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12 英語科 - 福岡市教育センター

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12 英語科 - 福岡市教育センター
平成10年度
研究報告書
(第568号)
G9−02
「読むこと」の能力を高める学習指導法の研究
―英文の題材に即した
情報の収集と活用を通して―
英文の読解においては,ややもすると単に英語を日本語に置き換えるだ
けとなってしまい,真に題材の持つ深い意味を理解しているとは言い難い
場合がある。そこで本年度は,題材に即した情報の収集と活用を取り入れ
ながら,「読むこと」の能力を高める研究に取り組んだ。その結果,表面
的な理解だけではなく,作者の意図など,題材の持つ意味を深く考える生
徒の姿が見られるようになった。
福岡市教育センター
英語科研究室
目
次
Ⅰ
主題設定の理由 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英
1
Ⅱ
研究の目標 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英
1
Ⅲ
研究の仮説 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英
1
Ⅳ
研究の計画 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英
2
Ⅴ
研究の実際とその考察 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英
3
1
2
3
Ⅵ
研究主題についての基本的な考え方
(1)「読むこと」とは‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英
3
(2)「情報の収集と活用」とは‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英
4
研究の内容と方法
(1)読みのプロセス‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英
4
(2)読みのプロセスの具体的活用‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英
5
指導の実際とその考察
(1)A中学校3年
“The Home Planet” ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英
6
(2)B中学校2年
“Sea Forest”‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英11
研究のまとめと今後の課題 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英15
参考文献 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥英16
3学年)と示されているが,日常の英語学習で
Ⅰ
主題設定の理由
は,学年が進むにつれて,英語を単に日本語に
置き換える − すなわち「訳すこと」のみで満
教育課程審議会の答申によると,外国語に関
足している場合が多く,深い理解にいたってい
する教育課程の改訂のねらいとして「基礎的・
ない実態があるからである。
実践的コミュニケーション能力の育成にかかわ
そこで,本研究において「読むこと」の能力
る指導の充実をめざし,その際外国語の学習を
を高める学習指導法を考察するにあたり,スキ
通して,積極的にコミュニケーションを図ろう
ーマに着目した。
とする態度と,視野を広げ異文化を理解し尊重
人間のあらゆる知識や経験は,一種の範疇と
する態度の育成に留意する」ことがあげられて
して単位化されて記憶されている。それらの知
いる。
識の単位はスキーマと呼ばれ ,形式スキーマ(文
新学習指導要領の中でも,より一層のコミュ
字 ,綴り ,文法等の言語的な知識に関するもの )
ニケーション能力の育成が求められている。
と内容スキーマ(文化,科学等の社会全般の知
昨年度の研究においては,コミュニケーショ
識に関するもの)に分けられる。私たちが文を
ン能力の一つであるストラテジーを用い,積極
読む際には,無意識のうちに,形式スキーマだ
的にコミュニケーションを図ろうとする態度の
けでなく内容スキーマも活用しながら文の内容
育成を目指した研究を行った。
を理解している。しかし,生徒の日常の英語学
本年度は,コミュニケーション能力育成の基
習においては,ややもすると形式スキーマの習
礎となる ,「読むこと」の能力を高める学習指
得に重点を置く場合が多いように思われる。
導法の研究を考えた。
そこで,題材の持つ深い意味を理解させるた
英文を読むという行為は,声を出して読む音
めには,内容スキーマを増殖,活性化させるな
読(reading aloud)と,内容を読みとる読解
かで,常に題材との検証を行いながら再構築し
(reading comprehension)に分けられる。本研
理解を深めていく指導法が有効であると考え
究では ,
「読むこと 」は「読解 」と位置づけた 。
た。その手だてとして,生徒が主体的に題材に
その理由として,一つは現在,積極的なコミ
即した情報の収集と活用を考えるように仕向け
ュニケーション能力を育成するために ,「話す
るとともに,指導法の工夫として初期連想の重
こと 」「聞くこと」の表現の能力が求められて
視,トップダウン方式の指導法を考えた。
いるが,それらの能力を発揮し,実践する場合
の前提となっているのが知識であり,その知識
Ⅱ
研究の目標
や情報を正確かつ論理的に習得する手段の一つ
が「読むこと」であると考えた。十分知識があ
「読むこと」の能力を高めるために,英文の
ってこそコミュニケーションが実りあるものに
題材に即した情報の収集と活用を取り入れた指
なる。すなわち ,「読むこと」の能力を高める
導法を明らかにする。
ことは,コミュニケーション能力を高めること
につながると考えたからである。
Ⅲ
研究の仮説
もう一つは,中学校学習指導要領(外国語)
では ,「読むこと」の目的は「書き手の意向な
英語を読む指導において,題材に即した情報
どを理解できるようにするとともに,英語を読
の収集と活用を取り入れれば,生徒は題材の持
