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石切り場の三人の男 釧路市教育委員会 学校教育部長 高木 亨

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石切り場の三人の男 釧路市教育委員会 学校教育部長 高木 亨
発行/釧路市教育委員会
教育支援課
釧路教育研究センター
〒085-0016 釧路市錦町2丁目4番地 Tel (0154)23-5189
Fax (0154)25-5999
石切り場の三人の男
釧路市教育委員会 学校教育部長 高木 亨
昔々,異国のとある町はずれ。旅人が石切り場にさしかかりました。ひとりの男がハンマーと鑿で石
を切っていました。見るからに嫌々やっているという顔つきです。旅人は何をしているのか尋ねました。
男は吐きすてるように答えました。
「見ればわかるだろう。石を切っているんだ」
さらに旅人が歩いていくと,ふたり目の男が石を切っていました。同じように尋ねました。するとふ
たり目の男はつまらなさそうな顔で淡々と答えました。
「1 日1タラントを稼いでいるんだ」(※注 タラントは古代地中海世界で使われた質量・貨幣の単位。
タレントの原義)
さらに旅人が進んでいくと,三人目の男が石を切っていました。同じように尋ねました。すると三人
目の男は満面の笑みを向けて,実にうれしそうに答えました。
「神様の宮を作っているんですよ」
(※注 石切り場の石で宗教建築物を建築している)
この三人の男は皆同じ仕事をしていたのですが,最初の男は「石を切る苦役」としか仕事をとらえて
いません。ふたり目は「金をもらってやる作業」と割り切っており,三人目は「自分たちの神をたたえ
る場所づくりに参加している」という使命感に燃えています。
同じ仕事に就いても数十年後に職業人として差がつくことがあります。その原因は職場の差ではあり
ません。目の前にある仕事を「苦役としてやらされる」のか,「作業として取り組む」のか,「使命とし
て果たそうとする」のか,その思いと努力の積み上げの差です。
「人は師の言葉を聞いて成長するのではなく,その背中(行い)を見て成長する」と言われます。苦役
の背中には疲れがにじみ,作業の背中には張りが生まれ,使命の背中にはオーラが輝きます。
よりよい授業をめざし,知識を得,研究し,失敗から教訓帰納を導き出し実践に応用する。仕事を使
命ととらえ,現実に甘んじず常に向上の努力を重ねられている教師の皆さんは,まさにオーラの翼を輝
かせる指導者です。その背中こそ,なにより雄弁に子どもたちに「学び」の意味を伝える教科書であり
黒板です。
昨年四月に学校教育という曠野にはじめて立った私は,背中にいまだ何一つ痕跡が刻まれていないこ
とを深く自戒しつつ,放送大学や教育関係書による自己研鑽や,高校・大学入試教科の独習を少しずつ
続けています。はるか後方から皆さんを必死に追いかけ,いつかともに「乳と蜜の流れる地」にたどり
着きたいと願うばかり。教育を通じて「人格の完成」という「神様の宮」が,子どもたち一人一人の人
生にいつか打ち建てられんことを心から祈念して,巻頭のご挨拶とさせていただきます。
■「釧路教育」第286号
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巻頭言員会の活動報告
専門委員会の活動報告
教育講演会
相談室だより
教育実践レポート
contents■
高木
亨 学校教育部長の巻頭言です。
平成26年度釧路教育研究センター専門委員会の活動報告です。
2月21日(土)に行った教育講演会についての報告です。
研究センター教育相談室からの活動報告です。
今年度の教育実践レポートの審査結果を掲載しています。
~今年度の研究専門委員会活動報告~
学習指導研究専門委員会 委員長 宮原 美里
今年度から,副主題を「思考力・判断力・表現力等をはぐくむための,見通しと
振り返りを重視した授業づくりを通して」とし,新たな研究に取り組みました。
まずは,いくつかの授業実践を通して,「見通す・振り返る」学習活動のイメージ
を専門委員会の中で共有し定義を設定しました。定義を設定することを通して,「見
通す・振り返る」学習活動にも言語活動と同様に教科による特質があること,また,充実のための留意点があ
ることなども確認しました。特に「児童生徒が学ぶ意味や価値を自覚する学習であること」「児童生徒自身が
自己の学習を調整する学習であること」の2点については,「見通す・振り返る」学習活動が形式的で形骸化
した学習活動にならないよう,今後の実践において重視していく必要があると考えています。また,昨年度の
研究から課題となっていた,「思考力・判断力・表現力等の評価の充実」については,単元ごとに評価規準か
