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電力不足の日本において重要性増す 中東・アフリカ諸国の LNG
電力不足の日本において重要性増す 中東・アフリカ諸国の LNG 中東・アフリカ諸国の天然ガスは日本の救世主 和光大学 経済経営学部 教授 岩 間 剛 一 東日本大震災以降の日本におけるLNG輸入急増 かし,ベース電源として日本の電力需要の3割 今から2年前の2011年3月11日に発生した東 程度を担ってきた原子力発電(図表2)が,相 日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故に 次いで定期点検に入るとともに,稼働を停止し, よって,日本の原子力発電所の稼働が相次いで 2013年2月時点で稼働している原子力発電所 停止し,日本は深刻な電力不足に直面した状況 は,関西電力の大飯原子力発電所の3号機と4 が続いている。そのため,原子力発電に代替す 号機の2基だけであるために,電力不足に対応 る貴重なエネルギーとして,中東・アフリカ諸 するために,日本は2,000万トン以上も LNG 輸 国をはじめとしたLNG(液化天然ガス)の輸入 入量を増加させており,その大部分はカタール 量が急速に増加し,過去最大の水準となってい をはじめとした中東・アフリカ諸国からである。 る(図表1) 。 日本の電力構成は,24時間フル稼働させる 日本はこれまでは,年間6,900万トン程度の ベース電源として,発電コストの安価な原子力 LNGを輸入しており,2015年に年間7,500万トン 発電と石炭火力発電を,夏場,冬場の電力最大 程度の LNG を輸入すると見込まれていた。し 需要時に対応するピーク電源として石油火力発 (図表1)日本の LNG 輸入量(単位:万トン) 出所:財務省通関統計 37 中東協力センターニュース 2013・2/3 (図表2)日本の発電能力構成(単位:万キロワット) 出所:電気事業連合会統計 電を活用している。そして,その中間として重 火力発電は,発電コストが安価であるという特 要なバッファー役のミドル電源である LNG 火 徴を持っているものの,単位熱量当たりの炭酸 力を利用するという構成となっており,原子力 ガス排出量が天然ガスの2倍近く,大気汚染の 発電所の稼働が停止している状況において, 原因となる硫黄酸化物,窒素酸化物の排出も多 ベース電源である石炭火力発電の短期的な追加 い。その点,天然ガスは,単位熱量当たりの炭 はできず,ミドル電源としての LNG 火力発電 酸ガス排出量が少ないうえに,LNGはマイナス の発電量増加によって,2013年冬の電力不足に 162度に冷却して,液化する際に硫黄分,窒素分 対応している。2013年の冬は厳しい寒さに見舞 を除去するために,化石燃料において一番ク われているが,停電が起こることなく,私たち リーンなエネルギーであるというメリットを持 がエアコンあるいは天然ガス・ファン・ヒーター っている(図表3)。 によって,暖かい,快適な生活が送れることは 日本は,電力不足に対応するために,従来の 中東産油国からの LNG の安定的な供給に依存 長期契約分に加えて,スポット(直物)取引に していることを感謝しなければならない。石炭 よって,追加的に環境特性に優れた LNG を調 (図表3)炭化水素別炭酸ガス排出量(単位:グラム/千カロリー) ライフサイクルで見た炭化水素別炭酸ガス排出量(g/千cal) 石炭 石油 LP ガス LNG 採掘・輸送等 12.2 5.7 11.9 12.7 燃 焼 103.2 78.1 68.3 56.4 合 計 115 84 80 69 指数(石炭を100とする) 100 73 70 60 出所:世界天然ガス会議 38 中東協力センターニュース 2013・2/3 達しており,電力企業の首脳も述べているよう 筆者紹介 1981年東京大学法学部卒業,東京銀行(現三菱東京 UFJ銀行)入行,東京銀行本店営業第2部部長代理(エ ネルギー融資,経済産業省担当),東京三菱銀行本店産 業調査部部長代理(エネルギー調査担当)。出向:石油 公団(現石油天然ガス・金属鉱物資源機構)企画調査部 (資源エネルギー・チーフ・エコノミスト),日本格付研 究所(チーフ・アナリスト:ソブリン,資源エネルギー 担当)。2003年から和光大学経済経営学部教授(資源エ ネルギー論,マクロ経済学,ミクロ経済学)。