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ブラインドサッカー集客数向上のための施策 ~ダイバーシティ推進を
ブラインドサッカー集客数向上のための施策 ~ダイバーシティ推進を目指して~ 帝京大学 片上ゼミ ○和田 征大 河村 幸真 北野 春統 嶋内 裕太 林 翔太 山口達也 ゼミ生一同 1.緒言 企業におけるダイバーシティ推進の取り組みが盛んに行われている。それぞれの違いを 受け入れようというダイバーシティ(多様性)の取り組みは、企業のみならずスポーツの世 界でも広がりを見せている。リオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピック大会は LGBT を表明する選手をサポートする体制や初の難民選手団が活躍するなど、ダイバーシティを 広く受容した大会でもあった。特にパラリンピック大会では、テレビ視聴率が前回のロンド ン大会よりも飛躍的に上昇するなど、2020 年東京大会ではさらに注目度が上がることが予 想される。しかしながら、我が国における障がい者スポーツへの理解は他国に比べると低い のが現状である。我々は、障がい者スポーツの中でも「視覚障がい者と健常者が当たり前に 混ざり合う社会を実現すること」というビジョンを持つブラインドサッカー(以下、BS)に注 目し、競技の普及とダイバーシティ理解に関する政策提言を行う。 2.目的 多くの人に BS 競技の存在を知ってもらう。そして、ルールや魅力を理解してもらうため に大会の集客数を増加させること。そのために、試合会場に足を運びたくなるような BS 独 自の応援スタイルを考案する。併せて、ダイバーシティの理解を目指す。 3.研究の背景 BS とは、主に全盲の選手がプレーし(国内のルールでは晴眼者や弱視者も出場可)、フッ トサルを基にルールが考案されている。視覚を閉じた状態でプレーするため、技術だけでな く、視覚障がい者と健常者が協力し合う「音」と「声」のコミュニケーションが重要になる。 研究に先立って、BS 競技に関する資料収集に加え、実際に試合を観戦し、大会運営のボ ランティアとして携わり、競技を体験することを通して「BS の持つ価値」についてまとめ た。 (1)BS の強みと弱み BS の特性を SWOT 分析を通して明らかにしていった。多様な人々を繋ぐコミュニケーショ ンツール、障がい者への理解が深まるという「強み」があるが、観戦中の音・声出しの禁止、 視覚障がい者である選手への共感が難しいという「弱み」もある。また、2020 年パラリン ピック開催、ダイバーシティ事業の普及で広まる「機会」もあるが、2016 年リオパラリン ピックにおける他の障がい者スポーツの台頭、継続的な盛り上がりに欠けるなどの「脅威」 も考えられる。(図 1) (2)BS の持つ価値 BS の価値を段階的に示すバリューコーンを作成した。(図 2)。BS とは世界で最も普及し ているといわれるサッカーを視覚障害者が行えるよう、音と声のコミュニケーションを用 いて行う競技である。(資産)。アイマスクと音の出るボールがあれば、健常者や男女混合チ ームも参加できることから、他の障害者スポーツに比べて比較的、手軽にプレイできる(ス ペック)。視覚が遮られることから、聴覚と健常者スタッフのサポートが重要になる(機能的 価値)。仲間とのコミュニケーション力や判断力の重要性が理解できる(情緒的価値)。多様 性=ダイバーシティを兼ね備えたコミュニケーション・スポーツである(中心的価値)。よっ て、日頃サッカーをプレーする健常者に BS をサッカー競技のひとつとして認識してもらう ことで、新たな参加者・観戦者層になることが期待できる(ターゲット顧客)。 ターゲット顧客 中心的価値 情緒的価値 機能的価値 スペック 図1 SWOT 分析 資産 図 2 バリューコーン 4.研究方法 (1)観戦者へのアンケート 表 1 アンケート調査概要 (2)BS 専用ボールに関するインタビュー調査 ア.時期:2016 年 9 月 7 日 イ.対象:株式会社イミオ M 様へのインタビュー ウ.方法:半構造化インタビュー エ.目的:ボールの音が鳴る仕組みやその素材の流通量、その他グッズ制作の理念や仕組み などを知り、応援グッズ制作に参考にする。 5.研究結果 (1)第 15 回アクサブレイブカップブラインドサッカー日本選手権アンケート結果 観戦理由は「試合を観戦したかった」が 「応援しているチームが出場していたから」 29% 「体験してみて興味を持った」が次に多かっ 19% 19% た(図 3)。