むことに慣れ,英語に習熟し,英語を読んで理
つ深い意味を理解し ,「読むこと」の能力が高
解しようとする積極的な態度を育てる 。」(第
まるであろう。
英 -1
研究の計画
Ⅳ
月
研
究
事
4
○研究構想
項
目
的
○研究の目的と概要を明
確にする。
∼
○研究主題設定
5
○研究計画書の作
成
○研究の見通しを立て
る。
6
○理論研究
○研究の方向性を明らか
にする。
○研究に必要な資料を集
める。
○中間報告書を作成し、
研究の方向性を確認す
る。
○資料収集
∼
○中間報告書の作
成
○検証授業の計画
○生徒の実態調査
容
と
方
法
○前年度の研究内容・成果と課題
の確認
○本年度の研究主題・研究目標・
研究仮説の設定
○月別研究事項等の検討
○文献等による理論研究
○文献,資料の収集
○「計画・調査」のまとめと「実
践・検証」の計画
∼
○生徒の実態について把
握する。
○検証授業により仮説を
検証する。
○質問紙法による実態調査と結果
の分析
○検証授業の実施
11
○検証授業の結果
の分析及び考察
○研究報告書の作
成
○研究の成果と課題を明
確にする。
○検証授業の結果の分析
○研究の成果・課題の考察
○研究報告書の作成
○研究発表会の準
備
○研究発表会の準備をす
る。
○発表原稿及び資料の作成
○発表練習
○指導助言者等の助言による発表
原稿及び資料の修正
○研究発表会
○研究の成果と課題を明
確にする。
○研究のまとめ
○本年度の研究のまとめ
を行う。
○研究の成果と課題の発表
○発表会における意見の集約及び
検討
○研究の資料等の整理及び保管
∼
10
12
1
2
∼
3
調査・授業の対象
○仮説検証のための授業の内容と
方法の立案
8
9
内
英 -2
A中学校
3年
B中学校
2年
研究の実際とその考察
Ⅴ
ュニケーション能力育成の基礎になるものと考
えられる。
1
研究主題についての基本的な考え方
そこで,本研究では ,「読むこと」の能力を
(1)「読むこと」とは
ア
高める方策としてスキーマに着目した。
イ
コミュニケーション能力と「読むこと」
「読むこと」とスキーマ
Rumelhart(1980)によると,人間のあらゆ
との関係
コミュニケーションを目指した英語の指導と
る知識(経験も含む)は,いわば単位化されて
評価(文部省平成5年)によると,コミュニケ
記憶の中にしまいこまれており,これらの知識
ーション能力は,表現の能力と理解の能力を核
の単位がスキーマと呼ばれる。
にしながら,コミュニケーションを積極的に図
私たちは読む過程において何らかの情報に接
ろうとする態度,言語と文化に対する関心,異
すると,それらを基に,自分なりの仮説的なス
文化(国際 )理解を含んだものである 。
(図1 )
トーリーを再構築して理解する。その際自分の
過去の経験(スキーマ)を引き出してそれに当
てはめたり ,自分の得た新しい情報(スキーマ )
を頭の中で整理したり,自分の読む目的を定め
たり,どのように読んでいったらよいか方策を
立てる 。また次に来るストーリーを予測したり ,
欠けている部分があってもそれを補って理解し
ようとする。
また,従来の一般的な考えでは,読むことと
は語彙や文法に依存する受動的行為で,物語,
思想 ,アイデア等の全ての情報は題材側(作者 )
に存在すると考えられてきた。これに対してス
キーマ理論では,読み取りは題材と読み手の持
図1
っているスキーマとの相互作用とみなされてい
コミュニケーション能力の概念図
る。題材理解は,スキーマに基づいてストーリ
この中で,理解の能力は,初歩的な外国語を
ーが再構築され,次々と予測や推測が行われる
使って表現された相手の意向などを理解する能
過程であり,スキーマ理論を利用すれば,題材
力であり,伝達の手段から見れば,音声及び文
が何について書かれているか,文字で表されて
字を使うことになる 。「読むこと」の能力は,
いない言外の意味はどうか ,というように予測 ,
後者の文字などを媒体とした情報を理解する能
推測しながら理解することが求められる。
生徒の多くは,予測,推測に基づく読み方を
力である。
読むことは,ややもすると受け身的な行為と
しないために,一語毎に,あるいは一文毎に焦
考えられがちである。しかし,相手の意向など
点を当てる逐語的な読み方をし,ほんの数行読
を理解する場合には,場面や文脈などに即しな
むのにかなりの時間をかけてしまう。
がら自分の考えと対比していく能動的,創造的
長時間かけて読むので,途中で長期記憶とな
なものであり,外国語学習においては,話すこ
る大事な情報を見失ってしまう。それゆえに題
と,書くこと等の表現の能力の基礎になるもの
材を最後まで読み終えたとしても,全体として
である。
何が書かれていたかを覚えていないし,要約す
ることができない。
すなわち ,「読むこと」の能力の育成はコミ
英 -3
2
そこで,スキーマ理論を利用した読みの指導
研究の内容と方法
を行えば,生徒は常に予測,推測を行い,その
(1) 読みのプロセス
都度題材との検証による再構築を繰り返すこと
ア
によって理解を深めていくと考えた。
内容スキーマとは,文化的,社会的な人間の
内容スキーマの増殖,活性化
(2)「情報の収集と活用」とは
実世界に関する知識を,パターン化して記憶の
情報とは ,ある物事の事情についての知らせ ,
中に収納しているものである。内容スキーマは
またはそれを通して何らかの知識が得られるよ
文化的なものから,自然の生態系,化学反応な
うなものを指し,特に知らせること,伝達する
ど科学的 ,技術的知識のスキーマにいたるまで ,
こと(あるいは逆に何かを受けとる,伝達され
社会全般の知識に関するものである。これまで
ること)自体が重要な要素になっている。
の英語学習は,ややもすると形式スキーマ(文
そこで本研究では ,「読むこと」の能力を高
字,綴り,文法,構成等の言語的な知識に関す
めるには,生徒自らが情報の収集と活用を主体
るスキーマ)に重点を置きがちであった 。「読
的に計画し,実践していくよう仕向けることが
むこと」の能力を高めるためには,形式スキー
必要であると考えた。
マはもとより内容スキーマを増殖,活性化する
指導の工夫の必要性を感じた。
情報の収集とは,題材に即した情報を辞書,
そこで,本研究において次の二つの指導上の
参考書,インターネット等で調べること,テレ
工夫を取り入れた。
ビ,ラジオ,リスニングテープからの情報を得
ること,インタビュー等の取材によって情報を
○