東京大学 工学部非常勤講師(金融工学,資源開発プロジェクト・ ファイナンス論),三菱 UFJ リサーチ・コンサルティン グ客員主任研究員,石油技術協会資源経済委員会委員 長。 *著書「資源開発プロジェクトの経済工学と環境問題」, 「ガソリン本当の値段」,「石油がわかれば世界が読め る」,その他,新聞,雑誌等への寄稿,テレビ,ラジ オ出演多数 に, 「カタールの LNG に余裕があるからこそ, 日本は停電を起こさずに済んでいる」という状 況にある。2012年における日本の LNG 輸入量 は,過去最高の8,731万トンに達しており,主と して中東・アフリカ諸国からの LNG 調達によ って,例年になく厳しい寒さの冬を乗り切って おり,中東産油国による LNG は,まさに日本 人にとって救世主の役割を担っている。 中東における天然ガス政策の進化 もともと天然ガスは常温,常圧で気体である ために,取り扱い,輸送,貯蔵が難しく,石油 を求めて油田を掘削して,天然ガスが発見され ると,その取り扱いに困る厄介ものであった。 第1に石油のモノカルチャー経済から産業構造 実際に,油田から原油生産時に一定量の天然ガ の高度化をはかることが求められていること, スが随伴するが,これまでは中東産油国におい 第2に製造業の多角化によって,若年層の雇用 ては,随伴する天然ガスは,海水淡水化と天然 の創出をはかるという大きな課題があること, ガス火力発電の燃料として国内で消費してき という観点から,天然ガスを原料としたエチレ た。しかし,中東のエネルギー政策において, ン・プラントの建設,天然ガス火力発電所の建 (図表4)国別天然ガス埋蔵量(単位:兆立方フィート) 出所:BP 統計2012年6月 39 中東協力センターニュース 2013・2/3 設に力を入れるとともに,天然ガスをマイナス うように,より単位質量当たり高エネルギーの 162度に冷却して,液化した LNG プラントを建 エネルギーへの利用に進化してきた。そうした 設し,天然ガス需要の伸びが著しいアジア大洋 進化の過程において,一番単位質量当たりのエ 州への安定供給を目指している。特に,中東・ ネルギー量が多い炭化水素は天然ガスである。 アフリカ諸国は,石油のみならず,豊富な天然 科学的には炭素に対する水素の比率が高いほ ガス資源を持っている(図表4) 。 ど,発熱量が大きく,炭酸ガス排出量が少ない。 世界の天然ガス埋蔵量のうち,中東が38.4%, なぜならば,単位質量当たりの水素の発熱量は, アフリカが7.0%を占め,合計して45.4%の天然 炭素の5倍あるからである。天然ガスの主成分 ガス資源が中東・アフリカ諸国に集中している。 であるメタンCH4は,自然界に単体として存在 天然ガスは,21世紀のエネルギーとして,世界 するエネルギーの中で,炭素1に対する水素比 の天然ガス消費量は急速に増加している(図表 率が4と,一番炭素に対する水素比率が高い最 5) 。米国エネルギー情報局(EIA)も,世界の 高のエネルギーである。今後は,世界的に天然 天然ガス需要は2035年にかけて,急速に増加す ガス生産量と消費量は大きく伸びると予想され ると予測している(図表6) 。 ており,IEA(国際エネルギー機関)は,2011 21世紀は環境の世紀と呼ばれ,同時に天然ガ 年6月と2012年6月に天然ガス黄金時代(The スの世紀とも呼ばれている。天然ガスは,上述 Golden Age of Natural Gas)を 発 表 し て い る したように,①単位熱量当たりの炭酸ガス排出 (図表7)。 量が炭化水素の中で一番少ないこと,②大気汚 IEA の見通しによれば,2035年には,天然ガ 染の原因となる硫黄酸化物,窒素酸化物の排出 スは石油と並ぶ基幹エネルギーとなると予測さ が,ほとんどなく地球環境に優しいエネルギー れている。その中においても,中東からの天然 であること,③人類は,木材→石炭→石油とい ガスの重要性は強まっている。これまで,中東 (図表5)世界の天然ガス消費量(単位:10億立方メートル) 出所:BP 統計2012年6月 40 中東協力センターニュース 2013・2/3 (図表6)世界の各種エネルギーの伸び 出所:米国 EIA 統計 ではLNGとして輸出を行っている国は,カター て燃焼させて,大部分を廃棄していた。