また、 「所属している企業がスポン 14% 14% サーであり、案内があったため」などの声も 5% あった。さらには、 「BS を観戦することによ 者もいた。観戦者の満足度は調査では、10 段 階評価のうち比較的ネガティブな 1~4 に回答 した者はおらず、いずれも 5(普通)以上の結 試 合 観 戦 応 援 チ ー ム が あ る BS って世の中の仕組みを変えたい」という観戦 知 人 が 選 手 体 験 を し た か ら 友 人 の 勧 誘 自 宅 が 近 い 果であった。 図 3 観戦理由 (2)BS 東日本選手権アンケート結果 応援中、最も楽しい(盛り上がる)瞬間は「ゴ 50% ール時」という回答が最も多く、 「ドリブル時」 「壁際の攻防」が続いた。(図 4)不満に思うこ とはいつ音・声を出してよいのか分からない等 17% 11% 5% 5% 11% の情報不足が最も多く、次に「音・声禁止」が 続いた。(図 5)また、観戦者が応援・観戦中に取 り入れたいと考えるものは「音・声を出す」と いうことが多く望まれていた。 図 4 応援中最も楽しい瞬間 (3)株式会社イミオ 訪問インタビュー 応援の際、グッズがあれば応援をさらに楽しめるのではないか、と考えた。そこで、BS の 特徴である音を取り入れたグッズ案が出た。我々は BS のボールを取り扱っている会社に訪 問し、インタビューを行った。ボールの中には鈴のようなものが縫い付けられ、動くことで 音が出る仕組みになっている。鈴の形は丸く、貝のようである。1 つのボールに鈴が 7 個入 っており、1 つ 1 つの中には約 10 個程度の小さい鉄の球が入っている。鈴は国内では作ら れておらず、入手が難しい。ボールの鈴をグッズに取り入れるのは困難だと分かった。 6.結論 多様な人がコミュニケーションを取ることで成立する BS にはダイバーシティを広めるツ ールとしての可能性があるが、一部の愛好者やファン以外にはその認知度はまだ十分とは 言えない。ルールや競技の周知にはまだ多くの課題があり、試合時の集客増のためには競技 をわかりやすく伝えたり、観戦を楽しくする工夫が必要であることが明らかになった。 6.政策提言 以上の結果から、BS 試合時の集客を増やし、ダイバーシティ理解を広めるためのを体感 してもらう技やその魅力を広くアピールするためのスタイル確立のために、下記の 2 つを 政策提言とする。 (1)「応援ボランティア」の起用 調査により、応援をしたいが、いつ・どのくらい・どのように応援すれば良いのか分から ないという声が多いことが明らかになった。音の出せるタイミングとしては現在明確なル ールはなく、ゴール時・タイムアウト・レフリータイムアウト・試合の前後が考えられる。 応援ボランティアは、そのタイミングを随時、視覚障害者の観戦者にも伝わるよう看板の掲 示と声を使って分かりやすく知らせる。また、応援ボランティアが率先して応援することに より、初心者でも応援に参加しやすくなり、試合時の BS 独自の応援グッズや応援スタイル の定着・普及にもつながると考える。 (2)「振ると音が鳴るフラッグ」の開発 フラッグには、多数が同一の物を使用して応援することで、視覚的に統一感が出やすく、 一体感を高める効果ある。また視覚障害者の観戦も考慮して、フラッグに振ると音が鳴る仕 組みを加えることで、ゴール時には思いきりフラッグを振り、音を鳴らし応援することが出 来る。つまり、視覚的にも聴覚的にも応援することが可能で、限られた応援のタイミングを 見計らって盛り上がりを体感できる。さらにフラッグには運びやすい・単価が安いなどのメ リットが挙げられる。また、フラッグはデザインをすることが容易であるため、BS のシン ボルや各チームの特色を生かしたデザインを施すことによって、BS やチームの存在を広く アピールする効果も期待できると考える。 〈主要参考文献〉 日本ブラインドサッカー協会ホームページ:www.b-soccer.jp リオパラリンピック LGBT HUFFPOST:http://m.huffpost.com/jp/entry/11984256 株式会社 FeelWorks 前川孝雄 猪俣直紀 大手正志 田岡英明(2015) この一冊でポイ ントがわかるダイバーシティの教科書 第 7 章p.163-186 総合法令出版株式会社