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消化器外科ナーシング創刊20周年ウェブ企画
手術のあとの「痛み」への対処を知って 早期退院をめざしましょう 「痛み」は必要ない? ∼痛みが知らせる大事な警告サイン∼ 「痛み」は、本来、異常を知らせる警告サインです。 身体が危険にさらされた時、早急な対応が必要な時、 私たちは「痛み」を感じるからこそ、危険から逃れることができます。 「痛み」はただの悪者ではなく、私たちの身体を守る大事なサインなのです。 しかし、 「痛み」は、誰にとってもつらく不快なものです。 むやみに長く続かせる必要はありません。 「痛み」が知らせる原因を見つけ、警告サインの役割が終われば ただちに、 「痛み」を止める。 これが、手術のあとの「痛み」対処の原則です。 手術の後は、「痛み」を止めて、なるべく早く動き始めましょう。 ここに、早期退院を目指すための、ヒントを集めました。 周術期疼痛管理研究会 消化器外科ナーシング創刊20周年ウェブ企画 ◆手術後の痛みってどんな「痛み」? 慢性痛(腰痛、神経痛など)とは違うの? 手術後の痛み (急性痛) の特徴 ・長く続かない、一過性 (ピークは術後 8 ∼ 12 時間) ・強く激しい痛み ・体の異常を知らせるサイン ・原因(手術)が明確 ・痛みは「症状」 ・痛みに順応するのは困難 ・鎮痛薬がよく効く つまり‥ 慢性痛(腰痛、神経痛など) の特徴 ・長く続く ・不定期、不規則な痛みが重なる ・原因を特定するのが困難 ・原因を取り除くのが困難 ・痛み自体が「病気」 ・痛みに順応できる場合もある ・続く痛みがストレスになる 手術後の痛み(急性痛)って、こんな痛み! ・ 「手術」による傷や臓器への刺激、管が入っていることが痛みの原因 ・手術からの回復とともに、弱くなっていく痛みです ・時に、異常を知らせてくれるサインでもあります ・しかし、 「がまん」するのが難しい痛みです ・そのため、日常生活行動の妨げになり、回復の遅れにつながります ・放置すると慢性化する場合があります ・鎮痛薬がよく効きます。早めに使って痛みを和らげましょう ・一時的な痛みなので、薬を使い続ける心配はありません 痛みは、手術を受けた本人しかわかりません。 痛みを、ゼロにすることはできません。 でも、痛みをよく知って対処することで、軽くすることができます。 だから看護師は、あなたの痛みを知りたいと考えています。 消化器外科ナーシング創刊20周年ウェブ企画 ◆手術の後、私たちの身体はどうなっているのでしょう? 大切なチューブや機械 が、たくさんついています ○体に栄養や薬を補給するための点滴 ○尿の排泄を促すためのチューブ ○手術による血液などを排出するためのチューブ ○酸素マスク ○鼻から胃液を出すためのチューブ ○血栓を予防するための、フットポンプ ○その他、機械類(点滴の機械や心電図など) 体の機能が、手術によって一時的に弱くなっています ○急に体を起こすと、めまいや吐き気が生じることがあります ○貧血や筋力の低下により、ふらつくことがあります ○呼吸がしにくく、息切れがすることもあります ○尿や便が出にくくなることがあります ○栄養状態が悪く、傷の治りが遅くなることがあります *手術によって異なります。また個人差があります。 消化器外科ナーシング創刊20周年ウェブ企画 ◆痛みから生じる、様々な悪影響を知っておきましょう 血圧が高くなる 筋肉が緊張する 痛みの信号が出る 筋肉痛 血管が縮む 息がしづらくなる 体に血液が行き届かない 痛い! 不安や心配 貧血 肺炎など 不眠 筋力低下 深部静脈血栓 回復が遅れる 活動の低下・離床の遅れ 床ずれ 脈が速くなる 動悸や不整脈 転倒 痛みを放置すると、様々な悪影響があり、回復を遅らせる原因になります。 ◆痛みは身体だけのサインじゃない!∼痛みが増強するきっかけは?∼ 身体面 ・手術の状況(傷の大きさや場所、 管の種類や固定方法、手術時間、手術の体位、麻酔方法等) ・もともと持っている病気の様子 心理面 社会面 ・仕事を休むことや職場復帰への心配 ・家庭のこと、家族に対する心配 ・地域の役割の中断への心配 ・経済面への不安 ・手術や痛みへの不安 ・手術や治療への恐怖 ・回復への焦り ・治療や医療者への不信感 消化器外科ナーシング創刊20周年ウェブ企画 ◆手術のあと、痛みを感じたら… 1.まずナースコール! 痛みは、我慢しないようにしましょう。痛みは強くなるほど、緩和しにくくなります。 早めに看護師に伝えることが大切です。 2.あなたの痛みを説明しましょう! 痛みはあなたにしか分かりません。どこが、どんなふうに、どのくらい痛むのか、 あなた自身が看護師に伝えることが、痛み緩和の第一歩です。 <どこが痛い?> 痛いところはどこですか? 痛むところを●印で示してください □傷が痛む(傷の上の部分、中央、下など) □管が入っているところが痛い、または不快(どこの管か) □体の中が痛い(おなかの中、胸の中など) □動けなくてつらい 消化器外科ナーシング創刊20周年ウェブ企画 <どんなふうに痛い?> □繰り返し痛む、または差し込むように痛む □痛い部分が移動している、または止まっている □痛む場所は広い、または狭い □痛みは深い、または浅い <どのくらい痛い?> 方法 1 0 方法 2 難しく考えないで、思うままに表現しましょう。 痛み無しをゼロ、最悪の痛みを 10 とした時、今の痛みは? 2 5 8 10 体を動かしたり、せきや深呼吸をした時の痛みはどうですか? 0−せきをしても痛みがない 1−せきをすると痛いが、深呼吸しても痛くない 2−深呼吸をすると痛いが、安静にしていると痛くない 3−安静にしていても少し痛いが、痛み止めの薬は必要ない 4−安静にしていても痛みがあり、痛み止めの薬が必要 3.痛みに影響する要因を知っておきましょう! 痛みは、様々な状況から影響を受けます。 次の項目に当てはまるようなら、早めに看護師に伝えましょう。 □心配なことがある(手術、痛み、入院期間、仕事、家族、入院費など) □早く回復しようと焦っている、または無理をしている □家族に心配をかけたくない、看護師に迷惑をかけたくない □高血圧、便秘、頭痛、いらいら、不眠、などの症状がもともとある 消化器外科ナーシング創刊20周年ウェブ企画 4. 「こうすれば楽になる」と思うことは、看護師に教えてください 例えば・・・こんなことは看護師に伝えてください 『足を高くしたら楽になると思う』 □足がだるくなった・・・・・・・ □同じ向きで疲れた・・・・・・・ 『体の向きを変えたい』 □腰が痛い・・・・・・・・・・・ 『腰の下にタオルを入れると楽かもしれない』 □頭が重い・・・・・・・・・・・ 『頭を冷やしたらすっきりしそう』 □寒気がする・・・・・・・・・・ 『電気毛布の温度を調節したい』 □のどが乾燥して痛い・・・・・・ 『うがいをしたい、口の中を湿らせたい』 □傷が痛い・・・・・・・・・・・ 『手を当てておくと落ち着く気がするけど怖い』 □管やテープがひきつれる・・・・ 『管やテープの位置を変えてほしい』 5.ご家族にもできることがあります ご家族の支えは、術後の回復への大きな力となります。 足や腰をゆっくりさすることは、 痛みを和らげる効果があります。 手を握ることも効果があります。 痛みがあるときは、我慢しないように伝え、 看護師を呼んでください。 また、気になることは何でも、看護師にご相談ください。 (井川・藤森) 消化器外科ナーシング創刊20周年ウェブ企画