その理 ル,オマーン,イエメン,アブダビに限定され 由は,天然ガスの主成分であるメタンは,炭酸 ており,サウジアラビアにおいては,石油化学 ガスと比べて21倍の温暖化効果があるため,そ 原料,海水淡水化燃料として,国内において利 のまま大気に放散できず,燃焼させて炭酸ガス 用されているだけであり(図表8) ,イランは世 を排出する必要があったからである。 界第2位の莫大な天然ガス埋蔵量を持ちながら これまで中東における天然ガスの事業化,海 も,フレア(油田の井戸の上で燃える炎)とし 外への輸出は,相対的にあまり進んでいるとは (図表7)IEA による天然ガス黄金時代 IEA エネルギー需要見通し2011年6月(石油換算百万トン) 2008年 2008年 2035年 2035年 年平均伸び率 需要 シェア 需要 シェア (%) 石 炭 3315 27% 3666 22% 0.60% 石 油 4059 33% 4543 27% 0.50% 天然ガス 2596 21% 4244 25% 2.10% 原子力 712 6% 1196 7% 1.60% 水 力 276 2% 477 3% 1.80% バイオマス 1225 10% 1944 12% 1.60% その他再生可能エネルギー 89 1% 697 4% 8.20% エネルギー源 出所:IEA2011年6月「天然ガス黄金時代」 41 中東協力センターニュース 2013・2/3 (図表8)中東・アフリカ諸国の LNG 輸出量 出所:BP 統計2012年6月 いえず,逆にいえば,今後の天然ガス事業の可 中東・アフリカ諸国からの追加的な LNG の安 能性は極めて大きいといえる。 定調達が成功したからである。日本の LNG 調 達先としては,これまでのインドネシア,マレー 日本を救った中東・アフリカ諸国の LNG シアを抜いて,2012年上半期にカタールが最大 2011年の東日本大震災以降の電力不足におい の LNG 供給国となり(図表9),加えてアフリ て,日本において停電が発生していないのは, カの LNG 輸入量も2012年には877万トンに達 (図表9)日本の国別 LNG 輸入量(%) 出所:財務省通関統計 42 中東協力センターニュース 2013・2/3 し,特にナイジェリアからの LNG 輸入量は478 供給余力を持った中東・アフリカ諸国は,日本 万トンと2011年比2.4倍も増加している。特に, にとって重要なエネルギーの救世主といえる。 日本にとって重要なことは,原子力発電所の再 稼働が不透明であるために,却って,いつ原子 期待される中東の天然ガス生産 力発電所が再稼働し,LNG火力発電の発電量を これまでは,世界最大級のカタールのノース・ 減少させるかが不確定であるために,20年間に フィールド・ガス田(1971年にシェルによって わたる長期契約を締結して,一定量の安定的な 天然ガス埋蔵が発見され,可採埋蔵量が900兆立 LNGを購入する契約を行うことができず,スポ 方フィートと世界最大であり,1997年から日本 ットによる LNG の調達によって,今後の国内 への LNG 輸出が開始されている)とイランの の原子力発電所における再稼働の状況を見る必 サウス・パース・ガス田(カタールのノース・ 要がある。 その点, インドネシアをはじめとした フィールド・ガス田の同一構造であり,天然ガ 東南アジア諸国には,スポット取引による追加 ス埋蔵量は600兆立方フィートとイランの天然 的な LNG の供給余力がほとんどなく,その意 ガス埋蔵量の半分に達する)が注目されていた。 味でカタールをはじめとした追加的な LNG の カタールは,筆者が東京銀行で資源エネルギー (図表10)カタールの LNG プラント カタールの LNG プロジェクト プロジェクト名 年間生産量 操業開始 参加企業 カタール・ガス1 310万トン 1997年 QP,エクソンモービル,トタール,丸紅,三井物産 カタール・ガス2 290万トン 1997年 QP,エクソンモービル,トタール,丸紅,三井物産 カタール・ガス2拡張 50万トン 2001年 QP,エクソンモービル,トタール,丸紅,三井物産 カタール・ガス3 310万トン 1997年 QP,エクソンモービル,トタール,丸紅,三井物産 カタール・ガスⅡ4 780万トン 2009年 QP,エクソンモービル カタール・ガスⅡ5 780万トン 2009年 QP,エクソンモービル,トタール カタール・ガスⅢ6 780万トン 2010年 QP,コノコフィリップス,三井物産 カタール・ガスⅣ7 780万トン 2010年 QP,シェル ラス・ガス1 320万トン 