ら評価の指標を作成し,児童生徒の表現例にまで具体化することで充実を図っていく試みを始めたところです。
また,今年度も各校の研究の交流の場を設けるなど,本委員会が校内研修の活性化の一助となれるような活動
にも努めました。
来年度は,「思考力・判断力・表現力等をはぐくむための見通しと振り返りを重視した授業」とは,どのよ
うな授業であるのかを皆さんに見ていただけるよう実践を中心に研究を進めていきたいと考えています。
生徒指導研究専門委員会 委員長 浅田 真由
生徒指導研究専門委員会では,校種間の連携・接続について,児童生徒が集団に
適応していくための具体的な方策,集団作りに必要な学級経営の方策についての実
践検証に取り組んで参りました。
幼保小の連携・接続については,幼稚園の保育参観と小学校第1学年の授業参観
を行い,校種間の子どもの学びの過程を把握することができました。参観後の話し
合いでは,よりスムーズな連携・接続についての具体的な手立てを,多くの先生方と交流することができました。
小中の連携・接続については,釧路市内の小学校第6学年の担任の先生と,中学校第1学年の担任の先生に
アンケートへのご協力をいただき,意識調査を行いました。その結果から,釧路市内の学校においては,連携
の推進・接続が図られていると捉えているものの,学習面・生活面両面における,児童生徒に身に付けるべき
内容については意識の違いがあることがわかってきました。
そこで今後は,アンケート結果からの意識の違いをさらに明確にし,校種間の連携・接続がスムーズに行え
るよう学級経営面からのアプローチを行い,児童生徒が集団に適応していくための具体的な方策等を学級経営
ハンドブックにまとめていく予定です。
今年度もご協力ありがとうございました。今後とも,ご協力をお願い致します。
教育工学研究専門委員会 委員長 鈴木
穣
教育工学研究専門委員会では,ICT機器を用いた効果的な授業のあり方をテー
マとして,研究を進めてまいりました。ICT機器を活用することで,教師が授業
改善の方策を広げ,児童生徒の学力を向上させることをねらいとし,研究の視点を
次の三点としました。
①授業を通したICT機器の効果的な活用
②実物投影機の多様な活用方法
③ICT機器の活用とアンケート
これらの研究の成果として,9月に実施したセンター講座「ICT機器の活用」では,これまで積み上げて
きた授業実践を紹介し,ICT機器の効果的な活用方法を提案させていただきました。また,実物投影機の体
験活動では,参加した先生方に実物投影機の有効性を実感していただくことができました。
また,より多くの先生方に実物投影機の活用と効果をご紹介できればと考え,7月より資料「実物投影機の
活用方法」を各学校にメールにて発信しました。本資料は,校内研修で活用する学校もあり,好評をいただき
ました。
最後に,2年間にわたる本研究を,研究紀要第181号「ICT機器活用事例集」としてまとめました。ぜ
ひ,本研究紀要をご活用いただき,先生方の今後の教育実践の一助に,さらには釧路市の小中学校のICT機
器を活用した授業の充実に役立てていただけましたら幸いです。
郷土読本研究専門委員会 委員長 佐野 玲子
今年度,郷土読本研究専門委員会では,小学校第3・4学年社会科で使用する郷
土読本「くしろ」の改訂作業を中心に活動しました。
27年度から使用する教科書の改訂に合わせて,郷土読本の部分改訂作業を行い
ました。今回の主な変更点としては,これまでの「2
い物」と「3
調べよう
見直そう
物をつくる仕事」を統合し,
「2
わたしたちの買
働く人とわたしたち
のくらし」とし,第3学年では3つの単元を学習することにしました。また,第4学年では,「健康なくらし
とまちづくり」に「くらしと電気」の内容を追加し,「水はどこから」と「くらしと電気」のどちらかを選択
して学習できるようにしました。そのほかにも,関係機関の協力を仰ぎながら,内容を大幅に見直したり,文
言の整理やグラフなどのデータの更新などを行ったりしています。今後も,子どもたちが,我がまち釧路市や
北海道に,愛着と誇りをもてるような郷土読本を目指していきたいと考えております。
また,6月には,センター講座『郷土読本の活用』を開催しました。2学期からの指導に役立てていただけ
るように1学期中に実施し,導入時における体験や資料の活用方法などについて,実践紹介をしました。
来年度は,指導の手引きの作成などを中心に活動していく予定です。授業で郷土読本を実際に活用され,ご
意見ご要望などがありましたら,郷土読本研究専門委員会までお知らせください。
特別支援教育研究専門委員会 委員長 橋本 千賀子
特別支援教育専門委員会では,各学校が抱えている課題の解決を図る手助けにな
ればという考えから,今年度から新たに「特別支援教育通信」の発行に取り組んで
きました。誰もが同じ目線で支援が行えるよう,第1号「インクルーシブ教育」に
