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平成19年10月10日 サンフランシスコ産業情報センター 駐在員
平成19年10月10日 サンフランシスコ産業情報センター 駐在員 小柳津彰啓 一般調査報告書 「NBAA2007」展示会場から垣間見たビジネスジェット産業動向 9 月 25 日から 27 日にかけて、ジョージア州アトランタで、全米ビジネス航空協会 ( National Business Aviation Association : NBAA ) の 年 次 総 会 ・ 展 示 会 で あ る 「NBAA2007」が開催されました。総会でのセッション、展示会、実機展示場へ 32000 人以上が来場した今年で 60 回目となるこのイベントに、愛知県も昨年、一昨年に続 き 3 年連続して県営名古屋空港ブースを出展したほか、ビジネスジェットオペレー ター企業のブースや業界メディアを訪問し名古屋空港の利便性を説明するなど PR に 努めました。そこで今回は「NBAA2007」の会場の様子と、そこから垣間見られた同業 界の動向について報告します。 <ビジネスジェット業界メインプレイヤー大集合> NBAA の発表によると、今年の同イベントには過去最多の 1152 ブースが出展(昨年は 1140 ブース)。出展者の顔ぶれを見ながら巨大な展示会場をひとまわりしてみると、 広大なブースに機体を展示しているエアバス社、ボーイングビジネスジェット社、ボ ンバルディア社、セスナ社、ダッソーファルコン社、エクリプス社、エンブラエル社、 ガルフストリーム社、そしてホンダジェットで脚光を浴びるホンダエアクラフト社な どのビジネスジェット製造業各社に目が止まります。 さらには、GE アビエイション社、GE ホンダエアロエンジンズ社などのエンジン製 造業者、エンジンのほか自動操縦装置、レーダー、航法援助装置などでも大手のハネ ウェル社を始めとする航空機用電子機器(アビオニクス)関連、バッテリー、窓ガラス、 航空機部品のサプライヤー、座席、カーペット、レザーなど内装品関連企業が見られ ます。 このほか、BP エア社、シェベロンアビエイション社、エクソンモービルアビエイショ ン社など燃料供給、機体の保守サービス業、航空機のディストリビュータ、運航及び マネジメント会社、エンジニアリング会社、県営名古屋空港のようなビジネス機の拠 点空港、格納庫建設業者、FBO、おしぼりやヘッドセットなど機内サービス業者、ケー タリング業者、救命胴衣などの装置会社、タイヤ、運搬、コンピュータシステム、ビ ジネスジェット機チャーター会社、素材関連、業界向け保険、金融、クレジットカー ド会社など、非常に多岐に渡っているのが分かります。 NBAA2007 県営名古屋空港ブースでの PR NBAA2007 展示会場 出展企業ブース <どのセッションに参加する? 展示だけでなくセッションも最多?> ビジネスジェット業界といっても、これだけ裾野が広く様々な分野の企業が集まっ ていますので、会議のセッションもやはり広範囲に渡っています。 セッションは展示期間を含む 1 週間に渡り、 様々なプログラムが組まれていました。 一例を紹介すると、非常時対応、技術者や乗務員など航空部門の人事管理、フライト 全般のマネジメント、規制や最新システムの動向、オペレーション、メンテナンスな どの各種ワークショップ、ビジネス航空部門における税制・規制・危機管理、セキュリ ティー、保険に関するセッション、操縦士、乗務員らのトレーニング、FBO の施設や サービス及びその管理、飛行機の性能・信頼性・保守、フライトにおける健康への影響、 安全基準、チャーター機、超音速機、超軽量機、プライベート機、安全管理装置、ビ ジョンシステム等各種装置などのフライトオペレーションに関するセッション、ビジ ネスジェット業界への就職を目指す学生向けのセッション、主なビジネスジェット製 造業各社の機体ごとのメンテナンスとオペレーション担当者との意見交換の場、NBAA の各種委員会ミーティングと 100 以上にのぼりました。 