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平成16年度日・EU規制改革対話
― 我が方の対EU要望書 ―
経済統合体課
★:新規要望、○:優先的要望、△:補足的要望
EC:対EC要望、加盟国:加盟国全体への要望、国名:特定国への要望
A:分野横断的事項
A1.商法・商慣行
(1)EU域内の損益通算を認める指令の早期成立【○、EC】
(2)国境を越えた合併を可能にするEUレベルの法的枠組み【○、EC】
(3)欧州非公開会社法【○、EC】
(4)CSR【★、○、EC】
(5)EU及びEU加盟国のコンサルテーション手続き(パブリック・コメント)
【★、○、EC、加盟国】
(6)EUにおける法令適用事例確認手続き(ノンアクションレター制度)の導
入【★、○、EC】
(7)EU原産地表示【★、△、EC】
(8)スペイン、フランス、イタリアにおける累積処理(過小資本規制)【△、
EC、西、仏、伊】
(9)スペインにおける債権、債務制度の不備(商取引法)【△、西】
(10)オーストリアにおける商法上の申請手続きの簡素化【△、オーストリア】
(11)ドイツにおける会社定款変更の際の手続き【△、独】
(12)ドイツにおける営業権の対価の撤廃【★、△、独】
(13)フランスにおける会社形態の転換条件の緩和【★、△、仏】
(14)チェコにおける商業登記手続き【★、△、チェコ】
A2.規格・規準認証
(1)ベビーカー安全規格適用の統一化【★、△、EC、英、仏】
(2)EU市場における工作機械の検査体制(CEマーク)
【△、EC、加盟国】
(3)イタリアのテレビ輸入における追加的規制【△、伊】
(4)ニューアプローチ指令【△、EC】
(5)中東欧と欧州の適合性評価協定【△、EC】
(6)ヘッドホン・ステレオの音圧規制の統一【△、仏、白、EC】
(7)EU 域内における検査手続きの改善【△、仏、EC】
(8)自動式はかり型式承認制度の調和【★、△、EC】
(9)電源や電話回線等のプラグやソケットの形状に関する規格【★、△、EC、
加盟国】
2
A3.貿易・関税
(1)デジタル・ビデオ・カメラ(カムコーダ)の関税分類変更及び遡及課税【○、
EC】
(2)フラットパネルディスプレイの関税分類【★、○、EC】
(3)欧州委員会による「通関24時間前の申告義務づけ」に関する提案(優先)
【○、EC】
(4)ハンガリーの通関手続きに要する時間の短縮/ポーランドの通関申請書
について【★、△、ハンガリー、ポーランド、EC】
(5)複写機用トナーの関税【△、EC】
(6)AV家電製品の関税【△、EC】
(7)免税範囲の緩和【△、EC】
(8)EU域内生産商品及びEU域外生産商品の輸送に際する通関用書類の統
一【★、△、EC、オーストリア】
A4.情報・知的財産
(1)共同体特許制度の早期成立【○、EC、加盟国】
(2)自動車用補修部品の意匠保護の廃止反対【★、○、EC、加盟国】
(3)個人情報保護指令【○、EC】
(4)音楽関連著作権に関する法律の統一【★、△、EC、加盟国】
(5)チェコにおける商業登記簿上の個人情報の保護【△、チェコ】
A5.雇用
(1)総論【○、EC、加盟国】
各論
(2)スペイン(期限付雇用契約制度と解雇補償金制度の改正、年間超過勤務時
間の弾力化)【△、西、EC】
(3)ベルギー(解雇制度、雇用制度、給与制度、労働時間制度、労働組合関係
法令)
【△、白、EC】
(4)オランダ(解雇補償金・病欠保障義務)【★、△、蘭、EC】
(5)ドイツ(日曜・祭日就労の規制緩和、従業員保護制度の緩和)
【△、独、E
C】
(6)フランス(労災・病欠認定制度の改善、従業員保護制度の改善)【★、△、
仏、EC】
(7)スウェーデン(ラストイン・ファーストアウト・ルール)
【△、スウェーデン、
EC】
(8)ルクセンブルク(法定有給日数の削減)【△、ルクセンブルク、EC】
(9)チェコ(病気欠勤率の改善)【★、△、チェコ、EC】
3
B:業種別規制
B1.法律サービス
(1)総論【○、加盟国、EC】
(2)フランスにおける外国弁護士の母国の法律サービスに関する業務従事の
許可【○、仏、EC】
(3)ドイツにおける外国弁護士のいわゆる第3国法に関する法律事務の許容)
【○、独、EC】
B2.電気通信
(1)ローカル・ループ・アンバンドリングの促進【★、○、EC、加盟国】
(2)無線LANに関する周波数割り当ての調和【★、○、EC、加盟国】
(3)政府による競争中立性の確保【○、加盟国、EC】
B3.金融サービス
(1)総論【○、加盟国、EC】
(2)国際会計基準【○、EC】
(3)フランスにおけるクレジットカード業務への新規参入【★、△、仏】
(4)スペインにおける投資規制の緩和【★、△、西】
(5)ポーランドにおける居住者間決済に関する規制緩和【★、△、ポーランド】
B4.放送サービス
(1)コンテンツの国際交流の充実【★、○、EC、加盟国(特に仏)
】
B5.運輸・自動車・航空
(1)歩行者保護に関する国際基準調和に向けた日・EU間の協力【○、EC】
(2)ECE 規則第94号及び95号の採用【○、EC】
(3)UN/ECE/WP29(国連自動車基準調和世界フォーラム)における
ECE 規則改正案又は新 ECE 規則採択にかかる EC の迅速な意思決定
【★、△、EC】
(4)ポーランドにおける現地旅行代理店を通した航空券発券・販売【★、△、
ポーランド】
(5)ドイツにおけるスラッジ1%ルール【△、独、EC】
(6)外航海運サービスに関する EU 競争法の適用除外規則の見直し【△、EC】
B6.建設
(1)オフロード用内熱機関の排出ガス規制【△、EC】
(2)ベルギーにおける建設工事参入【★、○、ベルギー】
(3)フランスにおける建設工事にかかる強制保険制度【★、△、仏】
4
B7.医療・医薬品
(1)医薬品の並行輸入対策【★、△、EC】
(2)利益率に関する英薬価制度(PPRS)の是正【★、○、英、EC】
(3)ドイツにおける強制リベート制度の見直し【★、△、独】
B8.観光
(1)
オーストリアにおいて夏期観光業に従事する学生への労働許可の発給【△、
オーストリア】
(2)スペインにおける観光ガイドの国籍要件、観光ガイド同行義務、観光ガイ
ド料金設定の透明性【△、西】
(3)イタリアにおける滞在認可証申請【△、○、伊】
C.環境規制
(1)総論【○、EC、加盟国】
(2)欧州における新たな化学品規制(REACH 規則案)
【○、EC、加盟国】
(3)廃電気・電子機器指令(WEEE)
、特定有害物質使用禁止指令(ROHS)
【○、
EC、加盟国】
(4)廃電池指令【○、EC、加盟国】
(5)
エネルギー使用製品に対するエコデザイン要求設定枠組み指令案(EuP)
【★、
○、EC、加盟国】
D.ビジネス環境の基盤的整備事項
D1.滞在労働許可
(1)総論:滞在労働許可手続きの改善【○、加盟国、EC】
(2)就労を目的とする第三国国民の入国・滞在要件に関する指令案【○、EC、
加盟国】
(3)第3国国民の域内自由移動に関する指令案【○、EC、加盟国】
(滞在労働許可取得に関する各国別要望)
(4)イタリアにおける滞在労働許可の増枠と取得の容易化、滞在許可証の発給
遅延の解消及び同許可証申請中の出国禁止措置の改善【△、伊】
(5)スペインにおける滞在労働許可証発給・更新の迅速化【△、西】
(6)フランスにおける滞在労働許可証発給・更新の迅速化と容易化【△、仏】
(7)ギリシャにおける滞在労働許可証発給の迅速化と容易化【△、希】
(8)ドイツにおける労働許可証発給の迅速化【△、独】
(9)ポルトガルにおける滞在労働許可証発給の迅速化・容易化【△、葡】
(10)
アイルランドにおける企業内転勤者への労働許可取得免除制度の再開【△、
愛】
(11)
オランダにおける労働許可証発給規準の緩和/任意の医療保険加入義務から
5
の免除【★、△、蘭】
(12)オーストリアにおける滞在労働許可証発給基準の緩和【△、オーストリア】
(13)デンマークにおける就学査証有効期間の延長(現地日本校)
【★、△、デン
マーク】
(14)イギリスにおける就学査証での就労可能時間の拡大【★、△、英】
(15)
チェコにおける滞在労働許可発給の迅速化・容易化・有効期間の長期化
【★、
△、チェコ】
(16)ハンガリーにおける滞在労働許可発給の迅速化・有効期間の長期化と運用
の統一【★、△、ハンガリー】
(17)スロバキアにおける労働許可発給の迅速化と容易化【★、△、スロバキア】
D2.運転免許証
(1)総論【○、EC】
(2)ギリシャにおける運転免許証切り替え問題【○、希、EC】
D3.社会保障
(1)社会保障費の二重払い問題の解消【○、EC、加盟国(除く英、独、仏、
ベルギー)
】
D4.その他(投資環境の整備)
(1)反動物実験過激派グループ対策【★、△、EC、加盟国】
別添:税制
(1)総論:税制調和【EC、加盟国】
(2)合併、資産の移転・株式交換等に適用する 1990 年合併指令
【EC、加盟国】
(3)国境を越えたグッドウィル移転の際の課税【EC、加盟国】
(4)IAS(国際会計基準)に基づく法人課税基礎の統合【EC】
(5)自動車関連税制の調和【EC】
(6)ベネルクス三国の資本税の廃止【白・蘭・ルクセンブルク】
(7)イタリアにおける国際運輸業法人の税当局宛書類提出の免除
【★、伊】
6
平成16年度日・EU規制改革対話
― 我が方の対EU要望書 ―
平成16年11月
経済統合体課
★ :新規要望、○:優先的要望、△:補足的要望
EC:対 EC 要望、加盟国:加盟国全体への要望、国名:特定国への要望
前文
1.はじめに
日本とEUは、グローバル経済の安定と発展に、今日ますます大きな責任を有
している。また、日本においては小泉内閣の下で構造改革・規制改革が着実に進
展し、EUにおいては、2010年にリスボン戦略の目標を達成するための努力
が継続される等、双方の経済社会は変革されつつある。このような中で、日・E
U規制改革対話は、双方の規制改革の促進とビジネス環境の改善を通じて日・E
U間の貿易・投資関係を強化し、日・EU経済関係を発展させるための双方向の
対話の枠組みとして更に重要となってきている。
2.定期首脳協議での合意と規制改革対話の意義の確認
1994年に開始された本対話は、本年度から新たな10年に入ることとなっ
た。本年6月の第13回日・EU定期首脳協議において、10周年を迎えた本対
話の枠組みが、ビジネス環境に影響を及ぼす規制問題を取り扱うために、成功し
た適切な枠組みであることが確認された。また、その際承認された「日・EU双
方向投資促進のための協力の枠組み」
(以下「日・EU投資枠組み」
)においては、
双方向の投資促進のためには、規制当局間の対話と協力が重要と認識された。か
かる経緯に鑑み、日・EU双方は、本対話を日・EU間の経済関係発展のための
有効なツールとして、更に積極的に活用していかなければならない。
3.昨年度の我が方優先要望の評価
昨年度対話においては、日本側は、本年2月のブリュッセル会合において、一
部の我が方要望への対応のため、加盟国政府の代表の参加が得られたことを評価
するとともに、欧州委員会が仲介の労を取られたことを多とする。本年度におい
ても、加盟国権限事項について、各加盟国政府が更に積極的に本対話のプロセス
に参加することを要望するとともに、欧州委員会が、加盟国への働きかけを更に
継続することを期待する。
7
個別の要望に関しても、いくつかの具体的な進展があったことを評価する。放
送用として使用できないプロフェッショナルカメラのアンチダンピング税の適用
除外については、日本側の要望は完全に実現された。EC のマドリッド協定議定書
への加盟が実現し、本年10月1日に発効することとなった。在欧日本人駐在員
の長年の要望であった運転免許証の問題については、EC 側から解決へ向けての前
向きな提案がなされた。各加盟国における滞在労働許可の問題について、加盟国
政府代表との間で率直な意見交換が行われ、我が国が有している問題意識は、各
加盟国に理解してもらうことができたと思われる。実際の運用面でも改善がなさ
れるよう、引き続き要望したい。
他方、共同体特許制度については、EU側より最終解決への見通しが示された
にもかかわらず、その規則案の採択に至っていないのは残念である。EU域内の
複数加盟国での損益通算を認める指令の早期成立、国境を越えた合併を可能にす
るEUレベルの法的枠組みの成立についても、解決へ向けてのEU側の前向きな
姿勢は理解するが、具体的な作業は進んでいない。
更に、上記の日・EU定期首脳協議においても言及されている重要な要望とし
て、我が国としては、欧州委員会が国際会計基準と既存の日本の会計基準の同等
性を確立する作業を、できる限り早期に完結するよう促す。また、日・EU双方
の産業界が極めて高い関心を有している REACH 規則案に関し、環境問題に先進的
に取り組んでいるEUの姿勢は評価するが、当該分野の規制が企業にとり過度に
負担となり、健全な経済活動を阻害する、或いは貿易障壁となることのないよう
要望する。また、個人情報保護に関する標準契約条項についても、早期に合意が
達成されるよう要望する。
4.EU拡大の影響
日本側は、また、5月1日のEU拡大により、中東欧等の10か国が新たにE
U加盟国となったことを歓迎する。他方で、EU拡大は、日・EU経済関係の観
点から見て、① 新規加盟国の関税率の引き上げに対する補償交渉、② GATS によ
るサービス約束の後退、③ EUのアンチダンピング措置の新規加盟国への自動的
適用、④ 既存の通商航海条約の扱いの問題等いくつかの課題がある。ついては、
EU拡大の影響をより肯定的なものとするためにも、また、日本との経済関係発
展のためにも、新規加盟国が本対話のプロセスに積極的に参加することを期待す
る。
5.本年度対話の取り進め方針と我が方要望書
今後も、可能な限り多くの具体的成果を得ることを目指して、率直かつ実質的
な対話が確保されるよう、本対話の効率的な運営に努めていく必要がある。本会
合に先だっての事前の書面回答の提出、課長級会合や専門家会合の積極的活用な
ど、近年導入した改善策は有効であった。本年度は、課長級会合等を十分に活用
8
し、本会合においては議題と論点をより絞り込み、更に実質的な議論ができるよ
うな方策を探りたい。なお、日・EUビジネス・ダイアログ・ラウンドテーブル
(BDRT)などのビジネス界からのインプットが重要であることは、従来指摘
しているとおりである。
かかる観点から、2002 年度の我が方補足要望書に対するEU側の回答の接到が
遅れ、かつ、多くの要望項目について未回答であったことは遺憾であった。かか
る経緯もあり、昨年度の我が方補足要望は提出せず、本年度の要望書の中に取り
込んでいる。また、本年度要望書は、優先要望書と補足要望書に分けず、一つの
要望書にまとめてある。これら多くの要望の中で、どの要望について本会合等の
場で議論するかは、別途EU側と調整していきたいが、全ての要望について、正
式な書面回答を行うことが、規制改革対話をより実質化し、具体的な成果を上げ
ていく上で不可欠であることから、本年度は必ず書面回答を行うことを強く要求
する。
A:分野横断的事項
A1.商法・商慣行
(1)EU域内の複数加盟国間での損益通算を認める指令の早期成立
○、EC
EU内の支店・子会社の損失と親会社の利益の相殺を認める指令案が1990年
に提案されたが、審議が難航したため、欧州委は2001年12月に指令案を撤回
した。2001年10月に欧州委員会より発表されたコミュニケーション(IP/01
/1468)において、指令案撤回後、新方策に関する加盟国との協議を2002年に
開始するとしていたが、協議は未だ開始されていない。
一方、2003年11月に発表されたコミュニケーション「企業税制障壁のない
域内市場:成果、継続イニシアティブ、残された課題((2003)726 final)」では、
この損益通算に関するイニシアティブを2004年末あるいは2005年初頭に
発表する予定と述べられている。この欧州委員会の積極的な取り組みを歓迎する。
EU内の支店・子会社と親会社の損益通算は、EU域内市場の強化の観点から重
要視されていると承知しているが、EUで事業を行う我が国を含む第三国企業にと
っても非常に重要である。EUは、「日・EU投資枠組み」においても、本指令案
の早期採択に向けて努力する旨表明しているところ、日本政府として欧州委員会と
加盟国の間で損失と利益の相殺を認める損益通算の早期実現に向けた検討が進め
られることを強く期待する。
(2)国境を越えた合併を可能にするEUレベルの法的枠組み
○、EC
2003年11月に「国境を越える合併に関する指令案」が欧州委員会より提出
