Comments
Description
Transcript
No.08 - 秋田大学医学部
次世代がん治療推進専門家養成プラン秋田大学 が ん プ ロニ ュ ー ス No.6平成27年1月30日発行 平成26年9月○日発行 No.08 【発 行】 次世代がん治療推進専門家養成プラン秋田大学事務局 HP:http://www.med.akita-u.ac.jp/~ganpro24/ もっと素敵な秋田県になって欲しい。私たちは秋田のがん医療をよくしようと頑張っています。 私たちの使命を皆さんに知っていただきたい。それは「がんのプロ」と呼べる医療人の育成です。 共に考えてゆきたい、どうすれば秋田のがん医療は良くなるのか。皆さんの意見もお聞かせ下さい。 【今号は】 ● 緩和ケアの専門性 ● がんプロから生まれたがん看護専門看護師です! ● おしらせ 講演会の開催について 緩和ケアの専門性 秋田大学大学院保健学専攻臨床看護学講座 教授 秋田大学医学部附属病院緩和ケアセンター センター長 秋田大学医学部附属病院総合臨床教育研修センター 副センター長 安藤 秀明 緩和ケアは、弱った巡礼者や旅人に対する教会での看取りから始まった。死への恐 怖、不安や痛みなどに対して、経験の蓄積から得られた知識で対応されていた。柏木ら の報告では、がんの終末期において、疼痛は早期より出現しQOLに影響するが、その他 の症状が出現するのは死亡前1~2週間であった。以上の結果から、がん治療の終末期医療は、第一に痛みの マネージメントを十分に行うことであり、次いで行うのは、残された時間でいかに自分らしく死を迎えられ るかがポイントになる。この様に、患者本位の医療やケアに焦点を当てた緩和ケアが、がん対策基本法の成 立後よりクローズアップされることになった。 この様な背景から生まれた緩和ケア。当初は私も含めて、がん治療経験が豊富ながん治療医が、蓄積した 経験則により対応していた。鎮痛薬の使い方や患者とのコミュニケーションの取り方なども経験値による対 応であった。しかし、現在の緩和ケアは、経験や個人的なパーソナリティで対応されるものではない。痛み は、その原因がきちんとアセスメントし、その原因に適した薬剤を再度アセスメント継続しながら薬剤・投 与量・投与間隔を調整してゆく。近年、疼痛マネージメントにおいて、オピオイド使用が推奨されたため、 安易に、がん性疼痛=オピオイド処方とされているのではないか。痛みは、体性痛・内臓痛・神経障害性疼 痛に分類され、適した薬剤を選定すべきで、オピオイドが万能では無い。そして、がん患者でさえも、がん 以外の原因で疼痛が生ずる。がん患者であっても、腰痛や頭痛があるのは当たり前のことである。これま で、痛みを評価することが難しかったため、鎮痛薬の動物実験を含めた基礎実験は困難であった。現在で は、薬剤効果や作用機序に関する基礎実験が行われ、薬効については前向き試験も行われている。コミュニ ケーションスキルにおいても、緩和ケア研修会で使用されている、コミュニケーション技法SHAREは、悪い 知らせを受けた方にインタビューを行い、一言一句を分析して確立したものである。精神腫瘍学という分野 での研究であり、悪い知らせの伝え方、言葉の選び方、知らせを受けた患者の気持ちの推移など、すべて体 系化されたエビデンスに基づいたものである。 緩和ケアは経験則からなりたつものではなく、エビデンスに基づいた専門性の 高い学問である。その手法は、薬剤のみならず、「ケア」という、患者に主観的 評価されるものが多いため評価方法の開発や適切な評価ツールを用いて分析する ことになる。したがって、「緩和医療」ではなく「緩和ケア」なのである。そし て、そのあり方は、最近よく耳にする多職種連携が中心となる。患者を全人的に 評価するためには、評価者も多面的にならなければいけない。この場合の、多職 種とは、各分野の専門家と言う意味と、その専門分野の狭間を埋めることのでき る医療人が求められる。多職種がそれぞれ関わるのでは無く、お互いの専門性を 理解し合った融合ができることが求められる。 秋田大学は、日本緩和医療学会の認定研修施設なので、是非、当院で緩和ケア を科学して、緩和医療専門医を目指してください。 【発行】次世代がん治療推進専門家養成プラン秋田大学事務局 がんプロから生まれたがん看護専門看護師です! 秋田大学医学部附属病院相談支援センター(がん看護専門看護師) 今野 麻衣子 今年度からがんプロ委員の仲間入りをしました。