1999年 ラス・ガス2 320万トン 1999年 ラス・ガスⅡ3 340万トン 2004年 QP,エクソンモービル ラス・ガスⅡ3拡張 140万トン 2007年 QP,エクソンモービル ラス・ガスⅡ4 470万トン 2005年 QP,エクソンモービル ラス・ガスⅡ5 470万トン 2007年 QP,エクソンモービル ラス・ガスⅢ6 780万トン 2009年 QP,エクソンモービル ラス・ガスⅢ7 780万トン 2009年 QP,エクソンモービル 合 計 7,700万トン 2010年 QP,エクソンモービル,KOGAS,伊藤忠, LNGJAPAN QP,エクソンモービル,KOGAS,伊藤忠, LNGJAPAN 出所:各種新聞報道 43 中東協力センターニュース 2013・2/3 (図表11)イランの LNG プロジェクト イランの LNG 計画 プロジェクト名 年間生産量 参加企業 パルス LNG 1,000万トン トタール,ペトロナス,NIOCからCNPC イラン LNG 1,000万トン ペトロパルス,OMV から ONGC ペルシャン LNG 1,600万トン シェル,レプソール,NIOC 北パルス LNG 2,000万トン CNOOC,NIOC ゴルシャン LNG 2,000万トン SKS,NIOC 合 計 7,600万トン 出所:各種新聞報道 融資を担当していた1990年代初頭に LNG プラ イランは中国国営石油企業である CNPC,イ ントの建設を開始し,2010年10月には年間7,700 ンドの国営石油企業である ONGC と協力して, 万トンという世界最大の LNG 生産国となった LNGプラント計画を進めており,今後の大きな (図表10) 。そうした20年前の筆者の経験が,今 成長が見込まれる中国,インドをはじめとした の日本の電力供給を支えている状況を見ると, アジア諸国への LNG 輸出を計画している。ま 筆者にとっても感慨深いものがある。 た,イランはパイプラインによる生ガス輸出を こうしたカタールの巨大な LNG 生産能力が, トルコ向けに行っており,2011年には3,210億立 21世紀の日本のエネルギー危機を救っていると 方フィートの生ガスを輸出している。将来的に いえる。さらに,イランも豊富な天然ガス資源 は,インド,パキスタンへのパイプラインによ をもとに,中国,インドの国営石油企業による る生ガス輸出を目指している。イランの天然ガ 協力のもと,LNG計画を進めている(図表11) 。 ス生産量は,米国,ロシア,カナダに次ぐ世界 (図表12)イランの天然ガス生産量(単位:10億立方メートル) 出所:BP 統計2012年6月 44 中東協力センターニュース 2013・2/3 (図表13)サウジアラビアの天然ガス生産量(単位:10億立方メートル) 出所:BP 統計2012年6月 第4位にあり,今後も天然ガス生産の増加が見 と,日本における天然ガス価格の20分の1程度 込まれている(図表12) 。イランは,世界最大級 に過ぎないことから,天然ガスを原料とした石 の石油化学プラントを稼働させており,石油化 油化学プラントのコスト競争力は極めて強い。 学の原料としても天然ガスは重要性を増してお 日本企業は,中東産油国の人口増加,ライフ・ り,天然ガス田の開発を進めている。 スタイルの向上に伴う水需要の増加に対して, さらに,サウジアラビアも産業構造の高度化 海水淡水化・発電プロジェクト(IWPP)を中 を目的とした石油化学原料としての利用の拡 東産油国において行っている(図表14)。 大,海水淡水化・発電事業の燃料利用の拡大か 21世紀は,中東産油国,アフリカ諸国の高度経 ら,天然ガス生産量を拡大している(図表13) 。 済成長に伴う水需要の増加により,水ビジネス 特に,サウジアラビアの天然ガス価格は,百万 の世紀といわれる。特に,1年の雨の降る日が数 Btu(ブリティッシュ熱量単位)当たり0.75ドル 日程度しかない中東産油国にとっては,飲料に (図表14)中東産油国における海水淡水化・発電事業 中東産油国の IWPP 事業 中東産油国 日本企業 総事業費 サウジアラビア 双日 2,000億円 UAE 住友商事 1,200億円 UAE 丸紅 2,650億円 カタール 三井物産,中部電力,四国電力 4,000億円 オマーン 丸紅,中部電力 1,200億円 出所:各種新聞報道 45 中東協力センターニュース 2013・2/3 適する淡水は必須であり, 日本企業の持つ, 高度 ガス田の老朽化が進み,また石油・天然ガス法 な水処理技術,高効率な天然ガス火力発電のノ 制度の未整備から新規開発が停滞し,天然ガス ウハウを中東産油国に広げることは,中東産油 生産量が,伸び悩みあるいは減少していること 国と日本との友好関係強化につながっている。 (図表15),等によって,アセアン諸国がLNG輸 出国であるにもかかわらず,LNG輸入プラント 日本を含めたアジア地域の LNG 需要増に貢献 の建設が始まるという,これまでには考えられ する中東産油国 なかった,大きなパラダイム・シフトが発生し 今後のアジア大洋州地域の経済成長に伴う ている。2011年5月にタイの国営石油企業PTT LNG需要増を考えると,地理的に近い中東諸国 が,マップ・タ・プット LNG 受入基地の稼働 の天然ガスの生産が一段と重要となってくる。 を開始し,アセアン諸国で初めて LNG 輸入を 日本のみならず,マレーシアをはじめとしたア 開始した。2012年にインドネシアのジャワ島で ジア諸国も LNG 輸入計画を構想している。ア LNG の受け入れが始まり,2014年にはシンガ セアン諸国は,これまで日本にとって重要な ポールの LNG 受け入れが始まる(図表16)。こ LNG輸出国であった。インドネシアは,長い間 れからは,アセアン諸国は,LNGの輸出拠点と にわたって,日本にとっての最大の LNG 供給 してだけではなく,中東産油国にとって重要な 国であり,現在もインドネシアからの LNG 供 LNG 輸出先となる。日本,韓国という LNG 輸 給は,日本にとって重要である。しかし,第1 入大国(図表17)に加えて,アセアン諸国が に経済成長に伴う,年率10%を超える電力需要 LNG輸入国となるということは,国際天然ガス の増加に伴い,国内の天然ガス消費量が増加し 市場において,中東産油国の重要性を強めるこ ていることから,天然ガスの国内消費を優先す とを意味する。 る政策に転換していること,第2に国内の天然 今後は世界の LNG 需要の中心は,これまで (図表15)伸び悩むインドネシアの天然ガス生産量 (単位:10億立方メートル) 出所:BP 統計2012年6月 46 中東協力センターニュース 2013・2/3 (図表16)アセアン諸国の LNG 輸入計画 アセアン諸国の LNG 計画 国 名 概 要 タ イ 2014年に年間500万トンの LNG 受入基地を東部に建設中 シンガポール 年間350万トンの LNG 受入基地をジュロン島に建設中 フィリピン マニラ周辺のルソン島南部に LNG 受入基地計画中 インドネシア 2012年にジャワ島西部に年間300万トンの受入基地 ベトナム 2015年完成を目指し,ブンタオに LNG 受入基地 出所:各種新聞報道 (図表17)国別 LNG 輸入量 出所:BP 統計2012年6月 の日本,韓国主導から,さらにアジア全体に拡 LNGを安定的に供給できるのは,中東産油国で 大することとなる。世界の LNG 需要は2035年 ある。世界最大のLNG輸入国である日本は,自 には5億トンに達し,そのうち6割はアジア地 国におけるエネルギー安全保障をはかること 域が占めることとなる(図表18) 。 も,もちろん重要であるが,アジア地域の指導 世界の LNG 市場の主役に躍り出るアジアに 的な国家であるという責務から,これまでの おける LNG 需要の伸びに,量的にも地理的に LNG 輸入に係わる豊富なノウハウを生かして, も対応できるのは,中東産油国だけである。も プラント建設,ファイナンス分野における政策 ちろん,アフリカ諸国からの LNG 供給も重要 金融をはじめとした資源開発ファイナンスの一 であるものの,ロットの問題から,一定量の 層の整備に努力する必要がある。日本の日揮を 47 中東協力センターニュース 2013・2/3 (図表18)世界の LNG 需要見通し(単位:百万トン) 出所:IEA エネルギー見通し2010年 はじめとしたプラント・メーカー,新日鉄住金 友好関係を強化するのみならず,電力不足に直 をはじめとしたシームレス・パイプは,世界最 面する日本を救うことに加えて,アジアの21世 高水準のノウハウを蓄積している。そして,中 紀における持続的な繁栄にとっても,極めて重 東産油国の天然ガス開発における技術面,資金 要なものとなるのである。 面における支援を行うことは,中東産油国との 48 中東協力センターニュース 2013・2/3