...

平成21年度取組実施報告

by user

on
Category: Documents
4

views

Report

Comments

Transcript

平成21年度取組実施報告
2007 年度‐2009 年度
現代 GP(ICT)取組
「ICT を活用した双方向教育システムの構築」
成果報告書
2010.3.8
阪南大学
p-HInT 活用推進プロジェクト
花川典子
1
目
次
Ⅰ.総括
1.本取組の概要
2.本取組の目的とその達成
3.活動の概要
Ⅱ.授業改善を実現するために
1.p-HInT システムの開発
① 概要
② システム構成
③ 基本機能
④ 便利機能(2009 年度後期の新規機能)
⑤ 他システムとの連携
2.運用体制
① 概要
② DS 等の普及・貸出
③ TA の体制
④ 教員・学生へのサポート
⑤ 利用実績
3.授業のフィードバック
① 概要
② 教育効果計測
③ 授業運営効果
④ 学生アンケート結果
⑤ p-HInT の教育効果のまとめ
Ⅲ.広報・協働(世の中に広めるために)
1.e-Learning World 2009 出展
① 目的
② 出展内容
③ 出展の体制
④ 来場者数
⑤ 来場者アンケートの結果
⑥ 出展感想
2.p-HInT システム無償配布
① 目的
② 無償配布内容
③ 配布実績(問い合わせも含む)
3.メディアへの広報
① 新聞関係の広報
② HP 関係の広報
1
1
2
4
6
6
6
6
7
10
14
17
17
17
18
21
23
26
26
26
26
28
30
32
32
32
32
35
35
36
36
38
38
38
38
39
39
39
4.学生による便利ツールの開発
① 目的
② 開発したツール群
③ 効果
5.学術学会等のそのほかの活動
40
40
40
40
41
Ⅳ.まとめ
42
Ⅴ.謝辞
43
I. 総括
1.本取組の概要
本取組の名称は「ICT を活用した双方向教育システムの構築」であり,全体の取組期間
は 2007 年 10 月から 2010 年 3 月までの 2 年半で,本年度はその最終年度にあたる.取組
の概要は,大講義室での一方向スピーチ形式授業をポータブル HInT(以下 p-HInT と記す)
システムを用いて教員と学生の双方向教育を実現し授業改善することである.p-HInT は,
学生が一人一台ずつニンテンドーDS®(以下 DS と記す)を持参し,コンピュータ設備の
ない講義教室において,着席順学生一覧による出席管理や小テスト及びアンケートの実施
する機能,オリジナル機能の「みんなのこえ」や「レッドカード」が装備されたシステム
である.これによって,教員が学生の理解度を即座に把握しその場で授業改善を実施でき
ると共に,理解度のデータを授業改善のための基礎データとして蓄積することによって,
全学的な FD 活動に役立てる取組である.授業中のイメージ図と実際の活用中の写真を図
Ⅰ.1.1 に示す.
図Ⅰ.1.1 授業での p-HInT の活用
本取組の情報は,http://www.hannan-u.ac.jp/p-hint/index.html を参照.
-1-
2.本取組の目的とその達成
本取組の目的は「大人数講義の授業改善」である.大人数講義とは 100 人以上の講義を
意味し,コンピュータ教室でない一般講義室での授業を対象とする.授業改善とは大人数
講義の問題点を解決することを示す.解決したい問題は,(1)私語の削減,(2)学生の集
中度向上,
(3)学生の理解度に応じた授業内容の充実,とする.手段として p-HInT を用い
て双方向教育を実施してこれらの問題を解決する.最終的に「学生の成績向上」を実現す
ることを目指す.
3 年間の取り組みにおいて,上記の目的を達することができたかを検証する.手段として
は以下の方法をとる(詳細は「Ⅱ章の3.授業のフィードバック」参照).
(1) 同一教員の同一科目による2クラス(p-HInT 利用あり,なし)の成績比較
(2) 同一教員の同一科目による2クラスの授業中の私語量計測結果の比較
(3) 同一教員の同一科目による2クラスの授業中の授業内容計測結果の比較
(4) p-HInT システムを利用した全学生のアンケート結果
上記にて,検証を実施した結果,以下のことが明確になった(詳細は「Ⅱ章の3.授業
のフィードバック」参照).
(1) p-HInT を利用したクラスの成績が,利用しないクラスよりも良い成績であった(論
述式問題成績で平均点がおよそ 4 点から 5 点上昇(50 点満点),t 検定で有意差を
確認)(図Ⅰ.2.3 参照).
(2) 授業中の私語の 25%削減(図Ⅰ.2.1 参照)
(3) 授業中の講義時間(雑務時間ではなく講義内容に関する説明時間)が 11%増加(図
Ⅰ.2.2 参照)
(4) p-HInT システムを利用した全学生へのアンケート結果(2009 年度前期結果).
① 89%の学生が,p-HInT で座席指定すると静かになったと回答.
② 70%の学生が,p-HInT で理解度が向上したと回答(図Ⅰ.2.4 参照).
③ 66%の学生が,p-HInT で授業に集中できたと回答.
④ 63%の学生が,p-HInT で授業内容が復習できたと回答.
10 私語の大きさ
DSなし
DSあり
8
■講義説明 ■授業運営(出席・テスト用紙配布等)
平均で25%の私語削減
DSなし
6
講義説明時間の 11%増加
4
DSあり
2
授業経過時間
0
0:00:00
0:28:48
0:57:36
図Ⅰ.2.1 私語の量の計測結果
60
0 :0 0 :0 0
図Ⅰ.2.2
0 :2 8 :4 8
0 :5 7 :3 6
1 :2 6 :2 4
授業中の講義時間の計測結
点数
50
有意な差あり.
40
30
1:26:24
24.3
25.7
17.8
20
28.1
23.0
27.8
18.0
14.9
10
0
A
B
論述 1回目
A
B
論述 2回目
A
B
論述 3回目 A
B
論述 4回目
図Ⅰ.2.3 論述式問題の採点結果比較
-2-
図Ⅰ.2.4 理解度に関するアンケート
以上の結果より,p-HInT の双方向教育で大人数講義の授業が改善され,その結果,学生
の成績向上できたと解釈できる.つまり,本取組の「大人数講義の授業改善」の目的を達
することができたと考えられる.ただし,本来はすべての科目で p-HInT を利用した授業と
利用しない授業の比較検証実験を設定すべきであるが,カリキュラム上の制約のため 1 科
目だけの比較検証実験となった.
-3-
3.活動の概要
2007 年(平成 19 年)の 10 月から本取組が実施された.半年ごとの 5 つの期間に分割さ
れ,順に初期開発期,運用開始期,全面改善期,広報期,成熟期となった.これは当初か
らの予定ではなく,半期ごとの実証実験,評価,次期の計画を繰り返した結果として,こ
れらの5つの期にわかれた.
2007 年度 10 月からの半年間は初期開発期であり,産学連携の株式会社富士通ビジネス
システムと共に本取組の基盤となる p-HInT システムの開発を行った.携帯ゲーム機を利用
した本格的な大規模授業支援システムは世の中には存在せず,すべてが手探りでの開発で
あった.さらに,授業での活用方法も様々なシーンを想定しながら,想像と予測で開発を
進めた.本期の後半にはプロトタイプが完成し,マルチメディア論の模擬授業にて実証実
験が行われた.
2008 年 4 月からの半年間は運用開始期であり,初めて本格的に正規科目の授業に本シス
テムが取り入れられた.ここで問題となったのは,初期開発期で予測した p-HInT の利用方
法と実際の利用方法が異なるという点であった.たとえば,小テストは簡単な理解度把握
程度に利用されると予測していたが,実際は 10 問程度のまとまった本格試験に近い形式で
実施された.また,大人数講義では学生の理解度把握という問題より,もっと基本的な問
題である私語の問題を解決したいという要望が強かった.私語を軽減したうえで,学生の
理解度把握ができればいいという現実の授業の問題が明らかになってきた.さらに,大人
数が同時に DS を用いて無線 LAN に接続するという技術はこれまで実現したシステムは存
在せず,安定接続が技術的に困難を極めており,通信エラーや低速度などの性能問題も頻
繁に発生した.
図Ⅰ.3.1 本取組の活動概要
-4-
そこで,2008 年 10 月からの半年間は全面改善期とし,システムの見直しや運用の見直
しなどを主として実施した.まず,システムの安定稼働を最大の目的とし,通信エラーの
改善,性能向上をあらゆる手段を駆使して実現した.さらに,新たに「席替え」など実際
の授業での私語対策のために要望のあった機能を実装した.運用に関しても,DS の授業内
貸出に要する時間を軽減させるため貸出方法の見直しを行い、TA にも DS を持たせ、貸出
機器やエラー発生状況、日誌などの報告を教室内で DS 上から行わせることで、教室内だけ
でなく、情報システム課職員等関係者間で情報を共有することが可能となった。また、授
業中に通信エラーが多発して TA が対応できないような状況になったときに,情報システム
課への連絡を行う「緊急連絡機能」を TA 専用ページに追加したことで,トラブル発生時の
授業への影響を軽減させることができた。さらに、300 台を超える長期貸出に対応していく
ため, 貸出申請から実際の貸出登録まで一連の作業を支援するシステムも構築し,貸出業務
をスムーズに実施することができた.
2009 年 4 月からの半年は広報期となり,本格稼働を始めて 1 年後の成果として定量的に
教育効果を計測すると同時に,一般に広報することが中心の活動となった.また,システ
ム的性能が向上し,阪南大学の教育学習支援(以下,HInT と記す)システムや教務システ
ムとのデータ連携も実現し,さらに操作性も向上することができた.特にこの時期の成果
として,同一科目同一教員の講義する企業論の 2 クラスにて,一方は p-HInT を利用した授
業,他方を通常の授業でそれぞれ 28 回行い,成績,私語の量,授業運営状況,学生アンケ
ート結果を比較した.それによって,p-HInT による教育効果を明らかにすることができた.
広報では p-HInT システムの紹介と同時に採取したデータをもとに教育効果の明示に力を
注ぎ,e-LearningWorld への出展や各種学会にて本システムの発表を行った.さらに学外
向けに p-HInT 無償配布版を作成し教育機関にかぎり無償配布をする体制を整え,5校の問
い合わせに応じて,うち2校に無償配布した.運用関係においても TA の教育体制を整え,
教員間や TA 間の情報共有の実現によってスムーズな授業を実施することができるように
なった.