初期連想を重視したReading指導の工夫
得ること,教師の説明から情報を得ること等と
読むことの過程における予測,推測の中で,
特に大切なのは初期連想(題材に出会った時に ,
して捉えた。
情報の活用とは,収集した情報をいろいろな
何について書かれているか,どのようなストー
形で活用することであり,調べたことを発表し
リーになるかを推測すること)と考えた。初期
たり,ディスカッションやディべートを行う等
連想ができれば生徒は読み取りの大きな方向を
の表現的なものと,ワークシート等で考え,情
得,その方向でストーリーがどのように展開す
報を確認する認知的なものとして捉えた。
るかを予測することができると思われる。初期
連想に役立つものとして,題名,トピックセン
情報の収集と活用の具体的な手だての例とし
テンス,挿絵や写真などがある。
て,題材の関連事項を課題(例えば,環境問題
に関する題材であれば ,「ゴミ処理の現状 」「森
○
トップダウン方式のReading指導の工夫
林伐採」など)として例示し,それらを学校図
これまでの英語学習におけるReading指導は ,
書館等を活用して追究すること,地域の各施設
ボトムアップ[小さなスキーマ(具体的スキー
における取材,収集した情報を持ち寄ってさら
マ)から大きなスキーマ(抽象的スキーマ)を
に正確かつ豊富な情報を創造すること,それら
引き出す]方式が多く ,「木を見て森を見ず」
の学習成果を発表するための資料づくりを共同
の読み方に終始している傾向があった。本研究
で行ったりすることなどが考えられる。
においては ,「読むこと」の能力を高める方策
このように ,「読むこと」の能力を高める指
として,トップダウン[大きなスキーマ(抽象
導では,題材に即した情報の収集と活用を生徒
的スキーマ)から小さなスキーマ(具体的スキ
が主体的に行うことが必要であり,そのことに
ーマ)を引き出す]方式のReading指導の工夫を
よって内容スキーマが増殖,活性化し理解が深
考えた。
まると考えた。
英 -4
イ
この一連の過程でのスキーマの増殖,活性化
読みのプロセスのモデル図
を表したものが図3である。
本研究では,深い理解に至る一連の読みの活
動を「読みのプロセス 」(図2)としてまとめた 。
初めて題材に接する時,題名や写真等から初
と
はスキーマを表している。
は
作者の伝えたいものと一致したスキーマであ
期連想を行い内容を予測し,題材との検証によ
り,
る再構築を行う。その際,すでに持っているス
スキーマである。
は作者の伝えたいものとほぼ一致した
キーマとの検証,新たなスキーマの形成が行わ
(2) 読みのプロセスの具体的活用
れる。次に題材に即した情報の収集と活用を行
A中学校においては,読みのプロセスを
う。それぞれにおいて題材との検証による再構
「Program7全体のプロセス」と「概要把握のプ
築を行い,スキーマは増殖,活性化される。こ
ロセス」に,B中学校では ,「Program7の各セ
のような過程を経て,題材に含まれている作者
クションの細部理解のプロセス」と捉え実践を
の意図や意向をより正確に理解できるようにな
行った。
ると考えた。
英 -5
3
指導の実際とその考察
(1) A中学校3年
ア
を示すと考えられる。
“The Home Planet”
しかし ,一つ一つの文の和訳を重視する一方 ,
前後の文のつながりや,セクション(プログラ
生徒の実態
ム)全体の話の流れを理解することを重視して
生徒の実態を把握するため,A中学校3学年
いる点にも注目すべきである。
生徒188人を対象に,事前アンケート調査を
質問2では,実際に新しい単元に入る際,本
実施した 。(いずれの質問も複数回答)
質問1
文を読むこと以外に,写真や絵を見る生徒が多
英文を読む際に重視しているポイント
(1)単語の意味
49%
い点に注目すべきである。これは,本文以外か
(2)熟語の意味
44%
らも,本文に関連する情報(それも特に視覚的
(3)文法事項や文型
46%
にとらえる情報)に関心が向きやすいというこ
(4)一つ一つの文の和訳
43%
とを示していると考えられる。
(5)前後の文のつながり
40%
質問3では,Program 6が印象に残っている
(6)文化的・歴史的背景などの関連事項
10%
生徒が多い。理由として生徒があげているもの
7%
は ,「夏休みの課題として(Program 7と同様
(8)教科書に載っている写真や絵
16%
に)調べ学習をしたので,印象に残った 」「治
(9)教科書の本文以外の説明文
11%
療活動だけにとどまらず,アジア保健研修所を
(10)セクション(プログラム)全体の話の流れ
43%
設立した川原医師のことや,ネパールの医療事
4%
情のことを知り ,勉強になった 」等が多かった 。
(7)文章の題名(タイトル)
(11)その他
質問2
以上の事前アンケートの結果を総合すると,
新単元に入るときに,予習(新出単語
これまでどちらかといえば文法事項等の形式ス
調べ,本文を写すなど)以外にしていること
(1)教科書の写真や絵を見る
50%
キーマを重視していた生徒も,題材の背景や関
(2)教科書の本文以外の説明文を読む
14%
連事項等の内容スキーマを増殖,活性化するこ
(3)教科書の本文をひととおり読んでみる 34%
とによって,題材に対する興味・関心がいっそ
(4)分からないことを調べる,人に質問する
30%
う深まるのではないかと考えられる。
(5)ワークブックの写真や絵を見る
19%
イ
単元の目標
(6)ワークブックの問題以外の説明文を読む
9%
検証授業としてProgram 7の単元を取り上げ
(7)ワークブックで文法事項を予習する
19%
た。Program 7では,題材を読む際に必要な情
(8)その他
10%
報の収集と活用を取り入れることにより,生徒
質問3
がより深い理解を得られるように,以下のよう
3年生の教科書の題材で,興味を持っ
な目標を考えた。
たもの,印象に残ったもの
Program 1
Meeting
14%
○初期連想 ─ 題名“The Home Planet”か
Program 2
Roses and Cherry Blossoms 18%
ら連想すること。また,各セクションの写真か
Program 3
The Development of Computers
12%
Program 4
A Blend of Cultures
20%
○題材に即した情報の収集と活用を通して,
Program 5
What Do Symbols Tell Us?