された。これは、国境を越える会社の合併に伴う各国内法の相違を克服し、すべて
の会社にとって国境を越える合併を容易にする指令案となっている。国境を越える
9
合併については、1990年の合併指令により税制面での手当は行われたが、会社
法面でのEUレベルの枠組みは、欧州会社SE(Societas Europeae)設立を目的と
する欧州会社法での手当にとどまっており、国境を越えた企業間の合併は、SEの
法人格を持たない企業にとって必ずしも円滑に行うことができない現状にある。S
Eの法人格を持たない企業にとって、国境を越えた合併の会社法上の枠組みを作る
ことを目的とする本指令案の採択は非常に重要である。EUは、上記「日・EU投
資枠組み」において、右法的枠組みの創設に向けて努力する旨表明しているところ、
我が国政府は、EUが早期採択、実施に向けた検討を迅速に進めることを引き続き
要望する。
(3) 欧州非公開会社法
○、EC
EUでは2004年10月から「欧州会社法」が施行され、EU加盟国に子会社
を作らなくとも域内の1か国での設立手続のみでEU域内で業務を行うことを認
める「欧州会社SE(Societas Europeae)」が設立できるようになる。日本政府と
してこの欧州会社法の施行を歓迎する。しかしながら日系企業は、欧州において特
に、イギリス、ドイツ、オランダで非公開会社(有限会社)を多用しているため、
公開会社(株式会社)のみに限定されている合併、転換によるSE設立は公開会社
に転換しない限り行えない。
欧州委員会では2002年11月に発表された高級会社法専門家グループの最
終報告書を受け、会社法政策に関するアクションプラン「欧州における会社法制
の現代化と企業統治の向上に向けたアクションプラン」を2003年5月に発表
した。この中で、欧州非公開会社法の導入について、実務的な必要性と問題点の
調査を2005年までに行った上で、2006年から2008年にかけて導入に
ついての検討を行うとしている。この欧州非公開会社法は重要な制度であり、引
き続き同法が早期に導入されることを要望する。
(4) CSR
★、○、EC
EUにおいて「企業の社会的責任(CSR)
」は、2010年までの戦略目標で
あるリスボン戦略の目標実現に重要な役割を果たすものと認識されている。欧州
委は2001年7月にCSRに関するグリーンペーパーを公表し、CSR促進の
ための戦略の枠組みを提示し、EUレベルでの議論を開始した。次いで2002
年7月には、
「企業の社会的責任:持続可能な開発へのビジネスの貢献」と題する
コミュニケーションを公表している。また、2004年6月のマルチ・ステーク
ホルダー・フォーラムによる最終報告書では、CSRが法的義務を超えた自主的
なものであること、ステークホルダーとの対話に立脚したものであることを再確
認したものと承知している。
他方で、一部の加盟国の中では、企業のCSRに関する情報の開示を義務付け
ているが、我が国としては、欧州委が2004年末までに採択するよう検討を進
めている新コミュニケーションにおいて、引き続き、CSRがEUレベルで企業
10
の自主性を重んじるものとして定義付けられるよう要望する。
2002年7月のコミュニケーションでも、
CSRは
「企業が自発的に社会的、
環境的な関心をビジネスの運用や関係者との相互関係に統合する概念」と定義さ
れ、「企業の自発的取組」、「法的要件を超えた任意に適用される企業活動」
(behavior by businesses over and above legal requirements, voluntarily
adopted)という点が強調されており、更に、CSRは「企業の主要活動への選択
的な 追加事項 の一つなのではなく、
企業運営の方法に関するものである」
(CSR
is not an optional add-on to business core activities ‒ but about the
way in which businesses are managed.)とされている。我が国においても、C
SRが企業経営と密接に関係することから、企業の取組の自主性、任意性を確保
することが重要であると認識している。
従って、引き続き、EUレベルにおいて、情報開示のあり方も含め、企業の自
主性が確保されるよう要望する。
なお、CSRの推進に関しては、
「日・EU投資枠組み」においても、
「双方に
おける投資環境の改善に貢献し得る」との認識の下、
「CSRの推進は投資環境の
改善に貢献し得ると考えるため、当局とビジネス界との間での良い実例について
の意見交換を進める」
(the promotion of Corporate Social Responsibility can
contribute to improving the investment environment and will therefore
promote exchanges of good practices between public authorities and
businesses.)と述べられており、引き続き、双方にて、CSRの取組を促進して
いくことは有意義であると認識している。
(5)EU及びEU加盟国のコンサルテーション手続き(パブリックコメント)
★、○、EC、加盟国
EUのコンサルテーション手続きは、2002年12月のコンサルテーションに
関する一般原則(General Principle)と最低基準(Minimum Standards)により、
手続の透明性等を、最低基準は手続の対象、公表、意見陳述期間、フィードバック
等について定められているものと承知。但し、EU加盟国は、それぞれ独自のコン
サルテーション制度を採用しており、内容に相違があるところ、各加盟国における
制度の内容を教示頂くとともに、域内広範囲で活動する企業にとって各国毎に異な
る制度の遵守は大きな負担となり得るところ、EUレベルでの調和を要望する。ま
た、コンサルテーション制度が存在していない加盟国も見られるところ、「日・E
U投資枠組み」においても努力する旨表明している規制の透明性の向上の観点から、
右制度の早期導入を要望する。
(6)EUにおける法令適用事前確認手続き(ノーアクションレター制度)の導入
11
★、○、EC
我が国政府は、EUの強い要望も踏まえ、
民間企業等がある行為を行うに際し、
法令に抵触するかどうかについての予見可能性を高めるため、当該行為について
の特定の法令の規定との関連性を事前に照会できるようにするとともに、行政の
公正性を確保し、透明性の向上を図るため、当該照会内容と行政機関の回答を公
表するノーアクションレター制度を導入している。他方で、EUにおいては右制
度が存在せず、我が国企業からは、自社製品がEUの当該規則の対象となるのか
といった基本的照会を行う手段がなく、EUにおける企業活動に萎縮効果を及ぼ
しているとの声が聞かれるところ、我が国政府は、EUが右制度を早期導入する
よう要望する。
(7)EU原産地表示
★、○、EC
欧州委は、2004年7月に「EU原産表示計画」に関する関係国・産業界など
との協議結果に関する報告書を公表している。これによると、EU産品に「EU製」
という表示を義務付ける案に対しては関係国・産業界などの支持が少なく、義務化
は見送られており、現状、EUレベルでの統一ルールは存在しないものと承知。し
かし、域内広範囲で活動する企業にとって、各国毎に異なる原産地表示制度の遵守
は大きな負担となり得るため、EUレベルでの調和を要望する。
(8)スペイン・フランス・イタリアにおける累損処理(過小資本規制)
△、EC、西、仏、伊
EUにおいて、累積損失が資本金の50%を超えた場合に株主総会を開催して
解決を図ることを求める旨の指令(71/91/EEC)が存在し、一部のEU加盟国にお
いては会社解散や減資を選択せざるを得ない場合がある。この指令は、ベンチャー
企業等少額資本金で新規事業を始める場合等において事業の障害になる可能性が
高い。2001年8月のEU側回答では50%という数値の見直しの変更は困難で
ある由だったが、かかる制度が米国や日本に存在しないことを踏まえ、再度検討を
求める。西、仏、伊からの個別の回答を求めたい。また、EUレベルでは、資本に
関する第2号欧州会社法の簡素化を計画していると承知しているが、いかなる改正
がなされているのか、情報提供を求める。
(9)スペインにおける債権・債務制度の不備(商取引法)
△、西
商取引における債権・債務の法的制度が不十分であるため、支払い不履行がごく
当たり前の風潮が依然残っており、紛争解決の裁判も長期間を要する。また、支払
いの遅延に対する制裁が甘い。例えば、手形の不渡りが日常的に発生しているが、
不渡りを繰り返しても、後で支払えば銀行取引停止等にはならない。法改正による
債権・債務の商取引法制度の整備・確立及び支払い期日の厳守、支払い遅延に対す
るコスト負担等のルールの徹底、制度又は銀行による制裁の実施を図るよう引き続
12
き要請する。
また、支払い遅延に関するEU指令(Directive 2000/35/EC)が2002年8月
に発効していると承知するが、当該指令に基づいてスペイン国内において具体的に
いかなる法整備がなされているのか、情報提供を求める。
(10)オーストリアにおける商法上の申請手続の簡素化
△、墺
商法上の申請手続(定款等の変更)において、親会社役員のサイン証明が必要と
なっている。例えば、決算日等の商業登記簿の法定記載内容を変更する場合、本社
の役員が在日オーストリア大使館に赴きサイン証明を取得しなければならず、手続
が煩雑である。ついては、外資系子会社の場合、親会社役員からの委任を受ける形
で現地において登記申請手続の大部分が完結できるように手続の簡素化を要望す
る。
2001年8月のEU側回答によれば、商業登記は裁判所が使用するため、不正
に改ざんされることのないよう手続を厳しくしている由だったが、サイン証明がな
くても本人確認は可能であるので、少なくともサイン証明が不要となるよう制度の
改善を望む。
(11)ドイツにおける会社定款変更の際の手続き
△、独
ドイツにおいては、有限会社の会社定款変更の際、ドイツ公証人又は在外ドイツ
領事官の認証、若しくは日本公証人の認証にアポスティーユ添付のいずれかの方法
による必要がある。株主が法人である場合、当該株主企業の代表取締役が資格証明
を付して署名を行う必要があり、日本で認証を受ける場合には、その資格証明につ
いてもアポスティーユ添付が求められる。法人株主の場合に、定款変更のたびに代
表取締役が公証人の面前での自署とアポスティーユ添付を求められるのは煩雑で
あり、手続の簡素化を要望する。
(12)ドイツにおける営業権の対価の撤廃
★、△、独
ドイツ国内の現地法人を国外へ移転しようとした場合、「移転先国の新法人への
営業権の譲渡である」として、移転先国の新法人から営業権に相当する対価をドイ
ツの法人へ支払うようにドイツの国税当局から求められる。この営業権の算定額は
およそ1年分の売り上げに相当するものであり、ドイツ国内での法人税が発生する。
このため拠点を移すには年間売上の40%の法人税を支払う義務が生じることにな
り、事実上ドイツから他の国へ拠点を移転する事が不可能となる。欧州内での拠点
移動が速やかに行え、効率的な投資が行えるよう、現地法人がドイツ国外へ移転し
13
ても、営業権の対価を不要とすることを求める。
(13)フランスにおける会社形態の転換条件の緩和
★、△、仏
2001年5月15日施行の新経済規制法によりSA(Société Anonyme:株式
会社)に対する規制は一段と厳しくなり、SA形態の日系企業は膨大な法的業務を
課せられるようになっている。一方、新経済規制法では、SAからSAS(Socié
té par actions simplifiées:準株式会社)への会社形態の変更が可能となってい
るが、会社形態の変更の条件として「自己資本が資本金を下回っていないこと」と
ある。しかし、非上場の外国企業子会社については、株式保護の必要性が大きくな
いことから、条件を満たさない場合でもSAからSASへの転換が認められるよう
要望する。
(14)チェコにおける商業登記手続き
★、△、チェコ
チェコにおける商業登記手続き、変更手続きの簡素化・迅速化を要望する。チェ
コ政府は、商業登記手続き迅速化のための法案を議会において審議中と承知してい
る。手続きの簡素化は、チェコに進出した我が国を含む第三国企業にとっても非常
に重要であり、早期実現に向けた検討が進められることを強く期待する。
A2.規格・規準認証
(1) ベビーカー安全規格適用の統一化
★、△、EC、英、仏
ベビーカー(乳母車)の安全規格に関するEN1888(欧州統一規格)が20
03年4月に正式に定められたが、英国や仏では異なる規格の使用が継続されてい
る。EU各国がEN規格に合致した国内規格を適用するよう要望する。
(2)EU市場における工作機械の検査体制(CEマーク)
△、EC、加盟国
複数のEU加盟国では、機械安全指令の導入(1989/392/EEC)以後にCEマーク
を貼付していない工作機械が市場に流通している旨報告されている。現在のところ、
このような違法な機械を取り締まるための、EU全域で統一された措置は存在して
おらず、いくつかの加盟国においては、関係当局が毎年調査を実施し、CEマーク
14
のない機械に対し販売禁止や回収措置をとっているものの、十分な調査が行われて
いない加盟国も多い。
我が国は、EU域内における安全水準の向上に対する観点から、CEマーク制度
を遵守している我が国及びその他諸外国の企業による努力を無駄にしないために
も、欧州委に対し、EU域内におけるCEマークの調査及び取り締まり措置を統一
するための法令(規則、指令)を策定するよう2002年度も要望しているが、本
件に関しEU側は何ら回答していない。ついては、本件についてのEU側の考え方
を引き続き承知したい。
(3)イタリアのテレビ輸入における追加的規制
△、イタリア
イタリアにおいては、Ministerial Decree 26/03/1992により、EU域外で生産
されたテレビを輸入する際には、EU域内で既に流通しているものも含め、CEマ
ークとは別に規格認証を得ることが義務づけられているが、右規格認証を得るため
には回路図の製品への同梱等が必要とされている。また、右規格認証を得るための
手続に最長で3か月かかっている。テレビ受像器等といった製品に対する技術要件
は、EU指令73/23/EEC及びEU指令89/336/EECで定められており、当該要件を満
たしていれば域内市場において自由に流通が認められる上で十分と思われるとこ
ろ、イタリア政府に対して、追加的規制の撤廃を要望する。なお、我が国政府は2
002年度も同様の要望を行っているが、EU側から何ら回答を得ていないところ、
誠実な対応を期待する。
(4)ニューアプローチ指令
△、EC
EU指令の中でも、製品の安全・品質などの規制統一に関する指令を特に総称と
してニューアプローチ指令と呼び、EU内で供給される製品は、全てニューアプロ
ーチ指令に規定されている基本的要求事項に適合していなければならない。こうし
たニューアプローチ指令の下で、例えば、機械製品に関する調和規格を使用する場
合は調和規格が頻繁に変更され、とくに企業が自己確認方式(自己適合宣言方式)
をとった場合には、頻繁に適合性再評価が必要となっている。技術革新のスピード
及び安全性の要求に鑑み、基準の変更はある程度は止むを得ないことと考えるが、
企業側に過度の負担となる基準の変更は行わないよう要望する。2002年度の対
EU補足要望に対する回答では、欧州委はさほどの負担とはならないと考えている
とのことだが、建設的な対応を要望する。
15
(5)中東欧と欧州の適合性評価協定
△、EC
本年5月1日にEUに加盟した10か国以外の中東欧諸国と欧州の適合性評価
協定(PECA)の早期締結を要望する。また非EU中東欧諸国の中には、EU指令
とは別途の国家法令の適用を求める国があり、コストアップ要因となっている。2
001年8月当時のEU側回答によれば、PECAの早期締結は政治的問題であり、
また、欧州委は未だ完全な主権国である加盟候補国と第三国との関係に介入する権
限も利益も有さないとのことであるが、中東欧諸国のEU加盟を前提とすれば、加
盟候補国はEU域内と同様の制度をできるだけ早く採用する、或いはPECAに誠
実に準拠することが重要である。ついては、当該協定の締結にあたっては、同地域
においてもEU指令がEU諸国と同一の解釈、法体系で適用されるようEUより中
東欧諸国に対し働きかけることを引き続き要望する。平成14年度の補足要望に対
