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羊水細胞培養による染色体異常の出生前診断

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羊水細胞培養による染色体異常の出生前診断
羊水細胞培養 による染色体異常 の出生前診断
高知県立 中央病院 ・癌研究所
赤
木
忠
厚
〔
昭和52年1月18日 受稿 〕
診 断 の 意 義 で あ る.今 日先 天 異 常 の う ち で も,染
は じめ に
色 体 異 常 や 先 天 性 代 謝 異 常 は,羊 水穿 刺 に よ って 出
小 児 科 学 の領 域 で先 天 異 常 は近 年 増 々 そ の重 要 性
生 前 診 断 が 可 能 とな って きた.羊 水 の液 体 成 分 お よ
を増 して きて い る に も拘 らず,先 天 異 常 の 多 くは現
び沈 渣 細 胞 成 分 の分 析 に よ り,あ る種 の先 天 性 代 謝
代 医学 の水 準 を以 って して も治 療 が不 可 能 で あ る.
異 常 の 診 断 が可 能 で あ り,沈 渣細 胞 成 分 か ら胎 児 の
しか も遺 伝 性 の疾 患 が 多 い た め,こ の よ うな不 治 の
性 別 や あ る種 の性 染 色 体 異 常 の診 断 が 可 能 で あ る.
病 を持 っ た子 供 が,ひ
しか し羊 水 細 胞 を組 織 培 養 す る こ とに よ り,よ り多
とつ の家 庭 に何 人 も生 れ る可
能 性 が あ る.し た が っ て,現 状 で は予 防 す る以 外 に
くの 染 色 体 異 常 と先 天 性 代 謝 異 常 が,よ
方 法 が な く,こ れ らの異 常 を 出生 前 に診 断 す る こ と
断 され る よ うに な っ た.1)羊水 細 胞 の組 織 培 養 に よ り
り正 確 に診
が予 防 医学 的 見 地 か ら重 要 で あ る.ま た この よ うな
出生 前 診 断 が 可 能 な,先 天 性 代 謝 異 常 症 と染 色 体 異
患児 を 出産 す る可 能 性 の高 い母 親 に,安 心 して健 康
常 症 を ま と め て み る と,そ れ ぞれ 表1,表2の
な 子供 を 出産 す る機 会 を与 え て や る こ と も,出 生 前
にな る(文 献2,
3を 参 照).
表1. 羊 水 穿 刺 に よ って 出生 前 診 断 可 能 な先 天 性 代 謝 異 常 症
895
よう
896 赤
木
忠
厚
表2. 羊 水細胞培養 によって 出生前診断可能 な染色体異常
本 論 文 で は,特 に羊 水 細 胞 培 養 に よ る染 色 体 異 常
直 径35mmの
の 出生 前 診 断 につ いて,著 者 の 経 験 を 中心 に して 述
に2mlず
べ,更
し,
に そ の問 題 点 につ いて も触 れ て み た い.
プ ラス チ ッ ク ・ペ ト リ皿(Falcon,
つ 入 れ,そ
5%CO2,
37℃ の 条 件 下 で 培 養 を 続 け た.ペ
リ皿 の 数 は,細
方
3001)
の ま ま炭 酸 ガ ス培 養 器 中 に静 置
胞 の 多 寡 に 応 じ て3個
か ら5個
ト
を使
法
用 し た. 5日 間 は 液 換 え を 行 わ ず に そ の ま ま 放 置 し,
羊 水穿 刺 お よ び羊 水 細 胞 培 養 法:羊
壁 的 に行 い, 10∼20mlの
水穿 刺 は経 腹
羊 水 を無 菌 的 に採 取 し,滅
そ の 後 は2∼3日
お き に1mlず
や が て 細 胞 は コ ロ ニ-を
菌 した プ ラス チ ッ ク遠 心 管 に と った.こ の 際胎 盤,
な る が,染
胎 児 を損 傷 しな い よ うに 注意 す るの は勿 論,母 体 血
22日 目 の 間 に 行 っ た.