私もがんプロの恩恵を受けてがん看護 専門看護師の資格を取得できましたので,微力ながら恩返しができたらと模索中です。 まずは,この場を借りて,専門看護師とは何者か?という問いにお答えすることから始 めたいと思います。 専門看護師は,認定看護師と同様,日本看護協会で認定する資格で,Certified Nurse Specialistの略としてCNSと呼ばれます。(ちなみに認定看護師はCertified Nurse:CNです)CNSには6つの役 割が求められ,①直接ケア,②コンサルテーション,③コーディネーション,④倫理調整,⑤教育,⑥研究, を行います。 CNSの存在意義は,ジェネラリストの実践能力を向上させて,患者さんのアウトカムを高めることです。つま り,CNSは,ジェネラリストに活用してもらう,リソースナースなのです。では,皆さんは,どんな資源だった ら使いたいと思うでしょうか。 リソースとは,目的を達成するために役立つ、あるいは必要となる要素のことと言われています。つまり目 的や目標がない状況においては登場の機会はないものと思います。当院のスタッフ,看護部はじめ,秋田県看 護協会におきましては,秋田県での第一走者ということもあって,CNSへの関心,期待を高く持っていただき, 院内での活動支援や研修会・学会等の講師に呼んでいただく等,看護の質の向上という目的のために活用して いただけていると感じています。当然,背景にはがん罹患率の上昇,高齢化,在院日数短縮化,がん医療技術 の進歩など,社会的要因があることは明らかです。 さて,活用されるリソースの条件は何かという話題に戻ります。人的資源の持つ固有の能力を,「調整力」 「統合力」「判断力」「想像力」と,あのドラッカーは言っています。そして,その能力は外部の力によって 開発されるものではなく,内部から行われる成長によるといいます。つまり自分の中に成長を求める意識があ るかどうかによるのです。 ちなみに,自己分析をしてみますと,4つの能力いずれも特別優れているとはいえません。今は並でも,能力 を開発していける可能性が私にもあるわけですので,頑張ろう!と思えるポジティブさは持ち合わせておりま す。 そして人的資源の能力は,パフォーマンスとして可視化され,そこに責任が要求されると言われます。一方 組織は,人的資源が責任ある労働者となってもらうために,管理者の真摯さが求められると言われます。こ の,人的資源とそれを活用する人(管理者に限らず)の間にある「責任」と「真摯さ」の相互作用が最も重要 だというのが,ドラッカーの主張です。 CNSの役割の一つであるコンサルテーションとは,相談者であるコンサルティとコンサルタントの,共通の目 標に向かう相互作用でありプロセスであるとされています。そこには上下関係はなく,専門家同士の協働作業 があります。管理者との上下関係は別ですが,看護師という専門家同士の間で活用する,されるという関係に おいては,そこにそれぞれの責任と看護の質の向上を求めていく真摯さが不可欠であると改めて感じます。 コンサルテーションに関しては,看護師の世界ではまだまだ浸透していない現状です。しかし,CNSやCNのよ うに看護においても専門分化が進んできたので,専門家との協働という意識へ徐々にシフトしています。上か ら目線であったり,正論を振りかざすだけの専門家は,組織に根付いた人的資源にはなりえないことは明らか です。やはり,専門性と能力開発を意識した謙虚さと,患者さんや家族,現場や周囲の状況を的確にアセスメ ントできる視点を磨きながら,使えるCNSになれるよう,一歩ずつ地固めをしていけたらなと思っています。 おしらせ 講演会の開催について 次世代がん治療推進専門家養成プラン秋田大学では がん研究会有明病院がん看護専門看護師、ホスピスケア研究会理事の花出正美先生をお招きし、 いかにして、Cancer Survivorを支援するか ―がん患者・家族の為のサポートプログラム「がんを知って歩む会」の活動について― の演題で、講演会を開催いたします。皆様のご来場をお待ちしております。 詳細はがんプロホームページ (http://www.med.akita-u.ac.jp/~ganpro24/)をご覧ください。 お問合せは「次世代がんプロ」秋田大学事務局まで(018-884-6543) 開催日程 平成27年2月14日(土) 会 場 秋田大学医学部医学系研究棟総2講 対 象 看護師、臨床心理士、MSW、管理栄養士、その他メディカルスタッフ等