するEU側の回答でも、PECAに関する交渉をブルガリアやルーマニアとも開始
しているとのことであったところ、右交渉の継続を要望するとともに、交渉状況を
教示願いたい。
(6)ヘッドホン・ステレオの音圧規制の統一
△、フランス、ベルギー、EC
現在、フランス及びベルギーにおいて、ヘッドホン・ステレオの音圧に対する規
制が検討されているが、両国で異なる規制値が導入されようとしている。
欧州委は98年6月の回答において、貿易の障害となる場合でも加盟国は消費者
の健康と安全を保護するために必要な規制を行えるとして、フランス、ベルギー両
国の規制導入を正当化しようとしている。しかし我が国が問題視しているのは、E
U域内で異なる規制基準を導入することによって域内統一市場のメリットが失わ
れることである。2001年8月のEU側回答によれば、ベルギーは新たな基準を
導入する場合にはフランス及びEUとの国際的な協調の下に行うこととしており、
右姿勢を歓迎する。我が国としてはフランス及びベルギーで基準を調和させるか、
もしくは規制値、試験方法、表示方法に関し、EU全体で統一した基準を定めるこ
とを引き続き要望するとともに、フランスの立場についても承知したい。
(7)EU域内における検査手続の改善
△、フランス、EC
低電圧指令に基づく電子レンジに係る検査において、フランス当局の出荷停止措
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置が、その後EUレベルでの再検査によって撤回されたにもかかわらず、当該品目
を扱っている企業に対する公式な適合通知(出荷停止措置の撤回通知)が接到して
いないため、取引再開にあたり支障をきたしたという事例が報告されたことがあっ
た。
この例のように、EU域内の当局間の解釈の相違に伴う問題は、企業活動に大き
な影響を与えるため、検査手続の慎重かつ迅速な運用を要望するとともに、検査結
果及び撤回の事実の公表並びに対象企業に対する書面での公式な通知を要望する。
(8)自動式はかり型式承認制度の調和
★、△、EC
非自動式はかりは、既にEU加盟国のいずれかで型式承認されるとEU内の全
ての国で同時に承認される体制が整えられている。他方、自動式はかりは、現在
も各国毎に型式承認を得る必要がある。
各国毎の型式承認に必要なテスト項目が異なり、結果的に、自動式はかりは国
毎に異なる仕様の製品となっており、各国の消費者間に対しても公平さを欠いて
いる。また、メーカーにとっても、各国別の対応が必要であり、EU市場向けと
しての共通仕様で製品が製造できず、また国毎の型式承認手続きに時間と費用が
かかっている。
ついては、自動式はかりについても、非自動式はかりと同様に、EU内で統一
した型式承認体制が構築されることを要望する。
(9)電源や電話回線等のプラグやソケットの形状に関する規格
★、△、EC、加盟国
EU域内における電源や電話回線等のプラグやソケットの形状が国によって異
なっており、コストの増加につながっているところ、規格の統一について検討する
ことを要望する。
A3.貿易・関税
(1) デジタル・ビデオ・カメラ(カムコーダ)の関税分類変更及び遡及課税
○、EC
我が国政府は、数年来より本件問題の改善をEU側に要望しているが、未だ解決
に至っておらず、遺憾である。EU側は、本件は関税率の問題であり、WTO交渉
の中で扱うべき問題である旨回答しているが、我が国の要望は関税率ではなく、E
17
U域内で適用される品目表に係る関税分類に関するものであることを改めて指摘
したい。我が国政府は再度以下の通り要望する。
EUの関税分類では、内蔵するカメラ部からの信号だけでなく外部機器からの信
号が録画可能なビデオ・カメラと不可能なビデオ・カメラを区別しており、EU域
内の細分により、それぞれ14%と4.9%という異なる関税率が設定されている。
我が国電子機器メーカーがEU向けに製造・輸出しているデジタル・ビデオ・カ
メラのうち、EUの関税分類に従って、外部機器からの録画(DV−IN)機能が
作動しないようにソフトウェアで制御しているモデルについては、関税率4.9%
に該当する製品として輸入申告してきた。
2001年7月6日、内蔵するカメラ部からの信号だけでなくDV−INが「潜
在的に可能である」モデルについても、関税率14%の関税分類に該当するビデ
オ・カメラであるということが、EU官報で公告された。
これに伴い、我が国電子機器メーカーが製造するデジタル・ビデオ・カメラが、
輸入通関時点においては、DV−INの機能(の無効)がソフトウェアの制御によ
り確定され、併せてカタログ等を通じて消費者にもDV−IN機能がないモデルと
して訴求されているにもかかわらず、関税率14%に該当するモデルと解釈される
可能性が浮上し、実際に仏等一部のEU加盟国では、我が国輸出メーカーの製品を
輸入している現地子会社に対し、これまでの輸入申告は誤りであるとして、関税未
納分を3年間遡って徴収すると指摘してきている。
デジタル製品の機能をソフトウェアで制御することはメーカーにとって当然の
措置である。加えて、各社とも2001年7月当時既に当該ソフトウェアの改造対
策を行っていた。こうした改造対策により、各社がDV−IN機能を有しないとし
てEUに輸入販売していたモデルは、一般消費者による改造を許さない構造を持ち、
そのため潜在的にもDV−INは不可能であると言いうるものであった。加えて、
欧州委側が主張するような「DV−in機能の潜在的可能性」をも排除するため、
ハード上の改造対策に取り組んでいる。
仮に、我が国電子機器メーカーの製品に関し、2001年7月のビデオカメラの
関税分類の解釈変更によって関税分類を変更したことが正当な措置であるとする
のであれば、その合理的な理由につき公式な説明を求め、解決に向けたEUの前向
きな対応を要望する。更に仏等一部のEU加盟国が関税の遡及請求を行っていると
ころ、EUの立場を教示頂くとともに、右請求の撤回を要望する。
(2) フラットパネルディスプレイの関税分類
★、○、EC
現在EU関税分類委員会において、液晶や PDP(プラズマディスプレイ)などの
18
FPD(フラットパネルディスプレイ)モニタの関税分類の変更について検討されて
いる。
製品内容的にはコンピューター周辺機器としてHS8471.60(コンピュ
ータの出力装置:関税率 0%)に分類されるべき特定の PDP(パソコン用端子が付
いており、従来は関税率0%で輸入していたもの)が、WCO ルールに適合する明
確で分かりやすい関税分類の判定基準が示されないまま、HS8528.21(ビ
デオモニター:関税率 14%)として分類されるという決定がなされ、官報が公示
されることが予定されている(一部は既に公示済み)
。我が国は、製品内容的にコ
ンピューターの出力装置として製造している PDP についてはコンピューター周辺
機器として、EU側が関税率0%に分類することを要望する。
また、液晶モニタに関しても、機能とは無関係な要件(モニタの画面サイズ)
が関税再分類の基準として検討されていると承知している。
EU側は、日本を中心とする製造業界の持つ技術的な情報を十分に調査検討す
ることもなく、PDPについては分類変更を決定し、液晶モニタに関しては分類
変更の検討を進めていると認識している。
更に、EU内には PDP や液晶等の FPD の製造業は存在しないにも関わらず、ま
た、ITA(情報技術協定)対象製品用の PDP 及び液晶モニタについては ITA の対象
とすることが ITA で合意されているにもかかわらず、EUが高率の関税を課すこ
とは、自由貿易の発展を阻害するものである。
明確で分かりやすい関税分類の判断基準を示すことなく行う関税分類の変更は、
好ましくない分類運用の前例となる恐れがあるばかりでなく、産業界及び関税当
局に対し法律上の不確実要素を生み出すことになる。
本件について、しかるべき十分な再調査及び見直しを要望する。
(3)欧州委員会による「通関24時間前の申告義務付け」に関する提案
○、EC
欧州委員会は、昨年7月24日、テロなどに対する安全対策強化の一環として、輸
出入関係業者に対し、貨物が関税領域に搬入される24時間前に内容物の申告を義務
づけることを主な内容とする関税規則の改正を提案した。本改正案は、税関の機能
を強化して危機管理を進めるとともに、検疫や保安などを担当する他機関との連絡
調整を緊密化し、「ワンストップ・ショップ」的機能を発揮させることを目的とし
たものである。
テロ対策の取り組みについては、日本政府としてもその重要性を認識している
ところであり、EU共通の輸送安全管理を実施することでセキュリティの強化を
図ろうとする本改正案については基本的には支持する。
しかし、
本規則の施行は、
欧州向けの出荷コストの増大や手続きの煩雑化等、外国業者にとって過大な負担
を強いる可能性がある。現在規則案は欧州議会での第二読会に入っているものと
承知しているが、当初規則案に対して多くの修正意見が付され、具体的な事前申
告のタイムフレームが見えなくなっている。EUは「日・EU双方向投資促進の
19
ための協力の枠組み」においても、右規則に関し、業者にとって現実的な解決策
を確保する旨表明しているところ、我が国政府は、規則案のその後についての情
報提供を求めるとともに、引き続き申告時間の短縮、例外制度の検討及び申告フ
ォーマットの統一を進めることを要望する。また、今年5月に新たに10か国が
加盟してEU加盟国は25か国となったが、通関の事前申告規則が実施される場
合には、EU加盟国が共通の規準に基づいて同規則を運用するよう要望する。
(4)ハンガリーの通関手続きに要する時間の短縮/ポーランドの通関申請書につ
いて ★、○、ハンガリー、ポーランド、EC
(イ)ハンガリーでは、EU加盟後、EU域外からの貨物の輸入通関手続きに非常
に時間がかかるようになっており、通関に要する時間が短縮されることを要望する。
EU加盟以前は、通関(ハンガリー到着→工場入荷)の所要日数が1日であったが、
加盟後1週間∼10日前後かかるようになっているとの我が国企業の報告もあり、
いかなる理由により通関所要時間が長期化しているかの説明を求める。
(ロ)ポーランドでは、通関の申請書に形式上の些細なミスがあれば、たとえ関連
データ・商品に疑わしい点が一切なくとも受け付けてもらえない。関連データ・商
品に疑わしい点がある時のみ受付が拒否されるべきであり、この点に関し従来から
特に改善が見られないところ、対応改善を要望する。
(5) 複写機用トナーの関税
△、EC
EUにおいては、複写機用トナーパウダーに関し、カートリッジの形態であれば
無関税とし、トナー薬品についても申請が認められれば関税が免除される措置が、
域内情報技術分野の振興策の一つとして設けられている。しかしながら、関税の無
税化申請の受理期間は1年から1年半と長く、また欧州に競合相手がいないという
申請条件を証明することが難しいため、事実上適用は困難である。ついてはEUの
域内産業振興の観点からも、関税無税化のための申請処理期間の短縮及び証明の簡
素化を引き続き要望する。本件については、2002年度のEU側からの書面回答
が無かったことから、誠実な対応を要望する。
(6) AV家電製品の関税
△、EC
WTO−ITA(情報技術協定)の枠組みの中で、IT関連製品については、E
Uにおいては関税が撤廃されているところであるが、他方、AV及び家電について
は、最高14%の関税率になっており、他の先進国(米:0∼4.9%、日本:0%)
20
と比較しても著しく高い関税率となっている。これにより、AV・家電製品の輸出
が大きい域外国が不利となっており、AV・家電製品の価格競争力が弱められ、事
業の利益性が損なわれることが懸念される。
また、最近では技術の進歩に伴い、AV機器や家電でも、ネットワークに接続で
きる製品が増えてきており、AV・家電とIT機器との境界がなくなりつつある。
このことを踏まえ、我が国からはWTO・MA交渉において、デジタル家電をIT
A品目に付け加える提案をしており、また、家電・AV製品についても更なるマー
ケット・アクセスの向上を図るべく、ゼロゼロ(関税相互撤去)を提案していると
ころである。
これらの製品のマーケット・アクセス向上は、ITの普及・促進にも関与するも
のであるため、EU全体のAV・家電に対する高関税率について、早急な引き下げ
を要望する。本件については、2002年度のEU側からの書面回答が無かったこ
とから、誠実な対応を要望する。
(7) 免税範囲の緩和
△、EC
EU域内に入国する際に持ち込みできる物品の免税範囲については、たばこ、ア
ルコール、香水以外の物品について、総額が175ユーロを超えないこととなって
おり、我が国への入国に際しての携帯品等の免税範囲の20万円と比して著しく低
く、税関検査に煩雑な手間を強いられている。ついては、EU域内へ入国する際に
持ち込める物品の免税範囲の拡大を要望する。本件については、2002年度のE
U側からの書面回答が無かったことから、誠実な対応を要望する。
(8) EU域内生産商品及びEU域外生産商品の輸送に際する通関用書類の統一
★、△、オーストリア、EC
EU域内の日系企業の工場で生産された商品で、同社が中・東欧諸国向けに販
売する為に、ウィーンの倉庫に保管している商品がある。他方、日本やアジア等
EU域外の同社の工場で生産され、同社が中・東欧諸国向けに販売するためにド
イツのハンブルグ港やオランダのロッテルダム港を経由し主に鉄道でウィーンに
輸送し、そこで関税申告した輸入商品がある。同社はかかる2種類の商品をウィ
ーンからポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、スロベニア等EU域内
向けにまとめて輸送する際に、ウィーンの税関に通関用書類を提出するが、EU
域内で生産された商品の通関用書類とEU域外で生産された輸入商品の通関用書
類の2種類を作成しなければならず、煩雑であるところ、1種類の通関用書類の
みを提出すれば済むように要望する。
21
A4.情報・知的財産
(1)共同体特許の早期成立
○、EC、加盟国
2003年3月の閣僚理事会において、EUの特許権に関し各国ごとの特許権
保護制度と並立する共同体特許制度の創設に向けた政治的合意がなされた。更に、
昨年度のEU側回答では、2004年度中に更なる進展が期待される由であったが、
未だ規則案の採択には至っていない。EUは、「日・EU投資枠組み」において、
共同体特許制度の可及的速やかな実施に取り組む旨表明しているところ、早期に共
同体特許制度を実現するよう要望する。
(2)自動車用補修部品の意匠保護の廃止反対
★、○、EC、加盟国
欧州委員会は、EU加盟国において複合製品の補修部品の意匠保護を廃止する内
容のEU指令 98/71改正案を9月15日に公表した。補修部品の意匠保護廃止案に
よって、消費者にいかなる費用便益がもたらされるかは明らかにされていない。な
お、2003年11月18日、欧州政策評価コンソーシアムが作成したDGインター
ナルマーケットへの最終報告は、新型車は徹底的に検査され、安全基準を満たして
いることを証明しなくてはならないが、補修部品を取り付ける際の検査は義務づけ
られておらず、また、独立メーカーが生産する補修部品は、純正部品と違って安全
検査を受けていないと報告している。これは、むしろ市場が非純正部品に対してよ
り開放的になると最終消費者の安全性に問題が生じる懸念があることを示唆する
ものである。また、完成者メーカーが開発した補修部品への投資に対する回収を尊
重すべきであると考える。よって、補修部品だけを選び出して意匠の保護を否定す
ることに合理的な根拠はなく、本指令の改正を正当化する明確で客観的な理由が存
在しない限り、本改正案を撤回すべきであると考える。
(3)個人情報保護指令
○、EC
EUは、十分な情報の保護規定がない国や地域向けには、EU加盟国からの個人
情報を出さないことを義務づける「個人情報保護指令」を1998年10月に発効
させるなど、政府主導による規制を実施している。
本件に関し、前回の我が国要望の中では、適切性の認定を受けていない我が国に
とって、在欧日系ビジネス協議会(JBCE)等の国際的民間団体による「標準契約条項」
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の代替案の作成といった産業界の取り組みは、個人データの移転に関わる民間企業
の業務効率化の観点から有効であるとの認識の下、本代替案を標準契約条項のモデ
ルとして認めること、若しくは本代替案を踏まえて「標準契約条項」をビジネスの
実態に合わせてより利用しやすいものに変更することを要望した。このJBCE等産業