ついて,第2号「特別支援コーディネーターの役割」について,第3号「特別な支
援を必要とする児童・生徒への支援」について,第4号は「ユニバーサルデザイン
を意識した授業づくり」についての情報を発信し,特別支援教育に関わる情報やそれらに関連したホームペー
ジの紹介も掲載しました。また,誰もが一目で理解できるよう図式化されています。
特別支援教育Ⅰの研修講座では,「コーディネーターの役割について」教育大学釧路校戸田先生による講義
と「第1回特別支援コーディネーター地域ブロック会議」を行い,現状の分析や課題を整理し,課題の解決に
向けた交流を行うことができました。
今後も,特別支援教育通信や研究センターのホームページ上で特別支援教育の多岐に渡る情報を発信してい
きたいと考えておりますので,各学校の特別支援教育の充実のためにご活用いただければと思っております。
2 月21日(土)に,釧路市民文化会館にて今年度の教育講演会が開催さ
れました。今回の講師は,テレビやラジオ,各種メディアでもご活躍されて
いる精神科医 名越 康文(なこし やすふみ)氏をお迎えし,『思春期の
子どもと向き合う』という演題で,ご講話いただきました。
講演では,精神科医として様々な患者と出会い,向き合ってきた経験の中
で感じたこと,自身の子ども時代の教師との出会いなど,様々なことについ
て温かな響きの関西弁でお話しいただきました。子どもは親の雰囲気,家庭
のムードを感じ取って育つことに触れられ,「どんなときにも子どもには明
るく前向きな雰囲気を感じさせるようにしよう。
」というお話には,会場中
が引き込まれました。
また,「怒り」の感情とは何か,そして怒りの感情への対処の仕方,心と
体の密接なつながりについてなど,日々の実践にすぐに生かせる「子どもと
の向き合い方」についてもお話しいただきました。会場は終始和やかなムー
ドに包まれ大盛況のうちに終了しました。
教育相談員
須藤
厚志
・
佐藤
昌志
平成26年4月~平成27年2月20日現在の相談件数は延べ123件で,昨年度と比べると17
件減となっています。その内,継続相談が15例あります。
対象区分の件数は,幼児4件・小学生41件・中学生35件・高校生41件・一般1件で,相談内
容は,家庭教育24%,不登校20%,学校生活13%,進路11%,特別支援教育7%,学校(担
任)不信5%,その他9%となっています。
相談内容は家庭教育をはじめ,不登校問題,孫を心配する祖父母からの相談,学校(担任)不信な
ど,昨年度と同様な傾向で推移しています。また,毎月のように不登校問題の相談があります。
問題には様々な要因が複雑に絡み合っています。すぐに解決策を講ずることはなかなかできません
が,改善・解決に向けての親身な対応と学校(校長・教頭)
・関係機関の迅速な対応の協力を得て,成
果を上げることができています。また、当センターに「ふれあい教室」が併設されていることは不登
校児童生徒の状況改善につながっています。
継続相談・面接相談も多く,相談者との信頼関係の深まり・教育相談充実の証の一端と受け止めて
います。教育相談のやりがいを強めながら業務を推進しています。
第57回教育実践レポートに,今年度は7本の貴重な実践
が寄せられました。審査委員会による最終審査の結果につい
て,下記の通りお知らせします。
応募くださいました諸先生方の地道な研究実践に敬意を表
するとともに,本事業へのご協力に対し,心よりお礼申し上
げます。
優秀賞と優良賞に選出されましたレポートにつきましては,
次年度発行いたします実践レポート集にて全文掲載をいたし
ます。
◆優秀賞
釧路市立湖畔小学校
教 諭 明 見
英里香 (個人研究)
支えられて育つ学校図書館
◆優良賞
釧路市立芦野小学校
教 諭 山 崎
博幸幸 (個人研究)
算数科授業における活用力を高めるための取り組み
~尐人数習熟度別学習における成績上位集団への指導~
◆優良賞
釧路市立大楽毛中学校
研究部(共同研究)
「基礎・基本の定着を目指す授業の在り方」 ~言語活動を取り入れた学び合う授業を通して~
◆佳作作
釧路市立音別中学校
研究部(共同研究)
思考力・判断力・表現力を育てる授業づくり ~各教科における多様な言語活動を通して~
◆佳作作
釧路市立鳥取小学校
研究部(共同研究)
自分の考えを伝え合う子どもの育成を目指して ~「書く」活動から「伝え合う」活動へ~
◆佳作作
釧路市立美原小学校
教 諭 森
健太郎 (個人研究)
小学校低学年を対象とした学級単位の予防的なソーシャルスキル・心理教育の可能性
◆佳作作
釧路市立芦野小学校
教 諭 髙 橋
遼 (個人研究)
主体的な学習を促す授業改善 ~児童の集中力が持続する授業づくりを通して~
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