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イノベーション
イノベーション
マツダは、
バリューチェーンのあらゆるプロセスを通じて、社会課題の解決につながるイノベー
ション
(革新 )
を目指しています。新世代の商品技術開発、
「モノ造り革新」のための生産技術
開発などを、
ビジネスパートナー、大学・研究機関、行政機関などと共に、最大限の効果を発揮
し革新的な取り組みができるよう、連携を強化しています。
マツダブランドを追求するイノベーション
マツダはステークホルダーの皆さまの期待を超える革新的なクルマをつくることを目的に、全
社一体となってクルマづくりをゼロから見直す取り組みを進めています。2014年度はこれら
の取り組みに対して国内外で高い評価を得ています
(P124参照 )
。
■
「 SKYACTIV技術」
によるベース技術の革新
a
技術開発の長期ビジョン
「サステイナブル
“Zoom-Zoom”宣言」
(P2参照 )のもと、
「マツダ
車をご購入いただいたすべてのお客さまに『走る歓び 』と『優れた環境・ 安全性能』を提供
する」ことを基本ポリシーとしています。その実現のため、世界一の機能を最も効率的につ
くることを目的として、研究・開発に取り組んでいます。2011年以降順次市場導入している
SKYACTIV技術 ※1 は、基本性能となるエンジンやトランスミッションなどの パワートレイン
の効率改善や車両の軽量化、空力特性などの ベース技術の徹底的な改善を行っています。
SKYACTIV技術の開発においては社内の部門間の連携、社外の サプライヤーや大学・研究
機関との連携強化が重視されました。
a
SKYACTIV技術での革新事例*
新世代のガソリンエンジン
(SKYACTIV-G)
:
量産エンジンとして世界一の高圧縮比
「14.0」を
実現。燃費・トルク共に従来比約15%向上。
新世代のディーゼルエンジン
(SKYACTIV-D)
:
量産エンジンとして世界一の低圧縮比
「14.0」を
実現。燃費を従来比約20%向上。
* 2012年11月マツダ調べ。圧縮比の数値、燃費・トルク改善率は
仕様等により変わることがあります。
b 「モノ造り革新」の事例
■
(SKYACTIVエンジンの生産ライン)
「モノ造り革新」
によるクルマづくりのプロセス革新 多様化するお客さまの ニーズに対応し、
「サステイナブル
“Zoom-Zoom”宣言」を体現した
シリンダーブロック加工ラインの工程数
45工程
エンジン生産ラインの設備投資額
70%以上減
魅力あるクルマづくりと同時に、開発・生産効率改善によるビジネス効率の大幅な改善に向
けて取り組んでいます。
「商品競争力を高める多様性」
と
「量産効率を高める共通性」を高次元で両立させることを目
的として、
クルマづくりのプロセスをゼロから見直す取り組み「モノ造り革新」
を採用しグロー
バルで推進しています。
「モノ造り革新」
では開発・生産・購買部門・サプライヤーが連携し、
5年から10年のスパンで未来を見据え、将来導入する車種を車格やセグメントを越えて一括
企画します。この取り組みの結果、台数規模の異なる複数のモデルの生産や、生産台数の変
動へのフレキシブルな対応、品質・ブランド力・利益率向上を実現しています。
4工程
従来:
SKYACTIV エンジン:
従来:
SKYACTIV エンジン:
専用機主体のライン
汎用機を活用
専用機主体のライン
汎用機を活用
c 新デザインテーマ
こどう
「魂動ーSoul of Motion」
b
■ 革新的デザインの追求 新デザインテーマ「魂動—Soul of Motion」 こどう
クルマを単なる鉄の塊ではなく
「命あるもの」
だとマツダは考え、デザインにおいてもクルマの
形にとらわれず、純粋に生命感をカタチにするため、
さまざまな
「動き」
のある造形を模索して
きました。それらを進化させる中で、生き物が一瞬見せる動きの強さや美しさ、凛とした緊張
こどう
感に注目し、見る人の魂を揺さぶる、心をときめかせる動きを
「魂 動」
と名付け、
マツダ車の新
しいデザインテーマとしました。2010年に発表し、
2012年に発売したCX-5以降、
順次グロー
バルに導入された新型車に採用し、グローバルで高い評価を得ています(P124参照 )
。 c
※1 エンジン・トランスミッション・シャシー・ボディなどのベース
技術の総称。
119
Mazda Sustainability Report 2015
自動車メーカーとの連携
■ 提携戦略の推進
d 提携戦略
マツダブランドの強化のため、商品、技術、地域ごとに最適な提携戦略を推進しています。
フォード モーター カンパニーと戦略的提携関係を継続することで合意し、主要な合弁事業や
技術情報の交換など、双方がメリットを得られる分野で協力しています。
また、2015年5月に、