界作成の代替案に対し、欧州委員会より①より緊密な協力のアレンジ、②より明確
な責任システム、③よりよいアクセス権、という3つの留保事項を修正すれば代替
案を受け入れるとの提案があり、産業界においてこの提案を検討し、最終的な代替
案を本年7月に提出したところである。
我が国としては、欧州に拠点をおく日本企業のビジネス活動にとって必要な個人
データの移転業務円滑化の観点から、この最終案の審査に当たっては、EUが、こ
れまで通り関係する団体との継続的な議論を通じて十分な精査を行うこと、及びE
Uが、上記「日・EU投資枠組み」において、個人情報保護指令に関連した標準契
約条項についての日本側要望の検討を約束しているところ、早期に当該最終案が容
認されることを要望する。
また、第三国への情報転送に関するBinding Corporate Rules(拘束力のある企
業ルール)のあり方について、WG29が作業文書を作成し関係者に意見招請が昨年
9月に行われた。この第三国への情報転送へのBCRの活用については、JBCEが本意
見招請に対して回答している内容からも明らかなように、グローバルに展開する企
業グループ内での個人情報の送受信をより円滑に行えるようにする新たなツール
として期待されることから、具体的な指針作りにあたっては、これまで通り産業界
の意見を十分考慮し、ビジネスの実態を踏まえた内容となることを要望する。
(4)音楽関連著作権に関する法律の統一
★、△、EC、加盟国
EU各国で音楽関連著作権に関連する法律が統一されていないことから、EUで
活動する企業にとって、著作権の解決方法が各国で異なる、またはコストが異なる
事で、不都合を来たしているところ、EUレベルでの音楽関連著作権関連法律の統
一を要望する
(5)チェコにおける商業登記簿上の個人情報の保護
△、チェコ
チェコの商業登記簿上では、代表者の個人名や自宅住所が明記されており、イン
ターネットで誰でも匿名でアクセスできる。これは、個人情報の保護、安全の観点
から問題であり、例えば、閲覧者の身分の記録が残るような閲覧制度を導入する等、
その改善を求める。
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A5.雇用
(1)総論
○、EC、加盟国
EUレベルでの欧州雇用戦略(EES)の達成のための取組に敬意を表する。
また、EU側が、労働・社会分野における既存のEU法令は最低限の要請を規定
しているに過ぎず、日本から要望されている多くの事項は各加盟国の排他的権限
である旨2004年6月付対日書面回答にて述べているように、雇用分野は、各
加盟国固有の労使慣行や労働法制の歴史的経緯があり、センシティブな側面を持
つものであることは留意している。
しかし、依然として各加盟国に進出している本邦企業より、欧州における雇用
制度・慣行は、解雇、勤務時間、給与等の面で、困難を生じる場合が多く、企業
の進出・活動にあたり障害となり得る旨の指摘がなされているところ、これらE
U域外企業の声に耳を傾け、問題の是正に取り組むことが、我が国からの対EU
投資を促進するにとどまらず、EUにおける雇用の創出、経済活性化及び競争力
の強化につながるものと確信する。ついては、引き続き欧州側がビジネス環境の
改善の観点から、EUレベル及び加盟国レベルの両者で労働市場の改善に取り組
まれることを希望する。
各論(加盟国個別事項)
(2)スペイン
△、スペイン、EC
以下の(イ)については2002年11月付の優先要望及び(ロ)については2
003年3月付の補足要望に記載しているが、(イ)については2003年6月付
でEU(スペイン)側から回答があったものの、依然として以下のような問題を有
している。また、(ロ)については未だ十分な回答が得られていないので、引き続
き要望する。
(イ)期限付雇用契約制度と解雇補償金制度の改正
2003年6月のEU(スペイン)側回答によると、期限付雇用契約については、
法令上4タイプの種類があり、企業が市場動向に対応できるように十分に柔軟性を
有したものであるとのことであるが、実際上は原則6か月(最大12か月)という
期限が存在しており、企業は期限付き契約によって企業活動に応じた必要な期間の
契約により労働者を採用することは困難となっている実情がある。ついては企業が
必要な期間を自由に決定する期限付き契約が可能となるよう、制度改正を引き続き
24
要望する。
また、解雇補償金の引き下げについては、同じく2003年6月のスペイン回答
によれば、これまで累次の労働市場改革において、無期限雇用契約を推進するため
解雇補償金を従来より低く設定した契約方式が導入されたとのことである。しかし、
これら新制度による解雇補償金の適用範囲は限定されており、また、これが新規雇
用契約のみにしか適用されず、従来の雇用契約を結んでいる従業員には適用されな
いため、高齢社員の解雇の際には高額の支払いを余儀なくされる等、多くの場合企
業が高額の解雇補償金を支払う必要が依然として続いている。
ついては、新制度により引き下げられた解雇補償金の適用対象者の拡大を要望し、
あわせて解雇補償金の一層の引き下げを引き続き要望する。これらは、無期限雇用
契約の促進にも不可欠と考える。
(ロ)年間超過勤務時間の弾力化
残業・休日に関する規制緩和要求に関し、過去のEU(スペイン)側の説明によ
れば、年間超過勤務時間80時間は絶対的なものではなく、フレキシブルな運用が
可能である旨述べるところがあった。しかし、いずれにせよ年間超過勤務時間の総
枠80時間は固定されており、これを超える場合には必ず労働者に休暇を与える必
要が生じるとの実情があるため、このような規制が存在し続けると、企業として大
幅な増産、販売の拡大に機敏に対応することは困難である。企業によってはその柔
軟な生産対応を維持するため雇用・解雇を繰り返し、非効率的な経営を強いられて
いるケースもある。この規制によりスペインの生産立地国としての魅力も失いかね
ないことを懸念している。
ついては、年間超過勤務時間の総枠80時間の引き上げを可能とするような弾力
規定を新規に設けることを引き続き要望する。
(3)ベルギー
△、ベルギー、EC
2003年3月付の補足要望で取り上げた、以下(イ)∼(ホ)については回
答を得られていないので、引き続き要望する。
(イ)解雇制度
(a) 解雇にあたっては、予告期間を設けることで契約を解除でき、予告期間は法
律に基づき職種、勤続年数、年収により28日∼3か月以上の解雇予告期間が必要
とされている。ところが実際には、クレイスフォーミュラという至近の判例に基づ
25
いて作成される計算式により勤続年数、年収に応じて、場合によっては1年を超え
る予告期間もしくはその期間の賃金相当の解雇金支払いが必要となっている。これ
までベルギーより回答が得られていないところ、引き続き法律でない判例に基づく
計算式による予告期間決定が優先することの問題点を指摘するとともに、予告期間
の上限を半年とすることを要望する。
(b)従業員代表保護規定
従業員代表選挙の候補者は、当選者のみならず、代理要員、落選した候補者を含
め、次回4年後の選挙まで、勤怠不良でも解雇できない。2002年4月のEU(ベ
ルギー)側の説明によれば、本件制度は労働組合員及び労働組合員選挙立候補者へ
の企業によるプレッシャーから保護することを目的としており、また法に従い、緊
急の理由等により特定の状況下においては、保護対象職員の解雇手続きが始められ
ることを確保しており、解雇できないということを意味していないとのことであっ
た。しかし、これら保護対象職員の解雇にあたっては高額の補償を支払わざるを得
ず、事実上難しくなっており、また、保身のために立候補するケースも散見される
とのことである。したがって、代理要員及び落選した候補者は、一般従業員と同じ
扱いとするよう保護規定を改善することを引き続き要望する。
(ロ)雇用制度
ベルギーの雇用制度は無期限契約を基本とし、特別な場合は2年を上限とする期
限付き契約を締結できる(プロジェクトや催し物の臨時職員等、正当な理由がある
場合)と承知している。しかし、期限付き契約の更新が1∼2回繰り返された後は
無期限契約に移行することになっているため、中長期的な期限で社員を雇用するこ
とが困難となっている。ついては、企業が必要な期間を自由に決定できるような期
限付き契約が可能となるように制度の改善を要望する。
(ハ)給与制度
ベルギーにおいては、法律により個々の従業員の給与を引き下げることができな
い給与制度が義務づけられており、また賃上げ率の上限が決められているものの、
毎年政府から、全従業員に対する定率の最低賃上げが義務づけられている。
2000年4月のEU(ベルギー)側の本件に関する説明は不十分であり、また、
個人レベルの賃金決定を個々の企業の意思決定に委ねられるよう引き続き要望す
る。
(ニ)労働時間制度
26
現在、ベルギーにおいては年間で、所定内労働時間を超過することが法的に制限
されており、また超過時間に見合う代休を消化させる義務があるため、業務量の変
動を残業で吸収することが出来ず、雇用で調整せざるを得ない。しかし、雇用を増
やすと業務量減少時に余剰人員を抱え込むことになる。所定内労働時間に関する制
限が、業務量の変動に対する迅速な対応の障害となっているため、所定内労働時間
の拡大を要望する。
また、2000年1月より週勤務時間が1時間短縮(年間有給休暇6日増)され
る等、勤務時間が短縮される傾向にあるが、これ以上の勤務時間短縮(有給増)は
投資活動上の障害となる可能性があることを引き続き指摘する。
(ホ)労働組合関係法令
法定の労使協議会により経営者側は、財務、事業業績等に関する情報提供を月例、
四半期、年次で義務づけられている。年次報告については、原価計算方法、市場で
の位置づけ、リサーチ活動の内容といった項目まで、多数規定されており、日本側
企業にとって負担が大きい。これまで白から回答が得られていないところ、決算情
報、労働条件、従業員の雇用に影響する重要な組織変更のみに提供義務づけ項目を
簡素化するとともに、会合頻度も各社の裁量に委ねられることを引き続き要望する。
(4)オランダ
★、△、オランダ、EC
解雇補償金・病欠保障義務
被雇用者が雇用法により手厚く保護されているが、経営環境の変化に伴いリスト
ラを実行する場合、多額の補償金支払いが求められており、過度な労働者保護によ
り企業経営そのものが立ち行かなくなる可能性があるところ、当該解雇補償金支払
いの軽減を要望する。また、病気により就労不能となった場合、雇用者は初年度は
100%、次年度は70%の割合で給与を2年間保障する義務があるが、医師の診
断書等の提出は必要なく、病気が就労に与える影響を確認できないケースがあると
ころ、病欠認定制度の改善を要望する。
(5)ドイツ
△、ドイツ
2003年3月付の補足要望で取り上げた、(イ)日曜・祭日就労の規制緩和
及び(ロ)解雇保護制度の緩和の2点については、在独日本国大使館と独関係行
政機関との協議に向けてのプロセスが準備されているところ、今後関係者間で事
態が進展することを期待する。
27
(6)フランス
★、△、フランス、EC
労災・病欠認定制度の改善
(イ)一部の医師による安易な認定による労災及び病欠の濫用が本邦企業の活動
に悪影響を及ぼしているが、現在、仏政府も医療保険改革の一環として本件に対
する対策を協議中であると承知しているところ、労災及び病欠認定制度の改善が
もたらされることを希望する。
従業員保護制度の改善
(ロ)仏の制度上、従業員代表(délégué du personnel)、労働組合代表(délégu
é syndical)、企業委員会(comité d entreprise)委員等は「保護された被用者
(salariés protegés)」として、雇用者による解雇・雇用契約の一方的破棄が原
則としてできないこととなっている。そこで、会社に損失を与えるような失敗や反
抗的な態度等がある場合でも当該従業員の解雇ができない例が報告されているこ
となどから、被用者保護の関連法規に関するさらなる改善を求めたい。
(7)スウェーデン
△、スウェーデン、EC
2003年3月付の補足要望で取り上げた以下については回答を得られていな
いので、引き続き要望する。
解雇時のラストイン・ファーストアウト(Last-in, First-out)ルール
スウェーデンに進出している日本企業は、中小規模の企業が多いため、雇用でき
る従業員数に制限がある。他方、近年のITなど先進技術の進展に対応するために、
これら企業は、新たな技術を身につけた有能な人材を必要としているが、スウェー
デンの法律で定められたラストイン・ファーストアウト・ルール(企業の人員削減
に当たり、当該企業における職歴の長い従業員の方が、職歴の短い従業員よりもそ
の職籍が保護されるルール。即ち、従業員を解雇するには、職歴の短い従業員から
解雇していかなければならないとするルールのこと)により、新たな技術に対応で
きない人材の解雇が難しく、かつ従業員数全体を大きく増やせない事情にもより、
有能な人材の確保ができない状況にある。このように、有能な人材の不足は企業活
動の拡大にも支障が生じさせるため、日本企業の進出及び企業活動の拡大を妨げる
一因となっており、本件ルールを早期に緩和することを要望する。
なお、第3回日・スウェーデン貿易経済協議及び追加説明文書により、当該ルー
ルの例外措置として、
(イ)専門性に基づく職能区分毎を適用すること、及び、
(ロ)
28
一定雇用数以下の中小企業に対する適用除外があるとの回答を得ているが、現地の
従業員を多数雇用する日本企業では利用できない場合も多く、また、自由な企業活
動への障害に対する本質的な解決となっていないことから、引き続き要望する。
(8)ルクセンブルク
△、ルクセンブルク、EC
2003年3月付の補足要望で取り上げた以下の要望については、2004年
1月、ルクセンブルク側から示唆に富んだ回答を得ており、「雇用」に関する要
望についてはEU諸国から十分な回答が得られていない中、我が国政府はルクセ
ンブルク政府の誠実な対応ぶりを高く評価している。ルクセンブルクの回答にお
いては、日本のみが差別的扱いを受けているものではない、統計や研究成果は、ル
クセンブルクの雇用制度が同国への企業進出にとって問題とはなっていないこと
を示している等述べられている。他方で、ルクセンブルク自身も引用しているよう
に、不況下においては厳格な雇用制度は不利な影響を与えうる旨OECDも指摘し
ており、我が国企業からも依然として次の問題が指摘されているところ引き続き要
望する。
法定有給日数の削減
国内法令と労働協定の双方にまたがる事項であり、あまり問題となっていない業
種もある一方で、負担と感じている企業・業界も存在している。ついては、仮に有
給休暇日数の決定が労働協定に基づくとしても、外国企業の進出のためのビジネス
環境整備のための観点から、企業の負担が増大しないよう、中長期的視点に基づく
観察を希望したい。
(9)チェコ
★、△、チェコ、EC
病気欠勤率の改善
チェコ労働・社会福祉省の報告によると、2002年の労働者平均欠勤期間は
約31日で、この数字は中東欧も含め欧州諸国の中でも極めて高い。今般、病気
欠勤率低減のための法案が施行されることとなり、政府の取組を評価するが、同
法は、病気になったときの補償給付額を一定程度削減することから財政改革上は
一定の効果をもたらすかもしれないが、病気欠勤率そのものの改善のためには不
十分との意見もある。病気欠陥率の問題は、国による補償のあり方という制度面
での問題の他、医療制度の問題、制度の悪用という問題など、複合的な問題であ
り、政府全体としてその低減に取り組むことが重要である。従って、政府として
今回の改善策を確実にフォローし、不十分な場合は更なる改善への取組をすべき
29
であり、政府による取組なしでは、高い病気欠勤率が今後のチェコへの企業進出
にも悪影響をもたらす恐れがあることを指摘したい。
B:業種別規制
B1.法律サービス
(1) 総論
○、加盟国、EC
我が国は,法律サービスに関し,これまでの欧州委員会を始めとするEU側の
要望を真摯に受け止め,外弁法改正や司法制度改革推進本部の設置等の措置をと
ってきた結果、仏、独、英などのEU諸国を含む諸外国の弁護士が我が国におい
て外国法事務弁護士として活動している。これに対し,EU側一部諸国において
は,我が国弁護士の活動が制限を受けており、我が方の要望に対し十分な改善が
なされていないことは,相互主義の観点から遺憾である。我が国は右問題の改善
に高い関心を有しており、対話の双方向性を確保するためにも、欧州委及び各加
盟国が我が国の以下の具体的要望に誠意ある対応を取るよう希望する。