15%
内容スキーマの増殖 ,活性化を図るようにする 。
Program 6
Sharing for Self-Help
30%
○トップダウン方式を取り入れることによ
Friends
ら,題材全体のイメージを捉えさせる。
質問1では ,一つ一つの単語・熟語の意味や ,
り,①題材の概要の把握(スキーマの増殖,活
文法事項・文型を重視する傾向が見られる。こ
性化) → ②細部の把握・関連事項の学習(ス
れは今までの英語学習が,どちらかといえば,
キーマの増殖,活性化)という読解方法を身に
形式スキーマの習得に重点が置かれていたこと
つける。
英 -6
各ページのkey word(key sentence)が何を
Program7の単元全体の読みのプロセスを表し
意味するのかを考える 。(Sec.1のhomeなど)
たものが図4である。
ウ
各ページの宇宙飛行士が述べたコメントの
学習指導の実際
内容を確認する。
[事前学習]
[第3時・第4時]
夏休み中に,題材に関する調べ学習(「 宇
各ページの新出単語・熟語の発音や使い方
宙開発」と「環境問題 」)を行う。各生徒が
についての学習,本文の音読練習を行う。
自分の希望するテーマで調べ,レポートにま
関係代名詞(目的格)と分詞の形容詞的用
とめる。
法についての学習を行う。
[第1時,本時]
[第5時]
題材(Program 7全体)に関する写真を提
示し,それらから得られる印象を述べあう。
夏休み中に作成したレポートをもとに ,
「宇
題名“The Home Planet ”から,この題材
宙開発」と「環境問題」について各生徒がま
が何について書かれているのかを推測する。
とめをする。複数の小テーマを与え,各生徒
題材(Program 7全体)の内容の概要を,
が希望する小テーマを選び,それについて総
題材の各場面を表した絵によって把握する。
まとめのレポートを作成する。その際,自分
アトランダムに絵を提示し,全セクションの
があらかじめ調べていた情報だけではなく,
リスニングテープを聞かせる。それを手がか
他の生徒からも必要な情報を収集し,整理,
りとして,題材の内容に合うように,絵の順
活用しながら作成していく。
番を判断する。
[第6時]
各生徒が作成したレポートを発表する。そ
地球誕 生から現在 までを1年間に置き換
の際,質疑応答や意見交換をする中で ,「宇
え,地球の歴史を振りかえる。
宙開発」と「環境問題」についての理解を一
地球が1月1日午前0時に誕生したと仮定
層深めていく。
すると,最古の植物が出現(35億年前)し
題名“The Home Planet ”の意味をもう一
たのは3月下旬頃になる,など。
度考える。
[第2時]
[第7時・第8時]
Program 7全体の新出単語・熟語の意味を
文法事項に関する問題練習を行う。
確認する。
英 -7
エ
本時 (1/8)
③最後に,教科書も見ながらリスニングテ
(ア)本時の目標
ープを聞く。
題材の内容に即した絵や写真,リスニングテ
④本文の内容に合うように,絵の順番を判
ープ等を活用することにより ,スキーマを増殖 ,
断する。
活性化させながら ,題材全体の概要を把握する 。
(2) 地球誕生から現在までを1年間に置き換
(イ)本時の授業仮説
えて,地球の歴史を振りかえる。
題材の内容に即した絵や写真,リスニングテ
地球が1月1日午前0時に誕生したと仮定
ープ等を活用し,地球の歴史を身近なものとし
した上で,歴史上の出来事がいつ頃起こった
て捉えることによって,スキーマが増殖,活性
のかを計算する。
化され,題材全体の概要を把握することができ
(例)①最古の植物出現(35億年前)
るようになるであろう。
・・・3月の終り頃
(ウ)授業の実際
1
あいさつ
2
導入
②最古の動物出現(6.5億年前)
・・・11月上旬頃
③直立猿人出現(440万年前)
(1) 黒板に貼られた写真(向井千秋さん,月
・・・12月31日15時37分頃
面から見た地球,荒れた森林地帯等)から得
1年間のカレンダーを横長の年表形式で作
られる印象を述べあう。
成したものを用意する。それぞれの歴史上の
(2) 題名“The Home Planet ”から,この題
出来事がいつ頃になるのかをカレンダー上に
材が何について書かれているかを推測する。
書きしるし ,地球の歴史を視覚的に把握する 。
3
それによって,いかに地球の歴史が壮大なも
展開
(1) 題材の概要を,題材の各場面を表した絵
のであるか,その一方で人類の歴史がいかに
(ワークシート配布)によって把握する。
小さなものであるかを感じ取る。
①教科書とワークシートを伏せて,プログ
4
次時の予告
ラム全体の本文をリスニングテープで聞く。
5
あいさつ
②次に,ワークシートを見ながらリスニン
グテープを聞く。
検証授業の過程を表したものが図5である 。
英 -8
まず,向井千秋さんの写真や月面から見た地
「人類が行ってきた環境破壊と人類愛」を取り
球の写真,荒れた森林地帯の写真等を提示し,
上げている。そこで,地球の歴史の壮大さを実
生徒に自由に印象を述べさせた。検証授業の日
感させるため,46億年の地球の歴史を1年間
には,ちょうど向井千秋さんが2回目の宇宙飛
に置き換え,歴史上の出来事がいつ頃になるの
行中だったため,テレビなどでそれを知ってい
かを計算させた。これによって生徒は,人類誕
る生徒が多く ,生徒も活発に印象を述べあった 。
生が12月31日の午後であり,地球の歴史に
次に題名の“The Home Planet ”から,この
比べていかに人類は小さな存在であるかを感じ
題材が何について書かれているのかを推測させ
