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マルチメディア情報端末

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マルチメディア情報端末
沖電気研究開発 2000年7月 第183号 Vol.67 No.2
UDC [336.717 : 681.324 (100) ] : 681.327.13
エレクトロニックコマース・セキュリティ特集
マルチメディア情報端末
Multi-Media Information Terminal
守 雅 人 三 木 勇 須 田 毅 原 田 裕 之 林 康 弘
Masato Mori
Isamu Miki
Takeshi Suda
Hiroyuki Harada
Yasuhiro Hayashi
要 旨
コンビニエンスストアや銀行,郵便局などの地域のサービス拠点において,カード決済に
よる電子ショッピングサービスを提供できるマルチメディア情報端末を開発した。マルチメ
ディア情報端末は,セルフサービスを提供する無人端末機である。コンテンツを表示する機
能を有し,商取引を管理する運用管理センターと連携したサービス提供を実現する。
セルフサービス端末である。近年,インターネットの
1.ま え が き
普及が目覚しく,インターネットを利用した電子商取
引も拡大傾向にあり,同様な取引がコンビニなどのサー
近年の消費者のショッピングスタイルは,店舗で実
ビス拠点を利用して展開されつつある。
物を確認して商品を購入する従来の形態に加えて,カ
2.1 提供サービス
タログやテレビコマーシャルを見て買い物をする通信
マルチメディア情報端末で提供するサービスとして
販売,テレショッピングなどが普及しており,多様化
は,飛行機や遊園地,テーマパークなどのチケット販
している。また,消費者のライフスタイルも多様化し
売,旅行パック,ホテルなどの予約受付,パソコンや
てきており,仕事帰りなどに利用できる24時間営業の
ゲーム,ギフトカード,その他贈答品の物品販売 (ネッ
コンビニエンスストア (以降,コンビニと略す) が消費
ト通販) などがある。本端末は,コンビニ店舗や銀行,
者の利便性を格段に向上させ,身近なサービス拠点と
郵便局のロビーなどにおいて,従来取り扱っていなかっ
して広く認識されている。そういった消費者のライフ
た商品,サービスを主として提供するものである。
スタイルの変貌を睨み,コンビニに情報端末を設置し,
2.2 システムのイメージ
電子商取引を行なうサービスが展開されている。
マルチメディア情報端末によりサービスを提供する
本稿では,電子ショッピングサービスを提供するマ
ためには,システム全体を管理する運用管理センター
ルチメディア情報端末を取り巻く環境および今回開発
が必要となる。運用管理センターは,図1に示すよう
した端末のシステム構成,特長,機能について述べる。
に,モール運用センター,システム運用センター,コー
ル受付センターから構成される。モール運用センター
2.システムの概要
は,電子商取引を運営し,マルチメディア情報端末で
提供するコンテンツの管理,コンテンツ提供業者との
マルチメディア情報端末は,コンビニや銀行,郵便
接続,取引に伴う決算,受発注管理などを行なう。シ
局などのサービス拠点に設置され,ネット通販を融合
ステム運用センターは,マルチメディア情報端末の管
した電子商取引のチャネルとしてサービスを提供する
理の他に,モール運用センター内の端末を監視する。
············································································································
守 雅人
三木 勇
須田 毅
原田裕之
林 康弘
システムソリューシ
ョンカンパニーカス
タマコンタクトシス
テム事業部 官
公ソリューショ
ンSE部 郵政第
一チーム 係長
システムソリューシ
ョンカンパニーカス
タマコンタクトシス
テム事業部 郵
政システム開発
部 YMチーム
チームリーダ
システムソリュ
ーションカンパ
ニーカスタマコ
ンタクトシステ
ム事業部 郵政
システム開発部
YMチーム システムソリュ
ーションカンパ
ニーカスタマコ
ンタクトシステ
ム事業部 郵政
システム開発部
CTMチーム
株式会社 沖情
報システムズ
ハードウェア開
発第二部 開発
第二課
―― 75 ――
エレクトロニックコマース・セキュリティ特集 ❖ マルチメディア情報端末
コール受付センターは,端末利用者
からの問い合わせに対しCTI
(Computer Telephony Integration)
技術を利用して対応する。
端末の操作は,ディスプレイに表
コンテンツの管理を行い、
必要に応じ、端末に情報
提供を行う
運用管理センター
店舗
決済
GW
モール運用センター
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
マルチ
メディア
情報端末
金融機関のホストとの
送受信を行う
モール
サーバ
ルータ
WWW
サーバ
LAN
決済処理など電子モールの
運営に必要な機能の提供や