(2) フランスにおける外国弁護士の母国の法律サービスに関する業務従事の
許可
○、フランス、EC
フランスにおいて、我が国外弁法のように外国弁護士が特別の試験を経ること
なく母国の法律サービスを行う業務に従事できる制度を早期に整備することを要
望する。
これに関して、昨年仏当局より話のあった法律コンサルタント資格(FLC)の
創設という動きについては高い関心を有しており、現在の検討状況及び今後の見
通しに関する具体的なタイムテーブルについても報告して頂けるよう要望する。
(3) ドイツにおける外国弁護士のいわゆる第三国法に関する法律事務の許容
○、ドイツ、EC
我が国は、ドイツの外国法事務弁護士に対して、第三国法に関する法律事務の
取扱いを認めている。他方で、ドイツは、EU域内の弁護士については、全ての
法律の取扱いを認めているものの、我が国を含むEU域外の弁護士については、
いわゆる第三国法に関する法律事務の取扱いを認めていない。ドイツは、本件を
GATS交渉で扱うべきとしているが、GATSにおけるEUの約束は、右を超
えて各国加盟国が自由化を進めることを妨げるものではないと理解しているとこ
ろ、相互主義の観点からも引き続き本件に対する誠意ある対応を強く要望する。
B2.電気通信
(1) ローカルループアンバンドリングの促進
30
★、○、EC、加盟国
EUのブロードバンドは、料金と質の点で日本を含むアジア諸国に比べて発展
が遅れているように思われる。その理由の一つとして、2000年のULL規則
の制定・施行にもかかわらず、LLU(ローカルループアンバンドリング)が進
展していないことがあると考えられる。
規制の実施に関する第9次報告書によれば、EUにおけるシェアドアクセスの
料金は我が国に比べて依然として高く、競争事業者の利用に適した水準とはなっ
ていない。
また、政府全体としての政策立案から規制実施に至るまでの機動性の欠如や、
既存事業者の抵抗への対抗力の弱さにより、既存事業者の遅延戦術を許している
ことも障害になっているものと思われる。
このような現状を踏まえ、日本政府は、欧州委員会及び各加盟国がシェアドア
クセスの料金の引下げに向けた措置をとることを要望する。
(2) 無線LANに関する周波数割当ての調和
★、○、EC、加盟国
無線LANに関し、EUレベルにおいては 2400-2483.5MHz 及び 5150-5350MHz
の周波数帯が割り当てられているところであるが、各加盟国においてこれら周波
数帯の利用に制限が加えられている。たとえば、フランスにおいては、
2454-2483.5MHz の周波数帯における屋外利用が制限されており、オーストリアに
おいては、5GHz 帯の利用が 5150-5250MHz に限定されている。このように各加盟
国レベルで異なる制限があることにより、たとえば自動車に無線LANを搭載す
るといった利用方法が困難となる。したがって、日本政府は、無線LANに関す
る周波数帯割当てについて、各加盟国間の調和が図られることを要望する。
(3) 政府による競争中立性の確保
○、加盟国、EC
いくつかのEU加盟国においては、たとえば政府職員が通信事業者の役員・監
査役等に就任することを始めとして、政府が株主として電気通信事業者の経営に
関与することが行われている。日本政府は、現職の政府職員が電気通信事業者の
役員を兼ねることを禁止することをはじめとして、市場における競争に関する政
府の中立性が確保されることを要望する。日本政府は同時に、欧州委員会及び各
国政府との間において、国家援助のスキームを含む政府による関与の在り方につ
いて意見交換を続けていくことを要望する。
B3.金融サービス
(1)総論
○、加盟国、EC
31
EU域内のある加盟国で認められた活動、商品、ライセンス等が、他のEU加
盟国でも自動的に認められ、追加的な手続の必要がない、若しくは報告のみで許
可を要しない制度を導入することは、域外国から見て魅力ある単一市場の観点か
ら有効であるので、引き続き右制度の導入を要望する。また、監督当局に対する
届出書類等について、EU各国において、日本人を含む外国人への配慮として複
数言語で記述されたフォームを準備することは、欧州域内のビジネス環境を整備
する上で即効性のある処方箋であるので、早急な対応を求める。また、国毎に異
なる内容、様式の届出を行うのは煩雑であり、ビジネス上の効率の観点から改善
の余地があると思われるので、届け出内容、様式の調和を要望する。現在行われ
ている金融サービス市場の統合は短期的に解決できる問題ではないが、継続的な
努力を期待する。
(2)国際会計基準
○、EC
EUは、目論見書指令及び透明性指令の下、域内で証券公募又は上場を既に行
っている、もしくは今後行うEU域外企業に対し、2007年頃より国際会計基
準(IAS/IFRS)又は国際会計基準と同等の会計基準に従った財務諸表等
の作成を義務づけている。
現在日本企業70社程度がEU域内で株式を上場している。また、少なくとも
180の発行者が社債(転換社債、ワラント債を含む)を発行している。日本の
発行者に IAS に従った財務諸表の作成を義務づけ、日本の会計基準を使用するこ
とを認めない場合、EU域内での財務活動に悪影響を及ぼし、EUの取引所から
の上場廃止や非EU市場への移行を促す可能性があり、
非常に重要な問題である。
日本の会計基準は1990年代後半から2000年代前半のいわゆる「会計ビッ
グバン」を通じて、急速に整備され、国際的な会計基準と整合的なものになって
いる。
日本政府は、欧州委員会やEU主要国当局に対し、日本の会計基準の整備・改
善状況、国際的収斂(convergence)に向けた考え方、両会計基準の比較等を説明
してきたが、欧州委員会が本年6月25日にCESR(欧州証券規制当局委員会)
に対し、
米国会計基準、日本会計基準及びカナダ会計基準の同等性評価について、
2005年6月30日までに技術的助言を行う検討指示を発出したことを歓迎し
ている。
また、本件に関しては、本年の日・EU定期首脳協議における「共同プレス・
ステートメント」及び「日・EU投資枠組み」において、
「日・EU首脳は、欧州
委員会が国際会計基準と既存の日本の会計基準の同等性を確立する作業を開始し
たことに留意し、できる限り早期に、そして遅くとも2007年より前に、会計
基準の同等性を確立する作業を完結するよう促した。」と述べられていることにも
留意するべきであり、引き続き、日本の会計基準と国際会計基準の同等性を早急
に認めるよう要望する。
32
(3)フランスにおけるクレジット・カード業務への新規参入
★、△、フランス
フランスでは、Cartes Bancairesという組織が、カード処理端末の仕様を決め、
ネットワークを構築している。このネットワークは、一部の国際カードブランド
を除き、その他カード会社をネットワークから締め出しを行っている。日本政府
は、欧州委も2004年7月に本件に関して反対声明 Statement of Objection
s を発出しているものと承知している。
日本を含め、殆どの国では、クレジット・カードのネットワークは、全てのカ
ード会社が利用できるものであり、参入障壁とはならない。したがって、我が国
政府は、本件に関する欧州委並びに仏政府の見解を求めるとともに、Cartes Ban
cairesのネットワークが、全てのブランドカードに対して開放されることを要望
する。
(4)スペインにおける投資規制の緩和
★、△、スペイン
国家証券市場委員会(Comisión Nacional del Mercado de Valores : CNMV)
によると、1997年7月19日付け官報(Real Decreto, BOE, de 19 de Julio
de1997 dispongo 1.)(1996年6月7日付け勅令7/1996号の改正)にて、E
U域内で設定される投資信託商品について、「投資会社及び投資ファンドの購入可
能有価証券はOECD加盟国に本社を持つ企業によって発行されたものでなけれ
ばならない。」と規定されている。また、OECD以外の国に本社を持つ企業によ
って発行された有価証券を購入する場合は、国家証券市場委員会の事前認可が求め
られており、他のEU各国と比べて規制緩和が遅れている。投資信託資金による投
資対象国の拡大を含め、この投資規制の緩和を要望する。
(5)ポーランドにおける居住者間決済に関する規制緩和
★、△、ポーランド
ポーランドでは、商取引上ユーロ建ての決済が増えているが、現在、ユーロ(又
は他国通貨)による居住者間決済ができず、自国通貨での決済が義務付けられて
いる。
ユーロや他国通貨での居住者間決済が可能となるよう規制緩和を要望する。
B4.放送サービス
コンテンツの国際交流の充実
★、○、EC、加盟国(特に仏)
33
1.
(1)
「国境のないテレビ指令("Television without Frontiers" Directives)
」
(89/552/EEC、97/36/EC により改正)においては、番組編成において欧州製番組
比率について50%以上を確保すること(クウォータ制)が求められている。こ
のような規制の存在は、日本製テレビ番組のEU域内での流通にも影響を与え得
ることから、テレビ番組を通じた良質な文化交流の阻害要因となることが懸念さ
れている。
昨年、フランスのケーブルチャネルABグループの傘下にある「マンガ・チャ
ンネル」がこの規制を背景とする国内法に違反したとして70,000ユーロの
違反金をCSA(視聴覚最高評議会 Conseil SuperiEUr du l Audiovisuel)
より申し付けられている。マンガチャンネルは日本のアニメ専用チャンネルとし
て設立されたものであるが、このような専門チャンネルは事実上成り立たない状
態となっている。
(2)わが国は文化の多様性の重要性を十分認識しているが、これまで域外の文
化との交流によりヨーロッパの文化が豊かな創造的発展を遂げてきたという経緯
にも鑑み、日本の良質な作品を鑑賞する機会を拡大することは、日・EU双方の
利益となると確信している。
2.ついては、日本製テレビ番組の流通拡大の具体的措置として以下を要望する。
(1)クウォータ制に係る規制の緩和
たとえば、主として専門番組の配信を行うチャンネルについては、番組編成に
おける欧州製放送番組比率に係る規制を緩和する等の改善を要望する。
(2)域外国制作会社と域内制作会社との共同制作の定義の柔軟化
(イ) 欧州委員会が作成したガイドラインによれば、域外の制作会社がEU
の制作会社と共同で制作し、その作品がEUの作品として認められるた
めには、EUのプロデューサーによって作品の制作が supervise され、
かつ actually control されなければならない等と規定されている。
(ロ)日・EU間の番組共同制作を促進するため、EU製の作品と同様と認
められ得る共同制作による作品の定義については、少なくともEU域外
の制作者とEUの制作者が対等の立場で共同制作する場合にはEU製
作品と見なす等、共同制作の定義の柔軟化につき検討するよう要望する。
(3)フランスの規制のEU指令レベルへの低減
CSAの規定は、フランス作成のTV番組を50%以上、かつ欧州で制作され
たTV番組を60%以上放映するとしていると理解している。EU指令では欧州
製作品の比率は50%以上と規定されているところ、必ずしもEU指令の比率に
賛同するわけではないが、フランスにおいても欧州製TV番組については、EU
指令にあるとおり欧州製番組の比率を50%以上とするよう要望する。
B5.運輸・自動車・航空(英語版国交省決済中)
34
(1)歩行者保護に関する国際基準調和に向けた日・EU間の協力
○、EC
歩行者保護基準(乗用車・小型トラックが歩行者と衝突した場合に、歩行者の
頭部に重大な障害が発生しないボンネット構造とすること)は、自動車の基本車
体構造に影響を及ぼす基準であるため、国際調和の必要性が極めて高い。このた
め 、 UN/ECE/WP29 の 9 8 年 グ ロ ー バ ル 協 定 に 基 づ く 世 界 統 一 基 準 ( Global
Technical Regulation)の2005年中の制定に向け欧・米・日各政府が協力し
て作業を進めているところであるが、EUにおいては閣僚理事会及び欧州議会に
おける議論の後、採択を得て、2003年12月に独自の歩行者保護指令を公布
した。
EUが昨年度、基準調和に向け努力を続けていくと述べた点を評価している。
しかし、基準の国際調和には、EUがGTRを採用することが最も望ましく、E
Uの歩行者保護指令が予定している次期規制の内容の見直しにあたっては、GT
Rを踏まえた内容とするよう要望する。
(2) ECE規則第94号及び95号の採用
○、EC
日本政府がすでに採択しているECE95(側面衝突試験)及び今後採用を予定
しているECE94(オフセット前面衝突試験:我が国採用のための改正を提案
中)については、ECE規則が改正され、既に相当のEU指令との不整合問題が
解決済みで、採用にあたって技術的には何ら問題がないと理解しているが、未だ
にEUとして採用がされていないため、車両型式認証制度(WVTA)において
これらの規則に基づく認証を使用できない状況にある。欧州委は右規則の採択提
案を2004年中に行う意向である点は評価しているが、車両等の型式認定相互
承認協定(58年協定)に基づく日EU間の相互承認の拡大を推進するため、E
Uが、これらの規則について早期に採択を行うとともに、車両型式認証制度(W
VTA)においてこれらの規則を使用可能とするためのEC指令(70/156
/EEC)の改正を速やかに行うことを要望する。
(3)UN/ECE/WP29(国連自動車基準調和世界フォーラム)におけるE
CE規則改正案又は新ECE規則案の採決に関するEUの迅速な意思決定
★、△、EC
UN/ECE/WP29における「車両等の型式認定相互承認協定(58年協定)」
に基づくECE規則案及びECE規則改正案の採択に際し、特別の反対理由がない
にもかかわらず、新規則をEU各国の言語に翻訳する作業等によりEU内での審議
手続きに時間を要し、採択が遅れている。「車両等の型式認定相互承認協定(58年
協定)」には、欧州以外の国も多く加盟していることから、EUによる各専門分科
会(GR)での承認後、UN/ECE/WP29本会議において直ちに投票ができ
35
るよう、速やかにEU内での審議を進めるよう要望する。
(4)ポーランドにおける現地旅行代理店を通した航空券発券・販売
★、△、ポーランド
ポーランドにおいて、現地旅行代理店を通した航空券発券・販売(BSP参加)
のためには、同国に支店または代理人を置く必要がある。同国に支店または代理
人を置かなくてもBSPに参加できるよう要望する。なお、新規加盟国における
一例として、チェコでは右設置は不要と承知している。
(5)ドイツにおけるスラッジ1%ルール
△、ドイツ、EC
ドイツにおいては、船舶航行に際し発生するスラッジ(燃料油中に含まれる残さ
物(ゴミ))が船舶の使用した燃料油量に占める割合は1%以上になるという前提
に基づき、入港する外航船舶に対する立入検査において、右スラッジの燃料油量に
占める割合が1%に満たない場合には、スラッジの船外排出の疑いがあるとして罰
金を課すルールがある。
2001年5月のドイツ政府回答によれば、スラッジ1%ルールは、スラッジの
船外排出を発見する最適な方法であり、また、同ルールは柔軟に運用されており、
スラッジを燃料油量全体の1%未満にするような装置をつけている場合は適用除
外となる旨の説明がなされているが、環境保全に配慮した本船設備、燃料油等の諸
条件によっても、その発生率は異なるため、特別な装置をつけていない場合、スラ
ッジが船舶の使用した燃料油量に占める割合の1%以上になるという基準の一律
な適用には必ずしも合理性が認められない。
また、2002年9月のEU側回答の中では、欧州委員会は、本件を対象とする
EU法制は存在せずドイツの国内法制下の問題であるが、ドイツ政府に対して我が
国懸念を伝達し、情報の提供を依頼する旨回答しており、我が国政府は欧州委の協
力に感謝するが、ドイツ政府の回答は未だ受け取っていない。ついては、ドイツ政
府に対し、本件に関する見解を求めるとともに、同ルールの撤廃又は合理的ルール
への見直しを引き続き要望する。同時に、撤廃等が実現するまでの間、ルールの適
用除外となる装置等の基準の明確化を引き続き要望する。欧州委に対しては、我が
国政府及び事業者への情報提供等を行うよう引き続き独政府への働きかけを求め
る。
(6)外航海運サービスに関するEU競争法の適用除外規則の見直し
△、EC
36