取っていた。また同時に,それだけのわずかな
た。宇宙から見た美しい地球の姿と,荒れはて
時間に,人類はわがふるさと・地球を破壊して
た森林地帯の姿を写真で見ているため,生徒の
いることにも触れたが,環境破壊の問題は他教
意見としては,次のようなものがあった。
科でも学習しており,関心が高まったようであ
る。
(生徒A )“The Home Planet”=私たちが
検証授業後は,key word やkey sentenceに
住んで いる惑星= 地球についての話だと思
注目するなどして,トップダウン方式による授
う。私たちの家といえる地球の環境,宇宙か
業展開を図った。その後,夏休み中に宇宙開発
ら見た地球について書かれているプログラム
や環境問題について調べさせたレポートをもと
だと思う。このプログラムから,今後の地球
に ,各生徒に総まとめのレポートを作成させた 。
について学んでいくのではないかと思う。
それらのレポートを発表させ,質疑応答や意見
交換を行ったが,各生徒がいろいろな角度から
(生徒B )「地球は宇宙から見るとどのよう
情報を収集しており,それらの情報を交換した
になっているか」ということを通して ,「自
り整理したりすることで,環境破壊の問題につ
分たちの地球を大切にしていこう」というよ
いてあらためて認識を深めたようだった。
最後に,題名の“The Home Planet”の意味
うなことについて書かれていると思う。
を再度考えさせた 。以下生徒の意見を提示する 。
(生徒A∼Cは前と同じ生徒である 。)
(生徒C)地球と限らず,惑星がタイトルに
入っているということで,宇宙自体の不思
議さや,地球以外の惑星を広い視野で見たプ
(生徒A)私は,このプログラムを読み終え
ログラムかなと思いました。また“home”は
て,この“The Home Planet”とは,きっと
家で,家は大切だから ,「宇宙を大切に 」,
このプログラムを読んで,地球の現状,そし
そして私たち人間が,それについて考えなけ
てこの地球がどうあっていかなければならな
ればならないことを書いてあるのかなと思い
いのか,私たちが住んでいる,温かな安らぎ
ました。
のある大きな家のような惑星(=地球)につ
いて考えさせる意味を込めていると思う。こ
の地球がなくなれば,私たちの安らぎの場で
題材全体の概要を把握させるため,題材の各
場面を表した絵を提示し,並べ換えさせた。ま
ある家がなくなる 。そのような地球の大切さ ,
だこの段階では,生徒は各セクションの内容を
偉大さを考えさせて,地球の未来を守ってい
細かく知らないため,大筋は理解したものの,
くべきではないのかと思う。
細かい部分で多少間違いが見られた。
このプログラムでは,地球を舞台として,前
(生徒B )“The Home Planet”を直訳する
半は「美しい地球とすばらしい生命 」,後半は
と ,「我が家のような地球」という意味であ
英 -9
検証授業後に,次のようなアンケートを実施
り,私たちが現在住んでいる「生き物が生き
ている惑星」という意味だと思います。そし
した。
てそれは,何十億年もかけて作られたかけが
質問1
えのないものです。地球の歴史を1年で表す
ートをまとめの学習で活用しました。このレポ
と,人類誕生は本当に後の方でした。そのよ
ートは,教科書の内容に対する理解を深めるの
うな新しい生物が,短い時間で,地球の環境
に役立ちましたか。
プログラム7では,夏休みの課題レポ
を破壊し,使いきろうとしている。そのよう
(1)役に立った
30%
なことを通して ,“The Home Planet”は私
(2)どちらかといえば役に立った
34%
たちの地球であり,また,私たちが責任を持
(3)どちらともいえない
16%
って守っていかないといけない,長く大きな
(4)どちらかといえば役に立たなかった
歴史を持っているかけがえのない惑星という
(5)役に立たなかった
意味だと思います。
質問2
7%
12%
プログラム7では,学習のはじめに,
写真や絵,地球の歴史を表した1年間のカレン
(生徒C )「我が故郷の惑星 − 地球」とい
ダー,key wordやkey sentenceに関するワーク
うことが頭に浮かんできます。生命はすべて
シートを活用しました。これらのものは,教科
1つの地球で生まれ,育っているから,本当
書の内容の概要をつかむ上で役立ちましたか。
に地球はかけがえのないものだと思います。
(1)役に立った
37%
だから,人間だけのわがままで,何もできな
(2)どちらかといえば役に立った
36%
い森林や動物などの生き物を死滅させてはい
(3)どちらともいえない
16%
けないと思う。地球を共有しているというこ
(4)どちらかといえば役に立たなかった
3%
とを,もう一度深く考え直し,身近なことで
(5)役に立たなかった
7%
地球に優しくしましょうと私たちに伝えてい
どちらも「役に立った 」「どちらかといえば
ると思う。そして“home”はこれまで「家」
役に立った」を合計すると7割前後に達してい
という考えが強かったけれど,今回の学習を
る。このことから,絵や写真,リスニングテー
通して,素晴らしい生命を持った生き物たち
プ,key word,各生徒が集めた情報等,題材に
が,仲よくひとつの地球で生活するという,
関連する事項をいろいろな角度から取り上げた
大切な ことを訴え ていることが分かりまし
ことによって,生徒が題材の内容に対して抱く
た。今私たちは,自らの便利さだけを追いか
イメージが多様化し,関心を高めることにつな
けているような気がします。それに対しての
がったと考えられる。
危機感を,国語の学習(注:同時期に生命の