2009 年 10 月からの半年は成熟期となり,通信エラー等のシステムトラブルや性能トラ
ブルなどもほとんど発生せず,さらに TA の教育体制も整った.学内の他の教育システムと
のデータ連携によって,トータルな授業支援を行うことができた.同時に「みんなのこえ」
や「ドリル」
「レッドカード」などの基本機能以外の付加価値を高める機能を追加すること
もできた.また,これらの結果をもとに国際学会などへの発表も行う予定である.
-5-
II. 授業改善を実現するために
本章では,Ⅰ章で達成した授業改善を実現するための過程を詳しく紹介する.本章の構
成は,1.p-HInT システム開発の紹介,2.運用体制の紹介,3.授業のフィードバック
の紹介からなる.
1. p-HInT システムの開発
本取組の核となる p-HInT システムを紹介する.まず,概要,システム構成,さらに基
本機能,便利機能,他システムとの連携の順に説明する.
① 概要
大人数講義の授業改善を目的とした Web アプリケーションシステムである.特
徴はクライアント端末を DS やプレイステーション・ポータブル®(以下 PSP と
記す)などのゲーム機を利用することである.ゲーム機に搭載されたブラウザに
より,無線 LAN を通してサーバにアクセスする仕組みである.利用イメージを図
Ⅱ.1.1 に示す.
教室には教員機が設置され,学生は一人一台ゲーム機などの携帯情報端末を教
室に持参する.学生は携帯情報端末のブラウザをとおして p-HInT システムのサー
バにアクセスする.ログインした学生の名称は教員機の着席順学生一覧の画面に
て確認することができる.出席管理や小テストの基本機能をはじめ,学生が「へ
ぇー」ボタンや「モヤッと」ボタンで自由に発言できる「みんなのこえ」機能,
特定の学生にだけ警告や注意を与える「レッドカード」機能などがある.
②
システム構成
本システムは大学のネットワークインフラ上に構築された.7 教室に p-HInT シ
ステムが整備され,サーバ機は Web サーバ4台,ファイルサーバ1台,データベ
ースサーバ1台,DHCP サーバ 1 台から構成される(図Ⅱ.1.2 参照)
.また,各教
室には最大7台のアクセスポイントを設置し,1 教室で最大 400 台の DS などの携
帯情報端末が無線で接続できる環境を構築した.
Red
Student
図Ⅱ.1.1 p-HInT の利用イメージ
-6-
Building No.1
(Ma in Campus)
■=Access Point
Web Server × 4
(W indows 2003 Server / IIS6 / Enable NLB)
NLB
DHCP
Server
100BASE-T
Data Base Server × 1
(Windows 2003 Server /
SQL Server 2005)
Cisco Aironet 1130G
Other Computer Room
Media converter
NAS
1000BASE-T
To outside
Teacher’s
Console PC
Ma inSW
1 000BASE-FX×4
(Load Sharing)
To Building No.6
Cisco Catalyst 4507R
(Base swithc)
Building No.6
Room 123
(329.26㎡)
Ma in Campus to South
Campus
W an Line(1 Gbps)
To Building No.9
Switching hub
Teacher’s
Console PC
Building No.9
(South Campus)
From Building No.1
(Main Ca mpus)
From Building No.1
SW6
教員機A
Other Computer Room
Other
Computer
Room
SW624
Room 624
(153.12㎡)
Room 641
(306.24㎡)
Room 642
(306.24㎡)
Room 651
(306.24㎡)
Room 652
(306.24㎡)
Room 9209
(188.50㎡)
図Ⅱ.1.2 p-HInT のシステム構成図
③
基本機能
本節では p-HInT の基本機能について紹介する.これらの機能は基本的に 2008
年 4 月または 10 月からサポートされたが,何度かの性能改善や操作性改善を経て
現在の安定稼働を実現した機能である.
(1) 出席機能
出席機能は学生の出席・欠席・遅刻・早退を記録する機能である.出席は 1
授業で 5 回までとることができ,遅刻や早退を判別することができる.出席
をとる方法は,合言葉で学生のアクションを要求する方法と座席表から自動
的に取得する方法がある(図Ⅱ.1.3 参照).
z 合言葉の要求
合言葉を学生に入力を要求する目的は,出席していない学生が大学の
図書館やコンピュータ教室から p-HInT システムにログインして出席扱
いになることを避けるためである.本システムは Web アプリケーション
なので,学内 LAN につながるコンピュータのブラウザからアクセス可能
である.したがって,出席せずとも出席扱いになることが可能であり,
それを避けるために,教員が教室において口頭で「本日の合言葉」を通
知し,それを入力させる方法である.
z 座席表から自動取得
座席表の通常出席(緑)になっている学生のみを出席者として自動取
得する方法である.教員も学生もアクションを起こす必要がない.
「出席
を素早く取りたい」という要望により,2008 年 10 月に拡張された機能
である.
-7-
合言葉要求
学生合言葉入力
合言葉入力
状況確認
座席表の通常出席(緑)
の学生を自動取得
座席表で自
動取得
図Ⅱ.1.3 出席機能の流れ
(2) 小テスト機能
授業中に学生の理解度を把握するために,小テスト機能を装備する.小テ
ストは授業前にあらかじめ作成しておく方法と,授業中にその場で小テスト
を作成する 2 種類の方法を準備した.あらかじめ小テストを準備するために
教材作成キットを提供し,CSV ファイルにて小テスト用データを作成した.
授業中に小テストを出題する場合,CSV ファイルを読み込み,または問題を
その場で入力する.出題を実行すると,学生の DS 上に問題が表示され,回答
する手順となり,教員機には回答状況が表示される.回答を締め切ると,瞬
時に採点されて,教員機には正解状況のグラフが提示され,プロジェクタに
投影して,学生と共に復習をすることができる.また,学生の DS 上にも正解
状況が表示され,自身の成績を確認することができる.一連の小テストの流
れを図Ⅱ.1.4 に示す.回答状況確認画面や結果のグラフ表示方法,小テスト
の選択問題の未の出力機能も稼働後の要望に従って改善されたものである.
小テスト出題画面
回答状況確認画面
教員機トップ画面
学生が DS 上で回答
図Ⅱ.1.4 小テスト機能の流れ
-8-
プロジェクタ投影しなが
ら,小テスト結果の復習
図Ⅱ.1.5 着席順学生一覧と詳細機能
(3) 着席順学生一覧
大学の大講義室では自由着席が基本である.したがって,教員が学生の名
前と顔を覚えることが困難な場合がある.それを解決するために実装された
機能である.教員機のトップ画面が基本的に着席順学生一覧である(図Ⅱ.1.5
参照).
着席順学生一覧は 2008 年4月の初期バージョンより搭載された機能であ
るが,多くの要望によって機能が変更された.まず,学生の状況は,緑(通
常の出席),赤(ゲームで遊ぶなど異常出席)のみであったが,灰色(ログア
ウトして帰った学生),白色(欠席学生)の種類を追加した.また,学生名を
クリックすると,学籍番号やフルネーム,これまでの警告回数(Ⅱ章1節の④
の(3)参照)などの学生に関する詳細な情報を参照することができる.
着席順学生一覧が一定時間ごとに学生の DS と通信確立を確認して,緑(通
常出席)と赤(異常出席)などを判断する必要がある.2008 年当初は,学生
数が 100 名以上になると通信状況不安定により DS との通信エラーが多発し
た.また,座席表更新だけに 10 分以上の時間を要するなど,性能面で問題の
多い機能であった.性能向上のために,通信状況の調査や通信データ量の削
減,DS との接続確認方法の負荷を最低限にするなど工夫を重ねた.2009 年
度には通信エラーが劇的に減り,安定稼働を実現することができた.図Ⅱ.1.6
のグラフは 2008 年度後期に劇的な通信エラー減少の様子を示す.
図Ⅱ.1.6 通信エラー報告の減少状況
-9-
出席学生が座席固定される
ようこそXXさん
座席番号はA2です.
指定着席と前列右詰を指定
教員機トップ画面
図Ⅱ.1.7 席替え機能の流れ
(4) 席替え機能
当初,本機能は実装されていなかったが,「私語を何とかして欲しい」とい
う教員や学生の要望に応じて 2008 年 10 月に実装された機能である.私語対策
で最も効果的な方法として,学生から「座席指定をすると私語が無くなる」と
提案された内容に従って実装した.座席指定の流れを図Ⅱ.1.7 に示す.席替え
機能を使って座席指定をした場合,学生の DS 上に指定位置が表示される.こ
の座席番号に従って学生は着席する.学生アンケートの結果,座席指定された
学生の 89%が「私語が減った」と答えた.従って,席替え機能は私語軽減に有
効であったと考える.
④
便利機能(2009 年度後期の新規機能)
本節では 2009 年度 10 月よりサポートされた機能について紹介する.本学オリ
ジナル機能であるため,本節では活用事例と共に,学生アンケートや収集データか
ら便利機能に関する評価も記載する.
(1) みんなのこえ
(i) 機能紹介
「みんなのこえ」機能は 2009 年 10 月から稼働した機能である.基本機能
が安定稼働し,双方向をより充実させるために追加された機能である.基本機
能は基本的に教員が学生をコントロールする目的の機能であったが,
「みんなの
こえ」機能は,学生が教員へ自由に情報発信するための機能である.したがっ
て,教員のコントロールなしで自由なタイミングで発言できるチャットツール
へぇーボタンと
モヤッとボタン
自由発言する
教員画面
図Ⅱ.1.8 「みんなのこえ」機能
- 10 -
に似た機能である.
「みんなのこえ」機能は 2 種類の機能から構成される.一つめは「へぇー」
ボタンと「モヤッと」ボタンである.これは DS のトップ画面に常に「へぇー」
ボタンと「モヤッと」ボタンが表示されており(図Ⅱ.1.8 参照の DS の画面参
照),授業中に教員の話を聞いていて,「へぇー」と思ったときに「へぇー」ボ
タンを押下,よくわからなかった場合は「モヤッと」ボタンを押下する.ボタ
ンを押す回数は自由であり,押した回数は DS 上に表示される.教員画面には
「みんなのこえ」ウィンドが常に表示されており(図Ⅱ.1.8 の教員画面参照),
学生が押した「へぇー」ボタンと「モヤッと」ボタンの回数の割合が,ウィン
ド上部のバーチャートとしてリアルタイムに表示される.このバーチャートを
参照して,学生の反応を把握することができる.