注文および各種取扱データ
の処理・管理を行う
示されている好みのメニューをタッ
チすることにより,簡単に進められ
金融機関へ
商品販売業者への
発注を行う
FAX
GW
商品
販売業者へ
対外接続
GW
提携業者へ
る。また,表示に合わせて,音声に
よる案内を行ない,利用者の操作を
支援することも可能である。利用者
コール受付センター
電話機使用時、
電話接続を行う 電話網
保守
センターへ
ルータ
は,端末に表示されたメニューに従
CTI
サーバ
い,商品やサービスを選択する。希
望の商品を確認し,カードで料金決
システム運用センター
受付
端末
モールセンタ
運用管理端末
端末管理
サーバ
電話の制御 問合せ内容等の モール運用センター マルチメディア情報端末の
を行う
入力を行う
の監視を行う
状態監視、運用管理などを行う
済することにより,購入申込が完了
注)GW:ゲートウェイ
CTI:コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション
する。商品は,後日,指定された宛
図1 システムの全体構成
先に届けられるか,コンビニ等の店
Fig. 1 System configuration
頭で受け渡す仕組みである。図2に
その処理イメージを示す。
店舗
3.開発のねらい
今回,マルチメディア情報端末を
お
客
さ
ま
次に挙げる項目に重点をおいて開発
商品選択
注文
運用管理センター
マルチ
メディア
情報端末
決済機関等
サーバ
①注文
クレジットカード
キャッシュカード コンテンツ
等
③決済指示
ホスト
④結果報告
承認/決済処理
在庫
⑤注文完了
②在庫チェック
した。
在庫確認
(1) 省スペース
端末は,金融機関のCSコーナの
販売業者
ような特定の場所ではなく,店舗,
ロビーの空きスペースなどに設置さ
⑥注文報告
(発送指示)
お客さま宅
商品
⑦商品の配達
図2 処理の流れ
れる。したがって,必須機能を厳選
Fig. 2 Example of application
して搭載した省スペース機の実現を
目指す。
(2) パソコン技術の活用
ることにより,製品の開発コストの低減,開発期間の
電子商取引では,説得力のあるコンテンツを提供す
短縮を目指す。
ることが重要である。3D画像や動画の高速表示,MIDI
(4) バリアフリー対応
音源再生といったマルチメディア技術を利用した情報
高齢者や身体の不自由な方の利用を考慮したシステ
提供が必要であり,インターネットと同等以上のサー
ムとする。
ビス提供が求められる。現在の汎用パソコンは,マル
チメディア対応の最新技術を搭載した製品である。こ
4.ハードウェアの概要
の技術を活用するため,最新機種の汎用パソコンをこ
の端末の制御部として搭載できる構成とする。
マルチメディア情報端末として,図3に示すⅠ型,
(3) 開発コストの低減
Ⅱ型の2種類のモデルを開発した。表1にⅠ型,Ⅱ型
従来のような重装備の端末ではなく,既存あるいは
のハードウェア諸元を示す。
市販の製品をコンポーネントとして組み込む形態とす
―― 76 ――
Ⅰ型は,金融機関への設置を想定し,ATM
沖電気研究開発 2000年7月 第183号 Vol.67 No.2
基
準
線
成人女性(車椅子使用)
1260
20
20°
1200
15
15°
R500
R700
視線 R574
標準
線
視
常
通
1148
1073
900
590
400
60
図3 外観
図4 車椅子による操作時の人間工学図
Fig. 3 Overview
Fig. 4 Ergonomic measurement relation (Wheelchair operation)
(Automated Teller Machine) などのセルフサービス端
450mm×奥行400mmの設置スペースを実現することが
末の開発思想を継承した設計としている。また,Ⅱ型
できた。カードリーダ部には,金融機関で稼動してい
は,昨今コンビニで稼動している端末機の仕様を参考
るATMと同等の機能の装置を採用した。自走式カード
に,流通業界での適用を考慮した設計としている。
リーダ,エンボス取得,カード取込機能に加え,IC
まず,Ⅰ型の構成について説明する。Ⅰ型は,ロビー
カード対応の機能を備えている。バリアフリー対応と
設置を考慮し,業界最小の端末を目指した。制御部を
しては,車椅子からの利用を考慮した。まず,人間工
縦置きに収納する工夫や小型レシートプリンタの塔載,
学の見地から,図4に示すように,画面の高さを
LCDの採用により,装置のコンパクト化を図り,幅
1200mmの高さに設定した。さらに,画面の角度調整
表1 ハードウェア諸元
Table 1 Specifications of Multi-Media Information terminal
項目
制御部
表示部
操作部
カードリーダ部
プロセッサ
メモリ
HDD
FDD
CD−ROM
表示方式
表示画素数
表示色
その他
タッチパネル
テンキーパッド
電話機
音声出力部
取扱カード
その他
印字方式
用紙仕様
ドット密度
その他
広告用パネル
その他
カタログラック
外形寸法:W×D×H(mm)本体
プリンタ部
1型仕様
Pentium3
