
6
症例 1 49歳 女性
原発巣:卵巣癌
46歳 卵巣癌で手術。
転移性肺腫瘍で開胸術を受ける。
49歳 左手の脱力あり、頭部MRI施行され、多発性脳腫瘍
を指摘され、サイバーナイフ治療目的で紹介となる。
サイバーナイフ治療
右前頭葉、右頭頂葉、右後頭葉の3病巣に対し、
辺縁線量 22Gy(外照射:58.7Gy相当)で治療。
症例1の病歴です。
7
右後頭葉
右前頭葉
2007/10/25
右頭頂葉
第1回サイバーナイフ治療
各病巣 辺縁線量22Gyで治療
右前頭葉、右頭頂葉、右後頭葉の各病巣に対し、辺縁線量22Gy1回照射で治療しま
した。
8
2007/10/25
治療前
2008/1/31
T2*
Multi-voxel MRS
治療3か月後に、右前頭葉腫瘍の増大、神経症状の悪化を認め、multi-voxel MRSを
施行しましたが、再発と壊死の鑑別ができませんでした。
9
Functional MRI + tractography
Tumor
Tumor
病理組織
壊死巣内に腫瘍細胞の
乳頭状増生が散見される.
Functional MRI、tractographyを行い、ナビゲーション下に腫瘍摘出したところ、壊死
巣内に腫瘍細胞の増生が認められました。
10
2008/2/16
術後第2回
サイバーナイフ治療
辺縁線量 24Gy/2分割
外照射 44Gy相当
右後頭葉
右頭頂葉
病巣は
辺縁線量
20Gyで
再治療
摘出腔および残りの2病巣に対し、2回目のサイバーナイフ治療を行いました。
11
2008/3/14
2008/4/16
第3回サイバーナイフ治療
辺縁線量 20Gy(外照射 50Gy相当)
再治療部位はコントロールされましたが、左側頭葉に新病巣の出現・増大を認めるた
め、新病巣に対して、3回目のサイバーナイフ治療を行いました。
12
2008/5/21
2008/6/2
髄液播種!
全脳照射へ
3回目治療1か月後のfollow up MRIにて、さらに新病巣の出現を認め、急速に増大。
開頭術に伴う髄液播種と診断、全脳照射治療に紹介となりました。
13
症例 2 44歳 男性
原発巣:食道癌
38歳 食道癌で手術。
以後化学療法を継続。
42歳 「紐を結べない、物をつかめない」などの失行を認め、
頭部MRI施行、左頭頂葉腫瘍を指摘される。
サイバーナイフ治療目的で紹介となる。
サイバーナイフ治療
辺縁線量 22.5Gy(外照射:60.9Gy相当)で治療。
症例2の病歴です。
14
第1回サイバーナイフ治療
辺縁線量 22.5Gy (外照射 60.9Gy相当)
相当
2006/10/26
左頭頂葉腫瘍に対して、辺縁線量22.5Gyで治療を行いました。
15
2006/10/26 治療前
2007/3/14
著明に縮小
2007/7/5
腫瘍の再増大
治療後4か月で腫瘍は著明に縮小しましたが、その後再増大を示しました。
16
2007/7/25
開頭腫瘍摘出術施行
病理検査
放射線壊死が主で中に
少量の腫瘍細胞を認める。
2007/7/31
MRI follow
2008/1/24
再び腫瘍増大、
再度、開頭術施行
病理検査
腫瘍の再発
が疑われる
開頭術施行、組織は放射線壊死が主体で、少量の腫瘍細胞を認めました。MRI
followとしていましたが、再び腫瘍増大し、再度腫瘍摘出術施行しました。病理検査で
は腫瘍再発が疑われました。
17
2008/2/13
術後第2回サイバーナイフ治療
辺縁線量 30Gy/3分割(外照射 50Gy)
2008/7/7
第3回サイバーナイフ治療
辺縁線量 32Gy/4分割(48Gy)
2008/10/2
髄液播種?