NBAA2007 展示会場風景 <活況を呈するビジネスジェット業界、それもそのはず> 25 日のオープニングセッションの中で、運輸長官は技術の進歩とビジネス機売上の 著しい増加を賞賛していますし、開催地ジョージア州の知事は、同州におけるビジネ スジェット業界の果たしている役割について次のように述べていました。同州には同 業界の 500 社が立地し 83000 人の雇用が生まれている、さらにセスナ社の施設拡張に よる 2400 万ドルの投資やガルフストリーム社の 4000 万ドルの投資により新たに 1100 人の雇用が見込まれている、と。 ハネウェル社が「NBAA2007」で発表した 2007 年の同業界概観によると、2007 年上 半期の実績では、900 機以上を受注し、446 機納入済(昨年同期比 11%増)であるこ とから、2007 年は、最多だった昨年実績の 861 機を大きく上回り、史上初めて 1000 機を超える納入見込みで、さらに 2008 年には 1300 機に達すると予測しています。長 期展望では、欧州、アジアでの購入が大幅に伸びるとの見込みから、今後 10 年間で 14000 機、2330 億ドルの売上を予測しています。 以上のように米国においては活況を呈している同業界ですが、米国は広大でインフ ラも整っているという理由ばかりでなく、一般旅客機の遅れや混雑から開放されるこ と(米国では旅客機が実によく遅れます)、セキュリティー面でも安心なこと、機内 でくつろげる快適さ・オフィス機能の充実を思えば、多忙な企業経営者などがビジネ スジェットを利用するのもうなずける話です。 さらに、米国の場合は大都市の空港のようなセキュリティーチェックの長い列や煩 わしさから開放され、小型機専用の空港もたくさんあることから目的地からも遠くな く、プライバシーも保てるとあれば需要が増すのも当然です。 <専用空港のアドバンテージ、どう活かす?> 今回「NBAA2007」の会場では、出展者の日本企業以外にも、日本ビジネス航空協会 (JBAA)メンバー、運航支援会社、オペレーター、商社、部品サプライヤー、記者な ど日本から訪れていた多くの方々にお会いしました。中には、空港におけるビジネス ジェット利用促進あるいはその検討をしている他自治体駐在員及び空港担当者も来 場しており、県営名古屋空港のようにブースこそ構えていませんでしたが、会場内で 地元の空港を PR しつつ、来年以降の出展を検討していました。年々日本におけるビ ジネスジェットの気運の高まりを感じます。 日本の航空宇宙産業においても、旅客機ばかりでなく、既に米国のビジネスジェッ ト製造業者へ日本企業が主翼供給を開始するなどの動きもあるわけですが、最近では、 その主翼を供給する企業が米国でのビジネスジェット機需要拡大に応じ、月間の生産 量を 3 倍に引き上げるとの報道がありました。このように、この分野における日本企 業の活躍の場も今後益々増加してくるのではないでしょうか。 日本におけるビジネス機の利用についても、今後はアジアへのビジネス機でのフラ イトという点から、さらに前述の迅速さ、快適さ、安全性などの理由からも需要が増 してくるのではないかと思います。 グローバルビジネスの進展と世界的にみられるビジネス機需要の増加、機体そのも のの改良や増加からも、海外から日本へのビジネスジェットでの飛来も当然増加する ことが予想されます。 今後こうした機能は国際的な大都市圏に不可欠となるのではないかと思うのです が、既に愛知県及びグレーター名古屋地域は、県営名古屋空港という、簡単迅速な手 続き・出入国審査、良好な都心へのアクセス、いつでも確保できる十分な発着枠を提 供できるビジネス機の拠点空港を手に入れたわけです。ビジネスジェットを取り巻く 最近の環境の変化を追い風に、地元企業や産業界のビジネス需要に応え、コンベン ション・イベントへの来訪者の玄関口としての役割が増すことを期待したいですし、 日本国内におけるこのアドバンテージを活かせるような地域の発展を期待したいと 思います。