また,授業中に使用したワークシートでは,
歴史について学習中 )とあわせて感じました 。
題材の内容について質問し,記述式で解答させ
「 温かな心で生命が暮らしあえるような地球 」
ることによって,各生徒が作者の深い意図を再
も ,“The Home Planet”の意味だと考えま
認識するのに役だった。題材が環境破壊の問題
した。
を取り上げているだけに,生徒が日常の身近な
問題として考えるきっかけにもなった。
オ
考察
学習の成果としてあげられるのは,生徒が英
文の一つ一つにこだわるだけでなく,英文の題
材全体の概要をつかんだり,作者の意図を深く
理解するようになってきたということである。
英 -10
(2) B中学校2年
ア
“Sea Forest”
新単元に入るにあたって,事前に「まったく
読まない」とした生徒は約17パーセントと,
生徒の実態
B中学校2年生生徒129人を対象に,以下
低めである 。「絵や写真を見る」をはじめ,何
のような英語学習に対するアンケート調査を実
らかの形で事前に内容を見ており,新単元に対
施した 。(質問はすべて複数回答による)
する関心の高さがうかがえる。
質問3
質問1
英文を読む際に重視しているポイント
2年生でこれまでに学習した題材で興
味があるもの
(1)単語の意味
79%
Program 1
Kumi's Trip to London
9%
(2)単語の発音
49%
Program 2
What Does That Mean ?
9%
(3)文法事項や文型
38%
Program 3
Interesting Things and
12%
(4)一つ一つの文の和訳
43%
(5)前後の文のつながり
41%
Program 4
Soccer in Brazil
24%
(6)文化的・歴史的背景などの関連事項
5%
Program 5
A Birthday Present
42%
(7)文章の題名(タイトル)
9%
Program 6
Kumi Sends a Present
11%
Places in Australia
(8)教科書に載っている写真や絵
21%
最も多かったのが,放送劇という形式の,
(9)教科書の本文以外の説明文
14%
Program 5 “A Birthday Present”で,42パ
(10)セクション(プログラム)全体の話の流れ 33%
ーセントに上る。ここではまず,教科書の挿絵
(11)その他
だけを見て自分たちで話の筋を考えさせ,その
2%
英文を読む際,生徒が最も重視しているのは
後,本文を読ませた。自分の予想した話と教科
「単語の意味 」であり ,回答者の約8割に上る 。
書の英文を比較しながら読むことになり,読む
「単語の発音 」,「一つ一つの文の和訳」がそ
ためのモチベーションは高められた 。「挿絵か
れに続いており,形式スキーマの方が内容スキ
らは予想できない意外な展開に驚いた 」,「ス
ーマよりも重視されている傾向が読み取れる。
トーリー性があって読んでみようという気にさ
一方で ,「前後の文のつながり」や「そのセ
せる」などの感想があった。
クション(プログラム)全体の話の流れ」も3
イ
∼4割の生徒が重視している。これは,これま
今回指導の実際として取り上げたProgram 7
での授業における読解指導で,細部にこだわり
“Sea Forest”は,現在「マングローブ植林計
過ぎずに要点や文章全体の流れをつかむことを
画(ACTMANG)」の代表である向後元彦氏が,熱
重視してきたが,そのことの大切さが理解され
帯の海岸近くに育つマングローブに着目し,そ
てきている表れであると思われる。
れを中東の砂漠沿岸に植栽しようとした取り組
質問2
みについて書かれたものである。題材の背景と
新単元に入るときどうしているか
単元の目標
(1)まったく読まない
17%
なる部分に十分な理解がないと,表面的な読み
(2)写真や絵を見る
36%
取りでは筆者の意図することが伝わりにくい内
(3)写真や絵を見たり説明の日本文を読む 16%
容である。また,4つのセクションのそれぞれ
(4)写真や絵を見て,説明の日本文を読 14%
の要点を押さえ,それらのつながりを十分に把
み,さらに英文も読む
握していないと,やはり内容を理解することが
(5)単語だけを調べる
(6)英文だけを読む
30%
6%
難しい。そこで,本単元の目標を次のように設
定した。
(7)人に教えてもらったり,参考書を使 13%
○題材の概要や筋道を的確につかむことができ
うなどして詳しく読む
るようになる。
英 -11
○題材に関する情報を自ら収集し,活用するこ
プダウン方式で題材の概要をつかむことに主眼
とによって,題材の持つ深い意味に目を向けら
を置いた。その後,文法事項の説明等を加え,
れるようになる。
細部の読み取りを行った。
ウ
4は,Section 1の内容について深く理解す
学習指導の実際
上記の単元の目標の達成のため,以下のよう
るために,3つの視点を提示し,班で討議させ
た。その際,各自が書いた事前レポートを資料
な指導計画を作成した。
として活用させた。これにより,砂漠や熱帯雨
1
林についてのスキーマの増殖,活性化を促し,
事前レポートの作成
①砂漠について
更に各自の読み取ったイメージを再構築するこ
②熱帯雨林について
とをねらった。
8は,プログラム全体を読み終えた後で再び
③マングローブについて
題名について考えさせた。その際,事前の推測
④向後元彦氏について
と比較させ,プログラム全体について再構築を
2
促した。更に題名にこめられた意味について考
題名について推測
えさせた。
What is Sea Forest ?