二つめの機能は自由発言のチャット風の機能である.もちろん,授業中に文
章入力は注意力散漫になる可能性があるので,発言の可能性のある文をプルダ
ウンリストから選択する.用意された発言は「もっと詳しく説明してください」,
「白板が見えません」,「声が聞こえません」,「エアコンの温度を調整してくだ
さい」,「ありがとうございました」等であり,学生に直接インタビューして発
言の可能性のある文を用意した.それ以外の発言をしたい場合は,自由入力も
可能とする.教員機では,
「みんなのこえ」ウィンドにリアルタイムで発言が表
示される.これによって「白板が見えません」という改善は即時に実行できる.
両機能とも匿名発言ではない.さらに発言時間と発言者,発言内容がすべてロ
グに記録される.したがって,誹謗中傷などの無責任な発言は発生していない.
(ii) -授業改善の役立った事例
記録され蓄積された「みんなのこえ」を使った授業改善の一例を紹介する.
図Ⅱ.1.9 はシステム開発論の 4 回目の授業の「へぇー」ボタンと「モヤッと」
ボタンの押された回数の 90 分間の時系列変化である.授業の前半では「へぇ
ー」ボタンが多く授業が順調であった様子が分かるが,終了間際に「モヤッと」
ボタンの押下回数が増えている.その時の講義していた内容がフォン・ノイマ
ン型コンピュータの説明と,EDVAC・EDSAC の説明であった.説明内容は授
業映像記録から確認した.4 回目以外の授業においても,授業終了間際に「モ
ヤッと」ボタンの回数が増加する傾向があった.システム開発論の教員にイン
タビューすると,
「確かに授業終了間際に,予定された講義のすべてを消化しよ
うと説明が早口になる傾向があった」と自身で分析することができた.これを
30
回数
へぇーボタン
モヤッとボタン
25
EDVAC,EDSAC
20
フォン・ノイマン
15
10
5
0
16:48
16:58 17:08
17:18 17:28
17:38 17:48
17:58 18:08
図Ⅱ.1.9 「みんなのこえ」のログを解析した結果
- 11 -
0
10/5
2009/10/5
2009/10/5
2009/10/5
2009/10/5
2009/10/5
2009/10/5
16:56
17:06
17:16
17:26
17:36
17:46
17:56
2009/10/19
2009/10/19
2009/10/19
2009/10/19
2009/10/19
2009/10/19
2009/10/19
2009/10/19
2009/10/19
16:55
17:05
17:15
17:25
17:35
17:45
17:55
18:05
18:15
2009/10/26
2009/10/26
2009/10/26
2009/10/26
2009/10/26
2009/10/26
2009/10/26
2009/10/26
2009/10/26
16:48
16:58
17:08
17:18
17:28
17:38
17:48
17:58
18:08
2009/11/2
2009/11/2
2009/11/2
2009/11/2
2009/11/2
2009/11/2
2009/11/2
2009/11/2
2009/11/2
16:50
17:00
17:10
17:20
17:30
17:40
17:50
18:00
18:10
2009/11/9
2009/11/9
2009/11/9
2009/11/9
2009/11/9
2009/11/9
2009/11/9
2009/11/9
16:49
16:59
17:09
17:19
17:29
17:39
17:49
17:59
2009/11/16
2009/11/16
2009/11/16
2009/11/16
2009/11/16
2009/11/16
2009/11/16
2009/11/16
16:46
16:56
17:06
17:16
17:26
17:36
17:46
17:56
2009/11/30
2009/11/30
2009/11/30
2009/11/30
2009/11/30
2009/11/30
2009/11/30
2009/11/30
2009/11/30
2009/11/30
2009/11/30
16:45
16:55
17:05
17:15
17:25
17:35
17:45
17:55
18:05
18:15
18:25
2009/12/7
2009/12/7
2009/12/7
2009/12/7
2009/12/7
2009/12/7
16:57
17:07
17:17
17:27
17:37
17:47
2009/12/14
2009/12/14
2009/12/14
2009/12/14
2009/12/14
2009/12/14
2009/12/14
2009/12/14
2009/12/14
16:53
17:03
17:13
17:23
17:33
17:43
17:53
18:03
18:13
2009/12/21
2009/12/21
2009/12/21
2009/12/21
2009/12/21
2009/12/21
2009/12/21
2009/12/21
2009/12/21
16:54
17:04
17:14
17:24
17:34
17:44
17:54
18:04
18:14
2009/12/24
2009/12/24
2009/12/24
2009/12/24
2009/12/24
2009/12/24
2009/12/24
2009/12/24
16:47
16:57
17:07
17:17
17:27
17:37
17:47
17:57
2010/1/18
2010/1/18
2010/1/18
2010/1/18
2010/1/18
2010/1/18
2010/1/18
2010/1/18
2010/1/18
2010/1/18
2010/1/18
16:33
16:43
16:53
17:03
17:13
17:23
17:33
17:43
17:53
18:03
18:13
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
オープンアーキテクチャ
「へぇー」ボタン
OK -- C le ar !
「モヤッと」ボタン
? ?- - Un cl ea r!
マイコン,Intel と CPU
アルゴリズム
コンピュータの歴史
フォンノイマン,EDVAC
図Ⅱ.1.9-2 Ub!Point による
授業映像記録
システム開発
システムテスト
加算器
加算器での論理演算
コンピュータ内での色の扱い方
もとに,授業終了間際の早口による説明の授業
改善をし,終了間際の「モヤッと」ボタン押下
回数が減少し,授業改善ができた一例となった.
さらに,図Ⅱ.1.9-1 に,システム開発論の
12 回の授業において,「みんなのこえ」の「へ
ぇー」ボタンと「モヤッと」ボタンの押下回数
の変化を示す.白い棒が「へぇー」ボタンを示
し,黒い棒が「モヤッと」ボタンを示す.同時
に授業映像記録を Ub!Point ® (オンデマンド型
映像と教材資料提示システム)にて撮影した.再
生イメージを図Ⅱ.1.9.-2 に示す.これらを組み
合わせて,図Ⅱ.1.9-1 に示すように,どの説明
箇所で「モヤッと」ボタンの押下回数が増加し
たかを知ることができる.これによって,図
Ⅱ.1.9.-1 の灰色背景の文字は,「モヤッと」ボ
タンの押下回数が増えた時の講義内容を示す.
これらの講義内容は Ub!Point の授業映像記録
より抽出した.
こうして採取したデータは授業終了後の授
業改善に利用できた.11 月 30 日の授業が終了
した時点で,図Ⅱ.1.9.-1 データと「みんなのこ
え」の発言内容を検証し,(1)授業終了間際に教
員が早口になり「モヤッと」が増える,(2)「み
んなのこえ」や「へぇー」ボタンへの教員の返
答がないという問題が明確になった.授業間際
の「モヤッと」ボタンの増加は教員が予定講義
内容を時間内に収めるために説明が早口にな
った.また,「せっかく『みんなのこえ』を送
っても無視される」の複数発言から明確になっ
た.そこで,12 月 7 日からの授業にて,(1)終
図Ⅱ.1.9-1 システム開発論の 12 回の「へぇー」
と「モヤッと」ボタン押下回数の変化
- 12 -
了間際の早口説明をしない,(2)授業開始時に前回授業の「みんなのこえ」や「モ
ヤッと」ボタンに対する教員のコメントを実施した.その結果,11 月 30 日ま
では,全体のボタン押下数に対して「モヤッと」ボタンが 29.5%であったが,
12 月 7 日以降では「モヤッと」ボタンの割合が 14.6%まで改善された.
(iii) 評価
新機能として提供を始めたばかりであり,利用方法も様々であった.設計時
の想定通りに学生が納得した時に「へぇー」,わかりにくい時に「モヤッと」ボ
タンを押下する使い方に加えて,教員から「分かった人は『へぇー』を押して」
と要求したり,「この問題について正しいと思う人は『へぇー』,間違っている
と思う人は『モヤッと』を押して」というように,小テストなどよりももっと
手軽な理解度把握に利用していた.
また,学生のアンケート結果では「みんなのこえ」機能を頻繁に利用した学
生は全体の 40%から 50%であり,利用した学生の 68.2%は「便利だ」と回答
した.さらに利用した学生の 67.5%が「『みんなのこえ』機能で授業への集中
力向上し,興味関心が高まったりした」と答えた.
(2) ドリル
(i) 機能紹介
基本的に小テストを拡張した機能である.学生が回答実行中に「採点」が同
時に参照でき,何度もやり直すことができるドリル機能である.教員が学生の
理解度を把握するというよりも,学生に十分な理解を促したいときに繰り返し
トレーニングする意味での利用を想定した.学生は「採点」ボタンを押すと,
採点結果が表示され,不正解の問題を何度も再チャレンジすることができる(図
Ⅱ.1.10 参照).
(ii) 評価
学生アンケートでは「小テスト・ドリルは便利か?」など小テストと合わせ
たアンケートを実施したので,ドリルのみのアンケート結果はない(参考とし
て小テスト・ドリルで 70%の学生が理解度が向上したと回答).しかし,
「みん
なのこえ」での学生の発言で,
「ドリルは非常に勉強になります」等の発言がい
くつかあった.
採点ボタン
を押すと
図Ⅱ.1.10 ドリル機能の学生画面イメージ
- 13 -
警告メッセー
ジの一覧がプ
ロダウンリス
トで表示され
る.
座席表の学生名を右クリックすると
DS の全画面に警告メッセージ表示.
図Ⅱ.1.11 レッドカード機能の利用イメージ
(3) レッドカード
(i) 機能紹介
授業中に教員が特定の学生に特定のメッセージを発信することができる.
想定された利用場面は授業中に騒ぐ学生に「静かにしなさい」,「出て行きな
さい」など最終警告を与える時である.本来は学生全員の前で警告を口頭で
伝えるが,授業の雰囲気を壊すという理由で教員から要望があった機能であ
る.座席表から特定の学生を選択し,あらかじめ用意された警告メッセージ
を選択するだけで,学生へ警告メッセージが送信できる.また,学生画面は
全画面に赤や黄色の警告ウィンドに変わる(図Ⅱ.1.11 参照).これによって,
インパクトの高い警告を発することができる.
(ii) 評価
ドリル機能と同様に,レッドカード単体のアンケートは実施しなかったが,
「先生が特定学生の名前を呼んで授業態度を注意されることに対して私語等
に効果があると思いますか?」の問いに対して 76%の学生が私語などの防止
に効果があったとアンケートに回答した.