EUにおいては、EC条約の中で、競争制限的な協定及び協調的行為の禁止(8
1条)、市場支配的地位の濫用行為の禁止(82条)について規定しているが、一
定の条件のもと、特定の分野については同規定の適用除外を認めており、外航海運
サービスも適用除外対象分野の一つとなっている(外航海運サービスの適用除外に
ついては規則4056/86にて規定)。
本件に関し、現在、外航海運サービスを、引き続き適用除外の対象分野とするか
どうかを含め、規則№4056/86の見直しが検討されていると承知しており、
我が国政府は2002年の対EU補足要望においてその作業計画等、進捗状況につ
いての説明を求めたが、未だEU側から回答がなされていないところ、右回答を改
めて要望する。
B6.建設
(1)オフロード用内燃機関の排出ガス規制
△、EC
現在、EU加盟国においては、オフロード用内燃機関の排出ガス規制(EU指
令 97/68/EC)に基づき、建設機械のエンジンから排出される排出ガスについて、
出力レンジごとに基準値が設定されており、その基準値をクリアしたエンジンに
対し認証が与えられていると承知している。
一方、我が国においても、出力レンジの分類及び各レンジごとの基準値ともE
Uのものと全く同じであるにもかかわらず、我が国で認証を受けたエンジンをE
U加盟国に輸出した場合に、再度、同様の検査を受けることが義務付けられてお
り、メーカーにとって重複作業や受検に係るコストが大きな負担となっている。
本件に関し、2002年3月、我が国産業界関係者と欧州委員会環境総局担当
部署との間で協議が行われ、欧州委側より、日本の排出ガス対策及び規制方法は
十分なレベルにあるので、今後、日本とEUの規制の調和の可能性につき検討す
るという旨の回答があったと聞いているが、その後の進捗状況及び今後
の見通しについて説明を求める。
(2)ベルギーにおける建設工事参入
★(1,2年前に要望)、○、ベルギー
ベルギーにおいてはEU域外企業が建設業登録を行うためには、EU域内に本
社的機能(指示・管理)を有する現地法人を設立していることが必要となってい
る。
この際、未登録企業であれば、建設工事を受注するためには、税として15%、
社会保障費として15%の合計30%を予納することが必要であり、競争上、不
利が生じている。
また、未登録の建設業者と契約する発注者は、右建設業者(受注者)の一定の
37
債務(受注者の税及び社会保障費債務)
を保証しなければならないが(連帯責任)
、
これも過度な要求であると考えている。
日本の建設会社が登録を行うことは、本社的機能を担う現地法人を欧州に有し
ない多くの日本の建設会社にとっては困難であり、また、未登録の場合には上記
の通り、受注に当たって不利な扱いを受けることから、このような制度の改善を
要望する。
(3)フランスにおける建設工事にかかる強制保険制度
★、△、フランス
(イ)フランスでは、建物の建設工事を行う場合に、その工事に関係した業者は、
建物完成後10年間の保証責任を負うこととなっている(仏民法1792条)
。こ
の保証責任を確実なものとするため、仏保険法(L241条、A243条-1 条補
則I)は、強制保険について規定している。従来は、右建築物責任保険のみ強制
加入となっていたが、賠償保険という保険の性質上、責任の所在を明確にするた
めに極めて長い時間を要することから、
建築主の保護が十分に達成できなかった。
そのため、賠償の責任を問題としない建築物損害保険が、更に強制加入の対象と
なった。
(ロ)建築主保護の必要性は十分理解するも、このように強制保険まで課す制度
はフランス特有のものであるため、妥当な条件で右保険を提供できる保険会社は
フランス以外には極めて限定されている。また、
フランスの保険会社に関しても、
右保険料の算定においては、フランスにおける実績を考慮に入れるため、我が国
を含むフランス以外の諸国の建設会社の保険料は仏会社に比して高くなり、受注
競争上、不利になっている。ついては、本件に関する仏及びEUの見解を求める
とともに、本件参入障壁の是正が図られるよう要望する。
B7.医療・医薬品
(1) 医薬品の並行輸入対策
★、△、EC
EUにおける薬事制度においては、製造企業とのライセンシング契約を結ぶ
ことなく、医薬品の輸入販売ができる状態になっているため、平行輸入業者が数
多く活動している。このため、特にイギリスやドイツ等において、現地医薬品企
業が売上げの減少により大きな被害を被っている。
医薬品の価格は、加盟各国の医療保障制度に基づき規制されており、医薬品企
業の自由な設定が困難なため、他の製品と同じように移動の自由が保障されるこ
とは不適当と考えているところ、右に対するEUの見解を説明願うとともに、医
薬品に関しては並行輸入の対象外とすることを求める。
(2) 利益率に関する英薬価制度(PPRS)の是正
38
★、○、英、EC
英国保健省と ABPI(英国製薬産業協会)において締結される協定である PPRS
(Pharmaceutical Price Regulation Scheme;医薬品価格規制制度)においては、
有形固定資産に対する投資額の大きさによって利益率に対し差別的制限がなされ
ており、現地に生産拠点を持たない新規参入企業及び輸出販売が主体である外国
企業にとっては不利な取扱いがなされているところ、右に対するEU及び英政府
の見解を求める。また、右制度は域外企業にとって不当な実質的障壁となってい
るため、当局の是正策を求める。
(3) ドイツにおける強制リベート制度の見直し
★、△、ドイツ
ドイツにおいては 2003 年 1 月以降参照価格制度が適用されない医薬品につい
て、医薬品企業に対し、払い戻し義務を課しているが、2004 年 1 月よりその率が
従来の 6%から 16%に引き上げられた。この引き上げは、負担の当事者である医
薬品産業界の意見を一切考慮することなく行われたものであり、医薬品産業に大
きな負担となっている。本年6月の日・EU定期首脳協議において発出された
「日・EU投資促進枠組み」においては、日本、EU及びEU加盟国は、規制の
透明性の向上に努める旨表明しているところ、本件に関するEU及び独政府の見
解を求める。また、医薬品産業界と建設的な議論を行う場を設け、官民合意の下
に当該施策の見直しを行うことを求める。
B8.観光
(1) オーストリアにおいて夏期観光業に従事する学生への労働許可の発給
△、オーストリア
オーストリアには、同国の誘致活動もあり多数の日本人観光客が来訪し、これ
らの日本人観光客を相手とする日系企業(旅行代理店、日本料理店、土産物店)
は、顧客サービス維持のため、日本人を雇用したいと考えているものの、比較的
低賃金の労働者については、労働許可の取得が事実上困難となっており、その改
善を引き続き要望する。(「労働許可」の項参照)。
仮に、恒常的な労働許可の発給が直ちに困難な場合も、夏の繁忙期について現
地に滞在する日本人学生等を対象とした期限付き労働許可の迅速な発給を要望す
る。
(2)スペインにおける観光ガイドの国籍要件、観光ガイド同行義務、観光ガイ
ド料金設定の透明性
△、西
(イ)観光ガイドの国籍要件
39
スペインのガイド法によると、観光ガイドの資格取得はEU諸国(自国を含む)
の国籍者のみに限定されている。ガイド法の国籍要件はGATSに留保していると
のことであるが、我が国旅行会社は、日本語を話すことができる案内人に加え、通
常日本語を話すことができない現地ガイドを雇う必要があり、無駄な負担を強いら
れている。日本語を話すことができる非EU加盟国国籍者だけでも観光ガイド業務
ができるよう要望する。また、これまでも我が方要望において要望したとおり、ガ
イドの資格取得手続及び条件に関する明確な説明を求める。
(ロ)観光ガイドの同行義務
スペインでは、観光ガイドの同行が義務付けられているところ、その必要性につ
いて説明していただきたい。どのような場合でも同行義務を課すのではなく、右義
務が課されない範囲を策定するよう要望する。
(ハ)観光ガイド料金設定の透明性確保
2001年のスペイン政府からの回答によると、ガイド料金は、市場経済の原則
に基づき、ガイド自身により設定されており、中央政府や自治体が介入することは
できない旨の説明がなされているが、実際には、ガイド協会が独占的に料金を設定
し得る状況にあり、一部において料金を一方的に決定しているとの指摘がある。
本件については、これまでの我が方要望の中で、観光ガイド料金設定の透明性を
確保するため、明確な基準の提示、関係事業者との協議の場の設置、協議内容の文
書による確認などの措置を要望していたが、引き続き要望する。
(ニ)自治体への働きかけ
観光ガイド規制については、基本的に各自治体に権限が委ねられていると理解し
ているが、中央政府より自治体に対し、日本人観光客受け入れ促進のため、上記諸
点の改善を求めていただきたい。
(3)イタリアにおける滞在許可証申請
△、○、イタリア
イタリアでは移民法により、観光目的等3ヶ月以内の短期滞在であっても、全
ての外国人は入国日から8執務日(土、日、祝日を除く)以内に滞在地の警察署
へ滞在許可証を申請し、イタリア滞在中は交付された滞在許可証を携行すること
が義務づけられている。
滞在許可証を取得していない外国人滞在者については、15日以内にイタリア
国外に退去するよう書面で通知するのみで、基本的に身柄の拘束はなかったが、
2002年7月に改正した新移民法の施行により、国外退去を命じられた者は、
国境まで護送されることになり、
それまでの間は施設に収容されることになった。
邦人についても、2002年11月12日イタリアのシチリア島トラッパニで
40
邦人1名が地元警察により身柄を拘束された実例が発生し、2004年4月には、
エルバ島において滞在許可証を取得していないとの理由で邦人1名が国外退去処
分を受ける事例も発生した。
8日以上イタリアに滞在する旅行者でも、同一都市に長く滞在する者は少数で
あり、滞在地の警察署に行き滞在許可証を得る時間の余裕は無く、実行すること
はほぼ不可能な状態にある。このため、日本旅行業協会(JATA)が在日イタ
リア政府に書面で抗議を行ったものの、特殊なケースとして取り扱われ、現状、
改善に向けた動きに到っていない。日本人の旅行スタイルも短期間に複数の個所
を周遊する旅行から、同一都市に長く滞在するスタイルに年々変わっており、今
後、イタリア国内に8日間以上滞在する日本人旅行者は、ますます増加すること
が予想される。
上記については、現在、伊政府において、具体的な改善措置を検討中であると
承知しているが、日本人旅行者の円滑な受入促進のため、例えば、次のような具
体的な改善を行うことを要望する。
(イ)パッケージツアー参加者には主催旅行会社の発行する参加証明書で代用
する。
(ロ)予約された帰国用航空券のコピーを代用する。
(ハ)2国間相互査証免除を適用し、日本人旅行者は免除対象とする。
C.環境規制
(1)
【総論】
○、EC、加盟国
環境問題に先進的に取り組んでいるEUの姿勢を評価しており、特に、リサイ
クル問題については、我が国も同様の問題意識を共有している。他方で、環境分
野における規制は、我が国を含むEU域外企業に大きな影響を与えうるのみでな
く、EUがリスボン戦略に基づき取り組んでいる欧州の経済競争力強化に無視し
得ない影響を与えうるものであるところ、環境面において達成しようとする目的
と、企業による経済活動や国際貿易・投資に与える影響の間で適切なバランスが図
られるよう配慮すべきと考える。環境分野における規制が企業にとり過度に負担
となり、健全な経済活動を阻害する、或いは貿易障壁となることのないよう引き
続き要望する。
また、我が国とEUは、
「日・EU投資枠組み」において、双方向投資促進の観
点から規制の策定段階及び実施段階の双方において対話を継続する旨述べた上で、
優先分野の一つとして環境分野を特定しているところ、我が国政府は、EUが本
件につき引き続き前向きに対応するよう求める。
41
(2)欧州における新たな化学品規制:「REACH 規則案(Proposal of Regulation
for Registration, Evaluation and Authorization of Chemicals)」(対EC及
び加盟国要望)
○、EC、加盟国
本件については、化学物質の製造・輸入を行う欧州企業のみならず、EU域内
で活動する日本企業等外国企業、EU域内へ化学物質や成形品を輸出する企業に
おいても影響が大きいため、わが国としても極めて高い関心を有している。20
03年10月に欧州委員会が採択した規則案(Proposal of Regulation)に関し、
今後の理事会・欧州議会を含むEU内部での審議日程等の情報提供と合わせ、我
が国の基本的考え方と懸念事項が関係審議において十分考慮されるよう要望する。
我が国の基本的な考え方及び懸念事項については、本年2月に開催された規制
改革対話ブリュッセル会合の機会、また、本年6月に我が国がEUのREACH
規則案に関するWTO/TBT通報に対して提出したコメントなどにおいて繰り
返し伝達してきているが、簡潔に述べれば以下のとおり。
(イ)我が国の基本的な考え方。
(a)目的に照らして過剰な義務・負担を事業者に課すべきではない。
(b)
EU向け輸出を阻害し、
必要以上に貿易制限的にならないよう配慮すべき(特
に成形品に含まれる化学物質の登録について。またWTO諸協定との整合性にも
問題が生じないよう配慮すべき)
。
(c)OECD等の場で国際的に実施乃至検討されている化学品規制制度の国際調
和の動きとの整合性を確保すべき。
(d)EU加盟国内における規制適用の統一性、透明性、公正性を確保すべき。
(イ)我が国が懸念を有する主な条文
(a)成形品(Article)の中の物質の登録(規則案第6条)
(b)ポリマー構成成分のモノマーの登録(規則案第5条3項)
その他、2003年7月にEUが実施したインタネット・コンサルテーション
に係る我が国のコメントのうち依然として十分な回答を得ていない事項を含め、
その他技術的な内容を含む我が国の懸念事項についてEU側と議論を行うため、
昨年度と同様に「専門家会合」を本年度も規制改革対話などの機会を利用して別
途開催することを提案する。
(3)
「廃電気・電子機器指令(WEEE)」及び「特定有害物質使用禁止指令(ROHS)」
○、EC、加盟国
(イ)2003年2月に発効したWEEE、ROHSの両指令については、2004年8
月までに全ての加盟国が両指令の遵守に必要な法律を整備する段階にあったと承
知している。しかし、この法律の制定期限が過ぎているにも拘わらず、現状は各国
の立法が間に合っていない。我が国関係業界としては、来年8月の施行に向け、加
42
盟各国の国内法・政省令などの整備状況及び内容に関して、現時点での最新状況を
我が国政府に周知するよう求めるとともに、早期立法に向けた各国への指導を求め
る。また、加盟各国の関係法律の整備が早期に進まない場合には、両指令の施行を
遅らせる等の措置を検討する必要があると考える。
いずれにしろ、今後とも引き続き、我が国に十分な情報提供が行われることを要
望する。
(ロ)WEEE指令に関しては、指令の要求事項の遵守義務のある者の範囲が曖昧で
あること、指令対象の製品の範囲が不明確であることなどの問題点が残されてい
ると承知している。また、ROHS指令に関しても、指令対象製品や適用除外事項の
範囲及びその該当性の解釈が不明確であること、適用除外事項の変更が予定され
ていること、カテゴリー8と9についての扱い、さらに、使用禁止化学物質の最
大含有許容閾値が確定されないこと、「homogeneous materials」という用語(2
003年12月のパブリックコンサルテーション文書に記載)の定義が不明確で
あることなど、いくつかの問題点が残されていると承知している。現在、技術適
用委員会(TAC)において、両指令の上記問題点について検討が行われている
と承知しているところ、右検討の最新状況を説明願いたい。
我が国から欧州に製品を輸出する企業の、製品開発からEUの市場に投入され
るまでに要するリードタイムを踏まえ、我が国企業の当該指令への円滑な遵守に
障害の生じることの無きよう、可能な限り速やかに、上記問題点の解決を要望す
る。閾値の設定に当たっては、含有量の評価、測定に要するコストが製品自体の
価格に反映されることを踏まえて、環境保全上の支障が適切に防止される範囲の
中で製品の安全性と経済性のバランスを考慮すべきである点を再度強調したい。
なお、我が国関連業界等から上述の問題点の解決やこれからの検討事項に当た
って個別の要望がある場合には、引き続き柔軟な対応を希望する。
(4)廃電池指令
○、EC、加盟国