エ
3
本時 (3/10)
(ア)本時の目標
Section 1の概要の把握
題材に関する情報を活用し,Section 1の内
4
Section 1の細部の読解
容について深く理解する。
(本時)
(イ)本時の授業仮説
(1)砂漠とは何だろう
生徒は,Section 1の概要は理解できても,
(2)熱帯雨林の役目は何だろう
その内容の深い部分については理解が不十分で
(3)なぜ熱帯雨林が破壊されるのだろう
あり,森林破壊と砂漠化がすんなりとは結びつ
5
かない。各自の持つ「砂漠」に関するスキーマ
Section 2の読解
の限界と考えられる 。「砂漠」の定義について
6
教師から与えるのではなく,生徒自ら迫ること
Section 3の読解
によって,内容の深い部分を理解できるのでは
7
ないかと思われた。以上のことから,本時の授
Section 4の読解
業仮説を次のように設定した。
8
題名について考察
○「砂漠」の定義や「熱帯雨林」について,事
再び What is Sea Forest ?
前レポートを活用して班で討議すれば,各自の
持つ情報が交換され,生徒はスキーマの増殖や
1の事前レポートの課題は,それぞれこの単
元をよく理解していくために必要なものであ
活性化を行い,Section 1の内容の深い部分を
理解できるであろう。
る。4つの中から自ら選択して調べさせ(情報
の収集活動 ),各自のスキーマの形成を促した 。
2は ,“Sea Forest”という題名からイメー
ジされるものを絵や言葉で自由に表現させ,プ
ログラム全体に対する初期連想を促した。
3及び5∼7は,従来の指導を継続し,トッ
英 -12
事前レポートを見せあい,情報を交換したり,
(ウ)授業の実際
1
あいさつをする。
取捨選択して答えをまとめ上げていたようであ
2
英語の歌を聴く。
る。考察結果の発表では,似たような答えであ
りながら,違った視点から考察もあり,感心し
ALL YOU NEED IS LOVE
たり,納得した様子の生徒も見られた。この時
by The Beatles
3
点でさらにスキーマの増殖や活性化がなされた
前時の復習
と思われる。
(1)不定詞の名詞的用法
(1)については,砂漠とは単に砂ばかりの状
(2)本文の概要の復習
○地上で起こっている変化について
態を言うのではなく,草木がはえなくなって荒
○このままだとどうなると言っている
れた土地,石や岩の状態でも砂漠と言うのだと
知って,驚いた様子であった。
のでしょうか
4
(2)(3)については,理科や社会の知識も手伝
Section 1の背景や関連事項について
って,地球環境レベルで総合的に関連づけて発
考察し,発表する。
表する姿が見られた。
(1)砂漠とは何だろう
(4)については,地図帳の巻末資料から面積
(2)熱帯雨林の役目は何だろう
(3)なぜ熱帯雨林が破壊されるのだろう
を求め,素早く計算する生徒が見られた。有史
(4)このままだと地球全土が砂漠化するの
以来に砂漠化が進んでいれば,すでに地球全土
が砂漠化しているという計算結果に驚いた様子
は何年後だろう
5
であった。
まとめ
オ
もう一度Section 1を読む。
本単元の指導における生徒の変容を計るた
検証授業の過程を表したものが図6である。
4の活動は,班で協力して考察させた。各自の
考察
め,次のような事後アンケートを行った。
英 -13
質問1
今後も調べ学習を望んでいる生徒は約6割に
事前レポートは教科書の内容理解に役
上り,感心の高さを感じさせる。Program 7に
立ったか
(1)大変役に立った
5%
ついての全体的な感想に ,「調べることで内容
(2)少し役に立った
35%
をうまく理解できたのでよかった」というもの
(3)あまり役に立たなかった
35%
があった。
(4)まったく役に立たなかった
13%
質問4
英文を読む際に今後注意したいこと
半数近くの生徒が,何らかの形で事前レポー
(1)単語の意味
80%
トが教科書の内容理解に役立ったと感じてい
(2)単語の発音
57%
る。その理由としては ,「砂漠とは何か,どう
(3)文法事項や文型
52%
して砂漠化するのかを考えることができた 」
「砂
(4)一つ一つの文の和訳
51%
漠のイメージが変わった 」「マングローブの性
(5)前後の文のつながり
45%
質や,どこに育つかなどを知って,向後さんの
(6)文化的・歴史的背景などの関連事項
12%
考えがよくわかった」などがあげられていた。
(7)文章の題名(タイトル)
一方で,内容理解に役に立っていないと答え
8%
(8)教科書に載っている写真や絵
17%
た生徒が半数近くいた。その理由として,事前
(9)教科書の本文以外の説明文
19%
レポートそのものを書いていなかったり,内容
(10)セクション (プログラム)全体の話の流れ
34%
と関係ないものを書いていたり,調べた内容が
(11)その他
不十分であったことが考えられる。
*複数回答による
質問2
班討議は題材の内容理解に役立ったか
4%
事前アンケートと比較して目を引くのは ,
「文
(1)大変役に立った
4%
化的・歴史的背景などの関連事項」であろう。
(2)少し役に立った
34%
事前アンケートではわずか5パーセントにすぎ
(3)あまり役に立たなかった
45%
なかったが,事後アンケートでは12パーセン
(4)まったく役に立たなかった
10%
トと割合が増加している。これは,今回の指導
内容理解に役立ったこととして ,「熱帯雨林
を通して,英文を読む際には文章そのものだけ
の役割を知ることができた 」「他の人の調べた
でなく,題材に関する文化的・歴史的背景など
別の考えを聞けて,自分が知らなかったことも
の情報の有無が,内容理解を左右することを実
わかった 」「学習を進めていく上でのキーワー
感したためではないだろうか。
本単元の学習に対する全体的な感想に ,「話