トヨタ自動車(株)と経営資源の活用や商品・技術の補完など相互にシ
ナジー効果を発揮しうる継続性のある協力関係の構築に向け基本合意しました。
d
■ 内燃機関の燃焼技術および排出ガス浄化技術の基礎・応用研究
マツダは日本の自動車業界における新たな共同研究組織
「自動車用内燃機関技術研究組合
(AICE※1)
」に参加しています。AICEは自動車メーカー各社が協調して研究ニーズを発信し、
大学・研究機関の基礎・応用研究を共同で実施し、
その成果を活用して各企業での開発を加
速することを目的として2014年4月1日に設立されました。マツダはAICEへの参加を通じて、
自動車のさらなる燃費向上・排出ガスの低減に向けた、内燃機関の燃焼技術および排出ガス
浄化技術開発に取り組みます
サプライヤーとの連携
■ サプライヤーと連携した技術開発
開発初期の段階よりサプライヤーと連携し、商品・技術開発を進めています。
このため、
中長期的な経営戦略や、
販売・生産に関する情報の早期提供に努め、
コミュニケーショ
ンを密に行っています。
共同開発事例:環境負荷低減と高い質感を両立したバイオエンジニアリングプラスチック
三菱化学と共同で自動車の外装意匠部品として使用可能な バイオエンジニアリングプラ
スチックを開発しました。植物由来原料使用による石油資源の使用量削減、CO2排出量の抑
制、無塗装によるVOC ※2の削減などにより、環境負荷低減に貢献しながら、従来材料の塗装
が施された部品を超える質感を実現するなど、高い意匠性を持つ自動車外装部品としても使
用できるようになりました。2015年5月発売の新型ロードスター/MX-5の内装意匠部品に
採用し、今後は外装意匠部品としても採用予定です
(P69参照 )
。
■ 開発効率化のためのサプライヤーとの連携
クルマに求められる機能が高度化・多様化することで車両の構造や制御システムは複雑化し、
今後ますます加速していく傾向にあります。このような複雑なシステムを限られたリソースで
迅速に開発し続けるため、開発そのものを机上で効率良く行う
「モデルベース開発」
をサプ
ライヤーの技術を活用し進めています。
※1 Research Association of Automobile Internal
Combustion Enginesの略。国内自動車メーカー9社および
2団体が参加(2015年4月現在 )
。
※2 Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物。
120
Mazda Sustainability Report 2015
■ ITシステム開発・運用の効率化のためのサプライヤーとの連携
マツダはオラクルのERPパッケージ※1を活用してグローバル共通システム基盤を構築し、開発・
運用の効率化を進めています。これまで各拠点で独自に個別システムを構築・運用してきまし
たが、共通機能については一括してシステム構築・運用し、
これを各拠点が使用する方式に
抜本的に切り替えることにしました。すでに、新興国の生産拠点・ディストリビューターにシス
テムを導入し、現在稼働中です。今後は、北米・欧州の統括拠点などへも同方式を展開して
いく予定です。
■ 地場サプライヤーと連携した現場力向上活動
広島県および近隣の地場サプライヤーに対して、
「 J-ABC活動(Jiba
[ 地場 ]
Achieve Best
Cost)
」
を2004年より実施しています。これは、
マツダ従業員がサプライヤーの工場を訪問して、
マツダ生産方式の考え方を基本にモノづくりの無駄・問題点を抽出し、改善策の検討・実施
に協働で取り組むものです。また、マツダで推進している
「モノ造り革新」
(P119参照 )
におけ
る製造現場領域のモノづくり体質の強化も担っています。生産性の向上にもつながり、年間
20〜30億円の生産コスト削減を実現しています。
2014年度のJ-ABC活動の実績
活動例
目的
取り組み
2014年度の成果
協働改善活動
稼働改善、
サイクルタイム短縮、
物流改善(2004年より実施 )
22社46工場に、延べ約1,800回/年訪問し、
協働改善活動を実施。
69回の成果報告会を開催(2013年比35%増 )
。
J-ABCからくり改善®*1道場
お金をかけない、創造性に優れた、
楽しい作業改善(2006年より実施 )
からくり作品の考案・製作能力の向上を目的とした座学、
現地指導会などの実践プログラムを実施。
9社9名の受講生が卒業。
優秀作品は、
マツダ本社工場からくり展、
からくり改善®くふう展へ
積極的に出品。
J-ABC保全道場
設備停止や機能低下の
未然防止(2010年より実施 )
異常感知、対応処置能力の向上を目的とした座学、
現地指導会や実践プログラムを実施。
広島 ・ 防府地区で2回/年開催。2014年は4社4名の受講生が卒業。
卒業生/工場長がリードして自主保全活動を14工場で自主展開。
J-ABC大会