⑤
他システムとの連携
本学では HInT システムと教務システムをお互いに連携させて,学生や教員に必要
講義情報
講義情報
出席データ
出席・小テス
ト結果データ
p-HInT システム
(大人数講義支援システム)
HInT システム
(学生・教員ポータルサイト)
教務システム
(学生・教員ポータルサイト)
図Ⅱ.1.12 阪南大学教育システム・教務システム連携イメージ図
- 14 -
図Ⅱ.1.13 HInT の出席管理画面
な情報を容易にアクセスできる環境を整えている.p-HInT システムも本学の教育シス
テムのひとつとして,HInT システムとの連携を実現したことで(図Ⅱ.1.12 参照),最
終的には教務システムへとデータが自動的に統合され,全学的な成績管理や出席管理
に利用される.これらの他システムとの連携を実現した機能について紹介する.
(1) HInT との出席管理機能連携
p-HInT で取得した出席データを HInT とデータ連携させている.学生はポータ
ルサイトである HInT からいつでも出席状況を確認することができる(図Ⅱ.1.13
参照).HInT は p-HInT のみならず,携帯電話やコンピュータ教室の PCL+®(授
業支援システム)からの出席データを統合することができ,また手動入力機能も
小テスト正解率一覧
学生別回答内容一覧
図Ⅱ.1.14 HInT の p-HInT 小テスト結果画面
- 15 -
備えている.本機能は 94%の学生が便利だとアンケートで回答した.
(2) HInT との小テスト成績管理機能連携
p-HInT の小テストやドリル機能で取得した成績データを HInT とデータ連携さ
せた(図Ⅱ.1.14 参照).学生は HInT から小テスト結果を参照したり,再度復習す
ることができる.また教員は手動で成績を変更することもできる.本機能は 83%
の学生が便利だとアンケートで回答した.
- 16 -
2. 運用体制
①
概要
運用体制の目的は,p-HInT システムを導入した授業のスムーズな実施である.そ
のためには 2 つの役割を担う.一つ目は受講者全員に DS 等の携帯情報端末を普及さ
せる体制を整えること,二つ目は p-HInT を取り入れた授業を操作等の面で支援する
体制を整えることである.これらを実現するための事務体制を図Ⅱ.2.1 に示す.特徴
は情報システム課の職員に加え,学生を様々なシーンで活用したことである.まず,
授業での操作支援を行う授業補助 TA,p-HInT 本体にはサポートされない機能を自
作プログラムにて実現する技術補助 TA,性能テストや通信テストなどの作業支援や
DS 貸出業務を行う作業補助 TA などである.
担当職員1名(兼務)
技術支援職員1名(兼務)
技術補助員(嘱託)1名
(H21 年度のみ・専任)
臨時職員1名(兼務)
授業補助 TA
約二十数名
(学生アルバイト)
技術補助 TA
3~4 名
(学生アルバイト)
作業補助 TA
約十数名
(学生アルバイト)
図Ⅱ.2.1 事務支援体制
DS 等の普及・貸出に関する運用,運用を支援する TA の体制,さらに p-HInT の
普及のための教員・学生へのサポートを以降の節にて説明する.
DS 等の普及・貸出
p-HInT システムで利用する携帯情報端末は,公式サポートは DS,DSi,PSP と
した.公式サポートとは操作説明書などを準備し,操作支援ができる体制を整える
ことである.ただし,p-HInT の特徴を生かして,PDA,iPhone®,NotePC 等も可
能とした.
基本的に学生自身の携帯情報端末を持参することが前提であるが,所持していな
い学生のために DS の長期貸出制度(貸出運用や操作説明など),DS 購入の斡旋を
実施した.
(1) 長期貸出制度
阪南大学が DS を 700 台,DSi を 500 台,DS ブラウザ 100 個を購入し,p-HInT
を利用する授業を受講学生へ貸し出す制度である.貸出期間は前期・後期の半年と
した.貸出については,事前に学内 Web から申請を行う時に,受取日時を指定さ
②
p-HInT 授業の履
修登録人数
2008 年度
2009 年度
前期
後期
前期
後期
415
574
835
1,022
貸出件数
本体貸出者の ブラウザ貸出者の
本体
ブラウザ 合計
割合
割合
30.4%
-------126 -------126
64.1%
-----368 -------368
34.0%
8.9%
284
74
358
48.0%
9.0%
491
93
584
表Ⅱ.2.1
利用者人数と貸出
- 17 -
せる(受付時間帯毎に人数制限を行う)ことで,混雑を解消するように配慮した.
また,返却については,期末の最後の授業終了後に教室内で返却することで,未返
却の件数を減らすように努めた.表Ⅱ.2.1 に 2008 年 4 月からの長期貸出人数の推
移を示す.
(2) DS 購入の斡旋
2008 年度は,4 月に DS 取扱業者が学内にて販売を行ったが,販売数は DS 30
台,ブラウザ 100 本であった.後期は,大学生協にてブラウザのみの販売を行い
31 本販売された.想定していたほど,販売数が伸びなかった(量販店の方が安価
か,ポイント加算があるため)ので,2009 年度からは学内での販売を中止した.
(3) DS 貸出方法等の運用方法の確立とマニュアル等の整備
2008 年度後期からは,学内 Web ページの専用サイトで次の説明を行った.
図Ⅱ.2.2 受講生への p-HInT 利用授業についての情報提供の Web サイト
・ p-HInT を利用する授業における学生への周知徹底(2009 年度からは,シラバ
スにも明記するようにした)
・ DS 長期貸出制度の利用方法の明記
・ DS 等で授業を行う上での注意点
・ p-HInT で利用可能な携帯情報端末の明示と無線 LAN の設定方法の説明
また,2008 年度後期からは,最初の授業において,職員が DS 等の準備方法等
の説明を直接行った.
③ TA の体制
(1) TA の業務
本取組では,業務内容に応じて次のように学生を TA として採用している.
a)授業補助 TA
p-HInT を利用する授業の補助を行う.前後期それぞれ DS 等の操作説明を実施
する.
第2回目の授業から学生及び担当教員が p-HInT 利用に慣れる第 4 回目授業まで
は TA は多め(4~7 名)に配置したが,それ以外は,受講生 100 人以下は 1 ~ 3
名,100 人以上は 3 ~ 4 名配置している.主な業務は次のとおりである.
- 18 -
・DS 等を持参するのを忘れた学生や DS のバッテリー切れの学生に対して,授業
内での DS や充電器の貸出・返却
・DS 教員機の操作補助(授業開始前の準備含む)
・学生所持の DS 等のネットワーク設定補助
・受講学生の操作関係の質問対応及び質問内容の収集
・システムやネットワーク等のエラーの収集及び対応
また,採用した学生に対しては,業務の流れや注意事項、教室機器及びTA用ペ
ージの操作方法等について約 2 時間程度の説明会を実施している.
b)技術補助 TA
p-HInT システム関係の補助ツールの開発及び受講学生の立場からシステム開発
打ち合わせの参加等を行う.作成した補助ツールは,小テスト結果 CSV ファイル
変換ツール,小テスト問題印刷ツール,小テスト結果メール配信ツール,席替えエ
ディタ等である.
c)作業補助 TA
貸出用 DS の準備(ネットワーク設定,管理ラベル貼り等)や貸出業務の補助を
行う.また,p-HInT のシステムテストでは DS 操作要員としてテストに参加した.
図Ⅱ.2.3 p-HInT システムテストの様子
なお,取組期間中のTAの採用人数と勤務時間については,次の表のとおりである.
表Ⅱ.2.2 TA の採用人数及び勤務時間
年度
授業補助 TA
期
授業回数
(回/週)
延べ人数
(人)
技術補助 TA
勤務時間
(H)
2007
前期
2008
2009
合計
4
14
人数
(人)
勤務時間
(H)
作業補助 TA
人数
(人)
勤務時間
(H)
3
327.0
13
101.0
4
472.0
17
180.0
4
123.5
12
334.0
11
922.5
42
615.0
274.0
後期
8
25
532.5
計
12
31
806.5
前期
16
26
799.5
後期
14
28
1,188.5
計
30
45
1,988.0
42
76
2,794.5
- 19 -
(2) TA 運用支援サポートツール
z TA 用ツール
授業中は,授業補助 TA は DS を所持し,授業中の受講者からの質問事項や通信
エラー等について,DS を使って TA 専用ページに書き込み,蓄積することで,
p-HInT 推進プロジェクトのメンバ等がいつでも情報を把握し,共有できるように
した.
また,p-HInT システムやネットワーク機器の障害等が発生し,TA では対応で
きない時は,TA 専用ページからヘルプの要請をする.これにより情報システム課
に設置されている管理パソコンで警告音が鳴ると同時に,関係者にメールで通知
される.
図Ⅱ.2.4 TA 専用ページ
表Ⅱ.2.3 TA 専用ページの機能一覧
機
能
内
容
エラー状況報告
学生の DS 等で発生したエラー状況の内容を報告するページ
座席番号札損傷報告
p-HInT で利用する座席番号札の損傷を報告するページ
質問内容報告
受講学生からの質問内容を報告するページ
授業内機器貸出報告
授業中の DS や充電器の貸出管理を行うページで,一定回数以上貸出を行った
学生には警告が表示される
TA 日誌
業務日誌を報告するページ
状況連絡ページ
教員機に表示される座席の重複や通信状態、みんなのこえの情報を連絡するペ
ージ(TA 同士で状況を把握するために利用)
出席採取時にエラーがあった学生の一覧表示
(授業終了時に担当教員に報告するために利用)
システムやネットワーク障害等で,緊急に連絡するためのページ
出席エラー報告ページ
緊急連絡ページ
その他
事務から TA への連絡事項や無線 LAN の設定方法,エラーの対応方法等を掲
載
- 20 -
図Ⅱ.2.5 TA 用ツールの障害報告集計ページ
z
勤怠管理ツール
情報システム課では,本取組で採用している TA 以外にも利用アドバイザなど学
生アルバイトを採用しており,学生アルバイトの勤怠については,情報システム
課等に設置されている一定のパソコンで,アルバイト学生が業務開始,終了情報
を入力することで,アルバイト学生の勤怠管理を行っている.