128MB
3.5インチ型×1
3.5インチ型×1
最大40倍速
15インチTFT方式カラーLCD
1024×768ドット
64K色
チルト機能有り
超音波方式
なし
自動ダイヤルホン
ステレオスピーカ(1.5W×2)
磁気カード(JIS1/JIS2:全4トラックの
リード・ライト可能)
ICカード(ISO7816-3、T=0,1準拠)
・自走式
・カードエンボスのイメージ読取り可能
・カードの取込み機能有り
ラインサーマル印字方式 (感熱方式)
ロール紙:幅80mm
180×180 dpi
用紙カット機能有り、用紙ニアエンド検知有
なし
なし
約450 × 約400 × 約1360
―― 77 ――
2型仕様
同左
同左
同左
同左
同左
同左
同左
同左
同左
同左
電話配列“5”凸点付き
同左
同左
磁気カード
(JIS1-トラック2/JIS2のリードのみ可能)
・手動式
電子写真方式
A4普通紙(1種または2種)
600×600 dpi
用紙容量:最大750枚/55Kg用紙
あり(オプション)
あり(オプション)
約490 × 約675 × 約1360
エレクトロニックコマース・セキュリティ特集 ❖ マルチメディア情報端末
が可能なチルト機構を搭載することにより,車椅子か
マルチメディア情報端末
らも見やすく,使いやすくする工夫を施した。
制御部(汎用パソコン)
Ⅱ型は,コンビニ店舗ですでに稼動している端末仕
チケット発行のニーズがあるため,レシートプリンタ
をページプリンタに変更し,チケットや各種取引明細を
I
S
D
N
網
プリンタ
セントロニクス
電源制御装置
RS-232C-3
TA
RS-232C-2
電話機
サウンド
HDD
(オプション)
広告用パネル
CD-ROM
FDD
タッチ
パネル
タッチパネル
HDD
点および追加点を示す。
LCD
チルト機構付
MEM
マウス
様を参考に再設計した。以下に,Ⅰ型と比較した変更
(1) 簡易チケット発行への対応
グラフィック
CPU
JIS-KB
スピーカ
(2基)
RS-232C-4
テンキーパッド
RS-232C-1
カードリーダ
カタログラック
A4普通紙にプリントして発行することを可能とした。
注)TA :ターミナルアダプタ
××× :Ⅱ型のみ搭載
(2) コストの抑制
コスト削減のため,手動式カードリーダを搭載する
図5 ハードウェア構成
ことにした。将来の業務の拡大,高齢者の操作性の向
Fig. 5 Hardware structure
上,取り忘れカードの対応などの新たなニーズが発生
した場合には,自走式カードリーダを搭載することも
に,各周辺機器を接続している。汎用パソコンを使用
可能である。
(3) バリアフリー対応の強化
することにより,最新機種のパソコンの塔載、開発費の
現在検討が進められているデビットカード端末仕様
低減、開発期間の短縮を実現した。
を考慮し,暗証入力用テンキーパッドを搭載した。暗
5.あ と が き
証番号入力の手段として,画面タッチによる入力の他,
テンキーパッドからの入力も可能とした。また,電話
配列 (「5」凸点付き) のテンキーパッドを採用するこ
とにより,視覚障害者の暗証番号入力を容易にした。
ネットワーク社会における新たな商取引手段を提供
するマルチメディア情報端末を開発した。
(4) 電子商取引の宣伝活動の支援
IT (Information Technology) 技術の目覚しい発展,
本端末は電子商取引を行なうものであり,端末自体
消費者のライフスタイルの変貌の中で,この種の端末
でセールス支援できる要素も必要である。宣伝活動支
は商取引における新たなチャネルとして認知され拡大
援のために,広告用パネルやカタログラックをオプショ
されていくものと予想される。すでに,音楽配信,写
ンとして塔載可能とした。
真プリントサービスなどの新サービスが次々と開発さ
(5) 遠隔リモート保守への対応
れている。我々は,これらのサービスに対する対応を
電源制御装置の搭載により,運用管理センターから
検討している。
の遠隔操作で電源をOFF/ONすることを可能とした。こ
また,電子ショッピング以外の分野としてはネット
れにより,障害時の無人による速やかな復旧が行なえ
ワークを利用した新たな金融サービスやインターネッ
る。
トサービス (公共・地域情報の提供等) ,行政サービス
(6) その他
(住民票の申請等) などがある。今後,これらを融合し
Ⅱ型では,新機種の汎用デスクトップパソコンのサ
たサービスを展開できるシステムとして,開発を進め
イズを考慮して,装置の横幅を拡張した。また,ペー
る所存である。
ジプリンタの搭載,テンキーパッド部の操作性を考慮
本稿で紹介したマルチメディア情報端末は,受付端
末 (ロビーの番号札発行機) やICチャージ機などに流用
し,装置の奥行きを拡張した。
本端末のハードウエア構成を図5に示す。制御部に
は汎用パソコンを採用している。その制御部の標準イ
されている。電子商取引の用途以外にもより多くのシ
ステムで活用されることを期待している。
ンタフェースコネクタと拡張スロット基板のコネクタ
―― 78 ――
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