J-ABC活動方針、優秀事例などを
全参画企業が参加し、事例発表・表彰などを実施。
共有し、
相互研鑽
(けんさん)
(2005年より実施)
2014年大会は、地場サプライヤー330名/40社、
マツダ100名、
計430名が参加。
*1「からくり改善 ® 」
は、
(社 )
日本プラントメンテナンス協会の登録商標。
■ 海外生産拠点・現地サプライヤーと連携した現場力向上活動
グローバル生産体制の再構築に伴い海外生産拠点の重要性が増す中、現地サプライヤーと
タイにおけるA-ABC活動
共に品質向上・生産性改善の取り組みを進めるため、現場力向上活動に取り組んでいます。
国民性や文化の違いを尊重し、現場の改善活動を継続的に推進するために重要なポイントを
把握しつつ、
J-ABC活動で培ったノウハウを展開しています。現地の生産拠点およびサプライヤー
双方に改善活動を推進するリーダーを育成し、サプライヤーの改善活動を推進する体制を構
築しています。今後もサプライヤーと連携し、継続的に活動を広げる予定です。
タイにおけるA-ABC活動
オートアライアンス
(タイランド)
(AAT)
において、
2013年2月、
A-ABC活動(ASEAN Achieve
Best Cost)
を開始しました。現地サプライヤー7社と共に、マツダのJ-ABC活動担当者3名
およびAATの推進担当者2名が推進役として参加し、活動を進めています。活動は約5カ月
メキシコにおけるM-ABC活動
をかけて各サプライヤーの現状把握・分析、改善案の発掘・実施を進め、最後に成果報告をす
る構成で、2014年9月と2015年4月に開催しました。2014年の成果報告会後A-ABC大会
を開催、
そこで最優秀賞を受賞した サプライヤーの代表が同年10月に開催した マツダ本社
のJ-ABC大会で優秀事例発表を行いました。2015年は、2社追加し9社にて活動を開始して
います。
メキシコにおけるM-ABC活動
マツダデメヒコビークルオペレーション
(MMVO)
において、
2015年よりM-ABC活動(Mexico
Achieve Best Cost)を開始します。マツダのJ-ABC活動担当者1名およびMMVOの推
進担当者2名が推進役として現地サプライヤー2社へM-ABC活動の考え方、進め方の教育
を行っています。また、協同で生産現場の現状調査・分析を進めています。
121
※1 ERPパッケージ
(Enterprise Resource Planning package)
。
企業の経営資源を有効に活用し経営を効率化するために、基
幹業務を部門ごとではなく統合的に管理するためのソフトウェ
アパッケージ。
Mazda Sustainability Report 2015
産学官連携活動
マツダでは、社外からの新たな知見や視点を得て事業課題を解決し、広く社会に貢献してい
くことを目的として、産学官連携事務局を組織化し、官公庁・大学との連携を進めています。
活動を見える化し、官公庁や大学と共有することで、最大限の効果を目指して日々活動して
います。加えて、
産学官連携を通じた従業員採用、
人材育成、
人材輩出で地域に貢献しています。
■ 世界最先端の国家プロジェクトや研究機関と共同研究
社外の世界最先端の国家プロジェクトや研究機関と共同研究を行い、自動車業界が直面す
る社会課題の解決に取り組んでいます。
関係官庁・機関
プロジェクト名
内容
新構造材料技術研究組合/経済産業省/
(国研 )
新エネルギー・産業技術総合開発機構
革新的新構造材料等技術開発
http://isma.jp/index.html
自動車などの輸送機器のCO2排出量削減のための
抜本的な軽量化の技術研究開発。
未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合/経済産業省/
(国研 )
新エネルギー・産業技術総合開発機構
未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合
http://www.thermat.jp/project/heatmanagement/
index2.html
熱エネルギーとして大気中に放出されている未利用エネルギー*1を
効率的に活用するための研究。
*1 国内で民生(市民生活 )
、
産業、
運輸分野で消費されるエネルギーのうち使われない熱エネルギーとして大気中に放出されているもの。全体の約50%以上を占める。
■ 広島における産学官連携
広島県を中心に開発・生産拠点をもつマツダは地域経済・地場企業との連携は重要と考えて
います。その一環として、中国経済産業局・広島県・広島市などの官公庁、
( 公財 )
ひろしま産
業振興機構および広島大学を交えた6団体で連携し、自動車関連の地場企業への貢献、地
域活性化や地方創生活動に取り組んでいます。地場企業支援の新しい枠組みと次世代の自
動車社会の検討などについて産学官で連携しています。