の 混 入 を さけ る こ とが重 要 で あ る.さ
もな い と後 で
染 色 体 標 本 作 製 法:標
行 い1日
止 む を得 ず 直 ぐに 培 養 操 作 にか か れ な い場 合 で も
0.08∼0.1μg/mlの
5∼6時
15分 培 養, 0.25%ト
3分 遠 心 して 沈 渣 を集
め た.多 数 の赤 血 球 が混 入 して い る場 合 に は, 0.85
%EDTA等
%塩 化 ア ンモ ニ ウ ム液(ト リス塩 酸 緩 衝 液, pH7.2)
rpm,
を5分 間作 用 さ し赤 血 球 の み を破 壊 した. HamF
-12培 養 液 で1度 洗 っ た後, 30%に
- CO)を 加 えたHamF-12培
牛 胎 仔 血 清(GIB
養 液 に再 浮遊 さ した.
形 成 しつ つ 増 殖 す る よ うに
色 体 標 本 作 製 は,培
判 定 を誤 る原 因 とな る.採 取 した羊 水 は通 常直 ちに,
間以内 に, 1,000rpm,
養 開 始 後10日
目か ら
本 作 製 前 日 に半 量 液 換 え を
培 養 を 行 っ た 後,コ
ル セ ミ ド(GIBCO)を
割 合 に 加 え,
5時
間 か ら6時
量 混 合 液 で 細 胞 を 単 離 して か ら,
加 え
,
タ ノ-ル3:氷
∼15分 放 置 .更
間
リ プ シ ン(Difco1:250)と0.02
3分 遠 心 し,沈
ー ダ)1mlを
ァ 液(メ
つ 液 換 え を 行 っ た.
渣 に 低 張 液(0.9%ク
37℃,
20分 放 置 し た 後,カ
酢 酸1)を2∼3滴
に カ ル ノ ア 液1mlを
1,000
エ ン酸 ソ
ル ノ
加 え て10
加 え て20分
放置
羊 水細胞 培養 に よる染色体 異常 の出生前診断 更 に0.5ml加
えて か ら極 く軽 い ピペ ッテ ィン グ を行
い, l,000rpm,
5分 遠 心 を行 った,上 清 を捨 て新 し
い カ ル ノ ア液 を2m1入
れ,少 し きつ く ピペ ッテ ィン
グ を行 っ た後, 1,000rpm,
5分 遠 心 し,沈 渣 に再 び
897
れ ま で12人 に つ い て13回 培 養 を試 み たが, 12回 は満
足 な染 色 体 分 析 を行 う こ とが 出 来 た.
の1回 目)は 分 裂 細 胞 が1個
1回(症 例10
しか み られず,核
型分
析 を行 うこ とが 出来 な か った.自 験 例 の 結 果 は表3
新 しい カル ノア 液 を加 え2回 同様 の 操 作 を繰返 した.
に示 す 通 りで あ る. Down症
少 量 の カ ル ノア液 に再 浮 遊 さ した細 胞 を,充 分 に清
往 の あ る人(配 偶 者 が先 妻 との間 にDown症
拭 し冷 却 した ス ライ ドグ ラス に滴 下 し,空 気 乾 燥 後,
子 供 を も うけて い る人 を含 め て)7人,高
3%ギ
(40才以 上)2人,配
偶 者 を含 め て配 偶 者 の 家 系 に色
盲 の あ る もの1人,
Dysgerminomaの
ムザ 液 で1時 間 染 色 した.
必 要 に応 じてG一 バ ン ドの染 色 をSeabrightの
法4)を改 変 して行 った.す
て通 常 の染 色 を行 い写 真 を撮 った後, 70%,
30%,
方
な わ ち,上 記 の よ うに し
50%,
10%の ア ル コー ル 系列 を順 に通 して 脱色 し,
0.25%ト
リプ シ ンで 短 時 間 処 理 後(15秒 位)生 理 食 塩
水 で す す ぎ, 3%ギ
ムザ 液 で 染色 を行 った.