図Ⅱ.2.6 勤怠管理画面
④
教員・学生へのサポート
(1) 教員向け説明会実績
各期の授業が開始される前に p-HInT の機能等の説明会を行い、説明会の資料や説
- 21 -
明会のビデオを専用のページにアップしている.
・2008 年 9 月 7 日 15:30 ~ 後期授業担当者向け
・2009 年 2 月 23 日 10:30 ~ 前期授業担当者向け
・2009 年 9 月 18 日 13:00 ~ 後期授業担当者向け
図Ⅱ.2.7 教員向け説明会(2009 年 9 月 18 日)
(2) 学生向け説明会実績
第2回目の授業において,p-HInT 推進プロジェクトのメンバが操作説明を行って
いる.なお,主な内容は次のとおりである.
1) 個人で DS 等を準備してきた学生に対し,ネットワークの設定及び p-HInT の
URL のブックマークへの登録(なお,DSi を持参した学生にはソフトのダウン
ロードの説明)の説明
2) p-HInT へのログイン方法の説明
3) 「出席をとる」の操作及び出席確認方法の説明
4) 「テスト」の解答方法の説明(文字入力・手書き入力等の練習含む)
5) 「座席指定」を利用する授業では,席替えを実施
6) 「みんなのこえ」の説明
7) 「レッドカード」の説明
8) 教育システム HInT での出席確認及びテスト結果の確認方法の説明
図Ⅱ.2.8 学生向け説明会資料等(抜粋)
- 22 -
⑤
利用実績
(1) 利用科目・講義
2008 年度前期は,p-HInT を開発して初めて利用するので,経営情報学部の授業3
科目4クラスのみであったが、その後各学部にも広げ,2009 年度は,全学部において1
8科目23クラスで利用するようになった.
表Ⅱ.2.4 p-HInT 利用科目一覧
年度 期間
前
期
IT入門(2クラス)
ネットワーク論
データベース論
合
2
0
0
8
年
度
受講生数
(人)
科目名
計
国際金融論
外国経済史
後
期
期
経営情報
64
57
経営情報
経営情報
432
456
136
138
195
166
33
経営情報
経営情報
経営情報
日本型経営論
104
150
経営情報
57
66
661
835
計
備考
流通
流通
158
67
週2コマ
国際コミュニケーション
82
111
流通
337
341
経営情報
232
47
145
59
48
198
1,148
148
112
207
45
147
68
56
194
1,169
166
150
経営情報
経営情報
経営情報
経営情報
経営情報
アジア経済論
101
98
経済
週2コマ
情報経済学
107
124
経済
週2コマ
中小企業論
216
238
経営情報
週2コマ
61
142
138
48
201
1,274
59
168
186
52
214
1,455
経営情報
経営情報
経営情報
経営情報
IT入門(2クラス)
後
335
55
54
29
アジア経済社会論
2
0
0
9
年
度
323
140
57
合
期
配当学部
企業分析論
マルチメディア論
システム開発論
観光産業論
前
履修登録
者数(人)
経営学入門(4クラス)
情報処理技術の基礎講座Ⅰ(2クラス)
企業論(Aクラス)
ネットワーク論
データベース論
国際観光論a
合 計
国際金融論
国際投資論
システム開発論
企業分析論
日本型経営論
マルチメディア論
国際観光論b
合
計
- 23 -
週2コマ
週2コマ
国際コミュニケーション
流通
流通
国際コミュニケーション
週2コマ
(2) 受講生数の推移
2008 年度は,延べ受講生数が 1,093 人(実利用学生数は 934 人)で,2009 年度は,
延べ受講生数 2,422 人(実利用学生数は 1,488 人)であった.
図Ⅱ.2.7 受講生数の推移
(3) 小テスト実施回数の推移
2008 年度から p-HInT を用いた授業を実施し,2009 年度末期には小テスト実施回数
は 716 回実施された.以下が小テスト実施回数の推移である.尚,小テスト実施回数
にはドリル実施回数も含まれている.
小テスト実施回数
28 3
300
225
250
200
150
100
118
90
50
0
H20前期
H20後期
H21前期
H21後期
図Ⅱ.2.8 小テスト実施回数の推移
(4) 出席実施回数の推移
p-HInT システムには出席確認を行う機能が実装されており,2009 年度で合計 466
回の授業にて出席確認を実施した.以下が出席確認実施回数の推移である.
出席実施回数
200
174
180
153
160
140
120
91
100
80
60
48
40
20
0
H20前期
H20後期
H21前期
H21後期
図Ⅱ.2.9 出席実施回数の推移
- 24 -
(5) 便利機能(みんなのこえ,レッドカード)実施回数
便利機能は 2009 年度後期からシステムに実装され,授業中における教員.学生共の
支援を行う機能である.学生は DS にて小さな悩みを発言したり,授業がわかりにくか
った等の場合にも自由に発言する事が可能である.これらの機能の利用回数は以下で
ある.
表Ⅱ.2.5 便利機能実施回数
みんなの声(発言回数)
へぇ~ぼたん押下回数
レッドカード
- 25 -
H21後期
2047
18990
154
3. 授業のフィードバック
①
概要
p-HInT が授業に与える影響を様々な方法で計測した.まず,教育効果を明らかに
するために同一教員による同一科目の 28 回の授業を p-HInT 利用ありとなしの 2 クラ
スで実施し,成績を比較した.また,この 2 クラスを利用して授業中の私語の量を計
測し,授業中の講義説明時間も計測し,それぞれ比較した.同時に学生へアンケート
を実施した.教育効果,授業中の私語,講義説明時間の推移と,学生アンケートの結
果より,p-HInT システムは大人数講義の授業改善に効果があると確認できた.
②
教育効果計測
(1) 計測方法
p-HInT システムの教育効果を明確にするために検証実験授業を設定した.対象
とした科目は企業論(経営学)であり,経営情報学部の基幹選択科目である.同一
教員による 2 クラスの授業で,それぞれ 28 回の講義がある.講義内容や進行は完
全に一致している.受講生は主に学籍番号順に機械的に2クラスへ割り振られてい
る.表Ⅱ.3.1 に 2 クラスの詳細を示す.
表Ⅱ.3.1 教育効果計測のために設定した 2 クラス
Aクラス
Bクラス
p-HInT 利用
あり
なし
科目名
企業論
企業論
担当教員
S先生
S先生
授業曜限
月曜1限,水曜3限
月曜2限,水曜2限
授業回数
28
28
受講生
147
134
講義内容
出席率
現在経済社会における企業の存立と行動に関
する基礎知識習得
78.8%
78.1%
さらに,28 回の授業中に 4 回のペーパー試験をそれぞれのクラスで実施した.1
回の試験には4問の選択式問題と 4 問の論述式問題が含まれる.
(2) 計測結果
4 回の小テスト結果を図Ⅱ.3.1 と図Ⅱ.3.2 に示す.図Ⅱ.3.1 と図Ⅱ.3.2 は試験を採
点した結果を示した箱ひげ図であり,箱の上部が点数の 75%点,箱の下部が点数の
25%点を示し,赤い横棒が平均点を示す.また,縦直線の最上部が最高点,最下部
が最低点を示す.図中のA,BはそれぞれAクラス,Bクラスを示す.
平均点の有意差を t 検定で検証した結果,論述式の 1 回目と 2 回目,3 回目のA
クラスの成績がBクラスよりも良いことがわかった.そのほかの試験結果に有意な
差はなった.したがって,p-HInT をつかった講義の論述式の成績が従来方式の講
義よりも良い成績を示すことができた.
③
授業運営効果
(1) 計測方法
- 26 -
60
点数
45.9
50
45.7
47.0
75%点
60
最大点
28.2
40
41.5
29.0
50
30
30
平均点
20
10
A
B
マーク 1回目
図Ⅱ.3.1
A
B
マーク2回目
24.3
A
B
28.1
23.0
27.8
18.0
14.9
10
最小点
マーク3回目 25.7
17.8
20
25%点
0
有意な差あり.
40
29.8
30.0
点数
A
B
マーク4回目
2 クラスの選択式問題の採点
0
A
B
A
論述 1回目
図Ⅱ.3.2
B
論述 2回目
A
B
論述 3回目 A
B
論述 4回目
2 クラスの論述式問題の採点
教育効果を計測した 2 クラスを利用して,私語の軽減と授業内容の比較を行った.
計測方法は 2 名の計測者が第 10 回目の授業にそれぞれ参加し,私語の量は一定時
間ごとに計測者の主観で 10 段階に分けて記録した.授業内容は教員の行動をすべ
て記録して行動に必要な時間を計測した.
(2) 計測結果
私語の量の計測結果を図Ⅱ.3.3,授業内容の比較結果を図Ⅱ.3.4 に示す.
「DS あ
り」と書かれたクラスが p-HInT を利用したAクラスであり,「DS なし」と書か
れたクラスが通常授業のBクラスである.私語の量は終始「DS なし」のBクラス
の方が大きい.90 分全体の私語の大きさの総合計は p-HInT をつかったAクラス
の方が通常授業のBクラスよりも 25%私語の量が少なかった.つまり,Aクラス
の方が,私語が少なかったことがわかる.
また,授業中の教員の行動を計測した.一般的に授業は,講義の本質を説明す
図Ⅱ.3.3 2 クラスの私語の量の計測結果
図Ⅱ.3.4 2 クラスの授業内容の計測結果
- 27 -
る講義内容説明時間と,出席管理や小テスト資料の配布回収する授業雑務時間か
ら構成される.教員は同様の講義内容を両クラスに実施するが,p-HInT を利用す
るクラスAの方が,講義内容説明時間が 11%長く確保できた.特に,小テスト後
にテスト結果をグラフで参照しながら復習する説明時間が十分に確保できたとこ
ろが,通常授業のBクラスと大きく差がでた.
④
学生アンケート結果
(1) 実施実績
p-HInT システムが本格的に稼働した 2008 年 4 月より,半年ごとに全受講生に
対してアンケートを実施した.実施概要を以下に示す.
第 1 回目
第 2 回目
第 3 回目
第4回目
表Ⅱ.3.2 学生アンケート実施概要
実施時期
受講生数
回答数
2008 年 7 月
432
237
2009 年 1 月
661
469
2009 年7月
1148
753
2010 年 1 月
1274
847
質問項目数
4
4
16
18
(2) アンケート結果の推移
それぞれの時期によって実現した機能や環境が異なるので,同一質問項目です
べてのアンケートは実施できなかった.そこで代表的な質問である「出席機能,
小テスト機能は便利であるか?」のアンケート推移を以下に示す.