1. 2030年産学官連携ビジョンの策定
産学官合同チームでワークショップを開催し、2015年1月、2030年産学官連携ビジョンを
定めました。今後、
6団体などで協働して、
ビジョン達成に向けて役割分担や施策・ロードマッ
プを明確化していきます。
2030年 産学官連携ビジョン
・広島を、自動車に関する独創的技術と文化を追い求める人々が集まり、世界を驚かせる技術と
文化が持続的に生み出される聖地にする。
・産業・行政・教育が一体になり、イノベーションを起こす人財をあらゆる世代で育成することにより、
ものづくりを通じて地域が幸せになる。
・広島ならではの産学官連携モデルが日本における
「地方創生」
のリードモデルとなり、世界のベンチ
マークとなる。
2. ひろしま自動車産学官連携推進会議の発足
広島の自動車産業の発展に向け、将来にわたって産学官が協働し、上述ビジョンの実現を推
進することを目的とした「ひろしま自動車産学官連携推進会議」を6団体で発足しました。
その会議体に、イノベーション人材育成や地場サプライヤー活性化を担う委員会と個別の
専門的な開発を行う部会を設置し、具体的な施策の立案と実行をしていきます。施策の先
駆けとして、2014年度には広島大学から約80名の インターンシップを受け入れました。
2015年度には中小企業向けに、
ものづくりをテーマにした人材育成講座の運営を開始する
計画です。
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Mazda Sustainability Report 2015
■ サプライヤ−/大学からの技術提案会の実施(行政機関との連携 )
サプライヤー、大学、公設試験研究機関との ニーズとシーズのマッチングを目的として、地域
の行政機関と連携した技術提案会を開催しています。2014年度は22件の共同研究検討項
目を特定しました。また、静岡県と石川県での ニーズ発信会、技術展示会を実施し、地域との
連携を強化しました。
■ 大学との連携
さまざまな分野で大学との連携を強化し、
より高い視点・広い視野で領域課題を解決し社会
に貢献していくことを目指しています。
大学名
提携内容
2014年度成果
広島大学
2011年2月*1に包括的連携協定を締結し、開発・生産や企画・経営 ・マーケティング
などの社会科学分野、人材交流・育成など、大幅に連携範囲を拡大。
・共同研究39件実施
・
「精神的価値が成長する感性イノベーション拠点」
の活動継続
・
「連携協力推進委員会」
を年1回(9月 )
開催し、共同研究の進捗や連携強化についての具体的な
施策提案、産学間の人材交流の推進などについて議論。
・共同研究に連動した形で18名のインターンシップ生をマツダの8つの部門で受け入れ、
*2
企業活動の中で課題解決を経験することで骨太エンジニアとしての基礎を学ぶ場として提供。
九州大学
2011年5月に
「次世代自動車技術」
に関する組織対応型連携契約を締結。
研究開発業務の強化と学術研究・ 教育活動の活性化で連携。
・共同研究19件実施。
・共同研究にあたっての研究会や勉強会を実施。
近畿大学
2012年12月に包括的研究協力に関する協定を締結。
産学連携による最先端の研究開発の強化および地域産業の技術力強化で連携。
・共同研究4件実施
・
「研究協力推進委員会」
を年2回(6月、1月 )
開催し、共同研究の進捗や連携強化について、
具体的な施策を議論。
東京工業大学
首都圏の大学との連携強化の第一歩として、2013年8月に東京工業大学の
産学連携会員制度に加入。
・共同研究8件実施。
・東京工業大学の副学長をマツダ本社に招聘し技術セミナーを開催。
その他
大学との連携のさらなる拡大を目指し、主要大学の産学官連携部門への訪問を実施。
2014年度は東京工業大学、東北大学、早稲田大学を訪問し、
マツダとの今後の連携の可能性に
関し意見交換実施。
*1 2011年2月以前は自動車先進技術領域で研究協力。
*2 マツダ全体では78名受け入れ。
■ 国際標準化機構を通じた連携
マツダは(一社 )
日本自動車工業会の一員として、日本におけるITS
( 高度道路交通システム)
の推進活動に参加しています。また、ITSに関する国際標準化機構ISO/TC204の中で、走
行制御システムを扱うワーキンググループ
(WG)
は、
日本の
(公社)
自動車技術会が事務局となっ
ています。そのコンビーナ
(WG国際議長 )
を2013年よりマツダが引き受け、
衝突軽減ブレー
キなど、各種安全運転支援システムに関する国際標準の策定を推進しています。
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Mazda Sustainability Report 2015
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