ドの意味がよくわかった 」等があげられている 。
一方,班討議が役に立たなかったという答え
の流れもわかりやすかったし,事前に調べてい
が半数以上あった。これは,初めて班討議とい
たことなどが一層話を読みやすくした」という
う形をとったことや,討議に利用した事前レポ
ものがあった。題材に関する情報を自ら収集し
ートは各班員のものだけであり,班によっては
活用することが ,「読むこと」に対する意欲を
資料として不足のところもあったことが考えら
高め,題材の内容理解もスムーズにしたと言え
れる。
るのではないだろうか。
質問3
今後も教科書の内容に沿った調べ学習
をしたいと思うか
(1)ぜひやりたい
8%
(2)やってもいい
52%
(3)あまりやりたくない
21%
(4)まったくやりたくない
13%
英 -14
Ⅵ
研究のまとめと今後の課題
く理解するために効果があったと考えられる。
題材の内容を深く理解するために,教師が設
1
研究のまとめ
定した視点について班で考えさせた。各自の情
本年度は ,「読むこと」の能力を高める研究
報を交換し合うこと(情報の活用)によって,
に取り組み,題材に即した情報の収集と活用を
内容スキーマの増殖や活性化をねらった。最初
取り入れた学習指導の研究を行った 。その結果 ,
は不慣れな様子だったが,段々とスムーズに活
次のようなことが明らかになった。
動する姿が見られるようになった。また,班で
(1)「読むこと」について
討議する中で,お互いに教えたり,教えられた
事前アンケートで明らかになった生徒の実態
りする関係が見られた。生徒の感想の中に,他
は,単語や文法事項等の形式スキーマを重視し
の人の考えを聞いて,考えを深めることができ
て英文を読んでいるというものであった。検証
たというものがあり,情報の活用による効果と
授業後のアンケートでは,文化的・歴史的背景
考えられる。
などの関連事項を重視する生徒が倍増してい
この活動は,母国語を使ったものであるにせ
る。また,生徒の感想から,内容スキーマの有
よ,コミュニケーション活動の意義深い実践に
無によって題材の理解度が違うことや,少しず
もなっている。すなわち,理解するという過程
つではあるが,内容スキーマの重要性に気づき
にはコミュニケーション活動がいかに重要な役
つつある様子がうかがえる。
割を果たすかという事実を体験することにもな
本研究では,指導法の工夫として初期連想と
るからである。この点も,生徒に気付かせ,コ
トップダウン方式を取り入れた。題名や教科書
ミュニケーション活動への動機づけの一助にな
の写真からの初期連想は,生徒の新しい単元へ
ると考えられる。
の強い動機づけになることが分かった。単元終
了後に再度題名の意味を考えさせることによ
2
今後の課題
り,作者の意図を深く読みとることができたと
題材に関する情報を,生徒が自ら収集し活用
考える。また,トップダウン方式は,題材全体
することは,生徒の主体的な意欲を高め ,「読
の概要から細部の理解へと進ませる上で,大変
むこと」の能力を高めることに効果をもたらし
効果があったと言える。
たと考えられる。一方で,以下にあげる点が今
(2) 情報の収集と活用について
後の課題と考える。
(1) 年間指導計画の立案
従来は,題材に関する情報で不足するものに
ついては,教師が生徒に与えていた。本研究で
今回2校の検証授業は説明文を題材にして行
は,事前に生徒にいくつかのテーマを与えて,
った。会話文や物語など,題材に即した指導計
題材に関する情報の収集活動を行わせた。情報
画を年間計画に位置づけることが必要である。
の収集活動に対する生徒の意欲は高く,各家庭
(2) 情報収集の工夫
にある書物や図書館の各種文献,さらにはイン
今回は情報収集にあたり,テーマを各自が自
ターネットの活用など,あらゆるものを情報源
由に選択した。情報収集を行う際は,班やその
として,教師も知らなかった情報や,詳細な情
他のグループ(例えば選択したテーマ別のグル
報まで調べた生徒も少なくなかった。
ープ)ごとに割り振って行わせるなどの方法も
事後アンケートや感想において,題材に関す
る情報について自ら収集することが内容の理解
考えられる。いろいろな方法を試行し,より効
果が上がる方法を工夫する必要がある。
に役立ったとして,今後も同様の活動を望む意
(3) 効果的な情報活用の仕方
見があり,情報の収集活動は,題材の内容を深
今回は班討議を取り入れ,それぞれのテーマ
英 -15
について話し合ったり,そのために必要な情報
さらに多様な方法で行えるように工夫する必要
を他の班から収集するなどの方法で,情報の活
がある。
用を促した 。生徒が情報活用を行う場の設定を ,
( 参考 文献 )
1
文
部
省
情 報 教 育 に 関す る 手 引
ぎ ょ う せい
( 平成 3年 )
2
高
野
陽太 郎
認知 心理 学 2
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東京 大 学出 版 会
( 1991年)
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由記 雄
認知 心理 学 3
言語
東京 大 学出 版 会
( 1995年)
4
天
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美智子
新 し い 英 文 読解 法
岩波書店
( 平成 6年 )
5
谷
口
賢一 郎
英語 のニ ュ ーリ ー ディ ング
大修 館 書店
( 1992年)
研 究 指 導 者
谷
口
政
研究助言者
昭( 主 任指 導主 事 )
武
井
俊
詳 (西 南 学院 大 学教 授)
男( 百 道中 学校 )
浦
田
毅
彦 (三 筑 中学 校 )
非常 勤 研修 員
中
山
正
英 -16
Fly UP