細 胞数 が少 い場 合 に は,ペ
した まま低 張 液2mlを
候群の
年初産婦
手 術 を 行 い,
抗 癌 剤 の投 与 を 受 け た 既 往 の あ る もの1人,不
(デー タ紛 失 の た め)1人,計12人
った. Down症
明
に つ い て検 索 を行
候 群 児 出産 の既 往 の あ る第1例
につ
いて45, Xの 結 果 を得 た が,他 の11人 に つ い て は核
型 分 析 で 異 常 は み られ な か った.
ト リ皿 に細 胞 を付着 さ
加 え37℃,
候 群 の 子供 を生 ん だ既
20分 処 理 した後,
45, Xの 核 型 を示 した症 例(既 報 ・文 献5)はTu
rner症 候 群 を疑 って妊 娠26週 に人 工 流 産 を行い,臍
じ
4∼5滴
の カル ノ ア液 を加 え10分 処 置 した.更 に2
mlの カル ノア液 を加 えて20分 放 置 し,液 を捨 て た後
新 し い カル ノア液2m1を
加 え20分 放 置 。 カル ノア 液
帯 血 お よ び胎 児 皮 膚 の培 養 に つ い て染 色 体 検 査 を行
っ た.そ の 結 果 は表4に 示 す 通 りで, 45, X/46,
のmosaicismを
XX
示 した.病 理 解 剖 所 見 で は 内 外 性器
を捨 て ペ ト リ皿 の 裏 面 よ り温 風 を あて て 乾 燥 さ した
共 に女 性 で 外 形 的 に奇 形 は な く,組 織 学 的 に は卵 巣
後,
の著 明 な形 成 不 全 を示 し,純 型 性 腺 形 成 不 全 症 と診
3%ギ
ムザ 液 で 染 色 した.ペ
ト リ皿 の 側 壁 を切
り取 って 鏡 検 した.油 浸 で 鏡 検 す る際 は プ ラス チ ッ
断 した(写 真6).
クが 溶 け る ので,速 や か に写 真 を撮 る必 要 が あ る.
結
果
考
按
羊 水 細 胞 は形 態 学 的 に は, Huisjes6,7)によ り表5
羊 水 を構 成 して い る細 胞 を,パ パ ニ コ ロ ウ染色 に
に示 す よ うに分 類 され,由 来 は羊 膜 と胎 児 口 腔 粘 膜,
よ り細 胞 形 態学 的 に調 べ て み る と,大 部 分 は,小 さ
膣 上 皮,皮 膚,膀 帯 お よ び泌 尿 器 が 考 え られ て い る.
な核 と不 規 則 な大 き な胞 体 を持 っ た扁 平 上 皮 に似 た
従 っ て羊 水 細 胞 は胎 児 と同一 の遺 伝 情 報 を持 って い
細 胞 と,核 はや は り小 さ く胞 体 が卵 円 形 な い し円形
る と考 え られ るか ら,こ れ を 出生 前 診 断 に利 用 す る
の小 型 の細 胞 か ら成 って いた.小 型 の細 胞 は数 個 ず
こ とが で きる.
つ か た ま って み られ る こ とが 多 か っ た.胞 体 は 好 酸
羊 水 穿 刺 に よ る出生 前 診 断 の適 応 と して は,
性 の もの と,青 な い し褐 色 調 に染 ま る もの が み られ
(1) 本 人 ま た は配 偶 者 が転 座 保 因 者 で あ る場 合
た.核 がpicnoticな
もの もかな り多 か った(写 真1).