24年間のアンケート推移
80%
74%
68%
70%
72%
60%
60%
50%
41%
40%
41%
34%
30%
30%
20%
10%
0%
2008年度前期
2008年度後期
出席機能は便利か?
2009年度前期
2009年度後期
小テスト機能は便利か?
図Ⅱ.3.5 2 年間の4回アンケート結果の推移
また,システム稼動2年目には主用機能が完成し,内容を充実させたアンケ
ートを実施した.図Ⅱ.3.6 が 2009 年度のアンケート結果の推移である
- 28 -
DSの小テストや出席管理があるの
で,講義を集中して聞くことができ
ましたか?
DSを使った小テスト、小テスト結果
の正誤を確認できることで、あなた
は本授業に対する理解度が深まり
ましたか?
100%
100%
100%
90%
本授業にてDSを使った座席指定
だった学生に尋ねます。DSを使っ
た座席指定を行うことで、クラス全
体の私語は減少しましたか?
15
20
90%
80%
15
18
23
70%
21
80%
80%
70%
34
46
60%
39
32
39
43
60%
60%
42
50
50%
50%
40%
40%
30%
40%
30%
43
37
20%
30
20%
20%
30
10%
10%
2
0
2009前期
2009後期
理解できなくなった 変わらない
少し理解できた
非常に理解できた
0%
0%
6
9
90%
座席指定なし
かなり静かである
DSの貸出(前期の長期貸出、授業
中の貸出)は便利だとおもいます
か?
100%
70%
54
58
60%
50%
12
40%
7
30%
25
30%
28
10%
0%
0%
2009前期
わからない
24
20%
35
10%
ない
うるさくなった
少し静かになった
変わらない
非常に集中した
56
50%
20%
4
2009後期
80%
47
60%
40%
6
2009前期
0%
90%
80%
70%
5
2009後期
集中できなかった
少し集中した
あなたはTAに助言(困ったとき助
けてもらう)してもらったことはあり
ますか?
100%
5
2009前期
2009後期
ある
頻繁にある
16
15
5
4
2009前期
2009後期
便利ではない
少し便利だ
わからない
非常に便利である
図Ⅱ.3.6 2009 年度の 2 回のアンケート結果
(3) アンケートの自由記述の一例
アンケートには DS の授業関するアンケートや授業に対する要望等も含まれ
ていた.実際のアンケート内容の一部を紹介する.
• 座席指定により私語が少なくなるのが,一番効果があったと思います.
• 新しい取り組みなのでとてもいいと思う.
• これからも取り入れていくべきだ.
• 便利だけど、正直 PSP の方が使いやすいと思った.
• DS を忘れた時に数回だけ貸し出しができるようにして欲しいです.また,DS
を持っていない人のために大学の方で全員が持てるように生協で買えるよう
に配慮して欲しいです.
• もっとDSを使ったテストなどをやれば良かったのにと思った.
• DS 内で掲示板機能があれば便利だと思った.
• 聞き逃したことを,授業を中断せずに解決できそうだから.
- 29 -
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
•
欠席しているのにDSを友達に頼んだりしているのをしばしば見ます.
DS の「みんなのこえ」の機能を使うことによって今まで発言できなかったこ
とができたりするので良かったと思います.
DS を使うことで紙などを配る手間が省けるので,DS は非常に便利だと思いま
した.
DS を使ったアンケートやテストをもっと取り入れるべきだと思う.
特にありません.
非常に便利であり,良かったので,今まで通りでいいと思います.
このような授業形態は珍しいので学生の関心も高まると思う.
「みんなの声」のシステムは普段の授業で手の挙げる事の出来ない人も発言で
きるのでいいと思います.
HInT システムに小テストの問題と解答だけでなく選択肢もアップして欲しい
です.
小テストに関しては紙を取りに行ったりする時間が短縮されるのでいいと思
った.
出席をとるだけの場合は携帯電話でした方が楽だと感じた.
デメリットよりメリットの方が多いと感じるので今後も DS を使った授業が増
えればいいなと思いました.
TA の対応がすごく親切で良かった.
暑いやホワイトボードが見えないなど,ちょっとしたことで授業をとめず,手
もあげずにボタン一つで伝えることが出来たのでとても良かったです.
TA さんは対応が早くて良かったと思います.ありがとうございました.
初めて DS を使用した授業で,戸惑いもありましたが,結果的に非常に便利で
感謝しています.しかし,台数が限られており,やむをえず欠席している人が
意外に多く,金銭的な理由ですが,問題だと感じました.授業内容に関しては,
大変勉強になり楽しめました.
p-HInT の教育効果のまとめ
教育効果,授業運営効果,アンケート結果より p-HInT の授業での効果を検討する.
まず,アンケート結果より,理解度向上や集中力向上に p-HInT は有効であったことが
わかる.また,2 クラスの授業で私語の量の計測やアンケート結果からも p-HInT を利
用した授業では私語が軽減されたことがわかる.さらに,同一科目の 2 クラスの授業
での教員の行動計測を行うことで,講義内容説明時間を多く確保できたことがわかる.
これらが複合的に影響し,p-HInT を利用したAクラスの成績が,通常授業を実施した
Bクラスよりも良いという結果になったと解釈できる.
また,選択式問題の成績は p-HInT を利用したクラスと通常授業のクラスとの間に
有意な差はなかったが,論述式問題の成績には有意な差が発生した.DS の性質上,選
択問題のトレーニングが繰り返し実施でき,選択式問題の成績に差が生じると予測し
たが,予想に反して論述式問題の成績に差が生じた.その理由について,担当教員は
「大人数講義では学生は大人数の中の一人と感じている.しかし,p-HInT システムで
教員が,個人を特定できたので,教員と学生の距離が縮まったような気がした」と述
べた.アンケート結果でも,「DS を使った授業で,先生が受講生の名前を呼んで授業
態度を注意されることに対して私語等に効果があると思いますか?」の問いに関して,
⑤
- 30 -
76%の学生が「効果がある」と答えている.これらの結果として授業に集中し,授業
内容をより深く理解でき,結果として,論述式問題の成績が向上したと考えられる.
したがって,p-HInT は大人数講義の授業改善に有効なシステムであると考えられる.
- 31 -
III. 広報・協働(世の中に広めるために)
本章では,p-HInT システムを利用した大人数講義の授業改善を学外へ広めるための活
動について紹介する.まず,ビジネスショーへの出展を紹介し,教育機関への無償配布を
紹介し,メディアなどへの広報も紹介する.さらに,一般に広く活用されるために学生が
主体となって作成したツール群の開発実績や情報関係の学術学会での発表などの成果を紹
介する.
1. e-LearningWorld2009 出展
①
目的
2009 年8月 5 日から 7 日に東京ビッグサイトで開催された「e-Learning WORLD
2009」(http://www.elw.jp/)に p-HInT を出展した.阪南大学で取り組んでいる大人数
講義の授業改善を広報すると共に p-HInT システムの紹介を行うことを目的とした.
図Ⅲ.1.1 e-Learning WORLD 2009 の会場
図Ⅲ.1.2
②
e-Learning WORLD 2009 の出展様子
出展内容
出展した内容は以下のとおりである.
(i) p-HInT デモ
DS20 台,DSi20 台,PSP1台,iPodTouch1 台と教員機コンピュータと大画面
- 32 -
32 型モニター
19 型モニター
19 型モニター
Corega AP
Router
教員機デモ機
モ ニタ ー 切
(FJB用意)
り替え機
花川レッツ
花川レッツ
モニタークローン機
アンケート用教員
機(DELL機)
教員機デモ機
野
(FJB用意)
Thinkpad
口
図Ⅲ.1.3 デモ環境のモニター配線・ネットワーク図と実際のデモ環境
モニタを準備してデモ環境を整えた.予備として複数台のノート型サーバ機も準備
した.来場者に自由にシステムに触れてもらうことで,p-HInT の利便性を確認す
ることを目的とした.以下にデモ環境のモニター配線とネットワークの簡略図を示
す.
(ii) 教育効果のポスター
Ⅱ章で紹介した教育効果をA1の 3 枚ポスターにまとめて提示した.以下にポス
ターのイメージを示す.
図Ⅲ.1.4 教育効果用ポスター
(iii) 開発の経緯のポスター
p-HInT システム開発において試行錯誤を行い,授業改善の実現した過程を紹介
したポスターを作成した.以下にイメージを示す.
- 33 -
図Ⅲ.1.5 開発経緯ポスター
(iv) 授業風景プロモーションビデオ
北川先生担当の IT 入門科目のプロモーションビデオを作成し,授業風景を 3 分間
のプロモーションビデオにまとめて,常時提示した.
図Ⅲ.1.6 授業風景プロモーションビデオ
(v) p-HInT 広報用と学生アンケート結果パンフレット
来場者配布用に p-HInT の広報用パンプレットを 1,000 用意した.
図Ⅲ.1.7 配布用パンフレット
(vi) 来場者用アンケート(アンケート御礼粗品)
来場者の感想を尋ねるアンケートを準備した.DS からアンケート回答も可能であ
- 34 -
図Ⅲ.1.8 来場者用アンケートと粗品
り,紙媒体のアンケート用紙も準備した.さらに,アンケート御礼粗品(阪南大学
ロゴ入りボールペンに p-HInT の広告付き)を準備した.
以下は e-Learning WORLD2009 のパンプレットに記載された案内文である.
------------------------------------------------------------------------------------------------------阪南大学はニンテンドーDS 等の携帯情報端末を用いた大講義室用の双方向教育シス
テムを構築しました。小テスト実施、瞬時集計はもちろん、出席確認、着席順一覧等教
員の視点から『かゆいところに手が届くシステム』が完成致しました。㈱富士通ビジネ
スシステムと産学連携にて開発することで、卓上の理論ではなく、1年半の実績に基づ
く、現場視点のシステムとなっております。2009 年度末までの利用は、28 科目 36 クラ
ス、延べ受講生 3,000 名となり、中には1クラス 200 人以上となる授業もあります。も
ちろんニンテンドーDS だけではなく、ノート PC、PSP、iPhone 等のブラウザがある
機器なら何でも動作可能です。
------------------------------------------------------------------------------------------------------③
出展の体制
本出展の体制は以下の通りである.特徴は学生補助員を採用したことである.実際の
提示ブースにて積極的に来場者に説明を行い,本学の取り組みの特徴をアピールするこ
とができた.