(イ)昨年11月に欧州委により採択された本指令案において、ニカド電池の使
用禁止に関する規定が削除されたことを歓迎する。しかし、今年4月、欧州議会
において本指令案に対する意見としてニカド電池の使用を禁止する内容の修正案
が提出された。我が国政府としては、このニカド電池の使用を許容する欧州委の
立場を支持するとともに、ニカド電池の使用禁止が再び指令案に規定されること
のないよう、昨年に引き続き要望する。
(ロ)鉛はマンガン乾電池の負極亜鉛缶に含有使用されて、防食剤や亜鉛ペレット
から缶に成型する際、延性・展性を与えるなど製造面において必要不可欠な物質で
ある。現在の廃電池指令修正案では、鉛に40ppmの規制値が設けられているが、
この規制値のもとではマンガン乾電池、各種ボタン電池を製造することはできない。
マンガン乾電池や各種ボタン電池の製造が困難となり市場から消えることで、これ
らの電池を用いた医療器具を使用している患者、空気電池を使用している難聴者等
消費者にとり、商品選択の制限や電池価格の高騰など影響が深刻なことから、本件
修正案に規定されている鉛40ppmの規制値を再検討することを要望する。
(ハ)なお、過大な社会コストの増大につながる一次電池の回収・リサイクルにつ
43
いて、その目的と費用対効果などについて説明を求めるとともに、今後とも引き続
き情報・意見交換の機会を設けることを要望する。
(5)
「エネルギー使用製品(EUP)に対するエコデザイン要求設定枠組み指
令案」
★、○、EC、加盟国
(イ) 2003年8月、欧州委員会が採択した「エネルギー使用製品(EUP)
に対するエコデザイン要求設定枠組み指令案」は、欧州閣僚理事会による共通の
立場の採択を受け、今後、欧州議会による第二読会を経て成立に至る可能性が高
いと承知している。また、本枠組指令案成立後には、対象製品の選定を経て、個
別製品毎に規制の具体的事項を「実施措置(Implementing measures)
」として順
次採択する予定とされているが、これら規制内容は、EUPの製造・輸入を行う
欧州企業のみならず、EU域内で活動したりEU域内へEUPを輸出する外国企
業にも大きく影響を与える。従って、引き続き、本枠組指令案の欧州議会におけ
る審議状況に関する情報提供が行われることを要望するとともに、我が国を含む
EU域外国の関係事業者にも意見提出、意見交換の機会が与えられるよう要望す
る。
(ロ)本枠組指令案においては、
「事業者」に対する、製品のエコデザイン要求に
係る内部設計管理あるいは環境管理システムによる適合性評価の実施が義務付け
られているが、一方で、見なし適合として、EMAS取得やEUエコラベル取得、
また、EU加盟国が準備した整合規格への適合等が認められている。
設計制度の中で、EU域内に普及する特定の制度、評価手法のみが有効である
か又は優先的に取り扱われる懸念の生じる規定が散見され、本枠組指令案が貿易
制限的な効果をもたらさないよう、適合性評価の在り方や、製品のエコデザイン
要求の規定内容・指標等については、国際的なハーモナイズを踏まえ、具体的な
規定内容も、国際的に標準化された手法・指標等が優先されるよう要望する。
こうした懸念が払拭されないまま本枠組指令案が成立する場合には、EUPの
製造・輸出を行う日本の産業界に大きな影響があると考えている。
D.ビジネス環境の基盤的整備事項
D1.滞在労働許可
(1) 総論:滞在労働許可手続の改善
○、加盟国、EC
EUにおける投資環境整備の第一歩は、日本人を含むEU域外企業のビジネス
マン及びその家族が、安定的に将来予見性をもって、当該赴任地において新しい
生活を始めることができることを確保することである。本年の日・EU定期首脳
44
協議において発出された「日・EU双方向投資促進枠組み」において、EUは、
EU加盟国における査証、労働許可及び滞在許可手続きの緩和のための努力を含
む、日本国民のための行政手続きの更なる簡素化に努力する旨表明しているとこ
ろ、我が国政府はEU加盟国レベル及びEUレベルの双方で本件に関する諸問題
の改善が図られるよう期待する。
EU加盟諸国レベルの問題に関しては、労働許可、査証、滞在許可等の取得あ
るいは更新手続にかなりの日数を要するため、これらEU加盟諸国に進出してい
る我が国企業にとって、従業員の円滑かつ計画的な採用や配置転換に支障をきた
し、また、ビジネスマン自身にとっても赴任後の生活における各種手続に支障を
来している。その他、複数の加盟国において、事務担当者によって扱いが異なっ
たり、発給基準が明確でないなど行政手続が不透明であったり、また、手続が煩
雑であったりするケースも見られる。こうした理由から、労働許可・滞在許可等
の問題は、欧州で活動する我が国企業の経営者、従業員及びその家族にとって最
大の懸案事項となっており、実際のところ、要望件数としては最も多い要望の一
つとなっている。昨年度対話の際には、幾つかの加盟国代表の出席も得て、前向
きな回答を頂き、事態は改善されている諸国もあるものの、依然として問題のあ
る諸国も多く、引き続き後述する事項につきその改善を要望する(イタリア、ス
ペイン、フランス、ギリシャ、ドイツ、ポルトガル、アイルランド、オランダ、
オーストリア、デンマーク、英国、チェコ、ハンガリー、スロバキア)。
また、EUレベルの問題に関しては、EUの域内市場統合と企業活動のグロー
バル化の結果、我が国も含めたEU域外国のビジネスマンの欧州域内における転
勤の例も増加しているところ、入国前の労働許可取得が条件付けられている場合、
企業内転勤等において大きな負担となり、発給までの不確かな期間を待機するこ
とになる。欧州委は、本件分野に関する取組みを継続していると承知するも、依
然として実現していないところ、我が国政府は我が国企業のビジネスマンの入国
後の滞在労働許可証の申請が早急に認められるよう求める。
(2) 就労を目的とする第三国国民の入国・滞在要件に関する指令案
○、加盟国、EC
欧州委が2001年7月に滞在労働許可手続の簡素化及びEUレベルでの調和
を目指して提出した「就労を目的とする第三国国民の入国・滞在要件に関する指
令」案は、欧州議会及び司法・内務相理事会での検討を経たが採択に至っていな
い。我が国企業にとって、EUレベルでの滞在労働許可手続の簡素化及び調和は
最大の関心事項の一つであり、本件指令の採択に向け欧州委が引き続き努力する
ことを希望し、その進展状況についても我が方に報告して頂くことを要望する。
(3) 第三国国民の域内自由移動に関する指令案
○、加盟国、EC
第三国国民の域内自由移動に関し、2001年7月、欧州委員会が第三国の域
内自由移動に関する指令案を提案した。
本指令案がそのまま実施される場合には、
45
これまで我が国と欧州各国との査免協定に基づいて行われてきた欧州への我が国
国民の渡航に多大な影響を与えることが懸念される。そこで、我が国は本指令案
の慎重な検討、特に、シェンゲン協定発効前に有効であった査証免除措置につい
ては今後とも遵守されるような内容とするよう要望する。
昨年度の欧州委側の回答によれば、シェンゲン域内の6か月間の自由移動を加
盟国に提案をし、右提案は欧州理事会でブロックされていると承知しているとこ
ろ、具体的な結論を出すことを要望する。
また、第三国からシェンゲン域内へ入る際の入国日付スタンプの押印の義務化
が理事会で検討中とのことだが、スタンプ押印の無い者をオーバーステイとする
との案にも多くの議論があるところ、慎重に検討することを要望する。
(4)イタリアにおける労働許可の増枠と取得の容易化、滞在許可証の発給遅延
の解消及び同許可証申請中の出国禁止措置の改善
△、伊
(イ)現在、枠(発給数の制限)の設定を待つ必要なく発給可能な枠外の労働査
証、労働許可の制度を、有効期間を2年から5年に延長すること等により日本人
ビジネスマンにとり使い勝手をよくすることが検討されていると承知していると
ころ、この早期実現及び実現までの間の枠内での査証(有効期間の制限無し)発
給を引き続き要望。また、枠外の労働許可証については、イタリア政府の説明に
よれば、法令上、日本人ビジネスマンの給与は、イタリアへ派遣されるまでの間、
親会社から支払われていたことを証明する必要があるとのことである。しかしな
がら、実際には、イタリアへの派遣後も親会社が給与を負担することの証明が申
請様式上求められている。
ほとんどの日本人ビジネスマンは親会社から派遣され、
現地の子会社から給与が支払われるところ、イタリア政府の説明と実態を合わせ
るよう、この申請様式の変更及び出先機関への徹底を要望する。
(ロ)滞在許可証の申請から発給まで長期間(ローマでは約1年)を要し、企業
活動及び日常生活に多大な障害を生じていることから、伊当局においても改善努
力を行っていると承知しているが、滞在許可証の円滑な発給を要望する。また、
滞在許可証の申請中にイタリア国外に出国した場合、滞在許可申請が無効となり、
企業活動に不便が生じているところ、
右無効措置の是正を要望する。イタリアは、
本年7月から9月末までの間、EU諸国以外の国民に対し、滞在許可更新申請中
においても、一時的に母国に戻るためにイタリア国境からの出入国を認めるとの
通知を発表していると承知しているが、右のような限定付きの暫定的措置にとど
まらず、更なる改善を要望する。
(5)スペインにおける滞在労働許可証発給・更新の迅速化
△、西
滞在労働許可証の迅速な発給・更新を要望する。滞在労働許可証の申請を行う
ためには申請日を事前に電話ないし e-mail で地方州の中央政府代表部に予約す
ることになっている。ところが、申請は現有許可証の失効1か月以上前には受け
46
付けないとしておきながら、e-mail に対する回答が戻ってくるのに2か月かかり、
そこに記載されている予約日が6か月先というケースが我が国企業より報告され
ている。かかる事態を回避するためにも、企業関係者専用窓口を創設するなどの
対策を要望する。
(6) フランスにおける滞在労働許可証発給・更新の迅速化と容易化
△、仏
滞在労働許可証の迅速な発効・更新を要望する。労働許可証については、フラ
ンスでは毎年の更新の際に、新規の登録の作業と殆ど同様の手間がかかる上、滞
在労働許可証の担当者がバカンス等で不在になってしまうと手続が滞ってしまう
という点が我が国企業より報告されており、こうした制度上・運用上の問題点を
解決するよう要望する。
(7) ギリシャにおける滞在労働許可証発給の迅速化と容易化
△、希
発給にかかる時間が短縮されたとの報告もあるが、改善されていないとの声も
依然として寄せられており、窓口の対応にばらつきがあると見られるところ、統
一的な滞在・労働許可の早期発給、滞在許可更新の手続き簡略化を要望する。
(8) ドイツにおける労働許可証発給の迅速化
△、独
本件については、我が方大使館とドイツ関係行政機関との協議に向けてのプロ
セスが準備されているところ、今後関係者で事態が進展することを期待する。
(9) ポルトガルにおける滞在労働許可証発給の迅速化・容易化
△、葡
労働許可の更新申請受付は、現有許可証の失効の1週間前からという失効の直
前であり、
その期間も1週間と短いため、我が方は昨年右期間の拡大を要望した。
これに対し、昨年の書面回答では、ポルトガルは主管当局である SEF(入国管理
等担当機関)の回答を待っているとのことであったが、我が国はポルトガル側よ
り未だ正式な回答を得ていないことから早急に回答を頂きたい。また、依然とし
て、労働許可証を取得するまでに6か月以上かかる場合も見られることから、迅
速な対応を希望する。
(10)アイルランドにおける企業内転勤者への労働許可取得免除制度の再開
△、愛
1999年4月に導入された負担軽減措置である企業内転勤制度(イントラ・
カンパニー・トランスファー・スキーム:ITS)では、企業のマネージャーク
ラスの人又は高技術保持者に限り、企業・グループ本社からの書簡をアイルラン
ド入国の際に入国管理官に示すことにより、労働許可なしでの入国が認められて
47
きた。しかし、特定諸国からの入国者の手続濫用を理由に、右制度は2002年
10月から停止された。その後、暫定措置の運用はなされているものの、その透
明性及び一貫性の欠如から、日系企業関係者の不満が続いているところ、同制度
が本格的に再開されることを希望する。
(11)オランダにおける労働許可証発給基準の緩和
△、蘭
(イ)本件については、年間5万ユーロ以上の給与のあるマネージャークラスに
のみ労働許可が認められるため、高度な技術を身につけていない若年日本人を雇
用することが困難であった。しかし、本年10月より労働許可発行基準が改正さ
れ、30歳未満の労働者の場合年収32,600ユーロ以上、30歳以上の労働
者の場合年収45,000ユーロ以上の収入を得るものに対しては、労働許可発
行基準が緩和されたと承知しており、この点を評価している。当地日系企業から
更なる改正要望はあがっていないが、今後とも日系企業のビジネス環境整備に留
意して頂きたい。
(ロ)オランダにおける任意の医療保険加入義務からの免除(★)
一定以上の所得がある駐在員に対しては、滞在許可証発行の際に、オランダの公
的健康保険制度ではなく、個人で任意のオランダの医療保険に加入することが義
務付けられている。オランダの民間保険会社に支払う一人あたりの負担額は、年
間3000∼4000ユーロ程度となっており、結果的に企業にとっての負担と
なっている。
我が国企業の中には、日本の本社が一定額以上の医療費支払いについて費用
を負担する仕組み(厚生保険制度)を有しているところもある。ついては、かか
る企業の子会社駐在員については、右仕組みを有していることを理由に、任意の
オランダの医療保険に加入する義務から免除することを要望する。
(12)オーストリアにおける滞在労働許可証発給基準の緩和
△、オーストリア
オーストリアにおいて、日本人観光客を相手とする観光業は需要の関係で夏場
を中心に雇用が必要となるため、期間雇用として学生などに労働許可を発給する
ことを要望する。なお、昨年は、外国人を雇用したい日本企業は、同等の条件を
満たすオーストリア人がいる場合はこれを雇用する意思を示す必要があるとの回
答であったが、本年の要望は、季節を限定した日本人の雇用を要望するものであ
り、柔軟な対応を希望する。
(13)デンマークにおける就学査証有効期間の延長(現地日本校)
★、△、デンマーク
現在発給されている就学査証の有効期間は1年間であり、毎年全生徒のビザを
更新するのは大変な労力である。これに加えて、ビザ申請期間中はパスポートが
手元にないために不自由をきたしているところ、就学査証の有効期間を1年間か
48
ら、修学期間全般に亘り有効となるよう期間を延長するよう要望する。
(14)イギリスにおける就学査証での就労可能時間の拡大
★、△、英
夏期休暇の学生労働につき、一般の大学生に対しては週40時間の特別枠が設
けられているが、語学留学など短期留学生に対してはこれが適用されない。昨年
秋の法改正で同年10月より毎年400∼500ポンドのビザ更新手数料支払い
が義務付けられたと承知しており、多くの語学留学生の生活費は切迫している。
かかる環境変化に鑑み、語学留学生に対しても一般の大学生と同様、就労可能時
間の夏期休暇特別枠の創設を要望する。
(15)チェコにおける滞在労働許可発給の迅速化・容易化・有効期間の長期化
★、△、チェコ
EU新規加盟に伴い、5月1日より一定程度の査証手続の簡素化がなされたと
承知しているが、長期滞在ビザの円滑な発行、発給手続の迅速化及び最長1年の
期限を3年間有効にすることを要望する。また、ビザの延長で外国人警察に行く
ことになるが、窓口の数が少なく混乱を招くことがあるため、窓口の数を増加さ
せる等の対応を希望する。
(16)ハンガリーにおける滞在労働許可発給の迅速化・有効期間の長期化と運
用の統一 ★、△、ハンガリー
滞在・労働許可のスムーズな発給及び申請手続き期間の短縮を要望する。滞在
労働許可の有効期間は1年なので、更新した際にはより長い有効期間の労働許可
が発給されることを希望する。また、担当官により対応が異なるケースが多いの
で、運用の統一を要望する。
(17)スロバキアにおける労働許可発給の迅速化と容易化
★、△、スロバキア
通常、スロバキアで働く外国人には、滞在許可と労働許可の2つが必要と承知
しているが、これら許可証の取得には煩雑な手続きがあり、また数か月の時間が
かかり、企業にとり大きな負担となっている。手続きの簡略化及び手続きにかか
る時間の削減を要望する。(了)
D2.運転免許証
(1)総論
○、EC
欧州に進出している日系企業の駐在員及び同家族が欧州に居住し、ビジネスを