培 養 を行 って も大 部 分 の 細 胞 はペ トリ皿 に付 着 せ
ず,浮 遊 した ま まで 増 殖 し な い が(写 真2),早
の で は1週 間,遅
い も
く と も2週 間 位 経 つ と,数 十個 以
上 の細 胞 か ら成 る小 さ な コ ロニ-を 作 って 細 胞 が増
(2) 高 令 者(例 えば35才 以 上)
(3) 転 座 で な く散 発 性 で あ って も,染 色 体 異常 の
子 供 を生 ん だ既 往 の あ る場 合
(4) 伴 性 劣 性遺 伝 病 の場 合
(5) 先 天 性 代 謝異 常 症 の 場合
殖 す る よ うに な っ た.コ ロ ニ ー構 成 細 胞 は 線 維芽 細
が考 え られ て い る劉羊 水細 胞 培 養 に よ っ て先 天 異常
胞 様 細 胞 か ら成 る場 合 と(写 真3),上
児 を 出生 前 に予 知 し,重 篤 な先 天 異 常 で あ れ ば,治
成 る場 合 が あ るが(写 真4),そ
皮様細胞か ら
の 比 率 は培 養 によ り
療 的 妊 娠 中絶 に よ って 不 治 の 病 を持 った不 幸 な 子供
ま ちま ちで あ った.し か し一 般 的 に は線 維 芽 細 胞 様
の 出生 を未 前 に 防 ぎ,ま たhigh
細 胞 コ ロ ニ-の 方 が 多 か った.他
た め に 出産 を あ き らめ て い た 人 に,出 産 の 喜 び を与
に コ ロ ニ ー を作 ら
risk pregnancyの
ず,線 維 芽 細 胞 様 細 胞 あ るい は マ ク ロフ ァー ジ様 細
え る こ とが 出来 る よ う にな っ た.し か し羊 水 穿 刺 は
胞 が,少 数 散 在 性 に付 着 して い たが,こ の よ うな 細
合併 症 の頻 度 は 非 常 に少 い とは い う もの の,や
胞 は あ ま り増 殖 を示 さ なか った(写 真5).著
多少 の母 体,胎 児,胎
者は こ
はり
盤 に対 す る影響 が 考 え られ る
898 赤
木
忠
厚
表3. 自験例 の培養羊水細胞染色体分析 の結 果
表5. 羊 水 細 胞 の 細 胞 形 態 学 的 分 類(Huisjes)
表4. 症 例1の 羊 水,皮 膚,臍 帯 血 各 培 養
細 胞 の 染 色 体 分 析5)
し,倫 理 的 な面 か ら も問 題 が あ るの で,上 記 の適 応
とこ ろで 培養 の 成 否 に関係 す る もの と して 羊 水 細
胞 の生 存 率 が 問 題 とな るが,妊 娠 中 期 で は8%か
い な い と考 え られ,大 部 分 の細 胞 は プ ラス チ ック壁
に付 着 す る こ とな く浮遊 して し ま う.そ の た め に,
を守 り安 易 に行 うこ と は厳 に慎 むべ きで あ ろ う.
ら
単 位 容 積 当 りの植 え込 み細 胞 数 が 多 くな い と培 養 は
成 功 しな い. 10mlの 羊 水 か らだ と3個 ∼5個
のペ ト
35%前 後 と報 告 され て い る,9,10)し
か し,生 細 胞 とい え
リ皿 に培 養 す るの が 精 一杯 で,こ れ 以上 稀 釈 す る と
ど も分 裂 能 力 の あ る細 胞 は,極
培養 が不 成 功 に終 った り,染 色 体 標 本作 製 が 可 能 に
く少 数 しか 含 まれ て
羊水細胞培養 によ る染色体異常 の生前診 断 羊 水 細 胞 の 培 養 に お い て は,し ば しばpolyploidy
な る まで 増殖 す るの に 日数 が か か り過 ぎ る.