④
来場者数
(i) 3 日間の来場者数
624 人
情報システム
技術補助員
GP 担当
情報処理センター長
神澤先生
e-LearningWORLD 出展
リーダ 花川典子
学生補助員
p-HInT 利用担当教員
図Ⅲ.1.9 出展体制
- 35 -
尾花将輝
濱田佐知子
(ii) 名刺交換者数 113 人
(iii) 後日問い合わせ大学関係者
約 10 校
⑤
来場者アンケート結果
アンケートに回答していただいた来場者の総数は 135 である.結果の抜粋を以下に示
す.アンケート全体をまとめると,大学関係者の 64%が大人数講義の問題点を感じてお
り,90%の大学関係者が p-HInT は阪南大学の大人数講義の授業改善に役に立っている
と回答した.また,84%の大学関係者が携帯情報端末を利用することは有効であると回
答し,68%の大学関係者が自分の教育機関でも有効だと回答した.
⑥
出展感想
本学出展ブースは予算の関係上,最小のスペース(2m×2m)だったが,3 日間とも来
場者が常にあふれた状態であった.近隣の企業や大学ブースに来場者が少ない時間帯で
あっても,阪南大学だけは常に見学者が熱心に話を聞いていただいた.また,日本の
e-Learning 研究の第一人者や e-Learning の大手企業の取締役など,e-Learning 分野の
専門家たちからも多くの質問があり,その内容が高く評価された出展であった.さらに,
本システムに類似した「ニンテンドーDS 教室」(シャープと任天堂の共同開発)開発関
係者からも技術的な面と運用面,実績面,教育効果に対して高い評価をいただき,大学
の大講義の授業改善システムとしての有効性を認識していただいた.また,出展内容が
システムの紹介だけでなく,教育実践結果や教育効果に関しても十分な調査研究が行わ
れており,多くの来場者が関心を引くことができた.
阪南大学としては初めてのビジネスショー出展であり,出展要領や様子の情報がな
いため様々な試行錯誤をして,大きな苦労を要したが,p-HInT の大人数講義の授業改
善の有効性を広報できたことは非常に価値ある活動のひとつであったと考える.
- 36 -
図Ⅲ.1.10 来場者アンケート結果(抜粋)
- 37 -
2. p-HInT システム無償配布
①
目的
無償配布の目的は,他の教育機関で大人数講義における授業改善の手法として p-HInT
システムを試用する事である.大講義授業における問題点として個々の学生の理解度が
把握できない,授業雑務業務等の改善はどの教育機関でも抱える問題である.これは
e-leaning World2009 にて他の教育機関の教職員からのアンケート結果だけではなく,
情報系の学会においても同様の要望を聞き,無償配布版の作成を検討した.
また,本格的なシステムの導入では無く,システムを少し試してから本格導入を検討
したいとの声が多かった点も理由のひとつある.p-HInT システムの無償配布版を提供
し,導入を検討する他の教育機関にシステムの試用を通して,システムの本格導入や広
く一般に広報することが狙いである.
②
無償配布内容
無償配布版 p-HInT システムは本学に導入されている p-HInT システムと利用方法等
は全く同じである.ただし以下にシステム制約が発生する.
(1) 教室レイアウトは本学の教室である.
(2) データベースシステムに Microsoft SQL Server Express を利用している.
データベースシステムが変更されるため,システムを再構築する必要性が発生したが,
基本的には以前のシステムと同様のデータベース構造を利用する.また OS には従来の
p-HInT システムと同様 Windows2003Sever を用いている.
配布方法としては,提供先にて Windows2003Sever のライセンスキーを準備し,本学
に送付してもらう.その後,無償配布版 p-HInT をセットアップしたバーチャル PC イ
メージを作成し,DVD にて配信を行った.
バ ー チ ャ ル PC
イメージ作成
ライセンスキー送付
本学
他の教育機関
郵送
DVD作成
図Ⅲ.2.1 無償配布の仕組み
③
配布実績(問い合わせも含む)
無償配布版についての問い合わせは総数で5件あり,そのうち無償配布を希望す
る学校としては2件であった.希望した教育機関として岩崎学園情報科学専門学校
と玉川大学の2校であった.共に e-Leaning World 2009 に来場して頂き,無償配
布を希望した.
- 38 -
3. メディアへの広報
①
新聞関係の広報
(1) 日刊工業新聞に記事掲載
(2) 教材新聞に記事掲載
図Ⅲ.3.1 新聞への記事掲載(Web 版)
②
HP 関係の広報
(1) ㈱富士通ビジネスシステム HP に p-HInT システムの記事掲載
(2) 阪南大学 HP に p-HInT システムの記事掲載
図Ⅲ.3.2 p-HInT 広報用の Web サイト
- 39 -
4. 学生による便利ツールの開発
①
目的
p-HInT システム本体以外にも,学生の技術補助員を中心に以下の便利ツールを
作成し,実際に小テスト集計などの支援を行った.これらの便利ツールは教員の個
別の要望により開発した.このような教員の個別の要望はメーカに依頼するとコス
トや開発期間,ソフトウェア保守の面により対応できない等の問題がある.学生開
発だからこそ実現できた便利ツールである.今後も要望に従って,様々な便利ツー
ルの開発を進めていく予定である.
②
開発したツール群
(1) 小テスト実施結果 CSV ファイル変換ツール
小テスト結果を保存した CSV ファイル形式が集計しにくいという要望によって,
小テスト結果 CSV ファイルを従来のマークシートの CVS ファイル形式へ変換する.
(2) 小テスト問題印刷ツール
小テスト実施中に DS のトラブルや通信エラーで一部の学生が小テストを実施で
きない場合,その場で即座に小テストをプリンタに印刷して,紙媒体で小テストを
実施するためのツール.
(3) 小テスト結果メール配信ツール
小テストを実施した授業終了後,学生は小テストの結果を確認したり,復習する
方法がない.そこで,小テスト結果を集計し,正解とともにメールで自動配信する
ツール.
(4) 席替えエディタ
席替え機能を使って,学生の着席位置を指定する場合,学生の要望(視力が悪い,
スクリーンが見えないなど)によって,着席位置を容易に変更するためのグラフィ
カルエディタツール.
③
効果
ツールを作ることによって,教員の作業支援となり,p-HInT 活用の推進に役立つこ
とができた.さらに次期バージョンの機能改善に役立てることができ,p-HInT システ
ムの機能改善や性能改善に役立てることができた.
もっとも大きな効果は,学生が実際に役に立つツールを作成できたという達成感と充
実感,さらにそれに伴い大きな自信を得ることができたことだ.これは就職活動やこれ
からの社会人生活で重要な価値のある体験になったと考える.
- 40 -
5. 学術学会等のそのほかの活動
(1) はびきの市民大学講座にてポータブル HInT デモ実施(2008 年 5 月 24 日)
(2) オープンキャンパスでの模擬講義
2008 年7月 26 日・27 日,8月 23 日・24 日,9月7日
2009 年7月 25 日・26 日,8月 22 日・23 日,9月 13 日
(3) 国際学会発表 The 16th International Conference on Computers in Education,
ICCE 2008 にて“p-HInT: Interactive Educational environment for improving
large-scale lecture with mobile game terminals”のタイトルにて発表(2008 年 10
月 28 日)
(4) 私立大学キャンパスシステム研究会でのポータブル HInT 紹介(2008 年 11 月 13 日)
(5) 国際学会発表 Noriko Hanakawa, Masaki Obana, “MOBILE GAME TERMINAL
BASED INTERACTIVE EDUCATION ENVIRONMENT FOR LARGE-SCALE
LECTURES”, The Proceeding of the Eighth IASTED International Conference on
Web-based Education (WBE2010), Mar. 2010 (採録決定).
(6) 国内学会発表 尾花将輝,花川典子:ブレンディッド開発プロセスにおける複雑さ
のメトリクスの提案,第 16 回ソフトウェア工学の基礎ワークショップ(FOSE’09),
pp.221-228 , Nov. 2009.
(7) 国内学会発表 花川典子,尾花将輝:システム仕様定義工程におけるミーティング
の質を計測するメトリクスの提案,ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム
2009 (SES2009),pp.157-164,Sep. 2009.
(8) 国内学会発表 尾花将輝,花川典子:使い捨てプログラムを組み込んだインクリメン
タル開発プロセスの提案と実践,ソフトウェアエンジニアリングシンポジウム 2009
(SES2009),pp.186,Sep. 2009.
(9) HInT 開発・p-HInT 開発のシステム開発」のタイトルにて,SSRの講演,東京,
Sep. 2009.
- 41 -
IV. まとめ
2007 年 10 月より 2 年 6 カ月の歳月をかけて,大人数講義の授業改善を目的とした
p-HInT の開発と運用を行ってきた.p-HInT とは,DS などの携帯情報端末を利用した新
しい大人数授業支援システムである.ターゲットは 100 人以上の大人数講義であり,コン
ピュータ教室でない一般教室で教員と学生の双方向授業を支援するためのシステムである.
2008 年 4 月から運用開始し,2009 年度までに延べ 28 科目 35 クラスで利用され,2009
年には授業改善効果を計測することができた.同一科目同一教員による 2 クラス(1 クラス
は p-HInT 利用,1 クラスは通常講義)の成績比較では論述試験の成績において,p-HInT
を利用したクラスのほうが p-HInT を利用しなかったクラスより良いという結果を示した.
これは,p-HInT による私語の削減(25%の私語削減効果)や教員の説明時間の増加(講義
時間における講義内容の説明時間の 11%増加)等を p-HInT で実現した結果,学生の理解
度が向上し(アンケートで 70%が,「理解度が向上」と回答),授業に集中でき(66%が,
「集中力が持続した」と回答),成績向上につながったと考えられる.また,「みんなのこ
え」等の機能で学生からの自由な発言をサポートすることで,双方向教育の実現を促進し
た.その結果,授業映像記録と「みんなのこえ」のログを利用して,システム開発論にて
授業改善を実施することができた.これらの授業改善を実現するために,試行錯誤で
p-HInT の機能改善と性能改善を繰り返し,また,DS の貸出等の普及に対する運営や TA
体制を整えて授業支援をする体制,さらに技術補助 TA による便利なツール群のプログラム
開発など様々な工夫と活動を行った.