術後、2回目のサイバーナイフ治療を行いましたが、その5か月後にMRI上再増大を
認め、3回目の治療を行いました。臨床経過は良好ですが、画像上髄液播種が危惧さ
れ、follow upを継続中です。
18
症例 3 67歳 男性
原発巣:食道癌
64歳 食道癌で放射線化学療法、サルベージ手術を
受ける。
66歳 FDG-PETを受け、左前頭葉uptakeの低下を
指摘され、頭部MRIにて、左前頭葉、右頭頂葉
腫瘍を認めた。
サイバーナイフ治療目的で紹介となる。
サイバーナイフ治療
辺縁線量 22Gy(外照射:58.7Gy相当)で治療。
症例3の病歴です。
19
第1回サイバーナイフ治療
各病巣 辺縁線量22Gyで治療
2007/3/23
左前頭葉、右頭頂葉の病巣に対し、それぞれ辺縁線量22Gyで治療を行いました。
20
2007/3/23 治療前
2007/5/24
縮小
2007/8/13
開頭術
再増大
消失?
治療後、一時、左前頭葉腫瘍縮小、右頭頂葉腫瘍は消失しましたが、その3か月後に
再増大を認め、左前頭葉腫瘍に対し開頭術を行いました。
21
2007/8/23
病理組織
MRI follow
2007/10/12
造影効果増強
FLAIR
T1-Gd
FDG
Met
Uptake (+)
2007/10/24 PET(FDG, Met)
病理組織は、大部分が壊死組織で、胞巣状の腫瘍細胞増殖が散見されました。MRI
followで、造影効果が増強し、メチオニンPETで、2病巣とも再発が疑われました。
22
第2回サイバーナイフ治療
左前頭葉腫瘍 辺縁線量 22Gy
右頭頂葉腫瘍 辺縁線量 20Gy
2病巣に対して、2回目のサイバーナイフ治療を行いました。
23
2007/12/7
2008/4/2
縮小
再治療後1か月
2008/9/24
再再増大
2回目サイバーナイフ治療後、縮小傾向を示したものの、治療後10カ月で再度増大傾
向を認めました。
24
再手術
2008/10/2 Tl-SPECT
Early
Delay
再発
T/N=2.57
T/N=2.40
放射線壊死
T/N=1.57
T/N=1.37
タリウムSPECTを施行、左前頭葉病巣は再発、右頭頂葉腫瘍は放射線壊死と診断、
左前頭葉腫瘍に対して、再手術を行いました。
25
2008/9/24
2008/10/15
病理組織
広範な変性・壊死
の中に腫瘍細胞が
増生。摘出標本辺
縁には腫瘍(-)
局所再発、髄液播種を起こさないよう、造影病巣を周辺白質とともに、一塊として摘出
しました。病理検査では、標本辺縁には腫瘍細胞の増生は認められませんでした。
MRI followを継続中です。
26
腫瘍再発と放射線壊死の鑑別
画像診断
▪
▪
▪
▪
MRI, perfusion MRI
MRS single, multi-voxel
Tl-SPECT
PET
▪ FDG-, Methionine-PET
▪
Perfusion CT
放射線治療後の腫瘍再発と放射線壊死の鑑別には、スライドのような検査が報告され
ていますが、組織は種々の割合で、腫瘍増生と壊死が混在することが多く、そのことが
鑑別を難しくしています。
27
まとめ
・ サイバーナイフ治療後、腫瘍の増大
傾向を認め開頭術を行った3症例を
提示した。
・ 3例とも、摘出標本には、治療効果と
思われる、広範な壊死を認めたが、
種々の割合で腫瘍細胞の造生も認
めた。
・ 摘出術後、局所再発、髄液播種に対
する監視が必要である。
まとめです。
28
ご静聴ありがとうございました。
29
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