培養 の 成功 率 は初 期 のSteele
899
が 観 察 され る こ とが あ るが(著 者 の 例 で は,
and Breg11)の 報 告
2∼6
で は, 62例 中12例 しか 細 胞 増 殖 が み られ ず,し か も
%),こ
その うち2例
示 す もの が か な りの割 合含 まれ て い る こ とか ら,組
しか 染 色 体 の核 型 分 析 を行 い えな か っ
の機 構 と して は,羊 膜 細 胞 にtetraploidyを
た.し か し,そ の 後 組 織 培 養 法 の 進歩 に 伴 い培 養 の
織 培 養 に よ る人 工 的 変 異 とい う よ りは,お
成功 率 は著 し く上 昇 し, Nadler
膜 に 由来 す る細 胞 が 含 まれ て い る こ と に よ る もの と
and
Gerbie12)の 報
考 え られ る.2)
告 で は160例 中155例 の 成 功 をみ て い る.培 養 法 も各
種 の もの が 考案 され,Nad1erandGerbie12)は
そ ら く羊
mosaicismを
細胞
示 す 場 合 に は,母 親 の 細 胞 が 混 入 し
が付着 しや す い よ う に,少 量 の 牛 胎 仔 血 清 に浮 遊 さ
た 場 合 と,ふ た この場 合 と,真 のmosaicismの
した 細 胞 を ペ ト リ皿 に入 れ た後,カ バ ー グ ラ スで 覆
が 考 え られ るが,真 のmosaicismの
い細 胞 を固 定 し,し か る後 培 養 液 を追 加 す る方 法 を
難 で あ る.15)
発 表 して い る.培 養 液 につ いて も各 種 の もの が使 わ
む
す
場合
決 定 は非 常 に 困
び
れ て い るが,荻 田 ら13)は血 清 と して母 体 血 清 を使 用
した方 が成 績 が よ い とい っ て い る.し か し,著 者 は
牛胎 仔 血清 を30%に 加 えたHam
羊 水 細 胞 培養 に よ る染 色 体 異 常 の 出生 前 診 断 法 に
つ いて,著 者 の行 っ て い る方 法 の 実 際 と, 12人 の 妊
F-12培 養 液 を使 用
し,単 に ペ ト リ皿 に 細胞 浮遊 液 を 入 れ るだ けの簡 単
婦 に対 して 行 っ た結 果 を述 べ た.
1例 に お い て45, Xの 核 型 を示 し,人 工 流 産 児 の
な方 法 で, 13例 中12例 成 功 とい う好 成 績 を 得 て お り
培 養 方 法 を色 々 と変 え る こ とよ り も,無 菌 操 作 とか
染 色 体 検 査 お よ び病 理 解 剖 に よ り, 45, X/46,
器 具 の洗滌,蒸 溜 水 の 純 度 とい う基 本 的 な 組 織 培養
のmosaicismを
XX
示 す純 型 性 腺 形 成 不 全 症 で あ る こ
手 技 の習 熟 度 の 方 が 重 要 で あ る よ うに思 う.羊 水 に
とが判 明 した.多
くの先 天 異常 に対 して有 効 な 治療
赤 血 球 が 混 入 して い る場 合,培 養 が 失 敗 す る率 が 高
法 が な い現 在,羊
水細 胞 培 養 に よ る出生 前 診 断 の 必
い とい われ て い るが,14)著
者 は0.85%塩
要 性 は,今 後 増 々高 ま る と思 わ れ る.ま た この方 法
化 ア ン モニ ウ
ムで 溶血 させ る こ とに よ り好 成 績 を得 て い る.母 体
の普 及 に つ れ,各 種 染 色体 異常 の人 工 流 産 児 を,病
血 そ の他 母 体 細 胞 成 分 の混 入 は,結 果 の判 定 を誤 ら
理 解剖 す る機 会 も増 え る と思 わ れ るの で,現 在 殆 ど
せ る場 合 が あ る.稀 に羊 水 細 胞 の培 養 で は正 常 の 女
わ か って お らな い 胎 児 期 にお け る染 色 体 異 常 症 の 病
性 の核 型 を示 しな が ら,生 れ て きた の は 男児 で あ る
理,更 に は広 く出 生 前 病 理 学 の 分 野 が進 展 す る こ と
場 合 が あ る.8,12,細
胞 増 殖 が早 く核 型 分 析 が通 常 よ り
が 期 待 され る.