営む上で、運転免許の取得は最も基礎的な要件の一つであり、EU加盟国におい
49
て、基本的に我が国の運転免許証から滞在国の運転免許証に切り替えることがで
きることは望ましい状況である。一方で、日系企業の駐在員及び同家族がビジネ
スやプライベートで日本に一時帰国した際に、日本国内で自動車を運転すること
もまた、ビジネスや日常生活を送る上で不可欠なことである。
EU域内において、共同体モデル(Community model)の運転免許証を2つ以上
持つことに起因する不正行為を阻止するとの観点から、欧州委員会は、運転免許
に関するEC指令(1991/439/EEC)により、第三国(日本を含む非EU諸国)発
行の運転免許証から共同体モデルの運転免許証に交換する場合は、その第三国発
行の運転免許証を提出しなければならないとしている。このため、EU加盟国内
で運転免許証を切り替えた駐在員を始めとする日本人は、一時帰国時に日本の運
転免許証を携帯することができず運転できないという問題を従来より提起してい
るところである。
この問題について、我が国としては、従来より我が国運転免許からEU加盟国
の運転免許への切り替えにあたって、我が国運転免許証を所持人に即時に直接返
還頂くことを最善の解決策として要望してきたところであるが、今年に入り、欧
州委員会より、
「EU加盟国で日本人が日本の免許証とEU加盟国の免許証との切
替を行った場合、EU加盟国当局は、日本人から受け取った日本の免許証をその
国の日本大使館に返却する」との提案がなされ、本年2月19日、20日にブリ
ュッセルにて開催された日・EU規制改革対話において、我が国は欧州委員会の
右提案を前向きに検討したい旨欧州委員会に回答した。
上記EU指令においても、EU加盟国で域外国民である日本人が日本の免許証
とEU加盟国の免許証との切替を行った場合、EU加盟国当局は、日本人から受
け取った日本の免許証をその国の日本大使館に返却することは妨げられないとの
解釈が可能である趣旨であれば、本件問題に対する1つの解決策となりうるとこ
ろ、EU側提案を解決策の一つとして受け入れることとする。
ただし、その具体的な運用のあり方等詳細については、わが国とEU加盟各国
との間の二国間の協議により調整することとしたい。
(2) ギリシャにおける運転免許証切り替え問題
○、ギリシャ、EC
2001年3月発行の大統領令により、日本の運転免許証はギリシャ運転免許
証への切り替えが可能となった。その手続においては、ギリシャはギリシャ外務
省又はギリシャで登録されている弁護士の発行した翻訳証明を提出することを要
求していたが、ギリシャ外務省では日本語の翻訳は扱っておらず、また日本語を
解するギリシャ人弁護士は事実上存在しないことから、翻訳証明を入手すること
は不可能な状態であった。本件に関し、昨年度の書面回答において、ギリシャは
省令第3744/398号により、在ギリシャの領事機関が発行した翻訳証明も翻
訳文書として認める旨を述べており、我が国政府は現在に至るギリシャ政府の努
力を評価する。
他方で、右省令によると、切替対象となる免許について当該国の運転免許証発
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行機関に対し、当該運転免許証の有効性を証明する文書の発行が求められ、更に
右文書の発行後も極めて複雑な手続が必要とされているところ、我が国を含むE
U域外国企業ビジネスマンによるギリシャでの企業活動の大きな障害となってい
る。ギリシャ以外のEU諸国は、この様な文書の発行を求めず運転免許の切り替
えを行っているところ、ギリシャにおける本件問題は、ギリシャの企業立地とし
ての魅力を損ねる一因となっている。これに関して、日・EUは「日・EU投資
枠組み」を発出し、その中でEUは、投資環境の整備のため、日本国民のための
行政手続きの更なる簡素化に努める旨表明している。
ついては、我が国政府は、ギリシャ政府が上記事情を考慮し、本件証明文書提
出要件の廃止措置を取り、本件問題の更なる改善を図るよう要望する。
D3.社会保障
社会保険料の二重払い問題の解消
○、EC、加盟国(除く英、独、仏、ベルギー)
日・EU間で協力が進捗している分野であると認識しているが、
欧州進出企業、
そしてこれから進出しようとする企業にとって、社会保険料の二重払いによる負
担は大きな問題であり、対欧州投資に負の影響を与えているところ、引き続き日・
EU双方が努力を行っていくことを希望している。
この問題については、昨年度の規制改革対話の会合においても確認したように、
最終的には我が国とEU各加盟国との間で二国間協定を締結することにより解決
すべきであるところ、我が国は既に独、英と社会保障協定を締結し、仏、ベルギ
ーとも交渉が順調に進展している。我が国としても、今後、EU各加盟国との人
的交流の状況等に照らし、優先度の高い国から、順次社会保障協定締結交渉開始
に向けた情報交換を進めていく用意がある。
D4.その他(投資環境の整備)
反動物実験過激派グループ対策
★、△、EC、加盟国
本年6月の日EU定期首脳協議において発出した「日・EU投資枠組み」でも、
双方向の直接投資は、経済の活性化、雇用機会の創出等、双方に大きな利益をも
たらすことから、日EU間での双方向投資が日・EU経済関係にとって極めて重
要であることを再確認しており、日、EU及びEU加盟国における投資・ビジネ
ス環境の整備の重要性が認識された。
このような投資・ビジネス環境整備には、進出企業に対する安全確保も重要な
課題でるところ、日EU特にロンドンにおいて、SHAC(Stop Huntingdon Animal
Cruelty)を代表とする過激な反動物実験団体(ARE(Animal Rights Extremists))
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による現地日系製薬企業をターゲットにした暴力的かつ反社会的な抗議行動は大
きな問題となっている。このような活動が 2003 年3月以降続発しているため、日
系製薬企業・大使館からも行政当局などへの対応策の要請を行っており、英国政
府としても、裁判所による当該団体の抗議活動に対する差し止め命令や警察当局
による取締りの強化等の改善策をとっているところ、英国政府等の努力を我が国
政府として評価している。他方で、依然として抗議活動は継続しており、過激派
の活動は他のEU各国にも拡がる状況にある。このような状況下では日系企業が
新規投資を控えるようになるばかりか、既存の投資を引き上げる状況にもなりか
ねない。
ついては、英国内における本件懸案の解決と共にEUレベルでの善処を求める。
52
別添:税制
税制
以下の事項については、他の日本政府の要望とは異なり、我が国民間企業より指摘の
あった事項を紹介するものである。
(1)総論:税制調和
EC、加盟国
早期に、EUの企業課税制度の調和と統合が図られるよう希望する。欧州委員
会による企業課税制度調和の検討は行われているものの、EU内の国境を超える
取引等に関して、各国税制との不整合が生じているため、EUにおいてビジネス
を展開する企業にとって、税負担及び事務負担がある。
(具体例)
・ EC条約と各国税制の規定に不明確な点がある。
・ 移転価格税制の運用の調和
¾ 移転価格文書化規則が各国で統一されていない。2002年に加盟国、
企業代表を含む EU共同移転価格フォーラム が設置されたが、右フ
ォーラム中間報告書の最新状況を教示頂くとともに、このフォーラムを
通じ、移転価格税制に対する遵守コストが実質的に削減される政策が早
期に生み出されることを期待する。
・ EUのVAT制度は税制調和の進んでいる分野と承知しているが、実務面を
含めた統一化、還付手続の簡素化、迅速化の作業は途上にある。
¾ この分野における欧州委のこれまでの努力を高く評価する。更に企業間
の国境を越えたサービスの課税地の簡素化や、我が国企業が付加価値税
の還付を求めねばならないケースの減少等を内容とする欧州委員会の提
案の早期実現を期待する。
¾ デジタルコンテンツ等の電子商取引に係る付加価値税(VAT)について、
改正VAT指令(2002/38/EC)がEU域外の事業者に消費者の居住地に
よって異なった対応を求めるなど、大きな負担を課すおそれが強い。同
指令が、電子商取引の発展を阻害することのないよう、各加盟国におい
ては、事業者による消費者の居住国確認手続き簡素化など、可能な限り
事業者の負担を軽減することを念頭に、同指令の柔軟な運用を行うこと
を要望するとともに、EU域内の関連法についての情報提供を引き続き
期待する。
・ 各国税制に関する情報提供
¾ EU各国において予定される税制改革につき、各国ごとの方向性とタイ
ムテーブルを十分な時間的余裕を持って情報提供されることは、既存の
日系企業はもとより、EUへの新規企業進出等においても有益と考えら
れるので、時宜を得た情報提供を引き続き期待する。
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(2)合併・資産の移転・株式交換等に適用する1990年合併指令
EC、加盟国
EU内の合併・資産の移転・株式交換等に適用する1990年合併指令は、E
U内で組織再編を行う場合、評価替えを繰り延べする税制措置を規定している。
同指令に関して、2003年10月に欧州委員会は同指令の適用範囲を拡大する
改正案を提案したが、加盟国との協議を経て、一部修正された。右提案は合併指
令の適用範囲のアップデート、明確化及び拡大を目指しており、高く評価すべき
であり、その早期採択・実施を求める。
一方、同指令の実施に関連して、EU内で統一的な扱いがされないことから、
欧州内でグループの再編を意図している企業は関係する加盟各国における取り扱
いの違いを考慮しなければならず、作業的、コスト的に重荷であり、組織簡素化
の妨げとなっている。具体的には、加盟国によっては、資産と交換に受け取った
株式を何年か持ち続けることを求めており、資産をすべて株式と交換し、空の会
社になった場合にも、株式を持ち続けるために会社を維持する必要がある。会社
の維持費がかかるだけでなく、欧州本店からの配当の一部を空の子会社経由で配
当する必要があるため、配当に対する源泉税が余計にかかる可能性がある。加盟
国が規定している持株の義務付けが企業再編の実質的な障害とならないよう要望
する。
(3)国境を越えたグッドウィル移転の際の課税
EC、加盟国
欧州における日本企業の中には、事業組織を単一市場に適合させるための組織
再編に取り組んでいるところが少なくない。事業組織を汎欧州にする上で各種機
能の最適な配置は極めて重要であり、その際、各種の経営資産を国境を越えて動
かすことが必要になるケースが多い。合併指令はこのような資産の国境を越えた
移動にあたって発生する課税を繰り延べる措置を規定している。
同指令に関して、
2003年10月に欧州委員会は同指令の適用範囲を拡大する改正案を提案した
が、加盟国との協議を経て、一部修正を決定した。右提案は、依然として国境を
越えたグッドウィル移転については課税繰延措置の対象には含まれていない。日
系企業の事業再編を見てみると、グッドウィル(営業権)が国境を越えて移転す
る必要性に直面するケースは多く、場合によって多額の課税が発生する可能性が
ある。本課税の影響により、実際に事業再編を断念するなど、事業再編における
障害となっている。
欧州委では2001年10月に発表されたコミュニケーションのアネックスで、
グッドウィル移転への課税が合併指令による課税繰延の対象とならないことを問
題として認識している。この欧州委の問題意識を高く評価し、欧州委及び加盟国
に対し、事業再編に伴いグットウィルが国境を越えて移転した場合の課税につい
て、課税権を元の加盟国に残した形で課税繰延の対象とする制度改正が迅速に実
現することを要望する。また、事業再編時にしばしば発生する不動産取引税及び
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その他の無形財産等の取引税も含め、合併指令による課税繰延対象の拡大につい
て検討が進められることを要望する。
(4)IAS(国際会計基準)に基づく法人税課税基礎の統合
EC
EUでは欧州議会・理事会規則(Regulation/EC/1606/2002)により、2005
年からEUにおける上場企業は、連結財務諸表をIAS(国際会計基準)に基づ
いて作成することが義務づけられることとなった。しかし、本規則では単体決算
や多くの日本企業の子会社のような非上場企業の決算においてIASの適用を認
めるかどうかは各加盟国の裁量に委ねられている。結果として、上場企業が単一
の会計基準に基づく単一の財務諸表を作成できる一方、非上場企業は、IASを
認めない国を含む複数国で業務を行っている場合、複数の会計基準に基づく複数
の財務諸表を作成することが必要になり、よってより大きな財務諸表作成コスト
に直面する。これは上場企業と非上場企業の間で財務諸表作成費用の点で異なっ
た取扱いがなされることを意味する。日系企業を含めEUの外に世界本社を持つ
多くの企業において欧州内の子会社を上場させていることは例外的であり、EU
単一市場において上場非上場にかかわらず、IASに基づく決算を選択できるよ
うにすることに強い要望がある。
同時に現在EUは法人税基礎の統合について検討を進めていると承知している。
2001年10月に発表したコミュニケーション「税制による障害のない域内市
場に向けて:EUワイドの事業活動に対し統合された課税基礎を提供するための
戦略 COM(2001)582」及び2003年11月のコミュニケーション「税制による障
害のない域内市場:成果、継続イニシアチブ、残された課題」の中でも法人税課
税基礎の統合の重要性を確認している。かかるイニシアチブはEUの市場統合に
向けた継続的努力を示すものである。法人税基礎の統合は日本企業にとってもE
Uの事業環境の大きな改善を意味するものであり、その一層の進展を期待してい
る。
また、現在法人税基礎の出発点としてIAS決算書を使用するとの提案がある
と理解している。上記のとおり現状では非上場企業にIASに基づく財務諸表が
認められるか否かは各国の方針によって異なる。結果として非上場企業の一部が
法人税基礎統合の便益から排除される可能性が指摘される。この観点からも、E
U内の企業に上場、非上場にかかわらずIASに基づく決算書が受け入れられる
必要性を強調したい。一部の加盟国では、すべての企業にIASの適用を認める
動きがあるようだが、今後この動きがその他の加盟国を含む欧州全体に広がると
ともに、法人税課税基礎の統合が早期に実現することを要望する。
(5)自動車関連税制の調和
EC
EU加盟国の中には、自動車の登録・保有等に高額の税金をかけている国があり、
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自動車の販売上大きな障害となるばかりでなく、EU内での自動車本体の価格調和
の阻害要因となっている。
2002年9月、欧州委員会は、自動車登録税の段階的引き下げ及び将来的な廃
止並びに自動車保有税制度の加盟国間調和を目的とした乗用車税制に関するコミ
ュニケーションを発表したと承知している。ついては、今後、本コミュニケーショ
が着実に実施されていくことを要望するとともに、その進捗状況についての情報提
供を求める。
なお、新車購入時の高い税率による課税方式を採用している国に対しては、車
両の保有税方式への変更を要望する。
(6)ベネルクス三国の資本税の廃止
白、蘭、ルクセンブルク
ベネルクス三国は会社設立や増資の際、資本税を課しており、投資の障害になっ
ている。企業が投資しやすくなるよう、この制度は廃止すべきである。以前のEU
側説明では、税率が1%未満であればEU指令に適合しており、更に蘭においては
0.55%まで減税されているとのことであった。しかし、我が国の産業界は、ベ
ネルクス三国のビジネス環境は良好と認識しており、この税制の廃止により更に投
資先としての魅力が増すとの考えから引き続き要望する。
(7)イタリアにおける国際運輸業法人の税当局宛書類提出の免除
★、伊
日伊租税条約の第8条において、一方の条約締結国の国際運送業は、他の条約
締結国における利得に対する租税が免除されている。しかし、イタリアにおける
日系国際運送業者は、法人税免除対象企業にもかかわらず、イタリア税法に基づ
く税務申告書、財務諸表を当局へ提出することが求められており、これの免除を
要望する。
(了)
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