広報活動としては,2009 年 8 月に e-Learning World のビジネスショーに出展したり,
無償配布版を作成し教育機関に配布したり,メディア等を通じて広報活動を行った.同時
に学会活動として,p-HInT システムの開発に関する論文や発表,さらに教育効果に対する
国際学会での発表などを実施し,今後も引き続き発表を予定している.
今後は教員や学生の要望をより反映し,より使いやすいシステムへ改善すると共に,運
用体制の更なる充実を行い,広報にも力を入れる予定である.
- 42 -
謝辞
GP の申請から現在までの 3 年間,様々な人にお世話になりました.
2007 年3月に,「ICT 関係で GP に申請して欲しい」という底知れぬ不安に襲われる依
頼をいただきました当時のセンター長の市川先生に感謝いたします.おかげさまで,非常
にエキサイティングで波乱万丈の 3 年間を過ごすことができました.
「申請するテーマは DS を使った教育システムにする!」と即決できるほど,素晴らし
い DS を使った新しい教育システムの試作版を作った株式会社富士通ビジネスシステム(以
下,(株)FJB という)の田代氏に深く感謝します.田代氏の不屈の精神で低性能低機能な
DS をよみがえらせるような素晴らしい機能を試作しました.この試作版が阪南大学の
p-HInT プロジェクトのすべての始まりでした.ありがとうございました.
2007 年 3 月から 7 月にかけて,怒涛のような GP 申請書作成と面接の時期を過ごしまし
た.「ちょっと,ここの資料が足りないわ!」,
「データが古い!」などの数々の罵声の飛び
交う中,最後まであきらめずに申請書の執筆にご協力いただいた情報システム課の皆さま,
特に面接の練習に最後まで付き合ってくれた情報システム課の濱田様に感謝します.
2007 年 9 月に出張中の花川に GP 申請の採択を電話連絡していただき,喜びと同時に今
後の予想される苦労を分かち合う約束(花川は約束したつもりですが,阪本さんは「記憶
にない」らしいです)をした阪本様に感謝します.
GP 採択の報告をすると,
「くれぐれも体に気をつけて,最後までがんばってください」
と今後が不安になる励ましをいただいた大阪大谷大学の大倉先生に感謝します.
2007 年から実際の p-HInT システム開発が始まり,「こんなこともしたい,あんなこと
もしたい」と夢物語のような花川のうわごとに,ひとつひとつ丁寧に検討していただき「そ
れはできません」
「それは現実的ではありません」と的確な意見をいただいた㈱FJB 原田氏
(当時の㈱FJB のプロジェクトリーダ)に感謝します.
同時に設計段階に入って長時間にわたる設計ミーティングが実施されました.長い議論
に閉口しながらもすべての会議に参加していただいた情報システム課の森様,阪本様,濱
田様に感謝します.「学生からの意見も!」と突然言い出した花川に引っ張られるように参
加を強いられた当時大学院生の技術補助 TA の池宮氏,麻山氏,尾花氏に感謝します.「席
替え」の提案など,学生視点からの重要な機能の実現ができました.そして,なによりも
花川の夢のような妄想をひとつひとつ現実に近付けてくれた㈱FJB の SE 様たちに感謝し
ます.「そうじゃないのよね.」「私の頭の中のイメージと違う」とわけのわからない花川の
要求に最後まで辛抱強く付き合ってくれたことは称賛に値すると思います.
本番稼動前のシステムテスト時に「授業では 400 人が同時接続するから,400 台でテス
トしないと意味がない」と急に言い出した花川に対して,400 台の DS の充電,ネットワー
ク設定,ブックマーク登録等を急きょ実施していただいた濱田様に感謝します.瞬時に 400
台の接続を確認するテスト実施のために協力いただいた多くの作業補助 TA に感謝します.
そして,花川の満足のいくまでシステムテストを繰り返していただいた㈱FJB の SE 様,
さらに営業の山本様,宮迫様たちに深く感謝します.
また,本番稼動前の DS の長期貸出のために,
「汚く張らないで!」と言いながら,丁寧
に備品シール張り作業や DS の箱に一式を整えてくれ,さらに貸出業務をシステム化してく
れた濱田様に感謝します.同時に膨大な台数のために充電装置のコードが絡んだクモの糸
- 43 -
のようになりながらも,ひたすら充電してくれた濱田様に感謝します.おかげさまで,2010
年 2 月現在で DS700 台,DSi500 台の大学での貸出可能とすることができました.
初期バージョンの本番稼動 2008 年 4 月から 4 クラスで利用していただきました.その
うち 150 人規模の IT 入門科目で頻繁に通信エラーや性能問題が発生し,授業の進行の妨げ
になったり,テストが実施できずに大変な迷惑をかけながらも,最後まで利用を放棄しな
かった濱先生と筒井先生に感謝します.また,最初から授業で p-HInT を利用し続けておら
れ,貴重な情報を提供していただいた,前田先生,田上先生,北川先生に感謝します.
授業での通信エラー発生時に,
「最優先で対応してください」と無理な要望にもかかわら
ず,何をおいても阪南大学へ駆けつけて何度もシステムの改修や調整,テスト実施を早急
に対応していただいた㈱FJB の山本様,和久田様,木田様に深く感謝します.
授業での利用に欠かせない授業補助 TA は,「教員機を操作して」や「私語を注意して」
等の多くの要求に対して粛々と実施してくれました.本取り組みは授業補助 TA なくしては
成り立たない授業改善でした.多くの授業補助 TA に感謝いたします.
p-HInT を利用する授業が増えるに従って,授業補助 TA の数も増え,勤怠管理や DS 貸
出業務,エラー報告などが複雑になり手に負えなくなってきました.そこで,TA 用のエラ
ー報告や勤怠管理,TA 日誌,緊急連絡,質問内容報告,座席番号損傷報告等多くの Web
システムを自作していただいた濱田様に感謝します.自習にて ASP やデータベースを勉強
し,実用に耐えるシステムを構築し運用したことは素晴らしいことだと思います.
「予定していた機能よりも優先したい機能がある」との突然の機能変更要求に,柔らか
い笑顔の裏に苦悩を隠しつつ,「できるだけご要望に添うようにします」と必ず答えていた
だいた㈱FJB の山本様に感謝します.おかげさまで授業改善という目標を達することがで
きるシステムとなることができました.
2008 年後期授業で,「情報系教員以外の科目で利用しないと意味がない」という花川の
要望に,「できればやりたくないなぁ」という本音を隠しつつ笑顔が引きつりながらも,引
き受けてくれた安井先生,神澤先生,大谷先生,島先生,関先生に感謝します.特に安井
先生は 2008 年度の成果フォーラムでユニークな教員からの報告をありがとうございました.
「その機能を入れるには予算が足りない」という事務方からの返事に納得できず,
「予算
がないなら自分たちで作るわ」と大見えを切った花川の要望に応じて,多くの便利ツール
を作成してくれた技術補助 TA たちに深く感謝します.特に当時学部生の松谷氏,当時大学
院生の尾花氏の作成した便利ツールは p-HInT の不便な点を補うことができ,利用価値の高
いシステムへ改善することができました.さらに,「なんでも業者に頼む」ではなく,「な
いなら,自分で作る」という意識が定着できたことも有意義なことであったと思います.
2009 年度に入り,新しく p-HInT を利用したいただいた石井先生,阿部先生,洪先生,
青木先生,中條先生,奥先生,山内先生に深く感謝します.さらに,2010 年度で新しく利
用予定の先生方にも感謝いたします.
2009 年 8 月に実施したビジネスショーの e-LearningWorld2009 に出展に関し,500 個
のボールペンに阪南大学ロゴマーク入りの用紙を作り,ビニール袋に一つずつ詰めて素晴
らしい粗品を手作りしていただいた濱田様,尾花氏に感謝します.さらに,ポスター作り,
パンフレット作りなど業者に依頼せず,すべて手づくりで仕上げた努力には脱帽します.
また,デモ環境を準備するために多大なる労力を費やしていただいた㈱FJB の和久田様,
木田様,山本様,大岩様,そのほか多くの㈱FJB の方々に深く感謝します.東京ビッグサ
イトで,汗まみれになりながら前日準備,3 日間連続で立ちっぱなしの説明,嵐のような撤
収作業に従事していただいた学生の野口氏,妹背氏,原氏に感謝します.特に,「じゃあ,
- 44 -
e-Learning World へ出展しましょう!」と即決した花川に対し,
「慎重に考え直してくださ
い」と助言をいただいた阪本様に感謝すると同時に,それでも無理やり突っ走ろうとする
花川をサポートして出展のほぼすべての企画運営を行ってくれた尾花氏に深く感謝します.
「e-Learning World は記録に残したいからプロモーションビデオを作って!」という突然
の花川の要望に,愉快で楽しいビデオをさくさくと作っていただいた濱田様に感謝します.
そして,お忙しいところ阪南大学ブースに立ち寄っていただき,熱心に話を聞いていただ
いた多くの来場者に感謝します.
広報のために無償配布版の作成に協力いただいた㈱FJB の SE 様,尾花氏に感謝します.
特に無償であるので利益にならないにもかかわらず,㈱FJB 社内でご尽力いただいた営業
の大岩様には深く感謝します.おかげさまで少数ですが,教育機関へ配布することができ
ました.
p-HInT の開発と運営をとおして収集したデータをもとに,教育分野のみならず,多く
の情報系学会,国際学会で発表しました.論文作成時にデータ収集などの協力いただいた
㈱FJB の SE 様に感謝します.
また,成果フォーラムを通じてお忙しい中,阪南大学までお越しいただき,分厚い報告
書と多数の評価項目に困惑しながらも忍耐強く評価いただいた外部評価委員の方々に深く
感謝します.
3 年間を通して,最初から最後まで花川から数限りない無理な要望と急な依頼に翻弄さ
れながらも,本プロジェクトの中心となって支えてくれた情報システム課の濱田様と阪本
様には言い尽くせない感謝でいっぱいです.「DS の設定をしていて老眼になった」とぼや
いている阪本様は,ありがとうございました.
特に,本人の将来やキャリアも顧みず就職も棒に振って,大学院修了後に技術補助員と
して 1 年間本学に残って本取り組みに専任で携わってくれた尾花氏に心から感謝をします.
最後に,このようなエキサイティングで興味深いシステムの開発と運用の機会を与えて
くださいました阪南大学に深く感謝します.同時に,この取り組みを採択していただき資
金援助をいただいた文部科学省に深く感謝いたします.
- 45 -
Fly UP