早 期(羊 水 穿 刺 後10日 以 内)に 行 わ れ た場 合 に 多 く,
この よ うな 場 合 に は母 体 細胞 成 分 の 混 入 が 考 え られ
稿 を終 るに臨 み,羊 水穿 刺 を してい ただいた本 院産婦
る.こ れ らの細 胞(お そ ら く母 親 の マ ク ロフ ァ-ジ)
人科,本 森良治 博士,組 織培養 およ び染色 体分析 に終始
は通 常 約1週 後 に は死 滅 す るの で,
献身 的な協力 を惜 しまなか った谷内万子技 師 に,深 甚 な
2週 後 に も う1
る謝意 を表 します.
度 分 析 し直 す方 が よい と いわ れ て い る.8,12)
文
1)
日暮
真:先
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a:
Large
nucleate
eosinophilic
cell.
b:
Large
nucleate
cyanophilic
cell.
c:
Small
nucleate
cyanophilic
cell.
パ パ ニ コ ロ ウ染 色, ×300
写 真2.
浮 遊 培 養 羊 水 細 胞.こ の よ うな細 胞 が 大 部 分 を 占 め,増 殖 能 力 を欠 く.症 例6,培
養10日 目,位 相 差
×186
写 真3.
線 維 芽 細 胞 様 培 養 羊 水 細 胞,症 例6,培
養10日 目,位 相 差,×186
写 真4.
コ ロニ ー状 増 殖 を示 す 上 皮 細 胞 様 培 養 羊 水 細 胞 、症 例6,培
写 真5.
マ ク ロフ ァー ジ様 お よ び線 維 芽 細 胞 様 培養 羊 水細 胞.こ
て い る細 胞 には,殆 ん ど増 殖 傾 向 が み られ ない.症 例6,培
写 真6.
養10日 目,位 相 差, ×186
の よ うに コ ロ ニー を作 らず に まば らに付 着 し
養10日 目,位 相差,
症 例1の 人 工 流 産 児 卵 巣 の 組 織 像.間 葉 性 結 合織 とpregranulosa
×186
cellよ り成 るsex
り,卵 祖 な い し卵 母 細 胞 は殆 ん どみ られ な い.矢 印 は変 性 した卵 母 細胞. H-E.染
色,
cordと か ら成
×186
羊水細胞培養 によ る染色 体異常の出生前診断 赤木 忠厚 論 文 附 図
901
902 赤
Prenatal
diagnosis
with
木
忠
of
厚
chromosome
cultivated
amniotic
abnormalities
fluid
cells
by
Tadaatsu
Cancer
The methods
Institute,
for cultivation
AKAGI
Kochi
Prefectural
Kochi
780,
of amniotic
Central
Hospital,
Japan
fluid cells were described.
Transabdominal
amniocenteses
were performed
for
abnormalities.
Successful
cultures
for karyotyping
were
obtained from 12 patients.
In one case karyotypic
analysis of cultivated
amniotic
45, X and then therapeutic
abortion
was performed.
The
prenatal
diagnosis of chromosome
accomplished
in 12 of 13 samples
fluid cells revealed a karyotype
of
karyotype
of cultivated
fetal skin
and umbilical
cord blood cells was 45, X/45, XX mosaicism.
The necropsy
of the aborted
fetus disclosed pure gonadal dysgenesis.
Prenatal genetic diagnosis with cultivated
amniotic
fluid cells is useful for monitoring
of
high-risk pregnancies.
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